When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(市街地の構想とその細部)

これまで2回にわたり外国型Zゲージレイアウトのストラクチャー、Tracksideのrealism levelについての検討結果を紹介してきましたが、今回はレイアウトの市街地の構想とその細部についての検討結果と作例を紹介したいと思います。これまで紹介したストラクチャーとTracksideについては一部に市販品を使用しており、自作の部分はそれらの市販品とのバランスを考慮しながら材料の選択や素材からの自作を行いましたが、市街地については限られたスペースの中でどのようにしたらターミナル駅がある市街地らしい市街地を作ることができるか、そのためには市販品と自作品の建物を市街地の中にどのように配置するかというレイアウトの全体構想に関わる課題に対する検討が必要でした。また街頭にある小物は当時市販品はほとんど発売されていなかったため、ストラクチャーのrealism levelとバランスをとりながら鉄道模型用として販売されていない製品の流用や素材からの自作が必要で、それらをどのように製作するかが課題となりました。そこで今回はこの課題の検討過程と結果(作品)を紹介したいと思います。
<市街地のスペース(線路配置)>
この検討結果をご紹介するにあたりまずはこのレイアウトの線路配置を写真を用いて説明します。

台枠状に線路の敷設を完成した段階

上の写真が台枠上に線路を敷設した状態のレイアウトです。手前のエンドレス外側の頭端式のターミナル駅を出発した列車は勾配を上り最初の分岐器でエンドレスの周回方向を決定してエンドレスに入ります。その際列車を左回りとする場合はリバース線を経由して本線へ、右回りとする場合はそのまま本線に入ります。そして本線周回後駅に戻るには手前側の背中合わせに配置された分岐器でエンドレスを離れ駅へ向かいます。その際、時計回りで周回していた列車はリバース線を経由して駅に向かいます。このようにプランとしては非常に単純なプランです。市街地にはターミナル駅に相応しい駅舎を街と向き合う形で設けることとしたのでその駅舎はスペース上写真のリバース線より奥側に設けることになります。そこで写真のリバース線より奥側を市街地とし、手前側を住宅地にすることとしました。ただ、駅舎を市街地と向き合う形で配置する駅舎とホームが高架線で分断されてしまいます。そのためこの部分の処理についてはいろいろ悩みましたが、最終的には高架線下に駅舎への通路を設けるとともに高架線のホーム側にはカフェ等のショップを作り、駅舎との関係性を自然なものとすることとしました。駅舎は市街地と対向するので、運転位置からは駅舎の背面しか見えませんが、運転位置からホーム側のショップが見えれば列車が駅に到着した際、ある程度ターミナル駅の雰囲気が味わえるのではないかと思ったのがその理由です。実際にこのような構造になっている駅は見つけられませんでしたが欧州にはプラットホームに隣接して色々なショップが並んでいる例はよくあるようです。日本で言えば上野駅の地平ホームのイメージでしょうか。そして駅舎はKibriの製品の中から『B -6700″Bahnhof. Bad Nauheim”』を使用しました(現在は絶版のようです)。この駅舎のプロトタイプのあるBad Nauheimはフランクフルトの北にあり湯治場として有名な場所で、過去にはオーストリアのフランツ・ヨーゼフ1世やビスマルクが訪れこともある街のようですが、それはさておき製品はZゲージでも長さ40cmの大きな駅舎です。ちなみに東京駅の長さは330mだそうなのでZゲージでも1.5mになります。

<市街地の構想>
次に市街地の建物の配置を検討しました。

駅舎の配置と建物の配置を検討中の写真. 駅舎の位置はこの位置に決定した

上の写真は市街地の建物の配置を検討していた時の写真で、市販の建造物キットを組み立てた後、どのような建物をどこに配置するかを検討している段階の写真です。市街地の建物は主にKibriの製品を使用しました(教会のみVollmer製です)。Kibriの建物はいずれも旧市街にあるようなタイプの建物で、旧市街に特徴的なCity Gateもあります。一方以前も述べたように旧市街にあるような古くからある建物は装飾が複雑なため自作で製品と同じrealism levelの建物を製作するのは難そうです。このため駅舎から見て左側と奥側を旧市街と見立て製品の建物を配し、駅の正面には比較的近代的な自作の建物を配置することとしました。上の写真では自作する建物は検討段階ではまだボール紙で作った単純な形状のものですが、最終的には駅舎正面の建物は上記写真より小型とし(左側の建物の面取り部分を削り)駅前広場を秘匿するとともに右側の三角屋根の建造物は数を減らし、池の周りの広場のスペースを多く取りました。住宅地も含めて建物の配置が終了した段階の写真が下の写真です。駅舎の正面に自作の建物が並び、それを取り囲むように市販のストラクチャーが配置されているのがわかると思います。

