レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(9) -ストラクチャーの製作(2) : 給砂塔と砂焼き小屋 –

給水タンクに続き紹介するのは給砂塔と砂焼き(砂煎り)小屋です。今まで紹介してきたストラクチャー(建物)は基本的に木造建築であり、製作法はペーパー製の車両にも通ずるものがありしたが、給砂塔は塔の部分が鉄骨製でありプラ素材を使用した工作となりますので今までの素材に紙と木を使用した工作とは少し異なった工作になります。以前の記事にも記載したのですが、この給砂塔という設備はこのレイアウトを製作しようと思い立つまでその存在を殆んど意識していませんでした。今回改めてその理由を考えると、思い当たることがありました。かつて60年代から70年代のTMS誌にはレイアウト製作のための参考資料として駅や機関区の設備の実例を写真とともに紹介した記事が多数掲載されておりました。その記事は80年代に”シーナリー・ストラクチャーガイド”等の名称でTMS誌の別冊として出版されており、当時私も熱心に読んでいたのですが、今読み返してみると私が読んでいたそれらの別冊(シーナリィガイド/シーナリィ・ストラクチャーガイド1/レイアウトテクニック)の中に給砂塔の解説記事が掲載されておりません。どうもそれが給砂塔を注目していなかった理由のような気がします。レイアウトの一角に作る機関区ではスペースが限られますので、そのような機関区ではこの給砂設備は省略されることが多かったのかもわかりません。

完成した給砂塔と砂焼き小屋

それはさておき、まずプロトタイプの選定を行いますが、どうも蒸気機関車の活躍末期の給砂塔は標準化されていたようで、両側の線路に給砂するために砂を貯蔵するタンクを櫓の両側に2基備えたタイプと片側に1基備えたタイプの差はあれど、それらの外観は写真で見る限り全国の機関区でほぼ同一のようです。一方、砂焼き(煎り)小屋は各種のタイプがあるようです。最初に給砂塔を製作しますが、図面は入手できなかったため、写真を参考にして数種類のイメージ図を作成しました。実際に製作した形状は右側の図に近い形状です。

給砂塔のイメージ図です. 図では櫓の根本部はストレート形状となっています.

まず給砂タンクを載せる櫓を製作します。櫓の主柱材と水平材はEvergreen社製の1.5㎜アングル材、斜材は同じくEvergreen社製の幅0.75㎜、厚さ0.38㎜の帯板を使用しました。塔は下側が広がった形状になっていますが、この広がりは水平材の長さを変えることにより主柱材を湾曲させています。湾曲量はわずかですので湾曲による主柱材のねじれは認められません。なお、下の写真のように水平材の端部は主柱材に合わせて加工してあります。接着にはGSIクレオス社製のプラモデル用接着剤Mr. CEMENT Sを使用しました。余談?ですがこの接着剤に限らず鉄道模型の製作に使用する接着剤、溶剤、塗料等の中には危険な化学物質を含む可能性のある製品があるような気がします。危険。有害な化学物質を含む製品には危険性や取り扱い時の注意等を国連が定める書式で記載したSDS(製品安全シート:Safety Data Sheet)が作成されますが、この接着剤にはSDSが存在します。一般的には生産現場等で日常的に使用する化学薬品等についてSDSが存在する製品についてはその記載内容(危険性)の把握と掲示等での使用者に対する周知徹底が求められます。模型に使用するこのような薬品類は日常的に使用するものではありませんが、自分が使用する製品にどのような危険度があるかを明確に知りたい方は一度その製品のSDSの有無と記載内容をチェックしてみると良いかもわかりません。

主柱材と水平材はEvergreen社製の1.5㎜アングルを使用しました.

主柱材と水平材の組み立てが完了したら斜材を主柱材に接着します。斜材は中央部でクロスし撓みが発生しますが接着時はこの段差は無視して組立てます。

斜材を接着する際は斜材がクロスする部分のたわみは無視して接着します.

接着剤が固着したら片方の斜材がもう一方の斜材とラップしている部分をカッターナイフで除去します。

斜材を接着後, ラップしている斜材の一方を切断した状態の写真です.

片方の斜材のラップ部分を切取り後、交叉部分にプラの小片から製作したガゼットプレートを貼り付けます。これで斜材は完成となります。

斜材中央部のガゼットプレートは幅2ミリの帯板から作成して取り付けます.

上記の作業は2面については平板上での作業が可能ですが、他の2面についてはまず水平材を取り付けて箱上に組み立てた後斜材を取り付けます。その後の斜材の切断作業は組み立てながらの空中作業となりますが、材料の厚さが薄いため歯が薄くよく切れるデザインナイフを使用して切断部に当て板を当てながら切断すれば比較的簡単に斜材の切断は可能です。完成した塔は結構頑丈になります。

完成した櫓の2面をに水平材、斜材を接着して櫓を完成させます.

砂を貯蔵するタンクはペーパーで製作します。図面から展開寸法を求めて木工用ボンドで組み立てます。

砂を貯蔵するタンクはペーパー製です.
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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(8) -ストラクチャーの製作(1) : 給水塔 –

前回までで機関区の線路を含んだ地面の基礎部分は完成しました。基礎部分が完成した地面はこの後細部の仕上げ、部分的な着色等を行って完成させますが、この作業はストラクチャーの大きさと配置される位置に密接に関係します。一方、ストラクチャーの製作は機関区を製作した後、これまで説明してきた線路の敷設作業、地面の基本部分の製作と並行して進めてきましたので今回から数回に渡り、ストラクチャーの製作過程を紹介させていただきたいと思います。

地面のベース部分が完成したレイアウトに完成したストラクチャーを仮置きしたところ.

構想時に機関区にある車両の運行に必要な設備として製作を計画したストラクチャーとその概略位置は以下の図です。今回は、この中から給水塔とそれに付属するポンプ小屋の製作過程を紹介します。

構想時のストラクチャーの配置図
完成した給水タンクと給水塔

まずイメージを構築するためにまず雑誌や写真集、それにWEB SITEに掲載されている画像を見ながら構想を検討します。この機関区のテーマは北海道の機関区ですので主に北海道の給水塔をチェックしました。北海道のストラクチャーに関する雑誌の解説記事は1970年頃のTMS誌、TMS選書の中のシーナリーガイドに河田耕一誌の記事が掲載されていますが、このような解説記事だけではなく雑誌や写真集に掲載されている機関区で撮影した機関車の写真には比較的多く機関区の設備も写っていますのでそれらの写真も参考にします。ウエブサイトに掲載されている画像も参考にしますが、実際に検索すると実物より模型の画像の方が圧倒的に多く出てきます。1970年ごろの所謂SLブームの際、TMS誌の故・山﨑喜陽主筆はお立ち台で撮影に熱中するファンの姿を当時大阪で開催されていた万博会場で会場の写真を撮るようなもので資料的な価値はないと言っておられましたが、流石に当時から50年以上経つと万博会場で何気なく撮影した写真でも当時の風俗がわかるという観点で現在では資料的な価値はあるような気がします。ただ、お立ち台で並んで撮影した写真はみんな殆んど同じ写真であり、当時の風俗や周囲の雰囲気はわからないので50年後に資料的な価値があるかは疑問ですので山崎主筆の言葉はある意味今でもそのとおりであるような気もします。しかし当時撮影されたスナップ写真的な機関区の風景など鉄道現場で撮影した写真は当時の機関区の作業内容や労働環境を知るための資料、模型製作の資料としてそれなりの価値があるようにも思えます。SLブームの際に写真を撮影していた方は現在70歳を超えていると思われますが、そのような方が何気なく撮影したスナップ写真も現在では貴重な資料にますのでそれらの写真を検索アプリで検索できる状態でとこかにアップしておいていただけると今後蒸気機関車に興味を持ち鉄道模型のレイアウトを製作してみようとする人にとって貴重な資料となると思うのは私だけでしょうか。私もこのブログ等で当時の写真をアップしようとは思うのですが、当時の国内製のモノクロフィルムにはビネガーシンドロームが発生するという問題があり、当時プリントしていなかったフィルムがかなり失われてしまったのが残念です。
話を元に戻しますと北海道の給水塔と給炭台は特に給水塔に特徴があるようで、給水タンクの脚部が木材で覆われている例が比較的多いようです。上記のシーナリーガイドの解説によれば、タンク本体も防寒のために木材で覆われているものがあり、中にはタンク本体も木製のものがまだ残存していたようです。私はこのようなタイプの中から、タンク本体は鉄製で、脚部に6角形の木製の覆いががついたものを選びました。機関車への給水はスポートではなく、その覆いから出ている給水口から機関車に水を重力で供給するタイプです。参考にしたのはシーナリーガイドに掲載されていた函館本線茶志内にあった給水タンクです。
タイプが決まったらまず概略のスケッチを作成しますが、寸法の詳細が分かりませんので他の似たようなタイプの給水塔を含め機関車が映り込んでいる写真から割り出しました。このスケッチには給炭台も描き入れてで全体的なバランスが問題ないかを写真と比較して確認しました。

