レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(5) -電気関係の仕様(全般)-

前回の台枠と線路関係の仕様に続いて今回は電気関係の仕様を紹介します.まずは全般的な仕様です.その前に列車が駅を出発するシーンの動画をご覧ください.

駅を出発するIC.信号が切り替わる時の信号灯の挙動はデコーダーのCV値で各種のパターンが選択できます

3-2 電気関係全般
a) 列車の制御
i) 列車の制御はMärklin Central Station3(#60226)で行なう.また一部の制御はMärklin Central Station3のEvent Programによる自動化を行なうこととしそれに必要なs88コンタクトをレイアウトの各部に配置する.
ii) Power Packは60VA Switihed Mode Power Pack230V (#60061)を使用する.電源(AC230V)はステップアップトランスで供給する
i
ii)列車の運転に関連するアクセサリは全てm83 Decoderで行ないMärklin CS3を用いて制御する

i
v) 列車位置検出はLink s88(#60883)を使用する.Link s88への給電はMärklin製ACアダプタ#66360を使用し.ACアダプタ電源(AC230V)にはステップアップトランスで電源を供給する
v) レイアウトの所定位置にmfx対応のColor Light Signalを設置し,s88コンタクトを利用した制御を行なう.
b)照明の制御
i) レイアウトの照明のON \OFFはM84Decoderを使用し全てMärklin CS3を用いて制御する
ii) 照明用の電源はDC15VとDC12Vとし,両者ともACアダプターにより給電する
c) Module間の接続
Module間の電気的接続はDINコネクタ,Dsubコネクタ,マイクコネクタ,NHコネクタを用いて行なう

このレイアウトはMärklinのmfxプロトコルによるDCC制御を採用していますので,コマンドステーションはMärklin CentralStation3を使用します.欧州での鉄道模型メーカーはMärklinがガリバー的存在ですのでRoco社等のコマンドステーションもmfxプロトコルに対応しています.とはいえMärklin製に車両を運転するならわざわざ他社の製品(Märklinから見れば3rd Party製品)を使用することもないともいます.パワーパック(ACアダプタ)はMärklin製の230V使用の製品で最大電流は約3Aです.ちなみにCS3にはレールに供給される電圧と電流をモニターする機能がありますので今回手持ちの車両の消費電力を測ってみました.矩形波の電流測定ですので測定方法によって多少の差はある(測定時の誤差は不明)と思いますが,CS3に表示される測定値は下の表の値でした.機関車の走行電流は単行運転時です.なお,Märklin製の230V使用のパワーパックは日本のPSE規格に未適合ですので使用にあたっては自己責任での使用となります.

CS 3の表示画面.TFPはTrack Format Processorの略号のようです.緑のチェックはこのソフトウエアが最新であることを表示しています.(CS 3の部分の赤数字はCS 3本体にアップデートがあることを表示しています(数字はアップデート数))
上の画面に表示される各車両の消費電流の一例です.

実物同様?時代とともに車両の消費電流は減少していますが,デジタル初期の製品でも消費電流は0.3A程度でありこの程度の規模のレイアウトであれば列車の走行に関してはパワーパックの容量は3Aあれば十分です.ただ今回ポイントマシンやUncoplerの動作にも走行用電流を使用しますのでそれに対する配慮は必要かもわかりません.今回m83DecoderのポイントマシンやUncoplerの動作時間(切替時のスイッチオン時間)はDefaultの200msに設定していますが列車の走行時に作動させても走行している列車(最大2列車走行時)への影響はないようです.私が鉄道模型を始めた頃はアナログ運転で2モーターの電気機関車に7-8両の室内灯(電球)付きの客車を牽引させると電流は2Aをオーバーすることがありましたがそれに比較すると隔世の感があります.

3線式のDCC制御の場合必須となるギャップはありませんが,このレイアウトには自動運転(Event Program)に使用する列車検知用のs88コンタクトを10箇所設けてあります.その位置を下図に示します.これらのs88コンタクトで想定したの主な用途はL 1-L 4,R3,R5が列車(機関車)の自動停止用,L6,L7がホームに入線(通過)する列車のサウンド制御および出発信号の制御用,R1が通過列車のサウンド制御,L5が出発線を通過(出発)する列車のサウンド制御および信号制御用です.

レイアウト上に設置したs88コンタクトの概略位置

分岐器はm83デコーダーで制御しますが,分岐器はダブルスリップスイッチ一基を含めて6基あります.m83デコーダーは1台あたり4個のポイントマシンを制御できますが,ダブルスリップスイッチはポイントマシンが2個必要ですので制御対象のポイントマシンは7個となり,2台のm83デコーダーが必要です.余った1個は2箇所のUncoupler の制御に使用します.この場合は直進側と分岐側に個々のUncoplerが接続できますので2個のUncoplerが制御可能になります.ダブルスリップスイッチは2台のポイントマシンを連動して動かすことが必要ですが,これはm83デコーダーのCV値を変更することにより可能となります.CV値で出力のペアを選択(CV34でアウトプット1と2,CV35でアウトプット3と4)を選択し,値を2(Double Slip Switch)に設定します.この時は2台のマシンからのリード線はそれぞれのアウトプットの片方に2本まとめての接続となります.なお,以下の説明はデコーダーのマニュアルに沿って進めますが実際の設定時に表示される画像は下図のようにCVが表示されず表示される説明語句もマニュアルと異なることがありますので注意が必要です.

Double Slip Switchを動作させるm83デコーダーのCV値の設定状態

信号機は数を絞り,比較的目につくところに設けることとし発着線の出発信号機として2基,通過線の左回り方向の出発信号機として3基を設置しました.今後待機線と駅の境界部に入換信号機の設置する予定です.信号機はレイアウトを実感的に見せるためには重要な設備ですが,色灯式信号機(Color Light Signal)は今回のように床に置いて比較的高い位置からレイアウトを見下ろす感じで運転するレイアウトでは点灯状態が見えにくく,また当然背面から見ると点灯状態がわかりません.今回のような最近の車両も入線するレイアウトでは不可能ですが,EraIII-EraIV時代のレイアウトを製作する場合はできれば腕木式信号機を使用した方が視覚効果という観点では有効であるような気がします.なお,信号がが切り変わる時のライトの挙動はCVで調整可能で,ライトがフェードイン,フェードアウトして点灯,消灯するまでの時間(CV48:Switing duration LED on/off)と切り替え時に両方のライトが消灯状態を持続する時間(CV50: Cross fading behavior)が調整可能です.最近の色灯式信号機は信号灯にLEDが使用されており切替は瞬時に行われますが信号灯に電球が使用されていた時代にはシステムの信頼性の向上(球切れの防止)のためか信号切り替えの際にランプがフェードアウト,フェードインするのが一般的であったような気がします.冒頭の動画はそれを意識してCV値を設定しました.

シグナルデコーダーの設定例.”LED time home signal string”が点灯,消灯時のフェードアウト,フェードイン時間の設定,Fading home signal stringが切替時の両方のLEDの消灯時間の設定です

m84デコーダーは回路のON \OFFを行う機能を持ったデコーダーでCV79で4種類のモードが指定できますが,今回はCV79の値を2(8 switches 8 addresses)に設定しました.またレイアウト上の照明はDC9VとDC15Vを使用しています.今回2種類の電圧を使用した理由ですが,レイアウトの照明の一部には12Vの米粒球を使用しているため12V以下の電源電圧が必要であったこと,駅のホールの照明に用いる表面実装型のLEDは取り付け部のスペース上配線の簡素化が必要で,そのためにLEDを直列接続で使用することが必要であり,その際に各LEDにかかる電圧を一定値(順電流)以上にするために12V以上の電源電圧が必要であったためです.

m84はCV値を8 Switches,8 Addressに設定

各モジュールを接続するコネクタは下表のとおりです.考え方はDsubコネクタを信号用,DINコネクタおよびマイクコネクタを最大数Aが流れる走行用の回路の接続に使用するという考え方です.ただ上記のようにパワーパック(CS 3)が流せる最大電流が最大3Aであるのに対してDINコネクタの定格電流は1Aです.そのため走行用電流の接続には1回路で2端子を使用していますがそれでも容量不足です.このため走行用電流の接続は全てマイクコネクタ(最大電流5A)に変更し,現在Dsubで接続しているUncoupler 動作用の回路とともにマイクコネクタに変更することを考えています.現状では特に支障はないのですが短絡時の保護回路の動作の確実性も考えるとコネクタの容量は大きいに越したことはないと思われます.ただ現在の接続方法でも短絡検知時の保護動作に特に問題はないようです..

なお上表には記載していませんが車両検出用のLink s88はModule外に配置し,リボンケーブルでModule1と接続しています.これはLink s88に取り付けられているCANケーブルが収納の際に邪魔になること,Link s88には外部電源の接続が必要となること,セクション外のC Trackに接続したs 88コンタクトの接続性を向上させるためです.

