When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(まとめ)

<まとめ>
これまでZゲージレイアウトのRealism levelについての検討結果と実例をご紹介してきました。何分レイアウト作りは初めてでしかもそれまで過去にあまり前例のないZゲージを採用したこともあり苦労も多かったのも事実ですが自分としては当初の目標に対してはなんとか満足できるものができたのではないかと思っております。今回はそのまとめとしてその中でrealism levelという観点で感じたことを2点と、製作後の反省点について記載してみたいと思います。
1. スケールよりバランスが大事
これはどのゲージでも言えることかも分かりませんがZゲージであるが故に特に注意が必要な事のように感じます。私はこのレイアウトを製作する前は車両工作しか行なっておりませんでしたが、例えば程度の差こそあれ全てのゲージについて製品のレールはオーバースケールです。HOゲージのレールはは高さこそスケールに近いもののレール単体の幅はオーバースケールです。ただ、それでも車両の鑑賞時にはあまり気になりません、これは車両の車輪厚さの厚さ、フランジ高さも「それなりに」オーバースケールであるからなのか、単に見慣れているからなのかはよくわかりませんが、車輪とレールの接触部近傍のみが他に比較してrealism levelが異なっていると感じたことは今まで全くありません。しかし、このレールと車輪周りの「オーバースケールの度合い」は縮尺比の大きいゲージほど大きくなっています。最近雑誌に発表されるNゲージの作品は車両もレイアウトも素晴らしく、写真を見ただけでは16番ゲージかNゲージかわからないものも多々あります。そんな時は車両に対するレールの太さに注目するとゲージが分かるように思います。Zゲージレイアウトではレールの「オーバースケールの度合い」はNゲージよりもさらに大きくなります。そのような状況でレイアウトでは車両のいない時の線路周りを見た時にも一定のrealism levelが求められます。したがって特にtrack side周りの各部を製作する際には、その大きさと実物に対する縮尺の忠実度(線の太さ?)は車両や線路等、既製品を使用した部分とのバランスを常に考えながらことが重要です。またtrack side以外の部分でもたとえば製品の建物の窓枠の太さはかなりのオーバースケールですので自作の建物の窓枠の窓枠寸法をスケールにこだわると両者を並べた時に違和感を生じます。このため、Zゲージでは自作する部分については最初に既製品とのバランスを考えながら構想、設計、製作を行うことが他のゲージにましてより重要である感じました。

1.5Vミクロ球を用いた駅の照明やショップの商品はオーバースケールではあるもののレイアウトの中ではさほど気にならない.ショップの商品をスケール通りに製作すると小さすぎて目立たなくなる恐れがある.


2. 「それらしく作る」がキーワード
Zゲージはとにかく小さいので手作りの工作には限界があります。製品も一部オーバースケールであるのは製造だけではなくやユーザーの取り扱い上の理由もあると思われ、メーカーはこれらの制約(リーズナブルなコストで製造することも含む)から構造や全体の大きさを決めていると考えられます。しかし自作部分ではそのような製品とバランスをとった大きさでも素材や加工法の制約から細部の表現が困難な事例も数多くあります。そのような時はこの「それらしく作る」ということが重要で、時には大胆な省略や多少のオーバースケールには目をつぶるということが必要と感じます。特にZゲージはとにかく小さい(最初にも記載しましたが体積はNゲージの1/4強)ですので時には無謀と思えるようなな省略を行っても思ったより目立ちません。また、どうしても省略できない部分も大きさが小さいせいか実際には多少オーバースケールになっても意外と目立たないこともあります。従って自作が難しい場合、省略しても差し支えのない部分は思い切って省略する、省略できない部分で手作りでは加工が困難な部分については多少のオーバースケールは許容するというノリで製作を進めることが必要と感じました。また、このような場合は机上で考えるのではなく製作して確認してみることも必要と感じました。これらを別の言い方をすると「間違っても細密なものを作ろうと思って頑張ってはいけない」ということでしょうか。思えば私が学生だった70年代から80年初めにかけては現在ほどパーツに種類が多くなかった為、HOゲージでも台車等は似たような形状のもので済ませるということが日常的に行われており、雑誌の記事でもそのような車両が紹介されていましたが、それから20年以上経って今回紹介したこのZゲージのレイアウトを製作した時にこの当時のことを思い出すとともにこのような「小さい」レイアウトを製作する際にはこの『それらしい」という感覚が重要ではないかと感じました。
ただ、上記の2項目を実践するのは意外と難しいようにも感じました。極端な言い方かも分かりませんが、全てを実物通りに製作しようとするということを放棄して「それらしく作る」ということは逆に実物に対する観察力や設計のセンスが問われ、それが作品に如実に現れてしまうということです。このような観点で自分の作品を眺めてみると自分の力不足を痛感し、まだまだ努力が必要と感じます。