建物の配置を完了した段階. 細部を作り込んでいく前の状態
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When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(Trackside)

プラキットと自作した建造物を比較し、両者のrealism levelに問題がないことが確認できましたので、いよいよ本格的なレイアウトの製作に入りました。最初に行った台枠の製作は何分初めての経験でしたが前回ご紹介したTMSの解説記事と首っ引きでなんとか仕上げることができました。なお、前回ご紹介した私が参考にした解説記事については、喜芸出版社から発行されている”レイアウトテクニック”という本に掲載されています。TMSのバックナンバーを収集するのは結構大変ですがこちらの本であればわりと容易に古書店等で入手可能ではないかと思われますのでよろしければ参考にしてください。そして今回の台枠の製作についてはほぼ記事通りに行いましたので特段述べることもありませんが、一つ言えることは「工具にあまり費用を惜しんではいけない」ということでしょうか。私は最初自宅にあった購入時期不明の鋸等を使用して切れ味が悪く作業が捗らず苦労をしたのですが、工具を新調した結果作業が効率よく進むようになりました。そしてこの台枠の製作が終わるといよいよ線路の敷設になり、その後バラストを散布、線路の周辺(trackside)の部分の製作となります。この際、製品の線路とバランスの取れたtrackside(線路や車両とのrearism levelと同等のrearism levelを持つtrackside)をどのように製作するかが次の課題となります。何分Zゲージレイアウトという当時国内の雑誌では製作法が殆ど掲載されていないゲージのレイアウトであるため参考にできる情報がほとんどなく、その線路周りを実感的に仕上げるためにはどうしたら良いかは製作前に色々検討が必要でしたし、ある程度見切り発車で製作を開始することも必要でした。そこで今回は製作前の検討内容と実際の製作法、およびその結果をご紹介させていただきます。
・線路
線路関連の部材は全てメルクリン製を使用しました。線路はメルクリンの他には英国のPECOからZゲージ用のフレキシブルレールが発売されていますが何分初めてのことでもありやはり線路関係のパーツは全て「純正」品を使用した方が無難ではないかと考えた次第です。メルクリンのレールの高さを実測するとレール高約1.5㎜でCode59程度になります
((1.5/2.54)x100=59.1)。ただ、PECOのZゲージ用レールはカタログにはCode60と謳われておりカタログにもメルクリンの分岐器と組み合わされている写真がありますのでメルクリンのレールもCode60ではないかと思われます(正確な値は不明です)。

WEBで調べるとUIC(International Union of Railwais)やEN(European Norm)で規定された実物の60kgレールの高さは約172㎜のようですので、HOスケール(1/87)でその高さは1.97㎜でCode78、Nスケール(1/160)ではCode42、Zゲージ(1/220)ではCode31がスケールどおりの高さになります。手元にある当時の英国PECOのカタログを見るとHO/OOにはCode100,Code75がラインナップされています(その後Code83が追加されました)。Nゲージ用はCode80とCode55の2種、Zゲージ用は前述のようにCode60です。このようにHOスケールではスケールどおりの高さのレールが発売されていますがN,Zと縮尺比が大きくなるに従ってレール高さはオーバースケールになり、Zゲージではレール高さはスケールの約2倍となります。下の写真はZゲージの車両をレールに乗せて真横から見たものですが確かに線路高さと客車の寸法比率は実物とかなり異なります。

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When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(ストラクチャー)

