デジタル制御で何ができる?:海外メーカー製デジタル仕様の車両の紹介(2) -デジタル仕様の機関車に実装されている機能の実例(電気機関車)-

今回のテーマ(表題)は「デジタル制御で何ができる?」ということなので第2回目はいきなりですが、デジタル制御でできる機関車の「芸」(機関車に実装されている機能の実例)を写真と動画で紹介したいと思います。使用する機関車は前回も登場したドラエモン顔のMärklin製BR193です。この機関車には全部で制限に近い31個のFunctionが設定されていますが、Märklin digitalのFunctionの数は最大32個となっていますのでこの機関車のFunctionの数は製品の中では多い方です。
 では、早速この機関車に実装されているライト、サウンド関連の機能を写真と動画で紹介しますのでまずは見ていただきたいと思います。なお、動画が多数ありますので環境によっては表示の応答が遅くなるかもしれませんがご了解ください。

まずライト関係のFunctionです。
ヘッドライトとテールライトの制御です。アナログ制御と同様、ヘッドライトとテールライトは進行方向により切り替わりますが、その他のライトも含め、ライトが停車中に点灯/消灯できるのがまずアナログ制御にはない大きな特徴です。私が鉄道模型を始めた当時はこの機能の実現には高周波転倒と呼ばれる方式(モーターが動かない高い周波数のパルス電圧によりライトを点灯させる)が主流で、その後一部メーカーから製品化もされているのではないかと思いますが、停車中にライトが消えてしまう問題はデジタル制御の採用で一挙に解決します。サウンドデコーダーが普及していない日本ではデジタル制御は一度に線路に多数の車両を乗せて、それらを選択的に運転できることと停車中にライトがON \OFFできることと思っている方もいるようですが、これらは1984年に最初にMärklin Digital が発売されたときに備わっていた機能で、いわば40年前から存在する機能です。

前回も紹介したようにキャブの室内灯のON/OFFが可能です。この機関車はONにすると前進側の室内灯が点灯し、進行方向を切り替えると室内灯も切り替わりますが、製品によっては個別に制御できる製品もあります。

片側のエンドのみライトを消灯することが可能です。主に機関車が客車を牽引するする際にテールライトを消灯するために用いられる機能です。ON/OFFは運転台ごとに制御できますので前回紹介したようなキャブ室内灯とヘッドライトのON \OFFを連携させる制御も可能です。

通常のヘッドライトに加えLong Distance Headlight(ハイビーム灯)が点灯します。ヘッドライトより輝度の高いライトが点灯します。

運転室のダッシュボードの計器盤内にもLEDが組み込まれており照明のON/OFFが可能です。

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デジタル制御で何ができる?:海外メーカー製デジタル仕様の車両の紹介(1)

先日、PCであるニュースサイトを何気なく見ていたとき、そこに先日東京ビッグサイトで開催された鉄道模型ショー(JAM)のニュースが掲載されていました、日本で比較的有名なニュースサイトに鉄道模型に関するニュースが掲載されること自体、私の年代の者にとっては時代の変化を感じたのですが、この中で日本の鉄道模型のデジタル化は欧米に比較して20年以上遅れているというようなテロップがついた映像が流れていたのが気になりました。これまでもこのブログで紹介してきたように、私の最近の興味の対象は主に外国製の鉄道模型(HOゲージ)ですが、現在保有している車両は全てデジタル仕様の車両です。現在、海外では現状ほとんどの欧米のメーカーがアナログとDCC仕様の車両を発売しているのに対し、日本ではDCC仕様の車両に製品が非常に限られているという印象を受けます。私が愛好しているMärklinのHOゲージの車両はほぼ全てがデジタル仕様となっていますし、米国メーカーの車両も$100程度の価格差でDCCのありとなしの2種類の製品が用意されている製品が殆んどです。もちろん日本型の車両でもDCC仕様の車両(米国QSI社製のQuantum systemを含む)は発売されており、改造等によりDCCを搭載して使用して運転を楽しんでいる方も多くいらっしゃいますが、日本の現状では一般に模型店の店頭等でサウンドデコーダーを搭載したDCC仕様の製品が備えている機能を目にする機会は少なく、それが日本でDCCが普及しない一因であるような気がします。ただ、蒸気機関車がドラフト音を出しながら汽笛を鳴らしエンドレスを周回しているだけではデジタル制御の面白さはなかなか伝わらないようにも感じます。昔の話ですが、私は学生時代、当時の晴海展示場で開催されていた鉄道模型ショーの天賞堂ブースで初めて見たコントローラーSL-1を用いたサウンド付きの機関車の運転を見た時の驚きが今でも思い出されます。ただ、現代のデジタル制御はそれよりはるかに多機能で、色々なことを行うことが可能です。そこで今回は甚だ僭越ではありますが、今回は数回に分けて、海外製の比較的新しいデジタル仕様のMärklinの車両を例に、実際にデジタル制御でどのよう車両の制御ができるのかを動画と写真で紹介させていただきたいと思います。


今回は初回としてデジタル制御で可能な基本的機能を紹介します。まずは機関車が発車する時のデジタル制御の実例を動画で見ていただければと思います。下はMärklin製BR182電気機関車(#39840)の発車時の動画です。

