When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(まとめ)

<まとめ>
これまでZゲージレイアウトのRealism levelについての検討結果と実例をご紹介してきました。何分レイアウト作りは初めてでしかもそれまで過去にあまり前例のないZゲージを採用したこともあり苦労も多かったのも事実ですが自分としては当初の目標に対してはなんとか満足できるものができたのではないかと思っております。今回はそのまとめとしてその中でrealism levelという観点で感じたことを2点と、製作後の反省点について記載してみたいと思います。
1. スケールよりバランスが大事
これはどのゲージでも言えることかも分かりませんがZゲージであるが故に特に注意が必要な事のように感じます。私はこのレイアウトを製作する前は車両工作しか行なっておりませんでしたが、例えば程度の差こそあれ全てのゲージについて製品のレールはオーバースケールです。HOゲージのレールはは高さこそスケールに近いもののレール単体の幅はオーバースケールです。ただ、それでも車両の鑑賞時にはあまり気になりません、これは車両の車輪厚さの厚さ、フランジ高さも「それなりに」オーバースケールであるからなのか、単に見慣れているからなのかはよくわかりませんが、車輪とレールの接触部近傍のみが他に比較してrealism levelが異なっていると感じたことは今まで全くありません。しかし、このレールと車輪周りの「オーバースケールの度合い」は縮尺比の大きいゲージほど大きくなっています。最近雑誌に発表されるNゲージの作品は車両もレイアウトも素晴らしく、写真を見ただけでは16番ゲージかNゲージかわからないものも多々あります。そんな時は車両に対するレールの太さに注目するとゲージが分かるように思います。Zゲージレイアウトではレールの「オーバースケールの度合い」はNゲージよりもさらに大きくなります。そのような状況でレイアウトでは車両のいない時の線路周りを見た時にも一定のrealism levelが求められます。したがって特にtrack side周りの各部を製作する際には、その大きさと実物に対する縮尺の忠実度(線の太さ?)は車両や線路等、既製品を使用した部分とのバランスを常に考えながらことが重要です。またtrack side以外の部分でもたとえば製品の建物の窓枠の太さはかなりのオーバースケールですので自作の建物の窓枠の窓枠寸法をスケールにこだわると両者を並べた時に違和感を生じます。このため、Zゲージでは自作する部分については最初に既製品とのバランスを考えながら構想、設計、製作を行うことが他のゲージにましてより重要である感じました。

1.5Vミクロ球を用いた駅の照明やショップの商品はオーバースケールではあるもののレイアウトの中ではさほど気にならない.ショップの商品をスケール通りに製作すると小さすぎて目立たなくなる恐れがある.


2. 「それらしく作る」がキーワード
Zゲージはとにかく小さいので手作りの工作には限界があります。製品も一部オーバースケールであるのは製造だけではなくやユーザーの取り扱い上の理由もあると思われ、メーカーはこれらの制約(リーズナブルなコストで製造することも含む)から構造や全体の大きさを決めていると考えられます。しかし自作部分ではそのような製品とバランスをとった大きさでも素材や加工法の制約から細部の表現が困難な事例も数多くあります。そのような時はこの「それらしく作る」ということが重要で、時には大胆な省略や多少のオーバースケールには目をつぶるということが必要と感じます。特にZゲージはとにかく小さい(最初にも記載しましたが体積はNゲージの1/4強)ですので時には無謀と思えるようなな省略を行っても思ったより目立ちません。また、どうしても省略できない部分も大きさが小さいせいか実際には多少オーバースケールになっても意外と目立たないこともあります。従って自作が難しい場合、省略しても差し支えのない部分は思い切って省略する、省略できない部分で手作りでは加工が困難な部分については多少のオーバースケールは許容するというノリで製作を進めることが必要と感じました。また、このような場合は机上で考えるのではなく製作して確認してみることも必要と感じました。これらを別の言い方をすると「間違っても細密なものを作ろうと思って頑張ってはいけない」ということでしょうか。思えば私が学生だった70年代から80年初めにかけては現在ほどパーツに種類が多くなかった為、HOゲージでも台車等は似たような形状のもので済ませるということが日常的に行われており、雑誌の記事でもそのような車両が紹介されていましたが、それから20年以上経って今回紹介したこのZゲージのレイアウトを製作した時にこの当時のことを思い出すとともにこのような「小さい」レイアウトを製作する際にはこの『それらしい」という感覚が重要ではないかと感じました。
ただ、上記の2項目を実践するのは意外と難しいようにも感じました。極端な言い方かも分かりませんが、全てを実物通りに製作しようとするということを放棄して「それらしく作る」ということは逆に実物に対する観察力や設計のセンスが問われ、それが作品に如実に現れてしまうということです。このような観点で自分の作品を眺めてみると自分の力不足を痛感し、まだまだ努力が必要と感じます。

チップLEDを用いて製作した街路灯. φ0.15のエナメル線をLEDの両端に半田付けして製作. 自作では形態がどうしてもばらつくが小さいのであまり気にならない


<レイアウトオーナーになった感想・課題とその展開>
今まで車両工作しかしなかったものがその車両が活躍する舞台ではない全く別の、しかも車両の製作はほぼ不可能であるゲージの外国型レイアウトを製作するということは今思えば無謀と言われてもやむをえないことであったような気もしますが、結果的にはこのレイアウトの製作により自分にとっての鉄道模型に対する視野や楽しみ方の幅が飛躍的に広がり、現在ではこのレイアウトを製作して本当に良かったと思っています。このような小さなレイアウトでも、車両を走らせたいと思った際、電源を入れてコントローラーを回せばすぐに列車が動き出してその動く姿を鉄道を周囲の「風景」とともに見ることができるということは今までに体験したことがないない感覚で、鉄道模型は走らなければ鉄道模型ではないということを改めて感じました。
一方実際に運転してみるといろいろ課題も出てきました。