街中の高架線を走るTEE Rheingold. 牽引機はスイス国鉄のRe460広告塗装機

これまで、車両製作からZゲージレイアウトを製作することを決断するまでの経緯についてご紹介してきましたが、何分レイアウト製作は初めての経験であり、いざ製作を始めようとすると全くどこから手をつけてよいかがわからない状態で、日曜大工の経験も乏しくレイアウト作成を決めた時点では製作法に記されているような作業の経験は全くと言っていいほどありませんでした。ただ、幸いなことに鉄道模型趣味(TMS誌)を1970年ごろから購読していた私は、その頃のNゲージ黎明期に編集部により解説されていた線路の敷設法、プラスターによる地形の製作、配線等の基礎的な技法に関する記事が掲載されたバックナンバーを保管していましたのでそれらを全面的に参考にすることができました。これらの記事はNゲージレイアウトの製作例でしたが、これらはZゲージでも工作法にそれほど差はないと思われましたので、今回。まずはこの記事のとおりに製作しようと決めました。具体的には台枠はフラットガーターのフラットトップ、勾配はクッキーカッター方式、地形はプラスター成形、運転方法はデュアルキャブコン方式等です。余談ですがこの種の記事は最近の雑誌にはあまり掲載されていません。当時のTMS誌のEditorである山崎主筆はTMS誌を「参考書」と言う言い方をしてこのような記事はマンネリと言われようと繰り返し掲する必要があると述べていたようにいたように記憶しています。時代が変わったせいか現在の日本の模型誌にはこのような基本的な製作技法の解説記事はほとんど見られませんが最近の方は情報をどこから得ているのでしょうか。私の最近のレイアウト製作法の情報源はModel railroder、M¨arklin Magazine等海外の雑誌で、特にModel railroder誌にはシーナリーの製作法等が比較的頻繁に掲載されます。Model railroderはネットから定期購読を申し込めば洋書店で購入するよりかなり安く、メール便で毎月届きます。

レイアウトのテーマは、比較的大きな駅(ドイツ語でいえばHauptbahnhof)がある都会をイメージしたものとしました。前述のように私はレイアウトの製作を始める前に車両工作をしており、主に北海道仕様の列車を制作し、その中で特急列車からローカル線の列車まで各種の車両(列車)を製作しましたが、完成した車両をお座敷運転レベルで運転する時には程度長編成の列車の方が面白く、そのような運転に慣れ親しんでいたこと、私が東京出身の東京在住者であまり地方で暮らしたことがなく、鉄道模型を始めた頃から鉄道模型のレイアウトは長編成列車の走る都会の風景をテーマとしたレイアウトと言うイメージがあったことが理由です。もしかしたら初めて見た神田須田町の交通博物館のレイアウトのイメージがそのまま頭に焼き付いているのかもわかりません。また、実際に接した海外の鉄道も都市の鉄道が殆どですので、海外の風景も地方より都市の風景の方がイメージしやすいのではないかと思ったこともその理由です。このようなテーマのレイアウトをHOゲージで製作することは私にとってはスペース的にまず不可能ですが、今回はZゲージを採用しますのでスペース的にもなんとかできそうです。私が鉄道模型を始めた頃はまだNゲージはあまり一般には知られていませんでしたが、しばらくした後初めてNゲージ(当時は9㎜ゲージと呼んでいました)を見た時に、その小ささに驚いたものです。そしてこのゲージはレイアウトのためのゲージであると言う説明には大きな説得力がありましが、Zゲージ(1/220)は寸法比でNゲージ(1/160)の約0.7倍ですので同一レイアウトを作成するための面積は約半分になります。これはA3の用紙とA4の用紙の大きさの差に相当しますのでNゲージでA3サイズに収まるような縮尺比で描いたレイアウトプランはZゲージではA4用紙の大きさに収まるイメージとなります(A3サイズの書類をA4サイズに縮小コピーするイメージです)。この差は意外と大きいものです。メルクリンはZゲージのスケールを決めるにあたり同じ線路配置のレイアウト面積がNゲージの半分になると言うことを意識したのでしょうか。

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When is your realism level good enough?:HOゲージャーから見たZゲージ(外国型モデル)の印象