チップLEDを用いて製作した街路灯. φ0.15のエナメル線をLEDの両端に半田付けして製作. 自作では形態がどうしてもばらつくが小さいのであまり気にならない


<レイアウトオーナーになった感想・課題とその展開>
今まで車両工作しかしなかったものがその車両が活躍する舞台ではない全く別の、しかも車両の製作はほぼ不可能であるゲージの外国型レイアウトを製作するということは今思えば無謀と言われてもやむをえないことであったような気もしますが、結果的にはこのレイアウトの製作により自分にとっての鉄道模型に対する視野や楽しみ方の幅が飛躍的に広がり、現在ではこのレイアウトを製作して本当に良かったと思っています。このような小さなレイアウトでも、車両を走らせたいと思った際、電源を入れてコントローラーを回せばすぐに列車が動き出してその動く姿を鉄道を周囲の「風景」とともに見ることができるということは今までに体験したことがないない感覚で、鉄道模型は走らなければ鉄道模型ではないということを改めて感じました。
一方実際に運転してみるといろいろ課題も出てきました。

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When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(市街地の構想とその細部)

これまで2回にわたり外国型Zゲージレイアウトのストラクチャー、Tracksideのrealism levelについての検討結果を紹介してきましたが、今回はレイアウトの市街地の構想とその細部についての検討結果と作例を紹介したいと思います。これまで紹介したストラクチャーとTracksideについては一部に市販品を使用しており、自作の部分はそれらの市販品とのバランスを考慮しながら材料の選択や素材からの自作を行いましたが、市街地については限られたスペースの中でどのようにしたらターミナル駅がある市街地らしい市街地を作ることができるか、そのためには市販品と自作品の建物を市街地の中にどのように配置するかというレイアウトの全体構想に関わる課題に対する検討が必要でした。また街頭にある小物は当時市販品はほとんど発売されていなかったため、ストラクチャーのrealism levelとバランスをとりながら鉄道模型用として販売されていない製品の流用や素材からの自作が必要で、それらをどのように製作するかが課題となりました。そこで今回はこの課題の検討過程と結果(作品)を紹介したいと思います。
<市街地のスペース(線路配置)>
この検討結果をご紹介するにあたりまずはこのレイアウトの線路配置を写真を用いて説明します。

台枠状に線路の敷設を完成した段階

上の写真が台枠上に線路を敷設した状態のレイアウトです。手前のエンドレス外側の頭端式のターミナル駅を出発した列車は勾配を上り最初の分岐器でエンドレスの周回方向を決定してエンドレスに入ります。その際列車を左回りとする場合はリバース線を経由して本線へ、右回りとする場合はそのまま本線に入ります。そして本線周回後駅に戻るには手前側の背中合わせに配置された分岐器でエンドレスを離れ駅へ向かいます。その際、時計回りで周回していた列車はリバース線を経由して駅に向かいます。このようにプランとしては非常に単純なプランです。市街地にはターミナル駅に相応しい駅舎を街と向き合う形で設けることとしたのでその駅舎はスペース上写真のリバース線より奥側に設けることになります。そこで写真のリバース線より奥側を市街地とし、手前側を住宅地にすることとしました。ただ、駅舎を市街地と向き合う形で配置する駅舎とホームが高架線で分断されてしまいます。そのためこの部分の処理についてはいろいろ悩みましたが、最終的には高架線下に駅舎への通路を設けるとともに高架線のホーム側にはカフェ等のショップを作り、駅舎との関係性を自然なものとすることとしました。駅舎は市街地と対向するので、運転位置からは駅舎の背面しか見えませんが、運転位置からホーム側のショップが見えれば列車が駅に到着した際、ある程度ターミナル駅の雰囲気が味わえるのではないかと思ったのがその理由です。実際にこのような構造になっている駅は見つけられませんでしたが欧州にはプラットホームに隣接して色々なショップが並んでいる例はよくあるようです。日本で言えば上野駅の地平ホームのイメージでしょうか。そして駅舎はKibriの製品の中から『B -6700″Bahnhof. Bad Nauheim”』を使用しました(現在は絶版のようです)。この駅舎のプロトタイプのあるBad Nauheimはフランクフルトの北にあり湯治場として有名な場所で、過去にはオーストリアのフランツ・ヨーゼフ1世やビスマルクが訪れこともある街のようですが、それはさておき製品はZゲージでも長さ40cmの大きな駅舎です。ちなみに東京駅の長さは330mだそうなのでZゲージでも1.5mになります。

