真鍮版から車輌を作る -(3) :ヤスリがけ-

糸鋸により真鍮版を切断したら次はヤスリ(棒ヤスリ)を使用して部品を罫書き線通りの形状に仕上げていく工程に入ります.この工程までくれば前回の最後に述べたような設計に起因する大きな問題がなければ窓抜き作業のような一瞬のうちに今までの努力が水泡に記すようなインシデントの発生確率は低くなります.そのヤスリ作業は適切な形状と粗さのヤスリを選択すること,真鍮板はやすりは押すときのみに削れることに留意すること,通常はヤスリを真鍮板に対して垂直に保持しながら削ることに注意すること,罫書き線を超えて削りすぎないことの留意すれば時間はかかるものの作業は終わります.

下回りも含め基本部分の組み立てを終え,小パーツの取り付けを開始したキハ25とキハ52

一方,やすりがけには今までの工程にない難しさがあります.それはこの工程の良し悪しが作品の出来栄えに直接影響を与えると言うことです.極端に言えば,罫書きを部品の裏側に行う限りは罫書き線をいくら間違えて描き直してもも作品の出来栄え(外観)には影響しません.また四角い窓を糸鋸で丸く抜いても,それが罫書き線を逸脱していなければヤスリがけ作業の終了後にはその履歴は作品には全く現れません.しかしヤスリ仕上げはその仕上げが罫書き線にどのくらい忠実に行ったかが作品の出来栄えに直接影響を与えます.

それではまずは使用した工具を紹介します.

やすりがけの工程に使用した工具.写真のドライバーは先端を研いでキサゲとして使用しています.


1.精密ヤスリ・・・精密ヤスリで作業のほとんどを行ないます.私はバラキットを組み立てた時に使用していたヤスリをそのまま使用しています.ヤスリは品質も値段もピンキリですが私が使用しているヤスリはメーカー不詳で有名メーカーの高級品ではありません.ただ,糸鋸による作業が下手なせいもあり車体を自作する場合にはヤスリがけの工程が非常に多くの時間を占め,その使用頻度も使用時間もバラキットの修正や小部品を製作するのに比較すると非常に多いので,今後本格的に本格的に真鍮製車体の製作を行なう場合は買い替えたいと思っています.ほとんどの外形仕上げ作業は平ヤスリと丸ヤスリで行いますが,角・三角.先細やすりも穴の拡大,線材の切断等に使用しますので用意しておいた方が良いと思います.
2.その他のヤスリ・・・タミヤ製のベーシックヤスリセットの細目と中目を用意していますが前面の”オデコ”の整形や,糸鋸であまりにも内側を切りすぎた窓の荒削りに使用する以外はほとんど使用しません.これらのヤスリで真鍮板の表面を削ると塗装後まで傷が残ってしまったり傷の除去に非常に手間がかかる場合がありますので要注意です.
3.ステンレススケールとノギス・・・作業中の寸法測定に使用します.
4.耐水ペーパー・キサゲ・キサゲ刷毛・・・作業により発生するカエリの除去に使用します.

・ 実際の作業
私の経験ではヤスリがけの留意点は冒頭でも触れたように ① 切削中は板とヤスリを垂直に保持して作業する ②ヤスリが金属を削るのは手前から奥にヤスリを押すときのみであることに注意する(ヤスリを引くときはヤスリを板に強く押し付けない)③ 切削時には常の罫書き線を認識しながら行う ということではないかと思います.これは学校の技術家庭科の授業で習ったのかもわかりません(私は覚えていません).また私は機械工学科出身ですので大学の実習でヤスリがけ作業の実習も行なったはずですが,何を教わったかは全く記憶にありません.多分鉄道模型愛好者で過去今回のヤスリがけ作業で要求される精度でのヤスリでの仕上げ作業を学校以外で経験している方は非常に少ない(殆んどいない?)のではないかと思われます.しかしヤスリがけは上記に注意して作業を行えば比較的簡単に鉄道模型製作に必要な程度のやすりがけ作業の「コツ」は掴めるような気もします.以下,私の行なった手順を実例で紹介します.

ヤスリ作業中の客用ドア.

上の写真は客用ドアをヤスリ仕上げしている途中の写真です.上の2枚が糸鋸で抜いた状態,下の2枚が最終仕上げ直前の段階です.その手順は ①丸ヤスリを用いて窓の隅R部分を罫書き線ギリギリまで削る(罫書き線の部分は削りません)② 角のRとスムーズに繋がるように平ヤスリで直線部を削る(この状態で罫書き線の内側に沿った形で窓の外形が仕上がります).ここまでできたら以降 ③仕上がり状態をチェックの上罫書き線がほぼ消えるまでR部を削り込む ④ R部とスムーズに繋がるように直線部を削り込む という手順で,上の写真の下段は③と④の間の状態です.
作業中の注意点としては,切断作業と同様,常に罫書き線を確認しながら作業を進めることです.材料には削り込みに従って外周にカエリが発生し,そのカエリは表面と裏面両方に発生します.そのため作業中はカエリを確実に除去し,常に罫書き線がどこにあるかを認識しながら作業することが必要です.光源の位置によっては発生したカエリは光に反射しますので,罫書き線の位置や実際に削られている位置と罫書き線の位置関係がよくわからなくなったり,カエリの反射を罫書き線と誤認する場合もあります. 繰り返しになりますが糸鋸による切断と同様,罫書き線が認識できなくなったと思ったら即作業を中断してかえりを除去し,罫書き線を確認することが必要です.罫書き線を強めに付けてあれば表面を耐水ペーパーで軽く擦ってかえりを除去しても罫書き線は残りますので最終段階での確認の際はこの作業を行なった後で削り量が適正であるかを確認しても良いかと思います.そして作業が終わったら最後に板を裏返して反対面(外観となる面)からチェックし,外形に乱れがなければ終了です.やすりがけ作業は糸鋸作業に比較すれば失敗の確率は低いものの,時間おかかる集中力のいる作業であり,集中力が途切れないように休みながら行う必要があります.また完成と思ってもしばらく時間をおいてチェックするとエラーに気づく場合もありますので一晩経ってから再チェックを行うのことも効果的です.ちなみに下記のドア4枚(穴16箇所)を仕上げるのに要した時間は約2.5時間でした.なお窓部以外のヤスリがけ作業もほぼ同じ手順で行いました.

窓周囲の仕上げがほぼ終わった側板(外観面).写真で黒っぽく見えるのはヤスリ作業で発生したカエリです.

・ヤスリがけの精度
ヤスリがけの工程は手作業ですので精度には限界があります.私の参考にしたTMS誌”キユ25の作り方”では切断と同様”罫書き線が消えるまでヤスリがけする”と簡単に記載されています(上に紹介した手順と同様まずR部を先に仕上げることにも言及されています).ただ色々な条件によるとは思いますが私が行なった実際の作業では私の引いた強めの罫書き線の幅をヤスリの1ストロークで一気に削り込むことはできませんでしたので,慎重に作業を行えばヤスリ作業で大幅な寸法逸脱が発生することはなく,時間と集中力は必要なものの切削時のヤスリの当て方に慣れてしまえば形状を罫書き線どおりに仕上げるのはそれほど難しい作業ではないと思います.
具体的にいうと仮に罫書き線の太さ(幅)が0.1㎜とすると,罫書き線が削られ始めて削り取られるまではの削り量は0.1㎜になりますが,上記のように精密ヤスリを用いて軽めの力をで削る場合にはその罫書き線を消すまで材料を削り込むためにはヤスリを数ストローク動かす必要がありますので,罫書き線が削られ始めた後罫書き線が見えている間に作業を終了すれば誤差は0.1㎜以下となります.このように考えるとヤスリ作業は慎重に行えば結構よい精度で仕上げることが可能です.また見方を変えれば実物を縮尺した寸法で正しい形状の部品ができるか否かは設計と罫書きに殆んど依存しているいうこともできます.なお,窓抜きに関してはこの後窓の周囲にテーパーをつける作業が発生しますが,私はこの作業は組み立て後行いましたのでそれについてはまた項を改めて紹介します.

最後までお読みいただきありがとうございました.次回は側板の曲げと組み立ての手順を紹介したいと思います.

真鍮版から車輌を作る -(1) :製作のための環境整備と罫書き-

製作中のキハ52とキハ25.窓周りのテーパーはヤスリ仕上げとしました

このブログには過去に私が製作したペーパー車体の車両を多数紹介させていただいていますが,その経験を踏まえ,誰かに「ペーパー車体の製作と真鍮版からの車体製作とどちらが簡単か?」という質問をされたら私は「単純に比較することは難しいが,ペーパー車体に比較して真鍮製車体のほうが作りやすい面も多数ある」と答えます.沸きらない答えで恐縮ですが,そう考える大きな理由は①半田という”可逆性瞬間接着剤”が使用できること,②製作中に各部の形状の修正(ヤスリ作業)や一度取り付けた部品の交換が簡単に行えることで,特に①に挙げた半田付けによる組み立てでは部品の取り付け取り外し(位置の微修正)が何度もでき,また部品をを瞬時に接合できるという大きなメリットがあります.
一方,私が『バラキットの製作とペーパー車体の製作とどっちらが簡単か?』と質問されたら間違いなく「バラキット組み立ての方が簡単」と答えます.理由は部品があらかじめ用意されていることもありますが,一連の組み立て作業をほとんど上に述べたメリットがある半田づけで行うことができるということがその大きな理由です.ペーパー車体の製作では接着(乾燥),目止め(塗装,乾燥,やすりがけの繰り返し)等,段取りの異なる作業が混在するとともに待ち時間が多く,接着剤も塗料も可逆性があるものではないためある意味各工程が「一発勝負」となり失敗すると最初からやり直すか修正に多大な労力が必要になります.もちろん真鍮車体工作でも失敗するとその瞬間に”GAME OVER”となる工程はいくつかありますが,その工程は割と限定されておりそこでの失敗防止の対策をしっかり行ない自分なりの手順を確立して何両か車両を製作して行いコツを飲み込めば失敗の確率はかなり低くなると感じます.(具体的には手順の紹介の中で説明します).乱暴に言ってしまえば真鍮板からの車体制作の難易度はペーパーによる車両製作の難易度と同等と言っても過言ではないと思います.
それでもバラキットの組み立て経験のある方が真鍮板からの車体製作を難しいと感じるのはその「最初のとっつきにくさ」と「時間がかかる.特に途中で失敗するとそれまでの苦労が水の泡」というイメージが大きいからではないかと思われます.確かにバラキットの組み立てに比べれば真鍮車体工作は「バラキットにアソートされている部品の製作」に今までにない作業環境と多くの時間を要しますが,上述のように一部の工程に注意すれば失敗は防げますし,金属車体とペーパー車体で車体の基本部分が完成してディテーリング作業が開始できるまでの時間を比較すると,車体が箱状になるまでの時間はペーパー車体の方が短いものの下地処理の時間を含めて考えるとその時間と失敗の確率はそんなに変わらないような気もします.ただ,最初にあげた「とっつきにくさ」という面では,真鍮車体の製作にはペーパー車体の製作やバラキットの組み立てとは異なる作業環境の準備が必要ですのでまずはその環境を作ることが必要になりますので,まず私の作業環境を紹介したいと思います..

