以前読んだ本(ローランド・エノス著・水谷淳氏訳:The Age of Wood(NHK出版:2021)によると米国の鉄道は北米大陸の豊富な森林資源を利用して構造物を作っていたようです。言われてみればアメリカの鉄道にはティンバートレッスルがよく使用されており、米国のレイアウトにもよく登場しますし、札幌ー小樽間にあったティンバートレッスル(野幌川橋梁)の写真も有名ですが欧州の鉄道では殆ど(全く?)見かけません。明治期の北海道も米国同様森林資源は豊富であったと思われますので、鉄道施設も木材を使用した米国仕様で建設されたことは容易に想像がつきます。かなり前になりますが、外国では日本の住宅は兎小屋のように狭く、紙と木でできているといわれてるという報道が話題となりましたが、兎小屋云々はともかく、現在でも米国の一般住宅は木造住宅の比率は高いのではないかと思われます。下記は最近のModel Railroade誌に掲載されていた蒸気機関車時代の建物の製作記事ですが、北海道の機関庫もまさにこのようなタイプですし、観光地で所謂「洋館」と言われる建物にもこのタイプは多くあります。
私が当時製作した蒸機を一部を除き特定ナンバーにしなかったのはいかにもありそうな機関区の風景を再現して見たかったからです。晩年の蒸気機関車に形態は各地域ごとにバラエティに富んでおりましたが、その中には形態や装備に特徴(美しさ)がある「有名機」というものが存在しました。そしてそれらは鉄道雑誌等でよく話題となっており、模型のプロトタイプにもなっていました。ただ当時、それらが配置されていた機関区には当然「普通」の機体も稼働していたわけで、各地の有名機を製作し、レイアウトセクション上に集めてもそれは機関区の日常風景を再現したレイアウトセクションとはならず、単なる車両展示台になってしまいます。私が一部(C62)を除き、特定ナンバーではない機体を、異なる形式間でもある程度共通な装備(特徴)を持つ北海道仕様で製作してきたのは、私がレイアウトセクションで目指すのはは展示台ではなく、機関車が働くいかにもありそうな日常風景をその機関区がある地域のイメージも含めて再現したいという思いがあったからです。 その後私が車両製作から離れて外国型レイアウト製作に転向した経緯は”When is your realism level good enough?:車両製作から外国型Zゲージレイアウト製作の決断まで”に記載したとおりです。そして、その中でZゲージレイアウトのがほぼ完成した時、今まで慣れ親しんだサイズのレイアウトを製作して外国型の車両を走らせてみたいと思い、制作したレイアウトセクションが以前このブログで紹介した”ALTENHOF機関区”です。そして、そのテーマとして実際に訪れたことのない外国の機関区セクションを製作しようと決めた背景はやはり、上記の”蒸気機関車のいる周辺”の影響が大きかったと思います。その構想の中で、Zゲージレイアウトで運転中のリバース区間のスイッチ切り替えや複数列車の制御のためのキャブの切り替えの為のスイッチ操作が思ったより煩わしい作業だと感じていた私は、HOゲージの機関区セクション製作の際、”蒸気機関車のいる周辺”では機関車の留置等で2m足らずのセクションに15箇所のギャップが切ってあるという記事を読み、デジタル制御であれば配線も簡単で自由度の高い運転ができると考え、デジタル制御を採用することとし製作を開始しました。そして完成したレイアウトで機関車の運転を楽しんでおりました。
約60年前に鉄道模型を始め、車両の製作を主体に楽しんできた私が同じ鉄道模型とはいえ、30年ほど前に全く異なる分野の外国型Zゲージレイアウト製作に『転向』した経緯と、広く普及しているHOゲージ、Nゲージより小さいサイズでいいかに『実感的なレイアウトを制作するか』ついての検討結果については過去の記事で紹介させていただきましたが、照明の追加等の改修作業が終了しましたので改めて今まで紹介していなかった部分も含めたレイアウトの全体を写真を主体に2回にわたり紹介させていただきたいと思います。第1回目はレイアウトの概要の紹介です。写真は全て55㎜のマクロレンズを使用してレイアウトの外側から撮影していますので、写真はこのレイアウトの運転中に見ているレイアウトの風景に近いのではないかと思います。今までのこのレイアウトに関する記事の中で、このレイアウトについて、When is your realism level good enough? というキーワードでZスケールという非常に縮尺比の大きい(小さい)レイアウトで、小さいが故に運転性能等の観点から一部オーバースケールで作られているメーカー製の車両、線路等のシステムと、手作りで製作する周囲の風景をいかにバランスよく実感的に(それらしく)製作するかにという観点で、色々理屈を述べてきましたが、その一つの結果がこれから紹介させていただく写真になります。写真で見ると各部に工作力不足による乱れが生じており、お恥ずかしい限りですがZゲージのレイアウトに興味のある方の何かの参考になれば幸いです。なお、一部に今までご紹介した写真や説明と重複した部分があること、ご了承ください。
前回の記事、”Zゲージレイアウトの改修(途中経過):照明のLED化と街路灯の追加”では市街地への街路等の追加に対する構想と実際の作業について紹介しましたが、その作業がほぼ終わりましたので今回その結果を報告させていただきたいと思います。 今回の改修では市街地に約80本の街路等を設置しましたが、その他の部分はほぼ製作時の姿に修復してあります。思えば、このレイアウトを紹介するきっかけはModel Railroder誌のEditor’s columnに掲載されていた”When is your realism level good enough?”という記事がきっかけでした。このレイアウトを製作したのは今から20年以上前で、思えばその時から今まで自分が鉄道模型に対して私がgood enougと感ずるrealism levelは変化しているような気がするのですが、改めてその観点で全体の構成を大きく変えないという前提の元、各部の詳細を見てみると、その観点では従来の部分を”改良”できる部分はほとんどないと感じました。もしrealism levelの向上を”各部をより実感的にすること”と捉えると、その手段として第一に考えられることは”個々の部分の「細密度」を向上させる”ということになりますが、私のレイアウト製作技術が当時から進歩していないということもあり、従来の技法では効果のある細密化が難しく、もし行なってもその効果は乏しいと感じたからです。細密化に対しては3Dプリンタやレーザーカットという最新の技法を使用すれば何か方法があるような気もしますが、Zゲージの場合その対象が非常に小さいため、これを考えるとやはりZゲージでは、realism levelを向上させるためには個々の部分の細密化より今回の街路灯の追加のような大きい単位での改修が有効であるような気がします。このことはZゲージのレイアウトを構想する場合には構想段階で、線路配置を含め全体を見渡した際にいかに全体を”それらしく見せるか”を考えることがが重要であり、この構想段階での検討がrealism levelを good enoughにできるか否かを決めるのではないかと考えられます。