Z-ゲージレイアウト ”Keiserburg  Stadtbahn II”の製作(2) -シーナリー構想の妥当性確認と勾配設計-

前回は線路配置の検討経緯を紹介しましたが,今回は私が線路配置を最終決定する過程の中で行なったこのレイアウトのシーナリー構想の妥当性の確認方法と,製作開始前に行った勾配設計に誤りがないかの最終的な確認方法について紹介させていただきます.

前回の記事の最後に記載したように,今回のようにレイアウトのスペース全体を使用した比較的複雑な線路配置(経路の複雑さではなくて線路が台枠上に縦横無尽?に敷設されているという意味で)では,線路を地形等を利用してうまく隠さないとジェットコースター的と言われる玩具的なレイアウトになってしまいます.
私が線路配置検討時に大まかに考えていたシーナリーとストラクチャーの構想は以下のようなもので
1)駅後方の線路は全て隠す.
2)駅の左側かから出て再び駅左側に戻る周回線の一部の区間を露出して駅間の風景を表現する..
3)露出させた周回線には湖を渡る鉄橋を設ける 
4)駅手前側を市街地として前作の市街地に設置していたストラクチャーを配置する 
5)駅の奥側を貨物駅としして,そこから右側に伸びた引き込み線の終端部にKibri製のキットを使用した鉱石(砂利)積み込み施設を設ける.
6)右奥の山の中腹に平坦な部分を設け,住宅地として前作で使用していた住宅を配置する.
7)駅から住宅地に向かう道路の線路を渡る陸橋を左上に設けるとともに,左奥側の山により左奥側の駅入口に設けたカーブポイントを運転位置から見えにくくする.
8)手前側の橋梁はMärklin製のトラス橋を新たに購入し,前作の鉄橋は跨道橋および跨道橋から住宅地に至る道路に流用する
というものです.線路配置が概ね決定した段階でソフトから出力した3D画像を利用してこの構想に基づいて作成した大まかなイラストが以下のものになります.

なお,レイアウト作成用のソフトウエアの3D画像は一点透視図法で出力されるものが多いようですが,私はこの図法を使用して立体図を作成した経験がなく,描画の際消失点は全く意識しておりませんのでどことなく違和感がありますがご了承ください.出来上がったものはイラストというよりラフスケッチというような代物ですが,それでもその過程で構想に根本的な欠陥がないかと地形の処理に検討が必要なところはだいたいわかります.今回この「イラスト」を作成して根本的に破綻しているところはないと判断しましたが,詳細検討が必要と判断したところは以下の3点です.
1) 左奥の鉱石積み込み設備とその周縁の地形処理(手前側の山の斜面処理と積み込み設備後方の地形処理)
2) レイアウト後縁の地形処理
3) 市街地の規模(面積)
です.これらについてはこの段階でイラストによる詳細な検討は行わず,モックアップを製作して確認することとします.ただ,このモックアップによる検討を行う前に,私は勾配設計の最終確認を行いました.今回の線路配置では立体交差部が5箇所あり.レイアウトの左奥では比較的長い距離上下の線路がラップしている箇所がありますが,駅構内と周回線の立体交差部以外の交差部は交差する上下いずれの線路にも勾配がついている部分が多く,また線路が並行していてもその高さが互いに異なる部分があります.また交差角度も浅いところがあるため交差地点のわずかなずれが上下線路ののクリアランスに大きく影響します.勿論線路配置を決めていく中で確認は行っているのですが,高低差はかなりギリギリのところを狙っていますので製作時の誤差や線路配置のわずかな変更が反映されていない等の理由によりで交差位置がわずかにずれてしまうとクリアランスが確保できず,これが製作後に発覚すると修正が全体に及んでしまう恐れがあります.勿論今回使用したソフトにも勾配を設定する機能はありますが,今回その機能は概略設計の際に使用したものの実際の設計には使用していません.理由はソフトでは勾配の起点がエレメントの境界(線路の継ぎ目)部分に限定されるのに対し,今回は勾配の始点と終点に緩和勾配(縦曲線)を入れたため勾配の変化点がエレメントの境界ではないこと,分岐器から勾配の変化点を極力遠ざけた地点としたことにより,勾配の変化点がエレメントの境界にほとんどないためです.そのため高さの算出はソフトの機能ではなく表計算(numbars(Mac版Excel)の関数を使用した計算)で行っているのでその式や入力値に誤りがある可能性も否めません.なお,上の3D図面には勾配が描画されていますが,これはエレメントの境界を勾配の変化点として緩和勾配(縦曲線)も一部省略してあるため実際の勾配とは異なっています.
今回ソフトの機能は使用していないため,線路配置の検討過程では線路の高さ(基準平面からの持ち上げ量)と立体交差部のクリアランスは路線図上に手書きで記入しています.実際の設計では勾配は勾配開始地点から110㎜の区間に15‰緩和勾配を設けることとし,勾配を最大勾配の30‰とした場合の各交差地点での高低差を確認し,クリアランスが確保できろことが確認されたら余裕のある部分については交差地点の高低差がNEM規格の下限となるようにその区間の勾配を決定するという方法で行っています.この作業で最終な線路配置を決定するまでにに作成した図面の一例を図面を下図に示します.基準点から交差地点までの経路長は計算で算出し,その後線路図を出力した図面図面の格子(10㎜)をデバイダーで採寸し線路図に当てて計算に誤りがないことを確認しました.なお,今回使用したソフトではフレキシブル線路で2地点間を結んだ場合,その線路長は自動計算され図上に表示されます.