・作業環境の整備
真鍮車体の工作はペーパー車体やバラキットの組み立てのように,ライティングデスクの上で,それまで使用していたPCや本の代わりに作業台を置いてすぐに作業を始めることはできません.大きな違いは特に板の切断(窓抜きを含む)作業で,加工する真鍮版の加工箇所の上下(特に下側)にある程度のスペースが必要になること,また加工に伴って発生する多量の切粉の飛散に対する対応をが必要となることです.具体的には真鍮版を切断する際に切断箇所で鋸刃を真鍮版に対して垂直に保持して上下に動かしますので板の切断箇所の下方には糸鋸の鋸刃を真鍮版に垂直に当てた状態で糸鋸を上下に動かせるスペースが必要です.加えて切断地点からは切粉が発生し下方へ落下しますのでその切粉を飛散させない対応も必要です.ちなみに私が今回行った方法は下記の方法で,真鍮版を置く作業板(9㎜厚のシナ合板)をCクランプで机のエッジからオーバーハングさせて固定し,その下方の机の引き出しを開けてその上に板を載せて切断時に発生する切粉を集めています.

糸鋸作業を行なう作業台

この辺りの詳細は以前機芸出版社から発売されていた菅原道雄氏著の「鉄道模型模型工作技法」に詳しく解説されています.この本が発行されたのは1983年で,私もこの本の記載内容をかなり参考にさせていただいていますが,記載内容は本格的なもので最初からこの本に記載されているとおりにやろうとすると,結構大変です.私はこの記事の内容に比較するとかなり「ズボラ」な方法で工作をしています.作品の出来栄えがイマイチなのはそのせいかもわかりませんが,過去にバラキットを製作したことがあり,製作に必要な工具が一通りあれば上記の環境を作り,少しの工具を買い足せば作業は始められますのでまずはこの程度の作業環境で始めてみるのも良いかもわかりません.なお,切粉に関して特に注意が必要なのは近くの電気製品の近傍への切粉の飛散で,その中でも特に注意が必要なのは電気接点が露出しているテーブルタップ近傍への切粉の飛散です.

・設計
バラキットとは異なり,車体を自分で製作する場合には当然加工用の「図面」が必要になります.ただ,これはペーパー車両を製作する時にも必要で,真鍮工作であるからといって特別な図面は必要ありません.私はペーパー車体も含め,車両製作時に一般の人が思い浮かべるような「図面」は製作していません.罫書きのための寸法は鉄道雑誌等に掲載されている図面に1/80の寸法を記載して,それを用いて製作しています.少し乱暴な言い方ですが,製品の製造時に規格に則った厳密な図面を用意する目的は一言で言うと「設計者が意図したとおりのものを他人がばらつきなく(一定のばらつきの中で)大量に作るため」です.そしてそのために図面は内容を一義的に解釈できるように製図規格に則って製作のための図面を作成することが必要です.また加工時の誤差(ばらつき)を最小限にするために加工方法に応じて適切に寸法を指示することも重要です.そのため図面を出図する際にはこれらの観点で図面を複数のレビュワーでレビューします.しかし車両の製作ではそもそも製作するのは自分ですし,罫書き線を基準として加工をどれくらいの精度で加工するかはいくら考えても自身の裁量と技術に依存する(必要な場合は自分で治具を作る)ので,図面は将来自分が同じものを作りたいと思った時に以前に作った車両を製作した際の寸法が分かれば様式は後日自分が理解できるものでよく,ペーパーでも金属でもこの状況はかわりません.私は原寸大の図面を書くこともありますが,それは寸法を記入するというよりは原寸大の図面により全体的な形状のバランスをチェックするためで,模型雑誌や図面集に実物大の図面が掲載されている場合は作成していません.ただ今回製作したキハ20系の気動車は,手持ちのスタイルブックに1/120の図面が掲載されているものの実物大の図面がなかったため実寸大の図面(外観イラスト)を作成し,そこに寸法を記載しています.自宅には1970年頃から故.なかお・ゆたか氏作成の折り込み図面が掲載されたTMS誌と1974年に発行された”日本の車両スタイルブック”がありますが,なぜかどちらにも当時の国鉄でメジャーな存在であったキハ20系やそれと車体形状がほぼ同じであるキハ55系の実物大の図面は掲載されておりません.当時実物界では一世を風靡していた20系客車も同じ状況です.

今回作成したキハ25の原寸大の”図面”です.特に2段窓の車両では模型の実物大の図面が入手できない場合,窓の横桟の位置を自分が作成した実物大の”図面”で検討する必要があります.

・材料への罫書き
作業環境が整って図面ができたら材料への罫書きを行います.私が罫書きに使用しているのは以下の工具です.なお,罫書きの段階では糸鋸作業はしませんので上記のような作業環境は不要です.

真鍮版の罫書きに使用する工具

1.300㎜のステンレススケール・・・車体の全長等をチェックする時等に使用します
2.150㎜のステンレススケール・・・寸法測定のほかスプリングデバイダーに寸法を設定する際に使用します.表面が梨地仕上げの方が目盛りの視認性は良好です
3.スコヤ・・・比較的小型のものを使用しています.私は全長75㎜のものを使用しています.あまり大型のものは使いにくいので小型のものが良いと思いますが,以下に説明する方法で罫書きを行う場合全長50㎜以下のものは使用できません(理由は後述).
4.罫書き針・・・ホビー用として市販されているもので好みのものを選択すれば問題なく使用できます.真鍮は柔らかいので高価な針の硬度が高いものは不要です.
5.スプリングデバイダー・・・正確な罫書きを行うためには必須の工具です.金属加工用向けの製品が必要で製図用のスプリングでバイダーでは正確な罫書きはできません.私は40年ぐらい前に購入したドイツ製のものを使用しています.購入当時はあまり選択肢はありませんでしたが現在ではAmazon等で同じような製品が多数販売されています.ただ選択肢が広がった分中には粗悪品もあるようですので購入にあたっては実物を見て精度チェックした上で購入した方が良いと思います.私は足が75㎜まで開くものを使用していますが足がこの程度開けば特に支障はありません.
6.ノギス・・・直接罫書き作業には使用しませんが,寸法の測定時にあると便利です.
このほかにマーキング用の油性ペンが必要です.

・罫書き
工具が揃ったら真鍮版上への罫書きを行います.まずペーパー車体と異なるのは罫書きは裏側(曲げた時に内側になる面)に行うということです.左右の側板の窓配置が異なる車両でここを間違えると完成時に表面に罫書線(傷)が残りますのでこの時点でGAME OVER,作り直しです(傷をある程度許容すれば継続可能ですが).
私は車体には厚さ0.3㎜,幅100㎜の真鍮版を使用しています.私が幅100㎜の真鍮板を用いるのには理由があり,それは小型のスコヤで罫書きを行うためです.具体的にはまず真鍮版の長手方向に中心線を引き,その中心線上に窓寸法を罫書き,左右の窓の天地方向の罫書きは並行度が保証されたエッジにスコヤを当てて片側ずつその中心線に罫書いたマークを基準に行います.このような方法を採用した理由は片側の辺からの白湯の側板への罫書きは大型のスコヤが必要で取り扱いにくく,万一エッジの突き当て面にゴミがあったり押し付け時にわずかな隙間が開いていたりすると基準から遠いところの誤差が大きくなるためです.この方法で今回製作したキハ52の罫書きが終了したものが下の写真です.

罫書きが終了した側板

・マーキングの方法
図面の寸法をでバイダーに設定し,それを真鍮板上にマーキングしていく手順については少し検討の余地があります.先ほど自分が作るので図面はいらないと言いましたが,この段階でマーキングの際に誤差が累積しない方法を少し考える必要があります.罫書きにおいてスケールからデバイダーに寸法を移しとる際,デバイダーを用いて真鍮版上に位置をマーキングする際,マーキングに従って罫書き線を引く際には必ずなんらかの誤差が生じます.例えば全ての位置を端面を基準に積算寸法で各部をマーキングしていくと,誤差の累積で少し離れた同じ大きさの窓の幅が微妙に異なるというようなことも発生します.また車体幅全長を同一の基準からマークすることは実質不可能であるためどこかの位置で基準点を移動する必要があります.これらを勘案して上記のキハ52の場合私は以下の方法で罫書きを行いました.要点は同一寸法の部分は寸法をデバイダーに設定する作業を極力一回としてばらつきを防止することです.
1.左右の端面から客用ドアの端面側をまでの寸法をデバイダーに設定してマーキングする
2.1を基準にドア幅をデバイダーに設定してマーキングする
3.客用ドアからサッシ窓までの寸法をデバイダーに設定してマーキングする
4.サッシ窓幅+窓柱幅をデバイダーに設定してマーキングする
5.4を基準に窓幅をデバイダーに設定してマーキングする
6.Hゴムで支持されている窓部分の寸法をデバイダーに設定してマーキングする
ただ,恥ずかしながら上の写真のように設定を間違えて修正が必要になってしまいました.この修正の場合は間違った線を同一基準で明確に訂正しておくことが重要です.切断時に間違った罫書き線で窓抜きを行うとこの時点で車体は修復不可能となりGAME OVERになります.
実は私は妻板(前面)を製作する段階で曲げの基準として引いた罫書き線と運転室窓の罫書き線を間違えて窓を抜いてしまい,作り直しています.そのため2回目に製作した際は窓位置にXを罫書きました.修正の場合には上の写真のようにマジックペンを使用するよりはこの方が確実で,間違いを避けるため窓には全てX印をつけておいた方が良いかもわかりません.

罫書き線(窓の位置)の誤認対策の例.

なお,話が前後してしまいますが側板の罫書きにあたっては事前に車体断面形状と同じ板を製作し,側板の幅を算出しておくことが必要です.

側板幅を算出するために製作した部品

・罫書き線の引き方について
中心線上にデバイダーでマーキングした位置は罫書き針の先端の感触でわかりますのでその地点からスコヤにケガき針先端を押し当てて線を引きます.線は罫書き針を強く押し当てると溝幅が広くなりますので正確な位置を表すためには弱く当てた方が望ましいのですが,あまり弱い(傷が浅い)と切断時に罫書き線が目立たなくなります.切断時に罫書き線を見失い鋸刃が罫書き線の外側にはみ出すとこれも即修復不能な失敗になりますので,私は傷を浅くするより,線の太さが一定になるように一定の力で罫書き線を引いています.そして切断後に罫書き線に沿って他擦りがけを行う際,その傷の太さが極力一定となるようにヤスリがけを行っています.なお,前回窓周りについているテーパーの話をしましたが,実物の形式図も模型設計図もこのテーパーは無視して寸法が表示されているので罫書きの際はこのテーパーを気にすることはありません.

以上,今回私が行った罫書きの工程を側板を例に紹介させていただきました.この罫書き工程は罫書き面(曲げた際内側になる面に罫書きを行う)さえ間違えなければ致命的な失敗をすることはまずありませんが,間違った線の訂正方法や折り曲げ基準線と窓輪線の混同防止等,後工程での致命的な失敗を防ぐための対策は確実に行っておくことが必要です.