この機関車はドイツのSiemens社が開発したE S64U2というタイプの機関車で、通称Taurusと呼ばれる最高速度230km/hの機関車です。この機関車は2000年ごろからヨーロッパの各鉄道会社の仕様に合わせた仕様で各鉄道会社に納入され、鉄道会社固有の形式番号を与えられて現在も欧州各国で使用されています。そしてこの動画の音を聞いてお分かりの方も多いと思いますが、この機関車は最近話題となった京浜急行1000系の「ドレミファインバーター」の制御器と同系統の制御器を搭載しています。このため音階はチューニングされていないものの、発車時には京浜急行の「ドレミファインバーター」を彷彿とさせる音を発して加速していきます。もし、日本の製品にもこのようなインバーター音が出せる京浜急行の1000系や常磐線501系電車の模型が市販されていたら思わず欲しくなってしまうのは私だけでしょうか?
また、下の写真は冬、私が撮影した深夜の水上駅に停車中の上り急行「天の川」、特急「北陸」の写真です。停車中の機関車はヘッドライトが消灯してキャブライトが点灯していますがやがて発車時刻になるとキャブライトが消灯した後ヘッドライトが点灯し機関車はブロワーの音を響かせて発車していきます。

水上駅に停車中の上り急行天の川. ヘッドライトは消灯しキャブライトが点灯しています.
発車会津とともにキャブライドが消灯し、ヘッドライトを点灯させ水上駅を出発する特急「北陸』

実際に見るとこのようなシーンは印象的で、模型でも再現したくなりますが、このシーンもキャブライトが制御できるサウンドデコーダー付きのデジタル制御の機関車であれば容易に再現することができます。下はそれを再現したMärklin製BR193(#39197)の発車時の動画です。

この機関車は上記Taurusの後継機でVectronと呼ばれるSiemens製の機関車です。この機関車も鉄道会社に合わせて出力、最高速度等がその鉄道会社に合わせた仕様に設定できるセミオーダーメイドの機関車で、欧州で幅広く使用されているものです。前面に冷却風の取り入れ口がありそのグリルが猫のひげのよう見え、特に青系の塗装がされた機体は日本人が見ると思わずドラエモンを連想させるような車両ですが、欧州では最新型の車両の一つです。なお、この機関車はその後の制御機器の改良で日本でドレミファインバーターの音が聞けなくなったのと同様、この機関車は発車時制御器からのドレミファインバーターのような音は聞こえません。

最近、日本の雑誌を見ていると実物の情景を再現したようなジオラマ(レイアウトセクション)が多く発表されており、その情景の素晴らしさには目を見張るもがありますが、これらの記事のは制御方法に対する説明がほとんどありません。記事では分かりませんが、もしそれらのレイアウト上の車両が、車両を置いて写真を撮っているだけ、あるいは単にアナログ制御で車両を動かすだけであれば、それだけではなく、そこに光と音の制御が加わればどんなに楽しいかは想像に難くありません。デジタル化はというと大きなレイアウトで分岐器や複数列車を制御するためだけのもの、あるいは一部のマニア向けのものと思っている方もいるかもしれませんが、実際に車輌を手にして見るとデジタル制御の面白さははそれだけではありません。鉄道模型を趣味としてる者が、模型店に行った際にデジタル制御で動いている模型を見る機会が増え、例え難しくても頑張ればなんとか出来そうな(電気工作の知識がある人に教えて貰えばできそうな)車両のデジタル化に関する記事が雑誌に掲載されていれば、自分もトライして見ようとする人が増え、それが鉄道模型のデジタル化のきっかけになるのではないかと思うのは私だけでしょうか。前回、12系客車の床下機器の制作記事でも述べましたが、雑誌の記事をきっかけに実際に手を動かして見ようという方が増え、パーツも充実するということもあり得なくはありません。海外の雑誌には私が購読している米国のModel Railroder誌や欧州のMärklin Mabazinに、車両へのデコーダーのインストール方法が時々掲載されています(後者はの対象はMärklin 製製品の改造方法ですが・・・)。