運転用機器,Module間コネクタの接続状態.Link s88はモジュール外に設置しリボンケーブルでModule2と接続.
Module2とModule 3はマイクコネクタで接続

以上が電気関係の使用の概要です.次回はデコーダーの配置やケーブルの引き回し方法等さらに具体的なところを紹介したいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(4) -台枠と線路-

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介は今回から構想ではなくより具体的に各部を紹介していきたいと思います.まずは線路と台枠から説明を始めます.その前に待機線から駅に向かうBR182の動画をご覧ください.

待機線から駅に向かうBR182,SIEMENS社製インバーター装置の磁歪音も過去のものとなってしまいました.

線路と台枠について仕様書には以下のように記載しました.
3 詳細仕様
3-1 線路関係
a) 使用する線路はMärklin K Trackとする.レイアウトと他線路はC Trackで接続することとし,接続部に接続用線路を配置する.
b) 制御方式はMärklin Digitalとし,線路には車両留置用のギャップを設置しない.
c) 線路にはEvent制御および自動運転用のs88コンタクトを設置する.
d) 分岐器の切り替えは#75941 Electric turnout mechanism をベース上面に設置し,#60832 m83 Decoderを用いて制御する.
e) 駅の各ホームには#2297 Uncoupler trackを設置する.制御は#60832 m83 Decoderで制御する.
3-2 台枠
台枠は以下の3分割構造とする
a) Module1:車両留置部
b) Module2:駅ホーム
c) Module3:発着線ホーム終端部
・ 線路配置(使用線路型番)はFig1,台枠寸法はFig2を参照のこと

使用した線路はMärklin K Trackです.K Trackの発売開始は1969年ですのでかなり古い製品ですが日本の篠原模型店発売のフレキシブルレールや分岐器はそれより古い発売でメーカーは替われど現在も発売が継続されています.これらのレールの構造を見ると製造用の型は結構複雑そうですし,種類も多岐に渡りますのでMärklinのような鉄道模型メーカーとしては大きなメーカーでもシステムを全面的に刷新するのは容易ではないのかもわかりません.また,このレールの3rd Rail用接点は4箇所あり接続で接触不良を起こすことはほとんどないため,設計は古いものの信頼性のレベルは今でも高く,この完成度の高さがデジタル全盛時代になってもシステムの刷新には至らない一因なのかもわかりません.ただPC枕木のフレキシブルレールはあっても良いのではないかという気がします.一方このセクションはCトラックに接続しますのでa)項に記載したように接続用の線路が必要になりますのでそれを考慮した線路配置の検討が必要です.

K Trackの3rd Railは接続時互いの4箇所の接点で接続されます.C Trackは3rd RailもGND Railも接点は4箇所あります

線路配置が決定したら線路の敷設を始める前には線路の設けるギャップの位置を決める必要がありますが,それに関連した記述が上記のb)項とc)項です.このレイアウトはデジタル制御かつ3線式ですのでショート防止のためのギャップは不要です.デジタル制御でもStaging Yard(隠しヤード)等に車両留置用のギャップを設け走行用電流をON \OFFする例はありますがそのような部分はこのレイアウトにはありません.昔からMärklinの信号機は赤信号の時に車両を停車させることが可能であることが特徴と言われており,現在のDigital信号機の基板にも赤信号の際に一定区間の電流を遮断するリレーが実装されていますが電流を遮断するとサウンドも途切れますのでデジタル制御ではこの機能をそのまま使用することはできません,したがってここでギャップ位置を検討するのは自動運転や信号制御に関連するs88コンタクトの場所のみになります.またd)項のポイントマシンの設置位置ですが,外観的には当然ベースの下側に設ける方が外観上は望ましく,床下取り付け用のキットも発売されていますが今回はベース上面への設置としました.私も以前ポイントマシンのベース下へに設置を行ったことはあるのですが,当時のポイントマシンは他社製のものに比較すると非力でリンク機構を介して動作させると動作不良を起こしやすく,一度動作不良を起こすとベース上面からは手動では切り替えができず,調整はベースを裏返して行う必要があるという不便さがありました.このため最近製作したレイアウトはポイントマシンは全てベース面上に取り付けており今回もその方式を踏襲しました.e)項のUncoupler Trackは発着線上での機関車の交換手順を考慮して位置を決めました.これらを考慮して決定した線路配置が下の図(Fig1)になりますがそのまま掲載すると図が非常に小さくなるため別に3分割で掲載します.

線路配置の全体図です
待機線部分の線路配置の拡大図です

レイアウト左側,待機線部分の線路配置です.下側の#24922がC TrackとK Trackを接続するための線路でこの先にC Trackを接続します.

プラットホーム部の線路配置の拡大図です

駅のプラットホームの部分です.一番下の通過線にも待機線との渡り線を設けました.上側の発着線にはUncoupler Track(#2297)を配して待機線に待機している機関車との機関車交換が行えるようにしてあります.2本の発着線の線路間隔は使用するプラットホームに合わせて102㎜としました.通過線と下側発着線の線路間隔は57㎜です.なお,線路型番の後ろに(-)が付与されているものは,型番通りの長さではなく短く切断してあることを示します(Flex Track(#2205)を除く).

駅の発着線終端部の線路配置です

発着線の終端部です.上から2板目の発着線に機関車を先頭に入線した列車はUncoupler Track(#2297)で客車から切り離されて列車の出発までホーム先端で待機します.こちらのC Trackとの接続部は#24922では長さが長すぎるためC Trackの#24172を短く切断してK Trackと接続するようにしてあります.

以上がこのレイアウトの線路配置です.なおこの作図にはRailModeller Proというソフトを使用しています.線路配置の作図ソフトはWintrackが有名ですがその名のとおりWindowsでしか作動せず私の普段使いのMacでは使用できませんのでこのソフトをApp Storeで購入しました.動作は安定しておりKATOやTomixの線路もリストにあり,最近もアップデートが行われたようですが現在入手できるかは不明です.

次は台枠について記載します.台枠は線路を敷設するベースになるため本来仕様書での項立ては線路配置より先に来るべきという気がしますが,今回の台枠は分割しますので線路配置が決まらないと台枠の寸法が定まらないため仕様書状への記載は線路配置の後としてあります.まずは全体寸法を下図に示します.台枠は仕様書どおり3個のモジュールに分割しています,全体の寸法は長さ3220㎜,幅280㎜です.ここのモジュールの寸法は以下のようになります.

台枠の全体図です(Fig2)
Module1の平面図です
Module2とModule3の平面図です

構造は厚さ9㎜のシナ合板の左右に厚さ12㎜,幅40㎜の杉角材を取り付けたコの字型の形状です.床面からの高さは以前製作した”ALTENHOFのクリスマス”の線路高さと同じにしてあります.そのため下の写真のように設置場所に並べて置くと待機線の奥に本線があり,その上に町並みがある情景を演出できます.

収納場所で待機線に停車するV220 の写真

Module1とModule2の接続はModule1の両側の檜角材の内側に取り付けたガイド板をModule2に差し込む事により行ないます.レールにはジョイナーを取り付けてありますが,ガイド板の差し込み部のガタを極力無くす事により調整なしでジョイナーは相手レールに嵌まります.

Module1とModule2の接続部

Module2とModule3の結合も同様のガイドで行いますがこちらはガイド部材として10㎜角の檜角棒を用いています.

Module2とModule3の接続部

これらのガイド部材を精度良く仕上げるにはModuleの素材を切り出した後,線路取り付け前のModule組み立て時にガイド部材を取り付ける事が必要です.この時モジュールを裏返した状態でガイドの摺動面をクランプで挟んで両側に取り付ける角材とガイド部を組み立てます.すなわち摺動部の隙間を予め確保して組み立てるのではなく,隙間0で組み立て,接着後もしはめ込みがきつかったらガイド部を紙やすりで削りながらスムーズに着脱できるようになるまで調整を繰り返すことでガタを無くします.欧州製の車両(NEM規格のフランジ形状の車両)はフランジが高いため正しく敷設された線路では脱線事故はほとんど起こりませんがこのようなモジュールでは足を引っ掛ける等で生じたモジュール間のずれに気づかずに運転すると脱線事故につながります.特にDCC車両は脱線によるショートでデコーダーを破損するリスクがあるためガイド部設計の際は片方のモジュールを多少動かしても接続したモジュールがその動きに追従するようにガイド部を精度良く製作し,脱線事故発生の可能性を極力排除することが必要です.

Module1とModule2の接続部,電気的接続に関しては次回紹介します

以上で台枠と線路配置に紹介を終わります.次回はモジュールの電気的接続方法等,電気的な仕様について紹介したいと思います.最後までお読みくださりありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(3) -線路配置とシーナリー・ストラクチャーの構想-

基本構想に続いて3回目の今回は線路配置について紹介します.今回も仕様書の記載項目に沿って説明を進めたいと思いますが,まずは駅を通過する列車の動画をご覧ください.

