When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(Trackside)

プラキットと自作した建造物を比較し、両者のrealism levelに問題がないことが確認できましたので、いよいよ本格的なレイアウトの製作に入りました。最初に行った台枠の製作は何分初めての経験でしたが前回ご紹介したTMSの解説記事と首っ引きでなんとか仕上げることができました。なお、前回ご紹介した私が参考にした解説記事については、喜芸出版社から発行されている”レイアウトテクニック”という本に掲載されています。TMSのバックナンバーを収集するのは結構大変ですがこちらの本であればわりと容易に古書店等で入手可能ではないかと思われますのでよろしければ参考にしてください。そして今回の台枠の製作についてはほぼ記事通りに行いましたので特段述べることもありませんが、一つ言えることは「工具にあまり費用を惜しんではいけない」ということでしょうか。私は最初自宅にあった購入時期不明の鋸等を使用して切れ味が悪く作業が捗らず苦労をしたのですが、工具を新調した結果作業が効率よく進むようになりました。そしてこの台枠の製作が終わるといよいよ線路の敷設になり、その後バラストを散布、線路の周辺(trackside)の部分の製作となります。この際、製品の線路とバランスの取れたtrackside(線路や車両とのrearism levelと同等のrearism levelを持つtrackside)をどのように製作するかが次の課題となります。何分Zゲージレイアウトという当時国内の雑誌では製作法が殆ど掲載されていないゲージのレイアウトであるため参考にできる情報がほとんどなく、その線路周りを実感的に仕上げるためにはどうしたら良いかは製作前に色々検討が必要でしたし、ある程度見切り発車で製作を開始することも必要でした。そこで今回は製作前の検討内容と実際の製作法、およびその結果をご紹介させていただきます。
・線路
線路関連の部材は全てメルクリン製を使用しました。線路はメルクリンの他には英国のPECOからZゲージ用のフレキシブルレールが発売されていますが何分初めてのことでもありやはり線路関係のパーツは全て「純正」品を使用した方が無難ではないかと考えた次第です。メルクリンのレールの高さを実測するとレール高約1.5㎜でCode59程度になります
((1.5/2.54)x100=59.1)。ただ、PECOのZゲージ用レールはカタログにはCode60と謳われておりカタログにもメルクリンの分岐器と組み合わされている写真がありますのでメルクリンのレールもCode60ではないかと思われます(正確な値は不明です)。

WEBで調べるとUIC(International Union of Railwais)やEN(European Norm)で規定された実物の60kgレールの高さは約172㎜のようですので、HOスケール(1/87)でその高さは1.97㎜でCode78、Nスケール(1/160)ではCode42、Zゲージ(1/220)ではCode31がスケールどおりの高さになります。手元にある当時の英国PECOのカタログを見るとHO/OOにはCode100,Code75がラインナップされています(その後Code83が追加されました)。Nゲージ用はCode80とCode55の2種、Zゲージ用は前述のようにCode60です。このようにHOスケールではスケールどおりの高さのレールが発売されていますがN,Zと縮尺比が大きくなるに従ってレール高さはオーバースケールになり、Zゲージではレール高さはスケールの約2倍となります。下の写真はZゲージの車両をレールに乗せて真横から見たものですが確かに線路高さと客車の寸法比率は実物とかなり異なります。

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When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level(ストラクチャー)

街中の高架線を走るTEE Rheingold. 牽引機はスイス国鉄のRe460広告塗装機

これまで、車両製作からZゲージレイアウトを製作することを決断するまでの経緯についてご紹介してきましたが、何分レイアウト製作は初めての経験であり、いざ製作を始めようとすると全くどこから手をつけてよいかがわからない状態で、日曜大工の経験も乏しくレイアウト作成を決めた時点では製作法に記されているような作業の経験は全くと言っていいほどありませんでした。ただ、幸いなことに鉄道模型趣味(TMS誌)を1970年ごろから購読していた私は、その頃のNゲージ黎明期に編集部により解説されていた線路の敷設法、プラスターによる地形の製作、配線等の基礎的な技法に関する記事が掲載されたバックナンバーを保管していましたのでそれらを全面的に参考にすることができました。これらの記事はNゲージレイアウトの製作例でしたが、これらはZゲージでも工作法にそれほど差はないと思われましたので、今回。まずはこの記事のとおりに製作しようと決めました。具体的には台枠はフラットガーターのフラットトップ、勾配はクッキーカッター方式、地形はプラスター成形、運転方法はデュアルキャブコン方式等です。余談ですがこの種の記事は最近の雑誌にはあまり掲載されていません。当時のTMS誌のEditorである山崎主筆はTMS誌を「参考書」と言う言い方をしてこのような記事はマンネリと言われようと繰り返し掲する必要があると述べていたようにいたように記憶しています。時代が変わったせいか現在の日本の模型誌にはこのような基本的な製作技法の解説記事はほとんど見られませんが最近の方は情報をどこから得ているのでしょうか。私の最近のレイアウト製作法の情報源はModel railroder、M¨arklin Magazine等海外の雑誌で、特にModel railroder誌にはシーナリーの製作法等が比較的頻繁に掲載されます。Model railroderはネットから定期購読を申し込めば洋書店で購入するよりかなり安く、メール便で毎月届きます。

