日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(3)

前回は機関庫の主要部分(構造体)となる側壁と妻板の製作過程を紹介しましたが、今回はそれらの組み立てと屋根の取り付けまでを説明したいと思います。

組み立ての終わった側壁と妻板

組み立て前に妻板に取り付ける部材について説明します。最初は妻板の面取り部です。この部分は最初に妻板のベースとなるイラストボードを切り出す際にそこにも設けていましたが、その目的は機関庫の入り口と機関区の隙間を確認するためでした。入り口は断面に桧角棒を接着しますので下見板取り付け前に大きさを各方向に1㎜拡大し、その際にこの面取り部も切り落とします。そのため、面取り部は別部品として新たに製作する必要があります。この部品は3角形に切り出した厚さ約0.5㎜のケント紙にSTウッド製の下見板を接着し、断面に2×1㎜の桧角棒を接着したものです。下見板は幅1㎜としましたが、幅が狭いため貼りにくく、貼り付けの際の乱れも生じやすいため1㎜幅に切り込みを入れた櫛状のSTウッドをベースとなるケント紙に貼り付けた後、STウッドを外形に合わせて切断しました。妻板への取り付け時は下見板の方向を縦方向として変化をつけてあります。

入り口の扉も同様の方法で製作します。外壁に対して変化をつけるためこちらは下見板の方向を斜め45度として貼り付けました。ただ、扉に面取り部があることを考えると下見板の角度は写真と逆の方が適切であった気がします。こちらも外形に合わせてSTウッドを切断した後、STウッド製の横桟を数本追加し、断面に2×1㎜の桧角棒を接着してあります。

塗装前に完成した面取り部の部材を妻板入り口角部に取り付け、入り口扉を入り口に並べたところです。この後扉も他の部品とと同じ方法で塗装を行ないます。

続いて屋根部の小屋組みを製作します。材料は2×2ミリの檜角棒で、まず屋根の形状に合わせた型紙を用いて角棒を切断し、型紙を治具として木工用ボンドで接着します。

屋根の角度が決まったらその下部に2×2㎜の桧角材を切断した部材を接着していきます。外からは目立ちにくいところですので接着時の多少の隙間は許容しました。切断はカッターナイフで行いますが3×3㎜の桧角棒と比較すると2×2㎜の角棒の切断は容易に行なえます。

下部の柱は長めに製作し、取り付け時に長さを調整できるようにしています。ここまでの組み立ては木工用ボンドを用いましたが、形状に問題がないことを確認したら接合部に瞬間接着剤を流し、再度確認の上さらにエポキシ系接着剤を盛ってあります。

入り口のヒンジは洋白線と割りピンで簡単に製作しました。今のところレイアウト上での開閉は行わない予定ですのでヒンジ部はレイアウト(ベース板)に取り付け後に行いたいと考えております。なお、外国型セクションに設置したVollmer製の機関庫は入庫した機関車が機関庫の終端部に設けられた板を押すと扉が開閉する機構が組み込まれていましたが、運転中に使用したことは殆んどなく、機構は取り外してしまいました。ただ、自動運転で動くレイアウトを眺めていると、レイアウト上にこの様な車両以外の動きがあると面白くなるという気もします。

これらの部品の製作が終了したら側壁の組み立て作業に入ります。まず建物の横桟となる部材を2×2㎜の桧角棒より製作し、断面の中央部に0.5㎜の穴を開け、そこに真鍮線を差し込んで瞬間接着剤で固定します。

側壁上部に取り付けた2×2㎜の桧角棒の対応する位置にも0.5㎜の穴を開け、そこに横桟を差し込んで取り付けていきます。固定は木工用ボンドで行ないます。なお、側壁内側のSTウッドを貼っていない部分(塗壁とした部分)は組み立て前にHumbrol製ののエナメル塗料(#31 Slate Gray)で塗装しました。

横桟が組み上がったところです。この後妻板と中央部の柱を取り付けます。

中央部の柱も真鍮線を植え込んで固定します。

これらの取り付けが終了したら中央部の柱と側壁と横桟の接合部に補強部材を取り付けます。この部材は写真のような簡易ジグを製作して切断しました。

妻板を取り付けたら接合部の隙間にパテを盛って隙間を埋め、乾燥後に整形した後塗装を行います。これで壁面の組み立てはほぼ終了です。

壁面の組み立てが終了したら窓枠の取り付けを行います。まず0.3㎜の透明プラ板を窓の開口部の寸法に合わせて切断します。

切断したプラ板が開口部に隙間なく嵌まることを確認したら窓ガラスに窓枠を接着します。接着はごく少量の合成ゴム系接着剤(溶剤形)で行いました。

完成した窓枠を窓の開口部に嵌め込んで完成です。この後上枠と下枠の間にSTウッドを2枚重ねて接着し、幅1㎜に切断した窓桟を接着します。これで窓部分は完成です。

以上で壁面がほぼ完成しましたので続いて屋根部の製作に入りますが、その前に照明の取り付けを行います。今回照明は12Vの米粒球を使用しました。米粒球の消費電力はLEDに比較すると大きいですが電圧の調整により機関庫の薄暗い感じの再現が容易なこと、光線に指向性がなく広い範囲を照明できることがその理由です。電球の取り付けは、本体に取り付けた小屋組に縦方向の桟を取り付ける際、その外側の桟に真鍮帯板を接着し、そこに電球のリード戦を半田付けすることにより行なっています。電球は庫内に4個、張り出し部に1個使用しています。

