以前このブログでED75 700番台を紹介した際、走行中の動画を掲載しましたが、今回はその際この機関車が牽引していた12系客車を紹介したいと思います。それではまずその紹介に掲載した動画を再掲します。
この12系客車は1970年台に製作したもので、当時発売されていた谷川製作所製のキットを組み立てたものです。当時、私はこのブログでも紹介したしなのマイクロ製のEF64,ED78,EF71等の電気機関車のキットを組み立てておりましたが、この車両はそれらの機関車が牽引する客車として製作したものです。編成はスハフ12+オハ12×3+オハフ13からなる5両編成です。当時12系客車は主に臨時急行列車として全国各地で見られましたので当時製作していた機関車に牽引させる客車としては最適な形式の一つでした。このキットを組み立てた当時は車両の細密化にはあまり拘っていなかったため車体はほぼキットをそのまま組み立ててあり、床下機器もキットに付属していた一体成形のプラ製の床下機器をそのまま取り付けて完成としました。
もとより12系客車の車体は非常ににシンプルな形状でディテールアップの余地はあまりなく、当時は現在のようにエコーモデルの製品をはじめとするホワイトメタル製の床下パーツや車体部品もほとんど発売されていませんでした。当時、機関車、特に蒸気機関車はロストワックスパーツを使用した細密化が行われるようにはなっていましたが、電気機関車や客車を細密化するという風潮はほとんどなかったように記憶しています。この記事の最後にも触れますが、客車、特に旧型客車の床下の細部が意識され始めたのは1973年のTMSに掲載されたなかお・ゆたか氏執筆の「客車の実感を求めて」という記事とそれ以降のパーツの充実によるところが大きいように思います。
今回、機関車の紹介記事を書くににあたりこの12系を改めて箱から取り出し眺めてみると、車体はともかく一体成形の床下機器が気になります。
前述のように12系客車の車体は非常にシンプルで、ディテールアップの余地はあまりありません。このキットの車体は全体的なプロフィールは良好で、ユニットサッシもプレスで表現された枠の凹部にサッシを接着する構造となっており、2段窓の段差は表現されていないものの、形態的な不満はありません。強いて現在の水準に合わせた細密化を実施しようとするとドア部への手摺りの追加、プレスパーツを用いたサボ受けのエッチングパーツへの交換が挙げられますが、わざわざ塗装を剥がしてそのような加工を行うこともないように感じましたので、傷んだ塗装の修正を含め今回は車体の加工は見送りました。これはマッハ模型が廃業してしまったことによる調色塗料の入手に不安があったこともその理由の一つです。一方、床下機器についてはスハフ12の発電エンジン部分を除き一体成形の床下機器が現在のレベルからはかなり見劣りがしますので、床下機器についてはスハフ12のエンジン周りを除き新規に製作することとしました。そしてこの改修にあたり、この製作にかかる費用を極力抑制した形で行いましたので、今回はその方法を中心に紹介してみたいと思います。
12系客車のブレーキシステムは従来の客車に使用されていたものとは異なり、CL形応荷重機構付自動ブレーキ装置(通称CLブレーキ)を採用しており、このシステムにより12系客車は牽引する機関車を問わず(機関車側を改造することなく)、従来の客車より15 km/hプラスの最高速度110km/h運転が可能となっています。このため、床下機器とその配管は従来の旧型客車とは大きく異なり、また水タンクもFRP製の円筒形のものが用いられています。したがって各種発売されているエコーモデル製の10系客車用も含めたいわゆる「旧型客車」用のパーツは利用できません。もちろん非常に特殊なパーツまで製品化されている昨今、従来使い慣れたエコーモデル製のパーツには拘らずにいろいろなメーカーのパーツを利用すれば12系の床下を再現できることはできそうです。ただ、それらのパーツをリスト化し、価格を調べてみると結構な価格になってしまいます(それらのパーツがエコーモデルのパーツより割高であるという意味ではありません)。金額を集計すると1両当たりの価格が数千円、この12系は5両編成ですのでトータルでは1万円近くの投資になります。