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When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(市街地の構想とその細部)

これまで2回にわたり外国型Zゲージレイアウトのストラクチャー、Tracksideのrealism levelについての検討結果を紹介してきましたが、今回はレイアウトの市街地の構想とその細部についての検討結果と作例を紹介したいと思います。これまで紹介したストラクチャーとTracksideについては一部に市販品を使用しており、自作の部分はそれらの市販品とのバランスを考慮しながら材料の選択や素材からの自作を行いましたが、市街地については限られたスペースの中でどのようにしたらターミナル駅がある市街地らしい市街地を作ることができるか、そのためには市販品と自作品の建物を市街地の中にどのように配置するかというレイアウトの全体構想に関わる課題に対する検討が必要でした。また街頭にある小物は当時市販品はほとんど発売されていなかったため、ストラクチャーのrealism levelとバランスをとりながら鉄道模型用として販売されていない製品の流用や素材からの自作が必要で、それらをどのように製作するかが課題となりました。そこで今回はこの課題の検討過程と結果(作品)を紹介したいと思います。
<市街地のスペース(線路配置)>
この検討結果をご紹介するにあたりまずはこのレイアウトの線路配置を写真を用いて説明します。

台枠状に線路の敷設を完成した段階

上の写真が台枠上に線路を敷設した状態のレイアウトです。手前のエンドレス外側の頭端式のターミナル駅を出発した列車は勾配を上り最初の分岐器でエンドレスの周回方向を決定してエンドレスに入ります。その際列車を左回りとする場合はリバース線を経由して本線へ、右回りとする場合はそのまま本線に入ります。そして本線周回後駅に戻るには手前側の背中合わせに配置された分岐器でエンドレスを離れ駅へ向かいます。その際、時計回りで周回していた列車はリバース線を経由して駅に向かいます。このようにプランとしては非常に単純なプランです。市街地にはターミナル駅に相応しい駅舎を街と向き合う形で設けることとしたのでその駅舎はスペース上写真のリバース線より奥側に設けることになります。そこで写真のリバース線より奥側を市街地とし、手前側を住宅地にすることとしました。ただ、駅舎を市街地と向き合う形で配置する駅舎とホームが高架線で分断されてしまいます。そのためこの部分の処理についてはいろいろ悩みましたが、最終的には高架線下に駅舎への通路を設けるとともに高架線のホーム側にはカフェ等のショップを作り、駅舎との関係性を自然なものとすることとしました。駅舎は市街地と対向するので、運転位置からは駅舎の背面しか見えませんが、運転位置からホーム側のショップが見えれば列車が駅に到着した際、ある程度ターミナル駅の雰囲気が味わえるのではないかと思ったのがその理由です。実際にこのような構造になっている駅は見つけられませんでしたが欧州にはプラットホームに隣接して色々なショップが並んでいる例はよくあるようです。日本で言えば上野駅の地平ホームのイメージでしょうか。そして駅舎はKibriの製品の中から『B -6700″Bahnhof. Bad Nauheim”』を使用しました(現在は絶版のようです)。この駅舎のプロトタイプのあるBad Nauheimはフランクフルトの北にあり湯治場として有名な場所で、過去にはオーストリアのフランツ・ヨーゼフ1世やビスマルクが訪れこともある街のようですが、それはさておき製品はZゲージでも長さ40cmの大きな駅舎です。ちなみに東京駅の長さは330mだそうなのでZゲージでも1.5mになります。

<市街地の構想>
次に市街地の建物の配置を検討しました。

駅舎の配置と建物の配置を検討中の写真. 駅舎の位置はこの位置に決定した

上の写真は市街地の建物の配置を検討していた時の写真で、市販の建造物キットを組み立てた後、どのような建物をどこに配置するかを検討している段階の写真です。市街地の建物は主にKibriの製品を使用しました(教会のみVollmer製です)。Kibriの建物はいずれも旧市街にあるようなタイプの建物で、旧市街に特徴的なCity Gateもあります。一方以前も述べたように旧市街にあるような古くからある建物は装飾が複雑なため自作で製品と同じrealism levelの建物を製作するのは難そうです。このため駅舎から見て左側と奥側を旧市街と見立て製品の建物を配し、駅の正面には比較的近代的な自作の建物を配置することとしました。上の写真では自作する建物は検討段階ではまだボール紙で作った単純な形状のものですが、最終的には駅舎正面の建物は上記写真より小型とし(左側の建物の面取り部分を削り)駅前広場を秘匿するとともに右側の三角屋根の建造物は数を減らし、池の周りの広場のスペースを多く取りました。住宅地も含めて建物の配置が終了した段階の写真が下の写真です。駅舎の正面に自作の建物が並び、それを取り囲むように市販のストラクチャーが配置されているのがわかると思います。

建物の配置を完了した段階. 細部を作り込んでいく前の状態
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