次回は窓抜き作業を紹介します.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(14) -アクセサリの製作(3:柵)-

前回の電柱に続いて今回は機関区(鉄道用地)の境界にある柵(フェンス)を紹介します. 前回の電柱と同様に柵はレイアウト全体に配置されるのでレイアウト全体のイメージを左右する重要なアクセサリです. 柵はレイアウト全体の比較的長い距離にわたって設けられるため鑑賞時には常に視界に入りますのでレイアウト全体のイメージに与える影響は電柱以上に大きいかもわかりません.
<プロトタイプの選定>
鉄道用地とそれ以外の土地の境界に設けられる柵にはいろいろなタイプがありますが、私のイメージでは蒸気機関車時代の柵は枕木を並べたものが多かったような気がします. このタイプの柵は1980年代はじめまでは(国鉄民営化の頃までは?)首都圏をはじめとして各地に見られました。

線路脇に設けられた枕木製の柵の例

その他の柵ではチャンネル状の鉄柱と棒を組み合わせたものや金網のフェンスなども使用されていた記憶がありますが近年でも見られるコンクリートの角柱と平板を組み合わせたものは少なくとも蒸気機関車が活躍している線区ではあまり見かけなかったと記憶しています.
今回のレイアウトセクションは北海道の機関区をイメージしていますのでこの柵を製作するにあたり北海道特有のものがあるか(あったか)を調べてみたのですがあまり参考になる情報は見つけられませんでした. あるとすれば積雪時に柵にあまり雪の重さがかからないものが選ばれているような気がするのですが, 北海道の雪はサラサラで柵にそれほど付着するとも思えず, それ以前に北海道, 特に大都市から離れた地域では機関区の周囲全体を囲む柵自体があまり設置されていなかったような気もします. とは言っても機関区の境界に柵を設けて施設内と施設外を明確にした方が視覚的にメリハリが出るため 今回は機関区の周囲に枕木を使用した柵を設けることとしました. 一年の半分近くの間雪にさらされる(特には雪の中に埋まってしまう場合もある)北海道でこのような木製の柵はあまり適さないのではないかという気もしましたがサビで腐食する鉄製の柵よりは良いのかもわかりません.
枕木を使用した柵のパターンとしては何種類かあるようですがそれを列挙すると (1) 上の写真のように枕木のピッチを狭くして人の立ち入りを防止したもの, (2)(1)の上部を水平方向に設けた枕木で固定して傾きを防止したもの, (3)枕木のピッチを広げて間に鉄の帯板を渡したもの 等があります. この中では一番簡単にできそうなのは枕木の本数が少なくて済む(3)ですが, 私の枕木を用いた柵のイメージは(1)ですので今回はこのタイプで製作することとしました. (1)の製作法を確立すれば実際に一部に設置してみてイメージに合わなかったら(2)や(3)への変更も容易に可能です.
製作にあたりまず枕木の実物寸法を調べてみると枕木の標準的な寸法は200㎜×140㎜×2100㎜であり, 1/80に換算すると2.5㎜x1.75㎜x26㎜となります. 私のイメージでは枕木の断面は正方形のような気がしていたのですが, 調べてみると枕木には橋梁用の枕木というものがありこちらは断面が正方形のようです. 枕木の全体形状という意味では普段こちらの方が見慣れているせいか, 私のイメージとしては枕木は断面が正方形ですので、今回制作する枕木柵の断面は正方形としました.
<製作手順>
素材は実物と同じ木製で製作しますが, 断面形状をスケールどおりとすると断面は2.5×2.5㎜となります. しかし市販されている檜角棒の規格品に2.5㎜角の角材はなく, あるのは2㎜角または3㎜角になります. 最初に思いつくのは3㎜角の角材を2.5ミリ角に削ることですが何分数が多い(角材の必要長が長い)ため, 手作業で均一に削ることは結構難しいと思われます. そこで今回は2㎜角の角材に厚0.5㎜の帯板を重ねて製作することとしました. この貼り重ね用の角棒は既成の0.5×5㎜の檜角棒(帯板?)を用意し, 下の写真位示すようにまず帯板を2㎜角棒の1面に接着し, カッターナイフで切断後隣接する面にも帯材を貼り付け, 貼り付け後サンドペーパーで仕上げることで2.5㎜角の角材を製作しました. 仕上げ時には多少角に丸みがついたり太さが変化してしまいますが, 正確に仕上げることよりも多少不均一であった方が実感的であるような気もします.

柵に使用する角材は2ミリ角の角棒と0.5ミリ厚の帯板を木工用ボンドで接着して製作しました.

柵の高さは17.5㎜としました。この高さは実物換算で1.45mです。実物の高さは不明ですが自身の記憶や写真から柵の先端は概ね顔の高さにあるという印象がありますので大体この程度の高さではないかと思い決定しました. 枕木の長さが2.1mですので地中には0.65m埋められていることになりますがこれは枕木長さの約1/3位となり, まあ妥当な(少なくともすぐには倒れない)量ではないかと思います. 切断には写真のようなジグを作成し4方向からカッターナイフで直角に切り込みを入た後切断しました.

角材はジグにより4方向から切り込みを入れて切断面を直角に切断します

切断後, 丈夫に面取りをつけました. この面取りの量はいろいろあるようですが少なすぎると遠くから見たときに目立たなくなるような気がしましたので少し量を多めにつけて先端を細目に仕上げました.

完成した柵の単体です

上部の面取りがつけ終わったら底部に取り付け用の真鍮線を埋め込みます. 真鍮線はφ0.7m㎜を用いています. ドリルで穴を開けて真鍮線の先端にゼリー上瞬間接着剤を塗布したのち穴の差し込み固定します. この後真鍮線を切断しますがこの際注意することは真鍮線を長めにしておくことです. ベース上にはプラスターの層が数ミリありますのでそのプラスター層を貫通してベースに達する長さにしておかないと固定後に柵に少し力を加えると柵がプラスターごと剥がれてしまうので注意が必要です.

完成した柵単体に取り付け用の真鍮線を取り付けます.

以上で柵単体は完成ですのでこの柵をレイアウトに取り付けていきます. 塗装は取り付け後に行うこととしました. . その理由は事前に塗装をしても取り付けの際穴を開けて差し込みむので穴あけ時にプラスターの粉が出て地面位付着するためどうしても柵を取り付けた後に地面の塗装(タッチアップ)が必要になること, 多くの”枕木”がレイアウトの長手方向全体に並びますので地面と異なる色とすると目立ちすぎる可能性があるため最終的には地面とほぼ同色とした方が良いと考えわざわざ取り付け前に手間をかけて一本ずつ塗装をする必要はないと判断したためです.地面に開ける 取り付け用の穴はピンバイスで開けますが取り付ける柵自体に太さのばらつきがあるため穴のピッチはそれほど厳密である必要はなくかえって正確に穴あけすると太さの違いが目立つような気もしましたのである意味現物合わせ, 具体的には1箇所穴あけして取り付けたのちその枕木とピンバイスのチャックが接触する位置に隣の取り付け穴を開けて枕木を取り付けていくという方法としました. 私が使用したピンバイスのチャックの直径が7㎜でしたでこれで取り付け穴のピッチは4.75㎜となり計算長の柵と柵の隙間は2.25㎜となりますが隣の柵とチャックは密着しませんので結果的に隙間はもう少し広くなり見た目柵の太さと隙間がほぼ同一寸法となります. なお, 角材に取り付けた真鍮線は必ずしも柵(角材)の中心に正確に位置しているわけではないので取り付けの際柵を回してピッチ(柵と柵の隙間)を微調整することが可能です. このような方法により柵を固定した写真が下記になります. ちなみのこのレイアウトで使用した柵は全部で244本でした.

レイアウト上への取り付けが終わった柵

取り付けが終了したら柵の着色を行います. 色は地面より少し明るめに茶色としました. 塗装は筆塗りで塗装後には地面を含めて再度塗装を行いますので特にマスキングはせず地面へのはみ出しは気にせず行いました. ただし下の写真のようにベースの縁に取り付けられた柵を塗装する時にはベースの塗装にはみ出さないようにマスキングテープでマスキングをを行います.

レリアウト上に取り付けた柵をエナメル系の塗料で塗装します

柵の塗装が終了したらエアーブラシで地面色を柵の根元に吹き付けます. 上の写真のように柵の周辺には取り付け穴を開けた時のプラスターの粉が残っており柵と掃除の塗料のはみ出しもありますのでまずこれらが目立たないように吹き付けます. 上述のように地面と柵はほぼ同色としますので吹き付けの際はテープでのマスキングはせずに厚手の紙で柵の上部を隠しながら吹き付けを行いました(当然建物は全て取り外します)そして根本部の白粉と柵の塗料のはみ出しが目立たなくなったらマスキング用の厚紙は使用せずに柵と地面が一体となるよう地面色を柵全体に吹き付け完成とします. この際塗膜を厚くしすぎると柵と地面が完全な同色になってしまいますので柵に事前に柵に塗った色と柵と地面の間にわずかな色調の差が出るように塗料の量(吹き付け時のガンの速度や回数)を調整することが肝要です.

柵単体への塗装が終了したら柵全体に地面色を吹き付けて色調を調整します.

以上で柵が完成しました. 次回からは所謂”小物”と呼ばれるアクセサリを紹介していきたいと思います. 最後までお読みいただきありがとうございました.

柵が完成したレイアウトの写真です.

鉄道趣味を50年続けて思うこと(5) ~Prototype Modeling~

昔から夏は鉄道模型シーズンではないと言われています.確かにエアコンが普及していない時代には暑い夏(と言っても昔は今ほど暑くありませんでしたが)に集中力が必要な細かい工作はあまりやる気になりませんし, 汗をかきながら動いている車両をじっくり眺める気にもなりませんでした.ただ現在の私は仕事をリタイアし, 会社の夏休みに合わせて混雑している場所に出かける必要もなければ子供をどこか旅行に連れて行く必要もありません. 家にはエアコンもあり, 昼間は暑すぎるためどこへも出かける気にならず涼しい家にいる時間が比較的多くなっています. それにもかかわらず模型を製作する気にならないのは単なる昔からの習慣でしょうか?

ということで模型の製作は一時休業で, 涼しい部屋の中で読書などをして過ごしています.
読書は以前読んだ小説を改めて読んだりしていたのですが, 最初に日常読んでいる鉄道模型関係の雑誌に興味深い記事がありましたので紹介してみたいと思います. 


ModelRailroader誌の9月号には米国カリフォルニア州にあるTehachapi Loopを再現したレイアウトが紹介されていました. このレイアウトは72x128feet(22×38.5m)のスペースに設置された複層式のレイアウトで,線路の総延長は1800feet(548m)に及びます, この長さは実物に換算すると実に47kmになり, このレイアウトを列車が走破するのには約1時間かかるそうです. 日本でループ線のある上越線清水峠の水上・越後湯沢間は約35kmで所要時間は約40分ですので, 清水峠をそのまま1/80に縮小したレイアウトを製作しようとするとこのレイアウトにほぼ匹敵するイメージになるのではないかと思います. このレイアウトは個人所有ではなく博物館に設置されたレイアウトで, 現在の姿になるまでには長い期間がかかったようですが現在は製作に携わった地元の鉄道模型クラブが運行しいます. 線路長が実物を縮小した長さであるため運転は過去に実在したダイヤで実時間による運転が行われているようです. 欧米では保存鉄道を愛好家が運転している例はメディア等でも数多く紹介されていますが, これはその鉄道模型版といったところでしょうか. 現在レイアウトはDCC化されているようですが運転には最大35名以上の人員が必要であるということで, 展示施設内のレイアウトですから好きな時に運転というわけにもいかないと思われますのでクラブは運営面でもきちんとしたマネジメントが必要になると思いますし, メンバーがこのような運転を整然と行なっていることもある意味すごいことであると感じます.
一方別の記事では実物の写真をベースとして製作したペンシルバニア州Port Royalの駅とその隣にかかる橋の写真から製作したレイアウト(ジオラマ?)が紹介されていました. この記事にはProototype Photoをベースとしたモデルがあったらその写真を実物の写真とともに投稿してほしいという編集部のコメントもついています.最近日本の鉄道模型雑誌では実物をの一部をそのまま縮小したようなレイアウト(ジオラマ)の記事が多数発表されていますが, 前者のTehachapi Loopを再現したレイアウトは別として, ある程度大きなスペースがあっても実物をそのままスケールダウンした風景をレイアウトに組み入れて運転を楽しむのは結構難しいと思われ, 列車を運転することが主流の米国では日本のように実物を縮小して再現したレイアウトセクションの製作はあまり行われていないと思っていましたので, 最初にこの記事と編集部のコメントを読んだ時は少し意外な感じがしました.
一方, 同誌の10月号には米国鉄道模型界の重鎮の一人, Tony Koester氏のコラム記事 ”Train of the thought” にPrototype Modelingについての記事が掲載されていました. この記事では実際の情景をレイアウトの中にどのように取り入れるべきかということが実例を交えて述べられおり, その内容は
・ プロトタイプ モデリングの目的は, 特定の場所の特定の時間における外観と雰囲気を再現することである
・プロトタイプ モデリングによるレイアウト製作においては上記のような場所を複数組み合わせて全体を一つの鉄道にまとめていくことが必要である.
・プロトタイプモデリングはその場所や線路配置をそのままスケールダウンする必要はないが, Prototypeの何を表現するかをよく考えること. その際にある程度の妥協は必要ではあるが, 再現したいシーンの本質を捉えて安易な妥協はせず, 鑑賞者ににもその場所や時代を感じてもらうことが必要である.
といったような内容でした.そして実際に同じ場所を複数のモデラーがどのように実物の情景をアレンジしてレイアウト上に再現したかが解説されていました.