そしてこのような多額の投資をしても車体とのディテールのバランスを考えれば購入した機器を並べて簡単な配管を加える程度の工作ですので工作の面白さもあまり味わえなさそうです。そこで今回は機器類の自作により「細密度には拘らない安価な床下」を製作することとしました。私が鉄道模型を始めて50年以上が経ちますが、その期間を振り返ると「暇はあるけれど金がない」学生時代から「金があるけど暇がない」社会人時代を経て、会社を定年退職した後は再び「暇はあるけれど金がない」という状態になっているように感じます。そうは言っても学生時代ほど金欠状態ではなく、鉄道模型を楽しむための金銭的余裕が全くないわけではないのですが、それでも現役時代よりは鉄道模型に対して使える金額は限られますし、鉄道模型に金を使うにあたって「無職」であるということの心理的影響も多少はあるようにも感じます。そこで今後の車両工作はは特にディテール用のパーツの購入は極力抑え、今回のようにできるものはなるべく自作するという方向にシフトしていきたいと思った次第です。もちろん現在の私の工作力では細密なモデル(パーツ)の製作は不可能で、今後上達することも見込めませんが、必ずしも細密化ばかりが鐵道模型の目指す方向ではないという考えのもと、自分の身の丈に合った形で今後も鉄道模型の製作を楽しみたいと思った次第です。話がそれましたが以下に今回製作した床下の概要を紹介します。
<水タンク>
12系客車の水タンクは円筒形のFRP製で、今回はアルミ棒で作成しました。このようなパーツを自作する方法はまず丸棒をドリルレースすることが思い浮かびますが太い丸棒をドリルレースすることは大変そうで、挟めるチャックもありませんでしたので両端部の局面はエポキシ系の接着剤で製作することとしました。以下はその手順です。
まずはアルミの棒を所定の長さに切り出します。アルミ棒は直径10㎜の素材を利用しピラニアソーと附属のガイド治具を用いて切り出しました。
次に両端部を製作します。両端部にうマスキングテープを巻きtけ、そこに厚さが3㎜程度になるようにエポキシ系接着剤を流し込み、硬化させます。
マスキングテープを剥がすと右側の写真のような状態になりますのでここから湾曲部の肩のRを整形していきます。整形は主にサンドペーパーを使用しました。流したエポキシの厚さにばらつきがあり、個々のタンクの形状がわずかに異なっていまいましたがこの程度のばらつきは許容しました。
この状態では接着剤を盛った部分の中心部は接着剤の表面張力によりやや凹んでいますのでそこにさらにエポキシ系接着剤を盛ります。この際はマスキングテープを使用せず接着剤の表面張力によりタンク中心部の湾曲状態が再現できるように盛る接着剤の量を加減します。そのようにして製作したタンクの本体部が下の写真です。
なお、写真でもわかるようにこの方法では両端部に持った接着剤の量のばらつき、最後に持った接着剤の量や粘度のばらつきにより全長や両端の形状に多少のばらつきが出ますが、そのばらつきには目を瞑っています。
タンク本体が完成したら次にタンクの支持部を製作します。まず支持部材をプラ板から切り出したのちタンク本体に瞬間接着剤で接着します。
さらにタンクを固定するバンドとしてこの支持部材の部分にプラ製の帯板(Evergreen製)を接着し、これで完成です。実物のバンドはタンク本体からあまり出っ張っていなようですが、今回はこれで良しとしてあります。なお、プラ製帯板を支持部材の接着する際、プラ用の流し込みタイプの接着剤を使用すると帯板がケミカルストレスですぐに折れてしまいますので使用する場合は使用量を焦慮とし、瞬間接着剤と併用して組み立てることが肝要です。
この後バンドの余分な部分を切断して完成です。ちなみに丸棒は300㎜のものを約¥470で購入しましたのでそこから8個のタンクが製作できると仮定すると1個あたりの価格は約¥60(+プラ素材費用)となります。この方法ですと全長に多少のばらつきが出ます。また最初にアルミ棒の長さをよく検討しておかないと長さが完成時に長すぎたり短可すぎたりすることになります。今回はすこすい長くなってしまったようです。
<エアータンク>
