模型車両の製作:珊瑚模型店製D51の組み立てと加工(6) :下回りの加工

前回までにテンダーを含む機関車の上回りについての加工方法の説明は終わりましたので今回は下回り、特にエンジン側の動輪周りの加工内容を紹介したいと思います。下回りの加工内容は概ね以下のとおりです。
1. 車輪の黒染め
2. 加減リンクの交換
3. コンビネーションレバーの両端のフォーク化
4. ブレーキテコおよびブレーキロッドの追加
5. 砂撒管の追加
では、各部について順を追って説明していきたいと思います。
6−1 車輪の黒染め
黒染めに使用する黒染め液はいさみや・ロコワークスが発売している常温黒染め液で、黒染めにはもう数十年この製品を使用し続けています。今まで、この黒染め液は客車や電車の台車の車輪に使用しており、蒸気機関車の動輪はラッカー塗装しておりましたので、今回、蒸気機関車の動輪に使用するのは初めてとなります。まず車輪を洗浄します。私は通常は車輪を含め、塗装前の処理としてクリームクレンザーで磨き洗いし、その後中性洗剤で洗浄をした後にプライマーを吹き付けていますが、動輪については外観上、万一色ムラが出るとが目立ちますので、今回はさらに脱脂を確実とするため、ラッカーシンナーで脱脂を行いました。その後説明書に従い、筆で黒染め液を車輪に塗りつけていきます。この時、理由はわからないのですが、ニッケルメッキした車輪では、そのまま黒く変色していくものと一度メッキが剥がれたような状態になり、その後黒く変色していくものがあります。特に後者の現象が起こった場合、最初なかなか黒変せず、黒変しても脱落しやすい状況が起こり、少し焦るのですが、そのまま根気よく塗布を繰り返すといずれ皮膜が形成されます。仕上がりはこの様な現象が起きなかったものに比較してもあまり変わらない様です。過去の経験も含め、車輪のメーカーによってこの現象が起きやすいメーカーと置きにくいメーカーがあるような気もしますが、詳細は不明です。

黒染めした動輪とバルブギヤー

6-2 加減リンクの交換
加減リンクはロストワックスパーツに交換します。エキセントリックロッドはキットのものを利用します。キットの加減リンクとエキセントリックロッドは段付きピンのかしめで固定されていますので、まず加減リンク裏側の段付きピンがかしめられている部分を軽くヤスリ、段付きピンを引き抜いた後そのままロストワックス製の加減リンクの穴に嵌め込んで少量のハンダで固定します。ただ、ロスト製の加減リンクは真鍮地肌のままとなっています。に今まで製作した作品ではハンダメッキにより着色しており、今回もそうしたいと考えておりますが、手元にソルダーウイックがなかったため未実施です。半田メッキはソルダーウイック入手後に行いたいと考えています。なお、この製品のリフティングリンク、リフィティングアーム、ウエイトシャフトはロストワックス製のモーションプレートと一体に造形されており、ラジアスロッドの後端は加減リンクの回転中心までしかなく、加減リンクの回転中心のネジとともじめする構造になっていますのでラジアスロッドはニュートラル位置で固定されてしまいます。今回はそのままと素てありますが、この部分も今後塗装までに修正が必要で、その際、ラジアスロッドは新作せざるを得ないと考えています。

コンビネーションレバーは先端をフォーク状に加工しました

6-3. コンビネーションレバー両端のフォーク化
コンビネーションレバーの上下、ラジアルロッドとユニオンリンクが接続される部分はフォーク状の形状となり、各リンクを両側から抱いて支持する構造となっていますので、コンビネーションレバーに上下をフォーク状にする加工を行います。今回は所定長さに切断した幅2㎜厚さ0.3㎜の帯板をキットのコンビネーションレバーに貼り重ね(ハンダ付けは中央部のみ)その後バイスに挟んで貼り重ねた板に外形をやすりでパーツと同形状に仕上げるという方法で製作しました。外形が完成したら上下にラジアルロッド、バルブスピンドルとユニオンリンクを挟んで0.5㎜の洋白線を通して固定しました。なお、コンブネーションレバーには、上部の結構目立つ位置にボルトが2本ついているのですが、今回加工を忘れてていることに気がつきました。他の作品では0.3㎜の洋白線の植え込みで表現しています。この部分は塗装前に分解した際に追加工したいと考えております。

加工部分の関節には0.5㎜の洋白線を使用しました
加工中のコンビネーションレバーです

6-4. ブレーキテコ、ブレーキロッドおよび砂撒管の追加
これらの部品は動輪押さえ版状に取り付けるブレーキシューを取り付ける部品に追加します。まずブレーキてこを両側のブレーキシュー間に渡す形で製作しますが、外観は裏返さなければ見えず、目的はブレーキロッドの保持だけですので、洋白帯板を使用し、あまり形状にはこだわらずに製作しました。帯板(エッチングパーツの縁)を所定長さに切断し、角部を少しやすりで落とした形状です。そこにブレーキロッドを取り付けますが、D型機は前2組と後ろ2組の動輪に別れていますので注意が必要です。ロッドの両端は短い方が手元にあったエコーモデルのパーツ、長い方が真鍮帯板からの自作です。砂撒管は0.5㎜に真鍮線から製作し、ブレーキシュー取付板に取り付けてあります。このパーツは曲がりやすく、変形すると車輪やレールに接触してショートの原因となりますので注意が必要です。現在、ロストワックス製のブレーキシューも各社から発売されていますが、是非砂撒管も一体に表現したパーツを発売して欲しいところです。なお、キャブ下の配管にあるレール水撒管の水撒口は第1動輪の前方にあるようですが、写真を見ても存在がわかりませんでしたので省略しました。

第一動輪のブレーキてことブレーキロッドです
D型機のブレーキロッドは2組に分割されています

以上で下回りの加工は終了です。最後にモーターを取り付け、試運転を行い問題ないことを確認します。黒染めした動輪は踏面に「カス」?が残っているせいか最初は集電不良を起こしますが、数分間レール状でスリップ運転をすると問題なく集電できる様になります。走行性に問題ないことが確認されたら、塗装前の細かい修正作業を残してひとまず完成となります。今後、今回掲載した写真で気付いた部分等を修正し、季節の良くなった頃に塗装したいと考えております。よく「アイデアは一晩寝かせ」ということが言われます。これは少なくとも私の今までの経験の中では100%正解です。同様のことは今回のキット加工にも言えることで、製作した部位を時間をおいて改めて眺めると形状のエラー、部品の歪み等に気づくことがあります。今後、塗装まではこのチェックを続け、修正を重ねていきたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。

欧州の鉄道模型(HOゲージ)の小径カーブ通過対策の実例

前回の記事で、ひかり模型のキットを組み立てたEF58を紹介させていただきましたが、記事にあるようにその試運転は手持ちのエンドウ製ニューシステム線路の半径805㎜のカーブで実施しました。その後、KATOのWeb Siteをチェックしたところ、KATO製のEF58の通過可能なカーブは半径550㎜であることがわかりました。私のように長年(TMS主筆の山﨑喜陽氏ご存命の時代から)鉄道模型で楽しんでおり、氏が雑誌の中で頻繁に述べておられたおられた”鉄道模型は走らなくては意味がない”という言葉に接していた者にとっては、もし私の製作したEF58が通過可能である最小カーブ半径が805㎜であったらちょっと寂しい感じがしたのも事実です(本当にこれで走る鉄道模型と言えるのかという感覚です)。そのような折、ふと以前に欧州Roco社のRoco Lineというレールを購入したことを思い出し、久しぶりに取り出してみると、そのカーブはR6というサイズのカーブで、半径が604.4㎜でした。以前から半径600㎜は大型機の通過可能カーブ半径の基準となっていたと思います。そこでこの線路上でこのEF58を運転してみたたところ、なんとか無事に通過できることがわかりました。今回用いたひかり模型のEF58キットは珊瑚模型店製のF級電気機関車用の動力装置の使用が指定されていましたのでこの指定の動力装置を使用すれば当然半径600㎜はクリアーできる設計にはなっていたとは思うのですが、このEF58は歌川模型製のUギヤーと縦型モーター(KTM D V18C)を使用しており、その検討の際、特に通過可能な最小カーブを意識して検討していなかった(最初に製作した時も上記のR805を通過したのでよしとしてしまった)ので、結果オーライではありますが、大袈裟にいうとこれでようやくこのE F58も鉄道模型の仲間入りを果たせたかなと思った次第です。

