模型車両の紹介:北海道のC57のその後 −ユーレイ解消のための補重の実施−

以前、このブログで ”模型車両の紹介:北海道のC57(+ユーレイ)”というタイトルで北海道仕様のC57を紹介させていただきました。このタイトルにもあるようにこのC57は、牽引を想定した北海道の夜行急行列車をイメージした真鍮バラキット組み立ての客車7両編成を牽引力不足で牽引することができず、やむなく”ユーレイ”を急遽増結せざるを得ませんでした。今回そのユーレイ解消を目指し、C57にウエイトの補重を行いましたのでその顛末を紹介したいと思います。まずはユーレイなしでC57が7両編成の急行列車を牽引する動画をご覧ください.

この動画はエンドウ製ニューシステム線路の805Rカーブの出口の直線部分で撮影したものですが、機関車は全く進まないことはないものの、空転が激しく、牽引不能の状態です。ちなみに同一電圧での単機での走行状態は下の動画です。ちなみに両者とも電圧は7.5Vで7両牽引時の電流が0.21A, 単機での電流が0.16Aです。

市販の蒸機のキットがそのまま組み立てたのでは重量不足であることは昔から言われており、過去にはTMS誌上でもいろいろな補重の方法が掲載されていました。また初期の蒸気機関車の自作記事には機関車の重量を稼ぐためフレームやボイラー内に鉛を流し込む方法も紹介されています。

TMS特集シリーズ15 日本型蒸気機関車の製作に掲載されているなかお・ゆたか氏執筆の ”国鉄7850を作った話”より

このような牽引力を稼ぐための補重の重要性を解説した記事に過去接しながら牽引力を考慮することなくキットの細密化を行い、いざ牽引させようとした時に上記の動画のような事態が発生した時は過去TMSの山崎主筆がTMS誌上でおっしゃっていた”細密なだけでろくに客車も牽引できない機関車なんて・・”という言葉を思い出して結構落ち込んだのですが、それから30年、時間に余裕ができたところで気を取り直して再度ユーレイ解消にチャレンジしようと思った次第です。

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When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(まとめ)

<まとめ>
これまでZゲージレイアウトのRealism levelについての検討結果と実例をご紹介してきました。何分レイアウト作りは初めてでしかもそれまで過去にあまり前例のないZゲージを採用したこともあり苦労も多かったのも事実ですが自分としては当初の目標に対してはなんとか満足できるものができたのではないかと思っております。今回はそのまとめとしてその中でrealism levelという観点で感じたことを2点と、製作後の反省点について記載してみたいと思います。
1. スケールよりバランスが大事
これはどのゲージでも言えることかも分かりませんがZゲージであるが故に特に注意が必要な事のように感じます。私はこのレイアウトを製作する前は車両工作しか行なっておりませんでしたが、例えば程度の差こそあれ全てのゲージについて製品のレールはオーバースケールです。HOゲージのレールはは高さこそスケールに近いもののレール単体の幅はオーバースケールです。ただ、それでも車両の鑑賞時にはあまり気になりません、これは車両の車輪厚さの厚さ、フランジ高さも「それなりに」オーバースケールであるからなのか、単に見慣れているからなのかはよくわかりませんが、車輪とレールの接触部近傍のみが他に比較してrealism levelが異なっていると感じたことは今まで全くありません。しかし、このレールと車輪周りの「オーバースケールの度合い」は縮尺比の大きいゲージほど大きくなっています。最近雑誌に発表されるNゲージの作品は車両もレイアウトも素晴らしく、写真を見ただけでは16番ゲージかNゲージかわからないものも多々あります。そんな時は車両に対するレールの太さに注目するとゲージが分かるように思います。Zゲージレイアウトではレールの「オーバースケールの度合い」はNゲージよりもさらに大きくなります。そのような状況でレイアウトでは車両のいない時の線路周りを見た時にも一定のrealism levelが求められます。したがって特にtrack side周りの各部を製作する際には、その大きさと実物に対する縮尺の忠実度(線の太さ?)は車両や線路等、既製品を使用した部分とのバランスを常に考えながらことが重要です。またtrack side以外の部分でもたとえば製品の建物の窓枠の太さはかなりのオーバースケールですので自作の建物の窓枠の窓枠寸法をスケールにこだわると両者を並べた時に違和感を生じます。このため、Zゲージでは自作する部分については最初に既製品とのバランスを考えながら構想、設計、製作を行うことが他のゲージにましてより重要である感じました。

1.5Vミクロ球を用いた駅の照明やショップの商品はオーバースケールではあるもののレイアウトの中ではさほど気にならない.ショップの商品をスケール通りに製作すると小さすぎて目立たなくなる恐れがある.


