日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(2)

前回、構想と制作の準部について紹介しましたが、今回からは私が行った具体的な制作過程を紹介していきます。まずは機関庫の壁面と妻板の製作です。

今回は機関庫壁面の制作過程を紹介します。壁面のベースには厚さ1㎜のイラストボードを使用しました。イラストボードは表面の用紙の種類によって価格が異なるようですが、今回は何かを描くわけではないので一番安いもので大丈夫です。なお、厚さ1㎜と謳われていても実際の厚さは1.2㎜程度ありますが特に影響はありません。作例ではA4サイズを3枚使用しています。下見板はエコーモデル製のSTウッドを使用します。

具体的な製作手順を紹介する前にまず、側壁の構造をイラストで説明します。下の図は下見板を除いた建物の側壁の外側の構造です。前述のように構造のベースとなるのは1㎜厚のイラストボードです。使用する窓枠はエコーモデル製のパーツ(No.243)です。まず側壁のイラストボードに窓枠の外形寸法の穴を開け、それに厚さ約0.4㎜のケント紙を貼り重ね、窓の開口部の約0.5㎜内側に罫書き線を入れて切り抜きます。この段差が透明プラ板と窓枠をはめ込んで固定する際のストッパー兼接着部となります(窓枠とプラ板の固定は塗装後となります)。また、窓の外周には1㎜厚のSTウッドを帯状に切断した外枠を取り付けます。1㎜厚のSTウッドは現在市販されていないようですが私は以前購入した手持ちのものを使用しています。ただ、1㎜厚のSTウッドの切断面はボール紙ですので桧角棒の方が良いかもわかりませんただ完成時すると断面は殆んど見えません。

下図は内側の構造です。まず下端に3×3の桧角棒を接着し、次に窓間に柱として2×2の桧角棒を接着後、上端にも2×2の桧角棒を接着します。その後窓下の腰部にイラストボードとケント紙を貼り重ねた部材を柱と同一面になるように厚さを調整して接着したのち、羽目板の表現として縦方向に幅2.5㎜で筋をつけた厚さ0.3㎜のSTウッドを貼り付けます。窓の周りは窓を避けて厚さ1㎜厚のSTウッドを貼り付け、窓の周囲に0.5×1の桧角材による窓枠を接着します。なお、こちらは羽目板の表現として横方向に筋を入れて羽目板を表現し、腰部と方向を変えることによりアクセントをつけています。

では実際の手順を主に写真で説明します。


まず図面に従ってイラストボードに罫書きを行います。厚さが厚いため切断面の直角度がばらつきます(片方が狂うと他方が必ず逆側に狂う)ので各パーツの切断部分は共通にしない方が良いと思います(下の写真では妻板の垂直面の間隔を開けて罫書いています)。

切断が終了したベース部品となるイラストボードです。これから側壁の窓を抜きます。

側壁の窓の大きさは窓のパーツの外形寸法に合わせて切り抜きます。

壁面を構成する主要部品を並べたところです。側壁の右上の部分は張り出し部への入り口と窓を設けてあります。上のも記載しましたが、イラストボードの厚さが1㎜と厚いので断面が表面に対して垂直となるよう、切断する際のカッターの刃の角度に注意が必要です。特に窓の開口部は角度が狂うと窓枠がはまりにくくなり、窓枠を取り付ける際、修正が必要になります。

出来上がったパーツをテープで仮組みして機関車を置き、イメージをチェックします。

チェックの結果が問題がないようでしたらら各部品に下見板の貼り付けガイドとなる罫書きを行います。ピッチは2.5㎜としています。このような等間隔の罫書きは鉛筆で行うと芯の太さでマーキング位置にばらつきが生ずる為、マーキングは罫書き針で突いて穴をあけ、その穴を目印として線を罫書いていきます。なお、後で述べるようにこの罫書き線は目安ですのでどちらかというと線の間隔より並行度の方が重要です。

罫書きが終了したら窓の外枠を接着します。接着は全て木工用ボンドを使用します。上下の外枠はこの段階で接着しますが左右の外枠はこの段階では全ては接着しません。これは全て接着してしまうど窓の間に下見板を接着する際、窓の間に接着する下見板の長さを揃えなければならなくなるためです。片側または両側に窓の外枠がなければ下見板を接着後長さを揃えて切断し、その後外枠を接着すれば下見板と窓枠を密着させることが可能です。

罫書きが終了したら下見板を下から木工用ボンドで接着していきます。今回はエコーモデルの下見板用のSTウッド(幅3㎜)を使用しましたが、大きな板を自分でで切断しても簡単に製作が可能です。貼り付けの際は長い下見板をそのまま貼るのではなく、短く切断して貼り付けて板の継ぎ目を表現します。この長さはどのくらいの長さがよいか迷ったのですが、約46㎜と23㎜の2種類の長さを基本とすることとしました。上下の繋ぎ目が重ならないように接着していきます。接着の際は上下の下見板をラップさせて貼り付けますが、そのラップ量(見えている板の幅)は、側壁に罫書いた罫書き線を基準にはせずに、2.5㎜にセットしたスプリングデバイダーのマーキングを基準として貼り付けていきます。今回は主に下見板用のパーツを使用しましたが、パーツの幅は一定なので貼り付け済みの板の上辺を基準としてそこからから2.5㎜の位置にデバイダでマーキングを行い、そのマーキングを基準に下見板を貼り重ねていきます(下見板の厚さが約3ミリですのでラップ量は約0.5㎜です)。なお、下見板を自分で切断した場合は幅がばらついていますので、貼り付け済みの下見板の下端を基準とし、下端から2.5㎜にスプリングデバイダでマーキングを行ない、そのマーキングを基準に板を貼り重ねていきます。なお、この場合は付けたマーキングの穴が外観から見えてしまう可能性があるため、マーキングの際に穴が目立たないように注意する必要があります。なお、側板にあらかじめ引いた罫書線は下見板を接着する際の並行度と長手方向の左右ずれのチェックに使用し、接着する際の基準としては使用しません。