<HOゲージと16番ゲージ>
まず最初に表題について。私は鉄道模型を始めた時から現在まで日本型の車両を軌間16.5㎜、軌間以外を1/80で製作する所謂「16番ゲージ」の愛好者です。Zゲージの模型を初めて手に取るまで16番以外の鉄道模型は所有したことはありません。しかしここではあえてHOゲージャーと書かせていただきます。私は現在軌間16.5㎜の鉄道模型を日本型・外国型問わず楽しんでいます。そのような状況では正直同じ軌間の模型を日本型(1/80)を16番、外国型(1/87)はHOと厳密に呼び分ける必要性を感じなくなりました。模型とおもちゃの違いはルールの存在ということは冒頭の言葉を引用したModel Railroader誌の言葉ですが、このルールの最上位の基準(規格)を線路幅と定義してそれをXXゲージと呼んでいる(同じ呼称のものは同一の線路が使用できるので)と考えれば日本型も外国型もHOゲージと呼んでしまっても構わない気がしてきたからです。少なくとも軌間(ゲージ)のみに注目すれば3.5㎜スケール(Harf O=HO)ですので理屈上も説明できますのでそれでもあながち間違いではないような気がします。Nゲージの黎明期には日本型の車両が模型化されていないため日本型レイアウトに外国蒸機が走っていましたし、メルクリンHOの客車はいまだに1/87ではありません。実物の世界でもかつてオリエント急行に使用された「外国型」の客車が日本全国を走りました。もちろん「同一線路上を走行できる」を「同一線路上で共存できる(共存させても違和感がない)」と言い換えれば軌間以外の縮尺比(スケール)の基準が必要となりますが、それは軌間の基準より下位の基準のような気がします。ただしこの考えではHOゲージ(3.5㎜スケール)のゲージ(軌間)を用いた鉄道模型と全体をHOスケール(3.5㎜スケール)で製作した鉄道模型は明確に区別する必要があります(英語のgaugeには軌間という意味と尺度という意味がありまのでここがややこしいかもわかりません)。このように最上位規格にレール幅を基準とした名称を規定し、その下位の標準で模型全体の縮尺比の範囲と名称を規定するような体系を構築していくと各種のスケールと名称が整理されて分かりやすくなると思うのは私だけでしょうか。
<Zゲージの印象>
冒頭から話題が逸れてしまいましたが、話を元に戻しますとZゲージのレイアウトの製作を決意した後、先ず最初に行ったことはメルクリンZゲージスターターセットの購入です。購入したセットはスターターセットの中で最も小規模なもの(入門者用?)でDBの89型蒸気機関車に有害車と無蓋車が各一両、それに楕円形の線路(半径195㎜の曲線線路一周分と110㎜の直線線路2本)とパワーパックがセットされたものです。

この機関車の登場時、この機関車は量産されている鉄道模型の中では世界最小の機関車と言われていました(今も?)。Zゲージが誕生したのは1972年で当時私は高校生で初めて真鍮製のバラキットを組んだ頃です。当時のTMS誌上でも新しいゲージの誕生ということで比較的大きく取り上げられていたことを記憶していますが正直私の興味の対象外でした。ただ当時この機関車がパイプの柄の上に乗っかっている当時の広告ははっきり覚えています。またモデルさんのような女性が広告に登場していたのも新鮮でした。このような広告によりメルクリンはこのゲージが「大人向け」であると言うことを示唆していたのでしょうか。


実際の機関車を見て驚くのはその小ささだけではありません(全長約45㎜、重量約20gです)。ロッドはメインロッドのみでサイドロッドはありません。ピストンロッドとクロスヘッドとメインロッドは一体のとなった板金製です。車体はダイキャストの一体成形品で別付けされているパーツはありません。このように全体はかなり簡略化されていますが大きさが大きさですので走り出してしまえば機関車のサイドロッドがないことも殆んど気になりません。

上回りと下回りははフレーム側に取り付けられているバネで付勢されたピンがダイキャスト製のボディー側の穴にはま流ことにより両者が固定される構造になっています。このようにこの機関車の外観は今までHOゲージ(16番)のキット組立やディテールアップをしてきた感覚からは信じられない事ばかりでした。ただ走行性能はレールの汚れとオイルの固着(走り始めでオイルの温度が低い時にはオイルの粘度が高いので走行抵抗が大きく速度が十分でない場合がある)に気をつければ流石にあまりスローは効かないものの実によく走ります。このスターターセットにより基本的な走行性には問題がないことを確認できたので、次に実際にレイアウトで使用を予定している分岐器や客車を購入て次のテストを行いました。客車は全長27mのUIC-X型客車の全長が約120㎜、全長20mの客車が約90㎜です。当時のメルクリンのHOゲージの客車は1/100でしたがZゲージは正確なスケールとなっています、

全長27mのUIC-X客車と全長20mのRebuild客車. 日本の新幹線と在来線の車両の長さを同一スケールで比較すると概ねこのようなイメージとなる. 欧州ではこれらの車両が同じ線路上を走行する.