最初に作成したスケッチ

バランス的に問題のないことが確認されたら図面を作成します。通常日本家屋には”1間”という基本寸法がありますが、このような建造物にはその単位がどの程度適用されるのかは全く分かりませんでしたので寸法決定の際には意識しませんでした。また、機関区を製作した際に余ったエコーモデル製の窓枠を使用するため、窓の大きさや位置はそれに合わせてプロトタイプから変更してあります。

スケッチより作成した図面
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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(7) -地面の製作とバラストの散布-

前回までで線路の敷設とレールと枕木の塗装が終わりましたので、次の工程である地面の製作とバラストの散布作業に進みます。ただ、以前にも記したように蒸気機関車が活躍していた頃の機関区の地面と線路周り(バラスト)は所謂「列車が行き交う”一般的な”線路」とは雰囲気が全く異なりますので今までの製作法では対応できません。
私は今までたレイアウト(レイアウトセクション)を機関区のレイアウトセクションも含め三種類製作してきましたましたが、それらはは外国型のレイアウトでした。私は蒸気機関車が活躍している時代はもちろん、今まで外国の機関区を訪れたこともないため機関区の線路はブレーキ粉の錆が付着したことを考え茶色系のバラストを使用して周囲を黒くウエザリングする以外、細部はあまり深く考えず製作しました。しかし今回のレイアウトは遠い過去ではあるものの、私が自ら体験した機関区風景の再現ですので、その当時の印象(心象風景)をいかに再現するかを検討する必要があります。

細部仕上げ前の地面のベースが完成したレイアウトにストラクチャーを仮置きして車両を並べたところ


私が蒸気機関車が活躍していた時代に見た機関区の地面(レール周辺)の印象を一言で言うと、機関区の線路は「バラストのみの部分は殆んど無い」と言うことです。下の写真は八高線の無煙化に際して公開された高崎第一機関区の写真ですが、給水塔(スポート)や給炭設備のあるエリアではバラストは全くと言っていいほど見えません。

八高線のさよなら列車が運転された当日の高崎第一機関区の風景.

一方、下の写真は八王子機関区の写真ですが、機関車の停車しているところはアッシュピット付近で、線路周辺は土ではなく石炭殻が散乱しています。そして地面を覆っているのは石炭殻(灰)ですので上記の写真とは色調が異なります。上の高崎第一機関区はほぼ蒸気機関車の定期運用が終了したさよなら運転の際の機関区公開時の写真ですが、こちらの写真は本数は少ないながらもまだ八高線に蒸気機関車が運用されている時点での写真であり、蒸気機関車が待機しているエリアは活気があると同時に、砂や石炭殻が各所に散乱している状況でした。余談ですが当時は所謂SLブームの直前の時代であり、機関区事務所でお願いすると、職員さんが案内して内部を見学させてくれて蒸気機関車のCABにも載せていただくことができました。

八王子機関区のアッシュピット付近に待機するC58. 周囲には石炭殻が堆積している.

この写真のように蒸気機関車時代の機関区はエリアによって線路周りの表情と色調が全く異なりますし、晴天でも給水スポート周辺の土は水で濡れており、水たまりができていることもあります。また石炭殻は水たまりができるような地面の凹みにも散布されたりしますのでアッシュピットの周囲でなくても石炭殻が散布されて地面の色調の異なっている部分があります。、このように機関区の地面の表情は多岐にわたっており、これらをどのように表現するかが製作のポイントとなります。過去の作例として故なかお・ゆたか氏のレイアウト、”蒸気機関車のいる周辺”の製作記事では機関区エリアの土に埋もれたバラストの表現方法として枕木間の隙間に紙粘土を詰める技法が紹介されていました。ただ、いくらバラストが土等にで埋もれていると言っても場所によっては少しバラストが露出しているところもあり、バラストが殆んど見えない部分でもバラスト自体を省略することには抵抗がありましたので、別の方法を検討することとしました。ただ、あまり机上で考えていても始まりませんので実際に製作を進めながらある程度 Try and Errorも覚悟しながら検討と製作を進めることとしました。今から数十年前のTMS誌で、故・山崎喜陽氏は「簡単と思われる工作でもいきなり手を動かすのではなくしっかり時間をかけて事前に技法や手順を検討することが必要」と言うことを述べておられました。この考え方は車両工作では絶対必要な考え方で鉄道模型のみならず日々仕事をする中でも必要な考え方ですが、レイアウトの製作はEngneeringの要素にArtの要素が加わってきます。題名は忘れてしまいましたが昔読んだ本に絵が上手い人と下手な人の差は1本の線を描く時間の差に現れる(絵の上手い人は線を引くという動作の中で全体のバランスを見たり想像しながら書き方を微調整しているので時間がかかる)と書いてありました。同じ鉄道模型でもレイアウトの製作やウエザリング作業にはこのような「製作しながら考える」と言うことも必要である気がします。このようないろいろな考え方で製作を行う必要があるということが鉄道模型製作の面白さ(奥深さ?)であるような気もします。

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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(6) -レールと枕木の塗装-