一方、現状ではメーカーにはデジタル化を推進しようという機運は見られません。メーカーにとってはデジタル仕様の車両の製品化には従来より多額の投資を必要としますし、その投資に見合う数量が販売できるかも考えるとリスクが大きいと考えているのではないかということは理解できます。海外製のデコーダー導入してそれを形式ごとの特徴に合わせて日本仕様にカスタマイズするにはそれなりの技術も必要だと思われます。ただ、日本の製品が全くデジタル化を意識していないわけではなく、日本の製品でもデジタルデコーダーの標準規格である21ピンの端子が基板に設けられている製品もあるようです。私が学生の頃、鉄道模型雑誌(TMS)には素人(電気的知識や工作経験がない者)には非常にハードルが高いと思われるトランジスタコントローラーの製作法が回路図も含めて掲載されており、私もなんとか制作できないかと思ったものですが、今は上記の製品の21ピン仕様に対応した海外製のデコーダーを使用すれば少なくともそれよりは簡単に車両のデジタル化は可能ではないかと考えられます。このように考えるとこの現状を打開するためにはユーザー側から鉄道模型のデジタル化の機運を盛り上げることも必要かと思います。そのためにはやはり鉄道模型雑誌が市販のパーツ(デコーダー・スピーカー)等を用いて車輌をデジタル化する詳細手順を掲載していただくと、それをきっかけに少しは普及が進むのではないかと考えます。私もまだアナログ仕様の車輌をデジタル仕様に改造したことはありませんが、デジタルレコーダーは非常に高価であるとともに配線ミス等で割と簡単に破損するようですので、独学で英語のマニュアルを頼りに改造を行うことに対するハードルは結構高いと感じます。個人のWEB SITEには改造記事もありますが、やはり改造のハードルを下げるためには信用できる(複数の専門家により充分にレビューされた)メーカーのマニュアル以上の詳細な手順の説明が欲しいと感じます。余計なお世話と言われてしまえばそれまでですが、日本のメーカーの製品の中には車両の動きと同期して運転時の音を出すことができるサウンドボックスというような製品もあるようですが、普及すると日本の鉄道模型がガラパゴス化してしまわないかはちょっと心配です。
そこでせめて現在私にできることとして次回以降、このデジタル制御でどのような車両の制御ができるかを紹介してみたいと思います。紹介する車両は外国型で、紹介するシステムも専用のコマンドステーションを使用するMarklin Digitalというどちらかと言えば特殊なものですが、模型店の店頭で車輌を眺めるように、まずはデジタル制御とはどんなもので一体なにができるのか、その動作(車両が演じることのできる芸?)の詳細を紹介させていただきますので、それにより少しでもデジタル制御の面白さを感じていただければと思います。そしてこの記事を読んだ方が少しでもデジタル制御に興味を持っていただければ幸いです。

模型車両の紹介:1970年台に製作した12系客車の紹介(極力費用をかけずに実施した床下機器の改修)

以前このブログでED75 700番台を紹介した際、走行中の動画を掲載しましたが、今回はその際この機関車が牽引していた12系客車を紹介したいと思います。それではまずその紹介に掲載した動画を再掲します。

この12系客車は1970年台に製作したもので、当時発売されていた谷川製作所製のキットを組み立てたものです。当時、私はこのブログでも紹介したしなのマイクロ製のEF64,ED78,EF71等の電気機関車のキットを組み立てておりましたが、この車両はそれらの機関車が牽引する客車として製作したものです。編成はスハフ12+オハ12×3+オハフ13からなる5両編成です。当時12系客車は主に臨時急行列車として全国各地で見られましたので当時製作していた機関車に牽引させる客車としては最適な形式の一つでした。このキットを組み立てた当時は車両の細密化にはあまり拘っていなかったため車体はほぼキットをそのまま組み立ててあり、床下機器もキットに付属していた一体成形のプラ製の床下機器をそのまま取り付けて完成としました。

東北本線久田野付近を走る臨時急行
中央本線日野駅付近を走る臨時急行「たてしな」

もとより12系客車の車体は非常ににシンプルな形状でディテールアップの余地はあまりなく、当時は現在のようにエコーモデルの製品をはじめとするホワイトメタル製の床下パーツや車体部品もほとんど発売されていませんでした。当時、機関車、特に蒸気機関車はロストワックスパーツを使用した細密化が行われるようにはなっていましたが、電気機関車や客車を細密化するという風潮はほとんどなかったように記憶しています。この記事の最後にも触れますが、客車、特に旧型客車の床下の細部が意識され始めたのは1973年のTMSに掲載されたなかお・ゆたか氏執筆の「客車の実感を求めて」という記事とそれ以降のパーツの充実によるところが大きいように思います。

今回、機関車の紹介記事を書くににあたりこの12系を改めて箱から取り出し眺めてみると、車体はともかく一体成形の床下機器が気になります。

オハ12のキットに付属していた一体成形による床下機器. 機器類の配置は概ね正確ですが型の抜き方向がが上下方向のみであるためタンク類の形状が実感的ではありません

前述のように12系客車の車体は非常にシンプルで、ディテールアップの余地はあまりありません。このキットの車体は全体的なプロフィールは良好で、ユニットサッシもプレスで表現された枠の凹部にサッシを接着する構造となっており、2段窓の段差は表現されていないものの、形態的な不満はありません。強いて現在の水準に合わせた細密化を実施しようとするとドア部への手摺りの追加、プレスパーツを用いたサボ受けのエッチングパーツへの交換が挙げられますが、わざわざ塗装を剥がしてそのような加工を行うこともないように感じましたので、傷んだ塗装の修正を含め今回は車体の加工は見送りました。これはマッハ模型が廃業してしまったことによる調色塗料の入手に不安があったこともその理由の一つです。一方、床下機器についてはスハフ12の発電エンジン部分を除き一体成形の床下機器が現在のレベルからはかなり見劣りがしますので、床下機器についてはスハフ12のエンジン周りを除き新規に製作することとしました。そしてこの改修にあたり、この製作にかかる費用を極力抑制した形で行いましたので、今回はその方法を中心に紹介してみたいと思います。

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改修が終わったZゲージレイアウトの紹介 (2)