エアータンクは一般的などろるレースの技法で作成しました。所定長さに切断した真鍮丸棒をハンドドリルに咥え、ハンドドリルをバイスに固定したのち端面にヤスリを当てて形状を作成していきます。最後にサンドペーパーで表面を整え、中心部にパイピング用の穴を開けると完成です。作業中の写真を以下に示します。近頃はこのような技法が雑誌ではかったく紹介されなくなりましたがよろしければ参考にしてください。
使用した直径6㎜の丸棒は長さ400㎜で約¥400でしたのでここまでの材料費は1個あたり長さ15㎜として1個約¥25です。なお、エアータンクはこのほか直径4㎜の素材でも同様に作成してあります。真鍮にも快削性のものとそうでないものがありますが、私の使用した真鍮棒は割と削りやすい印象でした(快削性の真鍮は鉛を含みますので要注意です)。 余談ですが、当時の車両おエアータンクはほとんどがバンドで床下に取り付けられており、パーツもほとんどがその形態ですが最近の車両は支持部材が溶接で取り付けられており、バンドはついていないものが多いようですが、市品品にはほとんどないようです。
<蓄電池箱>
12系の蓄電池箱は10系客車に使用されているものと同タイプのものであると思われます。そのパーツは各社から発売されおり、樹脂製のものやホワイトメタル製のもの、各種ありますが、このパーツも比較的高価ですので今回は自作にチャレンジしてみました。プラ板により組み立てた箱体にEvergreen社製のプラ性格棒や帯板を貼り付けて完成させます、パーツに比較すると線が太い印象ですが黒塗装して床下に取り付ければあまり違和感は感じません、
その他の機器は割と単純な箱上のものですのでプラ板や角材より作成しました。
このようにして作成した部品をプラ板や角棒で作成した他の機器、またジャンク箱にあった部品ととともにベースとなるプラ板に取り付けて完成した床下機器が下の写真です。エアータンクは真鍮製の帯板を使用してベースに固定し、各機器には簡単な配管を施しました。本来水タンクには先端に箱上の部品がつき、そこから給水、検水コックが車体裾部まで帯びているのですがこの部分は省略しました。なお、写真の中央部のエアータンクは当初プラ製のものを取り付けていましたが後日ドリルレース品に交換しました。そしてこの後塗装を行い完成としました。塗装は最近発売になったタミヤのラッカー系の瓶入り塗料の艶消し黒をエアーブラシで吹き付けました。
以下、こうして完成した床下機器の取り付けを終えた改修の終わった車両を写真で簡単に紹介させていただきます。
下の写真は上でも紹介したTMS1973年の記事の一部でその中にあった当時の客車の模型の床下機器の実例です。記事ではこのような事例を示した上で一番下のカツミ製の床下機器(ダイキャストによる一体成形品)に対するディテールアップの手法が紹介されていますが、現在多数発売されているエコーモデル製の旧型客車用の床下パーツはこの記事の流れの沿った形で各機器が製品化されているようにも思えます。ただ、私は単に?運転を楽しむためだけであれば必ずしも全ての客車に対してこの記事のような細密化を行う必要もないような気もしており、私にとっては今走らせて楽しむモデルは今回作成したレベルでも十分であるような気がしています。
私が最近車両の工作をしていて時々思うことは結局車両製作が工作が既成のキットやパーツに縛られてしまっているのではないかということです。資金のキットやパーツの細密度は上記の記事が執筆されたより格段に向上していますが、私の製作過程を振り返ると、製作時にそのようなキットやパーツを使用し、そこからでティールアップをしようとすると、必然的にその部分を使用したキットやパーツの細密度に合わせなければならなくなり(合わせたくなり)、その過程で工作力の不足を補うためにさらにパーツを買い足すという悪循環?に陥っている場合があるような気がします。費用的にも以前このブログで紹介したペーパー製の車両の製作では車体が数百円でできるのに対し、台車以外の床下機器等のパーツを集めると費用はその10倍近くなる場合もあります。このことは従来からなんとかしたいと思っているところであり、もっと安価(気軽)に車両工作を楽しむ方法を考え実践したいと思う今日この頃です。そのためには工作力の向上が必要なような気がしますが、現実はというと・・・。
最後までお読みいただきありがとうございました。