私はここ数年,かつて故 なかお・ゆたか氏が製作された”蒸気機関車のいる周辺”をモチーフとした日本型の機関区のレイアウトセクションや,Märklin Digital systemを使用したドイツの中央駅をイメージしたレイアウトセクションを製作してきました.しかし運転という面で考えると前者の機関区セクションはどちらかというと自作した機関車の鑑賞主体の往復運転が主体で列車の運転という意味での面白さはあまりなく,後者は駅を発着.通過するサウンド付きの長編成列車の運転は楽しめるもののその実態はいわば「セクションを組み込んだ組立式レイアウト」であり,DCC制御を採用しているため電気配線(接続)は短時間でできるものの組立と撤収は結構変です.
私の考える理想のレイアウトはオーディオ装置の電源を入れて好みのCDやアナログレコードをプレーヤに装填しればすぐに音楽を楽しむことができるような感覚で,思い立ったら気軽に列車の運転を楽しめるレイアウトです.
そういう意味では以前紹介した1995年頃から2000年ごろにかけて製作したZゲージレイアウトがあるのですが,なにぶん私が初めて製作したレイアウトであり,当時レイアウト製作に対する十分な知識や経験がが不足していたため線路配置が比較的単純なものとなっています.またレイアウトは欧州の頭端式の駅の再現ににこだわったため周回線上に駅がなく,連続運転時には単純な楕円形状の周回線上をひたすら列車が周回するという単調な運転しか楽しむことができません.また3線式のDCC制御に慣れてしまった今となっては駅に列車を出入りさせる際のリバース区間の極性切り替えやブロックへの給電スイッチの操作にも煩わしさを感じます.ただ,レイアウト自体の細密度については現在でもそれほど不満はなく,使用しているのシステムがMärklin製のシステムだけあって,30年後の現在でも分岐器の切り替え動作や車両の走行には全く問題はなく,製作当初と変わりない快適な運転が楽しめます.そこで今回,この初代のレイアウトを一度解体し,線路やストラクチャー等を再利用する形で新たなを製作することを決断しました.なお,このレイアウトの鉄道名はこの前作のレイアウトの名前を残し,”Keiserburg Stadtbahn II”と命名しました.

これからそのレイアウトの紹介をしたいと思いますが,紹介は製作と同時進行になりますので更新は不定期かつ長期間になることをご了解ください.
<線路配置の検討>
前回作成したレイアウトの配線の概略図が下図になります.この線路配置は日本では比較的多く採用されているようで,過去には荒崎良徳誌の雲龍時鉄道や祖師谷軽便鉄道にその例が見られます.私も製作時のはそれらを参考としています.日本型では駅の部分に機関区や貨物駅を設ける例が多いようですが,私はこの部分を比較的大規模な頭端式の駅(Hauptbahihof)として欧州の雰囲気を出すこととしました.ただこの配線は駅への出入りにはリバース区間が必要であるとともに,スペースが狭いとエンドレスの周回線が比較的単純な形状となってしまいます.また周回線から駅の経路は駅への発着時しか列車が通過しないため「列車密度」が低くなり,さらに通過の際はリバース区間での極性切り替えが必要となるためこの部分の風景を作り込んでもそこを走る列車の姿を余裕を持って楽しむことができないという欠点があるようにも感じます.そこで今回のプランはこの欠点を改良することに主眼を置きました.

なお,レイアウトの寸法は前作のスペースとほぼ同一の1450×600㎜としました.これはHOゲージの寸法に換算すると約3340×1520㎜(1/80では3980x 1650㎜)となります.このスペースは私が購読しているMärklin magazinの毎月掲載されるHOゲージのレイアウトプランの中では標準的なサイズですが,日本ではどちらかというと大型の部類に入るのではないかと思います.現在Märklin magazinに掲載されるこのサイズのレイアウトプランは通過駅を中心にその両端にトンネルを設けその両端あるいは片側の複線を模した2線の間を途中にStaging yardを設けながら結んぶくプランで,その途中の経路の大半が外からは見えない位置にある設け,その一部を露出させて駅間の風景を再現しているものが多いようです.その中には列車がその経路をどのように通過していくかが一目でははわからない服ざるなプランもあります.Märklinシステムは3線式であるためリバース区間での極性の切り替え(路線スイッチの操作)が必要ないためか,中には2線式では両側にリバース区間が必要になる配線も比較的多く見られます.