半径604㎜のカーブ上のEF58

上述のように最初に製作した時にあまり気にならなかった通過可能なカーブ半径が今回気になったのはその間に私が欧州製の鉄道模型を走らせて楽しむ様にになったからかもわかりまん。今回使用使用したRoco社の線路(発売当初はRoco Lineと称していましたが今はその名称は使用されていないようです)は現在R2からR10 までの半径が用意されているようで、その中ではR6は比較的大きな半径です。ちなみにR2は358.0㎜、R4は481.2㎜、R10は888㎜です。また私が最近運転を楽しんでいるMärklin社の一般的なレール(C Track)は最小カーブの半径R1が360㎜、最大カーブがR5の643.6㎜で、それ以上大きなカーブはラインナップされておりません。ちなみにMøarklin社の製品はほとんどの車両がMarklin社の規定するR1(半径360㎜)カーブを通過できます。一方、Roco社の大型蒸気BR01の最小通過可能カーブはR3の419㎜です。また日本の天賞堂製のダイキャスト製D51、EF58の最小通過可能なカーブ半径は550㎜のようです。ちなみに 日本では他社製の模型も含めて数十万円する真鍮製のモデルには最小通過カーブ半径の記載はあまりありませんし、雑誌の製品の紹介欄にもあまり記載されていません。プラ製の蒸気機関車でもWEB SITEを少し見ただけでは通過できるカーブの最小半径がわからない製品もあります。レイアウト上での運転を前提とする鉄道模型であれば、最小通過カーブ半径はそのモデルをレイアウトに入線させるか否か(購入するか否か)を判断する最重要スペックだと思うのですが、このことは日本のHOゲージが運転を重視していないことの表れでもあると感じ、少し寂しく思います。欧米では模型の車両限界が照準で規定されていますが日本ではそれも明確ではありません。
小さなカーブを通過する大型機を実感的ではないと感ずる方は多く、私もその一人であった様な気がします。下の写真はR805とR604カーブを通過するEF58ですが、車体と台枠位置(つかみ棒の位置)たがかなりずれているのがわかります。ただ、この程度はやむを得ないものと割り切る必要がありますし、実際に走っている姿を見ればあまり気になりません。

カーブ上のEF58 (R604)
カーブ上のEF58 (R805)

レイアウトを設計する場合には運転位置からはなるべくカーブの外側が見えないようにトンネル、地形、建造物等を配置することができますし、何より有益なのはStaging Yard(隠しヤード)のスペースが小さくて済むことです。この様な目に見えない場所では安定した走行さえできれば使用するカーブ半径は問われません。ただ、Staging Yardやトンネルは、車両へのアクセスのしにくい場所に設けられますので、ただ通過できるというレベルではなく、脱線やカプラーに自然解放がないよう、設置された線路の線路状態のばらつきも考慮した上でのカーブでの安定的な走行が必須になります。
レイアウトプランの中で小カーブを使う効用と日本型モデルがどの程度のカーブを通過できるかという記事は過去のTMSに故・水野良太郎氏がイラストを交えて紹介していた記事があったように記憶しています。そこで今回は、少し視点を変えて、最近の欧州製の車両がどのような機構で小カーブを通過できるかということを私の手元にある車両で紹介してみたいと思います。
まずは蒸気機関車です。日本の蒸気機関車はC型機とD型機が殆どで、E型の大型機はE10と4100程度であるのに対し、欧州では大型のE型機は結構多くの機種がありますし、日本のC62の動輪より大きい直径の動輪素備えるD型機もあります。その中で、手元にあるE型機は下記のBR50とBR85ですが、まずBR85の小径カーブ通過対策を紹介してみたいと思います。

Märklin製のBR50 (#36840)
Märklin製のBR85 (#37097)

このうちBR85を裏返してみると下記の写真のように動輪は前3軸を支持する台枠と後2軸に分割され、ピンで結ばれています。そして各動輪はロッドではなくギアで駆動されています。そして動輪の回転方向を揃えるためのアイドラーギアが動輪間に存在しています。その中で、関節のある第3動輪と第4動輪の間のアイドラーギアは後ろ側の台枠の二つの動輪の中心を結ぶ線上に位置しその軸の両側にギアが取り付けられており、そこで動輪軸のギアが反対側に移ります。そしてカーブの通過に伴って第3動輪、第4動輪のギアと後ろの第枠に取り付けられたアイドラギアの間の軸間距離と当たり角度が微妙に変化します。

BR85の下回り. フレームが2分割されピンでつながれています.

この際、カーブ通過に伴い第3動輪と第4動輪の軸間距離も変化しますが、その変化はサイドロッドのクランクピンに嵌まる穴を長穴にすることにより吸収しています。ギアの軸間距離や軸の並行度の変化を許容し、サイドロッドのクランクピンには丸穴を長穴にする等、日本型の模型の設計に比較すると結構大胆な設計となっていますが、通常の運転には支障なく、またカーブ通過時に走行音が変化することもありません。そして、この構造はテンダー機であるBR50でも同一の設計となっています。

サイドロッドに開けられた穴は軸間距離の変化を吸収するために長穴となっています.

このように、欧州の模型では曲線通過性能向上のための大胆な設計となっています。この実例は Märklin車の製品の例ですが、Roco社のモデルもE型機は台枠の関節構造を採用していると思われます。ちなみにRoco社のBR50が通過可能な最小カーブはカタログでは半径358㎜となっていますが、関節構造の台枠を使用していないと思われるC型のBR01の通過可能な最小曲線半径はは419㎜です。
一方、下記の写真はD型のBR39です。この機関車は旧プロイセン王国鉄道のP10で、日本のC62等と同じ直径!,750㎜の動輪をもつD型機です。よって当然日本のC62より固定軸距歯長くなっていますが、この機関車も半径360㎜のカーブを通過することが可能です。こちらの機関車の台枠には関節はなく一体構造ですのでてこの機関車の固定軸距はE型よりも長くなっています。このモデルの最小通過可能曲線半径も360㎜ですが、上記のRoco車の例からもわかるように、欧州の蒸気機関車の模型で一番カーブ通過が厳しいのは固定台枠のD型機ではないかと思われます。

Märklin製のBR39 (#39395)

このBR39のカーブ通過対策は動輪の横動で行っています。第1、第4動輪はほぼ横動がありません(横動の量は日本の模型と同レベル)が、第2、第3動輪にはかなりの横動が与えられています。その写真が下の写真で、接地面を左右変えて動輪位置を撮影すると、その量が大きいところがわかります。また、上下を変えると動輪はほぼ動輪の自重で変位します(クランクピンとロッド穴の抵抗により異動しない場合もありますが少し手で押せばすぐに変位します)。

D型機の第2動輪と第3動輪にはかなり大きな横動量が与えられています.
横動する際の抵抗はほとんどありません. 上下逆にすると動輪ほぼ自重で移動します.