上に記載したModelRailroader誌の記事

私がこの記事を読んで感じたのはここでTony Koester氏が述べていることは,以前このブログでもよく話題にした故・中尾豊氏の ”鉄道模型の造形的考察の一断面” のレイアウト版ではないかということです. 中尾氏の論じている対象は車両を模型化する際に車両が「実感的」であるための視点であり対象はレイアウトではありませんが, スペースの限られたレイアウトに実物の風景を再現しで実感を得るためにはこの記事とは別のアプローチが必要で, それが上記の記事の言葉に要約されているように感じました. この記事を読んで改めて9月号のPort Royalの駅の記事を見ると編集部のコメントは決して実物写真をそのまま再現したレイアウトの写真を募集しているのではなく, この記事のような形で製作したレイアウトとそのベースとなった写真を求めているのではないと気がづきました. 

車両はその実感を求めるためにその一部をデフォルメする事はあっても, 通常一部分のみスケールを大きく崩すということは行いません. しかしレイアウトの場合にはスペースのみならずカーブ半径ひとつとってもスケール通りに製作できないという根本的な矛盾を抱えており, これは上記のTehachapi Loopを再現したレイアウトでも同じです. そのため実物の風景を「実感的に」再現する場合には実物を構成している要素を分解して再構築するという 車両の模型化とは異なる結構創造的な作業が必要になります. そして私はそこがレイアウト製作の醍醐味であるという気もします. もちろん私は実物の風景をそのまま再現したレイアウト(ジオラマ)を製作する楽しさを否定するものではありませんが, 運転という観点では何かと制約が大きいように感じます. ジオラマの前後にエンドレスの線路をつなげて車両を周回させるだけでは運転は単調になりますし, 駅や機関区のセクションを実物通りの線路配置で製作しても駅に発着する列車や機関区に入出区したり機関区内を転線する機関車の運転操作は結構煩雑な作業になり動いている列車を鑑賞する余裕はありません. そのようなレイアウトセクションで列車が発着する風景をゆっくり鑑賞しようとするとDCCによる自動運転が必要になりますが, 自動運転である程度以上規模の大きな駅や機関区に出入りする複数の列車(機関車)を運転しようとすると, 列車(機関車)交換のためには結構大掛かりなStaging Yardをレイアウトに接続する必要があり, プログラミングも非常に複雑になると思われます. このように実物の一部をそのまま再現したレイアウト上で車両の動きをじっくり鑑賞しようとするとするとなるとそこには運転操作という面で色々な課題があると感じます.

ドイツの駅舎の写真からInspireされて製作したDCC(Märklin digital)による自動運転を導入したレイアウト”終着駅Großfurra”

最後に鉄道関係以外で読んだの本の話にも触れたいと思います. 今回は音楽と同様過去に読んだ小説を読み直してみました. 夏目漱石や川端康成の小説は20−30代の頃よく読んでいましたが, この年になって読み返すとその後人生経験を積んだせいか, また違った気づきがあり面白く読むことができました. また今回宮沢賢治の童話やサン=テグジュベリの ”星の王子様” も読んでみたのですがこのような童話でも昔読んだ時とはまた違った感覚を味わうことができました. 宮沢賢治の童話は銀河鉄道の夜や注文の多い料理店等が有名ですが, それ以外にも数多くの童話があり中にはこの年になって一読しても正直何を言いたいのかよくわからないものもありました. ただ氏の童話では童話の幻想的な世界と現実の世界を結びつけるものとして鉄道の音や光が効果的に使われているような気がします. また作品の中には ”シグナルとシグナレス” のように実際の鉄道から着想した作品もあります. 氏の経歴を見るとどちらかというと理系寄りの方のようですので鉄道には車両以外のシステムも含めて結構関心があったのかもしれず, そこからの着想がいろいろあったのかもわかりません. そしてもしかしてこれらの童話をじっくり読み込むと宮沢賢治の童話の世界をモチーフとしたレイアウトも製作できるのではないかとも感じました. また, このブログでは私が製作した北海道で活躍した車両や北海道をイメージした機関区を紹介していますが, 例えば北海道の出身である三浦綾子氏の小説「天北原野」は鉄道は出てこないものの当時の北海道の自然の厳しさとそこで暮らす人々の営みが描かれていますし, 「塩狩峠」は実際にあった鉄道事故をモチーフとした小説です. 北海道を訪れて初めて宗谷本線や天北線に乗った際には外の景色を見ていると思わずこれらの小説を思い出しました. 北海道をテーマとした車両やレイアウトを製作した際には実物の鉄道の資料を集めるだけではなくこのような小説を読むことは北海道の自然の風景や鉄道のイメージと共にそこで生活している人々を想像することにも繋がり, それがレイアウトのイメージを構築する時に何らかの影響を与えるような気もします.

海道の機関区をイメージして製作中のレイアウトセクション

以上、取り止めのないことを書いてしまいましたが最後までお読みいただきありがとうございました. やっと涼しくなってましたのでそろそろまた模型の製作を再開したいと思います。

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(11) -機関区の建物(事務所・詰所等)-

今まで3回にわたって機関区にあるストラクチャーを紹介してきましたが、それらは全て蒸機機関車や気動車を動かすやめに水や燃料を補給するという機関区でいわば動力車とのインターフェースとなるストラクチャー(建物)でした。今回からはそれ以外の機関区にある事務所等のストラクチャー(建物)を紹介したいと思います。

建物を配置して細部仕上途中のレイアウト.

機関区にある建造物の実例を交えた解説は1980年代に機芸出版社から発行された”シーナリーガイド”や”シーナリー・ストラクチャーガイド”に詳しく解説されています。そこには各地の機関区の実例が多数紹介されていますが、それらの記事の中から機関区にある建物を列挙すると概ね以下のとおりです。
機関区事務所
乗務員詰所
線路班詰所
風呂場
外勤事務所
用品事務室
燃料係室
油庫
用品倉庫
蒸気機関車が活躍していた時代、これらの建物は大体が平屋建てで、線路の周囲に並んでいることが一般的でした。国鉄の機関区に小さな建物が多数あるのは一説によると縦割り組織であった国鉄がその組織ごとに建物を建設したからであると言われています。真偽のほどはわかりませんがそのような観点で建物の種類(名称)を見ると確かにそのような気もします。これらの建物は無煙化後も1980年ごろまでは各地で見ることができましたが、中には窓がアルミサッシ化されたり、屋根が葺き替えられている建物もありました。

奥羽本線赤湯駅の構内風景
山形駅に隣接する奥羽本線山形客貨車区の建物. 屋根はスレート葺きに改修されているようです。

それでは以下、建物の構想から完成までのプロセスを紹介させていただきます。
まず最初にどのような建物を製作するかを決定します。製作にあたり参考とした上記の”シーナリー・ガイド”には機関区と機関支区と駐泊所の差は敷地にある建物の数の差でわかるというような記載がありますが、これは感覚的には”言い得て妙”ではないかと感じます。この言葉に従えば機関区と称するためにはある程度以上の数の建物が必要ということになりますがレイアウトは当然?実際のスペースよりはかなり小さいため建物に数には限界があります。またあまり建物の数を増やすと狭苦しい印象となり、北海道の機関区の印象を損ねる気がします。そこでまずは製作する建物を仮決めし、モックアップ等で検討しながら実際に製作する建物を決めていくこととしました。その際最初に選択した建物は
機関区事務所
乗務員詰所
線路班詰所
風呂場
用品倉庫
です。まずは写真等の資料や過去の記憶を頼りにこれらの建物の方眼紙に建物の外観のラフスケッチを描きます。下の写真はこの時位製作した線路班詰所と用品倉庫のラフスケッチです。

最初に作成した建物のラフスケッチです. 最終的に製作した形状とは異なるところがあります.

これらの建物は実際にラフスケッチを描いてみるとは細かい差異はあれ全て木造下見板張りのトタン葺きで皆同じような外観になってしまいます。したがってこれらの建物を限られたスペースに並べると印象が少し単調になってしまうのではないかという気がしました。そこで変化をつけるため乗務員詰所と風呂場は間にトイレを挟んで建物を一体化してみることとしました。このような実例があるかどうかはわかりませんが、寒冷地で積雪の多い地域の機関区ではこのような構造もアリではないかと考えた次第です。この辺り、模型の世界では合理性がありそれらしければ(理由を説明できれば)あまり実物通りの形態にとらわれる必要はないのではと思っています。また上記書籍の解説によれば、北海道の建物では入り口に破風がある建物が多いとあり、実際の建物を見ても確かにそのような印象がありましたので原則入り口には破風を設けてあります。

乗務員詰所とトイレと風呂場を一体化した建物のラフスケッチです. こちらも入り口の位置等, 製作し建物とは異なる部分があります.

建物のアウトラインが決定したらケント紙でモックアップを作成し実際にレイアウト上に並べてイメージを確認します。

ケント紙で製作した建物のモックアップで建物の位置を検討しているところです.

建物はレイアウトを置いた時の壁側に並べ、手前側は機関区事務所のみとして車両を鑑賞する際の視線の邪魔にならないように配慮しました。なお、実際にモックアップで検討してみると乗務員詰所と線路班詰所の間のスペースが広すぎるように感じましたので、その空いたスペースに油庫を追加しました。決定した建物の配置を下図に示します。

今回配置を決定した建物を水色で示します. ()で示したのは紹介済みの建物です.

建物の大きさと配置が決まったら図面を作成しますが、今回は少し手抜きをして全ての建物の図面は作成していません。一般的に日本家屋は基本寸法が決まっており、窓や扉の大きさも建物による差はありません。そこでまず機芸出版社発行の”レイアウト・テクニック”に掲載されている各種記事を参考にして機関区事務所のみ”真面目に”図面を作成し、その図面で扉や窓の基本寸法、窓枠に使用する檜角材等の寸法を決めることにより、その他の建物の図面御作成は省略しました。基本寸法を決めたのは窓枠に使用する材料、建物への入口とその入口に接する半間の窓、建物の門部で接する窓部の構造、窓が連続する部分の構造等です。

細部の寸法を検討するために作成した機関区事務所の図面です. 既成の檜角材の寸法を考慮しながら細部の寸法を決めました(鉛筆で書いた部分です).

⚫︎建物の外観
設計が終わったら製作に入りますが、製作手順は今まで紹介してきた建物とほぼ同一ですので今回は完成した建物を写真で紹介させていただきます。
まずは上の図面に基づき製作した機関区事務所で、この機関区の中では一番大きな建物です。L字形状として一端に張出部(トイレを想定)を設けました。壁面はSTウッドを使用した下見板貼りで窓枠と扉は自作品です。トイレには昔よく見かけた風で回転する排気煙突を取り付けようと考えていましたが、構造が複雑で製作方法を思案中です。屋根の台形煙突はエコーモデル製のパーツを使用しました。

機関区事務所の窓枠の色は茶色にしました. 手前側の屋根の煙突はエコーモデルのパーツ(#254:台型煙突)です.