かつてMärklinに代表される欧州のレイアウトはテーブルの上に楕円形の線路を敷き詰めためたようなプランが多く,玩具的と言われていました.当時のMärklin社のカタログに掲載されているプランもほとんどそのような玩具的と言われていたプランです.ところが現在のMärklin magazin上で提案されるプランは上の写真のようなプランが多く,当時の面影は全くなくなっています.当時の鉄道模型趣味の誌上で主筆の山崎喜陽氏はレイアウトを実感的に見せるか否かは線路がジェットコースター的にならるのを避けることが重要であり線路をいかに隠すかに重要であるという旨の発言を度々されていましたが,上記のプランはまさにそれを実践しているようなプランで,このようなプランと比較すると現在の日本のNゲージレイアウトの方がジェットコースター的で「玩具的」に見えるものが多いような気さえします.またプランでは台枠に隠れた部分は小径カーブが使用されてStaging yardの有効長を稼いでおり,欧州の車両の小径カーブが通過可能という利点が最大限生かされているようにも感じます,欧米は日本に比較して住居が広く,鉄道模型に使用できるスペースが日本より広いと言われますが,ドイツの家庭にある鉄道模型のレイアウトはHome layoutと呼ばれ家族で楽しむことが多いため,米国のような広大なスペースを持つ個人レイアウトはあまり見かけません.米国のレイアウトは複数のオペレーターでセッション運転を行う半島型の大規模なレイアウトと比較的小規模のレイアウトに2極化しているように感じますが,小型レイアウトでは小型車両や貨車の入れ替えを楽しむプランが多く,線路配置はそれほど複雑ではありません.日本では戦後,鉄道模型の楽しみ方について米国を範としたためか,いまだに欧州のレイアウトは玩具的であるという感覚を持つ方が多いような気がします(事実当時はそうでした)が,デジタル制御の普及にを機に欧州の鉄道模型,少なくともメーカーが提案するレイアウトプランは大きく変化しているように感じます.日本では比較的狭いスペースで長編成の列車を走らせるプランが多いようですが,そのようなレイアウトを計画する場合にはこのような現代の欧州のレイアウトプランを参考としても良いのではないかかと感じます.なお,我々にはほとんど無縁の存在ですが,米国の半島式の大型レイアウトを設計する際には,複数のオペレーターでスケールタイムを使用しセッションによる運転を行うために各種のセッションに対応できるように事前にダイヤグラム等による列車運行のシミュレーションを十分に行なって駅間の距離を決める等,レイアウトの線路配置の設計はかなり難しいようで,決して独学により一朝一夕で設計を行えるようなものではないもののようです(NMRAでは毎年セミナーを開催して,おり,設計者の力量を認定する制度もある様です).
欧州でいつから上記の様ななプラン多く提案されるようになったのかは定かではありませんが,2000年ごろにMarklin insider誌に手書きで掲載されていたレイアウトプランにはあまり現在のような複雑なものは見かけませんのでこの傾向はデジタル制御の普及とレイアウト作成用のソフトウエアの普及が大きいのではないかと思われます.当時はレイアウトプラン検討用のテンプレートも発売されてカタログにも掲載されていましたが,このような製品がカタログから姿を消したのもデジタル制御とソフトウエアが普及し始めた頃のように感じます.今回私が作成したプランはこれらのレイアウトに比べると単純なプランですが,それでも立体交差部の線路の高低差を考慮して経路の長さを調整する等,紙の上にコンパスと定規で書いて簡単に検討できるようなものではなく,レイアウト設計用のソフトウエアなければそう簡単にはできなかったような気がします.なお,2線式のシステムでMarklin社の提供するHOゲージのレイアウトプランを参考にする際には,システムが3線式のため,リバース区間が考慮されていないこと,Staging yardでの列車のスムースな交換(交代)に対する検討が必要であることに注意が必要です.Märklin社の3線式DCC制御(Muarklin digital)ではそもそもリバース区間という概念がありません.また外からは見えない位置にあるStaging yardではs88コンタクトによる在線検知を使用した留置線での列車の自動停止や列車の停止していない経路を自動で選択して列車を通過させる(全て埋まっている場合は手前で停止)ことがEvent Programにより比較的容易に行えます(ただしs 88デコーダーとEvent Macro機能の理解が必要です).しかしアナログ制御では容易には行なえなません.逆に3線式DCC制御ではこのような欠点を容易に解決できますのでそれがレイアウトプランの自由度の向上に寄与しているとも感じます.上の写真のような多数のStagin yardを持つレイアウトプランでStaging yardでの列車の交換(交代)をスムーズに行うためには最低限分岐器の開通方向の表示と各線の在線状況をコントロールパネル上に表示することが必要である気がしますが,Muarklin digitalではコマンドステーションとs88デコーダー1台でそれが可能になります.
だいぶ前置きが長くが長くなってしまいましたが,下図が私が最終的に決定した今回のレイアウトのレイアウトプランになります.レイアウト描画ソフトはRailmodeller Proというソフトを使用しています.