駅を通過するLufthansa Airport Express

2.線路配置
駅は3線構造とし通過線1線,発着線2線とする.駅ホームに対向する機関車留置線は3線とし,そのうち1線は機関車2両の留置を可能とする.停車可能な列車の長さは通過線がUIC-X客車5両+機関車,発着線がUIC-X客車6両+機関車が発着できることを目安とする(UIC-X客車はMärklin製の全長284㎜の客車を想定

言葉ではわかりにくいため,実際の線路配置を示し,この線路配置とした理由を説明します.下の図の青い部分が今回製作したレイアウトセクションで,赤部分はセクションに繋がる線路(セクション外)になります.非常に細長いセクションのため,モバイル端末では図が小さくなり非常にわかりにくいと思いますがご容赦ください.

このセクションは設置場所のスペースの関係上長さは3,400㎜以下とする必要があります.また収納の関係上レイアウトは数個のモジュールに分割する必要があり,これが線路配置を検討する上での最上位の制約条件となります.当然分割したレイアウトをどこに収納するかも重要です.また収納場所まで移動させるためには重量に制約もあります.私は今までレイアウトセクションを何種類か製作してきましたが,その経験からいうと分割したモジュールの取扱性に関してはモジュールの幅が重要であると感じます.鉄道模型のモジュールは一般的には長さは長くなりますが,同じ長さでも幅が違うと取り扱い性に大きな差がます.例えば私が以前製作した市街地のレイアウトセクション(ALTENHOFのクリスマス)の幅は450㎜,最近製作した日本型の北海道の機関区のレイアウトは300㎜ですが,両者の取り扱い性には大きな差があります(長さはいずれも1300㎜前後です).幅が大きくなれば当然重量も増えますし,収納場所(棚等)から下ろす時の取り回し性も悪化します.わずか150㎜の差ですがその差は寸法以上に大きいと感じますし,取り回し性(設置性)は使用頻度(運転頻度)にも影響します.概略検討の結果,今回のレイアウトの最大長は1500㎜強になると思われため,保管場所のスペースも勘案し,幅は機関区セクションより狭い280㎜に決定しました.この280㎜幅のスペースで主要駅(Hbf)の雰囲気を出すことは容易ではありませんが無理をして途中で製作を断念したり完成後に取り扱いに困っては元も子もないのでこの寸法に決定しました.
280㎜幅ですとプラットホームの幅を確保した上で敷設できる線路は3本が限界ですのでそれを前提にして考えると次に決定すべきことは通過線を2本にするか3本にするかですが,私は通過線を1本としました.理由は停車できる列車の長さが発着線の方が長くできること,比較的大きな規模の駅ですので駅でのすれ違いや列車交換はあまり気にしなくて良いと考えたためです.頭端式のホームでは当然到着した客車列車の折り返しをどうするかが問題となりますが最近では機関車牽引の長距離列車でもプッシュプル方式の列車が増えていること,プッシュプル列車ではなくても到着列車はホームに対向する位置にある機関車の待機線で待機する機関車と機関車交換が可能になることも通過線は1本で良いと判断した理由です.私は実際に見たことはありませんが欧州の頭端式の駅では頭端側で機関車を解放したのち反対側に別の機関車を連結し,列車発車後の開放された機関車がその後を追うように発車し待機場所まで戻るという例があるようです.そこでプッシュプル方式ではない機関車牽引列車の折り返しはこのような手順を想定し,発着線には開放ランプを設置してすることとしました.分岐器は分岐側半径902.4㎜の大型の分岐器とダブルスリップスイッチを使用し,線路間隔は並行する線路が57㎜,島式ホームを挟む部分が102㎜としています.この102㎜という寸法は使用するKibri 39565(Platform hall Bonn)に付属しているプラットホームの幅に合わせて決定しました.発着線の出口はダブルスリップスイッチを配して発着線で客車を解放した機関車はこのダブルスリップスイッチを通って待機線に向かう配線としました.ダブルスリップスイッチは欧州の駅では多用されており,スペース上も有利であるため欧州のレイアウトプランでは多用されています.今回のプランでは小規模の駅となるためダブルスリップスイッチは1個しか使用していませんが欧州の比較的大きな駅の雰囲気を出すには不可欠?のアイテムのような気がします.また下の写真にもありますが,日本ではほとんど見かけることのないクロッシングもよく使用されているのを見かけます.なお,2線式のダブルスリップスイッチはフログの極性の切り替えが複雑になりますが3線式の場合は何もする必要はありません.

ダブルスリップスイッチやクロッシングが使用されているDüsseldorf駅構内

駅のホームに対向する機関車の待機線は3線あります.仕様書では3線のうち1線に2両の機関車2両を留置可能と記載しましたが,このレイアウトはデジタル制御ですので待機線に留置できる機関車は留置線の有効長と機関車の長さのみで決まります.ここでの2両が留置可能という意味は3線のうちの1線にはs88コンタクトを2箇所(他線は1箇所)設け,自動運転プログラム(Eventプログラム)で2両の機関車を留置可能にするという意味になります.

続いてシーナリー.ストラクチャーの構想は仕様書に以下のように記載しました
3.シーナリーとストラクチャー
a) 地面は起伏のない平坦面とする.
b) 主要駅の雰囲気を出すためプラットホームにはドーム状の上屋を設ける.またホーム上には行き先案内板や売店  等, 主要駅に相応しい設備(施設)を設ける.
c) 駅と信号所の境界付近に信号所と付帯設備の建物を設置する.留置線は機関車の留置のみを行なう施設として照明灯以外の機関車の整備作業を行う設備は設けないこととする.    
d) 路線は電化路線とし,架線柱,タワーマスト,クロススパンを設置するが架線は省略する.

このレイアウトの性格上いわゆるシーナリーと呼ばれるものは地面の表現のみとなります.一方,ストラクチャーは主要駅の雰囲気を出すためにプラットホームはドーム上の上屋(Bahnsteighalle/Plathorm hall)を持ったものとします.この上屋はFrankfurt HbfやHamburg Hbf等非常に大きな構造物もありますが,このセクションはそのようなものではなくもっと規模の小さなものとし,この上屋はViessmann社Kibri ブランドの#39565(Plathorm hall-Bonn)を使用を前提に線路配置を構想しました.

駅に停車中のLufthansa Airport Express

このキットはキット名のとおりBonn Hbfの上屋を模したものです.私の世代は学生時代地理を学んだ時点でまだ東西ドイツは分断されており,当時の西ドイツの首都はボン(Bonn)でした.このBonnはベートーベンの生誕地であり,またシューマンが最晩年を過ごした街で浪漫派のクラシック音楽の愛好家には有名ですが,現在ではあまり話題になることはないようです.また当時も暫定首都という位置付けでした.そのせいか駅舎は立派ですが構内の規模は首都という割には小さい感じです.ただかつては西ドイツの首都であったため各方面に向かう列車が通る駅となっており今回のようなレイアウトセクションのイメージを構築するには参考にするには好適な気がします.私はBonnには行ったことがないのですがWEBサイトに掲載されているこの駅の多くの写真を見て自分なりのイメージを構築しました.下の写真はDuisburg HbfのPlathorm hallの写真です.Bonnの人口は約40万人,Duisburgの人口は約40万人で,東京では世田谷区や八王子市の人口と同程度ですが,もちろん人口密度はことなるものの,この程度の人口を要する都市にもPlathorm hallを持ったHbfはあるようです.

Platform hallのあるDuisburg Hbf

またc),d)に記したように待機線と駅の間には信号所と建物をを設けることとしました.また手元にある車両には電気機関車や電車も存在するためレイアウトは電化路線として架線柱,タワーマスト,両側のタワーマストを結ぶクロススパンを設けますが,架線は省略することとしました.

駅側から待機線方向を見た風景

以上で線路配置・シーナリー・ストラクチャーの構想の紹介を終わります.次回からは使用した製品等,より具体的にこのレイアウトセクションの紹介をしようと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(2) -基本構想-

今回から本レイアウトセウションの紹介を始めますが,前回記載したように紹介は仕様書に記載した項目に沿って進めたいと思います.具体的には仕様書に記載した内容を太字で示し,そこに補足を加える形で紹介を進めます.

駅のホームに停車しているLufthanza Airport Express
信号所の横を通り待機線から駅方向に向かうV200と待機線で待機するV160.
  1. レイアウトセクションの基本構想
    本レイアウトセクションは欧州の主要駅(Haupt Bahn Hof)の雰囲気の再現を目標とし,通過線1本と頭端式の発着線2本を設けた駅とする.また駅ホームと対向する位置に機関車の待機線を設け,頭端式の発着線では機関車の交換を可能とすることにより運転に変化をつけられるようにする.制御方式はMärklin digitalを使用し,セクション内にはs88コンタクトを設置して列車の発着時および列車が発射する際のサウンドシーケンスや機関車交換時の制御,信号の制御を一部自動化する.なお,通過線はMärklin C-Trackを接続可能とする.