この時代に手書きとはなんて時代遅れの方法かと思われる方もいるかもしれませんが,線路配置の検討はどうしても試行錯誤が必要になりその度に高低差の確認が必要となります.その点このような「紙による計算書」はPCでの上書きをどの時点で行うかを考えることなく検討の履歴が全て残ります,線路配置を検討する中では変更を元に戻すことも多々ありますが,紙による計算書は履歴をすべて手元の紙に残しておけばすぐに任意の地点から再計算ができますのであながち悪い方法とも思えません.今でも大学の教養学部の実験の授業や研究機関では実験ノートは全て手書きでペン書き(消しゴムでのデータ消去を禁止)を徹底しているようですが,これは研究現場での改竄防止の重要性に対する教育もさることながら,実験の過程で一度不要と判断したデータがあその後の検討の過程で有益になる可能性がある(一度向無効と判断したデータが有効になる)という理由もあります,線路配置検討がある程度試行錯誤となるレイアウトの設計において,PC上で上書きをせずに紙に勾配計算の過去の記録を残しておくことは意外と有益で効率的ではないかと感じます.今回の最終確認はこの計算結果をPCに入力しながら再確認を行なうということになりますが,その検算だけではあまり面白くありませんので,今回はレイアウトの台枠を意識して勾配形成用のスペーサー高さの算出も兼ねて確認を実施することとしました.
下図はこのレイアウトの台枠の構想です.台枠についての詳細は後ほど紹介しますが,今回はフラットトップではなく簡易的なLガーター構造のオープントップとすることとしました.その理由は,今回台枠の中央部(外縁から離れたところ)にも線路が存在するため,その部分への台枠下側からのアクセス性を確保しておく方が良いと判断したためです.このため線路を持ち上げるライザーの位置が限定されますので,この段階で台枠の縦方向の桁の位置を決めておき,その部分での線路高さを計算しておけば後で改めて計算する必要はなく,高さの算出方法(計算時の入力数値)も異なりますので,前回の計算結果と比較すれば万一誤りがあった場合に発見しやすいと考えたためです.なお,1970年頃のTMS誌等のレイアウト製作記事を読むと,線路の高さ調整部材をライザー,路盤をクリートと称している記事が多いようですが,最近はあまりこの言葉を耳にしません.ライザーは線路を持ち上げる部材ですのでreise+erという意味で使用されていると思われますがなぜ路盤(道床)をクリート(cleat?)と呼ぶのかがよくわかりません.細長い補強用板材という意味はありますが,roadbedでも良い気がします.鉄道模型独特の単語なのでしょうか.話が脱線してしまいましたが,まずソフトの線路配置とは別の別レイヤーにベースの桁の位置を記載し,線路配置図と重ねてさらに別レイヤーにライザー位置を記入したものが下図になります.