モックアップによる検討で追加した油庫はコンクリート製の建物としました。屋根はプラ製の波板(Kibri製#34143:Corrugated Metal)を使用しています。

油庫は給油小屋ど同様Drawing Inkでウエザリングしてあります。また給油小屋同様各種表示を貼り付けました.
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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(5) -コントロールボードの製作と電気配線-

前回の記事で記載したように、私は30年ほど前にアナログ制御のZゲージレイアウトを製作した後は 3線式(Märklin)のDigital制御のHOゲージレイアウトを製作してきたため、線路敷設後の試運転時にも車両の走行性の確実な確認のためには配線、特に分岐器絶縁フログ部の極性を分岐器の切り替え方向に応じて切り替えることが必要ということを失念していました。そこで確実な試運転のために急遽コントロールボードを製作することにしたのですが、この時点ではアナログ制御時の運転方法について具体的な構想や設計をあまり真剣に考えていなかったというのが正直なところです。

レイアウトの台枠部分に設けたコントロールボード.

今回このレイアウトが完成したとしてもその時点での手持ちの日本型蒸機はアナログ制御の車両のみであり、しばらくの間はアナログ制御で運転します。現状では日本でデジタル制御が米国や欧州のような形で普及する見込みは全く立ちませんのでアナログ制御による運転方法も一時凌ぎではなく「真面目に」検討しなくてはなりません。また、現在手持ちの車両を将来も運転するためアナログ制御とデジタル制御を切り替え可能にするとともに最終的にはDCCに制御による自動運転にも対応できるようにしたいところです。実はこのレイアウトの構想時にはどちらかというといつ実現できるかわからないにもかかわらず頭の中ではDCC制御のことばかり考えており、そのために行うことは非選択式の分岐器を用いて一つのフィーダーでレイアウト全体に給電すること、自動運転に必要なフィードバックモジュールによる在線検知にS88プロトコルを使用する場合は検知にアナログ制御時の機関車留置用のギャップ(ブロック)を利用する(よってDCC制御による自動運転のためにに特別の加工は不要)という程度のことしか考えていませんでした。
レイアウトのコントロール方法は70年台のTMS誌には比較的高頻度で掲載されており、私もZゲージのレイアウトを製作した時に大いに参考にしたのですが、最近はまったくみかけません。今回も復習したのは50年以上まえの当時の記事です。レイアウトのコントロール方式には大きくブロックコントロール、キャブコントロール、デュアルキャブコントロールがありますが、方式の決定にあたってはまずこのレイアウトセクション上で同時に何台の車両を動かすかを決める必要がありますが、今回以下の理由によりレイアウト上で動かす車両は1台のみとしました。私は過去、ほぼ同一の線路配置でDCC制御(Märklin Dogotal)のレイアウトセクションを作成しましたが、このレイアウトはDCC制御ですので理論上は機関車を何台置いても個別に制御が可能です。私が製作したこのレイアウトセクションに接続したコマンドステーション(Central Station3)は、スロットルの数は2台ありますので実質的にレイアウト上で制御できる機関車の台数は2台となります。ただ、実際に運転してみるとこの規模のレイアウトセクションで一人で2台の機関車を制御するのは至難の技です。2台の機関車を制御しようとした場合、この線路配置では1台は機関庫側での機関車の転線、もう一台は整備線側での整備(給水、給砂、給炭、石炭柄の排出)と留置線への移動になります。ただこの制御を一人で行おうとすると作業が非常に煩雑で機関車の動きを鑑賞するどころではなくなります。それでも今回のレイアウトではコントローラーを2台接続できるようにしておくこともできますが、上記の経験からそれも不要と考え、このレイアウトで一度に制御できる車両の数は1台としました。そうするとキャブは1台になりますのでコントロール方式は必然的にブロックコントロール方式となります。ギャップについては今回のレイアウトは非選択式の分岐器を使用していますのでショート防止のためのギャップは不要で常時通電するブロックへのフィーダーは1箇所でOKですす。そうすると次の要検討項目は絶縁されているフログへの給電となります。当初、この極性切り替えには当初PECOやの極性切り替えスイッチ(PL-25)を使用する予定でした。ただ、どういうわけかドイツの模型店ではこのスイッチが品切れで今回は入手不可能でした。このスイッチはポイントマシンのアクチュエータで動作するスライドスイッチで、ポイントマシンの分機器の反対側に装着する構造です(そのためにポイントマシンのアクチュエータは分岐器の逆側のソレノイドの下部に突出しています)。そのため比較的簡単に後からでも追加することが可能ですし、入手不能の場合は自作も可能ではないかと考え、検討を先送りしていました。しかし、コントロールボードを製作するためにはこの切り替え方法をこの段階で決定しなければなりません。今回使用したPECO製のポイントマシンの動作力は比較的強力ですので自動切り替えスイッチは燐青銅線やバネ等で比較的簡単に自作できそうです。ただ考えてみるとフログの極性を自動的に切り替える必要があるのは自動運転の場合だけで、自動運転を行わない場合はDCC制御での運転でも経路(分岐器の切り替え)は手動で行います。このため現時点ではフログ極性の自動切り替えは行わず、より信頼性が高い手動切り替えとしました。そしてその方法は、ポイントマシンの切り替えには両側モメンタリーのトグルスイッチを設け、フログの極性の切り替えはその近傍に設けた一般的なトグルスイッチで行うこととしました。そしてこれらのスイッチをコントロールボードの路線図上に設けることにより、分岐器切り替え時にはこの2個のスイッチの操作を連続して行ないます。この方式では切替作は2アクションとなりますがこの方法ではフログ極性の切り替えスイッチで分岐器の分岐方向を示すこともできます。コントロールボードは台枠の一部を切り欠いて設置しますが、上下の幅が狭いため、一つの経路頭上に分岐器切り替えスイッチとブロックへの給電スイッチは別の経路頭上の設けることとしました。そのほか、コントローラーは内蔵しませんので接続用のコネクタには手持ちのマイクコネクタを使用し、ポイントマシンへの給電用と照明等への給電用にはACアダプタをが接続できるDCジャックを設置しました。また、照明との給電をON /OFFできるトグルスイッチを設けてあります。照明用の電源は9VのACアダプタ、ポイントマシンの電源は12VのACアダプタを使用することとしました。

パネルの全体写真. 左側に分岐器切り替えスイッチ, 右側にブロック切り替えスイッチを配置. パワーパックの接続コネクタは手持ちのマイクコネクタ(7P)を使用していますが実際に使用しているのは2端子です.

コントロールパネル上で分岐器制御スイッチは路線図の分岐部に分岐方向切り替えスイッチ、その下流にフログ極性切り替えスイッチを設け、分岐器切り替え時にはまず分岐方向切り替えスイッチを切り替え方向に倒した後、フログ極性切り替えスイッチを動方向に倒してフログ極性を切り替えます。

この方法では分岐器の分岐方向をを切り替える際、2個のスイッチの操作が必要になります。私が以前製作したZゲージのレイアウトでも分岐器の切り替えは今回のレイアウトと同様、両側モメンタリーのトグルスイッチを使用していました。Zゲージの分岐器(Märklin製)は非選択式ですが構造上フログ部分に無電区間は殆んどなく、フログの極性切り替えは不要でったため、今回切り替え時に二つのスイッチを操作することは煩わしいのではと感じたのですが、実際に製作して操作してみると切替時は一連の操作になりますのでそれほど煩雑ではなく、またポイントの開通方向が目視でわかるということは意外と有益であることがわかりました。上記のZゲージ用分岐器やMärklinをはじめとした欧州製の分岐器にはスプリングポイント機能があり、分岐器の分岐側からは分岐器の開通方向に関わらず車両の侵入が可能ですが、今回使用したPECO製の分岐器はポイントレール側にロック機構があるためスプリングポイント機能がありませんので、車両を分岐側から分岐器に侵入する際も分岐器が侵入する分岐側に切り替わっていることの確認が必要です。これは分岐器を目視でチェックすればわかるのですが、運転する位置によっては建物等に隠れて開通方向が見にくい場合もありますので分岐機の開通方向がわかる今回の方式は操作は面倒ですが意外と便利であることがわかりました。
コントロールパネルの製作はまず2㎜厚のPET板より本体を作り、Letra Line Tape 製作した路線図ので所定位置に使用するパーツに応じた取り付け穴を開けてパーツを固定することにより行いました。Letra Line Tapeは30年近く前にZゲージレイアウトのコントロールパネルの路線図作成用に購入したものですが、今回問題なく使用できました。余談ですが、今回使用したトグルスイッチは秋葉原のパーツ店で1個¥100程度で入手できます。約30年前、Zゲージのレイアウトを製作した際はこの種のトグルスイッチは1個¥200-¥300であったような記憶があります。この種の部品は中国生産になった影響かもわかりませんが所詮模型用で信頼性はあまり問わないと割り切ればこの手の部品は当時よりかなり安価に入手できます。

パネルはパーツを取り付けたら台枠を切り欠いた取り付け部に固定して配線を開始します。配線にあたってはコントロールボードの近くに電源分配用の基盤を設け、そこからレイアウト各部に給電するようにしました。

コントロールボード近くに配置した配線用の基盤

基板はフィーダーN /フィーダーS/12V+/12V-/9V+/9V-の電源区画を設け、その区画ごとに各ホールを繋ぐ鈴メッキ線を半田付けし、さらに9V+の区画からはLED点灯用の1.5KΩの抵抗を介した端子(ホール)を設けました。そしてコントロールパネルのパワーパックとDCジャックからの電源をこの基板の各区画に接続し、そこからレイアウト各部に各部に配線していきます。なお、車両留置用のブロックからの配線は一方をこの基板に接続し、もう一方はコントロールパネルのブロックへの電源供給スイッチに直接接続してあります。レイアウトの各所からくるリード線は接続する電源区画のホールに半田付けしますが、その際、ホール上にあるスズメッキ線とともにハンダ付けけすることにより各電源と接続します。今まで製作してきたレイアウトでは端子台を使用する方法(Zゲージレイアウト・外国型機関区レイアウトセクション)、基板上に取り付けたターミナルブロックに取り付ける方法(自動運転を前提としたレイアウト)を採用してきましたが、配線は一度配線したら煩雑に取り外しすることはないので部品の削減(コストダウン)も兼ねてこのようなハンダ付けによる方法を採用しました。余談ですが、私が中学生の頃はこのようなスズメッキ線やリード線を使用したはんだ付け作業を学校の技術家庭科の授業でやった記憶がありますが、今はどうなのでしょうか。なお、コントロールボードのスイッチ周辺のような狭い範囲の配線には取り扱い製の面からスズメッキ線やビニール被覆の単線(捻り線ではない)を使用した方が簡単です。

配線用基板のアップ. 各電圧と極性のブロックを写真の縦方向に配置してあります. 各部からの配線は基板の各ホール部分にスズメッキ線とともにハンダ付けします.
基板には照明の一部にLEDを使用するため、9V+を供給するブロックに制限抵抗を介した端子を設けました.
各部からの配線は基板上の所定の電源区画にハンダ付けします.
レイアウトには電源供給用のBUS LINEは設けずに個々のブロックのコモン側の配線やポイントマシンへの配線は全て基板から配線しています。

なお、今回の車両留置用のブロックは両側のレールを絶縁して敷設し、片方のレール(Nフィーダー)からの配線をこの基板上でコモン化してあります。今回のレイアウトセクションはエンドレスを持ちませんのでどちら側のレールをNフィーダーとするかは一義的には決められませんので機関区側のフィーダーをNレールと定義してNコモンとして配線しました。配線が終了し、コントロールボードが完成したら試運転を行います。試運転はこのレイアウト上での運転を想定した手持ちの車両の中で最も終電用車輪のホィールベースが小さい車両(DT19を装備した気動車)と固定軸距が最も長い車両(D51)を主体に行って問題ないことを確認しました。試運転が終了したらレール側面と枕木の塗装を行いますが、この作業の紹介は次回にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(3)