2. 「それらしく作る」がキーワード
Zゲージはとにかく小さいので手作りの工作には限界があります。製品も一部オーバースケールであるのは製造だけではなくやユーザーの取り扱い上の理由もあると思われ、メーカーはこれらの制約(リーズナブルなコストで製造することも含む)から構造や全体の大きさを決めていると考えられます。しかし自作部分ではそのような製品とバランスをとった大きさでも素材や加工法の制約から細部の表現が困難な事例も数多くあります。そのような時はこの「それらしく作る」ということが重要で、時には大胆な省略や多少のオーバースケールには目をつぶるということが必要と感じます。特にZゲージはとにかく小さい(最初にも記載しましたが体積はNゲージの1/4強)ですので時には無謀と思えるようなな省略を行っても思ったより目立ちません。また、どうしても省略できない部分も大きさが小さいせいか実際には多少オーバースケールになっても意外と目立たないこともあります。従って自作が難しい場合、省略しても差し支えのない部分は思い切って省略する、省略できない部分で手作りでは加工が困難な部分については多少のオーバースケールは許容するというノリで製作を進めることが必要と感じました。また、このような場合は机上で考えるのではなく製作して確認してみることも必要と感じました。これらを別の言い方をすると「間違っても細密なものを作ろうと思って頑張ってはいけない」ということでしょうか。思えば私が学生だった70年代から80年初めにかけては現在ほどパーツに種類が多くなかった為、HOゲージでも台車等は似たような形状のもので済ませるということが日常的に行われており、雑誌の記事でもそのような車両が紹介されていましたが、それから20年以上経って今回紹介したこのZゲージのレイアウトを製作した時にこの当時のことを思い出すとともにこのような「小さい」レイアウトを製作する際にはこの『それらしい」という感覚が重要ではないかと感じました。
ただ、上記の2項目を実践するのは意外と難しいようにも感じました。極端な言い方かも分かりませんが、全てを実物通りに製作しようとするということを放棄して「それらしく作る」ということは逆に実物に対する観察力や設計のセンスが問われ、それが作品に如実に現れてしまうということです。このような観点で自分の作品を眺めてみると自分の力不足を痛感し、まだまだ努力が必要と感じます。

チップLEDを用いて製作した街路灯. φ0.15のエナメル線をLEDの両端に半田付けして製作. 自作では形態がどうしてもばらつくが小さいのであまり気にならない


<レイアウトオーナーになった感想・課題とその展開>
今まで車両工作しかしなかったものがその車両が活躍する舞台ではない全く別の、しかも車両の製作はほぼ不可能であるゲージの外国型レイアウトを製作するということは今思えば無謀と言われてもやむをえないことであったような気もしますが、結果的にはこのレイアウトの製作により自分にとっての鉄道模型に対する視野や楽しみ方の幅が飛躍的に広がり、現在ではこのレイアウトを製作して本当に良かったと思っています。このような小さなレイアウトでも、車両を走らせたいと思った際、電源を入れてコントローラーを回せばすぐに列車が動き出してその動く姿を鉄道を周囲の「風景」とともに見ることができるということは今までに体験したことがないない感覚で、鉄道模型は走らなければ鉄道模型ではないということを改めて感じました。
一方実際に運転してみるといろいろ課題も出てきました。

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When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(市街地の構想とその細部)