また、第2動輪と第3動輪は上下にも変異しますが、この上下左右の動輪の変異に対応するために第2動輪と第3動輪のクランクピンとサイドロッドの穴の隙間はかなり大きくなっています。これは第1、第4動輪も同様です。またサイドロッドは一体(一個の部品)で全ての動輪を繋いでいます。我々が通常製作する模型の構造でははサイドロッドの長さ、左右の動輪の位相が少しでもズレると走行性能に大きな影響が出てしまいますが、この構造であればその影響はあまりないと思われます(だからと言って部品の精度を落としているとは思えませんが)。

全ての動輪は1枚のサイドロッドで結ばれており, クランクピントはルーズな嵌合となっています.
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鉄道趣味を50年続けて思うこと(4):鉄道と音楽

前回のデジタル制御に関する記事の中で、映像に挿入される音楽について少し触れましたが、今回は映像に挿入される音楽以外も含め、鉄道と音楽について感ずることを記載してみたいと思います。とは言っても私は根っからの『理系人間』であり、音楽(音楽史)等を学校以外で学んだことはほとんどありません。ただ、子供の頃から家の中には音楽が流れていることが多かったため、子供の頃から比較的音楽は身近な存在であり、学生時代から音楽はよく聴いていました。当時から音楽のジャンルは問わず、なんでも聴いていたように思いますが、最近は歳のせいかクラシック音楽を聴く機会が増えたような気がします。
最近日本では鉄道開通150年が話題となりましたが、クラシック音楽の本場?である欧州大陸のドイツに鉄道が開通したのが1835年ですのでもうすぐ開通190年となります。私が学生時代の1985年がドイツの鉄道150年で、その時現地では保存されている歴代車両(レプリカ含む)のパレードが行われ、日本でも結構話題になりました。日本でも鉄道150年のイベントは各所で行われましたが、日本ではそのような保存車による大きなイベントができるような環境は全くなく、少し残念に感じたものです。それはさておき、ドイツで鉄道開通した1935年、流石にバッハやベートーベンはいませんでしたがシューマン、ブラームス、リスト等の作曲家の生きた時代には鉄道は確実にあったことになります。このように考えると一口にクラシック音楽と言ってもそれが制作された時代は長期にわたっており、現在我々が親しんでいる楽曲の中にも鉄道開通後に創作されたものが多くあるということがわかります。Wikipediaによればシューマン(ロベルト)の活動期間は〜1856年、ブラームスは〜1897年、リストは〜1886年である一方、ドイツでは1855年には鉄道営業キロが8,000kmに達していたようですので、この時代の作曲家と鉄道の接点は確実にあり、彼らは演奏旅行等で鉄道も利用したのではないかと思われます。下の写真は1863年から1871年にかけて製造されたthe Bavarian State RailwaysのClass B VIと1880年から1895年頃の客貨車のMärklin製のモデル(337975+#43985)ですが、彼らもこのような列車に乗車したり、眺めていたのでしょうか。ちなみにMärklin社が鉄道模型を最初に製造したのは1891年、Oゲージモデルの製造が1895年とのことですので、ブラームスの活動期間の最後の頃になるようです。

the Bavarian State RailwaysのClass B VIが牽引する1890年ごろの客車. 機関車はC型機のように見えますが先頭の車輪は従輪で、実はB型機です.

ただ、私の知る限りこの時代の音楽の中に鉄道がモチーフになったと思われるものはありません。1941年生まれで鉄道好きであったと言われるドボルザークにも鉄道をテーマにした作品は無いと思われます。、当時。鉄道の出現と普及は人々の生活に大きな影響を与えたと思われますが、鉄道は創作のテーマにはならなかったようです。クラシックのジャンルで鉄道をモチーフとした作品として有名な楽曲としてはフランスの作曲家アルヂュール・オネゲルが作品した交響詩、”Pacific231” がありますが、この楽曲は1923年の作品です。当時鉄道はかなり普及している時代で、日本ではオハ31の前身である木造車体のナハ22000が製造されていた時代です。これは私の全くの想像ですが、上記の作曲家に対してオネゲルは1912年生まれですので、子供の頃から鉄道に親しんで育ったと考えられます。今でも大人の鉄道マニアは子供の頃に鉄道模型で遊んでいた方が多いと聞きます。最近よく話題になるDigital Nativeではありませんが、オネゲルはそれに準えてうとRailway Nativeの世代です。鉄道をテーマとしたクラシック音楽の出現はRailway Nativeの時代まで待たなければならなかったのでしょうか。とは言ってもその後のクラシック音楽で鉄道を連想させるものは私の知る限りあまりありません。蒸機のドラフト音やレールジョイントの単調で連続的なリズムはクラシック音楽のテーマとしては単調すぎてはそこからの展開がしにくいのでしょうか。
一方、JAZZの世界では鉄道が出てくる楽曲は多数あり、実際の列車名(愛称)を題名としたチャタヌガ・チュー・チュー(Chattanooga Choo Choo)や実際の鉄道会社名がそのまま題名となったアッチソン・トピカ・サンタフェ(Atchison, Topeka and Santa Fe)等があります。これらはいずれも映画に使用されたもので、歌詞の中にも鉄道の具体的な描写が出てきますし、リズムや音階(メロディー)も蒸気機関車を連想させます。当時の鉄道駅は人々の生活の舞台の中心であり、また遠い地への憧れを象徴するものとして映画との親和性は高かったのかもわかりません。また米国の機関車の汽笛にはどこか哀愁を帯びた雰囲気があり、音楽に取り入れやすかったのかもわかりません。一方、映画とは直接関係のないJAZZのスタンダードナンバー、”A列車で行こう” はNYの地下鉄がテーマの楽曲です(”A” TrainはNY地下鉄のA系統という意味だそうです)が、イントロ部分でなんとなく蒸気機関車の汽笛を連想させるようなメロディが出てくるような気がします。また、鉄道を舞台とした映画の音楽としては ”オリエント急行殺人事件” の映画音楽があります。私が鉄道に興味を持った以降も2回映画化されており、1974年に製作されたSidney Lumet監督の作品と2017年に製作されたSir Kenneth Branagh監督の作品があります。この2作品のテーマ音楽と言えるものを聴き比べてみると、前者がワゴンリ客車の優雅さとその中で起こる事件の緊迫感を表現した(走る列車をイメージしたものではない)音楽であるのに対し、後者は疾走する列車をイメージした音楽となっています。どちらの映画も流石に原作に対して大きく異なる脚色はされていませんが、同じオリエント急行を表現した音楽として映像と共にこの音楽表現の差を楽しむのも面白いかもわかりません。日本でも鉄道をテーマにした作品は多くあり、鉄道をテーマとした映画も多数ありますが、いずれも邦楽です。ただ、鉄道が発する音をモチーフにしたメロディ(リズム)は童謡以外にはあまり思い浮かびません。日本では鉄道の情景はほとんど歌詞の中に登場するようです。ただ、国鉄のCMソングで山口百恵さんが歌った故・谷村新司さん作詞作曲の国鉄のキャンペーンソング、”いい日旅立ち” の歌詞には鉄道に関するワードは皆無ですし、メロディーも鉄道をイメージさせるものではありません。私の世代ではこの歌を聞くと当時の国鉄のCMが思い浮かびますが、それを知らない世代の人はこの歌をどのようなイメージで聞いているのでしょうか。また今でも時々話題になる狩人の歌った”あずさ2号” も題名以外に鉄道に関するワードは出てきません。あくまでも主題は旅であり、舞台を当時旅行先として若者に人気のあった信州に設定したことから付けられた題名のような気がします。そのような中で、以下に鉄道の情景を歌った邦楽の中で、私が印象に残っている歌詞のついた曲を数曲あげてみたいと思います。
・石川さゆりさんが歌った”津軽海峡冬景色”の冒頭、上野発の夜行列車あ降りた時から・・という下りからは青函連絡船廃止前の青森駅から青森桟橋に至る情景を彷彿とさせます。しかし実際は列車が到着するとホームから桟橋に向かう通路は20分後に出港する連絡船の自由席の良い席(場所)を確保しようと小走りで移動するする乗客でごった返し、海鳴りを聞く暇はなかったような気がします。ただ、そのような状況を実体験している者でも歌詞を聞くと海鳴りがする中黙々と桟橋に向かっていく乗客の姿が目の前に浮かんできます。作詞は阿久悠さんですが、曲のイメージに合わせた言葉の選び方に、一流の作詞家さんの素晴らしさを感じます。余談ですが、この歌がヒットした後、銀座にある某有名模型店に石川さゆりさんがいたという話を何人かの知人から聞きましたが、真偽のほどは不明です。