    日本語では”主要駅”と呼ばれるHauptbahnhofはFrankfurtやHamburgのように多くの頭端式のホームを持つターミナル駅からホームが数本のみの比較的小規模な駅まで各種ありますが,私の感覚では長距離列車が発着するその都市(地域)の拠点駅というような感覚です.今回はスペースの関係上あまり大規模な駅を製作することはできませんので駅の規模は小規模なものにならざるを得ませんが,長距離列車の発着を考えるとホームの有効長はそれなりの長さとする必要があります.
    実は私がこのような駅を製作するのは初めてではなく,以前製作したZゲージレイアウトでは頭端式の駅を製作しています.
Zゲージレイアウトの頭端式のターミナル駅

このZゲージレイアウトの線路配置は数に示すとおりでリバースループを持つエンドレスの周回線から分岐した部分に終端駅を設けてあります.この線路配置はメインとなる駅を終端駅としたレイアウトでは比較的多く用いられるものですが,今回製作したものは駅部分のみのレイアウトセクションでこのレイアウトの周回線の部分に相当する部分はシーナリー無しのフロアーレイアウトになるため駅を終端駅にすると列車が駅に戻るためには周回線にリバース区間が必須となるため今回は駅の部分に通過線を設け,フロアーレイアウト部分を単純なエンドレスとしても連続運転が可能となるようにしました.それに伴い通過線のホームの有効長は短くなりますがそれはやむなしと判断しました.また上記のZゲージレイアウトでは列車がエンドレスを周回している間に駅に停車した列車の機関車交換を行えるようにしましたが,今回製製作するレイアウトセクションでも同様の機関車交換ができるような線路配置としてあります.

Zゲージレイアウトの線路配置.下部が頭端式のターミナル駅

制御方式は従来から使用しているMärklin Digitalを採用しています.前回の記事で記載したように今回のレイアウトに外国型を採用した理由はレイアウトにあるテーマを設定した場合外国型を採用した理由はその方が多彩な車両をを楽しめるということのほかにDCC制御の車両が比較的安価に手に入ることもその理由の一つです.また私は以前からデジタル制御方式にMärklinの3線式のシステムを採用していますがさらにこのようなレイアウトセクションではDCC制御に加えて3線式のシステムに大きなメリットがあるようにも感じます.なぜなら3線式ならばこのセクションに接続するフロアーレイアウト部分の線路配置はリバース区間を設けようが設けまいが全くその時の気分次第でまさに子供がプラレールの線路をつなぐのと同じ感覚で自由に線路を配置できるからです.さらに分岐器の道床部分にポイントマシンとデコーダーを組み込んでおけば分岐器をどこに配置しようとそのアドレス(名称)さえ把握していれば分岐器をどこに配置してもコマンドステーションから分岐器の制御が可能になります.また2線式のシステムでフロアーレイアウトを敷設する場合には複線で2列車同時運転をしようとした場合2線式では渡り線の部分は必ずリバース区間になりますのでそのための配線とスイッチが必要になります.スペースの関係上なかなか固定レイアウトが普及せず車両工作主体の日本の鉄道模型ではもしかしたら気軽に運転を楽しむ最も最適なシステムは3線式のDCC制御なのかもわかりません.

駅に停車しているEra IVの食堂車.

なお,今回のレイアウトセクションでは完全な自動運転を行う予定はありませんが,列車の発着時案内放送や汽笛の吹鳴等のシーケンシャルな制御を行うこと,駅に設けた信号機の制御を行うことを目的に各線にs88コンタクトを設けることとしました.駅の出発時の案内放送は一部の車両ではファンクションの中に実装されていますが,Märklin CS3には自動運転機能(Event)の一部として外部スピーカーからSDカードに格納したサウンドファイルをシーケンシャルに再生できる機能もありますので将来的には(音源があれば)その機能も使用したいと考えています(CS3はスピーカーを内蔵していますので,CS3から音を出すことも可能です).日本のNゲージではサウンドボックスなるものが発売されていますが,私は本来車両から出る音は車両から,周囲から出る音は周囲のスピーカーから出すことが鉄道模型のサウンドの本来のあり方であると考えます.その実現に際してはHOゲージレベルのサイズなら技術的なハードルは全くないと思われます,日本のメーカーがDCC制御を積極的に普及させようとしない理由が私にはわかりません.メーカーや販売店にはユーザーサポートのためにそれなりの知識が必要になることが普及のネックになっているのでしょうか.

ドイツでは最新のICEにも供食設備のある車両が連結されています.

以上で基本構想の説明を終わります.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(1) -はじめに-

ALTENTAL HBFに停車中の食堂車

今回ご紹介させていただくのは長距離列車の発着するターミナル駅をテーマとしたHOゲージのレイアウトセクション,ALTENTAL HBFです.

私が今まで製作したレイアウトセクションは機関区や支線の終着駅のレイアウトセクションで機関車や短編成の列車が発着する幹線を走る長距離列車とは無縁のものでした.一方子供の頃から東京に住んで鉄道模型に親しんでいた私にとってその原点となった風景は各方面を結ぶ長距離列車が発着する大都市のターミナル駅の風景であり,その風景を模型で再現することはいつかは行なってみたいことでした.それもあり私が過去に製作した日本型の車両や購入した外国型の車両は比較的幹線を走る車両が多くなっています.しかしレイアウトという観点で考えるとそれらの車両が活躍するレイアウトを製作することは容易ではない(実質不可能である)ため,これらの列車の運転は長年 ”お座敷運転” 状態が続いていました.しかし私も高齢者の仲間入りをする年となりましたので今回意を決して長距離列車が発着する駅のレイアウトセクションの製作を開始しました.このレイアウトセクションに着手したのは今から3年ほど前ですが,前回まで紹介した日本型の機関区セクションを優先して製作していたため長らく製作を中断していました.しかし機関区セクションも完成したため製作を再開し,この度その基本部分が完成しましたのでその概要を紹介したいと思います.なお,レイアウトは未完成で現在も製作は継続中ですので記事の完結までには時間がかかることをご了解ください.それではまずは駅を通過するE03牽引するTEEの動画をご覧ください.

長年の目標であったレイアウトを製作するにあたって,日本型で製作するか外国型で製作するかはほとんど悩むことなく外国型を製作することにに決定しました.子供の頃から上野駅や東京駅の風景に慣れ親しみ,新幹線開業前の賑わいを知る私でも,その後訪れたヨーロッパのターミナル駅の面白さは格別です.今から40年以上前の新幹線開業前の上野駅はいわば在来線特急列車の全盛期で,各方面に向かう優等列車が1時間に10本近く運転されていました,しかし今思うとそれらの車両はいずれも同じようなタイプの車両ばかりで塗色も用途別に標準化されており類型的で面白みに欠けたものでした.また新幹線が開業した後は長距離列車は新幹線に移行してしまい優等列車の数も減り,夜行列車も次々と廃止され在来線のターミナル駅はすっかり寂しくなってしまいました.

日本のターミナル駅のこのような光景はすっかり過去のものとなってしまいました

それに比較すると現在でも欧州のターミナル駅には各国から様々な車両が乗り入れており,高速高速列車,機関車牽引の長距離優等列車をはじめとしてInter urban的な機関車の牽引する2階建客車や電車が煩雑に発着しており,2000年以降も夜行列車やカートレインの姿も見ることができました.欧州では日本と異なり高速列車も”在来線”に発着しますので駅に高速列車も含めてEra4〜Era6の列車を混在させても違和感がなく(車両選択の自由度が高く),車両の国籍や年代等にあまり拘束されない何でもあり?のワンダーランド的な世界を味わうことができます.

食堂車を連結した高速列車の隣のホームで発車を待つ機関車牽引の快速列車.欧州では現在でもこのような光景を見ることができます.

また外国型の製品はDCC制御が標準となっており,ライトやサウンドの多彩なコントロールが可能であり,プログラムにより駅発車時の車両のシーケンシャルな動きを自動化したり信号を制御することも容易に可能です.このようなことを考えると日本型か外国型かの選択に迷いはありませんでした.
<仕様書の作成>
今まで私が製作してきたレイアウト(レイアウトセクション)では所謂仕様書というものは作成していませんでした.これは趣味と業務の違いと言ってしまえばそれまでですが,今回のレイアウトは比較的大型のセクションで,駅構内での入替作業をシミュレーションして線路配置や信号の配置を検討したり,分割した台枠の電気的接続の検討結果やコネクタのピン配置を図面として残しておく必要があります.そのためこれらの検討結果を図面と文書で1箇所に残してしておくことが必要と考え,製作前に仕様書を作成することとしました.次回以降はこの仕様書の構成に従ってレイアウトの概要を紹介していきたいと思います.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(19) -レイアウトの製作を終えて思うこと(運転という観点で)-

前回はレイアウト上の機関車の細密度がレイアウトを見た時の「実感」にどの程度影響を与えるかについての見解を記載させていただきましたが今回は私がこのレイアウト上での車両の運転した際に感じたことを記載してみようと思います.