これまで2回にわたり外国型Zゲージレイアウトのストラクチャー、Tracksideのrealism levelについての検討結果を紹介してきましたが、今回はレイアウトの市街地の構想とその細部についての検討結果と作例を紹介したいと思います。これまで紹介したストラクチャーとTracksideについては一部に市販品を使用しており、自作の部分はそれらの市販品とのバランスを考慮しながら材料の選択や素材からの自作を行いましたが、市街地については限られたスペースの中でどのようにしたらターミナル駅がある市街地らしい市街地を作ることができるか、そのためには市販品と自作品の建物を市街地の中にどのように配置するかというレイアウトの全体構想に関わる課題に対する検討が必要でした。また街頭にある小物は当時市販品はほとんど発売されていなかったため、ストラクチャーのrealism levelとバランスをとりながら鉄道模型用として販売されていない製品の流用や素材からの自作が必要で、それらをどのように製作するかが課題となりました。そこで今回はこの課題の検討過程と結果(作品)を紹介したいと思います。
<市街地のスペース(線路配置)>
この検討結果をご紹介するにあたりまずはこのレイアウトの線路配置を写真を用いて説明します。

台枠状に線路の敷設を完成した段階

上の写真が台枠上に線路を敷設した状態のレイアウトです。手前のエンドレス外側の頭端式のターミナル駅を出発した列車は勾配を上り最初の分岐器でエンドレスの周回方向を決定してエンドレスに入ります。その際列車を左回りとする場合はリバース線を経由して本線へ、右回りとする場合はそのまま本線に入ります。そして本線周回後駅に戻るには手前側の背中合わせに配置された分岐器でエンドレスを離れ駅へ向かいます。その際、時計回りで周回していた列車はリバース線を経由して駅に向かいます。このようにプランとしては非常に単純なプランです。市街地にはターミナル駅に相応しい駅舎を街と向き合う形で設けることとしたのでその駅舎はスペース上写真のリバース線より奥側に設けることになります。そこで写真のリバース線より奥側を市街地とし、手前側を住宅地にすることとしました。ただ、駅舎を市街地と向き合う形で配置する駅舎とホームが高架線で分断されてしまいます。そのためこの部分の処理についてはいろいろ悩みましたが、最終的には高架線下に駅舎への通路を設けるとともに高架線のホーム側にはカフェ等のショップを作り、駅舎との関係性を自然なものとすることとしました。駅舎は市街地と対向するので、運転位置からは駅舎の背面しか見えませんが、運転位置からホーム側のショップが見えれば列車が駅に到着した際、ある程度ターミナル駅の雰囲気が味わえるのではないかと思ったのがその理由です。実際にこのような構造になっている駅は見つけられませんでしたが欧州にはプラットホームに隣接して色々なショップが並んでいる例はよくあるようです。日本で言えば上野駅の地平ホームのイメージでしょうか。そして駅舎はKibriの製品の中から『B -6700″Bahnhof. Bad Nauheim”』を使用しました(現在は絶版のようです)。この駅舎のプロトタイプのあるBad Nauheimはフランクフルトの北にあり湯治場として有名な場所で、過去にはオーストリアのフランツ・ヨーゼフ1世やビスマルクが訪れこともある街のようですが、それはさておき製品はZゲージでも長さ40cmの大きな駅舎です。ちなみに東京駅の長さは330mだそうなのでZゲージでも1.5mになります。

<市街地の構想>
次に市街地の建物の配置を検討しました。

駅舎の配置と建物の配置を検討中の写真. 駅舎の位置はこの位置に決定した

上の写真は市街地の建物の配置を検討していた時の写真で、市販の建造物キットを組み立てた後、どのような建物をどこに配置するかを検討している段階の写真です。市街地の建物は主にKibriの製品を使用しました(教会のみVollmer製です)。Kibriの建物はいずれも旧市街にあるようなタイプの建物で、旧市街に特徴的なCity Gateもあります。一方以前も述べたように旧市街にあるような古くからある建物は装飾が複雑なため自作で製品と同じrealism levelの建物を製作するのは難そうです。このため駅舎から見て左側と奥側を旧市街と見立て製品の建物を配し、駅の正面には比較的近代的な自作の建物を配置することとしました。上の写真では自作する建物は検討段階ではまだボール紙で作った単純な形状のものですが、最終的には駅舎正面の建物は上記写真より小型とし(左側の建物の面取り部分を削り)駅前広場を秘匿するとともに右側の三角屋根の建造物は数を減らし、池の周りの広場のスペースを多く取りました。住宅地も含めて建物の配置が終了した段階の写真が下の写真です。駅舎の正面に自作の建物が並び、それを取り囲むように市販のストラクチャーが配置されているのがわかると思います。