コントロールボードが完成したらこのレイアウトでの運転を想定している手持ちの車両で試運転を行ないます。このセクションの分岐器は非選択式であり、スプリングポイント機能もありません。そのため分岐器部分でのストックレールとポイントレールの通電不良や分岐側から車両が侵入した際のポイントレールのスプリングポイント機能の動作確認が不要ですので比較的問題は起きにくい構造です。したがって主な確認部分はレールのジョイント部のずれと段差の影響の確認になりますが、その確認の際には脱線の有無だけでなく通過する車両を注意深く観察して揺れや音に注意して確認することが必要です。特に見落しがちなのはジョイント部のレールの段差です。今回は分岐器とフレキシブルレールのメーカーが異なっていますので分岐器とフレキシブルレールの部分にわずかな段差がありましたので枕木とベースボードの間に薄紙を挟んで高さ調整を行いました。この辺り、やはりフレキシブルレールも分岐器と同一のPECO製を使用した方が良かったかもわかりません。なお、以前にも記載しましたがこの段差を確認する際は実際の車両を走行させて確認するより台車を手で押さえて(荷重をかけて)通過させてジョイント部を通過する際の振動と音を確認するとよりわかりやすいようです。
試運転が終了したらレールと枕木の塗装を行います。私は今まで製作したHOゲージのレイアウトではレールは全てHumbrolのエナメル塗料の筆塗りで行っています。一般に金属にエナメル塗料を塗った場合塗膜が弱くすぐに剥がれてしまいますがHumrolのエナメル塗料は他の塗料と乾燥機構が異なるせいか、金属に塗装しても他の塗料に比較して剥がれにくく、今まで問題を起こしたことはありません。塗料の伸びも良いのでレールの塗装にはおすすめではないかと思います。ただ、艶(艶消し)の状態を安定させるためには入念な攪拌が必要で、乾燥時間も比較的長い等、他の塗料エナメル系の塗料とは取扱性が異なりますので注意が必要です。また入手製も良いとは言えません。一方枕木はタミヤカラーのフラットブラウンとブラック(いずれも艶消し)を混合した黒に近い茶色で塗装することとしました。
レールの塗色は比較的明るめの#186(Brown)を使用しました。レールの色は所謂”錆色”ですが、場所や交換されてからの期間等で色合いが異なり、選択に当たってはいつも悩むのですが今回は機関区のレールですので実際のレール側面は油、砂、石炭殻等で「汚れて」います。そしてその汚れはレール塗装後のウエザリングで表現しますので、今回はあまり難しく考えずに比較的明るめの「普通の茶色」を選択しました。レール塗装の手順は以下の通りです。まず綿棒を用いてレールを溶剤で拭き脱脂した後、プライマーを筆塗りします。前作までこのプライマーはマッハ模型製のエッチングプライマー(緑の液体)を使用していたのですが、最近入手できなくなってしまいました。そのため今回はIMON製の密着プライマーを使用したのですが、両者で塗料の密着性には差はないようです。プライマーが乾燥したらまずレールを塗装しますが、あとで枕木は塗装しますので枕木側へのはみ出しはあまり気にせず筆塗りしていきます。ただし分岐器部分、特にポイントレールの部分は枕木側に塗料がはみ出ますとポイントレールの動きを妨げますので慎重に塗装します。ただ、前述のようにPECO製のUnifrogタイプの分岐器はポイントレールとリードレールの間に関節部がありませんので関節部への塗料の回り込みを気にする必要がないので他の分岐器に比較してレールの塗装は比較的楽に行えます。なお、この分岐器は非選択式ですのでポイントレール先端とストックレールの間の導通はあまり気にしなくて良いのですが、レールの密着性に影響する可能性があるため接触部の塗装は避けました。塗装後、塗料が乾燥してレールの塗装が完了したら続いて枕木の塗装を行いますが、こちらはレールへのはみ出しがないよう、平筆を用いて塗料がレール側にはみ出さないように枕木を一本ずつ塗装していきます。枕木を1本ずつ塗装するのはなかなか根気のいる作業ですが、レールの総延長がこのレイアウト程度であれば塗装は半日もかかりません。

塗装中のレール. 塗料はHumbrolのエナメル系塗料を使用しました.

塗料が乾燥したらレール踏面の塗料を剥がしていきます。私はまずカッターナイフで塗料を削ぐように剥がしたのちブロックに貼り付けた#600のサンドペーパーで磨いて仕上げています。この際、塗料が剥がれているように見えてもプライマーが付着している可能性がありますが、触指で摩擦の変化を確認したり表面の光沢をチェックすることでチェックすることが可能です。

レールの踏面の塗料はまずカッターナイフを用いて削ぎ落としてその後サンドペーパーで磨きます.歯ブラシは削ぎ落とした塗料を除去するために使用します.

敷設が終了したらアッシュピットの部分の枕木の中央部と端面をカットし切断面を塗料でタッチアップすれば線路の敷設は完了します。

塗装が完了したレールと枕木. 手前は既成のフレキシブルレールで枕木の本数を減らしているのがわかります.
アッシュピット部分枕木を加工して完成です.

レールの塗装が完了したら地面の製作工程となりますが、今回は製作する日本の蒸気機関車が活躍していた機関区の地面でそっれを表現する為には今まで経験したことのない製作法になりますのでその方法には検討が必要で、る程度の時間(TRY &ERROR)が必要と思われましたので、それと並行して今までは図面上で検討していた機関区以外のストラクチャーの配置を検討するとともに、一部のストラクチャーの製作を開始しました。次回以降はその検討の過程と一部のストラクチャーの製作過程を紹介したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございまいた。

地面の製作(製作法の検討)と並行してストラクチャーの製作を進めます. ストラクチャーの製作過程については次回以降適宜紹介していきたいと思います.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(4) -ベースボードの製作と線路の敷設-

前回までの記事で紹介したようにレイアウトの大まかな構想がまとまりましたので、いよいよレイアウトの台枠から製作を開始します。今回は機関区セクションで地面に凹凸はありませんので下図のように台枠の表面は9㎜厚のシナ合板を使用したフラットトップ方式として、30×12㎜の杉角材で周囲の枠を製作することにしました。シナ合板は450×900㎜サイズを購入し、3等分した上で手持ちの300×20㎜の部材を追加して所定の寸法(1370×300㎜)としています。また枠の四隅には枠に使用した30×12㎜の杉角材の残材取り付けて足としました、

台枠の概略図. 右側に線路敷設前にベースボードに加工が必要なアッシュピットと点検ピットがあります.

台枠を組み立てる前にまずベースボードの加工を行います。蒸気機関車の燃料は石炭ですので、他のエネルギー源を使用した車両と異なり定期的に機関車から石炭の燃え殻(石炭殻)を排出する必要があるため蒸気機関車が配置されている機関区には機関車の火室の下から石炭殻を排出したときにそれを一時的に貯めておくアッシュピットがレールの間に設けられています。そのためベースボードには線路を取り付ける前にこの部分に角穴を開けておく必要があります。また機関庫には下回り点検用のピットが設けられていますが、こちらも構造的にはアッシュピットと同一であるためこちらもアッシュピットと同様の加工が必要です。今回、ベース板は3分割されており、組立前であれば角穴は糸鋸で開けることが可能ですのでこれらの部分はベース板を枠に取り付ける前にに加工しました。その手順は下の写真に示すように、所定の形状の角穴を糸鋸で開けて断面を仕上げた後、内側に壁となる1㎜厚のイラストボードを接着してパテで隙間を埋め、表面を平滑に仕上げています。

ピットはベースボードに角穴を開け, イラストボードで作成した壁面を取り付けます
パテで隙間を埋めて週を仕上げます. この後イラストボードで作成した底板を取り付けてピットの完成です.

