今月届いたMärklin Magazine(2026/03(june|july)に日本の鉄道模型に関連する記事が掲載されていました.

記事は”Märklin instead of a mini bar(直訳するとmini bar の代わりにメルクリン)というもので,内容はドイツのある鉄道模型ファンが自宅のspare bed room(Guest room?)にMärklinの小型レイアウトを製作したという記事なのですが,この中で私の興味を引いたのは記事の中でこれを,作者の家の中に日本の鉄道模型の文化の一部を取り入れたいう説明があることでした.この記事はその文体から察するに多分Märklin magazineの記者(スタッフ)が製作した方(ドイツの測定機器メーカーに勤める工学博士)を取材して執筆したものと思われます.Märklin magazineは欧州の一鉄道模型メーカーであるMärklin 社が発行する雑誌で,いわばMärklin 社の宣伝誌です.ただ,私はドイツに居住したことはないものの,出張のおりに都市部の書店の雑誌コーナーではよく見かけた雑誌で,一般にも販売されている雑誌でのようです.私は今まで海外の模型人が日本の鉄道模型の楽しみ方をどのように感じているかについての文章に触れる機会はありませんでしたが,その正確性はともかく,この記事は少なくとも欧州を代表する鉄道模型メーカーが日本の鉄道模型ファン(メーカーからの観点で言えば日本の鉄道模型市場)をどのように見ているかについての一つの参考となるように感じましたので今回紹介してみたいと思った次第です.
何故spare bed roomに設置したレイアウトと日本が関係あるかというと,それは氏が仕事でたびたび訪れる日本で知った秋葉原のホテルの”Train room”から着想したためのようです.
記事の中で日本の鉄道模型の楽しみ方についての言及もあります.その内容は「日本は”少なくとも”鉄道模型という趣味はドイツと同じくらいポピュラーな趣味であり,多くの博物館(大宮の交通博物館,京都の鉄道鉄道博物館,横浜の原鉄道博物館)には大きなレイアウトがある」ということを述べる一方,「日本人のアパート(和製英語のマンション?)では彼らが模型を楽しむスペースはドイツに比較して圧倒的に少ない(much less space in their apartments than we do in Germany)」ため「彼らが”home Layout”が製作できる機会は少なく,そのため日本のファンは車両の収集のみを行ない,列車を走らせる場合には料金を払って専門店のレイアウトで車両を走らせている」というものです.この内容は日本の鉄道模型の楽しみ方を少し表明的に捉え,両国の楽しみ方の違いを強調し過ぎているとも思いますが,氏はレンタルレイアウトで料金を払って車両の運転を楽しむ鉄道模型ファンの究極の姿がホテルの”Train room”のレイアウトで車両を運転して楽しむファンであると感じたのかもわかりません.上述の日本は”少なくとも”鉄道模型という趣味はドイツと同じくらいポピュラーな趣味であるという文章(the model railroad hobby is at least as popular as it iis in Germany)の中の”at least”という語句の中には作者(雑誌編集者?)が日本の鉄道模型の楽しみ方と自身の楽しみ方に距離を置いているようにも感じます.また記事の中にhome layoutという言葉が出てきますが,氏がGuest roomに設置したレイアウトは”his own private layout”と記載され,彼らの間では一般的な”home Layout”とは異質のものであるということも窺わせます(日本のレイアウトは模型クラブのレイアウト以外は圧倒的に後者が多いのではないかと思われます).Märklin社が拡販のために日本の鉄道模型市場(模型ファンの実態)をリサーチしたかどうかは全くわかりませんが,欧米のメーカーはもしかしたら何らかの調査を行ない時刻との鉄道模型の楽しみ方の違いをある程度認識しているのかもわかりません.

外国型と日本型の模型を楽しむ私は兼ねてからその楽しみ方には違いがあるということはよく感じるとところです.昨年は戦後間もなく創刊された機芸出版社発行の雑誌,「鉄道模型趣味」が通巻1000号を迎え,創刊号を含め初期の紙面がPDFファイルで公開されました.その中で主筆の山崎喜陽氏は戦前の国策にも利用された車両工作中心のModel Engineeringを脱却し,車両をレイアウトをトータルで楽しむModel railroaderになることを提唱していますが,現在でもどちらかというと車両工作と収集が主体であることは変わらないような気がします.そしてその最大の理由は上記の記事にもあるような日本の家屋のスペースの圧倒的な狭さではないかと思われます.かつて日本の家屋は諸外国から木と紙でできたウサギ小屋と言われたこともありますが,木と紙でできたというのはともかく,広さという意味では特に都市部(東京)においてはこの当時より悪化しているような気さえします.私が前回まで紹介したレイアウトセクション(組み立て式レイアウト?)による運転でも,現在の日本家屋は昔のように襖や障子を開ければ(外せば?)大きなスペースを確保することが困難であり,スペースという観点で昭和の時代より難しくなっているような気もします.一方,当時の雑誌記事を読んでいると記事は車両の製作記事と米国のレイアウト製作に対する細かい技法の説明が主体です.この時にもしModel railroaderになることを提唱した山崎氏と編集スタッフがこのスペースの圧倒的な不足に対し,組み立て式レイアウトという安易な解決手法に走らずに自ら雑誌の読者がスペース不足という困難な課題を克服してでも思わず製作してみたくなるような米国でいうところのDoor Size のPortable Layoutを製作し,読者に提示していれば多少事情が変わったと思ったのは私だけでしょうか.