レイアウト上のC12.この車両は1980頃ににカツミ模型店のシュパーブラインシリーズのキットを組み立てたものでモーターは当時蒸機に一般的に用いられていたDH−13を使用しています.

私が以前このブログで紹介したMärklin Digitalを使用した機関区のレイアウトセクションの製作を開始したのは2010年頃でしたがこの時点で今回製作した日本型のレイアウト上で走らせようと思った蒸機は一部を除いて殆んど存在していました.それでも当時私が今回製作したような日本型のレイアウトを製作せず外国型のレイアウトを製作した理由は車両の ”走り” でした.当時手元にあった日本型の蒸機は全て1960年代から使用されている駆動機構でモーターも解放式の横型モーターと言われるモーターで走行性能や走行音は満足とはいえない状況でした.それに対し当時手元にあった外国型のデジタル制御の蒸機はコントローラーのノブ位置に応じて車両速度が変化しスロー運転も問題なく行なえます.また2線式のような車両留置用のギャップの設置と切り替えも不要で機関車の駐機も場所を問いません.当時私はそのような点に大きなメリット感じ,”運転を楽しむならこれしかない”と考えて製作したのが最初に製作したレイアウトセクションである”ALTENHOF機関区”でした.その後のMärklin Digitalを含むDCC制御の発展は凄まじく,製作当初は予想していなかった多彩なサウンドやライトの制御が可能となり,その後導入した自動運転機能と相まって狭いレイアウトセクションでも充実した運転が可能になりました.
今回日本型レイアウトの製作に当たっては手持ちの車両で果たして低速でのスムーズな走行が要求される機関区をテーマとしたレイアウトセクション上での運転が楽しめるのかは製作当初から懸念点として把握しており,このレイアウトの一連の紹介記事の冒頭にもその旨は記載させていただきました.そして実際にレイアウト上で手持ちの車両を走らせてみると想像どおり機関車の走る周囲の情景は機関車の走行性能の悪さをカバーするものではなく,このレイアウト上での運転はサウンド付き車両のDCC運転に比較すると残念な結果でした.改めて調整を行っても私の技術力不足もあってかなかなかデジタル制御のような”全速度域での”Silkyな走り”には近づけられません.これは結果的にレイアウト製作前に想定したとおりの結果でしたが,そうは言っても自分が苦労して製作した機関車がレイアウト上で動くのは見ていて楽しく,それはそれで充分楽しめます.ただこれはあくまでも私の私の感覚ですが,機関区のレイアウトセクションでの運転という観点ではレイアウトという舞台を用意して昔苦労して製作した思い入れのある機関車が動くのをレイアウト上で眺めてもそれはデジタル制御での運転の楽しみを凌駕するものではないと感じました.

レイアウト上を走るD H-13モーターを搭載したC62.異音はゴムジョイントの劣化による振動のようです

私が現在使用しているパワーパックはMärklin社のZゲージ用のパワーパックで1995年に購入したもの(ロゴ以外の形状は1972年に初めてZゲージ用として発売されたものと同一)ですので出力が小さくどこまで平滑な直流が出力されているかは不明です.このパワーパックを使用しているのはい今まで使用していたパワーパックが故障したためで,最新のパワーパックやPWM制御のパワーパックを導入すれば少しは現状が改善されるのかもわかりませんが.アナログ運転機器にこれ以上投資する気にもなりません.現在所有している蒸機をDCC化することは駆動系全体の大改造が必要と思われ,私には資金的にも知識的にも技術的にも不可能で,残された方法は既成の日本型DCC車両を導入するしかなさそうです.私の外国型レイアウトを走る車両は全て既製品で自作の細密機ではありませんがそれでも運転は充分楽しめることは経験済みですし前回の記事のようにレイアウト上の運転で実感を得るのに細密機は不要ということは確認できましたので,市販品を購入して運転を楽しむことも考えました.手元にあるMärklin Central Station3はDCCにも対応していますので制御システムのインフラは整っています.しかし一般の(資金力の乏しい?)鉄道模型愛好者が購入できる価格でDCC対応を謳う製品を発売しているメーカーはごく一部(1社?)で常時多くの機種が市場に在庫してはおらず,これから日本でメーカーや雑誌の発行元がが主導してDCCを推進していこうという意欲も全く感じられません.機関車から音を出すだけであればPFMサウンドやカンタムサウンドもありますが,どちらもパワーパックが機関車1台に1基必要でこの世王なレイアウトでは現実的ではありません.このレイアウトの製作を開始した時にはレイアウト完成後,このレイアウトを何らかの形でDCC化しようと考えていたのですが,レイアウトが完成してあらためてDCC導入に向けて検討を開始てもこのような状況は以前と全く変わっておらず,仕事をリタイアし鉄道模型に投資できる金額も限られる中,正直日本型のDCC対応車両を購入する気が起きません.残り少ない人生で今後も鉄道模型を運転という面から楽しもうと考えた時,日本型HOスケールの鉄道模型をDCC制御でPlug & Play的に気軽に楽しむことは少なくとも現時点ではもう諦めた方が良いのではないかとさえ感じている今日この頃です.かつて鉄道模型趣味誌の主筆であった山﨑喜陽氏がご存命であったら今の状況をどのように思われるのでしょうか.

外国型の機関区セクションを走るBR39(制御方式はMärklin digital). バックグラウンドのノイズは発電機のタービン音手動でOn/OFF可能)です.対向するBR01はランニングギアの点検灯を点灯させています.

苦労して製作したレイアウトセクションのまとめとしてこのようなネガティブなことを書くのは正直気が引けたのですが少なくてもこれが現時点における私の率直な思いです.どこかのメーカーからサプライズ発表でもあればまた気が変わるかもしれませんが・・・.もちろん鉄道模型の楽しみ方は人それぞれですので私とは異なった感覚を持つ方も多いと思います.あくまでも私の感じたこととしてお読みいただければ幸いです.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(18) -レイアウトの製作を終えて思うこと(レイアウトの実感と車両の細密度の関係)-

蒸気機関車が活躍していた時代の機関区の製作過程の紹介は前回までで終了し,今回からはこのレイアウトセクションを通じて考えたこと,感じたこと等を述べてみたいと思います.まずはレイアウトを実感的と感ずるためにはレイアウト上の車両はどの程度の再密度があれば良いかを考えてみます.

レイアウト上のC12とD51.完成年は40年以上異なり細密度のレベルも異なります

最近のHOスケール(16番)の市販車両は以前と異なり全体的なプロポーションが一目見ておかしいという車両はなく全体的に細密化しています.中には一見実物の印象と異なるように見えてもよく見てみると模型の形態が正しく私の印象が間違っていたことがわかるというような事例もあります.また自作車両も毎月発行される雑誌を見る限り細密化がエスカレートしており雑誌には「ついているものは何でもつける」という方針?の作品が数多く発表されています.市場ではプラ製品の普及等でベーシックなキットがほとんど姿を消したにもかかわらずディテールアップ用のパーツは新製品が数多く発売されるという不思議な現象も見られます.
かくいう私もかつてバラキットや細密化用のパーツが数多く発売されていた時期に蒸気機関車のバラキットのディテールアップ工作を楽しんだ経験があり,今回日本型レイアウトを製作した動機はこれらの機関車をレイアウト上で鑑賞するというものでした.そこで今回は機関車の細密化はどの程度「レイアウトを実感的と感ずること」に寄与するかを考えてみたいと思います.
機関車をレイアウト上で鑑賞(目視)した時の見え方とは言っても目視した時の感覚は説明が難しいので写真で説明を試みます.下の2枚の写真は今回製作したレイアウトの給砂塔の前に停車するC12とD51でいずれも運転時にレイアウトを見ている距離から撮影したものです.写真のC12は1980年ごろの作品でD51は昨年製作した最新の機体です.1980年製のC12はヘッドライト,主発電機および車警用発電機,汽笛や轍砂管元栓をロストパーツに交換してありますがパイピングはあまり追加しておらず,新たに追加した警用発電機は取り付けただけでパイピングは一切しておりません.またバルブギアはキットのままでロッド類はプレス製のままとなっています.これに対しD51は実物写真を参照して一通りのパイピングは設けてあり,例えば車警用発電機にはマフラー,電線管,スチーム管,ドレン管を取り付けてあります.またバルブギアは加減リンクをロスト製に交換し,一部のロッド類は洋白版で作成し先端をフォーク上に加工して一部に真鍮線を植え込んであります.そしてこの車両がが給砂塔前に停車している2枚の写真を比較した時,私の感覚ではレイアウトの「実感」という観点で両者にあまり差は感じられません.