・以前も紹介したと思いますが、矢野顕子さんが歌っている”Night Train Home”という歌は東北本線の583系寝台特急の中の情景が歌われています。作詞は鉄道ファンで有名なくるりの岸田繁さんと矢野顕子さんの共作です。当時高校生の矢野顕子さんは青森の実家から単身状況し東京で一人暮らしをしていた(阿部譲治さんの家に下宿していた?)ようで、その時に利用した寝台特急の体験と岸田繁さんのマニアックな知識が歌詞に織り込まれています。歌詞の中ではDT32台車、MT54主電動機、C2000コンプレッサが歌われると共に、黒磯のデッドセクションで一度機器が停止した後に交流区間に入り、交流関係の機器が動作し始める音(整流器からのノイズ)の情景、朝、車端にある洗面所とトイレが大混雑になる様子等が描かれます。東北方面の夜行寝台は私も鉄道撮影旅行等でよく利用しましたが、この歌を聞くと当時の列車内の情景が目に浮かびます。この歌は矢野顕子さんのピアノによる弾き語りバージョンと故・レイハラカミ氏がバックを務めたバージョンがありますが後者の電子音楽は疾走する寝台特急電車(客車のイメージではない)を彷彿とさせるものです。また、冒頭の歌詞 ”小窓の外 終わる世界に雪が降ってくる 大人のようにカーテンの中 夢を広げてる” というフレーズも、東北出身で寝台車を利用したことがある方にはよくわかるイメージなのではないでしょうか。私はCDがリリースされる前にコンサートでこの曲を聞きましたが、聞いた時には結構驚いた記憶があります。


・ もう一つ、鉄道に関わる情景を描いた表現が印象的な歌として、さだまさしさんが作詞・作曲して歌った ”檸檬” という歌があります。この歌は梶井基次郎氏の小説「檸檬」をモチーフにしたもので、この歌詞の中には御茶ノ水駅横の聖橋からレモンを神田川に投げるシーンが描かれるのですが、その歌詞 “快速電車の赤い色がそれ(れもん)を噛み砕く”という歌詞と “各駅停車の檸檬色がそれとすれ違う” という歌詞が印象的です。聖橋は私もよく通り、ある意味見慣れた風景で、橋の上から御茶ノ水駅を発着する列車の写真も撮ったことがありますが、上記の ”津軽海峡冬景色” を含め、何気ない日常の風景からこのような言葉を生み出すことができるアーティストの才能は、理系の私には、ただただ尊敬あるのみです。

御茶ノ水橋の上から見た聖橋と中央線快速電車


・ 最後に森山良子さんが歌った “中央線あたり” という曲を紹介したいと思います。この曲は松本隆さんが作詞したいわば70年代の青春ソング(作曲は森田公一さん)で、テーマは前述の「あずさ2号」と似たものなのですが、歌詞の中に新宿から中央線で松本方面に向かう列車から見た中央線国電区間の情景が描かれています。中央線沿線に住む私にとってはある意味見慣れていた風景なのですが、改めて歌の歌詞として聞くと当時の風景が頭の中に蘇ります。また、この曲の最後には実物の列車の音が挿入されているのですが、多分実際の101系の走行音と思われ、上記のMT54主電動機とは異なるMT46主電動機の軽快な回転音を聞くことができます。

”中央線あたり”が収録されているアルバム”日付のないカレンダー

以上、今まで私が聞いた鉄道に関連のある音楽で印象に残っているものを紹介してみました。これらの音楽は歌詞やメロディを聴くだけで目の前に実際に鉄道風景が思い浮かびます。歌は鉄道に関する具体的な情景や想いを歌詞という短い言葉やメロディーに再構築することにより、実物を実際に見た時以上にそれを見た時の心情も含めたイメージを聞き手の中に構築します。一方鉄道模型で最密化により実物世界の再現を目指すことは、このような創作とはの対極にあるようにも感じます。その意味では実感的な模型を製作するためには模型を作るためには実物を観察する時の感性とそれを模型に落とし込む構想力も磨かなくてはならないのかもわかりません。なお、ここに挙げた楽曲は全て音楽配信サイトで視聴が可能ですのでよろしければ聞いてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。

デジタル制御で何ができる?(8):デジタル制御における運転の楽しみ方について −レイアウトセクションで撮影した動画とその撮影方法の紹介–

前回の記事では、デジタル制御を楽しむ第一歩として小規模なレイアウトセクション(ジオラマ)を製作し、そこにデジタル制御を導入しサウンドデコーダーを搭載した車両を導入して動画を撮影して楽しむのも「アリ」ではないかということを述べ、撮影した動画を紹介しましたが、今回、以前このブログで紹介したレイアウトセクション(ジオラマ)、『ALTENHOFのクリスマス』を走るサウンドデコーダー付き車両とともに紹介する動画を作成してみましたので、その動画をその撮影方法とともに紹介してみようと思います。
まずはその動画をご覧ください。

このレイアウトセクションを作成した当時は、このセクションで動画を撮影するという構想は全くなく、線路部分は車両の展示場所とするようなことを考えていました。そのため線路と市街地には大きな高低差がありますが、動画撮影を意識していたら、線路を高架線として、車両と街の表情が同時に撮影できるような構成にしたのではないかと思います。動画撮影を意識したセクションを制作する場合には、構想時に動画の絵コンテをイメージした構想が必要であるような気がします。
一方、この動画を作成するにあたりかなり迷ったことがあります。それはこの動画の車両の走行音にBGMを被せるかどうかということです(Youtubeにアップした上記の動画はBGM付きです)。勿論?実際にこのレイアウトセクション上を走行する車両を鑑賞する際にはBGMなどは全く必要性を感じないのですが、ある程度の長さの動画を作成して鑑賞してみるとBGMがあっても良いようにも感じます。考えてみると、通常、列車の走行音は「騒音」以外の何者でもありません。そのため実際に動く列車(模型)を眺めていない状況で、車両のみではなくレイアウトセクションの全容を紹介する動画ではBGMを入れるのもありかと考えてみたのですが皆様はどうお感じになりますでしょうか。
余談ですが、鉄道の映像と音楽について、今から50年以上前のSLブームの真っ只中にロードショーで封切られた高林陽一氏が演出・脚本・撮影を手がけた「すばらしい蒸気機関車」という映画(音楽は大林宣彦氏でした)では映像の一部に出てくる女性(機関車を愛する少女)と音楽(歌)の存在が議論となり、当時の『SLマニア』には非常に不評であったようです。当時はまだSNSなど全くない時代でしたのでこの映画を鑑賞したSLマニア以外の人々の評価は不明ですし。今思えばいくらSLブームとはいえ、映画館で封切られる商業的な映画では純粋な記録映画以外の要素も持たせた構成とすることはある意味必要であったような気もしますし、いくら蒸気機関車が人間のような機械であると言われても、「実際の人間」に関わるストーリー(視点)がないと、作品が非常に味気ない単なる記録映画になってしまうような気もします。
1985年にBarbra StreisandがBroadway Albumの中で歌った”Putting it together“(うまくやり遂げる)という歌の歌詞に多分映画制作を意識していると思われる歌詞、「芸術は生やさしいものではない」「構想は頭の中にある限り構想でしかない」「財政的支援を得るためにはそれなりの対応が必要」と言ったような歌詞が出てきます。Barbra Streisandはこの数年前にYentlという映画を制作(監督)していますが、この歌詞は彼女のその映画制作の体験から出てきた言葉のようにも感じます。高林陽一氏にもそのような葛藤はあったのかはよくわかりませんが・・・。私は多分蒸気機関車の牽引する営業列車に乗車したことのある最後に近い世代だと思われますが、現在各地で走っている蒸機牽引列車で当時の列車の雰囲気を味わうことはできません(これを否定しているわけではありません)。しかし、当時、各地で蒸気機関車が「普通に」活躍する風景を沿線の風景とともに35㎜フィルムで1時間以上にわたって記録した映画が制作され、それが現在でも他の映画作品と同様、DVDで入手でき鑑賞できるということことを考えれば、今となっては少女や歌の存在の是非などは些細なことのように感じます。