そしてこのライザー位置での線路高さ(基準面からの持ち上げ量)を記載した資料が下図になります.図には各々のライザー位置に対して,距離基準点からの経路長と基準面からの線路の持ち上げ量を記載しました.そしてこの結果と上記の手書き資料の最終版を比較することにより勾配の計算に誤りがないことを確認しました.

この資料の作成と同時に紙の資料の一部に記載した線路断面のデータ化も行いました.その図が下の図になります.なお,下の図にも表示されていますが,駅部分で周回線がアンダークロスする部分は駅側の路盤を真鍮板として上下のクリアランスを確保しています.また交差部①では上側の線路には道床を設けていません.Märklin製レールは実測ではCode60相当のものが使用されているようですが,線路の剛性に対して車両の重量が非常に軽いため,途中に継ぎ目がなく長さ100㎜程度であれば道床無しでも車両通過時の線路のたわみは無視でき道床の厚さ分の高さが稼げます.

なお,最終的な勾配は右側通行で周回する場合④から①の登り30‰が最大で,次いで⑤から③の27‰,そのほかの部分は最大24‰となりました.この程度の勾配ですとUIC-Xタイプ5両編成を牽引する機関車の勾配における速度変化は登り,下りともほとんど気になりません.

この確認が済んだらモックアップの制作に入りますが,私が行った方法は30年と同じ方法で,異なるところは線路の切り出しに使用する図を手書きで作成したかソフトで制作した図面をプリンタで出力して用いたという点くらいです.プリンタでの出力は縮尺を合わせるのが難しいので今回はA4用紙に描画できる最大の寸法で出力しました.結果1000㎜が178㎜で出力されましたのでで尺度は約1/5.6となります.出力された図に厚紙を貼って線路を切り抜き勾配をつけてイラストボードの貼り付けたものが下の写真です.

ただ,このモックアップと前回提示した最終的に決定した線路配置と上記のイラストを比較すると左手前側の線路配置が最終的な線路配置と異なっています.当初は下の写真のモックアップのようにStaging Yardから駅の下をくぐって駅に戻る経路は最終的な線路配置より奥側をとており,この経路の線路は全てを隠す予定でした.しかし実際にモックアップを作成してみると周回線を走る列車が見えるのは手前の部分のみとなり線路の露出部分が少なく,イラストでの予想どおり市街地も広すぎるような気がしたため線路を手前側に移動して線路を湖のほとりを走る形で露出させるとともに市街地を分割して面積を減らすこととしたためです.

以下,モックアップの具体的な製作過程を紹介します.まず地形を検討する前にストラクチャーを配置する地面を作ります.この地盤はソフトウエアの描画機能でストラクチャーの配置図を配線図の別レイヤーに描き概略形状を決定します.ただ,このソフトは図形の描画に曲線描画機能はないようですので曲線は多角形で描画しました.

上記の図面を元に「地面」を作成した後.地形をアルミホイルを用いて製作します.そのモックアップの最終的なものが以下の写真です.

私は前作で製作したモックアップでも地形の作成にはアルミホイルを使用しています.モックアップにおける地形の製作方法は色々な方法が考えられますが,紙粘土等乾くと固まるものは試行錯誤ので行う修正がやりにくく,乾燥にも時間がかかりますので難があります(私はそのように感じます).その点アルミホイルは形状を簡単に製作でき,ゴム系接着剤で接着すれば接着剤の乾燥(固着)も早く,修正するためにアルミホイルを剥がすのも比較容易です.また山を作った場合のシワも何となく実感的な感じになります.反面表面はギラギラですのでその意味では全く実感的ではありませんが,想定していた地形が成り立つかの確認は十分できますので私はこれでよしとしています.なお,上のイラストから作成した図面どおりのモックアップを作成したところ,下の写真のように住宅地を山の中腹に位置させるとただでさえ実物スケールより非常に小さい山の中腹にストラクチャーを配置することで,と山の小ささが強調されるとともにストラクチャーもオーバースケールに見え,実感を損ねることが判明したため最終的には住宅地を山の麓に移動しています.そのため当初計画した跨線橋から住宅地に至る道路に,旧レイアウトで使用した橋梁を流用することは諦めざるを得ませんでした.なお,板の写真の一部からわかるように,地形を形成する際の「餡子」は丸たアルミホイルを使用しています.