レイアウト上のC12
レイアウト上のD51

さらに望遠マクロで機関車をクローズアップして撮影した写真が下の写真ですがこちらも上の写真と同様,あまり差がないように感じます.車警用発電機のパイピングの有無はあまり気にならず,バルブギアは光があたる角度によりC12のロッドプレスのダレが目立つ(わかる)場合がありますが,全体的に見た場合それらが実感を損ねる大きなな要因にはなっていない気がします.

望遠マクロでクローズアップしたC12
上の写真と同じ場所から撮影したD51

この辺りの理由について,脳科学の先生であれば理論的に説明してくれそうな気がするのですが私の経験で思い当たることは人間写真や実物を見る時その全体を細部まで把握できていない(見ることができていない)のではないかということです.我々は一度に多くの情報が存在しているものを見てもその中の全ての情報を認識して処理していないということは事実のようです.それは我々が上の写真のような情景を見て実感的か否かを判断する際に機関車の細部はあまり認識しないでそれを判断しているのではないかと思います.
美術館では我々(私)が絵画を鑑賞して評価する時,細部までつぶさに観察してその中にある全ての情報を得てから評価をしていません.第一印象としては過去に好ましいと思った絵画(の記憶)と比較して割と瞬時に判断しています.それと同様,我々は上の写真ような情景を目で見て見て実感的か否かを判断する時には我々は過去に見た機関区の記憶と照らし合わせてその記憶と合致していれば実感的と判断し,その際機関車の細部までは見ていないのではないかと思います.これは今までの記事でも何回か触れてきた故なかお・ゆたか氏が1951年位執筆した”鉄道模型における造形的考察の一断面”の記載内容に通ずるものがあります.氏の書いた記事はどちらかというとモデル=車両と捉えている感がありますが情景(機関車の姿)を過去の記憶と照らし合わせる時,車両+レイアウトに注目するか車両のみに注目するかで記憶に蘇る機関車の「細密度」は異なっているのではないかと思われます.そう考えるとレイアウト上の機関車の細密度は一定の閾値以上であればそれ以上の細密さは判断に影響を与えず,むしろ全体的な印象が実機を正しく捉えているか否かに影響すると考えられます.そしてレイアウト上の車両に要求される許容細密度の閾値は細密モデルと言われるモデルが要求している細密度より低いのではないかと考えます.ただ再密度の高さが実感を損ねているとは感じませんし,レイアウト上に細密どの異なる車両が存在してもあまり気になりません.これはレイアウトを製作した前から薄々思っていたのですが実際にレイアウトを製作したことにより今回改めて確認することができました.そうすると次にレイアウト鑑賞したりその中で車両を走行させる場合,車両にどの程度の細密度が必要になるかということが問題となります.これについて私の大雑把な感覚では国内外のガレージメーカーではない老舗鉄道模型メーカーのダイキャスト製の量産品の細密度が結構参考になるのではないかと感じますが,これについては後日述べてみたいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.次回はこのレイアウト上で車両を走らせた時に感じたことを書いてみたいと思います.

真鍮板から作った車輌 (2) : キハ55・キハ26(キロハ25)・キハ60

完成した準急(急行)用気動車3連

前回紹介させていただいた真鍮板から自作したキハ25・キハ52は私にとっては久しぶりの真鍮板からのスクラッチビルドによる車両製作でした.真鍮板からの車体の製作は30年以上前に一時期行ったことがありますが,製作開始時に手元には当時製作した車両が数両あったものの具体的な製作過程の記憶は殆んどなく,そのためキハ25・キハ52の製作にあたっては過去にも参照した雑誌の真鍮製車体の製作法の記事を頼りに製作を始めました.しかしその製作を開始した時点では果たして自作でバラキットを組み立てたレベルの車両が真鍮板から製作できるかについては全く見通せず,早く完成させて結果が見たいということもあり記事の製作法の内容のままかなり急いで製作を進めてしまった感があります.結果,何とか鑑賞に耐えられるレベルの車両は製作することができましたが多少の課題も発生しましたのでその製作結果を踏まえてキハ25.キハ52と共通点も多いキハ55を代表形式とする準急(急行)用気動車3連を製作しました.そこで今回その車両と製作過程の変更点を紹介させていただきます.

<型式の選択>
キハ55をはじめとした準急用気動車は軽量化を目的としたキハ17等の小型車体から標準サイズの車体へ移行していく過渡期に製造されたため車体には色々な形態があります.具体的には1956年製の1-5は車体が大型化されたもののその他の部位はキハ17の面影を残し,妻板側稜線にもRがつけられた車体が登場当時の姿で.その後1957年にタイフォンの位置や前面窓サイズが同時期に製造が開始されたキハ20と同一となり,その際妻側のRも廃止されました.さらに1958年にはいわゆる”バス窓”が電車と同じ1段窓となった100番台を名のる車体となりました.このように準急用気動車はわずか3年の間に印象が大きく変化していきますが,最終的に機関をはじめとした下回りは改造により全て同一となり,そのため保守作業に大きな支障がなかったせいか後年になっても初期ロットの車両が廃止されることはなく,全てのタイプの車両を80年台まで各地で見ることができました.また元々の用途が準急・急行用のためキハの他に窓配置が異なるキロ,キロハが存在しており,これらの車両も普通車に格下げされて80年代始めまでその活躍する姿を見ることができました(キロハは1975年位まで).そのため私が今まで製作した車両等が活躍していた年代にはまだ殆んど全てのタイプの車両が存在していたためどの形式を選択しても手持ち車両との年代的な矛盾はありません.

越後川口駅に停車する飯山線のキハ55


前述のように準急用気動車の側窓の形態は”バス窓”と”1段窓”の2種類がありますが”バス窓”は上窓がHゴム支持となっていますので私のような工作初心者にとってはハードルが高いため,1段窓の車両を製作することとし,まず代表形式のキハ55の100番台を選択し,次ににキハ26の300番台(306〜)を選択しました.そして最後の1両は大出力機関を搭載した試作車キハ60としました.キハ60は1959年に大出力機関を搭載した試作車として登場しましたが試験終了後は機関を水平対向エンジン(横型エンジン)のDMH17Hに換装し,房総方面で活躍していました.車体は客用ドアが外吊りドアである以外キハ55とほぼ同じ形態(後に通常のドアに改造)ですが,車体裾の高さはキハ58やキハ35等横型エンジンを装架した車両と同一で,車体に対する窓位置(塗り分け線に対する窓位置)が他の車両とはやや異なり,よく見ると雰囲気が異なります.そしてこの車両も車体の形状は特殊なもののが下回りは他の横型エンジン装備車とほぼ同じで保守作業に大きな支障がなかったせいか早期に廃車となることはありませんでした.製作する型式を選択するにあたって3両の形式を全て異なるものとし,さらにそのうちの2両を数の少ない所謂”珍車”とすることには多少抵抗はあったのですが,キハ55とキハ60の車体は遠目にはほぼ同一形態でありながらよく見ると細部に差があるというのもまた面白いのではないかと思いこの3形式を選択しました.

<外観上の改善点>
前作からの改善点は以下の2点です.
① 客用ドア部
鋼製車体の窓周囲のテーパーの表現については前回製作した車体でも留意しましたがドア部分は断面形状に特に留意せずドアの外径を切り抜いた部分にただ裏からドアを貼り付けるだけでした.しかし今回完成した車体を見ると車体表面とドアの段差が少ない気がします.実車はドアの面は窓ガラスの面より奥にありますが,窓ガラスをはめ込み式としない自作車体ではペーパー車体でも真鍮製車体でも窓ガラス表面とドア表面は同一面となります.

山形駅に停車中の仙山線の普通列車.国鉄民営化前は常磐線以外に普通列車用の交直両用電車はほとんど配置されておらず伝毛区間でも数多くの気動車列車が見られました.

バラキットでも自作車体でもガラス表面とドア表面は同一面なので,段差が少ないと感じる理由は今まで製作してきたバラキットの側板の板厚が殆んど0.4㎜であったのに対し,今回使用した真鍮板が0.3㎜厚であるためでこの差は側板お厚さの差ではないかと思われあると思われます.下の写真は私が以前0.4㎜の真鍮番を用いて製作したキハユニ25と今回製作したキハ25のドア部の写真ですが,わずか0.1㎜の差でありながら印象が結構異なることがわかります.この段差のスケール運方は不明ですが,違和感があるのは実物と異なるからではなく,今まで見慣れた車両と異なるということが理由であるようにも思えます.