話をこの動画の撮影に戻しますと撮影はカメラ、三脚、ビデオ雲台を用いて行っています。それ以外の特に特別な機材は用いておりません。三脚は通常の三脚と小型の三脚の2種類を使用しています。カメラの横移動は三脚の下にタイルカーペットを置いてフローリングの上を滑らせて撮影しています。カメラの縦移動はビデオ雲台で行っております。横移動の際は三脚をタイルカーペットに押し付けながら三脚を移動しますので三脚は比較的頑丈なものが必要ですが、小型の三脚は脚が1枚のタイルカーペットに載るためカメラを移動させる際はタイルカーペットを移動させますのでそれほど頑丈な三脚でなくても大丈夫です。このようにこの程度の大きさのレイアウトセクションでしたら特別な機材を用意せずとも実物の鉄道を撮影するための機材で十分対応でき、カメラもコンパクトカメラやスマホで十分綺麗な映像が撮影が可能です。また、このような撮影では自動運転は不要ですので、簡易型のコントローラーでも十分対応可能です。デジタル制御に興味のある方はまずはこのようなことから始めてみても良いかと思います。

走行する列車の撮影はレイアウトセクションを床上に置いて小型三脚で撮影しました。カメラの移動はタイルカーペットを滑らせて行います。

デジタル制御で何ができる?(7):デジタル制御における運転の楽しみ方について(2)−レイアウトセクションにおけるサウンドの効果の実例–

前回、デジタル制御を導入するために欧州製の機器を導入する場合の費用の概算を紹介しましたが、物価高や円安等の状況もあり私が導入した当時の感覚と比較すると意外と多額の費用がかかることがわかりました。また自動運転に対応したソフトもそれほど安くはないようです。とは言っても日本型の真鍮製のモデルに比較すれば安いですが・・。一方、私の感覚では、メルクリン製のモデルは国内でも海外でも総じて高価であるという印象がありますが、Command Station+Throttleに関しては、1台でデジタル制御の機能の大部分が使用可能であるMarklinのCentral Station3(CS3)は意外と「安い」ような気もします。日本では鉄道模型の自動運転というと完全にコンピューターソフトに知見のある専門家が行う(できる)ものという感覚がありますが、私の感覚ではメルクリンの自動運単プログラムの作成方法のレベルはそこまで専門的ではないという印象です。例えば、コンピュータプログラムに精通していなくても学生時代に大学等で実験等でマニュアルを見ながら測定機器等をシーケンシャルに制御してデータを取得した経験がある方でしたら簡単にプログラムを作成できるレベルであると思いますし、そのような経験のない方でも一度簡単な自動運転プログラムを作成してその設計の考え方を理解してしまえばそれほど難しいものではないと思います。また、最近小学生でもプログラミング教育の重要性が叫ばれていますが、もしかしたらそのような教育にも利用できるかもわかりません。自分が作成したプログラムで電車が動く(失敗すると事故を起こす)というのは結構面白い体験かもわかりませんし、もしかしたら鉄道模型愛好者の増加に貢献するかもわかりません(Märklinのニュースレター(Web Site?)で実際に教育現場で活用されているという記事があったような気がします)。ただ、そうは言ってももいきなりデジタル制御による本格的な自動運転を行うのはやはり少しハードルが高い気もします。
一方、私は以前、デジタル制御を楽しむ第一歩として小規模なレイアウトセクション(ジオラマ)を製作し、そこにデジタル制御を導入しサウンドデコーダーを搭載した車両を導入して動画を撮影して楽しむのも「アリ」ではないかということを述べました。今回はその実例を紹介してみたい思います。まずは下の動画をご覧ください。

BR103が駅を出発していくシーンの動画

この動画は現在制作中のレイアウトセクションで、駅で列車が出発していくシーンを撮影したものですが、音が存在することにより、実際に眺めても動画にとっても音がない場合と比較して臨場感が全く異なります。
また、下の動画は以前このブログでも紹介した『ALTENHOFのクリスマス」というレイアウトセクション(ジオラマ)上で撮影した動画です。このレイアウトセクション(ジオラマ)はどちらかというと列車の運転というよりは欧州の市街地の風景の再現をテーマにしたもので、線路は長さ1300㎜程度の複線の線路があるだけですが、そこに車両を走らせて見るとやはりサウンドありの車両となしの車両では実際に眺めても動画として鑑賞してもそこには大きな差があるように感じます。

レイアウトセクションを走るVT08

上記の動画はいずれもCentral Station3を用いてサウンドやライトは手動でON/OFFしています。例えば駅の発車シーンの動画は機関車に実装されているOperation Sound(機関車のブロワー音等)、Departure Announcement、ヘッドライト、キャブライト、汽笛をそれぞれ手動でON \OFFしています(Departure Announcementは出発のアナウンス、車掌の笛、ドアの閉まる音が含まれています)。下の走行中の動画ではOperation Soundと汽笛を操作しています。動画の中で聞こえるコンプレッサ音はOperating Soundの一部としてランダムに発生します。なお、VT08はStation Announcementと車掌の笛、ドアの開閉音は別のファンクションとなっていますが、BR103のような駅の出発シーンも可能です。なお、動画に登場するBR103は2018年、VT08 は2006年に発売された製品です。

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デジタル制御で何ができる?(6):デジタル制御には何が必要?・いくらかかる?(2)

前回、”デジタル制御で何ができる?(5):デジタル制御には何が必要?・いくらかかる?”(1)”の中で車両の価格を実例で紹介しましたが、今回は2回目としてデデジタル制御を行う際の制御機器とそのドイツにおけるStreet Priceから計算した日本での投資額を試算した結果を紹介したいと思います。
私の使用しているシステムはMärklin Digitalですので、機器は特殊で、また少々割高?ですが、前回のDCC制御に使用される機器の役割がわかれば他社製システムでもどのような機器を購入すれば良いかはわかると思います。そして、他社製品の機器と価格も私のわかる範囲で試算結果を紹介したいと思います。ただ何分他社製システムは実際に使用したことがなく、自動運転プログラムも作成したことがありませんので、概要の説明になってしまうことはご了解ください。
まずは、私のレイアウトセクションで撮影した動画をご覧ください。

