デジタル制御で何ができる?:海外メーカー製デジタル仕様の車両の紹介(1)

先日、PCであるニュースサイトを何気なく見ていたとき、そこに先日東京ビッグサイトで開催された鉄道模型ショー(JAM)のニュースが掲載されていました、日本で比較的有名なニュースサイトに鉄道模型に関するニュースが掲載されること自体、私の年代の者にとっては時代の変化を感じたのですが、この中で日本の鉄道模型のデジタル化は欧米に比較して20年以上遅れているというようなテロップがついた映像が流れていたのが気になりました。これまでもこのブログで紹介してきたように、私の最近の興味の対象は主に外国製の鉄道模型(HOゲージ)ですが、現在保有している車両は全てデジタル仕様の車両です。現在、海外では現状ほとんどの欧米のメーカーがアナログとDCC仕様の車両を発売しているのに対し、日本ではDCC仕様の車両に製品が非常に限られているという印象を受けます。私が愛好しているMärklinのHOゲージの車両はほぼ全てがデジタル仕様となっていますし、米国メーカーの車両も$100程度の価格差でDCCのありとなしの2種類の製品が用意されている製品が殆んどです。もちろん日本型の車両でもDCC仕様の車両(米国QSI社製のQuantum systemを含む)は発売されており、改造等によりDCCを搭載して使用して運転を楽しんでいる方も多くいらっしゃいますが、日本の現状では一般に模型店の店頭等でサウンドデコーダーを搭載したDCC仕様の製品が備えている機能を目にする機会は少なく、それが日本でDCCが普及しない一因であるような気がします。ただ、蒸気機関車がドラフト音を出しながら汽笛を鳴らしエンドレスを周回しているだけではデジタル制御の面白さはなかなか伝わらないようにも感じます。昔の話ですが、私は学生時代、当時の晴海展示場で開催されていた鉄道模型ショーの天賞堂ブースで初めて見たコントローラーSL-1を用いたサウンド付きの機関車の運転を見た時の驚きが今でも思い出されます。ただ、現代のデジタル制御はそれよりはるかに多機能で、色々なことを行うことが可能です。そこで今回は甚だ僭越ではありますが、今回は数回に分けて、海外製の比較的新しいデジタル仕様のMärklinの車両を例に、実際にデジタル制御でどのよう車両の制御ができるのかを動画と写真で紹介させていただきたいと思います。


今回は初回としてデジタル制御で可能な基本的機能を紹介します。まずは機関車が発車する時のデジタル制御の実例を動画で見ていただければと思います。下はMärklin製BR182電気機関車(#39840)の発車時の動画です。

この機関車はドイツのSiemens社が開発したE S64U2というタイプの機関車で、通称Taurusと呼ばれる最高速度230km/hの機関車です。この機関車は2000年ごろからヨーロッパの各鉄道会社の仕様に合わせた仕様で各鉄道会社に納入され、鉄道会社固有の形式番号を与えられて現在も欧州各国で使用されています。そしてこの動画の音を聞いてお分かりの方も多いと思いますが、この機関車は最近話題となった京浜急行1000系の「ドレミファインバーター」の制御器と同系統の制御器を搭載しています。このため音階はチューニングされていないものの、発車時には京浜急行の「ドレミファインバーター」を彷彿とさせる音を発して加速していきます。もし、日本の製品にもこのようなインバーター音が出せる京浜急行の1000系や常磐線501系電車の模型が市販されていたら思わず欲しくなってしまうのは私だけでしょうか?
また、下の写真は冬、私が撮影した深夜の水上駅に停車中の上り急行「天の川」、特急「北陸」の写真です。停車中の機関車はヘッドライトが消灯してキャブライトが点灯していますがやがて発車時刻になるとキャブライトが消灯した後ヘッドライトが点灯し機関車はブロワーの音を響かせて発車していきます。

水上駅に停車中の上り急行天の川. ヘッドライトは消灯しキャブライトが点灯しています.
発車会津とともにキャブライドが消灯し、ヘッドライトを点灯させ水上駅を出発する特急「北陸』

実際に見るとこのようなシーンは印象的で、模型でも再現したくなりますが、このシーンもキャブライトが制御できるサウンドデコーダー付きのデジタル制御の機関車であれば容易に再現することができます。下はそれを再現したMärklin製BR193(#39197)の発車時の動画です。

この機関車は上記Taurusの後継機でVectronと呼ばれるSiemens製の機関車です。この機関車も鉄道会社に合わせて出力、最高速度等がその鉄道会社に合わせた仕様に設定できるセミオーダーメイドの機関車で、欧州で幅広く使用されているものです。前面に冷却風の取り入れ口がありそのグリルが猫のひげのよう見え、特に青系の塗装がされた機体は日本人が見ると思わずドラエモンを連想させるような車両ですが、欧州では最新型の車両の一つです。なお、この機関車はその後の制御機器の改良で日本でドレミファインバーターの音が聞けなくなったのと同様、この機関車は発車時制御器からのドレミファインバーターのような音は聞こえません。

