模型車両の紹介:北海道のC62 その3

前回まで2回にわたりC623を紹介させていただきましたが今回はその相棒、C62 2の紹介をさせていただきます。

私が初めてC62 2を見たのは1979年、梅小路蒸気機関車館でした。当時の梅小路はまだ火の入っている蒸気機関車が複数あり、扇形庫の複数の機関車から煙が上がっていました。

この2号機はこれまで紹介してきたC62 3に引き続いて1986年ごろに製作したものです。2作目であることから前作の経験に基づき各部に改良を施してあります(施したつもり?)。

一目見て2号機とわかるデフレクタのツバメマークにより2号機は一躍有名になりました。模型の世界でも素晴らしい作品が多数発表されています。北海道のC62を製作するにあたり、それらの作品のようなものは到底できないと感じ、最初2号機は避けたのですが、「3号機を作ったらやっぱりコンビは2号機でしょ」という思いが日に日に強くなり、3号機に続いて結局2号機を製作することに決めました。

2号機は人気の号機であるだけにその資料は豊富であり、「蒸気機関車の角度」にも、動態保存機として小樽から梅小路にやってきたC62 2の写真が多数掲載されています。また、前回参考資料として機芸出版社の日本型蒸気機関車の製作を参考にしたと記載しました。この本は内容はほぼほぼ製作記なのですが、巻頭には蒸気機関車の配管についての説明があり、その記事を大変参考にさせていただきました。蒸気機関車の蒸気、空気のパイピングは実物のどことどこが繋がっているかを理解して初めて写真で見えていないところの想像がつくようになり正確なパイピングをすることができます。また、従台車との干渉を避けるために配管の引き回しを変更する場合は、その配管の入口と出口がどこかを知ることにより実物でもあり得る配管にすることが可能です。なお、その記事にも記載されていましたが、当時の(今も?)国鉄の空気ブレーキシステムはWestinghouse社のET-6というシステムをほぼそのまま使用してしています。そしてその配管図(特許の図面)はネットを検索すれば現在でも容易に見ることができ、ブレーキ関連のパイピングの参考にすることができます。

使用したキットは3号機と同じカツミのゴールデンシリーズです。デフはC62 2用のパーツで洋白エッチングのパーツですが、メーカーは忘れてしまいました。位置や形態は実物をよく再現できていると思います。

前頭部の形態はデフレクターのマーク以外はほぼ同じです。3号機と同様、集煙装置はつけておりません。当時の蒸気ファンの間では発煙装置は煙突の形状を損なうものとして嫌われていましたのでその影響もあったかもわかりません。3号機では触れませんでしたが、バルブギアは釣り合いリンクの先端をフォーク状にするなど一部加工してあります。しかしロッドピンのネジ頭はそのままです。前回は自作した逆転記のカバーはロスト製にしましたが今見ると傾いています。このようなことをしているからロストパーツ使用の是非の議論が起こるのかもわかりません。

キャブの窓は実物同様板で塞いでエコーモデル製の旋回窓をつけましたがその前方についているプロテクタは工作力に自信がなく、3号機同様つけませんでした。バタフライスクリーンは自作ですが、3号機よりより実物に近い形で製作しました。一応可動式としてありますが細かい半田付けに大変苦労しました。また前回自作したオイルポンプは今回はロストパーツを使用しました。

2号機で今回新たに表現したものの一つはランボードの継ぎ目です。「蒸気機関車の角度」に掲載されていた写真を参考にランボードに筋を入れてリベットとして真鍮線を植え込んであります。配管はほぼ同じですが、今回はより多くの部分に布巻き感を使用しています。この布巻管は福原金属製のパーツで真鍮線に実際の帯板を巻いて作られている本格的なものですが、配管の曲がる部分の巻の乱れには注意が必要でした(原理的に巻いてある帯板が浮き上がることは避けられません)。Φ0.9,Φ0.6を使用しました。

テンダーはほぼ3号機と同じですが、重油タンクの蓋はロストパーツとしました。テンダーの主灯は前回はキットのヘッドライトの引き物パーツを流用したものにカバーをつけましたが今回はロスト製にしてカ自作のカバーをつけました。床下にはエコーモデルのATS車上子をつけてあり。その配管をしてあります(配管は逆側です)。

駆動系は言うまでもありませんがC62 3と同じDH-13による駆動です。今回の塗装はツヤを消しすぎることなく比較的うまくいきました。煙室の部分はツヤを強めたタミヤカラーで筆塗り塗装をしてあります。またランボードには白線を入れてあります。3号機には白線はありませんが、ロッドの溝には実物ではない黒を入れてあります。なお、車体には塗装後エコーモデルのウエザリングブラックを刷り込んであります。動輪のタイヤ部は塗装していません。現在では製品、作品ともこのような表現をしているものはなく、当時もおかしいのではないかという声もあったような気がします。この作品も今見るとせっかく細部までこだわって作ったのに「なんで?」という気もするのですが、私の年代では当時ショーウインドウに並んでいて毎日のように見ていたとても買えない値段の完成品がそうであったので、その当時憧れていたイメージの影響で思わずそうしてしまったのかもわかりません。