今回は機関区の各種設備をレイアウト上のどこに配置するについて検討した結果を紹介します。最初は燃料の補給等、機関区にある蒸気機関車を運転するために必要な設備についての検討です。機関区の設備にはまず蒸気機関車のエネルギー源を機関車に補給するための設備として
1)石炭補給設備
2)給水塔(水を貯蔵するタンク)
3)給水栓(給水スポート)
があります。また、空転防止用の砂を機関車の補給するための
4)砂補給設備
が必要です。
さらに、機関車から出る石炭の燃え殻を排出するための設備として
5)アッシュピット
が必要になります。
前回線路配置を検討したときに説明したように、今回はこれらの設備は下図の右上の”引上線”に設けることになります。

このレイアウトセクションに出入する蒸機は私が製作したC 62、C 57、D51等ですが、C62は別格としてもそれ以外の機体が配置されている機関区も主に幹線、亜幹線と呼ばれる路線の比較的規模の大きな機関区です。そのような機関区では複数の蒸機機関車に対して機関車を走行させるためには複数の機関車に対してこれらの設備を使用した作業を流れ作業的に行う必要があり、上記の設備を備えた”整備エリア”は複数箇所に設置されていることが多く、どの整備エリアに向かうかをターンテーブルの停止位置で振り分けられるような例も存在します。このような機関区では給炭設備は線路上に設置された櫓の上に設置した石炭ホッパーからその下に停車した機関車のテンダーに直接重力で落下させる方式が多く、また給水も高い位置に設置されている給水タンクから重力を利用して各線の給水地点に振り分けられ線路脇に設置された給水栓(スポート)からテンダーに供給されます。現在でも蒸気機関車は各地で保存されていますが、このような設備を備えたの機関区は写真や映像以外では見ることはできません。

高崎第一機関区で撮影した八高線のさよなら列車を牽引するD51+C58の出区風景. 後方に石炭台、給水スポートと給砂塔, 手前右側に給水塔が確認できます.

しかし今回は整備エリアの線路は単線で長さも短く、スペース上もストラクチャーの大きさのバランスからいってもこのような大規模な設備を設けるのは現実的(実感的)ではありません。そこで、このレイアウトでは石炭補給設備は石炭を”手動”でテンダーに積載する給炭台、給水は給水タンクに設置されたスポートでタンクから直接テンダーに給水する方式の給水タンクとすることとしました。一方空転防止用の砂は機関区の規模に関わらず通常線路脇に設置された櫓の上に設置されたホッパーから砂箱に重力で供給されるようです。この給砂塔は実物でも複線タイプと単線タイプの標準的なタイプがあるようですので今回は単線タイプを線路脇に設置することとしました。なお、この給砂塔はその近くに砂を加熱して乾燥させる設備があり、その建物が給砂塔の近傍に配置されています。砂は重力で砂箱から動輪近傍に落下させますので砂の乾燥は必須のようで欧州の建造物キットではこの給砂塔は”Sanding Tower Plant”という名称で砂乾燥用の建造物とセットで発売しているメーカーもあります。機関区の設備の中でこの給砂塔はあまり話題に上ることがなく、私も蒸気機関車が活躍していた時代、機関区を訪れた際に意識して給砂塔を眺めた記憶はないのですが、上の高崎第一機関区の写真でもその存在は確認できますし機芸出版社発行の”シーナリー・ストラクチャーガイド”の表紙には給砂塔の前に停車するC58の写真が掲載されています。

アッシュピットは整備エリアの近傍にあるようですが、その他の場所にも設置されている例もあるようです。一方、今回レイアウトに設置しようとするするこれらの設備の規模を考えるとこのレイアウトセクションは機関区というよりはローカル線の機関支区のような雰囲気が強くなります、ただ、私は模型の世界ではこのセクションは「機関区」で良いと考えています。このセクションのオマージュ作品である”蒸気機関車のいる風景”でも機関庫は単線機関庫ですが、雑誌でそこにC62が停車している写真を見ても殆ど違和感がありません。思えば小学生の頃鉄道模型を始めた当時、畳のうえに引いた線路に顔を近づけて列車の通過を眺めて楽しんでいたものですがその時には本を積み上げて作ったトンネルが実物のトンネルに、線路脇に置いた筆箱の蓋がプラットホームに見えていたことを思い出します。そこまで極端ではないにせよ最近の雑誌の記事を読んでいると、実物の風景を模型でいかに細密に再現するかが鉄道模型の昨今のトレンドになっているような気がします。ただ、少なくとも私はあまり細かいところには拘らずもう少しおおらかに「模型の国」を楽しみたいと思っています。一方、海外のDCC制御の蒸機はサウンドデコーダーに給炭音、給水音、給砂音や機関車の火格子を振動させて灰落としを行う際のサウンドが実装されています。将来日本でもDCC制御が普及し、蒸機のサウンドデコーダーにこのようなサウンドが実装されれば機関車からこれらのサウンドを発生させて楽しむことが可能です。

Märklin製BR65(#39651)ではf24-f27が機関区の作業時のサウンドに割り当てられています.

話が少し脱線しまったので話をレイアウト設備の配置の話に戻します。今回これらの設備は全て一本の線路上の比較的狭い範囲に設けますので検討するのはその配置(並べ方と各設備間の間隔)になります。私はこれらの設備が実物では通常どのような位置関係で配置されているかの知識はないのですが、限られたスペースの中、実物を忠実に再現する必要もないと思いましたので今回の配置の条件は機関車が引き上げ線に先頭から入線してもバックで入線しても各設備にアクセスできるように各設備の位置を決めました。線路の長さが限られているため一部の設備へのアクセス時に機関車が分岐器上に存在してしまう場合もありますが、それはやむなしと判断しています。なお、アッシュピットはどのような考え方により配置が決められているかは不明でしたので、機関車がどちら向きに進入しても火格子がアッシュピット上に到達できるという条件で線路終端に近い位置にアッシュピットを配置しました。また、アッシュピットは機関区内に複数存在し、中には機関庫近傍に設けられている例もあるようですので機関庫近傍にも設けてあります。また、今回製作するレイアウトセクションは蒸気機関車の晩年(Transition Era)を再現したレイアウトですのでレイアウトに変化をつけるため整備エリアと対向している留置線の片方には気動車の洗浄台と燃料補給設備を設けることとしました。これらの検討結果に基づいて決めた設備の概略位置を下図示します。なお、機関庫内のピットは庫内に入線した際、機関車の動輪部分がピット上にくるように停止可能であることを条件に位置を決定してあります。

これらの設備には石炭台には石炭置場、給水塔にはポンプ小屋、給砂塔には砂乾燥設備と砂置場、アッシュピットには灰置場等の付帯設備が必要となりますが、これらは実際に線路を敷設後に現物合わせで位置を決めることとしました。この他、車両の運転には直接関係ない設備(建物)としては機関区事務所、乗務員控室、風呂場、トイレ、線路班詰所、資材置き場、倉庫等がありますが、これらはベースの奥側と手前側の空きスペースに分散して配置することとしますが、こちらの大きさや位置は線路敷設後に決めることとし、ここまで決めたところでベースの製作を開始しました。次回はベースの製作から線路を敷設するまでの製作の過程を紹介したいと考えております。
最後までお読みいただきありがとうございました。

模型車両の製作:珊瑚模型店製D51の組み立てと加工(6) :下回りの加工

前回までにテンダーを含む機関車の上回りについての加工方法の説明は終わりましたので今回は下回り、特にエンジン側の動輪周りの加工内容を紹介したいと思います。下回りの加工内容は概ね以下のとおりです。
1. 車輪の黒染め
2. 加減リンクの交換
3. コンビネーションレバーの両端のフォーク化
4. ブレーキテコおよびブレーキロッドの追加
5. 砂撒管の追加
では、各部について順を追って説明していきたいと思います。
6−1 車輪の黒染め
黒染めに使用する黒染め液はいさみや・ロコワークスが発売している常温黒染め液で、黒染めにはもう数十年この製品を使用し続けています。今まで、この黒染め液は客車や電車の台車の車輪に使用しており、蒸気機関車の動輪はラッカー塗装しておりましたので、今回、蒸気機関車の動輪に使用するのは初めてとなります。まず車輪を洗浄します。私は通常は車輪を含め、塗装前の処理としてクリームクレンザーで磨き洗いし、その後中性洗剤で洗浄をした後にプライマーを吹き付けていますが、動輪については外観上、万一色ムラが出るとが目立ちますので、今回はさらに脱脂を確実とするため、ラッカーシンナーで脱脂を行いました。その後説明書に従い、筆で黒染め液を車輪に塗りつけていきます。この時、理由はわからないのですが、ニッケルメッキした車輪では、そのまま黒く変色していくものと一度メッキが剥がれたような状態になり、その後黒く変色していくものがあります。特に後者の現象が起こった場合、最初なかなか黒変せず、黒変しても脱落しやすい状況が起こり、少し焦るのですが、そのまま根気よく塗布を繰り返すといずれ皮膜が形成されます。仕上がりはこの様な現象が起きなかったものに比較してもあまり変わらない様です。過去の経験も含め、車輪のメーカーによってこの現象が起きやすいメーカーと置きにくいメーカーがあるような気もしますが、詳細は不明です。

黒染めした動輪とバルブギヤー

6-2 加減リンクの交換
加減リンクはロストワックスパーツに交換します。エキセントリックロッドはキットのものを利用します。キットの加減リンクとエキセントリックロッドは段付きピンのかしめで固定されていますので、まず加減リンク裏側の段付きピンがかしめられている部分を軽くヤスリ、段付きピンを引き抜いた後そのままロストワックス製の加減リンクの穴に嵌め込んで少量のハンダで固定します。ただ、ロスト製の加減リンクは真鍮地肌のままとなっています。に今まで製作した作品ではハンダメッキにより着色しており、今回もそうしたいと考えておりますが、手元にソルダーウイックがなかったため未実施です。半田メッキはソルダーウイック入手後に行いたいと考えています。なお、この製品のリフティングリンク、リフィティングアーム、ウエイトシャフトはロストワックス製のモーションプレートと一体に造形されており、ラジアスロッドの後端は加減リンクの回転中心までしかなく、加減リンクの回転中心のネジとともじめする構造になっていますのでラジアスロッドはニュートラル位置で固定されてしまいます。今回はそのままと素てありますが、この部分も今後塗装までに修正が必要で、その際、ラジアスロッドは新作せざるを得ないと考えています。

コンビネーションレバーは先端をフォーク状に加工しました

6-3. コンビネーションレバー両端のフォーク化
コンビネーションレバーの上下、ラジアルロッドとユニオンリンクが接続される部分はフォーク状の形状となり、各リンクを両側から抱いて支持する構造となっていますので、コンビネーションレバーに上下をフォーク状にする加工を行います。今回は所定長さに切断した幅2㎜厚さ0.3㎜の帯板をキットのコンビネーションレバーに貼り重ね(ハンダ付けは中央部のみ)その後バイスに挟んで貼り重ねた板に外形をやすりでパーツと同形状に仕上げるという方法で製作しました。外形が完成したら上下にラジアルロッド、バルブスピンドルとユニオンリンクを挟んで0.5㎜の洋白線を通して固定しました。なお、コンブネーションレバーには、上部の結構目立つ位置にボルトが2本ついているのですが、今回加工を忘れてていることに気がつきました。他の作品では0.3㎜の洋白線の植え込みで表現しています。この部分は塗装前に分解した際に追加工したいと考えております。