また,最近読んだ社会学者の辻 泉氏が執筆した『鉄道少年たちの時代ー想像力の社会史ー (2018 勁草書房)』では昨今の日本のNゲージまで及ぶ車両の細密化について,日本の国鉄の分割民営化の影響を指摘しています.それによるとかつては日本の鉄道(趣味の主な対象である在来線)は当時の少年たちにとってまだ見ぬ地(戦前は「大陸」も含まれていたようです)への夢を与える「想像力のメディア」であったのに対し,国鉄分割民営化以降は彼らがその拠り所とした夜行列車の廃止等もあり鉄道(在来線)が全国を結ぶネットワークという地位を失ない単なる地域間の交通手段となった結果,少年たち(かつて少年だった大人)はかつての鉄道黄金?時代を想像し,当時を再現しようとして細密モデルを求めるようになり,さらにその想像の対象は個人によって異なるためそこにアニメを主体とする「オタク文化」(コミケなどでみられる二次創作)との親和性が生まれたと解説しています.趣味の楽しみ方は人それぞれであり,オタク文化についても十分理解しているとは言えないため,私はそれについて何かコメントすることはできませんが,特急「こだま」に時代から現在に至る国鉄(JR)の変化を自ら体験した私にとって実物の鉄道の質的な変化は氏の指摘するとおりであると感じました,それに比較すると欧米の鉄道は現在でも当時からの「地位」はあまり変化しておらず(米国は貨物輸送という意味で)欧州のターミナル駅には各国から乗り入れる各国の「フラッグシップトレイン」が見られ,食堂車や寝台車も健在です.もしかしたら私が外国の鉄道に興味を持ったのはそのせいかもわかりません.欧米で鉄道車両は”coach”とか”carridge”という語句で呼ばれることがありますが,この言葉は馬車に由来しているという意味では鉄道は人々の間に根付いた「文化」であるということも感じます(そういう意味では自動車のセダンやクーペも馬車由来です).なお,この件についてはいずれ私の思うところをより詳細に述べたいと思っています.

一方記事に紹介されているレイアウトはベッドサイズの半分ほどのスペースのレイアウトですが,中央にターンターブルと扇形機関庫を配し,その扇形庫に留置した機関車を周回させる自動運転プログラムが組み込まれたまれたなかなか魅力的なレイアウトです.日本ではこの程度のスペースのレイアウとですとまず情景を細かく作り込むことに重点を置くと思われますが,こここにも鉄道模型の楽しみ方の違いが現れているような気がします.私が製作してこのブログでも紹介した自動運転レイアウト”終着駅Großfurra”はどちらかというと日本のレイアウトに近く,自動運転も単純な往復運転ですが,この記事を読んでいつかはこのようなレイアウトも製作してみたいと思った次第です.

現在私は以前紹介したZゲージレイアウトの全面的な改修(線路やストラクチャーを再使用しての新作)に取り組んでいます.いずれ形になってきたらまた紹介したいと思っておりますが,下の写真はそのレイアウト上で比較したHOゲージとZゲージの大きさの比較です.鉄道模型の縮尺の違いを車両単体で比較した写真はいろいろなメディアでよく目にしますがこのようなレイアウト上で大きさを比較するとレイアウト製作の場合のZゲージ(小スケール)のスペースの有利さが一目瞭然です.鉄道模型用に十分なスペースを確保できない日本の一般庶民が,幹線をイメージした固定レイアウトを製作しようとした場合に,その解決策は小ゲージの採用が一番手っ取り早いような気がします.

以上,Märklin Magazineの記事をきっかけに色々思うところを書いてしまいましたがあくまで個人の見解としてお読みいただければ幸いです.
最後までお読みいただきありがとうございました.































































































