<市街地の構想>
次に市街地の建物の配置を検討しました。

駅舎の配置と建物の配置を検討中の写真. 駅舎の位置はこの位置に決定した

上の写真は市街地の建物の配置を検討していた時の写真で、市販の建造物キットを組み立てた後、どのような建物をどこに配置するかを検討している段階の写真です。市街地の建物は主にKibriの製品を使用しました(教会のみVollmer製です)。Kibriの建物はいずれも旧市街にあるようなタイプの建物で、旧市街に特徴的なCity Gateもあります。一方以前も述べたように旧市街にあるような古くからある建物は装飾が複雑なため自作で製品と同じrealism levelの建物を製作するのは難そうです。このため駅舎から見て左側と奥側を旧市街と見立て製品の建物を配し、駅の正面には比較的近代的な自作の建物を配置することとしました。上の写真では自作する建物は検討段階ではまだボール紙で作った単純な形状のものですが、最終的には駅舎正面の建物は上記写真より小型とし(左側の建物の面取り部分を削り)駅前広場を秘匿するとともに右側の三角屋根の建造物は数を減らし、池の周りの広場のスペースを多く取りました。住宅地も含めて建物の配置が終了した段階の写真が下の写真です。駅舎の正面に自作の建物が並び、それを取り囲むように市販のストラクチャーが配置されているのがわかると思います。

建物の配置を完了した段階. 細部を作り込んでいく前の状態
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When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(ストラクチャー)

街中の高架線を走るTEE Rheingold. 牽引機はスイス国鉄のRe460広告塗装機

これまで、車両製作からZゲージレイアウトを製作することを決断するまでの経緯についてご紹介してきましたが、何分レイアウト製作は初めての経験であり、いざ製作を始めようとすると全くどこから手をつけてよいかがわからない状態で、日曜大工の経験も乏しくレイアウト作成を決めた時点では製作法に記されているような作業の経験は全くと言っていいほどありませんでした。ただ、幸いなことに鉄道模型趣味(TMS誌)を1970年ごろから購読していた私は、その頃のNゲージ黎明期に編集部により解説されていた線路の敷設法、プラスターによる地形の製作、配線等の基礎的な技法に関する記事が掲載されたバックナンバーを保管していましたのでそれらを全面的に参考にすることができました。これらの記事はNゲージレイアウトの製作例でしたが、これらはZゲージでも工作法にそれほど差はないと思われましたので、今回。まずはこの記事のとおりに製作しようと決めました。具体的には台枠はフラットガーターのフラットトップ、勾配はクッキーカッター方式、地形はプラスター成形、運転方法はデュアルキャブコン方式等です。余談ですがこの種の記事は最近の雑誌にはあまり掲載されていません。当時のTMS誌のEditorである山崎主筆はTMS誌を「参考書」と言う言い方をしてこのような記事はマンネリと言われようと繰り返し掲する必要があると述べていたようにいたように記憶しています。時代が変わったせいか現在の日本の模型誌にはこのような基本的な製作技法の解説記事はほとんど見られませんが最近の方は情報をどこから得ているのでしょうか。私の最近のレイアウト製作法の情報源はModel railroder、M¨arklin Magazine等海外の雑誌で、特にModel railroder誌にはシーナリーの製作法等が比較的頻繁に掲載されます。Model railroderはネットから定期購読を申し込めば洋書店で購入するよりかなり安く、メール便で毎月届きます。

