前回まで,レイアウトの基本構想から線路配置を決定するまでの過程について紹介しましたが,これらが終了するといよいよレイアウト各部の構想とそれに基づく詳細設計と製作となります.その第一段階は台枠の設計ですが,下記の3Dデータが今回このレイアウト用に設計した台枠です,今回は以下に台枠をこの形状に決定した経緯と製作の実際を紹介させていただきます.

鉄道模型レイアウトの台枠(レイアウトのベース米国ではbenchwork,欧州ではsubstructureと称することが多いようです)のタイプは色々ありますが,今回の台枠はそのいずれにも該当しません.勝手に名前をつけるなら” 梯子型OPEN TOP”とでもいうべきものでしょうか.今回のレイアウトの線路配置は駅部分とStaging Yard部分が2層構造となっており,その間を結ぶ線路は殆んどが勾配区間ですので天板はOPEN TOP以外に選択の余地はありません.一方線路配置はほぼ確定しており,横梁を動かす可能性も低いため,台枠は横梁を移動可能とするためにレイアウトの下側から固定するLガータ構造とはせず,長手方向の梁と横梁は上側(線路側)から固定しています.また今回のレイアウトは旧作のフラットトップの天板上に設置しますので,台枠は旧作のレイアウトの天板に取り付けたレール上をスライドして横方向に移動可能とし,製作時や完成後のメンテナンス時に台枠を横方向にスライドさせて底面を露出させることにより底面へのアクセスを可能としています(レイアウトの下側からのアクセスが重要な理由は後述します).
レイアウトの台枠のタイプについてはかつて鉄道模型趣味で山崎喜陽氏が解説しておられます.その一例として1970年7月号(通巻265)号のミキストで,氏は台枠のタイプをフラットトップ,格子型,Lガーター,クッキーカッターという4タイプに分類しています.しかしこの分類は今考えるとどうもしっくりきません.本来レイアウトの台枠はレイアウトのベースとして必要な強度を確保するための構造の種類によって分類されるべきものであり天板の有無とは直接関係ありません.天板を設けるか否かは線路の勾配の有無や線路を多層に配置するか等,線路配置によって決定されるべきもので,台枠の強度とは直接の関係はありません(ただ天板は台枠の補強メンバーとなりえます).山崎氏の分類はその部分が混同されているように感じます.またフラットトップは初心者用で格子型は”昔は高級”という説明がされていますが,本来どのタイプを選択するかは大きさや上記線路配置も含めたシーナリーやストラクチャーの構成により選択されるもので特にフラットトップが初心者向けというわけではないと思いますただ,初心者の製作するレイアウトは線路配置が比較的単純で地形もあまり複雑ではないものが多いのでその点ではフラットトップが有利とはなります.
なお米国のModel Railroader誌のレイアウト紹介には”The layout at a glance”と称するレイアウトの概要(仕様)が定型フォーマットで記載されています欄がありますが,その中のBenchworkはについては例えば『OPEN GRID』とか『manufactured truss joists with 1 x 4 L-girders and plywood top』といったように補強の形態と天板タイプが別々に記載されているものが多いようです.