改修が終わったZゲージレイアウトの紹介の第2回目として、今回はレイアウトの細部をご紹介したいと思います。前回は実際に運転中に見ている光景をイメージし、55㎜の標準マクロレンズを用いレイアウトの台枠の外側から撮影した写真を紹介しましたが、今回は105㎜のマクロレンズを使用し、レイアウトのより細部を切り取っています。しかしやはりレンズが大きいため、ローアングルからの撮影はできず、レイアウト上方からの写真が主体となります。この状況はより小型のコンパクトカメラを使用してもあまり変わりません。一方、唯一?ローアングルからの撮影が可能な方法はスマホのカメラを使用することす。そこで今回はスマホでの撮影にもチャレンジしてみました。ただ、レンズは本体の端にあり、大きさも小さいものの本体はレイアウトのサイズに対しては大きく、やはりアングルは限定されます。またレイアウトの中にスマホをセットする際には周囲を破損させないよう細心の注意が必要になります。普段の生活の中ではスマホの普及により色々なシーンを気軽に写真で記録できるようになりましたが、ことZゲージのレイアウト撮影に関してはそんなことは全くなくカメラによる撮影より慎重な作業が必要になります。なお、撮影にあたっては厚紙で写真のような固定部材を用いてカメラを固定し撮影しています。このようなホルダで固定しての撮影は以前Model Railroader誌に紹介されていたことがあり、今回のホルダはその記事を参考に製作しましたが、ホルダの幅を限界近くまで狭くしましたので倒れやすく、使用には細心の注意が必要です。ただ、手で軽く押さえることが必要であってもこのホルダを使用することで安定性が大幅に上昇します。

写真での紹介にあたり、まず望遠マクロレンズで撮影した画像とスマホで撮影した画像を一枚ずつお目にかけます。

列車の進入方向から105㎜のマクロレンズで撮影した駅と高架線です.
スマホで撮影した駅に停車中の列車desu. 手持ちの機材ではローアングルからの撮影はスマホのみで可能です. 以下のスマホで撮影した写真は全て縦長の画像をトリミングした画像です.

それではまず市街地の写真から紹介します。

駅前の風景です. バス停は真鍮線, Evergreen社製プラ素材, 透明プラ板からの自作です. 車はMärklin製ですが、現在カタログに掲載されている製品とは色が違うようです. 乗用車以外のダンプやバンもMärklin製ですが、最新版のカタログには掲載されておりません. 
駅前の道路を直進したところの池の畔にある公園です. 電話ボックス, ベンチはEvergreen社製素材と透明プラ板からの自作, 石垣はKibri製です. この一角は街路等に設置に伴いターフとフォリッジを新規としましたので地面や草木の色合いが他の部分と少し異なっています.
駅前の建物の裏手の池の畔にはカフェを作りました. こちらもテーブルや椅子はEvergreen社製素材から作成してます. 日除けは手芸店で購入したリボンで製作してあります。一部の建物の旗もリボン製です.
歩道上にあるKioskと屋台です. KIoskの屋根は建物キットの残材です. 建物キットは型費削減のためか異なる建物でも共通の部品が使用されており余剰となる部品が比較的多いため, それらは自作の建物に活用ができます。屋台はHOの製品の写真を参考に作成しました.
駅前通りから見た公園とリバース線の鉄橋です(iPhoneで撮影)
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改修が終わったZゲージレイアウトの紹介(1)

約60年前に鉄道模型を始め、車両の製作を主体に楽しんできた私が同じ鉄道模型とはいえ、30年ほど前に全く異なる分野の外国型Zゲージレイアウト製作に『転向』した経緯と、広く普及しているHOゲージ、Nゲージより小さいサイズでいいかに『実感的なレイアウトを制作するか』ついての検討結果については過去の記事で紹介させていただきましたが、照明の追加等の改修作業が終了しましたので改めて今まで紹介していなかった部分も含めたレイアウトの全体を写真を主体に2回にわたり紹介させていただきたいと思います。第1回目はレイアウトの概要の紹介です。写真は全て55㎜のマクロレンズを使用してレイアウトの外側から撮影していますので、写真はこのレイアウトの運転中に見ているレイアウトの風景に近いのではないかと思います。今までのこのレイアウトに関する記事の中で、このレイアウトについて、When is your realism level good enough? というキーワードでZスケールという非常に縮尺比の大きい(小さい)レイアウトで、小さいが故に運転性能等の観点から一部オーバースケールで作られているメーカー製の車両、線路等のシステムと、手作りで製作する周囲の風景をいかにバランスよく実感的に(それらしく)製作するかにという観点で、色々理屈を述べてきましたが、その一つの結果がこれから紹介させていただく写真になります。写真で見ると各部に工作力不足による乱れが生じており、お恥ずかしい限りですがZゲージのレイアウトに興味のある方の何かの参考になれば幸いです。なお、一部に今までご紹介した写真や説明と重複した部分があること、ご了承ください。