レイアウトのテーマは、比較的大きな駅(ドイツ語でいえばHauptbahnhof)がある都会をイメージしたものとしました。前述のように私はレイアウトの製作を始める前に車両工作をしており、主に北海道仕様の列車を制作し、その中で特急列車からローカル線の列車まで各種の車両(列車)を製作しましたが、完成した車両をお座敷運転レベルで運転する時には程度長編成の列車の方が面白く、そのような運転に慣れ親しんでいたこと、私が東京出身の東京在住者であまり地方で暮らしたことがなく、鉄道模型を始めた頃から鉄道模型のレイアウトは長編成列車の走る都会の風景をテーマとしたレイアウトと言うイメージがあったことが理由です。もしかしたら初めて見た神田須田町の交通博物館のレイアウトのイメージがそのまま頭に焼き付いているのかもわかりません。また、実際に接した海外の鉄道も都市の鉄道が殆どですので、海外の風景も地方より都市の風景の方がイメージしやすいのではないかと思ったこともその理由です。このようなテーマのレイアウトをHOゲージで製作することは私にとってはスペース的にまず不可能ですが、今回はZゲージを採用しますのでスペース的にもなんとかできそうです。私が鉄道模型を始めた頃はまだNゲージはあまり一般には知られていませんでしたが、しばらくした後初めてNゲージ(当時は9㎜ゲージと呼んでいました)を見た時に、その小ささに驚いたものです。そしてこのゲージはレイアウトのためのゲージであると言う説明には大きな説得力がありましが、Zゲージ(1/220)は寸法比でNゲージ(1/160)の約0.7倍ですので同一レイアウトを作成するための面積は約半分になります。これはA3の用紙とA4の用紙の大きさの差に相当しますのでNゲージでA3サイズに収まるような縮尺比で描いたレイアウトプランはZゲージではA4用紙の大きさに収まるイメージとなります(A3サイズの書類をA4サイズに縮小コピーするイメージです)。この差は意外と大きいものです。メルクリンはZゲージのスケールを決めるにあたり同じ線路配置のレイアウト面積がNゲージの半分になると言うことを意識したのでしょうか。

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When is your realism level good enough?:HOゲージャーから見たZゲージ(外国型モデル)の印象

<HOゲージと16番ゲージ>
まず最初に表題について。私は鉄道模型を始めた時から現在まで日本型の車両を軌間16.5㎜、軌間以外を1/80で製作する所謂「16番ゲージ」の愛好者です。Zゲージの模型を初めて手に取るまで16番以外の鉄道模型は所有したことはありません。しかしここではあえてHOゲージャーと書かせていただきます。私は現在軌間16.5㎜の鉄道模型を日本型・外国型問わず楽しんでいます。そのような状況では正直同じ軌間の模型を日本型(1/80)を16番、外国型(1/87)はHOと厳密に呼び分ける必要性を感じなくなりました。模型とおもちゃの違いはルールの存在ということは冒頭の言葉を引用したModel Railroader誌の言葉ですが、このルールの最上位の基準(規格)を線路幅と定義してそれをXXゲージと呼んでいる(同じ呼称のものは同一の線路が使用できるので)と考えれば日本型も外国型もHOゲージと呼んでしまっても構わない気がしてきたからです。少なくとも軌間(ゲージ)のみに注目すれば3.5㎜スケール(Harf O=HO)ですので理屈上も説明できますのでそれでもあながち間違いではないような気がします。Nゲージの黎明期には日本型の車両が模型化されていないため日本型レイアウトに外国蒸機が走っていましたし、メルクリンHOの客車はいまだに1/87ではありません。実物の世界でもかつてオリエント急行に使用された「外国型」の客車が日本全国を走りました。もちろん「同一線路上を走行できる」を「同一線路上で共存できる(共存させても違和感がない)」と言い換えれば軌間以外の縮尺比(スケール)の基準が必要となりますが、それは軌間の基準より下位の基準のような気がします。ただしこの考えではHOゲージ(3.5㎜スケール)のゲージ(軌間)を用いた鉄道模型と全体をHOスケール(3.5㎜スケール)で製作した鉄道模型は明確に区別する必要があります(英語のgaugeには軌間という意味と尺度という意味がありまのでここがややこしいかもわかりません)。このように最上位規格にレール幅を基準とした名称を規定し、その下位の標準で模型全体の縮尺比の範囲と名称を規定するような体系を構築していくと各種のスケールと名称が整理されて分かりやすくなると思うのは私だけでしょうか。
<Zゲージの印象>
冒頭から話題が逸れてしまいましたが、話を元に戻しますとZゲージのレイアウトの製作を決意した後、先ず最初に行ったことはメルクリンZゲージスターターセットの購入です。購入したセットはスターターセットの中で最も小規模なもの(入門者用?)でDBの89型蒸気機関車に有害車と無蓋車が各一両、それに楕円形の線路(半径195㎜の曲線線路一周分と110㎜の直線線路2本)とパワーパックがセットされたものです。