私は以前、デジタル制御で何ができる?(4):デジタル制御による運転の楽しみ方についてという記事の中で、デジタル制御はまずジオラマで、動画を撮影して楽しむことから始めたらいいのではないかということを提案しました。確かに、長さ1m足らずのジオラマを製作し、前後に組み立て式の線路を繋げ、サウンド付きの動力車を用意すればれば上の動画のようなシーンの撮影はやろうと思えば可能です。ただ、手動で音や動きのタイミングを取って撮影するのは大変で、眺めて楽しむには長さも短すぎます。また、車両の動きを楽しむという点ではそれ以上のことは何もできません。前にも述べましたが、デジタル制御を楽しむためには、デジタル制御の特長を活かして列車や機関車を「運転」したり「見物」したりして楽しめるシーナリー付きのレイアウトが必要になると思います。そしてさらに、その上の列車の動きを線路脇で列車を眺める気分で「見物」しようとするとどうしても自動運転が行いたくなると思います。
そこで私に製作したレイアウトセクションで、その自動運転をMärklin Digitalで楽しむために使用した機器とそれにかかった費用の実例を紹介します。今回は前回とは異なり、購入当時の金額ではなく、現在の価格での試算としました。
下の画像はは私の製作したレイアウトセクションの線路配置です。左側がが以前”ジオラマ”ALTENHOF機関区”の紹介とMärklin CS3による自動運転”で紹介した機関区のレイアウトセクション、右側が”Märklin CS3による自動運転を前提としたレイアウトセクション”終着駅Großfurra”の紹介”で紹介した終着駅のセクションです(①・②の機関区の引き上げ線はレイアウトとしては使用しておりません)。そして自動運転時には対向した反対側のセクションを自動運転用の引き上げ線として使用します。下図がその線路配置です。なお、この画像はCS3をWi-FiでPCと接続しPCに表示されたCS3の画面をスクリーンコピーしたものです。他社製のDCC制御ではこのような画像はPCのモニター上に表示します。

CS3の画面の一例. 画面上には在線検知の結果が表示され, 車両のいる場所がわかります. 分岐器部分をタッチすると分岐器は切り替え可能で,UC*と記載してある部分をタッチすると解放ランプが作動します. 信号は現示している状態を表示します. 右下は照明スイッチでタッチするとON \OFFしますまた,S字マークにタッチすると自動運転が始まります. これらは自動運転中はその時のStatusが表示されます.

それではこのレイアウトを自動運転するために必要な機器を紹介します。

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デジタル制御で何ができる?(5):デジタル制御には何が必要?・いくらかかる?(1)

前回、現状ではデジタル制御は車両も含めて海外製のシステムを使用することが電気工作の経験やソフトウエア専門知識を持たない一般の鉄道模型ファンにとってはデジタル制御を楽しむ最も簡単な方法であるということを書いてしまった(日本の現状では書かざるを得なかった)のですが、それでは海外の製品を使用してデジタル制御を楽しむためには何が必要で、どのくらいの費用がかかるのかを紹介したいと思います。なお、私は製品は海外のショップから個人輸入していますのでその事例を紹介しますが、当然製品の個人輸入と使用にはリスクがありますので、個人輸入で楽しむ際はあくまでも自己責任でお願いします。個人輸入が不安な方は多少価格が高くても国内の販売店から購入することをお勧めします。

Märklin Digitalの制御機器

<DCCの概要とデジタル仕様の機関車の価格>
今までアナログ制御での運転を行っていた方がデジタル制御を導入しようと考えた場合、その導入にはどのくらいの投資が必要かは大きな関心事だと思います。現状、デジタル制御に必要な機器を取り揃えて販売している模型店は都市部でもあまりなく、機器を購入するにはネット通販を利用することが多いと思いますが、DCC制御の導入にあたってどのような機器の購入が必要かよくわからない方もいるのではないかと思います。DCC制御の楽しみ方は人それぞれであり、各種ある機器からいきなり「この」メーカーの「あれ」と「それ」を使うのが良いと言われてもDCCの概要と販売されている機器の役割がわからないとそれが本当に自分にとっての正しい選択か判断するのは難しいのではないかと思います。そこで今回はまずDCC制御の概要をDCC制御に使用される機器を切り口として簡単に説明してみたいと思います。また、Märklin Digitalを除き、各メーカーのDCC製品は原則米国のNMRA(National Model Railroad Association)が制定している標準に則って動作しますので、一つのメーカーを例にして販売されている機器とその役割が理解できれば他社製機器でもその機器がDCC制御でどのような役割を持った機器かが理解でき、自分に適したDCCメーカーと製品を探すのにも役立つかもわかりません。そこで今回はまず1社の製品を例にDCCの概要をDCCに使用する機器の役割という観点から説明し、その後DCCの導入にどのくらいの投資が必要かについて、海外からの個人輸入で購入する場合を例に紹介したいと思います。当然電子機器の海外からの個人輸入は製品の日本の法規制対応や製品の破損等の面からリスクがありますが、日本での製品価格がショップで結構ばらついているのに対し、海外の大きなショップではショップごとの価格差は少ないようですので、まずは海外での機器の価格と日本から輸入した場合販売価格に加えてどのくらいの手数料がかかるのかを事例に基づき紹介させていただきたいと思います。ただ、DCC制御については実際に使ってみると結構わからないことが出てくると思いますので、個人輸入は上記のリスクに加え、海外からの購入では気軽にショップに相談してサポートを受けることが難しいという面もあります。採用するメーカーと機器が確定すれば日本で機器を購入する場合の投資額は簡単にわかりますので、サポート体制も考慮しながら個人輸入で入手するか国内ショップで購入するかは(どのショップで購入するか)は購入者で判断していただければと思います。また繰り返しになりますが、個人輸入を選択する場合は上記のリスクがありますので、機器を輸入する際には注意してください。私が認識しているリスクはあとで少し具体的に説明したいと思います。また、今回は前回までに紹介したDCC仕様の機関車について、私が海外ショップから購入した価格を紹介し、DCC機器類は次回、私が製作したレイアウトを事例に紹介したいと思います。