今回使用するPECO製の分機器はポイントマシンを分岐器に直接取り付けることが可能で、その場合にはベース板の所定位置に角穴を開けることが必要ですが、ポイントマシンを分岐器の直接取り付けずにベース板裏面に取り付けることのできるアダプタ(PL-9:mounting Plate)が発売されていますので、今回はそのアダプタを使用してポイントマシンはベース板に取り付けることとしました。なお、PL-9を使用してポイントマシンをベース板裏面に取り付ける場合にはポイントマシンはPL-10Eという製品を使用します。このポイントマシンは分岐器に直接取り付けるタイプに比較し、アクチュエータであるピアノ線の長さが長くなっています。

ポイントマシン(PL-10E)にMounting Plate PL-9)を取り付けた状態

このアダプタを使用する場合は角穴は不要で所定位置に10㎜の丸穴を開ければよいので、この穴はベースボードの組み立て完了に開けることとしました。この穴あけには木工用ドリルを使用します。

ベースボードの組み立てが完了したら線路を敷設する作業を開始します。最初に分岐器の位置を決めて取り付けます。前述にように今回分岐器は英国PECO社製の6番ポイントを使用します。PECO製の分岐器は国内の模型店でも入手できますが、私は海外(ドイツ)からの個人輸入で入手しました、海外の価格は昨今の円安の状況でも国内で入手するより¥1,000程度安いのですが、送料と国内消費税を加えると国内とほぼ同等の価格になります。ただ、今回はベースの裏面に取り付けに対応したポイントマシンや裏面取付用のMouting Plate等、国内模型店ではすぐには入手困難な部品があったことから海外手配としました。今回は価格的なメリットは殆んどありませんでしたが比較的大きなレイアウトを製作する場合等には多数の分岐器が必要となる場合は分機器1台あたりの送料は減りますので価格だけ考えれば海外手配の方がお得ではないかと思われます。貨物の到着日数もほぼコロナ禍前に戻っているようです。ただ、海外手配の場合は輸送中の事故のリスクがありますのであくまで海外手配を行う場合は自己責任でお願いします。
線路が入手できたらまずは分岐器をベースに取り付けます。下の写真はPECO製の分岐器を裏面から見たものですが、PECO社のUnifrogタイプの分機器はFrog部分に給電用の導線が溶接されていますのでその導線をベース裏に通す穴が必要です。

PECO製の分岐器を裏面から見たところ. 絶縁されたフログ部分から導線が出ていますのでベースボードにこの導線を通す穴が必要です.

PECO製の分機器はポイントマシンを分岐器に直接取り付けることが可能で、その場合には取り付けるだけで分岐器とポイントマシンの位置関係は正しく位置決めされます。一方、裏面取り付け用のアダプタを使用する場合は分岐器とアダプタの位置調整は現物合わせによる調整が必要になります。ただ、マシンは強力でストロークもポイントレールの移動量に対して充分大きいためアダプターの取り付け位置の調整は比較的簡単です。ポイントマシンを取付後、枕木から飛び出しているアクチュエーターを切断しますが材質がピアノ線のため切断にニッパーや糸鋸は使用できませんので今回はヤスリで切り欠きを入れて折り取りました。

Mouting Plate(PL-9)を取り付けたポイントマシン. Mouting Plateとマシンの取り付け方法はポイントマシンを分岐器に取り付ける方法と同一です.

分岐器以外の線路は篠原(IMON)製の#83フレキシブルレールを使用することとしました。英国PECO社でもフレキシブルレールは製品化されていますが、今回はより入手しやすい国内製を使用することにしました。ただ、実際にフレキシブルレールを入手しPECO製の分岐器と比較してみると両者でレールの断面形状と軌間がわずかにに異なっていることがわかりました。またレールの色がPECO製の方が少し黄色味が勝っています。しかし正しく取り付ければ走行性に問題はなく、色もレール側面を塗装すれば目立たなくなりますのでShinohara製をそのまま使用することとしました。PECO製のフレキシブルレールの実物に詳細は確認していませんが、気になる方はPECO製のフレキシブルレールを使用した方が良いかもわかりません。ベースボードへの取り付けはまず分岐器の位置を決めて取り付けていきます。ベースボードの線路の中心線を罫書いたら分岐器を#70用のスパイクで固定します。過去の雑誌の記事を見ると線路の固定にスパイクを使用すると振動がベースボードに伝わるため騒音が大きくなるというような記事があったような記憶がありますが、今まで製作したレイアウトではスパイクの有無は騒音にはあまり影響はないのではないかと思います。線路の取付に際しては、今回は機関区のレイアウトであり、バラストの厚さはそれほど厚くする必要がないので線路はベースボードの直接取り付けています。この構成は故なかお・ゆたか氏のレイアウトセクションと同一です。なお、分岐器のポイントレール部分(稼働部)には十分にバラストを散布できないためベースボードの表面が露出する可能性がありますので、分岐器のポイントレールの部分には分岐器の取り付け前にベースボードにグレーの塗料を塗っておきました。なお、レール側面と枕木の塗装はこれまで製作したレイアウトと同様ベースボードへの固定後に行うことにしましたので事前にレールの塗装はせずそのまま取り付けます。

分岐器の固定が終了したらその他の部分の線路を敷設しますが、Shinohara製の線路の枕木間隔は約6.5㎜であり、この感覚はこれは蒸気機関車が活躍していた頃の機関区の枕木間隔と比較すると小さすぎます(単位長さあたりの枕木の本数がが多すぎます)。これはこのレールが設計された時代がまだ日本の鉄道模型業界は米国への輸出が主体である頃でしたので米国のレールを意識して設計されたためではないかと思われます。国鉄時代の線路等級の規格では亜幹線の枕木間隔は8〜9㎜で機関区等の側線ではさらに広い感じがします。それでもあまり減らしすぎると分岐器部分との枕木本数の差が大きくなりますので今回は枕木間隔を8㎜としました。雑誌に掲載されている・故なかお・ゆたか私のレイアウトセクションや故・荒崎良徳氏製作の雲龍時鉄道祖山線の記事には市販のフレキシブルレールの枕木本数を2割減らすとよいという記載がありますが、6.5ミリのピッチを8ミリに拡大すると削減本数はこれらの記事に記されたように全体本数のほぼ2割減となります。実際に枕木を減らした線路を敷設中の写真が下の写真です。写真からもわかるようにPECO社の分岐器は米国仕様のためか枕木本数が多いため、下の写真を見ると分岐器部分とそうではない部分の枕木の本数の差がかなり目立ってしっまっています。枕木の本数を減らしたことにより分機器以外の部分では枕木を減らす前より実感的になったと感じますが、このような角度から見ると枕木の本数をもう少し増やしても良かったという気もしましたが、バラストを散布するとあまり目立たなくなることを期待してこのままとしてあります。

なお、Shinohara製の分岐器は写真で見た限りではなぜかポイントレールからリードレールの部分の枕木ピッチがフレキシブルレールの枕木ピッチより広い印象もあるのでShinohara製の分岐器を使用した場合はこの差は目立たなくなるかもわかりません。ただし非選択式の分岐器はありません。フレキシブルレールはもう少し日本の線路の印象に近いレールの製品化をと言いたい気もするのですが、16番ゲージの場合、そもそも軌間がスケールどおりではありませんのでその制約のなかで万人が「実感的」と感ずる線路を製品化して製品化するのはなかなか難しいかも分かりません。故なかお・ゆたか氏や故 荒崎良徳氏のイアウトが製作されたときにはShinohara製のレールはCode100とCode70の2種類でしたが、当時はよりスケールに近いCode70レールは軌間の広さが強調されるため使用する時は注意が必要きということが言われていました。レールの太さはCode70の方が実物に近いのですが模型で「実感的」と感じるためにはやはり全体的なバランスが重要なようです。私は鉄道模型を始めた当時から16番ゲージの所謂「ガニ股」は言われてみると違和感はありましたが鉄道模型は「模型の世界」であるのであまりこだわる必要はないと考えていました。一方、その後外国型の模型を始め、外国型の車両の写真や実物を「模型で再現する」という観点で鑑賞する機会が増えましたが、正面から見た写真を比較すると、外国型車両の模型がレールも含めて写真や実物のイメージを再現している印象があるのに対し、16番ゲージの日本型の模型はそうとも言えないということに改めて気づきました。ただ、それでも模型では下回りの質感の再現には限界があるため、そこにあまりこだわる必要はないと考えています。
話をベースボードへの線路の固定に戻しますと、フレキシブルレールも分岐器と同様、Code70用のスパイクで固定します。ただ、今回は枕木の本数を減らしたため減らす前とは異なり枕木は隣接する枕木と繋がっていません。そのため上の写真のように取り付け時には枕木の間隔とレールに対する直角度はバラバラですので取り付け時は下の写真のようにレールに枕木間隔をマーキングしておき、まずスパイクによる固定用の穴が空いている枕木の位置とレールに対する直角度を調整してスパイクで固定したした後、それ以外の枕木間隔と直角度を1本ずつ手で調整しています。調整後の枕木はレールにもベースボードにも固定されていない状態ですので手で触れれば動いてしまいますが、最終的にはバラスト散布により固定できると考え、そのままにしておくこととしました。