この機関車の登場時、この機関車は量産されている鉄道模型の中では世界最小の機関車と言われていました(今も?)。Zゲージが誕生したのは1972年で当時私は高校生で初めて真鍮製のバラキットを組んだ頃です。当時のTMS誌上でも新しいゲージの誕生ということで比較的大きく取り上げられていたことを記憶していますが正直私の興味の対象外でした。ただ当時この機関車がパイプの柄の上に乗っかっている当時の広告ははっきり覚えています。またモデルさんのような女性が広告に登場していたのも新鮮でした。このような広告によりメルクリンはこのゲージが「大人向け」であると言うことを示唆していたのでしょうか。


実際の機関車を見て驚くのはその小ささだけではありません(全長約45㎜、重量約20gです)。ロッドはメインロッドのみでサイドロッドはありません。ピストンロッドとクロスヘッドとメインロッドは一体のとなった板金製です。車体はダイキャストの一体成形品で別付けされているパーツはありません。このように全体はかなり簡略化されていますが大きさが大きさですので走り出してしまえば機関車のサイドロッドがないことも殆んど気になりません。

上回りと下回りははフレーム側に取り付けられているバネで付勢されたピンがダイキャスト製のボディー側の穴にはま流ことにより両者が固定される構造になっています。このようにこの機関車の外観は今までHOゲージ(16番)のキット組立やディテールアップをしてきた感覚からは信じられない事ばかりでした。ただ走行性能はレールの汚れとオイルの固着(走り始めでオイルの温度が低い時にはオイルの粘度が高いので走行抵抗が大きく速度が十分でない場合がある)に気をつければ流石にあまりスローは効かないものの実によく走ります。このスターターセットにより基本的な走行性には問題がないことを確認できたので、次に実際にレイアウトで使用を予定している分岐器や客車を購入て次のテストを行いました。客車は全長27mのUIC-X型客車の全長が約120㎜、全長20mの客車が約90㎜です。当時のメルクリンのHOゲージの客車は1/100でしたがZゲージは正確なスケールとなっています、

全長27mのUIC-X客車と全長20mのRebuild客車. 日本の新幹線と在来線の車両の長さを同一スケールで比較すると概ねこのようなイメージとなる. 欧州ではこれらの車両が同じ線路上を走行する.

これらの客車をスターターセットのR195㎜の線路上に置いた時の写真が下の写真です。

27m級の客車では車体からレールが大きくはみ出しており、実感的ではありません。流石にレイアウト上で車両がこの状態になることには抵抗がありましたのでレイアウトでは目に見える部分にカーブはR220を採用することにしました。その写真が下の写真です。線路の車体からはみ出し量は小さくなりますがそれでもまだレールが車体からはみ出してはいます。私はこれは許容範囲と判断しました。

私は今回このレベルはOKとしましたが、もし自分が苦労してディテールアップした車両がこのような線路上を走ることになれば少し抵抗を感じると思います。この辺りがレイアウト製作時に自分の”realism level”を決める(あるところで割り切る)難しさかもわかりません。今にして思うと私はレイアウト作成を決めた時にあえて従来楽しんできたものと異なる規格のゲージ(スケール)を採用して車両もあまり馴染みのない外国型のレイアウトを製作するることによりこの辺りを割り切ることができたのではないかと言う気がします。

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When is your realism level good enough?:車両製作から外国型Zゲージレイアウト製作の決断まで

前回、北海道仕様のC55を紹介したときにModel Railroader誌の2022年12月号のFrom the Editorに掲載されていた上記の言葉を引用しました。その際にも記載しましたが、このRealism Level(意訳すると実物の鉄道を模型で再現する時の本物らしさ(再現度)のレベルということでしょうか)をどこに設定するかということは非常に難しい問題です。その基準は一度設定したらその後はその基準で制作を進めることが理想ですがこの基準は自身の考え方、技術力によっても変化しますので長年この趣味を続けている間に変化しますので変化を恐れたり、変えることをためらう必要はないと思います。私は90年代前半までこれまでご紹介したように比較的ディテールにこだわった車両模型を製作していましたが、その後そのそれとは全く異なる分野である外国型レイアウトの製作を始めて現在に至ります。今回は上記のコラムに関連し、私がなぜ外国型Zゲージのレイアウト製作を始めたか、その経緯をご紹介してみたいと思います。車両のディテールアップと外国型Zゲージのレイアウト製作はある意味鉄道模型では対極的な分野だと思いますが鉄道模型の新しい分野にチャレンジしようとしている方の参考になったら幸いです。

