<外観上の改善点> 前作からの改善点は以下の2点です. ① 客用ドア部 鋼製車体の窓周囲のテーパーの表現については前回製作した車体でも留意しましたがドア部分は断面形状に特に留意せずドアの外径を切り抜いた部分にただ裏からドアを貼り付けるだけでした.しかし今回完成した車体を見ると車体表面とドアの段差が少ない気がします.実車はドアの面は窓ガラスの面より奥にありますが,窓ガラスをはめ込み式としない自作車体ではペーパー車体でも真鍮製車体でも窓ガラス表面とドア表面は同一面となります.
② ”おでこ”の形状 下の写真は最初に製作したキハ25とキハ26の写真です.影の具合から側面から見た時の”おでこ”の形状がキハ25はキハ26に比較して”なで肩”になっているのがわかるかと思います.実車のこの部分のRは小さく,電車のようにRの後方が前面に向かって傾斜していませんので斜め上方から光が当たると影になる部分が比較的大きくなります.
1.バイス(万力)・・・あて木を挟んで固定するための使用します.バイスには糸色なタイプがありますが私はヤンキーバイス(ボール盤バイス)を使用しています.ちなみにヤンキーバイスの「ヤンキー」の由来は最初にこのタイプを製造した会社名にあるようです.日本では「不良」という意味にも使われますがこれは日本のみの言い方で,英語にはこのような意味はなく完全な和製英語のようです.New York Yankeesは不良集団ではありません. 2.Cクランプ・・・あて木を挟むために使用します.サイズは当て木が挟めれば使用可能です.私は車体の目げ時には穴あけ時のワーク固定用のものから工作台固定用のものまで手持ちのCクランプを総動員します.なお,私が使用しているヤンキーバイスは台への固定機能がないため,バイスを固定するための大型のものも使用しています. 3.あて木・・・曲げの際に真鍮版を全長にわたって固定したり曲げたりするために使用します.私は厚さ12㎜,高さ30㎜,長さ約300㎜の杉角材3本を使用しています.角材の幅は側板の長さ以上あったほうが良いと思います.長手方向の剛性も必要ですが0.3㎜の真鍮版であればCクランプを併用していることもあり厚さ12㎜でも剛性不足は感じませんでした.3本のうち1本は一稜を屋根Rに合わせて整形しますので,屋根Rの異なる車輌を曲げる際にはそれぞれ別のあて木(ただしあて木の4辺を利用すれば4種のRが可能)が必要です. その他寸法測定用のスケール,板金固定用のテープ(マスキングテープ)を使用します.
1. あて木の成形 まずあて木を屋根のRに合わせて成形する際のあて木の稜線につけるRの半径を決める作業をを行います.非常に重要な作業であるにも関わらず話が前後してしまい恐縮ですが,この作業は最初に行う罫書き前の段階で屋根の展開寸法を決める段階で行ないます.(2)の罫書きの紹介記事の中で,罫書きの前に屋根の展開寸法を求めるために車体断面(妻板)形状をした板に実際に曲げた板を当てて屋根の展開寸法を含めた車体板の幅を算出することを記載しましたが,あて木につけるRの寸法はこの時点で決定します.今回製作するのはキハ20形気動車で,必要なのは屋根の肩部のRの数値なのですが,私はどうしても屋根の断面寸法が記載されている図面を入手することができず,バラキットを組み立てたキハ22(フェニックス模型店製)や手元にあったキハ20系用と称するのぞみ工房製の木製屋根板木製の屋根板の実測等から車体完成時の屋根の肩部のRは4㎜としました.完成時の肩Rの寸法が決定したら実際に真鍮版を曲げてあて木の綾につけるRの寸法を決めますが,これはTry and Errorの作業となります.写真の曲げサンプルは最終的に屋根の展開寸法を決めるために用いたものですが,実際にはこの曲げサンプルを作る前に,何度かあて木のRを変えて真鍮版の切れ端を曲げてテストしています.この作業の際のはあて木は短いものでよく真鍮版も幅10㎜程度,長さ20−30㎜の残材のようなもので十分です.ただし使用する板の圧延方向は実際の車体板の圧延方向と合わせておいた方が良いと思います.圧延方向は板の表面を細かく観察すれば大体わかりますが,もしわからなければ実際に使用する車体板と同じ板から曲げ方向が同じになるように曲げサンプルを採取するのが良いと思います.なお,詳しい理屈は割愛しますがあて木に設定するRは付けたいRから板厚を引いた値よりよりやや小さいRが適正のようです.適正Rを求めるためには大きめのRから小さいRへとあて木を削りながら行えばそれほど時間のかかる作業ではありません.この作業を経て製作した部品が(1)に掲載した下の写真のサンプルです.
