前回の記事、”Zゲージレイアウトの改修(途中経過):照明のLED化と街路灯の追加”では市街地への街路等の追加に対する構想と実際の作業について紹介しましたが、その作業がほぼ終わりましたので今回その結果を報告させていただきたいと思います。 今回の改修では市街地に約80本の街路等を設置しましたが、その他の部分はほぼ製作時の姿に修復してあります。思えば、このレイアウトを紹介するきっかけはModel Railroder誌のEditor’s columnに掲載されていた”When is your realism level good enough?”という記事がきっかけでした。このレイアウトを製作したのは今から20年以上前で、思えばその時から今まで自分が鉄道模型に対して私がgood enougと感ずるrealism levelは変化しているような気がするのですが、改めてその観点で全体の構成を大きく変えないという前提の元、各部の詳細を見てみると、その観点では従来の部分を”改良”できる部分はほとんどないと感じました。もしrealism levelの向上を”各部をより実感的にすること”と捉えると、その手段として第一に考えられることは”個々の部分の「細密度」を向上させる”ということになりますが、私のレイアウト製作技術が当時から進歩していないということもあり、従来の技法では効果のある細密化が難しく、もし行なってもその効果は乏しいと感じたからです。細密化に対しては3Dプリンタやレーザーカットという最新の技法を使用すれば何か方法があるような気もしますが、Zゲージの場合その対象が非常に小さいため、これを考えるとやはりZゲージでは、realism levelを向上させるためには個々の部分の細密化より今回の街路灯の追加のような大きい単位での改修が有効であるような気がします。このことはZゲージのレイアウトを構想する場合には構想段階で、線路配置を含め全体を見渡した際にいかに全体を”それらしく見せるか”を考えることがが重要であり、この構想段階での検討がrealism levelを good enoughにできるか否かを決めるのではないかと考えられます。
以前このブログの”When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level”という記事で紹介したZゲージのレイアウトですが、その最終回に記載したように現在既存の照明のLED化、表面実装形LED(チップLED)を使用した街路灯の追加を行っています。今回その改修中の様子をお目にかけたいと思います。現在は一部の区画で街路灯の設置と建物照明のLED化を終了した状態で、その改修に伴って壊した(壊れた)部分はまだ修復しておらず、街路灯の傾き等の最終的な修正もしていませんが完成までにはまだ時間がかかると思われますので今回は中間報告として、街路灯追加の構想と実際に行った方法について紹介しさせていただきたいと思います。少しでもレイアウト改修の参考になれば幸いです。下は現在のレイアウトの夜景の写真です。街路灯は計画の8割程度を設置した状態です。
上の写真が台枠上に線路を敷設した状態のレイアウトです。手前のエンドレス外側の頭端式のターミナル駅を出発した列車は勾配を上り最初の分岐器でエンドレスの周回方向を決定してエンドレスに入ります。その際列車を左回りとする場合はリバース線を経由して本線へ、右回りとする場合はそのまま本線に入ります。そして本線周回後駅に戻るには手前側の背中合わせに配置された分岐器でエンドレスを離れ駅へ向かいます。その際、時計回りで周回していた列車はリバース線を経由して駅に向かいます。このようにプランとしては非常に単純なプランです。市街地にはターミナル駅に相応しい駅舎を街と向き合う形で設けることとしたのでその駅舎はスペース上写真のリバース線より奥側に設けることになります。そこで写真のリバース線より奥側を市街地とし、手前側を住宅地にすることとしました。ただ、駅舎を市街地と向き合う形で配置する駅舎とホームが高架線で分断されてしまいます。そのためこの部分の処理についてはいろいろ悩みましたが、最終的には高架線下に駅舎への通路を設けるとともに高架線のホーム側にはカフェ等のショップを作り、駅舎との関係性を自然なものとすることとしました。駅舎は市街地と対向するので、運転位置からは駅舎の背面しか見えませんが、運転位置からホーム側のショップが見えれば列車が駅に到着した際、ある程度ターミナル駅の雰囲気が味わえるのではないかと思ったのがその理由です。実際にこのような構造になっている駅は見つけられませんでしたが欧州にはプラットホームに隣接して色々なショップが並んでいる例はよくあるようです。日本で言えば上野駅の地平ホームのイメージでしょうか。そして駅舎はKibriの製品の中から『B -6700″Bahnhof. Bad Nauheim”』を使用しました(現在は絶版のようです)。この駅舎のプロトタイプのあるBad Nauheimはフランクフルトの北にあり湯治場として有名な場所で、過去にはオーストリアのフランツ・ヨーゼフ1世やビスマルクが訪れこともある街のようですが、それはさておき製品はZゲージでも長さ40cmの大きな駅舎です。ちなみに東京駅の長さは330mだそうなのでZゲージでも1.5mになります。
同年7月号から1971年5月号まで連載されたレイアウト製作記事. Lガーターを簡略化したフラットガーター方式による台枠製作、クッキーカッター方式による勾配製作、プラスター工作の詳細が解説されている.(この時代、まだ発泡スチロールによる地形製作は一般的ではなかった)。1971年5月号に掲載されたキャブコントロールの解説. 上記レイアウト記事の電気配線法の解説に合わせて掲載された. Model Railroader誌の最新号(2023/March)に掲載されているnゲージレイアウトの地形の制作法とオランダフラワーによる樹木の製作法
前回、北海道仕様のC55を紹介したときにModel Railroader誌の2022年12月号のFrom the Editorに掲載されていた上記の言葉を引用しました。その際にも記載しましたが、このRealism Level(意訳すると実物の鉄道を模型で再現する時の本物らしさ(再現度)のレベルということでしょうか)をどこに設定するかということは非常に難しい問題です。その基準は一度設定したらその後はその基準で制作を進めることが理想ですがこの基準は自身の考え方、技術力によっても変化しますので長年この趣味を続けている間に変化しますので変化を恐れたり、変えることをためらう必要はないと思います。私は90年代前半までこれまでご紹介したように比較的ディテールにこだわった車両模型を製作していましたが、その後そのそれとは全く異なる分野である外国型レイアウトの製作を始めて現在に至ります。今回は上記のコラムに関連し、私がなぜ外国型Zゲージのレイアウト製作を始めたか、その経緯をご紹介してみたいと思います。車両のディテールアップと外国型Zゲージのレイアウト製作はある意味鉄道模型では対極的な分野だと思いますが鉄道模型の新しい分野にチャレンジしようとしている方の参考になったら幸いです。