模型車両の紹介:国鉄9600が牽引する北海道の貨物列車

珊瑚模型店のキットを組み立てた9600とその9600が牽引するために製作した貨車をご紹介させていただきます。

この9600は以前ご紹介させていただいたC62 2とC62 3を製作した少し後に製作したものです。C62が北海道の蒸気機関車の花形スターであれば、貨物列車を牽引する北海道の9600はその対極にある地味な機関車と言えるかもわかりません。そのC62の対極にあるとも言える機関車を製作してみようと思い立って製作したのがこの作品です。9600は色々なタイプの機体があり、当時の雑誌等でも北海道の色々なタイプの機体の写真が多数紹介されていましたが今回はあえて特定ナンバー機とはしませんでした。

というのも以前ご紹介したC62を製作中、あるいは製作後になんとなく感じた事は、特定ナンバー機の製作だと最初の構想段階で自分の好みのプロトタイプを構想するという楽しみが味わえないのではないかということでした。特定ナンバー機を製作する場合、どの様な形態のプロトタイプを模型化しようかという構想は何号機を作ろうかと決めるまでで、後は、実物の参考資料を見ながら一生懸命その形態を再現することに注力し、完成した後はいかにその号機の形態を再現できたかがその作品に対する満足度になります。幸運なことに、前回ご紹介したC62は両機共梅小路蒸気機関車館や北海道で実際に走る姿も見ることができた事もあり、このプロセスも大いに楽しめたのですが、その一方、特定ナンバー機という制限を外すと、最初の構想段階で実物のバラエティーに富んだ形態を組み合わせて好みのプロトタイプを決め、それを模型で再現していくという楽しみを味わうことができます。また細かいパイピングも実物の構造と矛盾のない範囲で比較的自由に決めていくことができます。今回、特に実物に色々な形態がある9600の製作に際し、この楽しみを味あわない手はないと考え、プロトタイプはあえて特定ナンバー機とはせず、製作にあたりまずプロトタイプの形態を構想をすることから始めました。これらの形態を決めるにあたっては喜芸出版社発行の蒸気機関車スタイルブック1987年版および国鉄蒸気機関車の角度(小寺康政写真集)、交友社発行の臼井茂信氏著・機関車の系譜図に掲載されたいた写真等を参考にしました。

その構想は次の様に決めて行きました。まず北海道型の特徴を出すということで、フロントデッキはデフを切り詰め、手すりを設けたタイプとしました。全体的なプロポーションは私が最も形態的なバランスが良いと感じた、ランボードは直線でデフのすぐ後ろに複式コンプレッサが配置され、エアータンクはランボード上中央にあるタイプとしました。ヘッドライトは大型の物をつけた機体もありますが、全体的な形状でよりバランスが良いと感じられた小型のタイプとしました。また細かいところでは北海道型を特徴付けるため、発電機の排気管は北海道のC62と同形態のATS用も含めて本体近傍にマフラーがついた排気管が直立しているタイプとし、排気管がキャブの屋根上まで伸びているタイプとはしませんでした。また空気分配弁はC62と同形態の耐寒型とました。テンダーには増炭囲いを設け、テールライトはレンズの大きなタイプを間隔を狭めて配置しましたが、実際にこの様な形態の機体があったかは不明です。なお、主に参考にした写真は19665(1964)及び49660(1971)です。ナンバーは形式番号付きの19604で、キットに付属しているナンバーの中から選びました。それでは以下、私の製作した19604を写真で紹介させていただきます。

使用したキットは珊瑚模型店のキットです。このキットは、1型から4型までの4種のタイプの機体が作れる様配慮されています。私の作成したタイプは組み立て説明書では2型と称されているタイプです。ラベルには通称:キューロクと書かれています。

主台枠は仮組みされていますのでハンダで補強の上組み立てていきます。軸箱の支持方式はカツミのキットの様に軸箱をコイルバネ支持する構造ではなく、イコライザによる支持となっています。ブレーキ装置は別売のロストワックスを主体としたパーツを取り付けてありますが、動輪の上下動を妨げないように組み立てるのに結構苦労しました。9600は他の国鉄機関車と異なり、左側の位相が先行しているので、ラジアスロッドは上に変位した位置が前進位置となります。この逆である理由は色々な資料に記載されていますが、これは当時、設計者の設計ミスを承認者が見逃したためと言われています。その設計者と承認者の名前も特定できているようで、色々な資料に記載されてます。私も長年製品設計に携わり図面の作成や検図、承認作業を行なっておりましたが、失敗が属人的なことであるような形で部外者により語られることには少し違和感を覚えます。上で紹介した機関車の系譜図の中で臼井茂信氏が述べているように、これは個人のミスとして捉えるべきではなく、当時新しい技術を積極的に取り入れて物作りをする活動の中で基本的なところの確認がおろそかになっていたという当時の時代や組織の問題とセットで教訓的に伝えられるべきではないかと思います。

