レイアウトの製作:自動運転を前提としたレイアウトセクションの製作 <11>

しばらく間が空いてしまいましたが、今回は地面の作成と貨物ホームの一部をご紹介させていただきます。前回の駅舎製作後、引き上げ線に設置する貨物ホームの製作を計画し、ドイツの模型店に石垣版等のパーツを発注したのですが、4月初め、模型店を発送直後にCOVID-19の影響でDHLの日本向け貨物が停止てしまい2週間後に模型店に返送されてしまいました。その後、6月初めに取り扱いが再開し、約1.5€/kgのサーチャージを支払って、7月初旬に漸く貨物が到着しました。この2ヶ月間の滞留中に入荷した製品も一緒に送付していただいたので送料は「お得」でしたが、出荷から到着には3週間かかりました(通常は10日から2週間です)。TRACKING情報を見ると現地の税関を通過してから到着までに非常に時間がかかりました。航空便数の少なさが影響していると思われます。実際の輸送時間は12時間程度で、トラックや鉄道の九州や北海道から東京までの時間に比較して短いのですが・・・。ただ、COVID-19下での輸送でも、段ボールの変形や汚れは従来と同じレベルで特に悪化はしていませんでした。今回、この貨物でTELEX COUPLERを装備したBR094も入手しましたので、今後TELEX COUPLERの機能を活かした自動運転もご紹介させていただきたいと思います。

<地面の作成>

まずは地面の作成です。前回はシーナリープラスター等による地面を作成し、土色(茶色)を塗装し、バラストを散布したところまで紹介しましたので、この続きです。

まずは草地等を表現するパウダーを準備します。パウダーはTOMIX製を使用しました。砂利はKATOのユニトラック 用バラストを使用します。左上は水で溶いた木工用ボンドです。パウダーの色調はレイアウト全体の印象を左右しますので重要です。好みもあるとは思いますが、私は明るい色の単色は避けて暗めのミックスタイプを使用するのが良いのではないかと思います。フィルムカメラで鉄道写真を撮影した方であれば経験があると思いますが、フィルムはほぼ同じ状況で撮影しても種類によってコダックのコダクローム、エクタクローム、富士フィルムのベルビア系の発色は全く異なります。それと同様、設置場所の光線状態を考慮し、自分がどのような色調で実物の世界を再現するか(したいか)を明確にして作業の中で常にその状態をチェックことが必要ではないかと思います。この感覚は絵を描く感覚に似ているかもわかりません。とは言っても失敗すればやり直し可能ですのではやってみることが肝心です。ちなみに私は鉄道写真はほとんどをコダクロームで撮影しています。国内でコダクロームが現像不可能になった時点でデジカメに転向しました。私の風景のイメージの目標はいわゆる「コダクロームカラー」です。

左よりライトグリーンミックス、ブラウンミックス、ライトブラウン。上はユニトラック 用バラスト。これらは最初のレイアウト製作の際に使用した20年以上前のものです。

まずは全体にライトブラウンを撒きます。その後、どこにどのパウダーを散布するかを決めて各色のパウダーを散布します。私は駅舎までの道路とホームの線路ぎわを砂利としてまずKATOのバラストを散布しその他の部分はカラーパウダーを散布しました。

左下は草とフォリッジを接着して色調と全体的な雰囲気をチェクしています。

散布は所望の場所に水で溶いた木工用ボンドを塗り、パウダーを散布、乾燥後掃除機で固着されていないパウダーを吸い取るという作業の繰り返しです。

こんな感じに仕上がりました。

散布にはパウダーを入れる容器も重要です。私は東急ハンズで購入した写真のような容器にパウダーを移し、容器を傾けて容器のエッジを叩くことにより散布しています。写真の中でも記載しましたが、このパウダーは今から20年以上まえに購入したもので、使用した容器の密閉性能が良いせいか、今でも全く支障なく使用することができました。同様の方法で他の部分も仕上げます。

<貨物ホームの作成>
次に貨物ホームを製作します。当初、この貨物用引き込み線は計画にはなかったのですが、Märklin Magazine等欧州の雑誌に掲載されているレイアウトプランを見ると、レイアウトのメインとなる殆どの駅には貨物ホームやShuttle Train用に支線のホームが設置されており、そこで支線列車の発着や入れ替え運転が楽しめるというような能書きが記載されています。これらは運転に変化を与えるためには重要と思い、設置を決めた次第です。