また、このレイアウトの動画をYOUTUBEにアップしましたのでよろしければご覧ください。

写真でのレイアウト紹介の前に、まずこのレイアウトに関するThechnical Dataのようなものをご紹介しておきます。
<レイアウトサイズと線路配置の概要>
このレイアウトのサイズは1320㎜(W)x730㎜(D)x350㎜(H)です。高さは台枠下辺から山の頂上までの高さです。レイアウト全体にはアクリル板によるカバーをかけてありますがその高さは台枠下面から550㎜です。床面から大枠上面(線路)までの高さは約930㎜です。次に線路配置を下図に示します。線路は全てMärklin製で、固定カーブの線路と直線線路を使用しており、フレキシブル線路は使用しておりません。駅を出発した列車は高架線をアンダークロスし、最初も分岐器でエンドレスの周回方向が選択されます。右回りを選択した場合は分岐器を直進し、左回りの場合は分岐側からリバース線をとおりエンドレスに入ります。駅に戻る際は右回りの場合は右上の曲線分岐器からリバース線に進入、左回りの場合は本線から分岐側に進入し駅に戻ります。頭端式の駅は線路が3本ありますがプラットホームは上下の2線に設置してあります。駅と対抗した部分には機関車の待機場所を設けています。ホームの線路には解放ランプが各線に2箇所ずつ設置してあり到着した列車の機関車の解放が可能です。

レイアウトの線路配置の概要です. 作図はApp Storeで購入したRailModeller Proというソフトを使用しています. 通常使用しているPCがMACのため, WinTrackのような欧州で広く使用されているソフトは使用していません。▼は解放ランプ位置を表しています.

<制御方法の概要>
コントロール方式はデュアルキャブコントロールで一つの列車がエンドレス周回中に駅での入れ替え作業が可能です。エンドレス部分は3ブロックに分割し、駅部分は各所に動力車を留置可能とするためのギャップを設置してあります。コントロールパネルはベースの前面に設置してあります。列車の制御はMärklin製コントローラー2台で行い、コントローラーのAC 出力で分岐器、解放ランプの制御電源と一部の照明点灯用に使用しています。改修前は照明点灯用にトランスを1台使用していましたが、改修後は大部分の照明は9V 2AのAC アダプタ2個と12V 2AのACアダプタ1個で点灯させています。駅部分の1.5V球の点灯は乾電池です。こちらは改修前は1.5VのACアダプタを使用していたのですが、今回の改修で1.5V球の使用個数が大幅に減りましたので乾電池に変更しました。

レイアウトのギャップ位置を示す略図です
レイアウトのコントロールパネルです。ポイントはモメンタムタイプのトグルスイッチで切り替えます。右下の押しボタンスイッチは解放ランプを作動させるスイッチで、押している間解放ランプのアクチュエータが作動します。

<台枠とシーナリーの概要>
レイアウトの台枠の構造は所謂フラットガーダーで9ミリのシナ合板を用いたフラットトップ方式です。勾配部は具キーカッター方式で製作しました。レイアウトの左右の奥には山を設け、駅部分以外に設置した経路選択用の分岐器は全てトンネル内に隠しました。山は厚紙で概略形状を作り、石膏プラスターに浸したペーパータオルで地形を形成する所謂ハードシェル方式と言われる技法で製作しています。この辺りは1970年ごろにTMSに掲載されたレイアウトの制作法を全面的に参考にしています。

プラスターによる地形の制作が終了したレイアウト


平地部分はレイアウトの右側のリバースループの内側を住宅地、リバースループの左を市街地としてあります。リバースループの部分には池と池に流れ込む川を設け、アクセントをつけました。また左下のエンドレス外側部分(機関車留置線の前)はボイラーハウスと資材置き場を設けました。なお、山や池の位置、高さ、大きさ等は「レイアウトの1/15の縮尺模型」をペーパーとアルミホイルで製作して形状を決定しました。残念ながら写真が残っておらずお目にかけることはできませんが、シーナリー付きの固定レイアウトを製作する際は事前にレイアウトの縮尺模型を製作することは有効な検討手段ではないかと思います。

それでは以下、写真でレイアウトの各部を紹介します。
<全体の概要>
まずレイアウト全体の概要を写真で紹介します。

エンドレス内側の全景です. リバース線より手前が市街地、後が住宅地となっています.
レイアウトの左側、市街地の全景です. 駅舎に面した建物4棟は自作. その他はプラキットで駅舎はKibri B-6700,教会がVollmer#9560, その他の建物はKibri製のB-6824(Hotel-restaurant),B-6810(City Gate with Pharmacy),B6800(Townhouses),B6802(Music School)です. B-6800(Townhouses)は2棟を逆向きに配置してあります. 1棟はキットのままですがもう1棟は1Fのアーケード部分を普通のオフィス風に改造してあります.
住宅地の全景です. 建物は全てプラキットで一番奥と手前がVollmer製(手前が#9546(Bakery),奥が#9531(Farm Cottage)です. その他はKIbri製のキットで、使用したのは B-6780(c from the 1930’s), B6782(development houses from the 1920’s), B6784(Factory dwelliings)です. development housesとは不動産会社が共通管理するよく似た住宅という意味のようです. Vollmerの建物2棟はかなり雰囲気が異なりますが, 基本構造は同一で共通金型による部品がt多数使用できる設計になっており, コスト(金型費)を抑えた設計のうまさが伺えます.これ以外にも構造が同一で雰囲気の違う建物が多数製品化されています.
機関車留置線とその前の建物です. 建物はKIbri B-6774(Boiler House)です. 本来は工場の敷地内の設備の一部として製品化されたものです. その手前は資材置き場風にしてあります。
駅の全景です. ホームを覆うドーム上の屋根はFaller製(#282726:全長約165㎜)を2個繋げて使用していますが、製品はプラットホーム間の線路数2本に対応したものですので中央で切断し、線路3本を覆う形状に改造してあります。写真で見えるプラ製屋根ではない部分がその拡幅部で、2組のドームの接続部とともに金属製のエコーモデルの波板を使用して製作してあります. 駅のその他の部分はほぼ自作しており奥側のホームの屋根もエコーモデルの波板で製作, SHop やCafeのある高架部のレンガ造りの構造物は自作したマスターによるレジンモールド製です。マスターに用いたのは英国PECO製のInjection Moldによるレンガシートです. 英国PECOは日本では線路が有名ですが、カタログを見ると車両や建造物も製造しているようです.
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Zゲージレイアウトの改修(途中経過:その3):駅部分の改修作業が終了しました