建物の配置を完了した段階. 細部を作り込んでいく前の状態
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When is your realism level good enough?:車両製作から外国型Zゲージレイアウト製作の決断まで

前回、北海道仕様のC55を紹介したときにModel Railroader誌の2022年12月号のFrom the Editorに掲載されていた上記の言葉を引用しました。その際にも記載しましたが、このRealism Level(意訳すると実物の鉄道を模型で再現する時の本物らしさ(再現度)のレベルということでしょうか)をどこに設定するかということは非常に難しい問題です。その基準は一度設定したらその後はその基準で制作を進めることが理想ですがこの基準は自身の考え方、技術力によっても変化しますので長年この趣味を続けている間に変化しますので変化を恐れたり、変えることをためらう必要はないと思います。私は90年代前半までこれまでご紹介したように比較的ディテールにこだわった車両模型を製作していましたが、その後そのそれとは全く異なる分野である外国型レイアウトの製作を始めて現在に至ります。今回は上記のコラムに関連し、私がなぜ外国型Zゲージのレイアウト製作を始めたか、その経緯をご紹介してみたいと思います。車両のディテールアップと外国型Zゲージのレイアウト製作はある意味鉄道模型では対極的な分野だと思いますが鉄道模型の新しい分野にチャレンジしようとしている方の参考になったら幸いです。

初めて製作した外国型Zゲージレイアウトの一コマ


まず初めにModel Railroader誌の2022年12月号のFrom the Editorの要点を簡潔に記載します。このコラムではまず、模型とおもちゃの違いはルールの存在であり、我々は鉄道模型を始めるにあたりこのルールの一つであるrelism Levelの基準を自分で決める必要があることを教わると述べています。そして自分が満足するレベルでその基準を決め、それに従って各部を製作する必要があるという有名モデラーの言葉を紹介しています(日本と異なり米国(欧米)では鉄道模型はレイアウト製作が一般的ですのでこのコラムはそれを前提として述べていると思われます)。続いてその方の意見、”superdetailed locomotive とrolling stockがcardboardで作られた街の中を走るレイアウトは車両とシーナリーのバランスをもう少し考えたほうが良い(シーナリーに注力したほうが良い)” と言う意見を紹介します。しかし編集者のWhite氏は 模型でできる限り実物に忠実なoperationを再現しようとしているモデラーは、線路配置がそれを実現できるものであればシーナリーには拘らないという事例を紹介し、realistic lebelの考え方は人それぞれであると論じます。次に自分がかつてレールや車輪の形状を実物通りに再現する規格であるProto87に則りでレイアウトを作成しようとして技術力と忍耐力不足により挫折した経験し、そこから試行錯誤しながら自分のrealism level が確立していった経緯を語ります。そして最後に結局ealism lebelは人それぞれであると結論づけます(元々英語はあまり得意ではありませんので間違っているところがあったらお許しください)。日本の鉄道模型はかつては車両の製作が中心で、過去TMS誌上で山崎喜陽氏は細密化と走行性能のバランスを述べておられました。私も今まで製作してきた作品ではこの点には留意してきたつもりです。ただ車両工作が中心の日本では上記コラムにあるような”車両とレイアウトのバランス”についてはあまり述べられていなかったような気がします(車両をレイアウト上に置くと細かいディテールは気にならなくなるということはよく言われていましたが)。現在日本の鉄道模型雑誌は車両、レイアウトともメインとなる(目玉の)記事はコンテストの入選作であることが多く、素晴らしい作品が掲載されています。私はその記事を読むと「素晴らしい」と思うと同時に「自分にはとてもできない」と思ってしまいます。欧米の雑誌の紹介されるレイアウトも同じレベルの作品なのかもわかりませんが、通刊1000号を超える雑誌の編集者が実例や体験も交えてモデラーが製作する模型のレベルは人それぞれで良いと言うことをコラムで述べることは私のような「不器用なモデラー」に勇気を与え、結果雑誌を読んで鉄道模型をやってみたいと思う方を増やすような気がするのは私だけでしょうか。
私も車両製作を行なっていた頃には車両とレイアウトとのバランスと言うことは考えませんでした。私がそれまでに製作した車両を走らせるために保有している線路はエンドウのプラ線路で待避線と引き込み線ができる分岐器数個で、今でも今まで製作した車両はこの線路で走らせています。その線路を走る列車の動画を下に示します(製品を紹介する際撮影にに使用している線路はMärklinのC-Trackですが、これは道床の色合いを考慮して選択しています)。

C62 2+C62 3が牽引する急行ニセコ7両編成. 機関車のモーターはカツミ製DH-13で走行電流は約1.5A. 製作から30年以上経っても走行性能は製作時と変わらない
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模型車両の紹介:北海道のC55(+When is your realism level good enough?)