加工部分の関節には0.5㎜の洋白線を使用しました
加工中のコンビネーションレバーです

6-4. ブレーキテコ、ブレーキロッドおよび砂撒管の追加
これらの部品は動輪押さえ版状に取り付けるブレーキシューを取り付ける部品に追加します。まずブレーキてこを両側のブレーキシュー間に渡す形で製作しますが、外観は裏返さなければ見えず、目的はブレーキロッドの保持だけですので、洋白帯板を使用し、あまり形状にはこだわらずに製作しました。帯板(エッチングパーツの縁)を所定長さに切断し、角部を少しやすりで落とした形状です。そこにブレーキロッドを取り付けますが、D型機は前2組と後ろ2組の動輪に別れていますので注意が必要です。ロッドの両端は短い方が手元にあったエコーモデルのパーツ、長い方が真鍮帯板からの自作です。砂撒管は0.5㎜に真鍮線から製作し、ブレーキシュー取付板に取り付けてあります。このパーツは曲がりやすく、変形すると車輪やレールに接触してショートの原因となりますので注意が必要です。現在、ロストワックス製のブレーキシューも各社から発売されていますが、是非砂撒管も一体に表現したパーツを発売して欲しいところです。なお、キャブ下の配管にあるレール水撒管の水撒口は第1動輪の前方にあるようですが、写真を見ても存在がわかりませんでしたので省略しました。

第一動輪のブレーキてことブレーキロッドです
D型機のブレーキロッドは2組に分割されています

以上で下回りの加工は終了です。最後にモーターを取り付け、試運転を行い問題ないことを確認します。黒染めした動輪は踏面に「カス」?が残っているせいか最初は集電不良を起こしますが、数分間レール状でスリップ運転をすると問題なく集電できる様になります。走行性に問題ないことが確認されたら、塗装前の細かい修正作業を残してひとまず完成となります。今後、今回掲載した写真で気付いた部分等を修正し、季節の良くなった頃に塗装したいと考えております。よく「アイデアは一晩寝かせ」ということが言われます。これは少なくとも私の今までの経験の中では100%正解です。同様のことは今回のキット加工にも言えることで、製作した部位を時間をおいて改めて眺めると形状のエラー、部品の歪み等に気づくことがあります。今後、塗装まではこのチェックを続け、修正を重ねていきたいと考えています。
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欧州の鉄道模型(HOゲージ)の小径カーブ通過対策の実例

前回の記事で、ひかり模型のキットを組み立てたEF58を紹介させていただきましたが、記事にあるようにその試運転は手持ちのエンドウ製ニューシステム線路の半径805㎜のカーブで実施しました。その後、KATOのWeb Siteをチェックしたところ、KATO製のEF58の通過可能なカーブは半径550㎜であることがわかりました。私のように長年(TMS主筆の山﨑喜陽氏ご存命の時代から)鉄道模型で楽しんでおり、氏が雑誌の中で頻繁に述べておられたおられた”鉄道模型は走らなくては意味がない”という言葉に接していた者にとっては、もし私の製作したEF58が通過可能である最小カーブ半径が805㎜であったらちょっと寂しい感じがしたのも事実です(本当にこれで走る鉄道模型と言えるのかという感覚です)。そのような折、ふと以前に欧州Roco社のRoco Lineというレールを購入したことを思い出し、久しぶりに取り出してみると、そのカーブはR6というサイズのカーブで、半径が604.4㎜でした。以前から半径600㎜は大型機の通過可能カーブ半径の基準となっていたと思います。そこでこの線路上でこのEF58を運転してみたたところ、なんとか無事に通過できることがわかりました。今回用いたひかり模型のEF58キットは珊瑚模型店製のF級電気機関車用の動力装置の使用が指定されていましたのでこの指定の動力装置を使用すれば当然半径600㎜はクリアーできる設計にはなっていたとは思うのですが、このEF58は歌川模型製のUギヤーと縦型モーター(KTM D V18C)を使用しており、その検討の際、特に通過可能な最小カーブを意識して検討していなかった(最初に製作した時も上記のR805を通過したのでよしとしてしまった)ので、結果オーライではありますが、大袈裟にいうとこれでようやくこのE F58も鉄道模型の仲間入りを果たせたかなと思った次第です。

半径604㎜のカーブ上のEF58

上述のように最初に製作した時にあまり気にならなかった通過可能なカーブ半径が今回気になったのはその間に私が欧州製の鉄道模型を走らせて楽しむ様にになったからかもわかりまん。今回使用使用したRoco社の線路(発売当初はRoco Lineと称していましたが今はその名称は使用されていないようです)は現在R2からR10 までの半径が用意されているようで、その中ではR6は比較的大きな半径です。ちなみにR2は358.0㎜、R4は481.2㎜、R10は888㎜です。また私が最近運転を楽しんでいるMärklin社の一般的なレール(C Track)は最小カーブの半径R1が360㎜、最大カーブがR5の643.6㎜で、それ以上大きなカーブはラインナップされておりません。ちなみにMøarklin社の製品はほとんどの車両がMarklin社の規定するR1(半径360㎜)カーブを通過できます。一方、Roco社の大型蒸気BR01の最小通過可能カーブはR3の419㎜です。また日本の天賞堂製のダイキャスト製D51、EF58の最小通過可能なカーブ半径は550㎜のようです。ちなみに 日本では他社製の模型も含めて数十万円する真鍮製のモデルには最小通過カーブ半径の記載はあまりありませんし、雑誌の製品の紹介欄にもあまり記載されていません。プラ製の蒸気機関車でもWEB SITEを少し見ただけでは通過できるカーブの最小半径がわからない製品もあります。レイアウト上での運転を前提とする鉄道模型であれば、最小通過カーブ半径はそのモデルをレイアウトに入線させるか否か(購入するか否か)を判断する最重要スペックだと思うのですが、このことは日本のHOゲージが運転を重視していないことの表れでもあると感じ、少し寂しく思います。欧米では模型の車両限界が照準で規定されていますが日本ではそれも明確ではありません。
小さなカーブを通過する大型機を実感的ではないと感ずる方は多く、私もその一人であった様な気がします。下の写真はR805とR604カーブを通過するEF58ですが、車体と台枠位置(つかみ棒の位置)たがかなりずれているのがわかります。ただ、この程度はやむを得ないものと割り切る必要がありますし、実際に走っている姿を見ればあまり気になりません。

カーブ上のEF58 (R604)
カーブ上のEF58 (R805)

レイアウトを設計する場合には運転位置からはなるべくカーブの外側が見えないようにトンネル、地形、建造物等を配置することができますし、何より有益なのはStaging Yard(隠しヤード)のスペースが小さくて済むことです。この様な目に見えない場所では安定した走行さえできれば使用するカーブ半径は問われません。ただ、Staging Yardやトンネルは、車両へのアクセスのしにくい場所に設けられますので、ただ通過できるというレベルではなく、脱線やカプラーに自然解放がないよう、設置された線路の線路状態のばらつきも考慮した上でのカーブでの安定的な走行が必須になります。
レイアウトプランの中で小カーブを使う効用と日本型モデルがどの程度のカーブを通過できるかという記事は過去のTMSに故・水野良太郎氏がイラストを交えて紹介していた記事があったように記憶しています。そこで今回は、少し視点を変えて、最近の欧州製の車両がどのような機構で小カーブを通過できるかということを私の手元にある車両で紹介してみたいと思います。
まずは蒸気機関車です。日本の蒸気機関車はC型機とD型機が殆どで、E型の大型機はE10と4100程度であるのに対し、欧州では大型のE型機は結構多くの機種がありますし、日本のC62の動輪より大きい直径の動輪素備えるD型機もあります。その中で、手元にあるE型機は下記のBR50とBR85ですが、まずBR85の小径カーブ通過対策を紹介してみたいと思います。

Märklin製のBR50 (#36840)
Märklin製のBR85 (#37097)

このうちBR85を裏返してみると下記の写真のように動輪は前3軸を支持する台枠と後2軸に分割され、ピンで結ばれています。そして各動輪はロッドではなくギアで駆動されています。そして動輪の回転方向を揃えるためのアイドラーギアが動輪間に存在しています。その中で、関節のある第3動輪と第4動輪の間のアイドラーギアは後ろ側の台枠の二つの動輪の中心を結ぶ線上に位置しその軸の両側にギアが取り付けられており、そこで動輪軸のギアが反対側に移ります。そしてカーブの通過に伴って第3動輪、第4動輪のギアと後ろの第枠に取り付けられたアイドラギアの間の軸間距離と当たり角度が微妙に変化します。

BR85の下回り. フレームが2分割されピンでつながれています.

この際、カーブ通過に伴い第3動輪と第4動輪の軸間距離も変化しますが、その変化はサイドロッドのクランクピンに嵌まる穴を長穴にすることにより吸収しています。ギアの軸間距離や軸の並行度の変化を許容し、サイドロッドのクランクピンには丸穴を長穴にする等、日本型の模型の設計に比較すると結構大胆な設計となっていますが、通常の運転には支障なく、またカーブ通過時に走行音が変化することもありません。そして、この構造はテンダー機であるBR50でも同一の設計となっています。

サイドロッドに開けられた穴は軸間距離の変化を吸収するために長穴となっています.

このように、欧州の模型では曲線通過性能向上のための大胆な設計となっています。この実例は Märklin車の製品の例ですが、Roco社のモデルもE型機は台枠の関節構造を採用していると思われます。ちなみにRoco社のBR50が通過可能な最小カーブはカタログでは半径358㎜となっていますが、関節構造の台枠を使用していないと思われるC型のBR01の通過可能な最小曲線半径はは419㎜です。
一方、下記の写真はD型のBR39です。この機関車は旧プロイセン王国鉄道のP10で、日本のC62等と同じ直径!,750㎜の動輪をもつD型機です。よって当然日本のC62より固定軸距歯長くなっていますが、この機関車も半径360㎜のカーブを通過することが可能です。こちらの機関車の台枠には関節はなく一体構造ですのでてこの機関車の固定軸距はE型よりも長くなっています。このモデルの最小通過可能曲線半径も360㎜ですが、上記のRoco車の例からもわかるように、欧州の蒸気機関車の模型で一番カーブ通過が厳しいのは固定台枠のD型機ではないかと思われます。

Märklin製のBR39 (#39395)

このBR39のカーブ通過対策は動輪の横動で行っています。第1、第4動輪はほぼ横動がありません(横動の量は日本の模型と同レベル)が、第2、第3動輪にはかなりの横動が与えられています。その写真が下の写真で、接地面を左右変えて動輪位置を撮影すると、その量が大きいところがわかります。また、上下を変えると動輪はほぼ動輪の自重で変位します(クランクピンとロッド穴の抵抗により異動しない場合もありますが少し手で押せばすぐに変位します)。

D型機の第2動輪と第3動輪にはかなり大きな横動量が与えられています.
横動する際の抵抗はほとんどありません. 上下逆にすると動輪ほぼ自重で移動します.

