以前このブログの”When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level”という記事で紹介したZゲージのレイアウトですが、その最終回に記載したように現在既存の照明のLED化、表面実装形LED(チップLED)を使用した街路灯の追加を行っています。今回その改修中の様子をお目にかけたいと思います。現在は一部の区画で街路灯の設置と建物照明のLED化を終了した状態で、その改修に伴って壊した(壊れた)部分はまだ修復しておらず、街路灯の傾き等の最終的な修正もしていませんが完成までにはまだ時間がかかると思われますので今回は中間報告として、街路灯追加の構想と実際に行った方法について紹介しさせていただきたいと思います。少しでもレイアウト改修の参考になれば幸いです。下は現在のレイアウトの夜景の写真です。街路灯は計画の8割程度を設置した状態です。
1990年台に製作したこのレイアウトの照明にはほとんど12Vの米粒球を使用しています。当時は一部の製品で車両のヘッドライトに黄色のLEDが使用されていましたが、白色や電球色のLEDはまだ市場にはなかったためLEDをレイアウトの照明に使用することはまだあまり行なわれてはいなかったと思います。このレイアウトを作成した当時はZゲージ用としてMärklinから黄色の表面実装形LEDを使用した各種のStreet LampやYard Lampが発売されており、その製品は当時のHOゲージ用の製品よりスケールに近い形態でしたが非常に高価で大量に使用することはできませんでした(現在は絶版となっています)。そのため1.5Vのミクロ球を使用した該当の製作も試みましたがMuarklinの製品ほどではないなせよ電球が高価であるとともにオーバースケールのものしか製作できず、結局レイアウトは建物内部の照明と限られた場所に街灯を設置することしかできませんでした。しかし現在では秋葉原等で各色の表面実装形LEDが1個あたり¥10-¥20で手に入ります。ちなみに現在12Vの米粒球を模型店で購入すると1個¥100程度ですのでそれよりもずっと安価です。そこで今回、このレイアウトの建物内の照明の一部ををLED化して建物内の照明の色調にバラエティを持たせるとともに、市街地を主体に表面実装型LEDを使用した街路等を製作して配置することとしました。
この中で難しいのは街路灯の設置です。完成状態のレイアウトに大量の街路灯を設置することはさほど簡単なことではありません。ざっと設置したい場所を洗い出してみると少なくとも50−60本の街路灯が必要になります。まずはこの街路灯をどのようにして量産するかの検討が必要です。さらにその街路灯が完成した後、市街地に設置したその街路灯への配線方法も検討が必要です。レイアウトベースの裏側には既存の配線がありますのでその配線の合間を縫って電源から各街路灯に至る配線を行うのは容易ではなく、非常に不安定な姿勢での作業を強いられ非常に大変な作業となることが予想されますし、物理的にアクセスができない部分もあります。この2点の解決無くしては最初に計画した街路灯の設置は不可能ですのでまずここから検討を始めました。
<表面実装形LED(チップLED)による街路灯の構想と製作>
前述の”When is your realism level good enough?:Zゲージレイアウトのrealism level”の中でも述べましたが、Zゲージの大きさでは各部は”それらしく”作ることが重要です。手作りによる多少のばらつきは目立たないので大丈夫という割り切りも必要ではないかと思います。下の写真は今回製作した街路灯の外観ですが、まずこの街路灯の製作法を紹介したいと思います。
使用する素材は黄色LED(1608サイズ)、エナメル線(ポリウレタン銅線)、真鍮パイプです。LED(1608サイズ)は外形寸法を表しています(1.6㎜ x 0.8㎜)。パイプは外形0.8㎜・内径0.4㎜のものを使用しています(配線用のエナメル線が通せる内径が必要です)。なお、今回の量産に用いた真鍮パイプは模型店で販売されているものではありません。試作時には模型店等で販売されている模型メーカーのパイプを使用したのですが、約120㎜長のパイプ2本で¥400程度であったと記憶しています。量産時は模型メーカー製ではない製品を使用しましたが、価格は300㎜のパイプが5本入って¥660でした。街路灯1本あたりのコストに換算すると前者は1本あたり約¥40、後者は約¥10でコストには約4倍の開きがあります。レイアウトの製作ではある素材が多量に必要となる場合がありますが、そのようなな場合は模型店で販売されているメーカー以外の素材を使用するとコストを抑えられる場合があることは知っておくべきと思います。購入は難しいものではなくAmazonやヨドバシドットコム等で他の商品と同じ手順で購入可能です。ただサイトに掲載されている商品は多数あり価格もかなりばらついていますので丹念に安値かつ信頼できそうなメーカーの商品を探すことが必要です。それでは以下、制作手順を写真で説明します。非常に細かい作業ですが、慣れてしまえば比較的簡単に制作することができます。
1. 所定長さに切断した真鍮パイプの一端に被服を剥がしたポリウレタン銅線を半田付けします.