その他,モックアップを作成して検討が必要ではないかと考えられたのは左手前の下の線路が浅い角度でアンダークロスして湖の辺りから市街地に向かう部分,左奥の鉱石積み込み場とその手前に来る山の斜面の処理,駅のプラットホームの真下をアンダークロスする部分のトンネル入り口の処理等ですが,この辺り,日本で参考になりそうな風景を探すと,線路の浅い角度での交差は全国的にも有名な東京の御茶ノ水駅の付近,市街地のトンネル入り口は地下鉄丸の内線の四ツ谷駅付近の灯り区間,山の急斜面とその下にある建物の例としては中央東線上野原付近等が思い浮かびました.そのほか,全体的な留意点として駅部分と手前の周回線の距離が近いので手前の周回線とその後方の駅部分を視覚的にうまく分離することが必要で,そのためには地形とともに樹木が大きな役割を持つ気がしました.そのためには市街地とから周回線のかけての地形を樹木が植生できる比較的緩斜面で構成する必要があります.今回のソフトに地形の描画機能があれば樹木の効果を確認することも不可能ではありませんが,私が使用しているソフトにはその機能はなく,あまり3Dで詳細に検討してもキリがないような気もしますので,私は構想の妥当性確認はこのくらいにして,詳細な設計作業の入ることとしました.最後に参考にした地形の写真を下に示します.説明は各写真のキャプションを参照願います.

神田川の部分は陸地として中央線を神田川を渡るような角度で交差させて中央線の川側の擁壁を反対側に移すと線路の位置関係がこのレイアウトに似たような感じとなります.昌平橋が湖にかかるトラス橋のイメージになります.
同じく御茶ノ水駅の下を通過する地下鉄丸ノ内線,神田川を陸地とするとレイアウトに近いイメージとなります.
地下鉄丸ノ内線の四谷付近も上の道路に部分位ホームを設けるとこのレイアウトとにたイメージとなります.地下鉄丸の内線は開業時期が早いため深度が浅く,路線も台地と平地の境界部分を通っていますので地形の影響で部分的に線路が露出している部分が比較的多く,レイアウト製作の参考となる部分が多くあります.
崖の下に配置された建物の例.この部分の崖は山ではなく桂川の河岸段丘の崖で高さが山より低いため,レイアウトの地形のイメージがしやすいように感じます.

問題はこのような地形をどのようにアレンジすれば欧州の風景に見えるかですが,この点は構造物(擁壁)を石積みにする等で,ある程度の雰囲気が出せるのではないかと思います.前作のレイアウトを製作した時代は資料が少なく自身が撮ったわずかな写真と記憶に頼るほかありませんでしたが現在ではネット上に参考にありそうな写真が山のように存在します.その点,日本における外国型レイアウトの製作は当時に比較して格段に作り易くなっているようにも感じます.

以上で線路配置と想定していたシーナリーと勾配設計には致命的な欠陥や誤りはないことが確認できましたので,いよいよ詳細な設計と製作に入ります.次回からはその具体的な設計と製作の過程の紹介していきたいと考えております.
最後までお読みいただきありがとうございました.