下見板を貼り重ねていく際、外枠と干渉する部分は現物合わせで切り欠きを入れて貼っていきます。

窓間の下見板は、長めの下見板を貼り付けた後、カッターナイフを用いて下見板を切断して長さを揃え、その後左右の外枠を貼り付けます。この際、イラストボードの表面の紙が剥がれてしまう場合がありますが、窓枠を貼り付けてしまえばわからなくなりますのであまり気にする必要はありません。なお、写真では両端を切断していますが、片側はあらかじめ窓枠を貼り付けておき、下見板をその窓枠に突き当てる形で下見板を接着し、片側のみのを切断とすることも可能です。

窓間の下見板を接着し、縦方向の外枠を貼り付けた状態です。この作業を地道に行っていきます。

妻板も同様の方法で下見板を接着していきます。妻板の開口部は実際の開口部の寸法より1㎜大きく開け、断面に2×1㎜の桧角棒を接着することによりイラストボードの断面が露出するのを防止しています。

開口部の反対側の妻板は窓がないので全面に下見板を貼っていきます。

下見板の貼り付けが終了した側壁です。張り出し部分には下見板は貼り付けりません。

角材とSTウッドの貼り付けが終了した側壁の内側です。張り出し部分は作業場としてドアと扉を設けました。この部分の内壁は塗り壁を想定し、STウッドは貼り付けていません。茶色の部分は塗装のテストをした痕跡です。

入り口と逆側の妻板内側は全面にSTウッドを貼り付け、羽目板を表現する2.5㎜ピッチの筋をつけてあります。その後2×2㎜の桧角棒で柱を表現しました。

パーツが完成したら塗装を行いますがこのような木材を使用した建物の塗装は今回が初めてになりますのでレイアウトモデリング等のストラクチャーの製作記事を参考にしました。まず塗料を選択しますが、過去のストラクチャーの製作記事を見ると水彩絵の具やポスターカラー、ラッカー等をを使用しているようです。現在は以前に比較して塗料の種類は非常に豊富ですが、今回はあまり冒険はせずタミヤカラーのラッカー塗料を使用して筆塗りすることとしました。水性のアクリル塗料の方が取扱性がよい気がしましたが以前も書いたように30年近く前に製作したZゲージのレイアウトではアクリル系の塗料は変色が激しいためラッカー塗料としました。以前はTM S誌に掲載されていたレイアウトの製作法等の記事が別冊として発行されていましたが現在そのような別冊は発行されておりません。毎月発行される雑誌から参考になる記事を探し出すのは至難の業ですし、雑誌を毎月買っていない読者には掲載されている雑誌を入手するのも手間がかかります。このような建物をはじめとしたレイアウト製作の際参考となるような製作法をまとめた別冊があると助かります。もっとも最近の雑誌にはあまり幅広く参考にできるような記事があまり掲載されていませんが。
塗装にあたってはまずSTウッドの切れ端に塗装をして塗料の濃度を決めます。タミヤの瓶入りのラッカー塗料の濃度吹き付け塗装を意識しているせいかかなり薄めですが、さらにシンナーを追加して吹き付け時に使用する塗料の濃度よりやや薄いレベルの濃度としました。STウッドは思ったより塗料の染み込みが少ないようですが、塗り重ねで濃度(透明度)は調整できます。ただ、塗装中に溶剤が揮発して塗料の濃度が変化しますので塗装の際は注意が必要です。実物の建築では下見板の塗装にはオイルステインが使用されており、木際への染み込みせいが良いため表面に木目が目立ちますが、年月が経つと色はかなり濃くなります。私が見た晩年の木造機関区は全体的に煤けており、汚れのせいか木目もあまり目立つ印象ではなかったため色は茶色を濃いめにしてあまり木目が目立たないように仕上げました。一方内側は色調を明るめにするとともに塗料の濃度を下げて木目を目立たせてアクセントをつけてあります。使用した色はLP59(NATOブラウン)、LP17(リノリウム甲板色)をベースに調色したものです。塗装後にはタミヤのスミ入れ塗料のブラックとダークブラウンでウエザリングするとともにエコーモデル製のウエザリングブラックをまぶした後にスミ入れ塗料を塗布し、テッシュで吹きとる等のウエザリングをしてみました。なにぶん初めてのことですのでこの辺りは試行錯誤の連続でしたが最終的にはレイアウトに配置してから微調整を行いたいと考えております。

塗装が終了した部品です。

こちらは塗装中の内側の写真です。なお、入り口側の妻板は外からは見えないので内側はカードボードの表面そのままとして塗装してあります。

以上で主要部品が完成しました。次回はその他の部品の製作過程と組み立ての過程を紹介させていただきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。