話が脱線したので模型の紹介に戻ります。前述の様にフロントデッキはデフを切り詰めて前の部分に手すりを設けたタイプでこれがこの9600型が北海道型であることを最も特徴付けている部分です。スノウプラウは真鍮板から自作しました。ヘッドライトは小型の150Wタイプです。79618のように庇(つらら切り)がついたタイプとしようと思ったのですが、入手できずキットのものをそのまま使用してあります。

右側面の全景です。前述の様にコンプレッサが前方に配置され、エアータンクはランボード状の中央にあるタイプとして作成しました。北海道型のデフレクタは珊瑚模型店の別売品の標準型の幅を詰めて使用しましたが継ぎ目が目立ってしまいました。また、冷却管の平行度も乱れてしまっています。

発電機の排気管はATS用発電機とともに、本体の側面に配置されているタイプです。雑誌等に載っている色々な写真を見る限り、このタイプの排気管は北海道以外ではあまり見られない様です。パイプの凍結を避けているのでしょうか。

右側面には空気作用管を取り付けてあります。直径0.25㎜の燐青銅線を用いて作成し、色はハンブロールの銅色を塗って表現しました。

右側面のキャブ付近です。空気分配弁はC62と同じ耐寒型です。


空気作用管やエアーコンプレッサーの無い左側面は比較的あっさりした印象です。動輪が小さくランボードも低い位置にありますが左側面には空気作用管や逆転機棒のようなのような横方向に延在するパーツが少ないのでボイラーが大きいことがより目立つ様な気がします。

モーターはキットに付属していたカンモーターです。バックプレートはつけませんでした。


テンダーはキットをほぼそのまま組み立てていますが、標識灯はレンズの大きなタイプとしました。石炭は取り外し可能です。数年前に再塗装をしたのですが、石炭は作成当初のものをそのまま使用してしまいましたので、埃っぽい色になってしまっています。取り外しは可能になっていますので、そのうち修正したいと思っています。

というわけで、形態的にはほぼ満足のいく9600ができたと思っていますが、デフレクタの継ぎ目や冷却管の歪み等基本的な部分の詰めに甘さが出てしまいました。基本部分をしっかり作らなけらばいけないことを痛感した次第です。

引き続いて9600に牽引させる目的でほぼ同時に作成した貨車を数両ご紹介させていただきます。以前製作したC62もそうだったのですが、私は機関車を製作する際、通常は機関車が牽引する客車もほぼ同時に製作しています。C62に牽引させる客車(急行ニセコの編成)もその時作成してあります。それらはいずれご紹介させていただきたいと思いますが、今回はこの9600に牽引させるために製作した貨車を一緒に紹介させていただきたいと思います。


北海道を走る貨物列車を特徴付けるものは何と言っても石炭車と道外禁止のマークです。そこで、まず石炭車2両と道外禁止マークのついたワフ22000をプロトタイプとして選択し、作成しました。またそれに北海道の漁港で積み込んだ魚類を運ぶという想定で冷蔵車を1両加えました。以下それらの貨車を写真で紹介させていただきます。

まずはワフ22000で、これはアダチ製作所のバラキットを組み立てたものです。

道外禁止の表示はアダチ製作所で別売されていたデカールを使用しました。また両エンドにはロストワックス製の標識灯を奮発してとりつけました。唄の文句ではありませんが、ポチッとついた赤い色の標識灯が列車として見た時のの良いアクセントになっていると思います。この感覚は現代の貨物列車では味わうことができません。

床下には蓄電池箱と発電機を追加してあります。車両の表記は付属のデカールではなく、いさみやのインレタを使用しています。車体には旭川鉄道管理局のマークをつけました。台車はキット指定の2段リンクの台車を使用していますが、本当は2段リンクに改造されていない最高速度65km/hの車両に道外禁止のマークがついていたようです。

石炭車はホビーモデルのセキ3000プラキットを2両組み立てました。当時1両¥800程度ではなかったかと思います。

ワフ22000と同じく、道外禁止マークはアダチ製作所のデカール、車両の表記はいさみやのインレタです。台車は日光モデル製に交換しました。

レム5000は2軸の量産された冷蔵車としては最後の形式ではないかと思います。この後同一車体で高速台車を履いたレム9000や、冷凍機を装備したレ90やレ9000は試作されたようですが、いずれも量産には至らず、冷蔵コンテナやリーファーコンテナに置き換わって行きました。車体はアダチ製作所のバラキットをほぼそのまま組み立ててあり、台車もキット指定の台車です。車体は白ですが保冷性能の高い重保冷車を表す青帯を巻いています。従来の冷蔵車の3倍の保冷性能があるそうです。表記は付属のデカールで、形式等は黒いいインレタがなかったためロットリングによる手書きです。

ほぼキットをそのまま組んでありますが、床下にはエコーモデルのブレーキテコセットを追加してあります。

最後に実物の写真を紹介します。下の写真は1981年に北海道で撮影した写真ですが、室蘭ではまだ道外禁止マークをつけたセキ3000、セキ6000等を見ることができました。また、函館本線大沼で撮影した貨物列車にはレム5000が連結されていました。



以上、北海道の9600とその9600が牽引する貨車を紹介させていただきました。最後までお読みいただきありがとうございました。