前回ご紹介したC57に続いてご紹介させていただくのは北海道仕様のC55です。この機関車も以前ご紹介した北海道の寝台急行列車を牽引させるためにキット加工により製作したものです。製作時期はC57とほぼ同時期の1990年ごろで、レイアウト製作を始める前に制作した最後の蒸気機関車です。

この機関車のベースはカツミ模型店製ゴールデンシリーズの未塗装キットです。このゴールデンシリーズの発売当時の売りは主台枠の棒台枠の表現ですが、この表現が最も目立ち楽しめるのは動輪がスポーク動輪であるC55ではないかと思います。購入したのは消費税導入前の1987年頃です。当時は完成品やバラキットの他に車体は組み立て済みでドライバーと配線(半田付けが必要)のみが行われていない状態の未塗装キットや塗装も済ませた塗装済みキットも販売されていました。1989年の消費税導入前は鉄道模型には物品税がかけられておりました(贅沢品とみなされていたようです)。その際価格が一定以下の製品、その製品だけでは本来の目的を達成できない製品は無税のため、当時は上回りと下回りを別々にしたキットが比較的多く販売されいたということを聞いたことがありますがこのような未塗装のキットの場合はどうだったのでしょうか。子供の頃は工作の楽しさを体験させようとしてメーカーはあえてこのようなキットを販売しているのかと思っていましたが。
ちなみに現在関税適用のための物品を定義するHSコードにおいて鉄道模型のコードは95.03で「縮尺模型その他これに類する娯楽用模型(作動するかしないかを問わない。)」というカテゴリに属するようです。外国のショップから商品を購入する際、輸入時このHSコードに対して関税はかかりませんので受け取り時に消費税のみを支払いますが、その税額はみなし原価(販売価格から付加価値税を引いた額のの60%程度)に対して10%です(他に送料等がかかります)。海外のサイトに表示されている価格は通常付加価値税込みの価格(ドイツの場合税率は19%)ですので海外のショップから購入する際の値段を国内販売価格と比較する際にはこれらの税額にも注意が必要です。
それはさておき、キットの説明書はC 57,C55共通のものとなっており、ドライバーと配線用のハンダゴテ(+ハンダ)があれば完成させることができます。ただ未塗装ですので塗装は必要です。組み立ては比較的簡単ですがこのような大型蒸機の塗装をきちんと行うためにはそれなりの技術は必要ですのでやはり対象はある程度模型製作の経験のある人向けの製品だと考えられます。ただ、キットはいわば最終組み立て工程に進む手前の完成品と言えるもので、ネジで組み立てればそのまま普通に走りますので追加部品によるショートや塗装次の塗料の回り込みによる通電不良にさえ気をつければ走行に対しては大きな問題は発生しないのでその点は安心です。

取扱説明書は下の写真のようなもので全13工程で完成となります。C55とC57の説明書は共通で殆んど同じ手順となっています。組み立てに使用するネジが全てマイナスネジであるところは時代を感じます。購入したのは今はなき東急百貨店日本橋店のカツミ直営店でしたが、当時は各地のデパートに模型店があり、模型店で売り切れの製品でもこのようなところには在庫がある(売れ残っている?)ことがあり、ある種穴場のような存在でした。このC55もそんな製品であったように記憶しています。

キットのプロポーションはC57と同様に良好であり、形状を手直ししなければならないところはありませんでしたので完成している車体の基本部分を構成する部品を取り外して修正することは不要と判断し、加工は一部のパーツの交換とパーツや配管の追加としました。加工箇所、加工方法は前作のC57とほぼ同じですが、デフの切り詰めは行いませんでした。当初、C57との違いを出すためにそのように決めたのですが後で調べてみるとC55はごく一部を除いてデフの切り詰めは実施されなかったようです。また、今回もキャブの密閉化は行ってはおりません。
それでは各部を写真で紹介させていただきます。