車体に0.4㎜の真鍮版を用いたキハユニ25と0.3㎜の真鍮番を用いたキハ25

この”段差問題”は車体の板厚を0.4㎜に変更すれば解決なような気もしますが当然重量が増えて曲げ等の加工性も悪化します.また2段窓を今回キハ25で用いたような方法で表現しようとすると2枚重ねした部分の板厚が厚くなり金属車体のメリットが失われるような気もします.一方実物の窓の周囲は断面の引き戸側(内側)にもRがついており,ドア周囲の断面形状は円柱に近い形となっています.そこで今回は客用ドアを貼り付ける前の状態で側板の表面と裏面のドアの周囲にヤスリでテーパーをつけてからトアを貼り付けてみました.この結果が下の写真ですが,右側のキハ25と比較すると効果が認められます.なお,ドアを貼り付けると面取り部にハンダが流れてきますのでそのハンダを細いキサゲで確実に除去する必要があります.

前作のキハ52とドア裏面に面取りを施したキハ26のドア部分

② ”おでこ”の形状
下の写真は最初に製作したキハ25とキハ26の写真です.影の具合から側面から見た時の”おでこ”の形状がキハ25はキハ26に比較して”なで肩”になっているのがわかるかと思います.実車のこの部分のRは小さく,電車のようにRの後方が前面に向かって傾斜していませんので斜め上方から光が当たると影になる部分が比較的大きくなります.

前作のキハ52と今回製作したキハ55の”おでこ”の形状の違い
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真鍮板から作った車両:キハ52とキハ25

”真鍮板から車両を作る”と題してこれまで製作の過程を紹介してきたキハ52・キハ25が塗装を終えほぼ完成状態となりましたので改めて紹介させていただきます.その製作過程を紹介した記事の中で,私は車体の「光の反射具合」を考慮することが作品が実感的か否かに影響を与えるのではないかと考え,設計や製作の中ではその点に留意して製作を行いましたが,車体の光の反射具合は塗装して初めて結果が明らかになります.そこで今回はその点に注目して紹介をさせていただきたいと思います.

車体の表記を残しほぼ完成状態となったキハ52とキハ25

・ 作品の概要
<キハ52>
キハ52の車体は前面も含めて全て0.3㎜の真鍮版を使用しています.床板は0.8㎜の真鍮板を使用しており,床下機器は日光モデルのダイキャスト製の製品とフェニックス模型店のホワイトメタル製のパーツを混用しており,動力は天賞堂製のコアレスパワートラックll,台車(DT22)はエンドウ製を使用しています.パワートラック付属のウエイトは未使用で重量は約310gで,平坦線であれば無動力のキハ25を牽引しての走行が可能です.寒冷地仕様として先頭部には複線用のスノウプラウを取り付けました.カプラーは天賞堂製のkadee #16タイプを使用しています.床下機器は以前組み立てたバラキットの素養した残部品を使用しているため厳密には実車のとおりではありません.

<キハ25>
キハ25の車体構造はキハ52とほぼ同一ですが,こちらは前面にフェニックス模型店製のプレス製のパーツ(1980年頃の製品)を使用しています.動力は装備しておらず,台車はエンドウ製のDT22(プレーン車軸)を使用しています.重量は290gで,動力車のキハ52とそれほどかわりません.

・ 前面の印象
前述のようにキハ52は車体前面も含めて全て自作したのに対し,キハ25は1980年ごろに購入したフェニックス模型店製と思われるプレス製の前面パーツを使用しています.そのため両者では前面の表情がやや異なります.自作のキハ52については今回詳細な寸法を記載した資料は手に入りませんでしたので,全面窓の大きさ等わずかな資料と写真から寸法を決めて製作しています.

自作したキハ52の全面(手前)とパーツを使用ししたキハ25(奥)

運転室窓の寸法は大きさが710×710㎜であるという資料がありました.これは1/80に換算すると8.875㎜となりますが,これは構体の開口寸法と思われますので実際の設計(罫書き)寸法は8.5㎜としました.結果的にはノギスによる実測値で8.4㎜に仕上がっています.一方フェニックス模型店製の製品は実測で8.75㎜弱となっています.寸法差としては僅かですが,この差が前面の表情の差に現れている様です.あくまでも私の感想ですが,フェニックス模型店製のパーツの窓の大きさはやや大きい様に感じます.もう一点の両者の差は前面と側面を繋ぐRの開始点と窓との位置関係です.キハ20系の運転台窓とRの開始点の間にはある程度の平面部があり,下の写真のように実車ではそれが光の当たり方によっては目立つのですがパーツでは運転台窓のHゴムとRの開始点までの距離が小さい(平面部が少ない)ように感じます.このことも窓の大きさが大きく感じる一つの要因であるとともに前面の表情が実物の印象と少し印象が異なる原因のようにも感じます.ただ私の製作した前面キハ25前面との差を意識したせいか平面部はあるものの窓の大きさがやや小さい様にも感じます.この辺りは寸法の設定が非常に難しく,今回キハ52は実際に車体を組み立てた際に窓の大きさが少し小さいように感じたため組み立て後に0.25㎜程度窓の大きさを大きく修正してあります.組み立て後のこのような修正はキットの形状を修正するより心理的なハードルも修正の難易度も自作車両の方が低いような気がします.しかし製作時に実物の印象に近づいたと判断しても真鍮地肌の状態と塗装後ではその印象が異なる場合もあります.そのためこの辺りの表現は出来上がった作品をよく観察して結果を評価し,その結果を反映しながら場数を踏んで改善していくしかない気もします.ただレファレンスとなる実物の印象も写真の光線状態や見る角度,Hゴムの色や塗色によって微妙に異なります.そう考えると製作の目的が正確な縮小による実物の再現ではなく,レイアウト上で実感的に(=それらしく?)見えるということであれば細かい寸法にあまり拘る必要もなく,今回製作したキハ52とキハ25の差は許容範囲で,今後改善すべきは塗り分け線の乱れ等もっと基本的な部分であるような気もします.

ほぼ真横から光を受けた際のキハ52の前面の印象.

・ 窓周りの印象
今回真鍮版から車体の自作を行うにあたり真鍮版から車体を製作するに当たり過去製作した車体を見直し,過去製作した車体は窓の周囲は切断面を車体と垂直にヤスリ仕上げをしてあるため,それがプレス加工で窓周囲にプレスによるダレがあるバラキットと比較して実車の窓周りの実感を損ねているのではないかと考えました(記事はこちら).そこで今回は窓の周囲にヤスリでテーパーをつける加工を行いましたがその結果が下の写真です.

2段窓を表現し周囲にテーパーを付けたキハ52の窓周り.サッシは窓の塗装で表現.

結果,このテーパー加工により今までの自作車体に比較すると窓周りの実感が増しており,当初の目論見通りの効果は認められました.その形状もバラキットに比較してより実物に近くバラキットと比較しても同等以上の効果はあったと思います.ただ,今回のキハ20系の場合,2段窓を表現するために窓の下半分(窓サッシの下段部分)には0.6㎜の厚さがあります,下の実写の写真と比較すると少し厚めである印象がある一方,側板に0.3㎜の真鍮板を使用した場合キハ55のような1段窓の場合は一番目立つ下辺のテーパー部の板厚が1/2になりますのでその際の効果については別途検討の余地があるような気もします.一方上の写真からも分かりますが詳細に観察すると貼り重ねた板と側板の境界面でハンダが十分に回り切っていない部分がありわずかに隙間が生じている部分がありました.ヤスリがけ直後にはめくれでわからない場合があるようですのでこの辺りは入念なチェックを徹底する必要があります.ヤスリがけはジグ等は用いず手作業で行いましたが,特に線の乱れが気になるようなところはありませんでした.

山形駅に停車中のキハ52.光に注目すると上の実車写真と合わせて,窓部とドア部の陰影の差が目立ちます.

なお,今回,過去に真鍮版から車体を製作し,塗装が傷んでいた自作車体のキハユニ25 7の再塗装も行うこととし,その際に二重窓の周縁にわずかなテーパーをつけてみました.結果,つけたテーパーの量はわずかですがそれでもテーパーをつける前の車体と比較すると効果が認められます.ただ,この車体は0.4㎜厚の真鍮板を使用していますので厚さ0.3㎜の真鍮板を用いた車体では効果が多少異なるかもわかりません.