レイアウトは2層構造で,上層と下層を分離すると以下のような配線になります.
こちらが上層で駅の部分になります

こちらが下層です .駅の左右をを出発して出発した側に戻ってくる2つの経路を表示しています.その片方に4線(3編成留置可能)のStaging yardを設けています.

そして全体を3Dで表示すると以下のようになります

プランは一見すると複雑そうですが,経路を模式図で描くと以下のようになり,経路としては単純です.列車は原則右回り(CCW)で運転することを想定しています.この線路配置ではCCW方向に走行する列車がFraight Stationに入線できるようにするために渡り線の部分をリバース区間が必要ですが,通常の周回運転では路線スイッチの操作は不要で手放し運転が可能となります.一方,駅で列車の進行方向を変えたりFreight Stasionを出発する列車が出口で渡り線を渡って周回方向を左回りで運転した場合,その列車は再度進行方向を変えない限りFreight Stationに戻ることができなくなります.これは周回方向を右回りとしたこと,Freight Stationを駅の奥側としたことによる制約です.

今回この線路配置に決めるまでの過程で留意した点は主に以下のところです
1.長距離列車編成のロングランを可能とする
前述のように前作のレイアウトでは単純な楕円形状の周回線での周回運転しかできず,運転が単調になっていました.そこで今回は周回線の形状を工夫して運転経路を長くすることを試みました.運転経路を長くするために駅の両側に周回線を二つ設けて駅を出発した列車が出発方向から駅にに戻り,出発した方向とは逆方向に駅を通過しまた駅に戻ってくるという線路配置とし,ロングラン運転を可能としました.今回線路の仮敷設が終わった状態で計測すると,駅を出発した列車が反対方向に駅を通過するまでの所要時間は通常の速度で約45秒,元の位置に戻ってくるまで90秒でした.また「長距離列車」の編成を運転するため駅はレイアウトに斜め方向に設置し,機関車牽引の26m級UIC-X客車5両編成の運転を可能としました.この列車の列車長は約700㎜になります.駅の有効長的には6両編成の運転も可能ですが終端がカーブ上に停車することとなるため運転する列車は仕様上は最長26m級客車5両編成の機関車牽引列車としました.またプランを検討する中で,このプランは有効長を稼ぐため駅の両端の分岐にカーブポイントを多用しているため実感を損ねるのではないかという懸念もありましたが,この部分はトンネルの入り口を適切な位置に設けることにより目立たなくすることが可能と考えて,このプランを採用しました.なお,プラン図のトンネルのポータル位置はソフトウエアの制約で線路の継ぎ目にしか表示できないため概略位置となっています.
2.周回線の線路は角の露出を避け,レイアウトがジェットコースター的にならないように留意する.
周回線の線路の露出はレイアウト手前側のみとして,線路の過度な露出を避けています.その際手前右側の橋梁のあたりは東北本線の郡山ー福島間で見られるような複線の線路を.並行させずに敷設してあるイメージで線路配置を決めました.線路配置上でもこの部分は周回する列車が逆方向に通過します.余談ですが東北本線の郡山ー福島駅間(特に松川から福島にかけてのあたり)は複線化の際,増設した線路を従来の線路に比較して勾配を緩くなるような線形として上り勾配側として使用していますので上下線の線路が並行ではなく,上下線の線路が「つかず離れず」かつ高低差のある状態で敷設されている区間が各所にあり,レイアウト設計の際に参考にできるような気がします.
3.貨物列車の運転を考慮する
前作のレイアウトの駅は都市の中央駅(HBF)をイメージしたもので,レイアウト上にStaging yardもないため貨物列車の運転ができませんでした(機能的には可能です).そのため今回のレイアウトでは貨物駅を設け,貨物列車も実感的に運転できるように配慮しました.
4.周回線にリバース区間は設置せず,「手放し運転」を可能とする.
レイアウトは自分が運転手になったつもりで列車を運転するのも楽しいですが,走る列車を何もせずに酒でも飲みながら走る列車を眺めるのもまた楽しいものです.そこで通常の運転時は経路にリバース区間が生じないような線路配置として,手放し運転を可能としています.
5.Staging yardを設置して複数の車両をレイアウト内に留置可能とする.
実は前作のレイアウトで製作後まず不満を感じたのはレイアウトにStaging yardがないことでした.線路の過度な露出と同様,レイアウト上に多数の車両があると実感を損ねてしまいます.当時は改造によるStaging yardの増設も考えたのですが,場所や線路配置上の制約で実現は不可能でした.そこで今回のレイアウトでは3本の列車が留置可能なStaging yardをレイアウトの後方に設けました.ただ,前述のように列車を留置するためには見えない位置で列車を停車させる必要があります.今回のレイアウトでは留置線の出口付近をオーバーラン防止のために別ブロックとし,列車を停止させたい場合はそのブロックを無電区間として列車のオーバーランを防止することとしています.また今の時代防犯用のWEBカメラが数千円で入手できますのでそそれによるStaging yardの監視も考えています.