私が当時製作した蒸機を一部を除き特定ナンバーにしなかったのはいかにもありそうな機関区の風景を再現して見たかったからです。晩年の蒸気機関車に形態は各地域ごとにバラエティに富んでおりましたが、その中には形態や装備に特徴(美しさ)がある「有名機」というものが存在しました。そしてそれらは鉄道雑誌等でよく話題となっており、模型のプロトタイプにもなっていました。ただ当時、それらが配置されていた機関区には当然「普通」の機体も稼働していたわけで、各地の有名機を製作し、レイアウトセクション上に集めてもそれは機関区の日常風景を再現したレイアウトセクションとはならず、単なる車両展示台になってしまいます。私が一部(C62)を除き、特定ナンバーではない機体を、異なる形式間でもある程度共通な装備(特徴)を持つ北海道仕様で製作してきたのは、私がレイアウトセクションで目指すのはは展示台ではなく、機関車が働くいかにもありそうな日常風景をその機関区がある地域のイメージも含めて再現したいという思いがあったからです。 その後私が車両製作から離れて外国型レイアウト製作に転向した経緯は”When is your realism level good enough?:車両製作から外国型Zゲージレイアウト製作の決断まで”に記載したとおりです。そして、その中でZゲージレイアウトのがほぼ完成した時、今まで慣れ親しんだサイズのレイアウトを製作して外国型の車両を走らせてみたいと思い、制作したレイアウトセクションが以前このブログで紹介した”ALTENHOF機関区”です。そして、そのテーマとして実際に訪れたことのない外国の機関区セクションを製作しようと決めた背景はやはり、上記の”蒸気機関車のいる周辺”の影響が大きかったと思います。その構想の中で、Zゲージレイアウトで運転中のリバース区間のスイッチ切り替えや複数列車の制御のためのキャブの切り替えの為のスイッチ操作が思ったより煩わしい作業だと感じていた私は、HOゲージの機関区セクション製作の際、”蒸気機関車のいる周辺”では機関車の留置等で2m足らずのセクションに15箇所のギャップが切ってあるという記事を読み、デジタル制御であれば配線も簡単で自由度の高い運転ができると考え、デジタル制御を採用することとし製作を開始しました。そして完成したレイアウトで機関車の運転を楽しんでおりました。
前置きが長くなりましたが、以下、写真で加工内容を説明します。 4-2 公式側の配管 キャブからコンプレッサに至る部分のランボード下方には以下の配管を取り付けてあります。 a. キャブ(蒸気分配箱)から調圧機を経てコンプレッサに至る配管 b. 調圧機に接続される高圧頭作用管及び低圧頭作用管 c. 元空気溜め管(途中に締切コックを取付) e. ブレーキシリンダー管 f. ドロダメから火室ノド板留弁に至る配管 また、北海道の蒸機に特徴的にみられるテンダ水温め管をランボードに沿って配管しています。この配管はコンプレッサの前方でコンプレッサ排気管と3方コックで接続され、キャブ下を通りテンダに向かいます。コックはロスト製の締切コックを使用しましたが、もう少し大型のパーツにするべきでした。また、速度系ロッドを追加してあります。 キャブ下に取り付けたのは以下の配管です g. 元空気ダメ管から空気分配弁に至る配管 h. 列車ブレーキ管からうず巻きチリ取りを経由し空気分配弁に至る配管 i.キャブから空気分配弁に配管される作用管 これらは奥側から手前側に、取付手順をよく考えながら取り付けていく必要があります。なお、前述のように空気分配弁を従台車との干渉を避けるため実機よりも上方に取り付けましたので分配弁上方のスペースに余裕がないため配管は実物通りには接続されていません。また今までの作品では取り付けていた無動力改装装置も省略しています。速度計ロッドは0.3㎜の真鍮線でキャブ側と動輪側の本体部(ギアボックス等)は帯板、真鍮線、輪切りにした真鍮棒から自作しています。
加工の終了した公式側キャブ周辺. 空気分配弁は実機より上方に取付.
4-3 非公式側の配管 非公式側のキャブから給水ポンプに至る部分のランボード下方には以下の配管を取り付けてあります。なお、キットに付属していた.2子3方コックは長さの短いタイプでしたが、配管が従台車を避けるため実機より上方に配置されるため、バランスを考慮して長いタイプに交換してあります。 a. 給水ポンプに接続される蒸気管と排気管 b. 給水ポンプから消火栓を介して給水温め機に至る配管(ロストワックスパーツ) c. 給水ポンプからチリコシを介してテンダーに至る配管(布巻管) d. 2子3方コックから前方に向かうレール水撒管及びタイヤ水撒管 e.2子3方コックから水撒インジェクターに至る配管及び水撒インジェクター蒸気管 f. 水撒インジェクターから下方に向かう排水管 g. キャブからの注水機溢れ管 h. キャブからの排水管 i. キャブから給水ポンプ方向に向かう作用管2本 この中で実機の排水管はキャブからほぼ真下の方向に向かうものがありますが、今回は従台車との干渉を避けるため後方に曲げて配管してあります。この部分の布巻管は以前発売されていた福原金属製の布巻き管を使用しています。真鍮線に薄板が巻き付けてあるもので、実感的ではありますが、曲げの部分で巻いてある板がずれて巻き乱れが生じますのでをの部分はうまく修正してハンダで固定しておくことが必要です。またランボード下には上方の発電機から伸びてくるドレン管を取り付けてあります。