また、第2動輪と第3動輪は上下にも変異しますが、この上下左右の動輪の変異に対応するために第2動輪と第3動輪のクランクピンとサイドロッドの穴の隙間はかなり大きくなっています。これは第1、第4動輪も同様です。またサイドロッドは一体(一個の部品)で全ての動輪を繋いでいます。我々が通常製作する模型の構造でははサイドロッドの長さ、左右の動輪の位相が少しでもズレると走行性能に大きな影響が出てしまいますが、この構造であればその影響はあまりないと思われます(だからと言って部品の精度を落としているとは思えませんが)。

全ての動輪は1枚のサイドロッドで結ばれており, クランクピントはルーズな嵌合となっています.
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鉄道趣味を50年続けて思うこと(4):鉄道と音楽

前回のデジタル制御に関する記事の中で、映像に挿入される音楽について少し触れましたが、今回は映像に挿入される音楽以外も含め、鉄道と音楽について感ずることを記載してみたいと思います。とは言っても私は根っからの『理系人間』であり、音楽(音楽史)等を学校以外で学んだことはほとんどありません。ただ、子供の頃から家の中には音楽が流れていることが多かったため、子供の頃から比較的音楽は身近な存在であり、学生時代から音楽はよく聴いていました。当時から音楽のジャンルは問わず、なんでも聴いていたように思いますが、最近は歳のせいかクラシック音楽を聴く機会が増えたような気がします。
最近日本では鉄道開通150年が話題となりましたが、クラシック音楽の本場?である欧州大陸のドイツに鉄道が開通したのが1835年ですのでもうすぐ開通190年となります。私が学生時代の1985年がドイツの鉄道150年で、その時現地では保存されている歴代車両(レプリカ含む)のパレードが行われ、日本でも結構話題になりました。日本でも鉄道150年のイベントは各所で行われましたが、日本ではそのような保存車による大きなイベントができるような環境は全くなく、少し残念に感じたものです。それはさておき、ドイツで鉄道開通した1935年、流石にバッハやベートーベンはいませんでしたがシューマン、ブラームス、リスト等の作曲家の生きた時代には鉄道は確実にあったことになります。このように考えると一口にクラシック音楽と言ってもそれが制作された時代は長期にわたっており、現在我々が親しんでいる楽曲の中にも鉄道開通後に創作されたものが多くあるということがわかります。Wikipediaによればシューマン(ロベルト)の活動期間は〜1856年、ブラームスは〜1897年、リストは〜1886年である一方、ドイツでは1855年には鉄道営業キロが8,000kmに達していたようですので、この時代の作曲家と鉄道の接点は確実にあり、彼らは演奏旅行等で鉄道も利用したのではないかと思われます。下の写真は1863年から1871年にかけて製造されたthe Bavarian State RailwaysのClass B VIと1880年から1895年頃の客貨車のMärklin製のモデル(337975+#43985)ですが、彼らもこのような列車に乗車したり、眺めていたのでしょうか。ちなみにMärklin社が鉄道模型を最初に製造したのは1891年、Oゲージモデルの製造が1895年とのことですので、ブラームスの活動期間の最後の頃になるようです。

the Bavarian State RailwaysのClass B VIが牽引する1890年ごろの客車. 機関車はC型機のように見えますが先頭の車輪は従輪で、実はB型機です.

ただ、私の知る限りこの時代の音楽の中に鉄道がモチーフになったと思われるものはありません。1941年生まれで鉄道好きであったと言われるドボルザークにも鉄道をテーマにした作品は無いと思われます。、当時。鉄道の出現と普及は人々の生活に大きな影響を与えたと思われますが、鉄道は創作のテーマにはならなかったようです。クラシックのジャンルで鉄道をモチーフとした作品として有名な楽曲としてはフランスの作曲家アルヂュール・オネゲルが作品した交響詩、”Pacific231” がありますが、この楽曲は1923年の作品です。当時鉄道はかなり普及している時代で、日本ではオハ31の前身である木造車体のナハ22000が製造されていた時代です。これは私の全くの想像ですが、上記の作曲家に対してオネゲルは1912年生まれですので、子供の頃から鉄道に親しんで育ったと考えられます。今でも大人の鉄道マニアは子供の頃に鉄道模型で遊んでいた方が多いと聞きます。最近よく話題になるDigital Nativeではありませんが、オネゲルはそれに準えてうとRailway Nativeの世代です。鉄道をテーマとしたクラシック音楽の出現はRailway Nativeの時代まで待たなければならなかったのでしょうか。とは言ってもその後のクラシック音楽で鉄道を連想させるものは私の知る限りあまりありません。蒸機のドラフト音やレールジョイントの単調で連続的なリズムはクラシック音楽のテーマとしては単調すぎてはそこからの展開がしにくいのでしょうか。
一方、JAZZの世界では鉄道が出てくる楽曲は多数あり、実際の列車名(愛称)を題名としたチャタヌガ・チュー・チュー(Chattanooga Choo Choo)や実際の鉄道会社名がそのまま題名となったアッチソン・トピカ・サンタフェ(Atchison, Topeka and Santa Fe)等があります。これらはいずれも映画に使用されたもので、歌詞の中にも鉄道の具体的な描写が出てきますし、リズムや音階(メロディー)も蒸気機関車を連想させます。当時の鉄道駅は人々の生活の舞台の中心であり、また遠い地への憧れを象徴するものとして映画との親和性は高かったのかもわかりません。また米国の機関車の汽笛にはどこか哀愁を帯びた雰囲気があり、音楽に取り入れやすかったのかもわかりません。一方、映画とは直接関係のないJAZZのスタンダードナンバー、”A列車で行こう” はNYの地下鉄がテーマの楽曲です(”A” TrainはNY地下鉄のA系統という意味だそうです)が、イントロ部分でなんとなく蒸気機関車の汽笛を連想させるようなメロディが出てくるような気がします。また、鉄道を舞台とした映画の音楽としては ”オリエント急行殺人事件” の映画音楽があります。私が鉄道に興味を持った以降も2回映画化されており、1974年に製作されたSidney Lumet監督の作品と2017年に製作されたSir Kenneth Branagh監督の作品があります。この2作品のテーマ音楽と言えるものを聴き比べてみると、前者がワゴンリ客車の優雅さとその中で起こる事件の緊迫感を表現した(走る列車をイメージしたものではない)音楽であるのに対し、後者は疾走する列車をイメージした音楽となっています。どちらの映画も流石に原作に対して大きく異なる脚色はされていませんが、同じオリエント急行を表現した音楽として映像と共にこの音楽表現の差を楽しむのも面白いかもわかりません。日本でも鉄道をテーマにした作品は多くあり、鉄道をテーマとした映画も多数ありますが、いずれも邦楽です。ただ、鉄道が発する音をモチーフにしたメロディ(リズム)は童謡以外にはあまり思い浮かびません。日本では鉄道の情景はほとんど歌詞の中に登場するようです。ただ、国鉄のCMソングで山口百恵さんが歌った故・谷村新司さん作詞作曲の国鉄のキャンペーンソング、”いい日旅立ち” の歌詞には鉄道に関するワードは皆無ですし、メロディーも鉄道をイメージさせるものではありません。私の世代ではこの歌を聞くと当時の国鉄のCMが思い浮かびますが、それを知らない世代の人はこの歌をどのようなイメージで聞いているのでしょうか。また今でも時々話題になる狩人の歌った”あずさ2号” も題名以外に鉄道に関するワードは出てきません。あくまでも主題は旅であり、舞台を当時旅行先として若者に人気のあった信州に設定したことから付けられた題名のような気がします。そのような中で、以下に鉄道の情景を歌った邦楽の中で、私が印象に残っている歌詞のついた曲を数曲あげてみたいと思います。
・石川さゆりさんが歌った”津軽海峡冬景色”の冒頭、上野発の夜行列車あ降りた時から・・という下りからは青函連絡船廃止前の青森駅から青森桟橋に至る情景を彷彿とさせます。しかし実際は列車が到着するとホームから桟橋に向かう通路は20分後に出港する連絡船の自由席の良い席(場所)を確保しようと小走りで移動するする乗客でごった返し、海鳴りを聞く暇はなかったような気がします。ただ、そのような状況を実体験している者でも歌詞を聞くと海鳴りがする中黙々と桟橋に向かっていく乗客の姿が目の前に浮かんできます。作詞は阿久悠さんですが、曲のイメージに合わせた言葉の選び方に、一流の作詞家さんの素晴らしさを感じます。余談ですが、この歌がヒットした後、銀座にある某有名模型店に石川さゆりさんがいたという話を何人かの知人から聞きましたが、真偽のほどは不明です。


・以前も紹介したと思いますが、矢野顕子さんが歌っている”Night Train Home”という歌は東北本線の583系寝台特急の中の情景が歌われています。作詞は鉄道ファンで有名なくるりの岸田繁さんと矢野顕子さんの共作です。当時高校生の矢野顕子さんは青森の実家から単身状況し東京で一人暮らしをしていた(阿部譲治さんの家に下宿していた?)ようで、その時に利用した寝台特急の体験と岸田繁さんのマニアックな知識が歌詞に織り込まれています。歌詞の中ではDT32台車、MT54主電動機、C2000コンプレッサが歌われると共に、黒磯のデッドセクションで一度機器が停止した後に交流区間に入り、交流関係の機器が動作し始める音(整流器からのノイズ)の情景、朝、車端にある洗面所とトイレが大混雑になる様子等が描かれます。東北方面の夜行寝台は私も鉄道撮影旅行等でよく利用しましたが、この歌を聞くと当時の列車内の情景が目に浮かびます。この歌は矢野顕子さんのピアノによる弾き語りバージョンと故・レイハラカミ氏がバックを務めたバージョンがありますが後者の電子音楽は疾走する寝台特急電車(客車のイメージではない)を彷彿とさせるものです。また、冒頭の歌詞 ”小窓の外 終わる世界に雪が降ってくる 大人のようにカーテンの中 夢を広げてる” というフレーズも、東北出身で寝台車を利用したことがある方にはよくわかるイメージなのではないでしょうか。私はCDがリリースされる前にコンサートでこの曲を聞きましたが、聞いた時には結構驚いた記憶があります。


・ もう一つ、鉄道に関わる情景を描いた表現が印象的な歌として、さだまさしさんが作詞・作曲して歌った ”檸檬” という歌があります。この歌は梶井基次郎氏の小説「檸檬」をモチーフにしたもので、この歌詞の中には御茶ノ水駅横の聖橋からレモンを神田川に投げるシーンが描かれるのですが、その歌詞 “快速電車の赤い色がそれ(れもん)を噛み砕く”という歌詞と “各駅停車の檸檬色がそれとすれ違う” という歌詞が印象的です。聖橋は私もよく通り、ある意味見慣れた風景で、橋の上から御茶ノ水駅を発着する列車の写真も撮ったことがありますが、上記の ”津軽海峡冬景色” を含め、何気ない日常の風景からこのような言葉を生み出すことができるアーティストの才能は、理系の私には、ただただ尊敬あるのみです。

御茶ノ水橋の上から見た聖橋と中央線快速電車


・ 最後に森山良子さんが歌った “中央線あたり” という曲を紹介したいと思います。この曲は松本隆さんが作詞したいわば70年代の青春ソング(作曲は森田公一さん)で、テーマは前述の「あずさ2号」と似たものなのですが、歌詞の中に新宿から中央線で松本方面に向かう列車から見た中央線国電区間の情景が描かれています。中央線沿線に住む私にとってはある意味見慣れていた風景なのですが、改めて歌の歌詞として聞くと当時の風景が頭の中に蘇ります。また、この曲の最後には実物の列車の音が挿入されているのですが、多分実際の101系の走行音と思われ、上記のMT54主電動機とは異なるMT46主電動機の軽快な回転音を聞くことができます。

”中央線あたり”が収録されているアルバム”日付のないカレンダー

以上、今まで私が聞いた鉄道に関連のある音楽で印象に残っているものを紹介してみました。これらの音楽は歌詞やメロディを聴くだけで目の前に実際に鉄道風景が思い浮かびます。歌は鉄道に関する具体的な情景や想いを歌詞という短い言葉やメロディーに再構築することにより、実物を実際に見た時以上にそれを見た時の心情も含めたイメージを聞き手の中に構築します。一方鉄道模型で最密化により実物世界の再現を目指すことは、このような創作とはの対極にあるようにも感じます。その意味では実感的な模型を製作するためには模型を作るためには実物を観察する時の感性とそれを模型に落とし込む構想力も磨かなくてはならないのかもわかりません。なお、ここに挙げた楽曲は全て音楽配信サイトで視聴が可能ですのでよろしければ聞いてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。