・ DCC制御の概要と必要な機器
細かい部分は抜きにしてDCC制御の概要を簡単に理解するためには、具体的にに販売されている製品とその製品が持つ役割を理解するのが手っ取り早い方法ではないかと思います。私が使用しているMärklin製のシステムは構成が少し特殊なので、今回はNMRAのお膝元である米国Digitrax社製のシステムで説明します。Digitrax社のホームページを見ると製品にはDCC制御導入の為のStarter Setsがあります。その中のEVOX Evolution Express Advanced 5A/8A Starter Setという製品には以下名称の機器がセットになっています。
・ DCS210+ Command Station/Booster With Intelligent AutoReverse
・ DT602 Super LocoNet Throttle
・ UP5 Universal Panel
・ Power Supply
・ Evolution Express Manual
商品説明にはEvolution Express is perfect for most home and club layouts. と記されています。club layoutsと記載されていますので、かなりの大レイアウトにも使用可能なセットだと思われます。まずはこれらの機器がDCC制御の中で果たす役割を説明したいと思います。なお、名称からもわかるように一番下はマニュアルで、この内容はDigitraxのWEBサイトで閲覧することができます。
これらの機器の中でCommand StationがいわばDCC制御の中核をなす機器です。この機器に同梱のSuper LocoNet ThrottleとPower Supplyを接続して、この機器の出力端子をレールと接続します。このCommand Stationは、Power Spplyから供給された電力を車両駆動用の矩形波に変換するとともに、Throttleから送信される制御用のコマンドに応じた信号波形を車両駆動用の矩形波に重畳させてレールに送り出す役割を担います( LocoNet ThrottleのLocoNetの意味は後ほど説明します)。また、この機器がレールとのインターフェースになりますので、車両の在線検知を行うデバイス(Feedback Module)からの信号等、自動運転等に必要な情報(Feedback情報)もこの機器で受信します。さらに、この機器はUSBでPCとの接続ができますので、この機器とPCを接続し、PCでこの機器から得られるFeedback情報等に基づき車両や分岐器制御用のコマンドを発効するプログラムを作成し、プログラムに従ってPCから制御用コマンドをCommand Stationに送り、Command Stationで駆動用の電流に重畳してレールに送信すればPCによる自動運転を行うことができます(具合的なプログラム方法は私にはよくわかりませんのでこれ以上は記載をしませんのでご了解ください)。
次にUniversal PanelとBoosterを説明します。DCC制御はレイアウト全体に同一の制御用の信号を同一のタイミングで制御対象(車両や分岐器)に与えることが必要で、そのためにはレイアウト上の左右各々のレールはレイアウトの全域にわたって導通していなければなりません。2線式のアナログ制御では短絡防止やレイアウト上で複数列車を運転するためにレール上にギャップを設ける必要がありますが、前述のようにDCC制御ではレイアウト全体に同一の制御用の信号を同一のタイミングで制御対象(車両や分岐器)に与える必要があるためレールにギャップの設置することは「禁止」です。一方、DCC制御もアナログ制御と同様、レールを全て繋げて、レイアウト上に複数の列車を走行させると電源の容量不足やフィーダーから遠いところでの電圧降下が発生しますので、特に複数の列車が走る中型から大型のレイアウトでは線路をブロック分けしてそのブロックに別の電源から電力を供給する必要が生じます。そうするとギャップは「必須」になります。しかしそれでは列車の走行に必要な電力は確保できても制御用のDCC信号が分断されてしまいます。このジレンマを解消する方法として、給電区間を分割しなければならない大型レイアウトではレールとは別にCommand Stationが生成する制御用のDCC信号のみが流れるBUS LINEをレールとは別にレイアウトに敷設します。そしてBUS LINEの途中に設置し、このBUS LINEからの情報を取り出す為のコネクタを備えた機器がUniversal Panelです。そしてブロック分けした区間では、その区間用の電源からの電力を駆動用波形に変換し、BUS LINEの途中に設けられているUniversal Panelから取得したDCC制御用信号を走行用駆動波形に重畳させてそのブロックに供給すれば、そのブロック分けした区間にもCommand Stationが発信するものと同じ制御用のDCC信号を重畳した波形の電流を流すことができます。この駆動用電力と制御用信号を重畳する役割を持つ機器がBoosterと呼ばれる機器です。このようにBoosterの役割はCommand Stationの役割と似ています(Throttleからの情報の代わりにBUS LINEからの情報を走行用駆動波形に重畳させているだけです)。上記のリストの一番上の機器はCommand Station/Boosterという名称ですが、これはこの機器がBoosterとしても使用できるという意味になります。
また、同じジレンマはリバース区間のあるレイアウトでも発生します。このジレンマはレイアウトの大小には依存せず、リバース区間を持つ全てのレイアウトに発生します。リバース区間は使用する電源に例えレイアウト上の全ての列車を運転できる電源容量があっても、その区間の両側のレールに両ギャップを設けてその区間を完全に独立させなくてはなりません。すると当然この区間にはCommand Stationからの駆動電流も制御用DCC信号も流れませんのでこの区間に駆動電流と制御用DCC信号を流す必要があります。そのためにリバース区間があるレイアウトではリバース区間用のBoosterとリバース区間用の電源が必要となります。一方、リバース区間の出入口では列車がリバース区間に侵入する時点でリバース区間のレールの極性とリバース区間の極性が同じでなければなりません。そのためリバース区間に接続したBoosterは、列車がリバース区間に出入した際にレールの極性違いに起因するショート(急激な電流変化?)を検知した場合、瞬時に駆動用電流の極性を切り替える機能が必要です。上記のCommand Station/Booster With Intelligent AutoReverseという名称はリバース区間のBoosterとして使用する際、自動で極性を切り替え機能も持っているということを示しています。なお、リバース区間が1箇所でリバース区間に侵入した列車は元の電源供給区間に戻ってくるのであれば、列車がリバース区間にいる間にレールのリバース区間外のレールの極性を反転させれば良いということになりますので、そのような線路配置ではBoosterと電源を別に用意しなくでもリバース区間に対応できる機器が用意されています(DigitraxではAR1 Automatic Reverse Controller-Singleと言う名称です)。なお、Märklin Digitalはレールが3線式で、車両への電力供給位置が線路の中心線に対して左右対称ですのでリバース区間という概念はありません。そのためこのオートリバース機能を持った機器はありまん。

話をBUS LINEとUniversal Panelの話に戻しますと、Universal Panelに設けられたコネクタのI/F仕様はCommand StationのThrottleを接続するコネクタのI/F仕様と共通です。よってここにThrottleを接続して列車を制御することも可能です。また上記のBoosterの説明ではコネクタから情報を取り出すと記載しましたが、このコネクタに自動運転のための在線検知モジュール(Feedback Module)等を接続してその情報をBUS LINEを通じてCommand Stationに送信することもできます。このように、BUS LINEのUniversal Panelに取り付けられているコネクタは車両制御に必要な情報をBUS LINEに与えることも取り出すことも可能です。Dititrax社のCommand StationにはThrottleを接続するコネクタが3個ありますが、これはCommand Stationの中に短いBUS LINEが存在すると考える事もできます。Digitrax社ではこのBUS LINEのことをLocoNetと呼んでいますが、これはDigitrax社の商標であると同時にこのBUS LINEのプロトコルを表わす名称としても用いられているようで、他社のシステムにもLocoNetという名称が出てくることがあります。また、LocoNet Throttleという名称はLocoNetに接続できる(LocoNetのプロトコルに従ってコマンドをCommand Stationに送信する)Throttleであるという意味でつけられているのではないかと思います。

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デジタル制御で何ができる?(4):デジタル制御による運転の楽しみ方について

今までデジタル仕様の車両の機能をいろいろ紹介しましたが、今回は海外では普及しているデジタル制御がなぜ日本で普及していない理由とそれに基づく打開策(結果的には妥協案です)を私なりに考えてみたいと思います。

私は以前このブログで紹介した紹介したレイアウトセクション”終着駅Großfurra”を作成してデジタル制御による自動運転を楽しんでおりますが、今回紹介したような幹線を走る大型の車両を運転できるような固定レイアウトは所有しておりません。現在のところ今回紹介したような幹線を走る大型の車両はいわゆる「お座敷運転」で楽しんでいます。
私がデジタル制御を導入したのは2000年ごろですので、それから20年近くが経ちますが、それ以前も含めて考えてみると、鉄道模型の運転の楽しみ方は「自分が運転士になったつもりで車両を自由にコントロールする」ことと「線路脇でいろいろな列車が走ってくるのを眺める体験を模型の世界で再現する」の2点だと感じます。小学生の頃、線路脇にボール紙で製作したプラットホームを置いて列車を通過させたり停車させたりして楽しんだり、畳に顔をつけて列車の通過を見るのを楽しむということは、子供の頃から鉄道模型で遊んでいた方は必ず体験しているのではないでしょうか。そして時が経つにつれスペースや線路配置は少し大きくかつ複雑になりましたが、大型車両を「お座敷運転(情景なしの組み立て式レイアウトを含む)」で運転する際の車両の運転の楽しみ方については小学生の頃の楽しみ方とあまり変わらないように感じます。そのお座敷運転に今回紹介したようなデジタル制御を取り入れると何ができるかといえば、ヘッドライトをハイビームにしてみたり、警笛を鳴らしてみたりすることで、極端に言えば小学生の時の楽しみ方とあまり変わりません。走る列車の中で発生する音を聞きながら列車の動きを眺めることも想像力を掻き立てる効果はありますが、デジタル運転の複数列車が制御できる利点を活かして複数の列車を運転している場合には1本の列車に注目するわけにもいかず、効果は現象します。運転士気分が味わえるのも1本の列車に注目しているときのみで、一人で複数の列車を運転する作業は結構煩雑です。極端な言い方をすれば、高価なデジタル制御を導入してもお座敷運転でできることとその効果は限られています。お座敷運転で色々な車両を取り替えながら運転してその車両に実装されている機能を楽しむこともあり、それはアナログ運転にはない面白さであることは確かですが、あえて極端に言ってしまえばこれもすぐに飽きてしまいます。一方、小型のレイアウトであっても、レイアウトの中に置かれた車両の室内灯やヘッドライトが想定したシナリオに沿って制御され、列車が発車時にエンジン音を響かせて発車していく様子を眺めるのているたり、運転士気分で自分でコントローラーを操作し、駅を発車するとき警笛を鳴らし、動き始めるとエンジン音が大きくなっていくのを聞くと、お座敷運転でのデジタル運転よりは圧倒的に実感的で面白く、また列車をレイアウト上に停車させて運転に関係ないような音や光の制御(機関車の芸)を眺めるのも机の上に置いた線路で眺めるのとレイアウトという情景つきの舞台で眺めるのとでは気分が全く異なります。これまでに紹介した車両の運転には関係ないFunctionはレイアウトに停車中の車両で本来の運転とは別のところ(息抜き)で楽しむものかも分かりません。