前回の記事、”Zゲージレイアウトの改修(途中経過:その2):市街地の改修作業が終了しました” では改修の終了した市街地部分を紹介しましたが、それに続いて駅部分の改修作業が終了しましたので紹介したいと思います。とは言え、改修は照明のLED化が主体で、新たに追加製作した部分はほとんどありません。したがってこの部分は製作当初の状態とあまり変化はありませんが、ここではその修復後の姿をご紹介したいと思います。

プラットホームに進入するTEE. 線路部分に見えるのは解放ランプ.
プラットホームの夜景

駅構内には3本の線路がありますがプラットフォームがあるのは両端の2本で中央の線路にはプラットホームはありません。線路を覆うドーム屋根はFaller製(#282726:全長約165㎜)を2個繋げて使用していますが、製品は線路2本分の幅しかありませんので中央部で切断して幅を広げ、3本の線路幅に対応しています。ホームの長さは約700㎜で、全長120㎜の27m級客車の5両編成が停車できます。

線路方向から見たプラットホーム. 中央部の透明ではない部分が製品を拡幅した部分です. 各番線の入り口と終端部には開放ランプを設置してあります

今回行った駅部分の改修作業は以下の3点です
1. 一部の既存照明のLED化
2.ドーム屋根部のプラットホーム上部への照明の追加
3. 一部のタワーマストへの照明の追加
そのほかは経時的に劣化した部分と破損箇所の修理が主な作業になります。
まずは修復作業について説明します。

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Zゲージレイアウトの改修(途中経過:その2):市街地の改修作業が終了しました

前回の記事、”Zゲージレイアウトの改修(途中経過):照明のLED化と街路灯の追加”では市街地への街路等の追加に対する構想と実際の作業について紹介しましたが、その作業がほぼ終わりましたので今回その結果を報告させていただきたいと思います。
今回の改修では市街地に約80本の街路等を設置しましたが、その他の部分はほぼ製作時の姿に修復してあります。思えば、このレイアウトを紹介するきっかけはModel Railroder誌のEditor’s columnに掲載されていた”When is your realism level good enough?”という記事がきっかけでした。このレイアウトを製作したのは今から20年以上前で、思えばその時から今まで自分が鉄道模型に対して私がgood enougと感ずるrealism levelは変化しているような気がするのですが、改めてその観点で全体の構成を大きく変えないという前提の元、各部の詳細を見てみると、その観点では従来の部分を”改良”できる部分はほとんどないと感じました。もしrealism levelの向上を”各部をより実感的にすること”と捉えると、その手段として第一に考えられることは”個々の部分の「細密度」を向上させる”ということになりますが、私のレイアウト製作技術が当時から進歩していないということもあり、従来の技法では効果のある細密化が難しく、もし行なってもその効果は乏しいと感じたからです。細密化に対しては3Dプリンタやレーザーカットという最新の技法を使用すれば何か方法があるような気もしますが、Zゲージの場合その対象が非常に小さいため、これを考えるとやはりZゲージでは、realism levelを向上させるためには個々の部分の細密化より今回の街路灯の追加のような大きい単位での改修が有効であるような気がします。このことはZゲージのレイアウトを構想する場合には構想段階で、線路配置を含め全体を見渡した際にいかに全体を”それらしく見せるか”を考えることがが重要であり、この構想段階での検討がrealism levelを good enoughにできるか否かを決めるのではないかと考えられます。


以下に改修の終わった各部の写真をお目にかけます。上で記した通り街路灯の追加と照明のLED化以外は20年以上前のレベルとほとんど変わっておらずお恥ずかしい限りですが今回の改修作業の終了を機会に各部を写真で紹介してみたいと思います。なお、今回撮影した写真を完成当時の写真と比較すると塗料の褪色とシーナリー部分に付着したホコリによりかなり色調が変わってしまっています。その中では特に当時アクリル系の塗料で塗装した部分の褪色が顕著であるように感じます。また、長期的な視点で考えた場合には補修に備えて塗料は極力自分で調色せず、既成の塗料をそのまま利用した方が良いと感じました。

レイアウト正面(中央駅側)からみた市街地の全景です
市街地側から見た中央駅の駅舎です
中央駅駅舎と対向する4棟の建物はペーパーによる自作品です
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Zゲージレイアウトの改修(途中経過):照明のLED化と街路灯の追加