線路を固定し、フィーダーを取り付けた直後のフレキシブルレール.枕木どおしは つながっていませんので枕木の間隔が乱れています.
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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(2)

具体的な構想を始めるにあたり、まずはそのための前提となるレイアウトのサイズと線路配置に影響する分岐器の選定を行いますが今回ベースのサイズは今回1370㎜x300㎜としました。これは以前紹介したレイアウトセクション ”終着駅Großfurra”の上における最大の寸法です。一方、分岐器は将来DCC制御に対応するためには非選択式の分岐器を選ぶ必要がありますが、前回記載したように国内製の道床なし分岐器は旧篠原模型店製の選択式の製品しかありません。したがって製品をそのまま使用するとすると海外メーカーの製品を使用することとなります。そうすると比較的入手(個人輸入)が容易で使用できそうな製品は英国PECO社の製品とオーストリアのRoco社の製品になります。一般的に日本型の大型蒸機が通過できる分岐器の番数は#6程度と言われていますので、そのサイズで両社の製品を探すとPECO社では#5と#6、Roco社では#6と#8相当の分岐器がラインナップされています。PECO社の#5分岐器はスペック上分岐側のカーブは600㎜強ですので大型蒸機が通過できないことはないと思われますが、ここは余裕をとって#6を使用することとしました。このような狭い範囲の風景を再現するレイアウトでは、車両がいない時の線路の「実感」も大切なのであまり番数の小さい分岐器は使用を避けた方が賢明はないかと思います。このうちPECO社の製品はかつて機芸出版社が輸入総代理店として販売しており、カタログ上もCode83レールを使用したプロダクトラインはNMRA規格に適合していることが明確に謳われていまましたので機能的には問題ないと考え、このレール(Code 83)を使用することとしました。PECO社の分岐器にはフログのタイプがElectorofrog(選択式)、Insulfrog(選択式であるがFrog部分が絶縁されジャンパ線の追加で非選択式にする事が可能)とUnifrog(非選択式)がありますが、現在#6で入手できる製品はUnifrogのようですので、このタイプを選択することとしました。ちなみにこの分岐器のサイズのスペックは全長233㎜、frog angle 9.5deg、分岐側半径1092㎜です。なお、PECO社の分岐器は従来から切り替えた方向でロックされますが、この分岐器には従来ポイントレールとリードレール部の境界にあった関節がありません。両者は一体化してあり切り替え時のポイントレールの変位はレールの撓みで吸収しているようです。この構造であればレール側面を塗装する際、関節への塗料の回り込みを心配する必要はありません。PECO社の線路は発売されてから50年以上たちます。従来から発売されている製品の外観や構造ははあまり変わっていないように見えますが、DCCUnifrogの分岐器は比較的新しい製品で、改良が進んでいるようです。

ベースのサイズと分岐器の剪定が終わりましたのでいよいよ線路配置の検討を開始します。この検討には従来から使用しているRailmodeller Proというソフトを使用しました。この種のソフトで有名なのはWintrackですが、このソフトはその名の通りWindows専用ソフトであり、私が普段使用しているMACでは使用できません。そこでMAC対応のソフトをApp Storeで探した結果このソフトが見つかりましたので早速導入しました。機能は比較的限定されていますが線路配置を検討、作図するには充分で、欧米メーカーだけではなくShinoharaやKATO Unitrackのレールにも対応しています。使用を開始し7−8年経過していますが特にバグや安定性に問題はありません。私が使用したのはVer6.4.25ですがアップデートは現在でも行われているようです。最近発売されたMärklin社のCトラックの大型ダブルスリップもすでにリストに反映されています。

この作品のオマージュとなっている故なかお・ゆたか氏のレイアウトセクション”蒸気機関車のいる風景”は全長は1920㎜あり、機関区だけを再現したレイアウトセクションではなく、貨車の入れ替えも楽しめる線路配置となっていますが、今回のレイアウトセクションの長さはそれより短いため、今回は機関区部分のみのセクションとしました。一方私が以前製作した外国形の機関庫セクションは全長が1170㎜と短いため、機関区入り口の分岐器をベースの端部に配置しています。そのためこのレイアウトセクションでは機関区内で機関車を転線させるだけでも別の線路を接続することが必要で、運転のためにはレイアウトセクションを収納場所から出して線路を接続するという作業が必要でした(現在は引き上げ線を固定しその部分に別レイアウトを製作しましたので移動は不要となっています)。そのため、今回のレイアウトセクションでは機関区間の転線が別の線路を接続せずにできることをまず第一の条件としました。2線の機関庫をレイアウトセクション上に配置しようとすると線路配置が前作と似てくることは否めませんが、検討の結果最終的には以下のような下記のような線路配置とすることとしました。

今回採用した線路配置です
こちらは以前に製作した外国型の機関区セクションの線路配置です. ベースの全長が短いため機関区入り口の分岐器をベースの端部に配置しています. また機関庫キットに合わせて機関庫部分の線路間隔が広くなっています.

