レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(2)

具体的な構想を始めるにあたり、まずはそのための前提となるレイアウトのサイズと線路配置に影響する分岐器の選定を行いますが今回ベースのサイズは今回1370㎜x300㎜としました。これは以前紹介したレイアウトセクション ”終着駅Großfurra”の上における最大の寸法です。一方、分岐器は将来DCC制御に対応するためには非選択式の分岐器を選ぶ必要がありますが、前回記載したように国内製の道床なし分岐器は旧篠原模型店製の選択式の製品しかありません。したがって製品をそのまま使用するとすると海外メーカーの製品を使用することとなります。そうすると比較的入手(個人輸入)が容易で使用できそうな製品は英国PECO社の製品とオーストリアのRoco社の製品になります。一般的に日本型の大型蒸機が通過できる分岐器の番数は#6程度と言われていますので、そのサイズで両社の製品を探すとPECO社では#5と#6、Roco社では#6と#8相当の分岐器がラインナップされています。PECO社の#5分岐器はスペック上分岐側のカーブは600㎜強ですので大型蒸機が通過できないことはないと思われますが、ここは余裕をとって#6を使用することとしました。このような狭い範囲の風景を再現するレイアウトでは、車両がいない時の線路の「実感」も大切なのであまり番数の小さい分岐器は使用を避けた方が賢明はないかと思います。このうちPECO社の製品はかつて機芸出版社が輸入総代理店として販売しており、カタログ上もCode83レールを使用したプロダクトラインはNMRA規格に適合していることが明確に謳われていまましたので機能的には問題ないと考え、このレール(Code 83)を使用することとしました。PECO社の分岐器にはフログのタイプがElectorofrog(選択式)、Insulfrog(選択式であるがFrog部分が絶縁されジャンパ線の追加で非選択式にする事が可能)とUnifrog(非選択式)がありますが、現在#6で入手できる製品はUnifrogのようですので、このタイプを選択することとしました。ちなみにこの分岐器のサイズのスペックは全長233㎜、frog angle 9.5deg、分岐側半径1092㎜です。なお、PECO社の分岐器は従来から切り替えた方向でロックされますが、この分岐器には従来ポイントレールとリードレール部の境界にあった関節がありません。両者は一体化してあり切り替え時のポイントレールの変位はレールの撓みで吸収しているようです。この構造であればレール側面を塗装する際、関節への塗料の回り込みを心配する必要はありません。PECO社の線路は発売されてから50年以上たちます。従来から発売されている製品の外観や構造ははあまり変わっていないように見えますが、DCCUnifrogの分岐器は比較的新しい製品で、改良が進んでいるようです。

ベースのサイズと分岐器の剪定が終わりましたのでいよいよ線路配置の検討を開始します。この検討には従来から使用しているRailmodeller Proというソフトを使用しました。この種のソフトで有名なのはWintrackですが、このソフトはその名の通りWindows専用ソフトであり、私が普段使用しているMACでは使用できません。そこでMAC対応のソフトをApp Storeで探した結果このソフトが見つかりましたので早速導入しました。機能は比較的限定されていますが線路配置を検討、作図するには充分で、欧米メーカーだけではなくShinoharaやKATO Unitrackのレールにも対応しています。使用を開始し7−8年経過していますが特にバグや安定性に問題はありません。私が使用したのはVer6.4.25ですがアップデートは現在でも行われているようです。最近発売されたMärklin社のCトラックの大型ダブルスリップもすでにリストに反映されています。

この作品のオマージュとなっている故なかお・ゆたか氏のレイアウトセクション”蒸気機関車のいる風景”は全長は1920㎜あり、機関区だけを再現したレイアウトセクションではなく、貨車の入れ替えも楽しめる線路配置となっていますが、今回のレイアウトセクションの長さはそれより短いため、今回は機関区部分のみのセクションとしました。一方私が以前製作した外国形の機関庫セクションは全長が1170㎜と短いため、機関区入り口の分岐器をベースの端部に配置しています。そのためこのレイアウトセクションでは機関区内で機関車を転線させるだけでも別の線路を接続することが必要で、運転のためにはレイアウトセクションを収納場所から出して線路を接続するという作業が必要でした(現在は引き上げ線を固定しその部分に別レイアウトを製作しましたので移動は不要となっています)。そのため、今回のレイアウトセクションでは機関区間の転線が別の線路を接続せずにできることをまず第一の条件としました。2線の機関庫をレイアウトセクション上に配置しようとすると線路配置が前作と似てくることは否めませんが、検討の結果最終的には以下のような下記のような線路配置とすることとしました。

今回採用した線路配置です
こちらは以前に製作した外国型の機関区セクションの線路配置です. ベースの全長が短いため機関区入り口の分岐器をベースの端部に配置しています. また機関庫キットに合わせて機関庫部分の線路間隔が広くなっています.

機関区入り口の分岐器をベースの端部から後退させた以外の前作との線路配置の相違点は全長が長いことを利用して右側の引き上げ線を長くとったことと引き上げ線に対向する留置線部分を2線に分岐したことです。前作では機関車の整備エリア(給炭場と給水スポート)は右側の引き込み線上設置していましたが、今回はスペースが前作に比較して長く、引き上げ線の長さを長くすることができますのでので整備エリアは右側の引き上げ線に配置することを想定して線路配置を決定しました。この機関区に配置する(レイアウト場で運転する)機関車は私が製作した比較的大型の蒸機(C 62,C 57,C 55,D51等)で、通常このクラスの蒸機が配置されている機関区はターンテーブルや扇形庫を備えていますが、今回はそのようなスペースはありません。したがってこのセクションはそれよりも小規模な機関区、あるいは機関区の一部を再現しているという想定にしています。実際の機関区でも整備エリアを機関車を2線の機関庫へ向かう線路上に設置する例はあまりないと思われます。今回のような配置にすれば入区してきた機関車は整備エリアに直接入線可能ですし、機関庫に留置されていた機関車は一度整備エリアに入線した後に直接出区していくことが可能です。またこの機関庫を扇形庫の付属的なものとみなして引き上げ線の際にターンテーブルと扇形庫が存在しているという「想定」も可能です。一方、引き上げ線と対向する左側の線路を2線に分岐したのは留置する機関車の数を増やすためと変化をつけるため片側に気動車の整備場(洗浄線と給油設備)を設けても良いかと思ったからです。また、引き上げ線と留置線はその他の線路とは並行に配置することを極力避けています。また機関庫の分岐も前作とは分岐方法を逆にして線路が輻輳する感じを極力避けています。これはこの機関庫が北海道の機関庫を想定しているため、少しでも機関区の敷地の広さを表現したかったことによります。加えて引き上げ線をカーブさせたことによりこの引き上げ線がさらに遠方のターンテーブルや扇形庫につながっているイメージができたのではないかと勝手に思っています。線路を並行に配置すれば幅はもう少し狭くできますが、今回は上記のようなことを考えて幅を決定しています。
なお、PECOのUnfrogタイプの分岐器はFrog部の無電区間が約30㎜ありますので手元にあるパワートラックを使用した気動車や小型機(C12)はフログ部分で停止してしまいます。そのためFrogには開通方向に応じて極性の異なる走行電流の供給が必要で、この辺りの配線が3線式やアナログ制御での選択式の分岐器を使用する場合に比較して少々複雑になります。また上記の配置図から分かるように右側の線路がベースより20㎜はみ出ていますが、これは機関区入り口の機関車の転線に使用する部分の線路の長さを確保するためです。実は線路配置を決定する際レイアウト全長が1350㎜以下になるように分岐器位置と留置線の長さを計算で決めて線路配置をソフトで作図し、その後ベース版のサイズを線路上に作図したのですが、そこで線路がはみ出てしまうことが判明しました。その原因はPECO社のWEB SITEに掲載されている寸法の誤りでした(2024.3現在)。PECO社のStreamline Code83の#6番分岐器の全長はWEB SITEでは223.5㎜と表示されていますが実際は233.5㎜です。なお、分岐器の説明文は左記の寸法ですがそこに表示されている型紙をダウンロードすると、そこには正しい寸法が記載されています。ソフトウエア上での形状はこちらの正しい寸法で表示(作図)されますので計算と作図結果に齟齬が生じてしまいました。どのように修正するかを検討しましたが、機関車の停止位置の自由度からは留置線の長さは極力長くすることが望ましく、将来自動運転を導入する時も停止位置のばらつきを考えれば留置線長さは長いに越したことはないため、今回は線路配置を変更せず、ベースを20㎜延長することで解決しました。そのため最終的なレイアウトの全長は1370㎜となっています。はみ出た部分の線路を短縮しなかったのは機関車の転線のための線路長を確保したかったためです。この部分の線路長は232㎜としていますが、これは下表に示すこのレイアウト上で運転する蒸機の最大軸距(先頭の車軸から後端の車軸までの長さ)の実測値で決定しました。C62の最大軸距は232㎜以上ありますが、このはみ出し分は分岐器の端面からポイントの長さ(約20㎜)でなんとか吸収しています。逆に言えばこの部分の線路長はそのくらいギリギリに設定している(スペース上せざるを得なかった)ということです。なお、日本の制式蒸機の下回りはやりすぎではないかと思うくらい標準化されていますので、これで国鉄のすべての機関車は転線可能ではないかと思われます(C59の戦後型の全長はC62より20㎜長いですが問題ないと思われます)。最大全長21.3m(車体長20800㎜、スケール寸法260㎜)の2エンジンの気動車も下記の最大軸距は16500㎜、スケール寸法206㎜程度のようですので問題ありません。