これらの客車をスターターセットのR195㎜の線路上に置いた時の写真が下の写真です。

27m級の客車では車体からレールが大きくはみ出しており、実感的ではありません。流石にレイアウト上で車両がこの状態になることには抵抗がありましたのでレイアウトでは目に見える部分にカーブはR220を採用することにしました。その写真が下の写真です。線路の車体からはみ出し量は小さくなりますがそれでもまだレールが車体からはみ出してはいます。私はこれは許容範囲と判断しました。

私は今回このレベルはOKとしましたが、もし自分が苦労してディテールアップした車両がこのような線路上を走ることになれば少し抵抗を感じると思います。この辺りがレイアウト製作時に自分の”realism level”を決める(あるところで割り切る)難しさかもわかりません。今にして思うと私はレイアウト作成を決めた時にあえて従来楽しんできたものと異なる規格のゲージ(スケール)を採用して車両もあまり馴染みのない外国型のレイアウトを製作するることによりこの辺りを割り切ることができたのではないかと言う気がします。

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When is your realism level good enough?:車両製作から外国型Zゲージレイアウト製作の決断まで

前回、北海道仕様のC55を紹介したときにModel Railroader誌の2022年12月号のFrom the Editorに掲載されていた上記の言葉を引用しました。その際にも記載しましたが、このRealism Level(意訳すると実物の鉄道を模型で再現する時の本物らしさ(再現度)のレベルということでしょうか)をどこに設定するかということは非常に難しい問題です。その基準は一度設定したらその後はその基準で制作を進めることが理想ですがこの基準は自身の考え方、技術力によっても変化しますので長年この趣味を続けている間に変化しますので変化を恐れたり、変えることをためらう必要はないと思います。私は90年代前半までこれまでご紹介したように比較的ディテールにこだわった車両模型を製作していましたが、その後そのそれとは全く異なる分野である外国型レイアウトの製作を始めて現在に至ります。今回は上記のコラムに関連し、私がなぜ外国型Zゲージのレイアウト製作を始めたか、その経緯をご紹介してみたいと思います。車両のディテールアップと外国型Zゲージのレイアウト製作はある意味鉄道模型では対極的な分野だと思いますが鉄道模型の新しい分野にチャレンジしようとしている方の参考になったら幸いです。

初めて製作した外国型Zゲージレイアウトの一コマ


まず初めにModel Railroader誌の2022年12月号のFrom the Editorの要点を簡潔に記載します。このコラムではまず、模型とおもちゃの違いはルールの存在であり、我々は鉄道模型を始めるにあたりこのルールの一つであるrelism Levelの基準を自分で決める必要があることを教わると述べています。そして自分が満足するレベルでその基準を決め、それに従って各部を製作する必要があるという有名モデラーの言葉を紹介しています(日本と異なり米国(欧米)では鉄道模型はレイアウト製作が一般的ですのでこのコラムはそれを前提として述べていると思われます)。続いてその方の意見、”superdetailed locomotive とrolling stockがcardboardで作られた街の中を走るレイアウトは車両とシーナリーのバランスをもう少し考えたほうが良い(シーナリーに注力したほうが良い)” と言う意見を紹介します。しかし編集者のWhite氏は 模型でできる限り実物に忠実なoperationを再現しようとしているモデラーは、線路配置がそれを実現できるものであればシーナリーには拘らないという事例を紹介し、realistic lebelの考え方は人それぞれであると論じます。次に自分がかつてレールや車輪の形状を実物通りに再現する規格であるProto87に則りでレイアウトを作成しようとして技術力と忍耐力不足により挫折した経験し、そこから試行錯誤しながら自分のrealism level が確立していった経緯を語ります。そして最後に結局ealism lebelは人それぞれであると結論づけます(元々英語はあまり得意ではありませんので間違っているところがあったらお許しください)。日本の鉄道模型はかつては車両の製作が中心で、過去TMS誌上で山崎喜陽氏は細密化と走行性能のバランスを述べておられました。私も今まで製作してきた作品ではこの点には留意してきたつもりです。ただ車両工作が中心の日本では上記コラムにあるような”車両とレイアウトのバランス”についてはあまり述べられていなかったような気がします(車両をレイアウト上に置くと細かいディテールは気にならなくなるということはよく言われていましたが)。現在日本の鉄道模型雑誌は車両、レイアウトともメインとなる(目玉の)記事はコンテストの入選作であることが多く、素晴らしい作品が掲載されています。私はその記事を読むと「素晴らしい」と思うと同時に「自分にはとてもできない」と思ってしまいます。欧米の雑誌の紹介されるレイアウトも同じレベルの作品なのかもわかりませんが、通刊1000号を超える雑誌の編集者が実例や体験も交えてモデラーが製作する模型のレベルは人それぞれで良いと言うことをコラムで述べることは私のような「不器用なモデラー」に勇気を与え、結果雑誌を読んで鉄道模型をやってみたいと思う方を増やすような気がするのは私だけでしょうか。
私も車両製作を行なっていた頃には車両とレイアウトとのバランスと言うことは考えませんでした。私がそれまでに製作した車両を走らせるために保有している線路はエンドウのプラ線路で待避線と引き込み線ができる分岐器数個で、今でも今まで製作した車両はこの線路で走らせています。その線路を走る列車の動画を下に示します(製品を紹介する際撮影にに使用している線路はMärklinのC-Trackですが、これは道床の色合いを考慮して選択しています)。

