給水タンクに続き紹介するのは給砂塔と砂焼き(砂煎り)小屋です。今まで紹介してきたストラクチャー(建物)は基本的に木造建築であり、製作法はペーパー製の車両にも通ずるものがありしたが、給砂塔は塔の部分が鉄骨製でありプラ素材を使用した工作となりますので今までの素材に紙と木を使用した工作とは少し異なった工作になります。以前の記事にも記載したのですが、この給砂塔という設備はこのレイアウトを製作しようと思い立つまでその存在を殆んど意識していませんでした。今回改めてその理由を考えると、思い当たることがありました。かつて60年代から70年代のTMS誌にはレイアウト製作のための参考資料として駅や機関区の設備の実例を写真とともに紹介した記事が多数掲載されておりました。その記事は80年代に”シーナリー・ストラクチャーガイド”等の名称でTMS誌の別冊として出版されており、当時私も熱心に読んでいたのですが、今読み返してみると私が読んでいたそれらの別冊(シーナリィガイド/シーナリィ・ストラクチャーガイド1/レイアウトテクニック)の中に給砂塔の解説記事が掲載されておりません。どうもそれが給砂塔を注目していなかった理由のような気がします。レイアウトの一角に作る機関区ではスペースが限られますので、そのような機関区ではこの給砂設備は省略されることが多かったのかもわかりません。
それはさておき、まずプロトタイプの選定を行いますが、どうも蒸気機関車の活躍末期の給砂塔は標準化されていたようで、両側の線路に給砂するために砂を貯蔵するタンクを櫓の両側に2基備えたタイプと片側に1基備えたタイプの差はあれど、それらの外観は写真で見る限り全国の機関区でほぼ同一のようです。一方、砂焼き(煎り)小屋は各種のタイプがあるようです。最初に給砂塔を製作しますが、図面は入手できなかったため、写真を参考にして数種類のイメージ図を作成しました。実際に製作した形状は右側の図に近い形状です。
まず給砂タンクを載せる櫓を製作します。櫓の主柱材と水平材はEvergreen社製の1.5㎜アングル材、斜材は同じくEvergreen社製の幅0.75㎜、厚さ0.38㎜の帯板を使用しました。塔は下側が広がった形状になっていますが、この広がりは水平材の長さを変えることにより主柱材を湾曲させています。湾曲量はわずかですので湾曲による主柱材のねじれは認められません。なお、下の写真のように水平材の端部は主柱材に合わせて加工してあります。接着にはGSIクレオス社製のプラモデル用接着剤Mr. CEMENT Sを使用しました。余談?ですがこの接着剤に限らず鉄道模型の製作に使用する接着剤、溶剤、塗料等の中には危険な化学物質を含む可能性のある製品があるような気がします。危険。有害な化学物質を含む製品には危険性や取り扱い時の注意等を国連が定める書式で記載したSDS(製品安全シート:Safety Data Sheet)が作成されますが、この接着剤にはSDSが存在します。一般的には生産現場等で日常的に使用する化学薬品等についてSDSが存在する製品についてはその記載内容(危険性)の把握と掲示等での使用者に対する周知徹底が求められます。模型に使用するこのような薬品類は日常的に使用するものではありませんが、自分が使用する製品にどのような危険度があるかを明確に知りたい方は一度その製品のSDSの有無と記載内容をチェックしてみると良いかもわかりません。
主柱材と水平材の組み立てが完了したら斜材を主柱材に接着します。斜材は中央部でクロスし撓みが発生しますが接着時はこの段差は無視して組立てます。
接着剤が固着したら片方の斜材がもう一方の斜材とラップしている部分をカッターナイフで除去します。
片方の斜材のラップ部分を切取り後、交叉部分にプラの小片から製作したガゼットプレートを貼り付けます。これで斜材は完成となります。
上記の作業は2面については平板上での作業が可能ですが、他の2面についてはまず水平材を取り付けて箱上に組み立てた後斜材を取り付けます。その後の斜材の切断作業は組み立てながらの空中作業となりますが、材料の厚さが薄いため歯が薄くよく切れるデザインナイフを使用して切断部に当て板を当てながら切断すれば比較的簡単に斜材の切断は可能です。完成した塔は結構頑丈になります。