アナログ制御時の機関車留置用のブロック分けは下記のように行いました。機関車留置用のブロック数は8ブロックで赤い数字は各ブロックの長さを表します。

なお、PECO社のレールは#100、#83、#70のプロダクトラインがありますが、ご存知のように英国では軌間16.5㎜はOOゲージ(4㎜スケール・1/76) が採用する軌間でもあります。今回採用したCode83レール分岐器は枕木の間隔等も米国の仕様に合わせてあるという説明書きがあり、パッケージにも米国の鉄道を連想させるマークがついています。ソフトウエア上もCode83レールは ”PECO HO US(Code83)” という名称で表示表示されています。詳細は不明ですがCode100やCode70のプロダクトラインと枕木形状等を作り分けているのでしょうか。

余談ですが最近Märklinが英国のFlying Scotsmanの生誕100周年を記念したモデルを発売しましたが、発表段階でこのモデルの縮尺は1/87になるのか1/76になるのかがユーザーのフォーラム等で話題となっていました。結果は1/87で模型化されたようですが、欧州でも英国と大陸の鉄道模型の共存は議論の対象となるのでしょうか。
これで線路配置は決定しましたが、機関区セクションの場合はアッシュピットや機関庫のピット等ベースに線路を敷設する前にベースに加工が必要な部分があり、まずその位置を決めなくてはなりません。次回はその位置の決定も含め、ストラクチャーの配置構想について紹介したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(1)

前回の記事では私が初めて製作した日本型のストラクチャーである北海道タイプの機関庫を紹介しましたが、出来栄えはともかく実際に完成した機関庫を眺めていると日本型の蒸気機関車が活躍していた時代の機関区を再現したレイアウトの製作意欲が沸々と湧いてきました。ただ、そうは言っても冷静に考えると以前紹介したようなサウンドデコーダーを搭載した外国型の蒸機が走るレイアウト(セクション)を製作してDCC制御による自動運転の面白さを知ってしまいそれを楽しんでいる現在、日本型のレイアウトセクションの製作に着手しても線路を敷設してアナログ制御の運転時にブロックスイッチ操作が煩わしい「無音」の機関車の試運転が終了した後、果たして完成まで製作のモチベーションが維持できるかは正直不安です。ただ、そうは言ってもこのまま日本型の鉄道模型の製作を終わりにしてしまうことは少し寂しい気もします。私は仕事をリタイアして3年近くになりますが、思えば会社人生の中で「定年退職」を自分の問題として意識するようになったのは長年自身が関わってきたプロジェクトの後継プロジェクトの完了時期が自分の退職後に設定されたものが出てきた時だったように思います。期限が明確に決まっている会社人生とは異なり、私の人生の終わりはまだ先の話だとは思っているものの、これからの鉄道模型の楽しみ方において何か新しいことを始めるのであれば、それは「今」であるような気もします。また、海外に目を向ければDCC制御に対応できる「非選択式」の道床なし分岐器も製品化されていますのでこの分岐器を使用すれば大きなな改造なしに将来アナログ制御をDCC制御に変更することが可能です。日本形の車両で気軽に(外国型と同じ投資で)DCC制御が楽しめるのはいつになるかは全く予測がつきませんので、このような前提は多分に先送り的(楽観的?)であるような気もしますが、まずはその辺りのことはあまり深く考えず「とりあえず」レイアウトの構想を立て、製作を開始することにしました。

塗装前のD51とおっ街道タイプの機関庫. このD51で私の蒸気機関車キットの在庫は無くなりました.

思えば50年以上前に交通博物館で見たレイアウト(パフレットでの名称は模型鉄道パノラマ)に触発されて鉄道模型を始めて以来、私の頭の中にはいつかはレイアウトを製作したいという想いがありました。このブログで紹介してきた私がこれまで製作した機関車は客車(貨車)を含めた列車単位で製作してきたのもいつかはそれらを自分が製作したレイアウト上で走らせたいという想いがあったからです。

機関車とともに客車も製作したC62重連が牽引する急行ニセコ.

そしてその当時の私の憧れはTMS誌に掲載されていた故・荒崎良徳氏が製作した「雲龍寺鉄道祖山線」であり、レイアウトセクションは故・なかお・ゆたか氏が製作した「蒸気機関車のいる風景」でした。交通博物館の模型鉄道パノラマ(レイアウト)は博物館の展示施設でありそこに作家性は微塵も感じられませんが、雑誌で上記のレイアウト(セクション)の記事を読んだ時、これらの作品の中には実物の鉄道世界を再現し、その中で車両を運転して「遊ぶ」楽しさを味わうために、単純に実物の「模倣」ではなく、自分のイメージに基づき鉄道を取り巻く世界を再現するという観点での作家性が感じられ、ある意味衝撃を受けたことを現在でも覚えています。

TMS誌の表紙に掲載された故・なかお・ゆたか氏が製作した「蒸気機関車のいる風景」と荒崎良徳氏が製作した「雲龍寺鉄道祖山線」. 70年代のTMS誌には「蒸気機関車のいる風景」はなかお・ゆたか氏の執筆した記事には度々登場した.

そのためレイアウトを製作する際にはこれら作品が目標となります。しかし現状(将来も)、「雲龍寺鉄道祖山線」のような規模のレイアウトを製作するためのスペースの確保は将来も含めてまず不可能で、長編成列車の運転は諦めざるを得ませんが、実現性があるとすればそれは故 なかお・ゆたか氏が製作した”蒸気機関車のいる周辺”のようなレイアウトセクションです。そこで甚だ僭越ながら、今まで製作してきた蒸気機関車が活躍していた頃の機関区のレイアウトセクションを故・なかおゆたか氏製作の”蒸気機関車のいる周辺”のオマージュ作品として製作することとし、構想を開始した次第です。そして今後、このブログの中でその構想から製作の過程を紹介していきたいと思います。レイアウト(セクション)の製作は初めてではありませんが、今まで製作した外国型のレイアウトと異なり、製作対象がかつて身近であった日本の風景であるため、今まで製作した外国型レイアウトとは異なり、製作は実際に親しんだ心象風景の再現になります。そのためあまり細かいところこだわってしまうと完成がおぼつかなくなる恐れがありますし、だからといってあまり割り切って製作してしまうと完成後に不満な点が目立つことになり、その辺りのバランスをどのようにとりながらレイアウトをまとめていくかが今までの外国形レイアウトの製作に比較して難しいところではないかと思います。ただ、躊躇していてもことは進みませんのでまずは線路配置から構想を始めました。なお、このレイアウトは現在製作中であり、現在では一部のストラクチャーの基本部分の製作と線路の敷設までが終了していますので、今後数回にわたり構想から線路の敷設までを紹介したいと思います。なお、一度紹介した内容を後で修正したり、作業の進捗状況により更新が不定期(次の過程の紹介までに長い時間を要する)事があると思いますがその点は容赦ください。実際に完成までどのくらいの期間がかかるかは予測がつきませんが、なんとか完成までの過程を紹介できたらと考えております。