<余談:C62と01>
ちょっとこじつけかもしれませんが、日本のC62といえばよく比較されるのがドイツBR01です。と言っても私はドイツの01は鉄道博物館の動輪しか見たことがありません。両機ともそれぞれ日本、ドイツを代表する特急を牽引する急客機です。そこで私の手元にあるメルクリン製の01とこのC62を比較してみたいと思います。

私が保有している01は、メルクリンCS3を使用した自動運転記事の中に登場するBR01147(Item#:39010)とBR011057(Item#:39103)です。BR011057は2007年、BR01147は2009年に入手した製品です。同じ01でも実物では011057(BR01.10)は3気筒の重油炊き機、01147(BR01)は2気筒機です。

BR011057はデジタル機の比較的初期の製品で、ファンクションはヘッドライト、発煙ON/OFFの外は汽笛、ドラフト音、ランニングギアライトです。現在でもメルクリンのモデルでランニングギアライトが装着されているモデルは比較的少数ですのでレイアウト上で「芸」をさせるための貴重な存在です。モーターは第一世代のC-Sinus-Motorで、音は静かで走りもスムーズです。BR01147ののデコーダーはmfx仕様で給炭音、コンプレッサー音等がON/OFFできます。また火室の赤色LEDを点滅させることもできます。モーターはモーターはC-Sinus-KompaktmotorでC-Sinusモーターの第2世代ですが走行特性は第一世代のモーターに比較して改良されているとは言えないようです。

C62,BR01の長さと全高をネットで調べ、それぞれ1/80,1/87倍すると、両者ともほぼスケール通りに作られていることがわかります。その上で両者を比較してみると、1/80のC62と、1/87のBR01の大きさは遠目に見た感じはほぼ同じで、よく見るとC62の方が心持ち小さいと言う感じです。車体がほぼ同じ大きさである一方、線路幅は1067mmを80で割ると13,3mmになりますのでC62はかなりの「ガニ股」であることがわかります。こうして両者を並べてみると日本の狭軌車両を軌間16,5mmで、しかもレイアウト上で外国のHOスケールとの混在を前提として日本型HOゲージ(16番ゲージ)の縮尺を決めた諸先輩方の苦労がわかるような気がします。

スケールの違う模型を並べて比較するのはこのくらいにして両者のプロフィールを比較すると、01は動輪が大きいためかボイラーが細くみえ精悍な感じがするのに対し、C62は重厚ですが腰高な感じです。特に違うのは従輪(従台車)部の構造で、C62が狭軌車両であるがゆえに火室の位置に制約があったことがよくわかります。また01の先輪・従輪直径が大きいことも高速機であることをイメージさせますが、精悍な印象の中にも下回りの重厚さを感じるのは動輪径や火室の位置とともにドイツと日本の許容軸重の差が印象に現れているのかもわかりません。軸重は日本は幹線で16t,ドイツは20tだそうです。

下の写真は年代は古いですが同じくドイツの勾配線区用の急客機であるBR39(Item#: 39395)と並べた写真です。C62とBR39ほどちらも動輪系径は1750mmで、車体の大きさもほぼ同じです。実車の寸法で比較してもC62の全長/全高が21,475mm/3,980mmであるのに対し、BR39の全長/全高は22890mm/4000mmとほぼ同じ大きさのようです。D型機とC型機の違い、軸重の違いもあり、C62の出力はBR39の約70%ですが、1/80サイズのC62はドイツにあってもおかしくない大きさの機関車であるのかもわかりません。

最後にドイツと日本の蒸機の比較をしてしまいましたが、標準軌と狭軌鉄道の比較ですので優劣は論じられずまた人それぞれ色々な感想があると思います。ただ、今これを書いて思うことなのですが、Märklinは9月13日から開催されるIMA(Internationale Modellbahn Ausstellung)+Märklin Tage2019を大々的に宣伝しています。そしてそのイベントには開催地Göppingenに蒸機に限らずドイツ各地に保存されている色々な車両が集結します。前回はスイスからケネス・ブラナーやジョニー・ディップが出演した映画、オリエント急行殺人事件に登場したSNCFのClass241-Aもやってきたようです。この様なイベント情報を見るにつけわずか7年で消えてしまったC623はもう少しなんとかならなかったか、何かできることはあったのではないかとこの記事を書きながら思ってしまった次第です。

以上でC62重連の紹介記事を終わります。お読みいただきありがとうございました。