C62 2+C62 3が牽引する急行ニセコ7両編成. 機関車のモーターはカツミ製DH-13で走行電流は約1.5A. 製作から30年以上経っても走行性能は製作時と変わらない
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模型車両の紹介:北海道のC55(+When is your realism level good enough?)

前回ご紹介したC57に続いてご紹介させていただくのは北海道仕様のC55です。この機関車も以前ご紹介した北海道の寝台急行列車を牽引させるためにキット加工により製作したものです。製作時期はC57とほぼ同時期の1990年ごろで、レイアウト製作を始める前に制作した最後の蒸気機関車です。

この機関車のベースはカツミ模型店製ゴールデンシリーズの未塗装キットです。このゴールデンシリーズの発売当時の売りは主台枠の棒台枠の表現ですが、この表現が最も目立ち楽しめるのは動輪がスポーク動輪であるC55ではないかと思います。購入したのは消費税導入前の1987年頃です。当時は完成品やバラキットの他に車体は組み立て済みでドライバーと配線(半田付けが必要)のみが行われていない状態の未塗装キットや塗装も済ませた塗装済みキットも販売されていました。1989年の消費税導入前は鉄道模型には物品税がかけられておりました(贅沢品とみなされていたようです)。その際価格が一定以下の製品、その製品だけでは本来の目的を達成できない製品は無税のため、当時は上回りと下回りを別々にしたキットが比較的多く販売されいたということを聞いたことがありますがこのような未塗装のキットの場合はどうだったのでしょうか。子供の頃は工作の楽しさを体験させようとしてメーカーはあえてこのようなキットを販売しているのかと思っていましたが。
ちなみに現在関税適用のための物品を定義するHSコードにおいて鉄道模型のコードは95.03で「縮尺模型その他これに類する娯楽用模型(作動するかしないかを問わない。)」というカテゴリに属するようです。外国のショップから商品を購入する際、輸入時このHSコードに対して関税はかかりませんので受け取り時に消費税のみを支払いますが、その税額はみなし原価(販売価格から付加価値税を引いた額のの60%程度)に対して10%です(他に送料等がかかります)。海外のサイトに表示されている価格は通常付加価値税込みの価格(ドイツの場合税率は19%)ですので海外のショップから購入する際の値段を国内販売価格と比較する際にはこれらの税額にも注意が必要です。
それはさておき、キットの説明書はC 57,C55共通のものとなっており、ドライバーと配線用のハンダゴテ(+ハンダ)があれば完成させることができます。ただ未塗装ですので塗装は必要です。組み立ては比較的簡単ですがこのような大型蒸機の塗装をきちんと行うためにはそれなりの技術は必要ですのでやはり対象はある程度模型製作の経験のある人向けの製品だと考えられます。ただ、キットはいわば最終組み立て工程に進む手前の完成品と言えるもので、ネジで組み立てればそのまま普通に走りますので追加部品によるショートや塗装次の塗料の回り込みによる通電不良にさえ気をつければ走行に対しては大きな問題は発生しないのでその点は安心です。

取扱説明書は下の写真のようなもので全13工程で完成となります。C55とC57の説明書は共通で殆んど同じ手順となっています。組み立てに使用するネジが全てマイナスネジであるところは時代を感じます。購入したのは今はなき東急百貨店日本橋店のカツミ直営店でしたが、当時は各地のデパートに模型店があり、模型店で売り切れの製品でもこのようなところには在庫がある(売れ残っている?)ことがあり、ある種穴場のような存在でした。このC55もそんな製品であったように記憶しています。

キットのプロポーションはC57と同様に良好であり、形状を手直ししなければならないところはありませんでしたので完成している車体の基本部分を構成する部品を取り外して修正することは不要と判断し、加工は一部のパーツの交換とパーツや配管の追加としました。加工箇所、加工方法は前作のC57とほぼ同じですが、デフの切り詰めは行いませんでした。当初、C57との違いを出すためにそのように決めたのですが後で調べてみるとC55はごく一部を除いてデフの切り詰めは実施されなかったようです。また、今回もキャブの密閉化は行ってはおりません。
それでは各部を写真で紹介させていただきます。