旧作での経験より,今回のようなZゲージのレイアウトの場合,台枠の構造にはZゲージであるが故の考慮すべき点があるような気がします.それははレールクリーニングへの配慮とレイアウトの目隠しされた部分に存在する存在する車両へのアクセス性です.Zゲージの車両はスムーズな運転のためにはレールクリーニングが欠かせませんが,今回のレイアウトののように台枠の中央付近のレイアウト表面や周縁部からアクセスしにくい位置に線路が敷設されている場合,この部分のレールクリーニングを行うためには台枠の下側から線路にアクセスしてレールクリーニングを行う必要があります.また万一運転中の車両が終電不良等により停止してしまった場合は,その停止した編成の動力車(最も重い車両)に直接アクセスして再起動を試みることが必要になります.Zゲージの付随車は非常に軽量のため,例えば機関車牽引列車の一部がトンネルの外に残っている状態で列車が終電不良を起こして停止した場合でも,その列車のトンネルの外にある部分を触って列車を前後に動かそうとするといくら慎重に作業を行なっても重量の軽い車両(付随車)が脱線したり,最悪転覆したりしてその取り出しには非常に手間を要することになります.このようなことからZゲージではたとえ線路の起伏の少ない単純な線路配置でも,トンネル等で目隠しされている線路がレイアウトの周縁部以外に存在する場合には天板は下側から線路や車両にアクセスしやすいオープントップ方式を採用すべきで,下側から線路や車両ににアクセスしにくいフラットトップやクッキーカッター方式は避けるべきと考えます.(前作では台枠の中央付近に敷設された線路は上部からアクセス可能でトンネル内の線路は台枠の周縁部に敷設されていますので天板はクッキーカッター方式としています).
また今回のレイアウトは旧作のフラットトップ(クッキーカッター)方式の天板上にレイアウトを設置するため台枠を天板の上に設置すると台枠の下方から線路にアクセスできません.そこで今回は旧作の天板上にレールを設け,今回製作するレイアウトの台枠全体を横方向にスライドさせることにより台枠下面を露出させレイアウト下側へのアクセス性を確保しました.直接台枠を脚で支持する場合でも,下側のスペースに荷物等を収納してしまうとレイアウトの台枠下側へのアクセス性が悪化しますので,Zゲージレイアウトの場合,台枠は今回のように二重構造としてスライド式にしたり,脚にキャスターを取り付て移動可能とする等,レイアウト下部から線路へのアクセスを容易にしておく方法を考えた方が良いと思います.前述のようにZゲージの場合スムーズな運転にはレールクリーニングが欠かせませんので,レールクリーニングに手間がかかると次第に運転頻度が減ってやがてレイアウトがただのオブジェとなってしまう恐れがあります.
今回製作した台枠の概要(寸法)を下図に示します.使用した部材は主桁と横桁は30㎜角の杉材,前板は幅90㎜,厚さ14㎜の杉材,スライドレールは幅70㎜,厚さ12㎜の杉材を使用しています.30年前に製作したレイアウトの台枠ではほとんどがラワン材を使用しましたが,森林保護のため現在ラワン材は市場には全くありません.この辺りにも時代の変化を感じます.なお,スムーズな引き出しのために台枠のスライドレールに表面には河口技研製の「敷居すべり」を貼り付けてあります.
今回製作した台枠の寸法は以下のとおりです.今回使用した3D CADは「Shapr3D」の無料版(限定アクセス版)です.このCADは結構本格的な3D CADで,かなり複雑な形状のモデルも作成できる機能はあるようですが,無料版の機能は非常に限定されており,加工データの書き出し,各要素の色付け,Annotation機能や加工データの出力はできません.いわば無料版は複雑形状が作成できる3Dモデルのお絵かきソフトのレベルですが,今回やることはただの「お絵描き」ですのでこれでよしとしました.なお,最近のこの手のソフトは買い切りではなくSubscription形式での提供が多いので,趣味で使用するような使用頻度の少ない用途では非常に使いずらい気がします(ちなみにShapr3Dのフルアクセス版は$25/monthです).そのため以下の二次元図面はMacのフリーボードを使用して作成しています.



設計が終了したら製作に進みますが,以下に製作過程を簡単に写真で紹介します,
材料はDIY店で所定の寸法に切断してもらいました.

横梁と長手方向の部材の締結は上側から木ネジで行いました.接着は併用していません.

完成した台枠を線路側から見た写真です.前板でハシゴ状の梁が平行四辺形になるのを防止しています.

台枠の裏面にはレール上を滑らせる際のガイドを取り付けてあります.レールとガイドの間の隙間は広くとって引き出した後片側をレールに載せた状態での回転にある程度対応可能としてあります.

前板にはコントロールパネル用の穴を設けました.組み立て後,前板はニスで塗装しました.

旧作のレール,シーナリー,ストラクチャーを撤去した後,天板状に設置したスライドレールです(敷居すべり取り付け前).

旧レイアウトの天板上に設置したレール上に乗せた台枠です.台枠全体を前に引き出し可能としています.今後手前側には取り外し可能の脚を設けて台枠をほぼ全長にわたって引き出すことを可能にする予定です.

逆方向から見たレール上に載せた台枠です.敷居すべりのおかげで移動はスムーズです.この状態で台枠の水平を水準器で確認します.今回は水平は問題ありませんでしたが必要があればスライドレールの高さでを調整しておきます.

これで台枠の紹介を終わりますが,実は今回のレイアウトでは枠の製作を開始した時点では線路配置は最終決定しており,シーナリー構想の妥当性もほぼ終了しているものの,電気配線等,レイアウト全体に関わるような構想設計はこの段階でまだ終了していません.そのため果たしてこの時点で台枠の製作を開始すべきか否かは結構悩んだのですが,電気配線や線路の支持方法載の設計には台枠の実物があった方が構想がやりやすいのではないかと考えて,台枠までは完成させてしまおうと決断した次第です.したがってこの後すぐに線路を敷設し始めたわけでは訳ではなく各部の構想設計,詳細設計を実施しています.そこで次回はだ台枠制作後線路敷設前までに行った設計について紹介してみたいたいと思います.
今回も最後までお読みいただきありがとうございました.