張り出し部への配線は側壁に切り欠きを作り、そこを通してあります。リード線の固定は柱にリード線をテグスで縛り付けることにより行っています。そしてこの張り出し部から外部への配線を出してあります。この部分の壁も組組立後Humbrolのエナメルで塗装してあります。

照明の取り付けが終わったら屋根の製作に移ります。最初に記載したように、製作を開始した当時はまだ屋根に使用する材料は決めていませんでした。材料を決めるにあたって検討した内容を以下に記載します。
前回紹介したTMS誌1970年7月号や特集シリーズのシーナリーガイド等の記事を見ると、北海道のストラクチャーはさすがに瓦葺きではなく、ほとんどがトタン屋根です。ただトタン屋根でも特に道北や道東では波板を貼り重ねたような構造ではなく、いわゆる横葺きと言われる、屋根材の繋ぎ目が屋根の稜線と並行になっているタイプが多いようです。私は建築に対する知識は全くありませんが北海道の建造物の屋根は積雪を考慮して傾斜がきつく、その分屋根の面積(使用する材料の量)も多いからなのでしょうか。私が90年台に撮影した釧網本線の北浜駅の写真を見ると、屋根は葺き替えられている様ですが、確かに横方向に継ぎ目のある”横葺き”となっています。

上記に検討結果よりこの機関区の屋根は北海道型の特徴を出すために横方向に繋ぎ目のある横葺きとすることにしましたが、このような形状のパーツは国内製のパーツにはないようです。一方、海外の製品を探してみると、ドイツのKibri (Viessmann)社の製品に似たような形状の製品を見つけました。その製品の品番は#34116で商品名はDachpappenplatto(Roofing tile card)というものです。WEBで調べてみるとこの屋根材はタール紙と言われるもののようで、屋根の防水に使用されるもののようです。気候が関係しているのかわかりませんが、日本ではあまり見かけませんが、欧州では屋根材としても使用されているようで、実際にはこのシートをタイル状に加工して並べたり、ロール状の部材を横方向に屋根に敷いていくようです。実際に製品を取り寄せて確認してみるとこの部材の形態が横葺きのトタン屋根に似ている気がしましたので屋根にはこの製品を使用することとしました。サイズはともかくロール状の部材を横方向に固定していくという工法はトタンの横葺きと似ているような気もします。欧州のメーカーはこのような建物の屋根材や壁面に使用する素材を各種販売しています。欧州のモデラーはレイアウト上のストラクチャーはプラキットを組んだものを配置しているようなイメージがあるのですが、想像以上にこの様な素材を用いてストラクチャーを自作したり改造したりしているのでしょうか。同時に波板も取り寄せてみましたが、こちらも日本型のストラクチャーに使用できそうです。こちらの品番と品名は#34143 Welleternit (Corrugated Metal(Plastic))です。この様な海外製のパーツは日本の模型店では殆んど見かけなくなってしまいましたが、同梱されている注意書きにはしっかり日本語の注記が記載されていました。ちなみに価格は税、送料なしでどちらも1枚3.64€でした。私はこの様な素材は模型店から車両を購入する際に一緒に発注して入手しています。発注してすぐに届くものではありませんが、必要そうなものを同時に発注しておくと国内で入手するより割安で購入できます。ただ、昨今の円安でその価格差は少なくなる傾向です。

屋根材は建物に直接貼り付けるのではなく、まず屋根のベースを1㎜のイラストボードで製作し、このベースを小屋組に接着し、その上に屋根の部材を接着することとしました。この接着には合成ゴム系の接着剤(溶剤形)を使用しました。

屋根のベースとなるイラストボードの裏面(天井)には5㎜間隔で筋をつけて天井板を表現します。ただしこの部分は外観からはほとんど見えません。このベース板には煙突部分の逃げと煙出し部分の切り欠きを設けます。

ベースが完成したら本体に取り付けた小屋組に当て確認しますが、小屋組の形状のばらつきによりベース板が波打つ場合は角材を削って調整します。削ることにより角材の太さが多少変化しても塗装して屋根のベース板をお取り付けて仕舞えば殆んどわかりません。

屋根のベースとなる部材の裏面(天井面)はあらかじめ塗装しておきます。

塗装が完了したら塗装が終了したら小屋組にベース板を接着します。

ベースの接着が終わったところを裏面から見た写真です。

ベース板の取り付けが終了したら屋根材を所定寸法に切断します。切断は分離する直前までプラカッターで溝を掘り、最後はカッターナイフで切断します。

切断が終了し、切断時のバリを除去したら合成ゴム系接着剤で屋根材をベース板に接着しますが、屋根材をベースitに接着する前に、2枚の屋根の付き合わせ部にプラモデル用の接着剤(流し込みタイプ)をたっぷり塗って素材を溶かしながら部品を動かすことにより隙間を埋めて固定します。自分で切断した素材のエッジの真直度が乱れて隙間が生ずる場合、この方法で結構隙間を埋めることが可能です。そして屋根を固定したら屋根の基本部分は完成です。この後塗装を行いますが、塗料はHumbrol#32(Dark Gray)を使用しました。

以上で機関庫の基本部分が完成しました。屋根を取り付けてみると屋根の傾斜がきつく、張り出し部の屋根も一体のため通常の建物より屋根がかなり大きく見え、心なしか北海道の機関庫らしく見える様に思えます(自己満足でしょうか?)。この後煙出しや煙突等の製作、取り付けを行いひとまず完成となりますが、その過程は次回紹介したいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

屋根を取り付けて煙出しの部材を仮置きした機関庫