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模型車両の紹介:北海道のC57(+ユーレイ)

今回は北海道のC57を紹介させていただきます。この車両は以前ご紹介した北海道の急行寝台列車の牽引用に製作したもので客車とほぼ同時期(1990年ごろ)の作品です。

この車両はカツミ模型店発売のゴールデンシリーズ・C57一次型のイージーバラキットを組み立てたもので、特定ナンバー機ではなく、キットをベースに蒸気機関車が終焉を迎える1975年ごろに北海道で見られた機関車の特徴的な形態を再現すべく各部に加工を施したものです。

キットの組み立て説明書

ナンバーは83号機ですが、これはキットの付属していたナンバープレートから選んだものです。実際の83号機は主に西日本で活躍していた機体のようで北海道に配置されたことはなく、1969年に名古屋機関区で使用されたのを最後に廃車されていいるようです。私が鉄道に興味を持ち写真を撮り始めた頃、首都圏では鶴見、新小岩・八王子等にわずかな数の蒸気機関車が残るのみでしたが、当時北海道にはまだ数多くの蒸気機関車が活躍していました。しかし当時の中高生にとっては北海道はあまりにも遠く、私はそれらが実際に活躍している姿を実際にみることは叶いませんでした。しかし北海道が蒸気機関車の最後の活躍の地であったことから交通博物館のC57をはじめ、首都圏には数多くの北海道仕様の機関車が保存展示されており、現在でも比較的多くの北海道仕様の機関車を見ることができます。当時釧網本線で活躍していた戦後型のC58 は羽村動物公園に保存されていますし、上野の国立科学博物館入口展示されているD51も北海道仕様の機体です。C57は前述のように交通博物館に最後の旅客列車を牽引したC57 135が非常に良い状態で保存されていましたので製作にあたってはそれを参考とし、他に雑誌等に掲載されている北海道仕様の機関車の写真を参考にして好みの形態に仕上げてあります。余談ですが、大宮の鉄道博物館に展示されている車両の一部は壁際やプラットホームを模したような台の横に展示されている車両が多く、社内の見学には良いのですが模型の資料として写真を撮影する際には非常に撮影しにくい展示となってしまっています。

製作にあたって交通博物館で撮影したC57 135の写真(一部)


車体の基本部分はキットをそのまま組み立てており、大きな加工はしておりません。晩年の北海道仕様のC57はキャブを密閉型にしたものが多く、C57135も密閉キャブでしたがキットのまま組んであります。これは改造に自信がなかったことと、キャブを密閉型にするとC57本来の精悍さが失われてしまうのではないかと考えたのがその理由です。後者の理由は自分の技術力のなさの言い訳のような気もしますが、やはりライトパシフィック機と呼ばれるC57の軽快で精悍なイメージを形作っているのは1次型等の開放キャブではないかと思います。
このキットはイージーバラキットいう名称のとおり、主題枠とボイラー、ランボード、キャブは組み立て済みで、車体の恋本部分は比較的容易に組み上げることができます。全体的なプロポーションも良好で特に加工が必要なところはありません、したがって加工はロストワックスパーツの追加とパイピングが主なものとなります。

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鉄道趣味を50年続けて思うこと(3)~芸術と鉄道・映画の中の鉄道模型(鉄道趣味とジェンダー)~

映画には鉄道が出てくるシーンが多数あります。かつてのSLブームの頃は高林陽一氏が監督をした「すばらしい蒸気機関車」という作品がロードショーで封切られ、私も中学生の頃、鉄道模型百年の記念に東京ー桜木町間を走ったD51を有楽町で見た後、日劇(丸の内東宝)でその映画を見たことを覚えています。その他、鉄道員の人生をテーマにした作品は数多くありますが、それらは鉄道愛好家の方であれば大体ご存知と思います。しかし今回はそのような映画ではなく、鉄道とは全く関係ない映画の中の鉄道(鉄道模型)が出てくるシーンでで印象に残っているシーンを挙げて、それに関連して趣味とジェンダーについて考えてみようと思います。
その映画は2015年に公開された「キャロル」という映画です。この映画は内容はまだ性の多様性が認められていなかった1950年台の女性同士の恋の物語で、内容は鉄道とはまったく関係ありません。