製作中のレイアウトセクションの近影


日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(4) -最終回 –

前回は屋根を取り付けたところまでを紹介しましたので、今回は屋根上に取り付ける煙出しと煙突の製作過程を紹介します。これらの部品を取り付ければ機関庫はひとまず完成となります。

完成した機関庫. この後の細部の仕上げはレイアウトに設置後に実施します.
辺りを暗くして照明を点灯すると内装がよく目立ちます. 照明の光には温かみがあり, LEDではなく電球を使用した効果はあったように感じます。

屋根の取り付けが終了したらまずその屋根に取り付ける煙出しを製作します。素材は妻面がケント紙とSTウッド、側面は0.5×6㎜の桧角棒です。煙出しはその名のとおり庫内の煙を逃すたの構造物でスリット状の構造をしているため、理屈でははスリットの間から内部が見え、照明光が漏れてくる場合があります。これは屋根の角度と見上げる位置に依存し、スリットの傾き角と屋根の傾き角が同一の場合、どの範囲から内部が見えるかはスリットの間隔とスリット部材(角棒)の幅に依存します。その漏れてくる光を実際に見たときの印象を一言で言うと「見えるか見えないかは微妙」と言う様な感じですので、製作にあたっては「普通に見た時には光が漏れず、ある角度から見るとうっすら光が漏れてくる」状態になるように角度、スリット幅、使用する材料の幅を調整しました。
製作はまず所定長さに切断した角棒に同一の角棒から製作した0.5㎜厚のスペーサーを挟みながら妻板の外形に合わせて積層していきます。スペーサーは外観から見えないように少し奥にずらして接着します。この接着は木工用ボンドを使用しました。このような細かい作業は瞬間接着剤を使用した方がやり易いようにも思えますが、瞬間的に固着すると言う意味では使いにくい面もあり、手についてしまうと手も接着対象物に接着されてしまいます。その点木工用ボンドはその名のとおり?木材への浸透性が高く、密着させればすぐに剥がれない程度には接着できますのば木工用ボンドの方が使い勝手は良いとのではないかと思います。

妻板との接着作業を4箇所で行ない、大まかな形状が完成したところが下の写真です。製作途中では非常に保持がし難く色々な方向に捩れますが、とにかく妻板部分で角棒を正しい位置に接着することに注力します。

接着剤が乾燥したら、縦桟を設ける部分に角材から切り出したスペーサーを挟んで上下の部材の間隔を一定にします。これで全体の剛性がかなり向上します。

完成後、妻板部には羽目板をSTウッドにより表現した妻板を貼り重ねます。

この後、スペーサーを挟んだ位置にSTウッド製の縦桟を取り付けて塗装をします。

煙出し部には下の写真のような隙間がありますが屋根に取り付けるとこの隙間は通常使用見る位置からはこのようには見えません。

塗装が終了したら屋根に取り付けて、屋根を取り付ければ完成です。屋根は他の部分と同一の素材を使用し、頂部にはEvergreen社の帯材による屋根押さえを取り付けました。

下から見上げるるとこのスリットからわずかに光が漏れてきます。組立てや取り付け時のわずかな歪みにより全体から均一に光が漏れるわけではありませんがそれが却って実感的なような気がします。

次に煙突を製作します。本体は外径6㎜、肉厚約1㎜のプラ製パイプを使用しました。このパイプは真鍮線を購入した際のケースとなっていたもので材質は不明ですが硬さは柔らかくカッターナイフでの切断が可能です。まずは一端を屋根の角度に合わせて切断します。

反対側の断面(煙突先端部)には直径方向に2箇所、直径0.3㎜の穴を開けてコの字型の燐青銅線を取り付けます。この部品が笠の支持部材となります。

笠の製作法はいろいろ悩んだのですが、結局ケント紙を円形に切り抜き切り欠きを設けたのち切り欠き部を接着するという非常に単純かつ簡単な方法に落ち着きました。

切り欠き部は瞬間接着剤で接着し、その後エポキシ系接着剤で固定し、溶きパテを塗布して乾燥後形状を整えます。

煙突本体にはラベル紙から製作したバンドを巻きます。バンドには円周長さを3等分した位置にマーキングをして貼り付け後マーキングした部分に直径0.3ミリの穴を開けておきます。屋根に取り付け後この部分に支持ワイヤを取り付けます。

煙突の部品の完成した写真です。1本だけバンドの取り付け位置が違うためこの後修正しました。

傘の取り付けは合成ゴム系の接着剤で行いました。塗装は本体はグレー、傘は黒で塗装します。使用したのはHumbrolの#27(Sea Gray(MATT))と#33(Black(MATT))です。

傘の取り付けは合成ゴム系の接着剤で行いました。あまり強固に接着すると万一触れた時に脱落したり傘自体が破損したり衝撃で取れたりししますので固着後も剛性の弱い接着時を使用しています。完成したら煙突を屋根に取り付け、固定ワイヤーを張って完成です。ワイヤーは0.25㎜の燐青銅線を使用しました。このワイヤーは屋根に直径0.3㎜の穴を開けて固定します。

この部品の取り付けが終わるとこの機関庫はひとまず完成です。私にとって、このような日本型のストラクチャーは今回が初めての製作でしたが、思ったよりもスムーズに製作することができました。費用もパーツが少ないせいか¥3,000程度で製作できたのではないかと思います。細部の仕上げはレイアウトに配置してからになりますがそのレイアウトはまだはっきりした構想も決まっておらず、これから考え始めなくてはなりません。ただ、この機関庫の完成によりその構想が一歩進んだような気もします。

この規模の機関庫には中型機が似合うような気がしますが機関庫の屋根の傾斜がきつく、全体的に大きく見えますので大型機が入庫を置いてもそれほど違和感はありません。
庫内に佇むC12. DCC制御であれば機関車のライトを点灯させることもできるのですが・・・。

これで私が製作した北海道タイプの機関庫の紹介記事を終わります。最後までお読みいただきありがとうございました。

日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(3)

前回は機関庫の主要部分(構造体)となる側壁と妻板の製作過程を紹介しましたが、今回はそれらの組み立てと屋根の取り付けまでを説明したいと思います。

組み立ての終わった側壁と妻板

組み立て前に妻板に取り付ける部材について説明します。最初は妻板の面取り部です。この部分は最初に妻板のベースとなるイラストボードを切り出す際にそこにも設けていましたが、その目的は機関庫の入り口と機関区の隙間を確認するためでした。入り口は断面に桧角棒を接着しますので下見板取り付け前に大きさを各方向に1㎜拡大し、その際にこの面取り部も切り落とします。そのため、面取り部は別部品として新たに製作する必要があります。この部品は3角形に切り出した厚さ約0.5㎜のケント紙にSTウッド製の下見板を接着し、断面に2×1㎜の桧角棒を接着したものです。下見板は幅1㎜としましたが、幅が狭いため貼りにくく、貼り付けの際の乱れも生じやすいため1㎜幅に切り込みを入れた櫛状のSTウッドをベースとなるケント紙に貼り付けた後、STウッドを外形に合わせて切断しました。妻板への取り付け時は下見板の方向を縦方向として変化をつけてあります。

入り口の扉も同様の方法で製作します。外壁に対して変化をつけるためこちらは下見板の方向を斜め45度として貼り付けました。ただ、扉に面取り部があることを考えると下見板の角度は写真と逆の方が適切であった気がします。こちらも外形に合わせてSTウッドを切断した後、STウッド製の横桟を数本追加し、断面に2×1㎜の桧角棒を接着してあります。

塗装前に完成した面取り部の部材を妻板入り口角部に取り付け、入り口扉を入り口に並べたところです。この後扉も他の部品とと同じ方法で塗装を行ないます。

続いて屋根部の小屋組みを製作します。材料は2×2ミリの檜角棒で、まず屋根の形状に合わせた型紙を用いて角棒を切断し、型紙を治具として木工用ボンドで接着します。

屋根の角度が決まったらその下部に2×2㎜の桧角材を切断した部材を接着していきます。外からは目立ちにくいところですので接着時の多少の隙間は許容しました。切断はカッターナイフで行いますが3×3㎜の桧角棒と比較すると2×2㎜の角棒の切断は容易に行なえます。