以前このブログの”When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level”という記事で紹介したZゲージのレイアウトですが、その最終回に記載したように現在既存の照明のLED化、表面実装形LED(チップLED)を使用した街路灯の追加を行っています。今回その改修中の様子をお目にかけたいと思います。現在は一部の区画で街路灯の設置と建物照明のLED化を終了した状態で、その改修に伴って壊した(壊れた)部分はまだ修復しておらず、街路灯の傾き等の最終的な修正もしていませんが完成までにはまだ時間がかかると思われますので今回は中間報告として、街路灯追加の構想と実際に行った方法について紹介しさせていただきたいと思います。少しでもレイアウト改修の参考になれば幸いです。下は現在のレイアウトの夜景の写真です。街路灯は計画の8割程度を設置した状態です。

街路灯を追加した市街地の夜景
建物アーケード内に照明を追加し建物前の歩道に街路灯を追加した状態. 手前のオフィスビルは建物内部照明を白色LEDに交換(手前側の建物を取り外して撮影)
建物の個々のショーウインドーにLEDによる照明を追加, 右側ビルの照明は電球色と白色のLEDを併用


1990年台に製作したこのレイアウトの照明にはほとんど12Vの米粒球を使用しています。当時は一部の製品で車両のヘッドライトに黄色のLEDが使用されていましたが、白色や電球色のLEDはまだ市場にはなかったためLEDをレイアウトの照明に使用することはまだあまり行なわれてはいなかったと思います。このレイアウトを作成した当時はZゲージ用としてMärklinから黄色の表面実装形LEDを使用した各種のStreet LampやYard Lampが発売されており、その製品は当時のHOゲージ用の製品よりスケールに近い形態でしたが非常に高価で大量に使用することはできませんでした(現在は絶版となっています)。そのため1.5Vのミクロ球を使用した該当の製作も試みましたがMuarklinの製品ほどではないなせよ電球が高価であるとともにオーバースケールのものしか製作できず、結局レイアウトは建物内部の照明と限られた場所に街灯を設置することしかできませんでした。しかし現在では秋葉原等で各色の表面実装形LEDが1個あたり¥10-¥20で手に入ります。ちなみに現在12Vの米粒球を模型店で購入すると1個¥100程度ですのでそれよりもずっと安価です。そこで今回、このレイアウトの建物内の照明の一部ををLED化して建物内の照明の色調にバラエティを持たせるとともに、市街地を主体に表面実装型LEDを使用した街路等を製作して配置することとしました。
この中で難しいのは街路灯の設置です。完成状態のレイアウトに大量の街路灯を設置することはさほど簡単なことではありません。ざっと設置したい場所を洗い出してみると少なくとも50−60本の街路灯が必要になります。まずはこの街路灯をどのようにして量産するかの検討が必要です。さらにその街路灯が完成した後、市街地に設置したその街路灯への配線方法も検討が必要です。レイアウトベースの裏側には既存の配線がありますのでその配線の合間を縫って電源から各街路灯に至る配線を行うのは容易ではなく、非常に不安定な姿勢での作業を強いられ非常に大変な作業となることが予想されますし、物理的にアクセスができない部分もあります。この2点の解決無くしては最初に計画した街路灯の設置は不可能ですのでまずここから検討を始めました。

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手持ちの台車を用いて自作したペーパー車両:番外編

20系客車のその後(自作車両とプラ製品の共存:カニ21)

KATO製Assy partsのボディーを使用して製作したカニ21

以前ご紹介した項題の”手持ちの台車を用いて自作したペーパー車両”ではペーパー製の165系電車と20系客車について紹介させていただきました。このうち20系客車については20系が最も輝いていた頃の面影を残す特急”あさかぜ”の殿様編成と言われたナロネ20、ナロネ22、ナロネ21、ナロ20が連なる編成を製作したのですが、電源車については屋上の冷却ファン周りの製作法の検討が必要であったため製作せず、以前製作した小高模型のペーパーキットを使用したカニ22を流用しておりました。しかしカニ22は荷物積載量の少なさから”あさかぜ”には殆んど使用されておらず、同様の理由でマニ20が運用を外れたのちは電源車は専らカニ21が使用されておりました。私が”あさかぜ”の殿様編成に接したのは70年代の終わりから80年代の初めにかけてですが、その頃はカニ22はマニ20とともにパンタグラフ(MG)を撤去して東北方面の寝台特急に用いられており、あさかぜをはじめとした東京駅を出発する20系寝台特急の電源車は全てカニ21が使用されていました。そのため上記の20系客車が完成したのち、カニ21を製作すべく屋上部分をどのように製作するかの検討は引き続き行っておりました。ただ電源車の屋上のラジエーター周辺はペーパーと木材のみで製作するのはかなり難しそうです。ラジエータファン部分のみをプラ材で作ることも考えましたがそれも接続部の処理が難しそうでなかなか製作に踏み切ることができませんでした。現在でも小高模型のペーパーキットを取り扱っている模型店もあり、そのキットの屋根パーツを使用することも考えましたがますがホームページを見ると何故かカニ21は品切れでした。また、車体の窓数が少ないため、思い切ってヤスリ仕上げという手法が可能な金属製にしようかとも考えましたが、たまたま手元にあった金属車体の20系客車の自作の作例を見るとやはり工作はかなり難しそうで、数十年前に数両の真鍮製車体の自作を行っただけの私の腕では完成できるか不安でした。ただ、色々考えるとこのような車両は意外とハンダという可逆性の瞬間接着剤が使用でき且つヤスリでの整形が可能な金属製の車体のほうがペーパー車体より作りやすいのではないかという気もしました。あくまでも金属工作に一定のスキルがある(技術を習得する)ことが前提となりますが。