Z-ゲージレイアウト ”Keiserburg  Stadtbahn II”の製作(1) -製作の動機とレイアウトプランの概要-

私はここ数年,かつて故 なかお・ゆたか氏が製作された”蒸気機関車のいる周辺”をモチーフとした日本型の機関区のレイアウトセクションや,Märklin Digital systemを使用したドイツの中央駅をイメージしたレイアウトセクションを製作してきました.しかし運転という面で考えると前者の機関区セクションはどちらかというと自作した機関車の鑑賞主体の往復運転が主体で列車の運転という意味での面白さはあまりなく,後者は駅を発着.通過するサウンド付きの長編成列車の運転は楽しめるもののその実態はいわば「セクションを組み込んだ組立式レイアウト」であり,DCC制御を採用しているため電気配線(接続)は短時間でできるものの組立と撤収は結構変です.
 私の考える理想のレイアウトはオーディオ装置の電源を入れて好みのCDやアナログレコードをプレーヤに装填しればすぐに音楽を楽しむことができるような感覚で,思い立ったら気軽に列車の運転を楽しめるレイアウトです.

そういう意味では以前紹介した1995年頃から2000年ごろにかけて製作したZゲージレイアウトがあるのですが,なにぶん私が初めて製作したレイアウトであり,当時レイアウト製作に対する十分な知識や経験がが不足していたため線路配置が比較的単純なものとなっています.またレイアウトは欧州の頭端式の駅の再現ににこだわったため周回線上に駅がなく,連続運転時には単純な楕円形状の周回線上をひたすら列車が周回するという単調な運転しか楽しむことができません.また3線式のDCC制御に慣れてしまった今となっては駅に列車を出入りさせる際のリバース区間の極性切り替えやブロックへの給電スイッチの操作にも煩わしさを感じます.ただ,レイアウト自体の細密度については現在でもそれほど不満はなく,使用しているのシステムがMärklin製のシステムだけあって,30年後の現在でも分岐器の切り替え動作や車両の走行には全く問題はなく,製作当初と変わりない快適な運転が楽しめます.そこで今回,この初代のレイアウトを一度解体し,線路やストラクチャー等を再利用する形で新たなを製作することを決断しました.なお,このレイアウトの鉄道名はこの前作のレイアウトの名前を残し,”Keiserburg  Stadtbahn II”と命名しました.

今回解体を決断した前作のレイアウト.最終的に解体を決断するまでには結構迷いがありました.

これからそのレイアウトの紹介をしたいと思いますが,紹介は製作と同時進行になりますので更新は不定期かつ長期間になることをご了解ください. 


<線路配置の検討>
前回作成したレイアウトの配線の概略図が下図になります.この線路配置は日本では比較的多く採用されているようで,過去には荒崎良徳誌の雲龍時鉄道や祖師谷軽便鉄道にその例が見られます.私も製作時のはそれらを参考としています.日本型では駅の部分に機関区や貨物駅を設ける例が多いようですが,私はこの部分を比較的大規模な頭端式の駅(Hauptbahihof)として欧州の雰囲気を出すこととしました.ただこの配線は駅への出入りにはリバース区間が必要であるとともに,スペースが狭いとエンドレスの周回線が比較的単純な形状となってしまいます.また周回線から駅の経路は駅への発着時しか列車が通過しないため「列車密度」が低くなり,さらに通過の際はリバース区間での極性切り替えが必要となるためこの部分の風景を作り込んでもそこを走る列車の姿を余裕を持って楽しむことができないという欠点があるようにも感じます.そこで今回のプランはこの欠点を改良することに主眼を置きました. 

前作のレイアウトの概略の線路配置

なお,レイアウトの寸法は前作のスペースとほぼ同一の1450×600㎜としました.これはHOゲージの寸法に換算すると約3340×1520㎜(1/80では3980x 1650㎜)となります.このスペースは私が購読しているMärklin magazinの毎月掲載されるHOゲージのレイアウトプランの中では標準的なサイズですが,日本ではどちらかというと大型の部類に入るのではないかと思います.現在Märklin magazinに掲載されるこのサイズのレイアウトプランは通過駅を中心にその両端にトンネルを設けその両端あるいは片側の複線を模した2線の間を途中にStaging yardを設けながら結ぶプランで,その途中の経路の大半が外からは見えない位置にある設け,その一部を露出させて駅間の風景を再現しているものが多いようです.その中には列車がその経路をどのように通過していくかが一目でははわからない複雑なプランもあります.Märklinシステムは3線式であるためリバース区間での極性の切り替え(路線スイッチの操作)が必要ないためか,中には2線式では両側にリバース区間が必要になる配線も比較的多く見られます.