6. 最急勾配を30‰,標準勾配を25‰で設計する
勾配は最大30‰(3%)で設計しています.30%の勾配を5両編成の客車列車編成が登坂できることは前作のレイアウトで確認済みです.ただ,前作のレイアウトでは前後の緩和勾配区間を十分考慮していなかったため一部30‰を超える区間ができてしまい,本線用の機関車でもBR218のような比較的小型で軽量の機関車ではUIC-X客車の5両編成はスリップして登坂不可能でした.そこで今回は緩和勾配区間を設計上きちんと考慮する(原則平坦線から勾配区間に移る部分の110㎜の区間の勾配を15‰とする)とともに,線路敷設時のばらつきも考えてほとんどの部分の勾配を設計呼称25‰(2.5%)以下で設計しました.そのため手持ちの本線用の機関車は全てUIC-X客車の5両編成の牽引が可能です.ただそのための勾配区間の経路長の確保には結構苦労しており,見えない部分では線路をあえて直線で結ばずに蛇行させた部分もあります.それでも駅以外の部分はほとんどの部分が勾配区間となってしまいました.Staging yardにも25‰の勾配がついていますがこの程度の勾配であれば列車の発着には影響しないようです.一方,線路が立体交差する部分の高低差はパンタガイド(模擬架線)を設ける前提で原則28.5㎜(レール取り付け面から車両のパンタ上部まで)で設計しました.欧州規格NEM201ではZゲージの場合架線終電の際のトロリ線の最小高さはレール面上から25㎜と規定されてす(標準高さは28㎜です).上記の28.5㎜はレールの厚さ2.5㎜を含むと同時にさらに模擬架線の真鍮線の直径0.7㎜を減ずる必要がありますのでこの高低差は規格の下限に対し0.3㎜の余裕を持つことになります.Märklinをはじめとした欧州製の鉄道模型はほとんどの車両はNEM規格に準拠しており,車両は架線集電可能という仕様のため車両のパンタグラフは堅牢でその上下動もスムース(その分外観が犠牲になっている面もありますが)であるため,立体交差部に模擬架線を設けてもパンタが損傷したり車両の動きが不安定になったりすることはありません.今回のプランではパンタガイドなしで最急勾配を30‰を実現することは不可能です.一方日本の車両のパンタグラフはどちらかというと機能より外観重視のような気がします,私は日本型のNゲージ車両を所有していませんので詳細が分かりませんが,欧州のような規格のない日本型の車両の使用が前提のレイアウトでも,各社の車両のパンタグラフの高さや統一やスムーズな上下動の確保が考慮されており,模擬架線の設置を前提としての今回のような限界を狙った立体交差部の設計は可能なのでしょうか.
以上,蓮路配置の決定経緯を紹介しましたが,まだこれで最終決定ではありません.残った確認項目はこの「ジェットコースター」のような線路をうまく隠してレイアウトを実感的にすることができるか否かの確認です.もちろん線路配置を検討する中で,頭の中に浮かべた3D画像で大体の構想は考えているのですが,それが矛盾なく実現できるかまでを頭の中だけで考えることはは不可能です.そのためその確認を行なわないと線路配置の最終決定はできません.また今回,最終的に決定した線路配置を提示しましたが,今回の線路配置では立体交差部の高低差部分の寸法を規格の限界値ギリギリで設計していますので計算に誤りがあるとその時点でプランが破綻してしまいます.そのためそれを避けるためには慎重な確認作業が必要になります.そこで次回はこのその確認を行なった過程(方法)も紹介したいと思います.
最後に今回のプランの駅右側の分岐器部分を仮組みした写真を示します.分岐器の下に敷いてあるのはA4サイズのコピー用紙でその下側にあるのはHOゲージCトラックの大型分岐器です.この写真からもレイアウト製作時のZゲージのスペース的な有利さを感じていただけることができるのではないかと思います.なお,日本にもZゲージの鉄道模型システムを販売しているメーカーがありますが,上記の説明は前作での経験も含め全てMärklin社のシステム(Muarklin mini-club)の使用を前提としていますのでこの記事を参考にする場合はその点にご注意ください.

長い文章となってしまいましたが最後までお読みいただきありがとうございました.

























































































