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模型車両の紹介:北海道のC57(+ユーレイ)

今回は北海道のC57を紹介させていただきます。この車両は以前ご紹介した北海道の急行寝台列車の牽引用に製作したもので客車とほぼ同時期(1990年ごろ)の作品です。

この車両はカツミ模型店発売のゴールデンシリーズ・C57一次型のイージーバラキットを組み立てたもので、特定ナンバー機ではなく、キットをベースに蒸気機関車が終焉を迎える1975年ごろに北海道で見られた機関車の特徴的な形態を再現すべく各部に加工を施したものです。

キットの組み立て説明書

ナンバーは83号機ですが、これはキットの付属していたナンバープレートから選んだものです。実際の83号機は主に西日本で活躍していた機体のようで北海道に配置されたことはなく、1969年に名古屋機関区で使用されたのを最後に廃車されていいるようです。私が鉄道に興味を持ち写真を撮り始めた頃、首都圏では鶴見、新小岩・八王子等にわずかな数の蒸気機関車が残るのみでしたが、当時北海道にはまだ数多くの蒸気機関車が活躍していました。しかし当時の中高生にとっては北海道はあまりにも遠く、私はそれらが実際に活躍している姿を実際にみることは叶いませんでした。しかし北海道が蒸気機関車の最後の活躍の地であったことから交通博物館のC57をはじめ、首都圏には数多くの北海道仕様の機関車が保存展示されており、現在でも比較的多くの北海道仕様の機関車を見ることができます。当時釧網本線で活躍していた戦後型のC58 は羽村動物公園に保存されていますし、上野の国立科学博物館入口展示されているD51も北海道仕様の機体です。C57は前述のように交通博物館に最後の旅客列車を牽引したC57 135が非常に良い状態で保存されていましたので製作にあたってはそれを参考とし、他に雑誌等に掲載されている北海道仕様の機関車の写真を参考にして好みの形態に仕上げてあります。余談ですが、大宮の鉄道博物館に展示されている車両の一部は壁際やプラットホームを模したような台の横に展示されている車両が多く、社内の見学には良いのですが模型の資料として写真を撮影する際には非常に撮影しにくい展示となってしまっています。

製作にあたって交通博物館で撮影したC57 135の写真(一部)


車体の基本部分はキットをそのまま組み立てており、大きな加工はしておりません。晩年の北海道仕様のC57はキャブを密閉型にしたものが多く、C57135も密閉キャブでしたがキットのまま組んであります。これは改造に自信がなかったことと、キャブを密閉型にするとC57本来の精悍さが失われてしまうのではないかと考えたのがその理由です。後者の理由は自分の技術力のなさの言い訳のような気もしますが、やはりライトパシフィック機と呼ばれるC57の軽快で精悍なイメージを形作っているのは1次型等の開放キャブではないかと思います。
このキットはイージーバラキットいう名称のとおり、主題枠とボイラー、ランボード、キャブは組み立て済みで、車体の恋本部分は比較的容易に組み上げることができます。全体的なプロポーションも良好で特に加工が必要なところはありません、したがって加工はロストワックスパーツの追加とパイピングが主なものとなります。

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模型車両の紹介:北海道のキハ40(キハ40 101-)と気動車床下の模型化

今回紹介させていただくのは北海道仕様の一般型気動車、国鉄時代のキハ40(100番台)の2両編成です。
この車両は2015年に完成した車両で北海道仕様の車両の中では最新の車両です。
私は前回ご紹介したキハ56・キロ26を1990年頃製作して以降レイアウト製作の制作を始め車両工作は一時中断していましたが、この車両はその中断後初めて製作した真鍮製車両です。したがって前作と今作の間には20年のブランクがあります。製作は長い中断にも関わらず意外とスムーズに進んだ反面、20年経っても作品のレベルには進歩がありません。
また、この車両の完成で当初計画していた北海道型の気動車の製作が終了しましたのでこれまでに製作した気動車を例に、その床下機器の表現方法(どの程度の細密化を目指したか)についての試行錯誤の結果を実物写真も交えてご紹介させていただきたいと思います。