下部の柱は長めに製作し、取り付け時に長さを調整できるようにしています。ここまでの組み立ては木工用ボンドを用いましたが、形状に問題がないことを確認したら接合部に瞬間接着剤を流し、再度確認の上さらにエポキシ系接着剤を盛ってあります。

入り口のヒンジは洋白線と割りピンで簡単に製作しました。今のところレイアウト上での開閉は行わない予定ですのでヒンジ部はレイアウト(ベース板)に取り付け後に行いたいと考えております。なお、外国型セクションに設置したVollmer製の機関庫は入庫した機関車が機関庫の終端部に設けられた板を押すと扉が開閉する機構が組み込まれていましたが、運転中に使用したことは殆んどなく、機構は取り外してしまいました。ただ、自動運転で動くレイアウトを眺めていると、レイアウト上にこの様な車両以外の動きがあると面白くなるという気もします。

これらの部品の製作が終了したら側壁の組み立て作業に入ります。まず建物の横桟となる部材を2×2㎜の桧角棒より製作し、断面の中央部に0.5㎜の穴を開け、そこに真鍮線を差し込んで瞬間接着剤で固定します。

側壁上部に取り付けた2×2㎜の桧角棒の対応する位置にも0.5㎜の穴を開け、そこに横桟を差し込んで取り付けていきます。固定は木工用ボンドで行ないます。なお、側壁内側のSTウッドを貼っていない部分(塗壁とした部分)は組み立て前にHumbrol製ののエナメル塗料(#31 Slate Gray)で塗装しました。

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日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(2)

前回、構想と制作の準部について紹介しましたが、今回からは私が行った具体的な制作過程を紹介していきます。まずは機関庫の壁面と妻板の製作です。

今回は機関庫壁面の制作過程を紹介します。壁面のベースには厚さ1㎜のイラストボードを使用しました。イラストボードは表面の用紙の種類によって価格が異なるようですが、今回は何かを描くわけではないので一番安いもので大丈夫です。なお、厚さ1㎜と謳われていても実際の厚さは1.2㎜程度ありますが特に影響はありません。作例ではA4サイズを3枚使用しています。下見板はエコーモデル製のSTウッドを使用します。

具体的な製作手順を紹介する前にまず、側壁の構造をイラストで説明します。下の図は下見板を除いた建物の側壁の外側の構造です。前述のように構造のベースとなるのは1㎜厚のイラストボードです。使用する窓枠はエコーモデル製のパーツ(No.243)です。まず側壁のイラストボードに窓枠の外形寸法の穴を開け、それに厚さ約0.4㎜のケント紙を貼り重ね、窓の開口部の約0.5㎜内側に罫書き線を入れて切り抜きます。この段差が透明プラ板と窓枠をはめ込んで固定する際のストッパー兼接着部となります(窓枠とプラ板の固定は塗装後となります)。また、窓の外周には1㎜厚のSTウッドを帯状に切断した外枠を取り付けます。1㎜厚のSTウッドは現在市販されていないようですが私は以前購入した手持ちのものを使用しています。ただ、1㎜厚のSTウッドの切断面はボール紙ですので桧角棒の方が良いかもわかりませんただ完成時すると断面は殆んど見えません。

下図は内側の構造です。まず下端に3×3の桧角棒を接着し、次に窓間に柱として2×2の桧角棒を接着後、上端にも2×2の桧角棒を接着します。その後窓下の腰部にイラストボードとケント紙を貼り重ねた部材を柱と同一面になるように厚さを調整して接着したのち、羽目板の表現として縦方向に幅2.5㎜で筋をつけた厚さ0.3㎜のSTウッドを貼り付けます。窓の周りは窓を避けて厚さ1㎜厚のSTウッドを貼り付け、窓の周囲に0.5×1の桧角材による窓枠を接着します。なお、こちらは羽目板の表現として横方向に筋を入れて羽目板を表現し、腰部と方向を変えることによりアクセントをつけています。

では実際の手順を主に写真で説明します。

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日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(1)

前回のD51の紹介記事に記載しましたが、このD51をもって私の手元にある蒸気機関車キットは底をつきました。近年はこのような加工のベースとなる蒸気機関車のキットは殆んど市販されておりません。現在販売されているキットは外国製のDCC制御の機関車であれば数両購入できる高価なものばかりです。これらのキットは言わば接着剤の代わりにハンダを使用するプラモデルのようなもので、そのまま組み立てれば所謂細密機が完成しますが、各部のディテールの表現方法(レベル)を考えそれに応じた製作方法を考えるような楽しみが味わえないような気がして、なかなか食指が動きません。この傾向は電車等のキットの傾向も同様で、価格も後日製作することを考えて取り敢えず買っておくというようなレベルではありません。DCC制御による運転の楽しさを知ってしまった現在、正直日本型車両の製作はもう終わりにしようかなという気もしています。そうはいってもこのまま長年楽しんで来た日本型鉄道模型をやめてしまうのも寂しいですので、将来外国型モデルと同等の価格帯の日本型のDCC搭載機が発売されることを期待して、この機会にかねてからのもう一つの夢であったなかお・ゆたか氏製作の”日本型の機関区のレイアウトセクション、”蒸気機関車のいる周辺”のようなレイアウトセクションを作成してみようかと思い、検討を開始しました。その中で、まずはその中心となる機関庫の製作をしてみることとしました。

屋根を除いて基本部分が完成した機関庫

私は今まで日本型の建造物(ストラアクチャー)の製作経験は殆んどありません。今まで私は外国型のZゲージ、HOゲージのレイアウト(セクション)を製作してきましたが、一部を除きストラクチャーは欧州製のプラキットを使用しています。かつて日本ではストラクチャーキットは殆んど発売されておらず、それがレイアウト製作の障害になっているというようなことが言われていましたが、最近ではレーザーカットによる加工ができるようになったせいか市販の建造物キットも多く見かけるようになりました。ただ、ストラクチャーのプラキットを使用してレイアウトを製作した経験からいうと、既成の建物を使用してレイアウト(セクション)を作成する場合にはそれらを使用して自身のレイアウト(セクション)の個性をいかに出すかが課題になるような気がします。特にレイアウトが小型になる程建物がレイアウト全体のイメージを左右します。そのため私の製作した自動運転レイアウト “終着駅Großfurra” では建造物は全て自作しました。一方、今回は日本型のレイアウトセクションですので、そこには昔の自身の体験に基づく『心象風景」を再現したくなります。私が蒸気機関車のいる風景を体験したのは、その末期で決して日常的に見慣れた風景ではなかったのですが、そのような時代を知る者にとっては市販の建造物キットを使用することには抵抗があり、建物は自作したくなります。幸いなことに蒸気機関車時代の日本の建造物は、欧州の建造物に比較すれば構造が単純である(装飾があまりない)ため。手間さえかければペーパー車体を製作する要領で自作できそうな気がします。そこで、レイアウトには自分がイメージした建造物を配置することとして、まず機関庫を製作してみることとしました。
その構想ですが、北海道仕様の機関車が集う機関区ですので、機関庫は「北海道タイプ」の機関庫としたいところです。ただ、私が製作したような幹線用急客機が配置されている機関庫はコンクリート造りの扇形庫や大型の機関庫が多く、それらには一目でわかるような北海道に特徴的な形態というものはあまりないようです。ただ、機関支区や駐泊所等の木造の機関庫や大きな機関区に残っている機関庫の中には北海道に特徴的な機関庫が見られるものがあります。それらの特徴は一言で言えば「アメリカンタイプ」の機関庫です。
初期の義経号や弁慶号からわかるように、北海道の鉄道は本州とは異なりアメリカの技術を導入して敷設されましたが、車両だけではなく建造物にもその影響が見られます。この辺りの解説はTMS1970年7月号に掲載された河田耕一支の解説記事”原野の鉄道”等の記事があります。この記事には標茶の駐泊所の写真が掲載されていますが、下見板貼りで縁取りのある縦長窓はアメリカの建造物の特徴そのままです。さらに積雪地のせいか入口は扉付きで屋根の傾斜が強く、屋根からの落雪を考慮したせいかその屋根が張り出し部と一体になっていること、屋根はトタン葺きですが積雪を考慮して比較的強固な構造となっている(波板を使用したものではない)のも北海道のこのタイプの機関庫に見られる特徴ではないかと思われます。残念ながら自身で撮影した写真はありませんでしたが、機関庫の製作にあたってはこのイメージで構想をすることとしました。

