模型車両の紹介:北海道のC62 その1

前回までEF64,EF71,ED78と奥羽本線(板谷峠)にゆかりのある車両を紹介させていただきましたが、今回は北海道のゴールデンコンビと言われたC622とC623を紹介させていただきます。とは言っても私は実物を見たことはありません。引退してしまったのは私が高校生の時でした。この作品は1985年ごろの作品です。

この2両はカツミのイージーバラキットを組み立てたものです。購入場所はよくおぼえていないのですが、多分今はなき東急デパート日本橋店のカツミ直営ショップではなかったかと記憶しています。当時は結構多くのデパートに鉄道模型売り場がありました。人気商品はいわゆる「模型店」では直ぐ売り切れてしまうのですが、デパートの直営店はマニアの方はあまり訪れないのか、発売日から日の経った製品でも結構在庫があることがあり、そのような製品が入手できる可能性がある穴場的存在でした。

これら2両は同時に組み立ては行わず、先にC623を組み立てました。まずそのC62 3から紹介させていただきます。


北海道のC62重連を製作しようと思い立った時、最初に考えたのは何号機を作るかということです。C62が急行ニセコの牽引を引退した当時小樽築港機関区に配属されていた機体はC62 2,C62 3,C62 15,C62 16の4両でした。最初に何号機を作ろうかと考えた時、まず2号機はあまりにも有名であったため作るのに少し抵抗があり除外しました。一方15、16号機は呉線の無煙化に伴い小樽築港に転属してきた比較的新しい機体で、これらを作るのにもなんとなく抵抗があったため、まずC623号機を作ろうと思った次第です。その後、3号機を作ったのだからやっぱり2号機を作ろうということになるのですが、2号機と3号機は形態的には類似しており、その意味で先行した3号機は2号機の習作にもなりました。

カツミのイージーバラキットは組み立て説明書にもあるようにキャブ、ランボード、先台車、従台車、主台枠等、いわゆる「平行直角」が必要な部分は組み立て済みであり、比較的簡単に組み立てが可能なキットでした。車体の基本部分を構成する部品はデフレクターの点検窓を開けたこと、砂撒き管をボイラーケーシングの中に隠れるタイプとしたこと位が変更したところでその他はほぼキットの部品を使用して組み立ててあります。

車体の基本部分が組みあがった後、主にロストワックスパーツを利用して3号機(北海道)を特徴づけるディテール工作に移ります。ディテール工作は主に機芸芸出版社から発売されていた「蒸気機関車の角度」、同じく機芸出版社の「日本型蒸気機関車の製作」、また当時比較的高頻度でTMS誌に掲載されていたC62 2の製作記事を参考にしました。また前述のように私は実物の急行ニセコは見たことがないため、イメージづくりのためPress Eisenbahnの写真集『C62 HUDSON FOR LIMITED EXPRESS」(当時の価格で¥8,500!)も購入し、イメージを膨らませました。それでは以下写真で模型の概要を紹介させていただきます。

ヘッドライトは副灯がついた比較的晩年の仕様としました。点灯式にはしておりません。点灯可能にできるロストワックスパーツはまだ一般的ではなく、選択肢がなかったということも理由の一つです。砂箱前のステップの手摺は小樽築港機関区独特の形態です。また前述のように砂撒き管はボイラーケーシングの内側を通っているタイプです。

発電機の排気管はキャブ上まで延長されていないタイプです。排気管は車両限界を逸脱しないよう斜めに取り付けられています。また北海道の蒸機は缶水清浄装置はついていません。キャブには北海道型のタブレットキャッチャーをつけ、またバタフライスクリーンも追加してあります。

キャブ下のパイピングは従台車の動きを妨げないように注意しながら一通り設けてあります。

空気作用感はΦ0.25の燐青銅線で自作しました。思ったより簡単にできましたが継手は設けておりません。また継手部で作用感が離れている部分はもう少し広い印象です。分配弁等にも作用管を配管しました。作用管にはハンブロールの銅色を色差ししてあります。

モーターは当初カツミのDH-13です。ライトがないので配線はいたって簡単です。

テンダーには重油タンクが装着されています。真鍮板から自作しました。給水ハッチはエアータンクの端部の曲面を利用してあります。

塗装はエアーブラシでマッハのつや消し黒を吹き付けましたがつやを消しすぎてしまいました。塗装し直そうし直そうと思って今に至ってしまっています。作成してから約35年経ちましたが塗装の痛みはあまりありません。

当時ロストワックスパーツを生産しているメーカは現在ほど多くはなく、ロストワックスパーツはほとんどニワ模型製のパーツを使用しています。今でこそキットには大量のロストワックスパーツが使用されており、さらなる細密化にもロストワックスパーツは普通に使用されていますが、この作品を製作した時代より少し前はTMS誌でロストワックスパーツを多用してディテーリング工作を行うことの是非が論じられていたという時代でした。

当時のTMSに掲載されていた作品に比較してお粗末なものですが、使用したカツミのキットのプロポーションが非常によく、そのおかげでC62の雰囲気だけは出せたかなと思っております。

以上で模型の紹介は終わりますが、このC62重連が完成した後まもなく、なんとC623が復活し、函館本線を走り始めたのです!この話は作品の紹介とともに次回その2で書くこととします。