機関区入り口の分岐器をベースの端部から後退させた以外の前作との線路配置の相違点は全長が長いことを利用して右側の引き上げ線を長くとったことと引き上げ線に対向する留置線部分を2線に分岐したことです。前作では機関車の整備エリア(給炭場と給水スポート)は右側の引き込み線上設置していましたが、今回はスペースが前作に比較して長く、引き上げ線の長さを長くすることができますのでので整備エリアは右側の引き上げ線に配置することを想定して線路配置を決定しました。この機関区に配置する(レイアウト場で運転する)機関車は私が製作した比較的大型の蒸機(C 62,C 57,C 55,D51等)で、通常このクラスの蒸機が配置されている機関区はターンテーブルや扇形庫を備えていますが、今回はそのようなスペースはありません。したがってこのセクションはそれよりも小規模な機関区、あるいは機関区の一部を再現しているという想定にしています。実際の機関区でも整備エリアを機関車を2線の機関庫へ向かう線路上に設置する例はあまりないと思われます。今回のような配置にすれば入区してきた機関車は整備エリアに直接入線可能ですし、機関庫に留置されていた機関車は一度整備エリアに入線した後に直接出区していくことが可能です。またこの機関庫を扇形庫の付属的なものとみなして引き上げ線の際にターンテーブルと扇形庫が存在しているという「想定」も可能です。一方、引き上げ線と対向する左側の線路を2線に分岐したのは留置する機関車の数を増やすためと変化をつけるため片側に気動車の整備場(洗浄線と給油設備)を設けても良いかと思ったからです。また、引き上げ線と留置線はその他の線路とは並行に配置することを極力避けています。また機関庫の分岐も前作とは分岐方法を逆にして線路が輻輳する感じを極力避けています。これはこの機関庫が北海道の機関庫を想定しているため、少しでも機関区の敷地の広さを表現したかったことによります。加えて引き上げ線をカーブさせたことによりこの引き上げ線がさらに遠方のターンテーブルや扇形庫につながっているイメージができたのではないかと勝手に思っています。線路を並行に配置すれば幅はもう少し狭くできますが、今回は上記のようなことを考えて幅を決定しています。
なお、PECOのUnfrogタイプの分岐器はFrog部の無電区間が約30㎜ありますので手元にあるパワートラックを使用した気動車や小型機(C12)はフログ部分で停止してしまいます。そのためFrogには開通方向に応じて極性の異なる走行電流の供給が必要で、この辺りの配線が3線式やアナログ制御での選択式の分岐器を使用する場合に比較して少々複雑になります。また上記の配置図から分かるように右側の線路がベースより20㎜はみ出ていますが、これは機関区入り口の機関車の転線に使用する部分の線路の長さを確保するためです。実は線路配置を決定する際レイアウト全長が1350㎜以下になるように分岐器位置と留置線の長さを計算で決めて線路配置をソフトで作図し、その後ベース版のサイズを線路上に作図したのですが、そこで線路がはみ出てしまうことが判明しました。その原因はPECO社のWEB SITEに掲載されている寸法の誤りでした(2024.3現在)。PECO社のStreamline Code83の#6番分岐器の全長はWEB SITEでは223.5㎜と表示されていますが実際は233.5㎜です。なお、分岐器の説明文は左記の寸法ですがそこに表示されている型紙をダウンロードすると、そこには正しい寸法が記載されています。ソフトウエア上での形状はこちらの正しい寸法で表示(作図)されますので計算と作図結果に齟齬が生じてしまいました。どのように修正するかを検討しましたが、機関車の停止位置の自由度からは留置線の長さは極力長くすることが望ましく、将来自動運転を導入する時も停止位置のばらつきを考えれば留置線長さは長いに越したことはないため、今回は線路配置を変更せず、ベースを20㎜延長することで解決しました。そのため最終的なレイアウトの全長は1370㎜となっています。はみ出た部分の線路を短縮しなかったのは機関車の転線のための線路長を確保したかったためです。この部分の線路長は232㎜としていますが、これは下表に示すこのレイアウト上で運転する蒸機の最大軸距(先頭の車軸から後端の車軸までの長さ)の実測値で決定しました。C62の最大軸距は232㎜以上ありますが、このはみ出し分は分岐器の端面からポイントの長さ(約20㎜)でなんとか吸収しています。逆に言えばこの部分の線路長はそのくらいギリギリに設定している(スペース上せざるを得なかった)ということです。なお、日本の制式蒸機の下回りはやりすぎではないかと思うくらい標準化されていますので、これで国鉄のすべての機関車は転線可能ではないかと思われます(C59の戦後型の全長はC62より20㎜長いですが問題ないと思われます)。最大全長21.3m(車体長20800㎜、スケール寸法260㎜)の2エンジンの気動車も下記の最大軸距は16500㎜、スケール寸法206㎜程度のようですので問題ありません。

アナログ制御時の機関車留置用のブロック分けは下記のように行いました。機関車留置用のブロック数は8ブロックで赤い数字は各ブロックの長さを表します。

なお、PECO社のレールは#100、#83、#70のプロダクトラインがありますが、ご存知のように英国では軌間16.5㎜はOOゲージ(4㎜スケール・1/76) が採用する軌間でもあります。今回採用したCode83レール分岐器は枕木の間隔等も米国の仕様に合わせてあるという説明書きがあり、パッケージにも米国の鉄道を連想させるマークがついています。ソフトウエア上もCode83レールは ”PECO HO US(Code83)” という名称で表示表示されています。詳細は不明ですがCode100やCode70のプロダクトラインと枕木形状等を作り分けているのでしょうか。

余談ですが最近Märklinが英国のFlying Scotsmanの生誕100周年を記念したモデルを発売しましたが、発表段階でこのモデルの縮尺は1/87になるのか1/76になるのかがユーザーのフォーラム等で話題となっていました。結果は1/87で模型化されたようですが、欧州でも英国と大陸の鉄道模型の共存は議論の対象となるのでしょうか。
これで線路配置は決定しましたが、機関区セクションの場合はアッシュピットや機関庫のピット等ベースに線路を敷設する前にベースに加工が必要な部分があり、まずその位置を決めなくてはなりません。次回はその位置の決定も含め、ストラクチャーの配置構想について紹介したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(1)

前回の記事では私が初めて製作した日本型のストラクチャーである北海道タイプの機関庫を紹介しましたが、出来栄えはともかく実際に完成した機関庫を眺めていると日本型の蒸気機関車が活躍していた時代の機関区を再現したレイアウトの製作意欲が沸々と湧いてきました。ただ、そうは言っても冷静に考えると以前紹介したようなサウンドデコーダーを搭載した外国型の蒸機が走るレイアウト(セクション)を製作してDCC制御による自動運転の面白さを知ってしまいそれを楽しんでいる現在、日本型のレイアウトセクションの製作に着手しても線路を敷設してアナログ制御の運転時にブロックスイッチ操作が煩わしい「無音」の機関車の試運転が終了した後、果たして完成まで製作のモチベーションが維持できるかは正直不安です。ただ、そうは言ってもこのまま日本型の鉄道模型の製作を終わりにしてしまうことは少し寂しい気もします。私は仕事をリタイアして3年近くになりますが、思えば会社人生の中で「定年退職」を自分の問題として意識するようになったのは長年自身が関わってきたプロジェクトの後継プロジェクトの完了時期が自分の退職後に設定されたものが出てきた時だったように思います。期限が明確に決まっている会社人生とは異なり、私の人生の終わりはまだ先の話だとは思っているものの、これからの鉄道模型の楽しみ方において何か新しいことを始めるのであれば、それは「今」であるような気もします。また、海外に目を向ければDCC制御に対応できる「非選択式」の道床なし分岐器も製品化されていますのでこの分岐器を使用すれば大きなな改造なしに将来アナログ制御をDCC制御に変更することが可能です。日本形の車両で気軽に(外国型と同じ投資で)DCC制御が楽しめるのはいつになるかは全く予測がつきませんので、このような前提は多分に先送り的(楽観的?)であるような気もしますが、まずはその辺りのことはあまり深く考えず「とりあえず」レイアウトの構想を立て、製作を開始することにしました。

塗装前のD51とおっ街道タイプの機関庫. このD51で私の蒸気機関車キットの在庫は無くなりました.

思えば50年以上前に交通博物館で見たレイアウト(パフレットでの名称は模型鉄道パノラマ)に触発されて鉄道模型を始めて以来、私の頭の中にはいつかはレイアウトを製作したいという想いがありました。このブログで紹介してきた私がこれまで製作した機関車は客車(貨車)を含めた列車単位で製作してきたのもいつかはそれらを自分が製作したレイアウト上で走らせたいという想いがあったからです。

機関車とともに客車も製作したC62重連が牽引する急行ニセコ.