構想にあたって参考にした写真(TMS1970年7月号の記事より)

以前読んだ本(ローランド・エノス著・水谷淳氏訳:The Age of Wood(NHK出版:2021)によると米国の鉄道は北米大陸の豊富な森林資源を利用して構造物を作っていたようです。言われてみればアメリカの鉄道にはティンバートレッスルがよく使用されており、米国のレイアウトにもよく登場しますし、札幌ー小樽間にあったティンバートレッスル(野幌川橋梁)の写真も有名ですが欧州の鉄道では殆ど(全く?)見かけません。明治期の北海道も米国同様森林資源は豊富であったと思われますので、鉄道施設も木材を使用した米国仕様で建設されたことは容易に想像がつきます。かなり前になりますが、外国では日本の住宅は兎小屋のように狭く、紙と木でできているといわれてるという報道が話題となりましたが、兎小屋云々はともかく、現在でも米国の一般住宅は木造住宅の比率は高いのではないかと思われます。下記は最近のModel Railroade誌に掲載されていた蒸気機関車時代の建物の製作記事ですが、北海道の機関庫もまさにこのようなタイプですし、観光地で所謂「洋館」と言われる建物にもこのタイプは多くあります。

Model Railroarder誌のストラクチャー製作記事

製作にあたってはまずは構想を図面化します。とは言ってもプロトタイプの各部の寸法は不明ですし、たとえわかってもその寸法をそのまま縮小しても実感的な(イメージどおりの)建物ができるとは限りませんのでまず建物の基本寸法を実物にはとらわれずに決定する必要があります。この辺りが車両工作とは異なるところであり、また面白さであるような気がします。日本家屋は基本単位として”1間”という単位がありますが、そもそもこのような建物にこの基本寸法の概念があるのかもわかりません。以前製作したドイツの駅舎は寸法が全く不明であったため写真から割り出して寸法を決定しましたが、今回も日本の建物ではありますが手法としては全く同じ手法が必要です。ただ、機関庫は車両が出入りする建築物ですのでまず線路間隔を決めて車両の幅、高さとの関係を見ながら決めた入り口の大きさが基準となりますので、寸法の決定は思ったより簡単であったような気がします。なお、製作にあたり参考としたのはレイアウトテクニックに掲載されている河田耕一氏の機関庫をはじめとしたストラクチャーの製作法、荒崎良徳氏の日本型建造物の製作記事です。建造物の製作法はModel Railroader誌には時々掲載され、図面も掲載されている記事も多いですが、最近のTMS誌には殆んど掲載されません。私がこの手の作業する場合の情報は殆んど1970年代のTMS誌の記事と上記のレイアウトテクニック等のTMS特集シリーズを参考にしますが、最近のファンの方は何を参考として製作しているのかがちょっと気になります。

Model Railroarder誌に掲載されているストラクチャーの図面と荒崎良徳氏執筆の日本型建造物の製作記事(レイアウトテクニックより)
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模型車両の製作:珊瑚模型店製D51の組み立てと加工(7) :D51の組み立てを終えて思うこと

このブログでも紹介ししているように私は1990年頃に車両製作(日本型の鉄道模型)を離れ、その後約30年間、外国型鉄道模型のレイアウト製作をしていましたが、そして今回、久しぶりに蒸機バラキットの細密化加工を行ないました。何せ久しぶりのことですので色々苦労はしましたが、日々少しずつ組み上がっていくモデルを見るのは楽しく、楽しい時間を過ごすことができました。実はこのD51のキットが私の手元にある最後のキットでした。塗装を残してこのキットの組み立てを終了し、これを機に今まで製作してきた機関車を含め、これらの機関車でこれから何を楽しもうかと考えたのがこの記事を書くきっかけでした。なお、以下に記載することはあくまで私の私見ですので、その点、ご了解ください。

私は小学生の頃に鉄道模型を始めてから15年ほどたった1980年から1990年ごろにかけて、蒸気機関車のキット加工を行なっていましたが、車両製作の目的(動機)は ”蒸気機関車が配置されている機関区のレイアウトセクションを製作し、そこで自分が製作した車両を運転しながらじっくり眺めてみたい”ということであったように思います。一方、機関車だけでなく客車も同時に製作していたのは、いずれは(ローカル線ではない)列車が走るレイアウトを製作してみたいという思いがあったからです。このうち、蒸気機関車の機関区セクションの具体的イメージは下記の写真にあるなかお・ゆたか氏製作のレイアウトセクション”蒸気機関車のいる周辺”でした。

機芸出版社発行の”レイアウトテクニック”に収録されているなかお・ゆたか氏製作のレイアウトセクション”蒸気機関車のいる周辺”

私が当時製作した蒸機を一部を除き特定ナンバーにしなかったのはいかにもありそうな機関区の風景を再現して見たかったからです。晩年の蒸気機関車に形態は各地域ごとにバラエティに富んでおりましたが、その中には形態や装備に特徴(美しさ)がある「有名機」というものが存在しました。そしてそれらは鉄道雑誌等でよく話題となっており、模型のプロトタイプにもなっていました。ただ当時、それらが配置されていた機関区には当然「普通」の機体も稼働していたわけで、各地の有名機を製作し、レイアウトセクション上に集めてもそれは機関区の日常風景を再現したレイアウトセクションとはならず、単なる車両展示台になってしまいます。私が一部(C62)を除き、特定ナンバーではない機体を、異なる形式間でもある程度共通な装備(特徴)を持つ北海道仕様で製作してきたのは、私がレイアウトセクションで目指すのはは展示台ではなく、機関車が働くいかにもありそうな日常風景をその機関区がある地域のイメージも含めて再現したいという思いがあったからです。
その後私が車両製作から離れて外国型レイアウト製作に転向した経緯は”When is your realism level good enough?:車両製作から外国型Zゲージレイアウト製作の決断まで”に記載したとおりです。そして、その中でZゲージレイアウトのがほぼ完成した時、今まで慣れ親しんだサイズのレイアウトを製作して外国型の車両を走らせてみたいと思い、制作したレイアウトセクションが以前このブログで紹介した”ALTENHOF機関区”です。そして、そのテーマとして実際に訪れたことのない外国の機関区セクションを製作しようと決めた背景はやはり、上記の”蒸気機関車のいる周辺”の影響が大きかったと思います。その構想の中で、Zゲージレイアウトで運転中のリバース区間のスイッチ切り替えや複数列車の制御のためのキャブの切り替えの為のスイッチ操作が思ったより煩わしい作業だと感じていた私は、HOゲージの機関区セクション製作の際、”蒸気機関車のいる周辺”では機関車の留置等で2m足らずのセクションに15箇所のギャップが切ってあるという記事を読み、デジタル制御であれば配線も簡単で自由度の高い運転ができると考え、デジタル制御を採用することとし製作を開始しました。そして完成したレイアウトで機関車の運転を楽しんでおりました。

このレイアウトセクションが完成した頃、サウンド機能のついた蒸気機関車はまだ製品化されていませんでした

そんな時、ふと思い立って今まで私が制作した日本型の車両をこのレイアウト上に置いてみました。それが下の写真です。

外国型のレイアウトセクション上に置かれた私が製作した日本型蒸気機関車
機関区横の引き込み線に停車中の9600
機関庫前に停車するC57とC55. この頃D51のバラキット組立前.
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模型車両の製作:珊瑚模型店製D51の組み立てと加工(6) :下回りの加工