キハ40100は北海道向け一般型気動車としては約20年ぶりの新形式でトータルで150両が製造されたようです。道内の各地に分散して配置されていましたので私が比較的頻繁に北海道を訪れていた1980年台前半には道内各地の普通列車ででキハ22に混じって活躍する姿が見られました。

根室本線厚岸駅に停車中のキハ40+キハ22の普通列車

車体はフェニックス模型店製のバラキットを利用しました。キットは車両工作中断前に購入した1990年頃の製品です。床下機器はエンドウ製、台車はカツミ模型店製のDT38(201系用)を流用しました。
車体はキットをほぼそのまま組み立てましたが以下の部分を加工してあります。
1. 車体冷却水補給口の追加
2. 屋上排気管
3. 乗務員扉把手部半円形切り欠き
4. 乗務員ドア両側手すり
両運転台の車両2両であり屋根には水タンクを載置する低屋根部がありますので通常の車両よりは多少の手間がかかりますが組み立てはそれほど難しいものではありません。

乗務員扉把手部切り欠きと両側手すり部の切り欠きを追加. タブレットキャッチャーは未装着
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模型車両の紹介:北海道の急行用気動車(模型のウエザリングについての考察)

最近、いすみ鉄道に残るキハ28の最後の1両が定期運用を離脱したことが話題になり、TV等でも数多く報道されておりました。それに触発されたわけでもないのですが、今回は北海道の急行型気動車キハ56、キロ26を紹介させていただきます。いずれもフェニックス模型店製のバラキットを組み上げた製品で1990年ごろに製作した作品です。

キハ58をはじめとした急行型気動車はかつては全国の国鉄路線で急行列車から普通列車まで幅広く運用されており、運用上一般型気動車と混結して普通列車に使用されてもいましたが、その塗色は一般型気動車とは異なる塗り分けで編成中で目立つ存在でした。同じく数多く製造された101系、103系等が大都市向けの通勤輸送に特化された車両で見られる地域が限定されていたのに比較して、キハ58系をはじめとした急行用気動車はは全国津々浦々で運用されていたため全国各地でこの車両に接した方は多いと思われます。そのためキハ28の運用終了は全国のあまり鉄道に興味のない方々にとっても一つの時代の終わりを感じさせる出来事であり、話題になったのかもわかりません。

函館本線大沼付近を走る稚内行き急行”宗谷”.2両目にキロ26を連結.

<車両の紹介>

今回ご紹介する北海道向けの急行型気動車のデザインは全体的には本州の車両と同一ですが北海道仕様の車両の外観上の特徴は側窓が二重窓で窓の天地寸法が小さいことです。そのため稜線の目立たない張り上げ屋根の構造と裾の絞りにより相まって幕板部が非常に広く感じられるとともに車体の”丸み”が強調され印象的には本州用の車両とはかなり雰囲気が異なる感じがします。またグリーン車は本州用の車両の連続窓とは異なり普通車と同構造の二重窓が各座席あたり1個配置されており、普通車との外観上の大きな差異はなく、等級帯が廃止された後は普通車の中間車と言ってもおかしくないものでした。一方北海道の特急列車はキハ183系の登場以前は本州と同じ車両(キハ82系)が使用されており、急行列車に使用される客車も外観的には本州用の車両とほぼ同一でしたので、キハ183系の登場まではこれらの急行型気動車が北海道仕様の車両の外観の特徴が一眼でわかる唯一の優等列車用の車両でした。

モデルはキハ56が3両、キロ26が1両の4両編成です。北海道の急行型気動車の普通車は冷房車ではありませんので本州の冷房車で組成された編成とは異なり冷房用電源搭載車両とその給電可能な両数を考慮して編成を決める必要はありません。車体は冒頭に記載したようにフェニックス模型店製のバラキットで その他の主要パーツは台車(DT22)が日光モデル製、床下機器も日光モデルの製品です。また動力装置は天賞堂製のパワートラックGT−1を2両のキハ56に装着してあります。

余談ですが、90年代初めこの模型を製作したのち外国をテーマにしたレイアウト制作を始め、次にバラキットを製作したのは2015年ごろですので私のキット組み立て技術はこれ以降現在に至るまで向上しておりません。それでは以下写真を主体に各部を紹介させていただきます。

キハ56の全景.車体はフェニックス模型店製バラキットをほぼそのまま組み立て(改造点は後述)

車体キットの改造点は以下の3点です。

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Märklin CS3による自動運転を前提としたレイアウトセクション”終着駅Großfurra”の紹介(1):レイアウトの概要

このレイアウトセクションは以前15回にわたりこのブログで「自動運転を前提としたレイアウトセクション」として製作過程を紹介させていただいたメルクリンCS3による自動運担を前提としたレイアウトセクションです. この度 ”終着駅Großfurra”として一応の完成を見ましたので改めてその概要と自動運転プログラムの一例を紹介させて頂きます.