そしてその当時の私の憧れはTMS誌に掲載されていた故・荒崎良徳氏が製作した「雲龍寺鉄道祖山線」であり、レイアウトセクションは故・なかお・ゆたか氏が製作した「蒸気機関車のいる風景」でした。交通博物館の模型鉄道パノラマ(レイアウト)は博物館の展示施設でありそこに作家性は微塵も感じられませんが、雑誌で上記のレイアウト(セクション)の記事を読んだ時、これらの作品の中には実物の鉄道世界を再現し、その中で車両を運転して「遊ぶ」楽しさを味わうために、単純に実物の「模倣」ではなく、自分のイメージに基づき鉄道を取り巻く世界を再現するという観点での作家性が感じられ、ある意味衝撃を受けたことを現在でも覚えています。

TMS誌の表紙に掲載された故・なかお・ゆたか氏が製作した「蒸気機関車のいる風景」と荒崎良徳氏が製作した「雲龍寺鉄道祖山線」. 70年代のTMS誌には「蒸気機関車のいる風景」はなかお・ゆたか氏の執筆した記事には度々登場した.

そのためレイアウトを製作する際にはこれら作品が目標となります。しかし現状(将来も)、「雲龍寺鉄道祖山線」のような規模のレイアウトを製作するためのスペースの確保は将来も含めてまず不可能で、長編成列車の運転は諦めざるを得ませんが、実現性があるとすればそれは故 なかお・ゆたか氏が製作した”蒸気機関車のいる周辺”のようなレイアウトセクションです。そこで甚だ僭越ながら、今まで製作してきた蒸気機関車が活躍していた頃の機関区のレイアウトセクションを故・なかおゆたか氏製作の”蒸気機関車のいる周辺”のオマージュ作品として製作することとし、構想を開始した次第です。そして今後、このブログの中でその構想から製作の過程を紹介していきたいと思います。レイアウト(セクション)の製作は初めてではありませんが、今まで製作した外国型のレイアウトと異なり、製作対象がかつて身近であった日本の風景であるため、今まで製作した外国型レイアウトとは異なり、製作は実際に親しんだ心象風景の再現になります。そのためあまり細かいところこだわってしまうと完成がおぼつかなくなる恐れがありますし、だからといってあまり割り切って製作してしまうと完成後に不満な点が目立つことになり、その辺りのバランスをどのようにとりながらレイアウトをまとめていくかが今までの外国形レイアウトの製作に比較して難しいところではないかと思います。ただ、躊躇していてもことは進みませんのでまずは線路配置から構想を始めました。なお、このレイアウトは現在製作中であり、現在では一部のストラクチャーの基本部分の製作と線路の敷設までが終了していますので、今後数回にわたり構想から線路の敷設までを紹介したいと思います。なお、一度紹介した内容を後で修正したり、作業の進捗状況により更新が不定期(次の過程の紹介までに長い時間を要する)事があると思いますがその点は容赦ください。実際に完成までどのくらいの期間がかかるかは予測がつきませんが、なんとか完成までの過程を紹介できたらと考えております。

製作中のレイアウトセクションの近影


日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(4) -最終回 –

前回は屋根を取り付けたところまでを紹介しましたので、今回は屋根上に取り付ける煙出しと煙突の製作過程を紹介します。これらの部品を取り付ければ機関庫はひとまず完成となります。

完成した機関庫. この後の細部の仕上げはレイアウトに設置後に実施します.
辺りを暗くして照明を点灯すると内装がよく目立ちます. 照明の光には温かみがあり, LEDではなく電球を使用した効果はあったように感じます。

屋根の取り付けが終了したらまずその屋根に取り付ける煙出しを製作します。素材は妻面がケント紙とSTウッド、側面は0.5×6㎜の桧角棒です。煙出しはその名のとおり庫内の煙を逃すたの構造物でスリット状の構造をしているため、理屈でははスリットの間から内部が見え、照明光が漏れてくる場合があります。これは屋根の角度と見上げる位置に依存し、スリットの傾き角と屋根の傾き角が同一の場合、どの範囲から内部が見えるかはスリットの間隔とスリット部材(角棒)の幅に依存します。その漏れてくる光を実際に見たときの印象を一言で言うと「見えるか見えないかは微妙」と言う様な感じですので、製作にあたっては「普通に見た時には光が漏れず、ある角度から見るとうっすら光が漏れてくる」状態になるように角度、スリット幅、使用する材料の幅を調整しました。
製作はまず所定長さに切断した角棒に同一の角棒から製作した0.5㎜厚のスペーサーを挟みながら妻板の外形に合わせて積層していきます。スペーサーは外観から見えないように少し奥にずらして接着します。この接着は木工用ボンドを使用しました。このような細かい作業は瞬間接着剤を使用した方がやり易いようにも思えますが、瞬間的に固着すると言う意味では使いにくい面もあり、手についてしまうと手も接着対象物に接着されてしまいます。その点木工用ボンドはその名のとおり?木材への浸透性が高く、密着させればすぐに剥がれない程度には接着できますのば木工用ボンドの方が使い勝手は良いとのではないかと思います。

妻板との接着作業を4箇所で行ない、大まかな形状が完成したところが下の写真です。製作途中では非常に保持がし難く色々な方向に捩れますが、とにかく妻板部分で角棒を正しい位置に接着することに注力します。

接着剤が乾燥したら、縦桟を設ける部分に角材から切り出したスペーサーを挟んで上下の部材の間隔を一定にします。これで全体の剛性がかなり向上します。

完成後、妻板部には羽目板をSTウッドにより表現した妻板を貼り重ねます。

この後、スペーサーを挟んだ位置にSTウッド製の縦桟を取り付けて塗装をします。

煙出し部には下の写真のような隙間がありますが屋根に取り付けるとこの隙間は通常使用見る位置からはこのようには見えません。

塗装が終了したら屋根に取り付けて、屋根を取り付ければ完成です。屋根は他の部分と同一の素材を使用し、頂部にはEvergreen社の帯材による屋根押さえを取り付けました。

下から見上げるるとこのスリットからわずかに光が漏れてきます。組立てや取り付け時のわずかな歪みにより全体から均一に光が漏れるわけではありませんがそれが却って実感的なような気がします。

次に煙突を製作します。本体は外径6㎜、肉厚約1㎜のプラ製パイプを使用しました。このパイプは真鍮線を購入した際のケースとなっていたもので材質は不明ですが硬さは柔らかくカッターナイフでの切断が可能です。まずは一端を屋根の角度に合わせて切断します。

反対側の断面(煙突先端部)には直径方向に2箇所、直径0.3㎜の穴を開けてコの字型の燐青銅線を取り付けます。この部品が笠の支持部材となります。

笠の製作法はいろいろ悩んだのですが、結局ケント紙を円形に切り抜き切り欠きを設けたのち切り欠き部を接着するという非常に単純かつ簡単な方法に落ち着きました。

切り欠き部は瞬間接着剤で接着し、その後エポキシ系接着剤で固定し、溶きパテを塗布して乾燥後形状を整えます。

煙突本体にはラベル紙から製作したバンドを巻きます。バンドには円周長さを3等分した位置にマーキングをして貼り付け後マーキングした部分に直径0.3ミリの穴を開けておきます。屋根に取り付け後この部分に支持ワイヤを取り付けます。

煙突の部品の完成した写真です。1本だけバンドの取り付け位置が違うためこの後修正しました。

傘の取り付けは合成ゴム系の接着剤で行いました。塗装は本体はグレー、傘は黒で塗装します。使用したのはHumbrolの#27(Sea Gray(MATT))と#33(Black(MATT))です。