原作はPatricia Highsmith(1921-1995)の小説 「The price of Salt」だそうです。Patricia Highsmithはアラン・ドロンの映画で有名な「太陽がいっぱい」の作者でもあります。この映画で鉄道模型が出てくるシーンは冒頭でケイト・ブランシェットが演じるキャロルとルーニー・マーラが演じる写真家志望のアルバイト店員テレーズが初めて出会うシーンです。

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鉄道趣味を50年続けて思うこと(2)~芸術と鉄道・小説の中の鉄道~

前回、”鉄道と美術の150年”の見学をきっかけとして鉄道模型と芸術の関係(違い)と最近での鉄道模型雑誌に対して思うことを記載させていただきましが、今回は少し趣向を変えて美術以外の芸術の中に出てくる鉄道に関して私が今まで接した作品の中から印象に残っているものを紹介させていただきたいと思います。
近頃マスメディアにも「鉄道オタク(鉄オタ)」という言葉が出てきます。私も紛れもなくその一人ではあると思うのですが、この言葉には「撮り鉄」「乗り鉄」「模型鉄」等の言葉が表すように鉄道そのものを中心に据えて色々なことを楽しむ(追求する?)という活動のイメージがあります。一方、鉄道は長年に渡り人々の生活の中に浸透していますので美術以外の色々な芸術作品の中にも鉄道は現れます。そこに現れる鉄道は鉄道をそのまま描写したものばかりではありませんが芸術家(創作者)が鉄道のどのような部分を抽出して読者に訴えかけているかを考えると色々興味深いところがあるような気がします。

<鉄道と小説・トーベ・ヤンソンの”機関車”>
鉄道を題材とした文学の中には宮脇俊三氏の作品に代表されるような鉄道紀行のジャンルがあります。それ以外のジャンルの文学でも鉄道は小説の中には頻繁に登場しますが、そのような小説とはちょっと異質で私が印象に残っている作品は、ムーミンの作者として有名なフィンランドの芸術家、トーベ・ヤンソンの「機関車」という小説です。この小説は筑摩書房発行のトーベ・ヤンソンコレクション5”人形の家”の中に収録されています。

この小説の主人公は蒸気機関車を設計する鉄道技師です。彼は機関車を設計することはあくまで「単なる仕事」と割り切って淡々と業務をこなしています。一方、自宅では「機関車の本質」を図録(絵)で表現することに情熱を燃やしており、自宅でその創作に没頭しています。

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模型車両の紹介:北海道のキハ40(キハ40 101-)と気動車床下の模型化

今回紹介させていただくのは北海道仕様の一般型気動車、国鉄時代のキハ40(100番台)の2両編成です。
この車両は2015年に完成した車両で北海道仕様の車両の中では最新の車両です。
私は前回ご紹介したキハ56・キロ26を1990年頃製作して以降レイアウト製作の制作を始め車両工作は一時中断していましたが、この車両はその中断後初めて製作した真鍮製車両です。したがって前作と今作の間には20年のブランクがあります。製作は長い中断にも関わらず意外とスムーズに進んだ反面、20年経っても作品のレベルには進歩がありません。
また、この車両の完成で当初計画していた北海道型の気動車の製作が終了しましたのでこれまでに製作した気動車を例に、その床下機器の表現方法(どの程度の細密化を目指したか)についての試行錯誤の結果を実物写真も交えてご紹介させていただきたいと思います。

キハ40100は北海道向け一般型気動車としては約20年ぶりの新形式でトータルで150両が製造されたようです。道内の各地に分散して配置されていましたので私が比較的頻繁に北海道を訪れていた1980年台前半には道内各地の普通列車ででキハ22に混じって活躍する姿が見られました。

根室本線厚岸駅に停車中のキハ40+キハ22の普通列車

車体はフェニックス模型店製のバラキットを利用しました。キットは車両工作中断前に購入した1990年頃の製品です。床下機器はエンドウ製、台車はカツミ模型店製のDT38(201系用)を流用しました。
車体はキットをほぼそのまま組み立てましたが以下の部分を加工してあります。
1. 車体冷却水補給口の追加
2. 屋上排気管
3. 乗務員扉把手部半円形切り欠き
4. 乗務員ドア両側手すり
両運転台の車両2両であり屋根には水タンクを載置する低屋根部がありますので通常の車両よりは多少の手間がかかりますが組み立てはそれほど難しいものではありません。

乗務員扉把手部切り欠きと両側手すり部の切り欠きを追加. タブレットキャッチャーは未装着
“模型車両の紹介:北海道のキハ40(キハ40 101-)と気動車床下の模型化” の続きを読む