・ その他の細部(ヘッドライトレンズ)
上記の点を除いたディテーリング作業はバラキットと同一で使用しているパーツもほぼ同じあるため詳細は省略しますが,今回はヘッドライトのレンズを自作により作成しています.現在ヘッドライトレンズは色々なメーカーから各種直径のものが市販されていますが,今回のヘッドライトケースには(キットの付属品ではなく)市販の真鍮パイプを用ていますので径が適合するレンズがなさそうでした.このためレンズはエポキシ系接着剤により自作しました.その手順はまずヘッドライトケースに使用した真鍮パイプを輪切りにして並べ,その中に透明度の高いエポキシ系の接着剤を流し込んで完全に硬化する前にパイプからレンズを取り外し,硬化後耐水ペーパーでバリ取り・整形を行えば完成です.エポキシ系接着剤を流す際は気泡ができないように注意が必要ですが,細かい気泡がわずかに残っている程度であればレンズ面を細かい耐水ペーパーで磨き,レンズを「半透明化」すればほとんど目立たなくすることが可能です.なお,パイプを並べる際のベースは接着剤が簡単に剥がれる素材が必要ですので接着剤付属の撹拌用の板や撹拌用のヘラを使用しています.

エポキシ系接着剤に付属していた撹拌用ヘラの上に並べた真鍮パイプ.この状態でエポキシ系接着剤を流します.
真鍮パイプより取り外したヘッドライトレンズ.レンズは完全硬化後に耐水ペーパーで形を整えます.
ヘッドライトを車体に装着したところ

・ 床下機器のウエザリング
気動車の床下機器の塗色は大部分がグレーでエアータンク等の空気関係の機器が黒塗装となっています.このため私はまずグレーをラッカーで吹付塗装し,乾燥後にエナメル系塗料で空気関係機器に艶消し黒を筆塗りしています.一方気動車の床下は油や煤で結構な汚れがありますのでほとんどの場合(特に意図しない限り)ややきつめのウエザリングが必要となります.今まで私はこのウエザリングにエコーモデル製のウエザリングブラック,パステル,蝋燭の炎から集めた煤と王を使用してきたのですが,粉体によるウエザリングは触った際に手が汚れたり,レイアウト上に置いておくと埃が付着し時が経ってパウダーの上にホコリが付着すると埃を除去してもとなんとなく「汚い」状態となるため,パウダーによるウエザリングは以前からできれば避けたいと思っていました.しかし気動車の床下にはラッカー系塗料の他にエナメル系塗料で塗装された部分もあるため,エナメル系のスミ入れ塗料が使用できません.そこで今回は以前レイアウトを製作した際にウエザリングに使用したIndian Inkを使用してみました.結果は写真の通りで一通りのウエザリングは可能でしたがIndian Inkは乾燥が早く,一度乾燥すると容易に除去できませんので建物のような平面的な部分に使用する場合より取り扱いが難しく,この方法は墨入れ塗料によるウエザリングより難しいと感じました.そこで次回また気動車の床下を製作をする機会があったらその時は全体をラッカー塗装とした上でエアブラシによるウエザリングにも挑戦したいと思います.エアブラシによるウエザリングに関しては米国のModelrailroader誌にはその手法が定期的に掲載されており,Marklin社のInsider club向けの動画(Club film)の中でもウエザリングの過程が動画でよく紹介されていますので,これらを参考に気動車床下のウエザリングに関し,自分なりの手法が確立できればと思っております.

Indian Inkでウエザリングを行った床下機器
使用したIndian Ink

以上,簡単ですが今回真鍮板から製作したキハ52とキハ25に紹介を終わります.真鍮板からの車体製作は過去経験しているとはいえ実質上初めて経験することも多く当初は完成まで漕ぎ着けられるかどうかに自信がなく,早く一通りの工程を終えて結果を見たいという気持ちが優先して工作が雑になってしまったところも多々ありますが,今回何とか完成まで漕ぎ着けることができましたので,次回製作する際はより良い作品を目指して今回の反省を活かしてそのうちまたチャレンジしたいと思いっております.
最後までお読みいただきありがとうございました.

真鍮板から車輌を作る -(2) :真鍮板の切断(窓抜き)-

ほぼディテール加工を残すのみとなったキハ25とキハ52の車体と床板です.

部品の罫書きが終わったらいよいよ糸鋸による切断作業に入ります.この切断作業から折り曲げまでが失敗(部品を作り直さざるを得なくなる)のリスクが最も高い作業になります.リスクは広辞苑等では「危険」と書いてありますが,リスクには国際的に定義された明確な定義があり,それは一言で言うと「発生する危害とその頻度で決められる量」です.一般的に危害は人の対するものを考えますが,今回の真鍮版の切断の場合にはリスクを最小とすると言うことは,部品が作り直しになると言うことが製作者が受ける「危害」に相当し,危害の頻度は鋸刃が罫書き線からはみ出して真鍮版の本来切り残すべき領域に侵入してしまうことで,リスクを低減させるためにはその頻度を極力減らす施策を講ずるということになります.リスクを低減させる方法を検討することをリスクマネジメントと言いますが,今回の場合は鋸刄が罫書き線からはみ出す頻度が最小となる(殆んど起こらなくなる)やり方を考えてそれを実行することがリスクマネジメントを行うと言うことになります.
一方,私が最初に参照したTMS誌の片野正巳氏の記事ではこの糸鋸による切断(窓抜き)に関しては「罫書き線から絶対はみ出さないこと」と記載されているだけで,切断中の写真も掲載されておらず,真鍮版に糸鋸の鋸刃を通す穴を開けた写真の次に掲載されているのは窓抜きが終わってヤスリ仕上げの済んだ側板の写真です.後にも述べますが,これは片野氏(TMS誌の編集部)が「罫書き線から絶対はみ出さない」ためのリスクマネジメントは製作者自身で行えと言っているのではないかと推察します.
と言ってしまったら身も蓋もないので今回私が行った私なりの方法と注意点を参考として紹介します.それは一言で言えば「練習で技量を向上させるとともにその中で自分の現時点での実力を把握し,その実力を前提に罫書き線をはみ出す頻度が最小となる(まず起こらなくなる)方法で糸鋸作業をを行うと言うことだと思います.

製作したキハ52の車体の部品です

・切断に使用する工具
真鍮版の切断に使用する工具は以下のものです.

私が切断に使用した工具です.切断時はスケールやノギスも使用します.

1.糸鋸・・・真鍮版の切断は全て糸鋸で行います.単純な構造のものでよく,その方が軽量で使いやすいと思います.写真の糸鋸はもう40年以上使用しており当時の値段は¥100であったと記憶しています.私は弓の深さが約180㎜のものを使用していますが,弓の深さは(車体長/2+α)㎜以上が必要です.
2.鋸刃・・・私は近くのDIY店で購入できるドイツ製のアンチロープ社の鋸刃を使用しています.サイズは#0/0から#5/0を用意していますが0.3㎜の真鍮版の切断には殆んど#4/0と#5/0を使用しています.40年前の価格は¥300程度と記憶していますが今も同程度の価格で入手できます.糸鋸刃はかつてはドイツのヘラクレス社製が定番でしたが現在は市場ではあまり見かけずAmazonでは販売単位は1グロスしか見当たりません.私の感覚ではヘラクレス製とバローべ製の間に切れ味の差は殆んど感じません.昔は国産と輸入品の差は歴然でしたが最近はどうなのでしょうか.
3.弓押さえ・・・糸鋸の左に見えるもので,糸鋸に鋸刃をセットするときに糸鋸の弓を狭める際に使用します.平板を切るときにはなくてもそれほど支障はありませんが曲げを行った後の穴に鋸刃を通すときには必要です.私は2.4㎜角の真鍮角線から製作しました.市販品は私は見たことがありません.
4.ドリル刃・・・鋸刃を通す穴を開けるときに使用します.私は主に呼び径1.6㎜を使用しています.
5.ハンドドリル・・・鋸刃を通す穴を開けるときに使用する場合がありますが,あまり使用しません.ハンドドリルでの穴あけはドリル刃が滑りやすいため使用するときは必ず小径ドリル(0.8㎜)を用いて開けた穴(凹み)をポンチマークとして使用しています.
6.ドリルチャック・・・直径3㎜程度のドリル刃を取り付けて鋸刃を通す穴に発生したカエリを除去するために使います.穴のカエリを除去しておかないと切断時に鋸刃が引っかかり,最悪の場合折れてしまいます.
私は穴あけ時にはセンタポンチは使用しません.先端が鋭いものでは刃先の滑りを抑えにくく,鈍いものでは周囲の変形が大きくなるためです.
このほかに切断部に付着した切粉を除去するための筆が必要です.切粉を確実に除去するためには自然毛を使用した歯ブラシも有益で,一本あっても良いかと思います.またバラキット組み立て時と異なり同一のドリル刃で多くの穴あけ作業を行いますのでドリルの切れ味が作業性に大きく影響します.ドリルを研ぐのは難しそうなのでもし切れ味が悪いと感じたら買い換えるのも一法と思います.

・ 作業の実際
まずは小物を切断してウォーミングアップを行いますが,その前にどのような部品が必要かを把握しなければなりません.そのために必要なのが部品表ですが,私は表は製作せず,下の写真のような備忘録的な”絵”で済ましています.

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