レイアウトのテーマは、比較的大きな駅(ドイツ語でいえばHauptbahnhof)がある都会をイメージしたものとしました。前述のように私はレイアウトの製作を始める前に車両工作をしており、主に北海道仕様の列車を制作し、その中で特急列車からローカル線の列車まで各種の車両(列車)を製作しましたが、完成した車両をお座敷運転レベルで運転する時には程度長編成の列車の方が面白く、そのような運転に慣れ親しんでいたこと、私が東京出身の東京在住者であまり地方で暮らしたことがなく、鉄道模型を始めた頃から鉄道模型のレイアウトは長編成列車の走る都会の風景をテーマとしたレイアウトと言うイメージがあったことが理由です。もしかしたら初めて見た神田須田町の交通博物館のレイアウトのイメージがそのまま頭に焼き付いているのかもわかりません。また、実際に接した海外の鉄道も都市の鉄道が殆どですので、海外の風景も地方より都市の風景の方がイメージしやすいのではないかと思ったこともその理由です。このようなテーマのレイアウトをHOゲージで製作することは私にとってはスペース的にまず不可能ですが、今回はZゲージを採用しますのでスペース的にもなんとかできそうです。私が鉄道模型を始めた頃はまだNゲージはあまり一般には知られていませんでしたが、しばらくした後初めてNゲージ(当時は9㎜ゲージと呼んでいました)を見た時に、その小ささに驚いたものです。そしてこのゲージはレイアウトのためのゲージであると言う説明には大きな説得力がありましが、Zゲージ(1/220)は寸法比でNゲージ(1/160)の約0.7倍ですので同一レイアウトを作成するための面積は約半分になります。これはA3の用紙とA4の用紙の大きさの差に相当しますのでNゲージでA3サイズに収まるような縮尺比で描いたレイアウトプランはZゲージではA4用紙の大きさに収まるイメージとなります(A3サイズの書類をA4サイズに縮小コピーするイメージです)。この差は意外と大きいものです。メルクリンはZゲージのスケールを決めるにあたり同じ線路配置のレイアウト面積がNゲージの半分になると言うことを意識したのでしょうか。

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When is your realism level good enough?:HOゲージャーから見たZゲージ(外国型モデル)の印象

<HOゲージと16番ゲージ>
まず最初に表題について。私は鉄道模型を始めた時から現在まで日本型の車両を軌間16.5㎜、軌間以外を1/80で製作する所謂「16番ゲージ」の愛好者です。Zゲージの模型を初めて手に取るまで16番以外の鉄道模型は所有したことはありません。しかしここではあえてHOゲージャーと書かせていただきます。私は現在軌間16.5㎜の鉄道模型を日本型・外国型問わず楽しんでいます。そのような状況では正直同じ軌間の模型を日本型(1/80)を16番、外国型(1/87)はHOと厳密に呼び分ける必要性を感じなくなりました。模型とおもちゃの違いはルールの存在ということは冒頭の言葉を引用したModel Railroader誌の言葉ですが、このルールの最上位の基準(規格)を線路幅と定義してそれをXXゲージと呼んでいる(同じ呼称のものは同一の線路が使用できるので)と考えれば日本型も外国型もHOゲージと呼んでしまっても構わない気がしてきたからです。少なくとも軌間(ゲージ)のみに注目すれば3.5㎜スケール(Harf O=HO)ですので理屈上も説明できますのでそれでもあながち間違いではないような気がします。Nゲージの黎明期には日本型の車両が模型化されていないため日本型レイアウトに外国蒸機が走っていましたし、メルクリンHOの客車はいまだに1/87ではありません。実物の世界でもかつてオリエント急行に使用された「外国型」の客車が日本全国を走りました。もちろん「同一線路上を走行できる」を「同一線路上で共存できる(共存させても違和感がない)」と言い換えれば軌間以外の縮尺比(スケール)の基準が必要となりますが、それは軌間の基準より下位の基準のような気がします。ただしこの考えではHOゲージ(3.5㎜スケール)のゲージ(軌間)を用いた鉄道模型と全体をHOスケール(3.5㎜スケール)で製作した鉄道模型は明確に区別する必要があります(英語のgaugeには軌間という意味と尺度という意味がありまのでここがややこしいかもわかりません)。このように最上位規格にレール幅を基準とした名称を規定し、その下位の標準で模型全体の縮尺比の範囲と名称を規定するような体系を構築していくと各種のスケールと名称が整理されて分かりやすくなると思うのは私だけでしょうか。
<Zゲージの印象>
冒頭から話題が逸れてしまいましたが、話を元に戻しますとZゲージのレイアウトの製作を決意した後、先ず最初に行ったことはメルクリンZゲージスターターセットの購入です。購入したセットはスターターセットの中で最も小規模なもの(入門者用?)でDBの89型蒸気機関車に有害車と無蓋車が各一両、それに楕円形の線路(半径195㎜の曲線線路一周分と110㎜の直線線路2本)とパワーパックがセットされたものです。