設置に当たってはまず全体的な大きさと位置を検討します。実際に上屋も含めてケント紙で大体の形状を作成し、それを用いて大きさ、配置の検討を行いました。外国の客用ホームは日本のホームに比較して高さが低く、このような小型のレイアウトでもその存在を過度に主張しませんが、貨物用のホームは流石に荷物を積み下ろしするため貨車の床面と同じくらいの高さがあり上屋も必要で、車両との関係上縮尺をいじるわけにもいかないので結構目立つ存在です。配置が手前側となることともあり、あまり大きいものを作ると目立ちすぎる懸念があったため、なるべく小さなものとするように心がけました。なお、作成に当たってはMärklin Insider誌 の5/2000等を参考にしました。

まずケント紙で概略形状を作成し大きさを検討します。
上屋も作成して様子を見ます。

形状が決まったら図面を書いて「模型の実物」の制作を始めます。構造は、まず1㎜厚のプラ板でコアを作り、その上にKibri(Viessman)の石垣板を貼り付ける構造です。上述のMärklin Insider の5/2000に記載されている構造と同じです(Märklin Insider の5/2000はコア部がより製作が簡単?なスタイロフォームです)

使用した石垣版はKibri(Viessman)の#34124(Kopfsteinpflaster platte:Cobblestone slab(玉石板?)と#34146(Mauerplatte regelmäsig : Wall plate regularly(規則的な壁板?))です。この2枚のパーツが2ヶ月以上工作が停滞した原因です。ちなみに価格はVAT無しで一枚€2.76でした。その他20年以上前にZゲージのレイアウトを作成した際に使用したKibri#6910の一部を使用しました。当時は新宿、日本橋等の老舗デパートに外国型(主にメルクリン)を扱う模型店があり、これらのパーツもそこで普通に手に入ったのですが、そのような模型店も無くなってしまいました。デパート等、必ずしも普段鉄道模型に関心がない人が数多く行き交う場所に模型店があることで鉄道模型の普及に一役買っていたような気がするのですが・・・。

余談ですが、このようなパーツを購入すると、ほぼすべてのパーツに写真にような注意書きが同梱されています。欧州の厳しい規制(玩具指令)に対応しているためと思われますが、一般的な模型はともかく、数百円のパーツにまで注意書きが同梱されていることに、日本との違いを感じます。また、ピクトグラムに描かれている赤ちゃんの絵を見ると、欧米人の赤ちゃんのイメージは日本のイメージとはちょっと異なります(殆ど玉ねぎです)。日本だったらどのような絵になるのでしょうか。

それはさておき、まずプラ板でコアの部分を作ります。上記のパーツの板厚は1.5㎜ですので、仕上がり寸法から高さ、幅、長さとも外形を1.5㎜小さく作ります。ホームの上側のエッジではエッジの敷石を壁より少し張り出させましたが、ここはパーツの板厚で表現できるのでコアは単純な箱としています。スロープと階段部の切り欠きを設けました。組み立て後板に貼ったサンドペーパーで張り合わせ部の凹凸を平滑にします。

パーツが揃いました。

細長い部材は20年以上前に購入したKibri #6910の端に左の石垣板のような形でついていたパーツです。。

パーツを切り出して貼り付けていきます。側壁は#34146を使用します。

角部はエッジを45度(以上)に面取りして付き合わせます。接着剤である程度溶解しますのでそれほどの精度は必要ありません。

側壁へのパーツの接着が終わったら、上面の加工をします。上面は#34124を使用します。まず長辺の片側に#6910を接着します。#6910は抜き勾配がかなり大きいので#34124と付き合わさる側はカッターナイフで抜き勾配を除去しておきます。#6910が固着したら長辺の反対側の#6910の寸法(端面からの出っ張り量)を考慮しながら#34124の幅を決めて切り出します。パーツの材質はプラ板と材料が異なること、麺が凹凸であることから切り込みを入れて折り取ることはできません。カッターナイフで片面又は両面から刃を入れて分離します。形状によっては糸のこでの切断の方が容易な場合もあります。

本体が完成しました。

続いて階段部分を作成します。階段部分は当初プラ角材でコンクリート製のものを作成しようと思っていたのですが、#6910の本体部の小片が余っていたのでその小片から部品を作成して組み立てました。

これで本体が完成したので塗装をします。塗料はハンブロールカラーです。塗色は側壁が#121(Pale Stone)、上面が#64(Light Gray)、エッジ部が#31(Slate Gray)です。

塗装の乾燥を待ってレイアウト状に配置してみます。タンク車はこの引き込み線には入線しませんが、手持ちの車両の中ではこのタイプの車両のステップが最も車体から張り出しているように見えたので、この車両のステップ部が干渉しない位置で線路との位置関係を見ています。勿論ホームはまだ固定しません。

これでホームは完成です。次回は上屋の作成をご紹介します。