傘の取り付けは合成ゴム系の接着剤で行いました。あまり強固に接着すると万一触れた時に脱落したり傘自体が破損したり衝撃で取れたりししますので固着後も剛性の弱い接着時を使用しています。完成したら煙突を屋根に取り付け、固定ワイヤーを張って完成です。ワイヤーは0.25㎜の燐青銅線を使用しました。このワイヤーは屋根に直径0.3㎜の穴を開けて固定します。

この部品の取り付けが終わるとこの機関庫はひとまず完成です。私にとって、このような日本型のストラクチャーは今回が初めての製作でしたが、思ったよりもスムーズに製作することができました。費用もパーツが少ないせいか¥3,000程度で製作できたのではないかと思います。細部の仕上げはレイアウトに配置してからになりますがそのレイアウトはまだはっきりした構想も決まっておらず、これから考え始めなくてはなりません。ただ、この機関庫の完成によりその構想が一歩進んだような気もします。

この規模の機関庫には中型機が似合うような気がしますが機関庫の屋根の傾斜がきつく、全体的に大きく見えますので大型機が入庫を置いてもそれほど違和感はありません。
庫内に佇むC12. DCC制御であれば機関車のライトを点灯させることもできるのですが・・・。

これで私が製作した北海道タイプの機関庫の紹介記事を終わります。最後までお読みいただきありがとうございました。

日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(3)

前回は機関庫の主要部分(構造体)となる側壁と妻板の製作過程を紹介しましたが、今回はそれらの組み立てと屋根の取り付けまでを説明したいと思います。

組み立ての終わった側壁と妻板

組み立て前に妻板に取り付ける部材について説明します。最初は妻板の面取り部です。この部分は最初に妻板のベースとなるイラストボードを切り出す際にそこにも設けていましたが、その目的は機関庫の入り口と機関区の隙間を確認するためでした。入り口は断面に桧角棒を接着しますので下見板取り付け前に大きさを各方向に1㎜拡大し、その際にこの面取り部も切り落とします。そのため、面取り部は別部品として新たに製作する必要があります。この部品は3角形に切り出した厚さ約0.5㎜のケント紙にSTウッド製の下見板を接着し、断面に2×1㎜の桧角棒を接着したものです。下見板は幅1㎜としましたが、幅が狭いため貼りにくく、貼り付けの際の乱れも生じやすいため1㎜幅に切り込みを入れた櫛状のSTウッドをベースとなるケント紙に貼り付けた後、STウッドを外形に合わせて切断しました。妻板への取り付け時は下見板の方向を縦方向として変化をつけてあります。

入り口の扉も同様の方法で製作します。外壁に対して変化をつけるためこちらは下見板の方向を斜め45度として貼り付けました。ただ、扉に面取り部があることを考えると下見板の角度は写真と逆の方が適切であった気がします。こちらも外形に合わせてSTウッドを切断した後、STウッド製の横桟を数本追加し、断面に2×1㎜の桧角棒を接着してあります。

塗装前に完成した面取り部の部材を妻板入り口角部に取り付け、入り口扉を入り口に並べたところです。この後扉も他の部品とと同じ方法で塗装を行ないます。

続いて屋根部の小屋組みを製作します。材料は2×2ミリの檜角棒で、まず屋根の形状に合わせた型紙を用いて角棒を切断し、型紙を治具として木工用ボンドで接着します。

屋根の角度が決まったらその下部に2×2㎜の桧角材を切断した部材を接着していきます。外からは目立ちにくいところですので接着時の多少の隙間は許容しました。切断はカッターナイフで行いますが3×3㎜の桧角棒と比較すると2×2㎜の角棒の切断は容易に行なえます。

下部の柱は長めに製作し、取り付け時に長さを調整できるようにしています。ここまでの組み立ては木工用ボンドを用いましたが、形状に問題がないことを確認したら接合部に瞬間接着剤を流し、再度確認の上さらにエポキシ系接着剤を盛ってあります。

入り口のヒンジは洋白線と割りピンで簡単に製作しました。今のところレイアウト上での開閉は行わない予定ですのでヒンジ部はレイアウト(ベース板)に取り付け後に行いたいと考えております。なお、外国型セクションに設置したVollmer製の機関庫は入庫した機関車が機関庫の終端部に設けられた板を押すと扉が開閉する機構が組み込まれていましたが、運転中に使用したことは殆んどなく、機構は取り外してしまいました。ただ、自動運転で動くレイアウトを眺めていると、レイアウト上にこの様な車両以外の動きがあると面白くなるという気もします。

これらの部品の製作が終了したら側壁の組み立て作業に入ります。まず建物の横桟となる部材を2×2㎜の桧角棒より製作し、断面の中央部に0.5㎜の穴を開け、そこに真鍮線を差し込んで瞬間接着剤で固定します。

側壁上部に取り付けた2×2㎜の桧角棒の対応する位置にも0.5㎜の穴を開け、そこに横桟を差し込んで取り付けていきます。固定は木工用ボンドで行ないます。なお、側壁内側のSTウッドを貼っていない部分(塗壁とした部分)は組み立て前にHumbrol製ののエナメル塗料(#31 Slate Gray)で塗装しました。

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日本型ストラクチャーの紹介:北海道タイプの機関庫(2)

前回、構想と制作の準部について紹介しましたが、今回からは私が行った具体的な制作過程を紹介していきます。まずは機関庫の壁面と妻板の製作です。

今回は機関庫壁面の制作過程を紹介します。壁面のベースには厚さ1㎜のイラストボードを使用しました。イラストボードは表面の用紙の種類によって価格が異なるようですが、今回は何かを描くわけではないので一番安いもので大丈夫です。なお、厚さ1㎜と謳われていても実際の厚さは1.2㎜程度ありますが特に影響はありません。作例ではA4サイズを3枚使用しています。下見板はエコーモデル製のSTウッドを使用します。

具体的な製作手順を紹介する前にまず、側壁の構造をイラストで説明します。下の図は下見板を除いた建物の側壁の外側の構造です。前述のように構造のベースとなるのは1㎜厚のイラストボードです。使用する窓枠はエコーモデル製のパーツ(No.243)です。まず側壁のイラストボードに窓枠の外形寸法の穴を開け、それに厚さ約0.4㎜のケント紙を貼り重ね、窓の開口部の約0.5㎜内側に罫書き線を入れて切り抜きます。この段差が透明プラ板と窓枠をはめ込んで固定する際のストッパー兼接着部となります(窓枠とプラ板の固定は塗装後となります)。また、窓の外周には1㎜厚のSTウッドを帯状に切断した外枠を取り付けます。1㎜厚のSTウッドは現在市販されていないようですが私は以前購入した手持ちのものを使用しています。ただ、1㎜厚のSTウッドの切断面はボール紙ですので桧角棒の方が良いかもわかりませんただ完成時すると断面は殆んど見えません。

下図は内側の構造です。まず下端に3×3の桧角棒を接着し、次に窓間に柱として2×2の桧角棒を接着後、上端にも2×2の桧角棒を接着します。その後窓下の腰部にイラストボードとケント紙を貼り重ねた部材を柱と同一面になるように厚さを調整して接着したのち、羽目板の表現として縦方向に幅2.5㎜で筋をつけた厚さ0.3㎜のSTウッドを貼り付けます。窓の周りは窓を避けて厚さ1㎜厚のSTウッドを貼り付け、窓の周囲に0.5×1の桧角材による窓枠を接着します。なお、こちらは羽目板の表現として横方向に筋を入れて羽目板を表現し、腰部と方向を変えることによりアクセントをつけています。

では実際の手順を主に写真で説明します。

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