初めて製作した外国型Zゲージレイアウトの一コマ


まず初めにModel Railroader誌の2022年12月号のFrom the Editorの要点を簡潔に記載します。このコラムではまず、模型とおもちゃの違いはルールの存在であり、我々は鉄道模型を始めるにあたりこのルールの一つであるrelism Levelの基準を自分で決める必要があることを教わると述べています。そして自分が満足するレベルでその基準を決め、それに従って各部を製作する必要があるという有名モデラーの言葉を紹介しています(日本と異なり米国(欧米)では鉄道模型はレイアウト製作が一般的ですのでこのコラムはそれを前提として述べていると思われます)。続いてその方の意見、”superdetailed locomotive とrolling stockがcardboardで作られた街の中を走るレイアウトは車両とシーナリーのバランスをもう少し考えたほうが良い(シーナリーに注力したほうが良い)” と言う意見を紹介します。しかし編集者のWhite氏は 模型でできる限り実物に忠実なoperationを再現しようとしているモデラーは、線路配置がそれを実現できるものであればシーナリーには拘らないという事例を紹介し、realistic lebelの考え方は人それぞれであると論じます。次に自分がかつてレールや車輪の形状を実物通りに再現する規格であるProto87に則りでレイアウトを作成しようとして技術力と忍耐力不足により挫折した経験し、そこから試行錯誤しながら自分のrealism level が確立していった経緯を語ります。そして最後に結局ealism lebelは人それぞれであると結論づけます(元々英語はあまり得意ではありませんので間違っているところがあったらお許しください)。日本の鉄道模型はかつては車両の製作が中心で、過去TMS誌上で山崎喜陽氏は細密化と走行性能のバランスを述べておられました。私も今まで製作してきた作品ではこの点には留意してきたつもりです。ただ車両工作が中心の日本では上記コラムにあるような”車両とレイアウトのバランス”についてはあまり述べられていなかったような気がします(車両をレイアウト上に置くと細かいディテールは気にならなくなるということはよく言われていましたが)。現在日本の鉄道模型雑誌は車両、レイアウトともメインとなる(目玉の)記事はコンテストの入選作であることが多く、素晴らしい作品が掲載されています。私はその記事を読むと「素晴らしい」と思うと同時に「自分にはとてもできない」と思ってしまいます。欧米の雑誌の紹介されるレイアウトも同じレベルの作品なのかもわかりませんが、通刊1000号を超える雑誌の編集者が実例や体験も交えてモデラーが製作する模型のレベルは人それぞれで良いと言うことをコラムで述べることは私のような「不器用なモデラー」に勇気を与え、結果雑誌を読んで鉄道模型をやってみたいと思う方を増やすような気がするのは私だけでしょうか。
私も車両製作を行なっていた頃には車両とレイアウトとのバランスと言うことは考えませんでした。私がそれまでに製作した車両を走らせるために保有している線路はエンドウのプラ線路で待避線と引き込み線ができる分岐器数個で、今でも今まで製作した車両はこの線路で走らせています。その線路を走る列車の動画を下に示します(製品を紹介する際撮影にに使用している線路はMärklinのC-Trackですが、これは道床の色合いを考慮して選択しています)。

C62 2+C62 3が牽引する急行ニセコ7両編成. 機関車のモーターはカツミ製DH-13で走行電流は約1.5A. 製作から30年以上経っても走行性能は製作時と変わらない
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Märklin CS3による自動運転を前提としたレイアウトセクション”終着駅Großfurra”の紹介(1):レイアウトの概要

このレイアウトセクションは以前15回にわたりこのブログで「自動運転を前提としたレイアウトセクション」として製作過程を紹介させていただいたメルクリンCS3による自動運担を前提としたレイアウトセクションです. この度 ”終着駅Großfurra”として一応の完成を見ましたので改めてその概要と自動運転プログラムの一例を紹介させて頂きます.

<レイアウトの概要>
このレイアウトセクションは以前このブログで紹介させていただいた機関区のジオラマ ”ALTENHOF機関区” の自動運転時の機関車の待機線線の部分に制作したレイアウトで,ALTENHOF機関区と対向する形で設置しています. その全体写真を下図に示します. 