<レイアウトの概要>
このレイアウトセクションは以前このブログで紹介させていただいた機関区のジオラマ ”ALTENHOF機関区” の自動運転時の機関車の待機線線の部分に制作したレイアウトで,ALTENHOF機関区と対向する形で設置しています. その全体写真を下図に示します. 

手前が今回製作の”終着駅Großfurra”, 奥が”ALTENHOF機関区”

<線路配置>
今回のレイアウトは以前作成し、このブログでも紹介させていただいたジオラマ,”ALTENHOF機関区” の自動運転時の機関車の待機線線の部分を利用しています.その線路配置を下図に示します. このレイアウトでは図の上側2本の待機線は目隠しして下側の2本の待機線みを使用しています. 線路はメルクリンのKトラック,分岐器は#22715/#22716(Wide Radius Turnout)を使用しています.なお,一部の分岐器はFrog可動式の旧製品#2272/#2273も使用しています.

RailModeller Proで作図した線路.RailModeller ProはMAC用のアプリで欧米42種類のProduct Lineに対応

 下図はレイアウト全体写真上に線路配置を線で記入したものです. 黄色の部分が今回のレイアウトに使用した部分の線路, 水色の点線部分が目隠しした機関区の自動運転用の待機線, オレンジの部分が”ALTENHOF機関区”の線路で, 今回はこの機関区部分を自動運転用の車両待機線として使用します. 水色の部分はコの字型のBoxで目隠しし, 手前の壁に背景を作成, 上部は車両の展示台としてあります.

水色点線で示した部分は”終着駅Großfurra”の自動運転には使用しない
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模型車両の紹介と実車の写真:オハフ33・スユニ60・オロネ10

今まで客車の模型として、北海道の急行ニセコ、夜行急行列車の編成を紹介させていただきましたが、今回はそれとほぼ同時期に製作した国鉄一般型(旧型)客車の模型と、当時撮影した実物の写真をご紹介させていただきます。製作時期は、今から40年近く前の1980年代です。

1980年代は、まだ各地に一般型(旧型)客車が運用されており、東京の上野口でも高崎、東北、常磐線の普通列車の一部に郵便車・荷物車を連結した客車列車が運用されていました。80年代ともなると上野口では流石に使用されているほとんどの車両がスハ43系になっていましたが、東日本では東北地方の普通列車にまだオハ35、スハ32、オハ61等が運用されていました。

東北本線普通列車:手前よりオハ35 3271・オハフ61・スハフ42      1985.3 福島

そんな列車の中でも、列車の最後部に戦前型のオハ35(オハフ33)が連結されていると、凝った作りのデッキ部の絞られた車端部の造作がよく目立ち、列車として一種の優雅さを醸し出していたという印象がありました。

奥羽本線線普通列車 1980.8 山形

<オハフ33>
以下ご紹介させていただくオハフ33は、上記イメージを再現させるために作成した車両です。谷川製作所製のバラキットを組み立てました。

写真を見ていただくとわかると多いますが、この車両は雨樋なしの張り上げ屋根の車両として製作しました。オハ35の中には、試作的な要素を含んだノーシル・ノーヘッダーの車両や張り上げ屋根の車両が存在していたようです。当時私の客車バラキットの組み立ては、1973年にTMS誌に掲載されたなかお・ゆたか氏執筆の”客車の実感を求めて−ピノチオ製キットによる各種の試み−”という記事をを全面的に参考にしていましたが、その中に張り上げ屋根のオハ35系の作例がありました。その後、北海道で戦後型ではあるものの張り上げ屋根のオハ35を見る機会があり、それらのイメージをもとに、この車体を作成しました。なお、オハフ33にこのタイプの車両があるかどうかは不明です。

オハ35 851 1981.3 東室蘭
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