前回までにテンダーを含む機関車の上回りについての加工方法の説明は終わりましたので今回は下回り、特にエンジン側の動輪周りの加工内容を紹介したいと思います。下回りの加工内容は概ね以下のとおりです。
1. 車輪の黒染め
2. 加減リンクの交換
3. コンビネーションレバーの両端のフォーク化
4. ブレーキテコおよびブレーキロッドの追加
5. 砂撒管の追加
では、各部について順を追って説明していきたいと思います。
6−1 車輪の黒染め
黒染めに使用する黒染め液はいさみや・ロコワークスが発売している常温黒染め液で、黒染めにはもう数十年この製品を使用し続けています。今まで、この黒染め液は客車や電車の台車の車輪に使用しており、蒸気機関車の動輪はラッカー塗装しておりましたので、今回、蒸気機関車の動輪に使用するのは初めてとなります。まず車輪を洗浄します。私は通常は車輪を含め、塗装前の処理としてクリームクレンザーで磨き洗いし、その後中性洗剤で洗浄をした後にプライマーを吹き付けていますが、動輪については外観上、万一色ムラが出るとが目立ちますので、今回はさらに脱脂を確実とするため、ラッカーシンナーで脱脂を行いました。その後説明書に従い、筆で黒染め液を車輪に塗りつけていきます。この時、理由はわからないのですが、ニッケルメッキした車輪では、そのまま黒く変色していくものと一度メッキが剥がれたような状態になり、その後黒く変色していくものがあります。特に後者の現象が起こった場合、最初なかなか黒変せず、黒変しても脱落しやすい状況が起こり、少し焦るのですが、そのまま根気よく塗布を繰り返すといずれ皮膜が形成されます。仕上がりはこの様な現象が起きなかったものに比較してもあまり変わらない様です。過去の経験も含め、車輪のメーカーによってこの現象が起きやすいメーカーと置きにくいメーカーがあるような気もしますが、詳細は不明です。

黒染めした動輪とバルブギヤー

6-2 加減リンクの交換
加減リンクはロストワックスパーツに交換します。エキセントリックロッドはキットのものを利用します。キットの加減リンクとエキセントリックロッドは段付きピンのかしめで固定されていますので、まず加減リンク裏側の段付きピンがかしめられている部分を軽くヤスリ、段付きピンを引き抜いた後そのままロストワックス製の加減リンクの穴に嵌め込んで少量のハンダで固定します。ただ、ロスト製の加減リンクは真鍮地肌のままとなっています。に今まで製作した作品ではハンダメッキにより着色しており、今回もそうしたいと考えておりますが、手元にソルダーウイックがなかったため未実施です。半田メッキはソルダーウイック入手後に行いたいと考えています。なお、この製品のリフティングリンク、リフィティングアーム、ウエイトシャフトはロストワックス製のモーションプレートと一体に造形されており、ラジアスロッドの後端は加減リンクの回転中心までしかなく、加減リンクの回転中心のネジとともじめする構造になっていますのでラジアスロッドはニュートラル位置で固定されてしまいます。今回はそのままと素てありますが、この部分も今後塗装までに修正が必要で、その際、ラジアスロッドは新作せざるを得ないと考えています。

コンビネーションレバーは先端をフォーク状に加工しました

6-3. コンビネーションレバー両端のフォーク化
コンビネーションレバーの上下、ラジアルロッドとユニオンリンクが接続される部分はフォーク状の形状となり、各リンクを両側から抱いて支持する構造となっていますので、コンビネーションレバーに上下をフォーク状にする加工を行います。今回は所定長さに切断した幅2㎜厚さ0.3㎜の帯板をキットのコンビネーションレバーに貼り重ね(ハンダ付けは中央部のみ)その後バイスに挟んで貼り重ねた板に外形をやすりでパーツと同形状に仕上げるという方法で製作しました。外形が完成したら上下にラジアルロッド、バルブスピンドルとユニオンリンクを挟んで0.5㎜の洋白線を通して固定しました。なお、コンブネーションレバーには、上部の結構目立つ位置にボルトが2本ついているのですが、今回加工を忘れてていることに気がつきました。他の作品では0.3㎜の洋白線の植え込みで表現しています。この部分は塗装前に分解した際に追加工したいと考えております。

加工部分の関節には0.5㎜の洋白線を使用しました
加工中のコンビネーションレバーです

6-4. ブレーキテコ、ブレーキロッドおよび砂撒管の追加
これらの部品は動輪押さえ版状に取り付けるブレーキシューを取り付ける部品に追加します。まずブレーキてこを両側のブレーキシュー間に渡す形で製作しますが、外観は裏返さなければ見えず、目的はブレーキロッドの保持だけですので、洋白帯板を使用し、あまり形状にはこだわらずに製作しました。帯板(エッチングパーツの縁)を所定長さに切断し、角部を少しやすりで落とした形状です。そこにブレーキロッドを取り付けますが、D型機は前2組と後ろ2組の動輪に別れていますので注意が必要です。ロッドの両端は短い方が手元にあったエコーモデルのパーツ、長い方が真鍮帯板からの自作です。砂撒管は0.5㎜に真鍮線から製作し、ブレーキシュー取付板に取り付けてあります。このパーツは曲がりやすく、変形すると車輪やレールに接触してショートの原因となりますので注意が必要です。現在、ロストワックス製のブレーキシューも各社から発売されていますが、是非砂撒管も一体に表現したパーツを発売して欲しいところです。なお、キャブ下の配管にあるレール水撒管の水撒口は第1動輪の前方にあるようですが、写真を見ても存在がわかりませんでしたので省略しました。

第一動輪のブレーキてことブレーキロッドです
D型機のブレーキロッドは2組に分割されています

以上で下回りの加工は終了です。最後にモーターを取り付け、試運転を行い問題ないことを確認します。黒染めした動輪は踏面に「カス」?が残っているせいか最初は集電不良を起こしますが、数分間レール状でスリップ運転をすると問題なく集電できる様になります。走行性に問題ないことが確認されたら、塗装前の細かい修正作業を残してひとまず完成となります。今後、今回掲載した写真で気付いた部分等を修正し、季節の良くなった頃に塗装したいと考えております。よく「アイデアは一晩寝かせ」ということが言われます。これは少なくとも私の今までの経験の中では100%正解です。同様のことは今回のキット加工にも言えることで、製作した部位を時間をおいて改めて眺めると形状のエラー、部品の歪み等に気づくことがあります。今後、塗装まではこのチェックを続け、修正を重ねていきたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。

模型車両の製作:珊瑚模型店製D51の組み立てと加工(5) :テンダーの加工

前回までで、エンジン側の各部の加工内容の説明が終わりましたので、今回はテンダーの加工内容を紹介します。
5-1 テンダー本体の組み立て
テンダーは本体と床板(台枠)の2体構造となっていますが、組み立て前に加工が必要な部分はなく、組み立ては説説明書どおりに行いました。台車は台車枠に枕梁を取り付けるためのブロックをハンダ付けしますが、取付時にハンダが枕梁取付用のブロックのタップ部分に流れ込んでしまってもネジ部にタップを通して修正することはできませんので台車枠とブロックを十分加熱して少量のハンダを確実に流して固定することが必要です。これら本体の組み立てが終了したらディテーリング加工に移ります。

5-1 テンダー前妻
テンダー前妻には給水関係の機器、ブレーキ関係の機器、ATS関連の機器を追加します、このうちATS関連の機器を含む電気関係の配管は前妻から側面にわたって取り付けられますので後ほどまとめて説明します。
電気関係以外の機器として前妻に取り付けるのはテンダーからエンジンへの給水管とそのコック、手ブレーキ装置等ですが、これらはキットのパーツを使用しています。水面計は中央寄りにに取り付けられているものが多いようですが、たまたま水面計のロストワックスパーツが余っており、”蒸気機関車の角度”のD51の写真を見るとそのパーツと同一形状の水面計が取り付けられているテンダーもあるようなので水面計はこのパーツを取り付けました。角部の手すりは直径0.4㎜の真鍮線を使用しています。炭庫の扉前には火掻き棒とそれを置くためのブラケットを追加しましたが、このブラケットはキットに付属していた標識灯掛けを使用しました。この部品は、塗装後にやかんをぶら下げるために前妻の右側にも取り付けてあります。

テンダーの前妻側です

5-2 ATS関連の機器の追加
ATS装置は1962年頃から普及が始まり1966年に設置が完了しています。私が参考にした機芸出版社発行の”蒸気機関車の角度”には1960年代前半の写真も数多く掲載されていますので、写真の形態をチェックするときは、ATS装備前か装備後の写真であるかに注意が必要でした。国鉄の2軸ボギーのテンダーを持つ蒸気機関車では、ATS車上子はテンダーの台車間に装備されていますのでATSに関連する機器箱はテンダー側に設けられています。このテンダーに設けられた機器箱よりATS車上子への配管と後部ライト用の配管がテンダー後方に伸びています。
まず機器箱を0.3㎜の真鍮版から自作して炭庫の内側に取り付けます。次に機器箱の扉を0.1㎜の真鍮版から作成し、機器箱の前方に取り付けます。扉は両側に開く構造ですので中央部に筋を入れてあります。また扉には鎧戸状の通風口がついていますので、その部分に裏側から強く筋をつけて通風口を表現してみました。その後扉上部に水切りを取り付けて機器箱は完成です。