この機関車の登場時、この機関車は量産されている鉄道模型の中では世界最小の機関車と言われていました(今も?)。Zゲージが誕生したのは1972年で当時私は高校生で初めて真鍮製のバラキットを組んだ頃です。当時のTMS誌上でも新しいゲージの誕生ということで比較的大きく取り上げられていたことを記憶していますが正直私の興味の対象外でした。ただ当時この機関車がパイプの柄の上に乗っかっている当時の広告ははっきり覚えています。またモデルさんのような女性が広告に登場していたのも新鮮でした。このような広告によりメルクリンはこのゲージが「大人向け」であると言うことを示唆していたのでしょうか。


実際の機関車を見て驚くのはその小ささだけではありません(全長約45㎜、重量約20gです)。ロッドはメインロッドのみでサイドロッドはありません。ピストンロッドとクロスヘッドとメインロッドは一体のとなった板金製です。車体はダイキャストの一体成形品で別付けされているパーツはありません。このように全体はかなり簡略化されていますが大きさが大きさですので走り出してしまえば機関車のサイドロッドがないことも殆んど気になりません。

上回りと下回りははフレーム側に取り付けられているバネで付勢されたピンがダイキャスト製のボディー側の穴にはま流ことにより両者が固定される構造になっています。このようにこの機関車の外観は今までHOゲージ(16番)のキット組立やディテールアップをしてきた感覚からは信じられない事ばかりでした。ただ走行性能はレールの汚れとオイルの固着(走り始めでオイルの温度が低い時にはオイルの粘度が高いので走行抵抗が大きく速度が十分でない場合がある)に気をつければ流石にあまりスローは効かないものの実によく走ります。このスターターセットにより基本的な走行性には問題がないことを確認できたので、次に実際にレイアウトで使用を予定している分岐器や客車を購入て次のテストを行いました。客車は全長27mのUIC-X型客車の全長が約120㎜、全長20mの客車が約90㎜です。当時のメルクリンのHOゲージの客車は1/100でしたがZゲージは正確なスケールとなっています、

全長27mのUIC-X客車と全長20mのRebuild客車. 日本の新幹線と在来線の車両の長さを同一スケールで比較すると概ねこのようなイメージとなる. 欧州ではこれらの車両が同じ線路上を走行する.

これらの客車をスターターセットのR195㎜の線路上に置いた時の写真が下の写真です。

27m級の客車では車体からレールが大きくはみ出しており、実感的ではありません。流石にレイアウト上で車両がこの状態になることには抵抗がありましたのでレイアウトでは目に見える部分にカーブはR220を採用することにしました。その写真が下の写真です。線路の車体からはみ出し量は小さくなりますがそれでもまだレールが車体からはみ出してはいます。私はこれは許容範囲と判断しました。

私は今回このレベルはOKとしましたが、もし自分が苦労してディテールアップした車両がこのような線路上を走ることになれば少し抵抗を感じると思います。この辺りがレイアウト製作時に自分の”realism level”を決める(あるところで割り切る)難しさかもわかりません。今にして思うと私はレイアウト作成を決めた時にあえて従来楽しんできたものと異なる規格のゲージ(スケール)を採用して車両もあまり馴染みのない外国型のレイアウトを製作するることによりこの辺りを割り切ることができたのではないかと言う気がします。

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