シーナリー付きのレイアウト上で停車中に「芸」を披露するBR065

一方、アメリカには日本や欧州にない運転の。楽しみ方があります。日本にはほとんどないような大きなスペースに半島型のレイアウトを作り、その中で車両を実物の鉄道を模したダイヤで運転するという運転の仕方です。線路の総延長を増やすためレイアウトを2層構造にすることも行われています。このような運転では複数の個々の列車運担担当者が自分の「CAB」を持ち、運転士になった気分でレイアウトの周囲を歩きながら列車を運転します。レイアウトのはDCC信号を線路に流す信号ライン(BUS)を通しておき、レイアウトのところどころにあるBUSのI/Fにコマンドコントローラーを順次接続しながら列車の制御を行います。その際にはスケールタイムを決めて(レイアウトの規模に応じて1時間を何分にするを決めて)1日を1セッションとして楽しみます(例えば1時間を8分とかに設定します)。また、その運転は実際の鉄道会社が規定する規則(連邦鉄道局の規則)に則る場合も多いようです。これは「自分が運転士になったつもりで車両を自由にコントロールする」という楽しみ方の究極的な姿であるとも言えますが、このような楽しみ方は鉄道模型を「おもちゃ」として捉えてきた欧州にはあまりないようで、Märklinの現行ののコマンドステーションであるCSIIIにはそれまでCSIIのあったスケールタイム機能はまだ実装されておりません。そしてどちらかといえば欧州の楽しみ方は日本の楽しみ方に近いように感じます。ではデジタル制御が普及している欧米とそうではない日本との差は何かと考えると、それは車両をレイアウト上で楽しむか、車両をお座敷運転で走らせたり、ジオラマ上の動かない車両を眺めて(写真を撮影して)楽しむかの差ではないかと考えます。勿論レイアウトでの運転を楽しんでいる方も多くいらっしゃいますが、スペース的に有利な国鉄型以外の小型車両が走るレイアウトでは自分の好みのデジタル仕様の車両を簡単に(自分で改造せずに)入手するのは現状では至難の業(実質不可能)なのではないかと思います。

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デジタル制御で何ができる?(3):海外メーカー製デジタル仕様の車両の紹介) -デジタル仕様の機関車に実装されている機能の実例(蒸気機関車等)-

デジタル仕様の機関車をどのように楽しむかを考えるにあたり、もう少し機関車に実装されている機能を紹介したいと思います。前回は電気機関車に実装されている機能(Function)を紹介しましたが、今回は蒸気機関車に実装されている機能を紹介します。今回も動画を多数掲載してしまいましたが、お許しください。

この機関車は戦後に製造されたドイツ国鉄のBR065(#39651)で、蒸気機関車の中では比較的多くのFunctionが実装されています。まず紹介するのは走行音と汽笛とブレーキの軋み音です。動画ではわかりにくいのですがこの製品には発煙装置が組み込まれており、発煙のON/OFFが可能です。なお、動画に収録されているポツポツという音は発煙装置が発する音です。M¨arklinの蒸気機関車はほぼ全てに発煙装置が設置可能ですが、この製品は工場出荷時に取り付けられています。なお、発煙装置はドイツのSEUTHE社からのOEM品です(SEUTHE社が発売している装置も取り付け可能です)。

出発時の長い汽笛はパネルのタッチ(クリック)により長さの調整が可能です. 短い汽笛は1回のタッチ(クリック)のみで鳴らすことができます. ブレーキの軋み音はON/OFFが可能です.

ライトは進行方向に応じたヘッドライトのON/OFF,コールバンカー側のテールライトのON/OFF、キャブライトのON/OFF,入替作業時の点灯モードが可能です。

進行方向に応じて天道するヘッドライトはON/OFF可能です
コールバンカー側のテールライトはON \OFF可能です。進行方向には依存しません。
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デジタル制御で何ができる?:海外メーカー製デジタル仕様の車両の紹介(2) -デジタル仕様の機関車に実装されている機能の実例(電気機関車)-

今回のテーマ(表題)は「デジタル制御で何ができる?」ということなので第2回目はいきなりですが、デジタル制御でできる機関車の「芸」(機関車に実装されている機能の実例)を写真と動画で紹介したいと思います。使用する機関車は前回も登場したドラエモン顔のMärklin製BR193です。この機関車には全部で制限に近い31個のFunctionが設定されていますが、Märklin digitalのFunctionの数は最大32個となっていますのでこの機関車のFunctionの数は製品の中では多い方です。
 では、早速この機関車に実装されているライト、サウンド関連の機能を写真と動画で紹介しますのでまずは見ていただきたいと思います。なお、動画が多数ありますので環境によっては表示の応答が遅くなるかもしれませんがご了解ください。

まずライト関係のFunctionです。
ヘッドライトとテールライトの制御です。アナログ制御と同様、ヘッドライトとテールライトは進行方向により切り替わりますが、その他のライトも含め、ライトが停車中に点灯/消灯できるのがまずアナログ制御にはない大きな特徴です。私が鉄道模型を始めた当時はこの機能の実現には高周波転倒と呼ばれる方式(モーターが動かない高い周波数のパルス電圧によりライトを点灯させる)が主流で、その後一部メーカーから製品化もされているのではないかと思いますが、停車中にライトが消えてしまう問題はデジタル制御の採用で一挙に解決します。サウンドデコーダーが普及していない日本ではデジタル制御は一度に線路に多数の車両を乗せて、それらを選択的に運転できることと停車中にライトがON \OFFできることと思っている方もいるようですが、これらは1984年に最初にMärklin Digital が発売されたときに備わっていた機能で、いわば40年前から存在する機能です。

前回も紹介したようにキャブの室内灯のON/OFFが可能です。この機関車はONにすると前進側の室内灯が点灯し、進行方向を切り替えると室内灯も切り替わりますが、製品によっては個別に制御できる製品もあります。

片側のエンドのみライトを消灯することが可能です。主に機関車が客車を牽引するする際にテールライトを消灯するために用いられる機能です。ON/OFFは運転台ごとに制御できますので前回紹介したようなキャブ室内灯とヘッドライトのON \OFFを連携させる制御も可能です。

通常のヘッドライトに加えLong Distance Headlight(ハイビーム灯)が点灯します。ヘッドライトより輝度の高いライトが点灯します。

運転室のダッシュボードの計器盤内にもLEDが組み込まれており照明のON/OFFが可能です。

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