手前が今回製作の”終着駅Großfurra”, 奥が”ALTENHOF機関区”

<線路配置>
今回のレイアウトは以前作成し、このブログでも紹介させていただいたジオラマ,”ALTENHOF機関区” の自動運転時の機関車の待機線線の部分を利用しています.その線路配置を下図に示します. このレイアウトでは図の上側2本の待機線は目隠しして下側の2本の待機線みを使用しています. 線路はメルクリンのKトラック,分岐器は#22715/#22716(Wide Radius Turnout)を使用しています.なお,一部の分岐器はFrog可動式の旧製品#2272/#2273も使用しています.

RailModeller Proで作図した線路.RailModeller ProはMAC用のアプリで欧米42種類のProduct Lineに対応

 下図はレイアウト全体写真上に線路配置を線で記入したものです. 黄色の部分が今回のレイアウトに使用した部分の線路, 水色の点線部分が目隠しした機関区の自動運転用の待機線, オレンジの部分が”ALTENHOF機関区”の線路で, 今回はこの機関区部分を自動運転用の車両待機線として使用します. 水色の部分はコの字型のBoxで目隠しし, 手前の壁に背景を作成, 上部は車両の展示台としてあります.

水色点線で示した部分は”終着駅Großfurra”の自動運転には使用しない
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レイアウトの製作:自動運転を前提としたレイアウトセクションの製作 <15>

前回までレイアウトの照明の説明をしました。今回はその照明の配線と制御について説明させていただきます。

<照明の制御>
 下に記載した文章はこの製作記”レイアウトの製作:自動運転を前提としたレイアウトセクションの製作 <3>”で記載した自動運転の脚本の一部の再掲です。今回、レイアウトの中で下記の脚本に記載したような車両の制御と照明の制御を連携させた例を照明への配線とともに説明させていただきます。
まずは動画をご覧ください(動いている車両は下記の脚本とは異なります)。


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<脚本(Screenplay)>
まず線路配置の詳細を検討するにあたり、以下のような脚本を考え場面を想定しました。
1)夜明け、駅員が起きて駅舎の宿直室の電灯が灯り、その後事務室、待合室の電灯が灯る。
2)しばらくすると場内信号が青になり、始発列車がやってくる。始発列車は乗客が少ないので蒸気動車の単行列車。
3)信号が青になり始発列車が出発する。
4)周囲が明るくなり、駅の電灯が消灯する。
5)通勤時間帯となりやってくるのは収容力の大きなプッシュプルトレイン。
6)信号が青になり折り返しのプッシュプルトレインが出発する。
(以下省略)。
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上記シナリオでは駅の2階(宿直室)、駅1階(事務室・待合室)の照明をシーケンシャルに制御する必要がありますが、今回のレイアウトでは、上記の駅舎1階、2階の他に、駅の入口灯、ホーム待合室と街灯、ホーム照明灯、貨物駅の6個の回路を個別に制御できるように設定しました。

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レイアウトの製作:自動運転を前提としたレイアウトセクションの製作 <14>

前回は貨物ホーム上屋とその照明について説明させていただきました。今回はレイアウト上のその他の照明について説明させていただきます。前回記したように貨物ホーム上屋の照明には12Vに米粒球2個を使用しましたが、今回はその他の表面実装型チップLEDを使用した照明について説明します。

<チップLED>
使用したLEDは表面実装型のLED(チップLED)で、optosupply社製のOS**0402C1Cというシリーズの製品で、サイズは1.0×0.5㎜、厚さ0.4㎜のものです。以前は同じ会社のOS**0805C1C(2.0×1.25㎜、厚さ1.1㎜)を使用していましたが、今回からより小型の物を使用しました。色はホームの照明灯にはYellow、街灯、待合室の照明灯にはWarm Whiteを使用しました。

<リード線のはんだ付け>
まずはLEDにリード線をはんだ付けします。写真のように、まずLEDを両面テープで固定し、その両端に予めハンダメッキをしたリード線をはんだ付けします。リード線はAWG #36 を使用しました。使用したハンダゴテは20Wのものです。LEDの端子にリード線を接触させてハンダを溶かせば比較的容易に固定することが可能です。取り付け時リード線の先端に無酸ペーストを塗布していますが、なくても大丈夫です。熱についてはあまり気にする必要はないようで、今回のはんだ付けでは加熱時間等、特に気を使わず数十個をはんだ付けしましたが、熱による破損は皆無でした。ただ、固定時にリード線に力をかけると、端子がベースからリード線ごと取れてしまうので、その点は注意が必要です。