砂を貯蔵するタンクはペーパーで製作します。図面から展開寸法を求めて木工用ボンドで組み立てます。
形状に問題ないことを確認したら瞬間接着剤を流し込み補強し、さらにエポキシ系接着剤で補強したのちパテを多振り塗布してサンドペーパーで仕上げます。
タンクが完成したらタンクの支持部材を現物合わせで製作します。タンクの角穴にはきっと余剰パーツのパンタ台M1.2のタップが切ってある角片)をはめ込んで給砂管の取り付け部とします。
タンクの指示部材を櫓に取り付けます。櫓の側面にはハシゴを取り付けます。この梯子は30年近く前に購入したプレス製のパーツ(メーカー不明)で、真鍮線をはんだ付けして櫓の水平材に取り付けています。また、タンクの下部にプラ製の帯材で製作した作業用の台を取り付けました。作業台周囲の手手摺りはφ0.4㎜の洋白線をハンダ付けで組み立てたものを取り付けました。作業台の床はエコーモデル製の細密メッシュを用いています。
給砂塔の支持部材には表面実装型LEDを使用した照明灯を取り付けました。LEDからの配線の一方は真鍮製のハシゴを利用しています。
砂貯蔵タンクの上部には洋白製の手摺りを追加しました。砂補給口部は余剰パーツの付随車用マクラバリと列車無線用アンテナでそれらしく作りました。
給補給用の管はプラ棒を加熱して曲げたものの先端に円盤を接着して製作しました。棒の先端はドリルで座ぐり、穴を表現しています。円盤はプラキットの余剰品です。根本の関節部の部材はプラ板を組立てました。塗装は吹き付け塗装で行いましたが、使用した塗料はタミヤのラッカー系塗料のNATOブラックです。
塗装後組み立てを終了した砂貯蔵タンクです。
櫓に砂貯蔵タンクを取り付けてレイアウト上に置いた給砂塔です。この後細部の仕上げ作業に移ります。
最後に砂補給用の管を上下させる滑車とワイヤーを取り付けて完成です。滑車とブラケットは給水等と同様プラ棒をドリルレースした滑車にプラ板を加工して製作したブラケットを取り付けて製作し、ワイヤーは0.15㎜の燐青銅線を使用しました。
給砂塔が完成したら砂を乾燥させる砂焼き(砂煎り)小屋の製作に移りますが、この小屋については資料が殆んどありませんでしたので写真集やWEB SITEに掲載されている写真を参考にして設計しました。外見は普通の小屋ですが、内部に砂乾燥機(生コンをかき混ぜる機械の下部に熱源を設けたような構造の設備?)があるので妻面に砂を搬入するための扉を設け、屋根に機関庫の煙出しと同構造の上屋根を設けました。下の写真はイメージスケッチです。扉と換気口のほか、実例に倣い壁面の比較的高い位置に横長の窓を設けました。建物の大きさは色々あるようですが、給砂タンク(給砂する場所)は1箇所のみですので小屋のサイズは比較的小さい(最小サイズ?)のものとしました。
構造は前回の記事で紹介した給水塔のポンプ小屋と同一の構造です。
下の写真3枚は屋根上の換気口の制作の過程です。厚さ0.5、幅4㎜の檜材を妻板に接着したスペーサーを挟みながら積層していきます。最初は剛性も弱く、不安定な作業となりますがねじれに注意しながら組み立てを進めていけば最終的には十分な剛性を持った部品が出来上がります。
屋根はトタン張りとして屋根のベースに筋を入れた帯板をラップさせながら貼り付けました。本体、屋根、上屋根は別々の塗装後組み立てました。
組立後、屋根にはプラ製のパイプから製作した煙突と、砂を砂貯蔵タンクに送る給砂管を取り付けます。給砂管は直径1㎜に真鍮線を曲げて製作し、途中に蒸機のディテーリングに使用したロストパーツの残りの管継手を2箇所に取り付けた上で砂貯蔵タンクの上部の穴に差し込んであります。給砂感を写真でみると砂焼き小屋の屋根から出ている例と地面から出ている例があるようですが屋根から出ている給砂管は比較的半径の大きなカーブで滑らかにタンクに接続されている例が多いようなのでそれに倣っています。
これで給砂塔と砂焼き小屋が完成しました。次回は下の写真に見える石炭台とディーゼル燃料補給小屋を紹介します。最後までお読みいただきありがとうございました。