機器箱の扉の表面側. 鎧戸状の通風口は裏面から筋をつけて表現しました

この機器箱にはエンジン側から機器箱に電源を供給する配管と、機器箱からATS車上子及び後部のライト(ヘッドライト、標識灯)に向かう配管が接続されています。写真を見るとこれらの電線管はエンジン側の電線管よりも太い印象がありましたので、0.5㎜の真鍮線を使用しました。このうち、入力側はテンダーの床面から立ち上がっており、出力側は台枠上の継手を介して後方に向かいます。一方、このキットでは機器箱のある上部と台枠部は別体となっていますのでこれらを分解可能とするためには電線管を経路上で分離する必要があります。私はこのうち入力側については床板に設けた穴に嵌め込む構造とし、出力側については、台枠上に0.8㎜角の角線から製作した継手を設け、その上部に設けた穴に嵌め込む構造とすることにより本体と台枠を分離可能としています。同様の部分は後端にもう1箇所あり、両者の接続性が心配でしたが、作成してみると意外にスムーズに接続できます。

斜め上方から見たテンダーの前部です. 炭庫の右側にATS機器箱を取り付けました
機器箱からの電線管は台枠上の電線管継ぎ目の穴にはめ込んで組み立てます

台枠上に固定した2個の継手からの配管は0.4ミリの洋白線を使用し、割りピンで台枠下部に固定し、1本は中央部でATS車上子の方向へ配管し、もう1本は後部まで延長して先端に継手を取付けています。
5−3 後面の加工
テンダー後面のステップ、解放テコ、エアーホース、給水内はキットのパーツを使用しました。ヘッドライト、標識灯はロストワックスパーツを取付けてあります。また、電線管は0.4㎜の真鍮線、継手は0.6ミリ角の角線で製作しました。継手から各ライトに繋がる線は0.25㎜の燐青銅線を使用しています。なお、垂直に立ち上がる電線管のうち、台枠部の継手と接続される最下部の電線管は0.35㎜の真鍮線を使用し、継手の0.4㎜の穴への接続を容易にしてあります。写真を見ると角線の継ぎ手に開けた取付穴の偏心により配管に乱れが生じていますが見た目ではそれほど気にならないためそのままとしてあります。

テンダー後部です
後部の電線管は台枠の電線管継手の穴に差し込んで組み立てます

5-4 台枠の加工
台枠の非公式側には0.6㎜の真鍮線を用いた暖房管を割りピンで取付けてあります。裏面にはATS車上子を取り付けました。エコーモデルのパーツを使用しましたが、過去の蒸機製作で使用したパーツの余剰品を使用したので形態が正しいか否かは不明です。その他、ブレーキシリンダはロストワックス製のパーツに変更してあります。

テンダー床下にはATS車上子を取付. ブレーキシリンダーはロストワックス製に交換しました
前方から見たテンダーです
前方から見た完成したテンダーです

以上でテンダーの説明を終わります。なお、写真でもわかりますが台枠かぶに割りピンで取り付けている配管が歪んでいます。この部分も加工時に力がかかり変形してしまうことが多い様です。この辺りも塗装前に再度チェックすることが必要です。次回は残った下回りの加工内容を説明したいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

模型車両の製作:珊瑚模型店製D51の組み立てと加工(4) :キャブとキャブ下の配管の加工

今回紹介するのはキャブ周りとその周辺の配管の加工です。この周辺の細密化は作品の細密度をあげるための主要な部分の一つです。反面走行性(カーブの通過性能)を確保するためにはカーブ上で配管と従台車との干渉を避けることが必要で、その制約の中、細密感を保ちながら配管をどのように配置するかという所謂「模型化設計」を行わなければならない部分です。それではまず最初にキャブの加工内容から紹介します。

非公式側のキャブの側面


3-0 キャブの組み立て
キャブ組み立て説明書に従って組立てましたので組み立て手順で特筆するところはありません。前妻には組み立て前に配管取り付け用の穴を加工して置いたことは第1回目の組み立て前準備の中で述べたとおりです。その他の加工として、私は下の図面に示すように、キャブの床板に配管固定用として直径0.5㎜〜1㎜の穴を多数開けておきました。その理由は以下の通りです。

キャブの床に開けた穴の図面

キャブ周りに配管を取り付けていく際、キャブ下には配管が輻輳します。取り付けていく配管は図面や写真に基づき現物あわせで曲を行ない取り付けますが、曲げにはどうしても誤差が生じます。そのため、あらかじめその配管を固定する位置に穴を開けておいても曲げ時の誤差で取り付け位置がズレる場合があります。また、他の配管のずれに応じて取り付ける配管の位置を修正する必要も生じます。その際、新たに穴を開けようとしても前に取り付けた配管がドリル刃と干渉して穴が開けられない場合も考えられます。このためこれを考慮してあらかじめこの穴を開けておき、配管取り付け時、キャブに取り付けるための配管の曲げ位置を決める際、この穴の中のどれかを選択して曲げ位置を決めれば簡単に線を穴に入れて固定できるようなります。穴径より太い線を固定する場合もこの穴があればドリルやヤスリを斜め方向から入れて比較的簡単に径を拡大することが可能です。また、主要な配管が終了した後キャブから空気分配弁に向かう作用管を取り付ける際、この穴の中から適切な穴を選択して配管を固定することが可能です。なお、使用しない穴はそのままにしておいても外からは見えませんので未使用の穴を埋める必要もありません。
3−1 キャブの加工
側面には北海道型のタブレットキャッチャを取り付けました。国立科学博物館のD51 231に倣い、縦樋はそのタブレットキャッチャを避けるように曲げてあります。バタフライスクリーンは北海道の蒸機を象徴する装備ですが、形態をよく見ると、枠はかなり細い印象です。厳寒地を走る蒸気機関車には不可欠な設備ではありますが、模型としてみた場合、あまり目立つ物ではありません。そのため、わざわざ高価なロスト製パーツを奮発する必要もないと思い、幅0.3㎜、厚さ0.3㎜のの帯板と直径0.3㎜の真鍮線から自作しました。帯板が薄いので強度的に不安でしたが枠体にすると意外に強度があり変形の心配はないようです。旋回窓も前方の視認性を確保する重要な設備ですが、は取り付けるとゴツくなりそうな気もしましたので、取り付けておりません。最近は歳のせいか、実物(プロトタイプ)についているものを全てつけるというよりはゴテゴテ感を抑えてある程度車両としての美しさにもこだわる様になったのかもしれません。

公式側のキャブ側面

信号煙管、暖房用安全弁はキットのパーツを使用していますが私が今まで製作した作品も使用したパーツは珊瑚模型店製でしたのでその点では他機とのバランスも問題ありません。吊環はD型機には大型のものが似合うような気がしましたので中央部につける大型のパーツを選択しました。テンダ水撒管はC57 135の形態を参考にして割ピンと真鍮線から製作しました。交通博物館に展示されていた頃のC57 135は2階から上部を間近に観察することができ、その点、模型ファンには有り難かったような気もします。鉄道博物館に移ってからは上部が観察しにくくなった感があります。以前紹介したEF58は鉄道博物館では壁際に展示されており、模型製作のための細部撮影には苦労しました。20系客車を製作する際も一瞬鉄道博物館に行って床下の細部の写真をことも考えたのですが、床下は見えにくい展示になっているようですのでやめました。博物館に「綺麗に」展示されている車両は屋外に無造作に保存されている車両より却って細部が観察しにくいようです。最後に話が脱線してしまいましたが、以上でキャブの説明を終わり、以下キャブからコンプレッサ、給水ポンプに至る配管について説明します。

割りピンと真鍮線で製作したテンダ水撒管
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C57 135のテンダ水撒管