最近、日本の雑誌を見ていると実物の情景を再現したようなジオラマ(レイアウトセクション)が多く発表されており、その情景の素晴らしさには目を見張るもがありますが、これらの記事のは制御方法に対する説明がほとんどありません。記事では分かりませんが、もしそれらのレイアウト上の車両が、車両を置いて写真を撮っているだけ、あるいは単にアナログ制御で車両を動かすだけであれば、それだけではなく、そこに光と音の制御が加わればどんなに楽しいかは想像に難くありません。デジタル化はというと大きなレイアウトで分岐器や複数列車を制御するためだけのもの、あるいは一部のマニア向けのものと思っている方もいるかもしれませんが、実際に車輌を手にして見るとデジタル制御の面白さははそれだけではありません。鉄道模型を趣味としてる者が、模型店に行った際にデジタル制御で動いている模型を見る機会が増え、例え難しくても頑張ればなんとか出来そうな(電気工作の知識がある人に教えて貰えばできそうな)車両のデジタル化に関する記事が雑誌に掲載されていれば、自分もトライして見ようとする人が増え、それが鉄道模型のデジタル化のきっかけになるのではないかと思うのは私だけでしょうか。前回、12系客車の床下機器の制作記事でも述べましたが、雑誌の記事をきっかけに実際に手を動かして見ようという方が増え、パーツも充実するということもあり得なくはありません。海外の雑誌には私が購読している米国のModel Railroder誌や欧州のMärklin Mabazinに、車両へのデコーダーのインストール方法が時々掲載されています(後者はの対象はMärklin 製製品の改造方法ですが・・・)。


一方、現状ではメーカーにはデジタル化を推進しようという機運は見られません。メーカーにとってはデジタル仕様の車両の製品化には従来より多額の投資を必要としますし、その投資に見合う数量が販売できるかも考えるとリスクが大きいと考えているのではないかということは理解できます。海外製のデコーダー導入してそれを形式ごとの特徴に合わせて日本仕様にカスタマイズするにはそれなりの技術も必要だと思われます。ただ、日本の製品が全くデジタル化を意識していないわけではなく、日本の製品でもデジタルデコーダーの標準規格である21ピンの端子が基板に設けられている製品もあるようです。私が学生の頃、鉄道模型雑誌(TMS)には素人(電気的知識や工作経験がない者)には非常にハードルが高いと思われるトランジスタコントローラーの製作法が回路図も含めて掲載されており、私もなんとか制作できないかと思ったものですが、今は上記の製品の21ピン仕様に対応した海外製のデコーダーを使用すれば少なくともそれよりは簡単に車両のデジタル化は可能ではないかと考えられます。このように考えるとこの現状を打開するためにはユーザー側から鉄道模型のデジタル化の機運を盛り上げることも必要かと思います。そのためにはやはり鉄道模型雑誌が市販のパーツ(デコーダー・スピーカー)等を用いて車輌をデジタル化する詳細手順を掲載していただくと、それをきっかけに少しは普及が進むのではないかと考えます。私もまだアナログ仕様の車輌をデジタル仕様に改造したことはありませんが、デジタルレコーダーは非常に高価であるとともに配線ミス等で割と簡単に破損するようですので、独学で英語のマニュアルを頼りに改造を行うことに対するハードルは結構高いと感じます。個人のWEB SITEには改造記事もありますが、やはり改造のハードルを下げるためには信用できる(複数の専門家により充分にレビューされた)メーカーのマニュアル以上の詳細な手順の説明が欲しいと感じます。余計なお世話と言われてしまえばそれまでですが、日本のメーカーの製品の中には車両の動きと同期して運転時の音を出すことができるサウンドボックスというような製品もあるようですが、普及すると日本の鉄道模型がガラパゴス化してしまわないかはちょっと心配です。
そこでせめて現在私にできることとして次回以降、このデジタル制御でどのような車両の制御ができるかを紹介してみたいと思います。紹介する車両は外国型で、紹介するシステムも専用のコマンドステーションを使用するMarklin Digitalというどちらかと言えば特殊なものですが、模型店の店頭で車輌を眺めるように、まずはデジタル制御とはどんなもので一体なにができるのか、その動作(車両が演じることのできる芸?)の詳細を紹介させていただきますので、それにより少しでもデジタル制御の面白さを感じていただければと思います。そしてこの記事を読んだ方が少しでもデジタル制御に興味を持っていただければ幸いです。