そんな折、たまたま見ていたKATOのホームページでKATOから発売されている20系客車のカニ21のボディーがAssy Partsとして入手可能ことを知り、この車体を利用してカニ21を作成することを思いつきました。。KATOから発売されている20系客車の電源車は基本編成のセットに含まれており単体では入手できないと思っていましたのでこのパーツを発見するまではプラ製の車両のパーツを利用するという発想はありませんでした。ただ、プラ製の車体をそのまま使用した場合、その車体を違和感なくペーパー車体の編成中に共存させることができるのかという不安はありました。しかし、電源車とその他の車両は窓周りも出入り口も全く別の構造ですので両者の違いはあまり目立たないのではないかとも思え、もし違和感が大きいようであれば小高製のペーパーキット同様、屋根部分のパーツだけを利用して車体の他の部分をペーパーで製作すれば良いと考え、この車体の購入に踏み切りました。そしてプラ製車体を使用して製作したカニ21とペーパー車体のナロネ20の連結部を撮影したのが下の写真です。この写真を見て皆様はどう思われるでしょうか?私は許容範囲と判断しました。

プラスティック車体のカニ21とペーパー車体のナロネ20の連結部. 実際に見ると想像していたより違和感は少ない.
カニ21とナハネフ22の車掌室部分の比較. “おでこ”の形状の差が気になるが窓形状が大きく異なるためか別々に見るとあまり差が目立たないため許容レベルと判断した.
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模型車両の紹介:奥羽本線のED75 700番台

今回紹介する車両は奥羽本線を走ったED75700番台の模型です。しなのマイクロの車体キットを組み立てた作品で1979年ごろの作品です。

ED75は電気暖房を使用する線区で使用される交流機のいわば標準機といった存在で、勾配区間である奥羽本線福島米沢間、亜幹線の磐越西線、仙山線以外の東日本(50Hz区間)で使用されていました(300番代は除く)。そんなED75の中で700番台は奥羽本線用に製造された最終グループになります。この最終グループの機体は他のED75とは異なり、屋上機器を室内に移すとともに下枠交差型のパンタグラフを採用しており、車体前面の運転台窓下の飾り帯が塗装となり光沢が無くなったこともあり、比較的遠くからでも割と容易に識別が可能です。この700番台は製造当初は奥羽本線のみで運用されていましたが1980年ごろから東北本線でも運用されるようになりました。ただ配置両数は少なく、民営化の少し前までは奥羽本線内での運用が主体でした。

東北本線南福島駅付近を旧型客車で組成された普通列車を牽引して走るED75700番台(1985年ごろ).

車体はしなのマイクロ製の車体キットで製作時期は1979年ごろです。当時しなのマイクロからは電気機関車のキットが数多く発売されており交流機はこのED75をはじめED77,ED78,EF71,北海道で活躍したED76 500番台と、東日本(50Hz)区間で活躍する形式は全て発売されていましたが、このED75はその中では比較的後期に発売された形式だと記憶しています。これらのキットはほぼ同一の構成になっており、私はこのED75を製作する前にED78,EF71を組み立てていましたので組み立てはスムーズに進みました。ただ、これらのキットは貫通扉、エアーフィルター等が肉厚のドロップ製ですのでハンダを流すためには固定したい部分(パーツ)をハンダを盛った100Wのハンダゴテで十分加熱して十分熱を与えることに注意が必要でした。この加熱ではただコテ先で熱を与えるのではなくパーツとコテ先の間に溶けたハンダを介在させて接合部にに十分熱を与えることが重要です。


車体はキットをほぼそのまま組んであり特に細密化は行なっておりません、別に購入したパーツはロストワックス製の電暖表示灯、エアーホース程度です。なお、電暖表示灯は縦長の台形形状をした新型タイプです。なお、パンタグラフは製作当初はフクシマ模型のPS103をつけていたのですが破損してしまったため最近入手可能であったTOMIX製のPS102に交換しました(実機はPS103です)。今までのパンタグラフは碍子とアングル状に曲げられたパンタ台を挟んでネジとナットで固定していましたが、今回使用したパンタグラフはネジ穴がなく取り付け部には固定用の軸が出ているだけでしたので、その軸に今まで使用していた碍子と軸を挟み車体のネジ用の穴に差し込みエポキシ系接着剤で固定しました。この際、接着で固定することには多少の抵抗があったのですが下手に追加工するより綺麗に仕上がると思い、製作当時と異なり今は実物の車両のドア等にも接着が多用されているのだからという屁理屈をつけて接着で固定してしまいました。

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