4−0 キャブからコンプレッサ、給水ポンプに至る配管の構想
冒頭にも記載したように、このキャブからコンプレッサ、給水ポンプに至る配管は細密モデルを特徴付けるいわば象徴のような部分と言っても過言ではありません。下の写真は第1回目の記事で紹介したなかお・ゆたか氏執筆のD51の組立て法の第1回目が掲載された1974年の1月号に掲載されたカツミ模型店製のD51の紹介記事ですが、この部分の配管は公式側は途中に調圧機のついたキャブからコンプレッサに至る配管のみで、取り付けられている部品も挽物製のドロダメのみ、非公式側はウズ巻き塵取りが取り付けられた給水管のみです。このようなモデルを見慣れていた時代の者にとっては、当時のTMSに掲載されている各種のロストワックスパーツを駆使してこの部分の配管を充実させた作品は憧れであり、まさに高嶺の花でした。ただ、当時は(今も?)ロストワックスパーツ自体も「高値の花」でした。なお、同年2月号に紹介されている宮沢模型製のC57はホワイトメタルのパーツのキャブ下の分配弁等が取り付けられています。ロストパーツの普及や雑誌に掲載される細密機の影響でこの頃から製品(完成品)の細密化が意識され始めたのかもわかりません。

TMS1974年1月号のカツミ模型店製D51の紹介記事

このような時代を経験しているものにとってはこの部分の作業には特に力が入ります。私は1軸従台車を装備する機関車のキャブ下のへ配管の追加は過去に紹介したC 57,C55で行なってきました。しかし、D51はそれらの機種とは異なりキャブ下に低い位置で車端まで伸びた台枠が存在しており、このキットはその台枠が従台車側に造形されています。これは上記キット組み立て法で解説されているアダチ製作所製のD51の従台車も同構造です。この部分は、なかお・ゆたか氏執筆のD51の組立て法では空気分配弁等キャブ下のディテールはダイキャスト製の従台車側に取り付けられ、従台車とともに首を振ります。カーブ通過だけを考えればこの記事のようにキャブ下の機器と配管は従台車側に設けた方が合理的な様な気がします。ただ、私はやはりこの言わば細密化の象徴のような部分を台車側に設けるのに抵抗があったため、配管は車体側に設けることにしました。そのための対応として公式側では空気分配弁の位置を従台車の台枠と干渉しない位置まで持ち上げ、真横から見て従台車とラップする機器は渦巻き塵取りのみとする対応をしてあります。。また、非公式側では各配管を従台車の台枠と干渉しない位置まで上方に持ち上げるとともに、キャブのほぼ直下に降りる配管をテンダー側に退避させて配管してあります。結果、配管が全体的に外側に位置するとともにテンダー各配管をU字型に曲げてテンダー側に延長することができなくなってしまいました。完成後眺めると、各配管はもう少し下方かつ内側に攻めても良かったような気もしますが、この辺りは運転性能確保上やむなしと割り切ることとしました。
4−1 配管とその引き回しに関する資料
今回全面的かつ有効に活用した資料はTMS1975年1月号に掲載されたなかお・ゆたか氏執筆の国鉄蒸気機のパイピングという記事(図)です。この記事が掲載される前にも、蒸気機関車の給水関係と空気関係の各機器の接続図はよく掲載されていましたが、このように各配管が実機の配管がどのあたりを通っているかを示したのはこの図が初めてではないかと思います。最近の雑誌でもよく掲載される空気ブレーキ関係の配管図は多分米国特許の図面をもとにしているのではないかと思われますので必要な機器とその接続は正確です。また蒸気(水)の流れを説明した図では直接機関車を動かすのに関係ないレール水撒管やタイヤ水撒管等は省略されていることが多いようです。その点、この図はそれらの配管も含め、各配管が機体のどのあたりに配置されているかがわかります。この図はD51の例で記載されていますが、D51だけでなく他の形式も含め、いろいろな機体の写真をこの図と対比させてじっくり眺めることにより、他の形式の改造が施されている機体も含めて(配管が接続される機器はほぼ同じ位置に取り付けられているため)実機のどの配管がこの図面のどの配管に相当するものかが特定できるようになり、いろいろな機体から各部の好みの形態を選択し、矛盾のない形で特定ナンバー機ではない「個性のあるモデル」が製作できるような気がします。最近模型雑誌でも蒸気機関車の各部の形態差の解説をよく目にしますが、このよような基礎的な解説もぜひ掲載してもらいたいと思います。なお、この図では電線管は非公式側にありますが、前述のようにD51 231やC57 135では公式側にあります。電気ケーブルはは水や空気配管と異なり配管の自由度が高いため機体により電線管は機体により位置が大きく異なっているようです。

TMS1985年2がつ号に掲載された記事”国鉄蒸気のパイピング”

前置きが長くなりましたが、以下、写真で加工内容を説明します。
4-2 公式側の配管
キャブからコンプレッサに至る部分のランボード下方には以下の配管を取り付けてあります。
a. キャブ(蒸気分配箱)から調圧機を経てコンプレッサに至る配管
b. 調圧機に接続される高圧頭作用管及び低圧頭作用管
c. 元空気溜め管(途中に締切コックを取付)
e. ブレーキシリンダー管
f. ドロダメから火室ノド板留弁に至る配管
また、北海道の蒸機に特徴的にみられるテンダ水温め管をランボードに沿って配管しています。この配管はコンプレッサの前方でコンプレッサ排気管と3方コックで接続され、キャブ下を通りテンダに向かいます。コックはロスト製の締切コックを使用しましたが、もう少し大型のパーツにするべきでした。また、速度系ロッドを追加してあります。
キャブ下に取り付けたのは以下の配管です
g. 元空気ダメ管から空気分配弁に至る配管
h. 列車ブレーキ管からうず巻きチリ取りを経由し空気分配弁に至る配管
i.キャブから空気分配弁に配管される作用管
これらは奥側から手前側に、取付手順をよく考えながら取り付けていく必要があります。なお、前述のように空気分配弁を従台車との干渉を避けるため実機よりも上方に取り付けましたので分配弁上方のスペースに余裕がないため配管は実物通りには接続されていません。また今までの作品では取り付けていた無動力改装装置も省略しています。速度計ロッドは0.3㎜の真鍮線でキャブ側と動輪側の本体部(ギアボックス等)は帯板、真鍮線、輪切りにした真鍮棒から自作しています。

加工の終了した公式側キャブ周辺. 空気分配弁は実機より上方に取付.

4-3 非公式側の配管
非公式側のキャブから給水ポンプに至る部分のランボード下方には以下の配管を取り付けてあります。なお、キットに付属していた.2子3方コックは長さの短いタイプでしたが、配管が従台車を避けるため実機より上方に配置されるため、バランスを考慮して長いタイプに交換してあります。
a. 給水ポンプに接続される蒸気管と排気管
b. 給水ポンプから消火栓を介して給水温め機に至る配管(ロストワックスパーツ)
c. 給水ポンプからチリコシを介してテンダーに至る配管(布巻管)
d. 2子3方コックから前方に向かうレール水撒管及びタイヤ水撒管
e.2子3方コックから水撒インジェクターに至る配管及び水撒インジェクター蒸気管
f. 水撒インジェクターから下方に向かう排水管
g. キャブからの注水機溢れ管
h. キャブからの排水管
i. キャブから給水ポンプ方向に向かう作用管2本
この中で実機の排水管はキャブからほぼ真下の方向に向かうものがありますが、今回は従台車との干渉を避けるため後方に曲げて配管してあります。この部分の布巻管は以前発売されていた福原金属製の布巻き管を使用しています。真鍮線に薄板が巻き付けてあるもので、実感的ではありますが、曲げの部分で巻いてある板がずれて巻き乱れが生じますのでをの部分はうまく修正してハンダで固定しておくことが必要です。またランボード下には上方の発電機から伸びてくるドレン管を取り付けてあります。

非公式側のキャブ下の配管.

給水ポンプ前方の連絡管(冷却管)は公式側と同じ方法で製作してあります。前方に油ポンプ箱がありますので長さは少し短くなっています。

以上でエンジンの加工はほぼ終了です。この後取り付けに歪みのある部分、加工中に変形してしまった部分を修正して作業完了となります。なお、今回のように各部を至近距離で写真撮影しじっくり眺めると歪みや変形がよく分かります。今回紹介した写真でも歪みが目立つ部分がありますが、その部分は塗装までに修正したいと考えております。次回はテンダーの加工内容を紹介したいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

修正作業を残しひとまず完成した車体. 標識灯高さは上方に修正済み