レイアウトの製作:自動運転を前提としたレイアウトセクションの製作 <3>

<シナリオを想定する>
前回までの検討で大体の線路配置は決まりました。そこでその構想に従い線路配置の詳細を決定しますが、今回のような自動運転を想定するレイアウトでは、運転する列車の長さだけで線路配置を決めるのではなく、ある程度レイアウト上の列車の動きを想定し、自動運転用の列車位置を検出するセンサー(コンタクトトラック)、信号機、アンカプラーをどの位置に設置するかを検討する必要があります。いわば映画や演劇で、台本に基づく役者(車両)の動きに応じて自動で舞台装置を動かすためのセンサー(コンタクトトラック)を配置し舞台装置(信号機等)の配置を検討するという感じです。

今日現在の進捗状況です。

<車両>
今回役者に相当する車両は、構想時点で手元にあった車両を想定しました。その形式と長さは下記のとおりです(()はItem#, <は全長>)。
1. レールバス VT98 (#39978) <32cm>
2. プッシュプルトレイン Br218+Silverline (#39180+4#3820) <49cm>
3. 蒸気動車 SNCF XDR1101 “Kittel” (#37258) <14cm>
4. 貨車 Post 2ss-t/13 (#47360) <17cm>
5. 貨車 Jaheswagen 2011 GI22 (#48161) <15cm>
です。


1のレールバスは最近の車両でほぼフルファンクションの車両です。2は2010年ごろ発売されたの車両でサウンドはエンジン音とタイフォンのみでです。牽引される客車には室内灯を組み込みました。3の蒸気動車はサウンドなし(ライト制御のみ)の車両です。購入時期によってファンクションの種類に差はありますが、線路配置に直接関係するのは車両の全長のみですので、今後機能が充実した車両を導入すればまた楽しみも増えるのではないかと思っています。また欧米のメーカーのカタログにはほぼ全てに車両に全長が記載されています。日本のメーカーではあまり記載はない(車両の標準化がされているので必要ない?)ですが、この記載もレイアウトでの運転を重視しているのではないかということが伺われます(個人的見解ですが)。

ドイツのレールバスは日本のキハ01−03の原形となった車両です。VT98は150PSのエンジンを2機積んだ強力機です。付随車のライトの切り替えは機械式で逆方向に動き始めるとライトが切り替わります。
この蒸気動車は1956年頃まで稼働していたようです。
青い貨車は2011年のインサイダークラブ貨車でオーディオメーカーであるKuba社のロゴが印刷されています。緑の貨車はDEUTSCH BUNDESPOSTの郵便貨車でラッパのロゴが印刷されています。

<脚本(Screenplay)>
まず線路配置の詳細を検討するにあたり、以下のような脚本を考え場面を想定しました。
1)夜明け、駅員が起きて駅舎の宿直室の電灯が灯り、その後事務室、待合室の電灯が灯る。
2)しばらくすると場内信号が青になり、始発列車がやってくる。始発列車は乗客が少ないので蒸気動車の単行列車。
3)信号が青になり始発列車が出発する。
4)周囲が明るくなり、駅の電灯が消灯する。
5)通勤時間帯となりやってくるのは収容力の大きなプッシュプルトレイン。
6)信号が青になり折り返しのプッシュプルトレインが出発する。
7)次にやってくるのは2両編成のレールバス。
8)そのレールバスが出発すると再び乗客が少なくなりやってくるのは貨車を引いた蒸気動車。
9)蒸気動車が客を下ろすと信号が入れ替え作業を許可する現示となり蒸気動車が貨車を貨物ホームに移動させ貨車を貨物ホームに移動させ再びホームに戻る。
10)蒸気動車の入替作業が終わるとしばらくしてやってくるのはプッシュプルトレイン。
11)プッシュプルトレインが到着すると蒸気動車が出発。
12)夕方になると駅の電灯が灯ってプッシュプルとレインが出発する。
13)その後レールバスが到着し、折り返していくと夜になり乗客の数も少なくなりやってくるのは蒸気動車の終列車。
14)終列車が出発すると駅の電灯が消灯して一日が終わる。まず事務室と待合室の電灯が消灯し、しばらくすると宿直室の電灯が消える。
駅舎の御電灯制御は線路配置と関係なくm84デコーダーで行う計画です(このデコーダーでは他のギミックも可能です)。上記の想定以外でも例えば朝到着した客車を夕方までこの駅に留置しておくというシナリオも成り立ちます。

このような脚本を考えたら次に役者である車両が舞台の上で上記の脚本を演じる装置を設計します。映画や演劇では役者は人間ですが、この場合の役者はロボットですので、ロボット役者が台本に従って演技するために役者の位置を検出するセンサーを役者の動線上に配置する位置の決定(線路上のコンタクトトラックの位置の決定)を行ないます。

今回の自動運転はMärklinのCentral Station3(CS3)による自動運転です。このCS3による自動運転はコンタクトトラックで車両を検出し、その検出から予め設定したDalay時間後に車両やアクチュエータ(分岐器、信号機、アンカプラー)に動作コマンドを発動することが自動運転の基本プログラムで、車両の加減速度や走行速度は車両側のデコーダーで設定します。今回は上記の動きを実現するためにコンタクトトラックの車両検知で発動するコマンドは列車の停止コマンドと信号機を停止信号に切り替えるコマンド、検知後に列車の連結器をアンカプラーで解放したい位置に停止させるタイミングでの停止コマンドの3種類を想定し、信号機の進行への切り替え、列車の発車は分岐器切替後のDelay時間で設定することしました。また前回作成したALTENHOF機関区の自動運転のシーケンスでは列車の加減速度のばらつきや走行速度のばらつきを考えてのDelay時間を決定が試行錯誤しながらの作業となりましたのでコンタクトトラックのトリガーポイントは極力制御対象に近くに設置することとしました。これらを考慮しながらコマンド発行時の列車の進行方向、上述の列車ごとの加減速速度のばらつきを加味してコンタクトトラックのトリガー位置(ギャップ位置)を決定していきます。

なんか非常に難しい説明をしてしまいましたが、実際にはこの程度の線路配置ではコンタクトトラックから動作対象の信号機等の距離は短くせざるを得ず、位置も限定されてしまうため、実際にはコンタクトトラックの位置を決めるのはそれほど難しくはありません。いくら考えても結局いろいろな制限条件から直感的に考えたのと同じになるということもあります(今回はほぼそうでした)。ただ、このコンタクトトラックの位置を誤ると後で修正することは非常に面倒くさい修正作業が発生すると考えられますので、実際に手を動かす前に一度冷静に考えてみた方が良いと思います。余談ですが、中学生か高校生の時に読んだTMSの「ミキスト」に当時の山崎主筆が「工作はじっくり考えてから手を動かすことが必要」という趣旨の記述がありなるほどと思ったものですが、今思えばこの原理原則はその後の大学での実験や仕事の進め方でも全く同じです。

一応上記のプロセスで考えたのが下記の線路配置図です。上にも述べたようにいろいろ理屈をこねた割には単純な配置となっています。

次回はこの線路配置の詳細について説明させていただきます。