半田付けに塩化亜鉛溶液の使用は厳禁で、全て無酸ペーストまたはやに入りハンダを使用します. 私は20Wのコテを使用しています.半田付けの際はパイプの穴を半田で塞がないよう注意が必要です。線には後でLEDを半田付けしますので被覆が確実に剥がれているかを確認することを兼ねて半田メッキをしておくことをお勧めします。ポリウレタン銅線は被覆を剥がさずに半田付け可能と言われていますがこのような細かい作業では確実に被覆を剥がして半田付けすることが必要です。
2. チップLEDの一端にポリエステル銅線を半田付けします。
この時加熱しすぎると破壊しますが手早く行えば壊れることはありません。私は板上に両面テープでLEDを固定して半田付けしています. このポリエステル銅線はパイプに通しますのでパイプとのショートを避けるため被覆はLEDの発光面側ギリギリのところで半田付けします. 写真ではポリエステル銅線を着色して被覆を剥がして銅線がが露出している範囲を確認しながら半田付けしています。
3. 半田付けしたポリエステル銅線をパイプに通し逆側の極を真鍮パイプに半田付けしてある線に固定して整形します.
その後はみ出した線をカットしてひとまず完成です。完成後パイプに通した線とパイプ本体が導通していないことをテスターで確認し、その後余分な線を切断します。
ここれでひとまず完成です。この後パイプにも線材を半田付けしますが、取り付け場所により手順が異なりますのでそこで説明します。
<街路灯の取り付けと配線>
次に上記のように製作した街路灯のレイアウト上への設置と配線について説明します。設置、配線は以下の3パターンで行いました。まず概略図を下に示します。
LEDの点灯には抵抗が必要です。抵抗は原則一つのLEDに対して1個の抵抗が必要ですので電源と接続する際には抵抗の設置スペースが必要です。私はその抵抗を含めた配線をを以下の3パターンで行いました。設置にあたってはベース裏面での作業は極力少なくするようにしています。まず上図1に示すように建物近傍にある街路灯は抵抗を取り付けた基盤を建物内に配置し、街路灯からの線はその建物内に引き込んでいます。まず建物前の歩道の設置されている街路等は歩道の開けた穴に差し込んだ後、パイプにエナメル線を半田付けし、歩道の裏面に彫刻刀で入れた彫り込みの中を通して建物内に引き込んであります。上図2に示す公園・広場等の地面上への設置はパイプにエナメル線を半田付けしたのち地面に開けた穴に差し込み線は地面(プラスター)に彫刻刀で彫り込んだ溝の中を通して近くの建物に引き込んでいます。溝は後で紙粘土やフォリッジで修復することが前提です。3の近くに建物がない歩道の街路灯は1と同様に街路灯を歩道に取り付けるとともに、その歩道の下のベースにに10㎜の穴を開けて配線済みの基盤をその穴の中に落とし込んであります。なお、今のところこの他のパターンが必要なところはありませんがもし出てきたらその時考えたいと思っています。そしてこのような方法を取ることによりレイアウト裏面の作業は各基板からの線を電源に接続する以外の作業を不要にすることができました。実際の例は以下の写真を参照願います。
<抵抗基板の作成>
<パターン1の実例>
<パターン2の実例>
<パターン3の実例>
最後に基盤からの線を電源に接続して完成です。この部分の配線はまだ仮の状態ですが建物照明と街路灯は別回路として個々に制御できるようにしておいた方が良いと思います。
<建物の照明>
最後に簡単に建物内の照明について簡単に紹介します。下の写真が建物のアーケードとショーウインドウに照明を追加した状態です。まずアーケードは電球色の表面実装形LEDをリード線により2個直列とし、アーケード部の天井裏に貼り付けました。ショーウインドウは銅張り基盤を細長くカットし、ショーウインドウ位置の中央部にいスリットを入れてその部分に電球色の表面実装形LEDを取り付けてあります。
以上、現在回収中のレイアウトへの街路灯の追加と建物照明のLED化について説明させていただきました。何かの参考になれば幸いです。最後もでお読みいただき、ありがとうございました。