端子の片方にリード線を取り付けた状態です

片方のリード線がはんだ付けできたら、今度はリード線とLED両方を固定した状態でもう片方のリード線をはんだ付けします。完成したのが下の写真です。リード線の色と極性を合わせはんだ付け後にもチェックします。万一間違えると試験点灯の際一発で破損しますので注意が必要です。

写真の状態で先端部をエポキシ系接着剤で固めれば、LEDへの配線は終了です。

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レイアウトの製作:自動運転を前提としたレイアウトセクションの製作 <13>

前回、貨物ホームの製作を行いましたので、今回は貨物ホームの上屋を製作します。
<プロトタイプ>
まずプロトタイプ探しから始めます。ドイツ等のヨーロッパではよくわかりませんが私の貨物ホームの上屋のイメージは木組みでしたので、まず木組みの貨物ホームの上屋をGoogleに”Gootershuppen”と入力して探してみました。するとでてくる画像は倉庫と一体となった貨物ホームが多く、イメージに合うものはなかなかみつかりません。Vollmer Kibri等のカタログにも、木組みのホームの上屋というものはあまりみあたりません。そこで対象を旅客駅の上屋にも広げていろいろ検索したときに見つけたのが、今回ご紹介する上屋のプロトタイプとなったNössenという駅の旅客ホームの上屋です。Nössenはマイセン地方の街で、ルネサンスの城が有名なようで、Wikipediaで検索すると街の説明が出てきます。また画像には駅のホームの上屋の画像も出てきますので、よろしければチェックしてみてください。

まずは完成時の写真です。

梁の構造は写真を参考に製作しました。プロトタイプに比較しホームの幅が狭いですので、あまり太い角材を使用すると印象がゴツくなってしまいます。角材はEvergreen社製のプラ材で、柱に1.5㎜角を使用するか2㎜角を使用するか悩みましたが、最終的にはメインの柱は2㎜角、補強部材は1.5㎜角、中央部のx型の補強は1㎜の角材を使用しました。いろいろなサイズの角材を組み合わせるとゴツさが和らぐようです。

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レイアウトの製作:自動運転を前提としたレイアウトセクションの製作 <12>

今回は前回ご説明した貨物ホームを作成するための素材と同時に入手したTelex Couplerを装備したBR094 (#37180 2020 New Item) と既存のTelex Couplerを装備したBR323(Köf II : #26005)との組み合わせで、Märklin Central Station2による終端駅での入れ替え作業の自動運転プログラムの作成を行いましたので、今回はその内容と、実際に自動運転プログラムを作成した際に発覚した問題点とその対策について記載したいと思います。

<シナリオ>
今回作成した自動運転のシナリオは以下のとおりです。

  1. BR218の牽引するプッシュプルトレインが奥側ホームに到着します

2. 貨車を牽引したBR094(Telex Coupler付き)が手前ホームに到着します

3. 貨車を牽引したBR094が後退して貨物ホームに貨車を移動、その後BR094は貨車を解放して手前ホームに戻ります

4. BR218の牽引するプッシュプルトレインの連結部がUncoupler上に移動し、機関車が切り離されます。その後機関車は単機で出発していきます

5. BR094が奥側ホームに移動して、客車と連結します

6. BR323(Telex Coupler付き)が貨車を手前側ホームに移動させます

7. 貨車をホーム で開放後、BR323(が貨物ホームに戻ります。作業を終えたBR323のエンジンが停止し、ライトが消灯します。

8. BR218が単機で手前側の線路に入線し、貨車と連結します。

9. 入れ替わりにBR094の牽引する旅客列車が出発します

10. BR218が牽引する貨物列車が出発します

動画は以下をご覧ださい。約9分のノーカット版です。画面の右上にはEvent発動後のCS3の画面を表示しています。タイムラインを表示しているダイアログボックスの右上の緑丸の中の数字はロコシーケンスの残り数、各ロコシーケンスのところの緑丸の中には各ロコシーケンスのコマンドの残り数が表示されます。赤線が実行中のロコシーケンスと次のロコシーケンスの間に表示されます。画面ではわかりにくいですが連動制御盤にポイントの方向、信号現示、コンタクトトラック上の列車の有無が表示されます。また画面の左側にBR094の速度、右側にBR218の速度が表示されます。

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