Muarklin magazinに掲載されているレイアウトプランの一例.写真ではわかりにくいですがこのレイアウトプランは3層構造になっています

 かつてMärklinに代表される欧州のレイアウトはテーブルの上に楕円形の線路を敷き詰めためたようなプランが多く,玩具的と言われていました.当時のMärklin社のカタログに掲載されているプランもほとんどそのような玩具的と言われていたプランです.ところが現在のMärklin magazin上で提案されるプランは上の写真のようなプランが多く,当時の面影は全くなくなっています.当時の鉄道模型趣味の誌上で主筆の山崎喜陽氏はレイアウトを実感的に見せるか否かは線路がジェットコースター的にならるのを避けることが重要であり線路をいかに隠すかに重要であるという旨の発言を度々されていましたが,上記のプランはまさにそれを実践しているようなプランで,このようなプランと比較すると現在の日本のNゲージレイアウトの方がジェットコースター的で「玩具的」に見えるものが多いような気さえします.またプランでは台枠に隠れた部分は小径カーブが使用されてStaging yardの有効長を稼いでおり,欧州の車両の小径カーブが通過可能という利点が最大限生かされているようにも感じます,欧米は日本に比較して住居が広く,鉄道模型に使用できるスペースが日本より広いと言われますが,ドイツの家庭にある鉄道模型のレイアウトはHome layoutと呼ばれ家族で楽しむことが多いため,米国のような広大なスペースを持つ個人レイアウトはあまり見かけません.米国のレイアウトは複数のオペレーターでセッション運転を行う半島型の大規模なレイアウトと比較的小規模のレイアウトに2極化しているように感じますが,小型レイアウトでは小型車両や貨車の入れ替えを楽しむプランが多く,線路配置はそれほど複雑ではありません.日本では戦後,鉄道模型の楽しみ方について米国を範としたためか,いまだに欧州のレイアウトは玩具的であるという感覚を持つ方が多いような気がします(事実当時はそうでした)が,デジタル制御の普及にを機に欧州の鉄道模型,少なくともメーカーが提案するレイアウトプランは大きく変化しているように感じます.日本では比較的狭いスペースで長編成の列車を走らせるプランが多いようですが,そのようなレイアウトを計画する場合にはこのような現代の欧州のレイアウトプランを参考としても良いのではないかかと感じます.なお,我々にはほとんど無縁の存在ですが,米国の半島式の大型レイアウトを設計する際には,複数のオペレーターでスケールタイムを使用しセッションによる運転を行うために各種のセッションに対応できるように事前にダイヤグラム等による列車運行のシミュレーションを十分に行なって駅間の距離を決める等,レイアウトの線路配置の設計はかなり難しいようで,決して独学により一朝一夕で設計を行えるようなものではないもののようです(NMRAでは毎年セミナーを開催して,おり,設計者の力量を認定する制度もある様です).
欧州でいつから上記の様ななプラン多く提案されるようになったのかは定かではありませんが,2000年ごろにMarklin insider誌に手書きで掲載されていたレイアウトプランにはあまり現在のような複雑なものは見かけませんのでこの傾向はデジタル制御の普及とレイアウト作成用のソフトウエアの普及が大きいのではないかと思われます.当時はレイアウトプラン検討用のテンプレートも発売されてカタログにも掲載されていましたが,このような製品がカタログから姿を消したのもデジタル制御とソフトウエアが普及し始めた頃のように感じます.今回私が作成したプランはこれらのレイアウトに比べると単純なプランですが,それでも立体交差部の線路の高低差を考慮して経路の長さを調整する等,紙の上にコンパスと定規で書いて簡単に検討できるようなものではなく,レイアウト設計用のソフトウエアなければそう簡単にはできなかったような気がします.なお,2線式のシステムでMarklin社の提供するHOゲージのレイアウトプランを参考にする際には,システムが3線式のため,リバース区間が考慮されていないこと,Staging yardでの列車のスムースな交換(交代)に対する検討が必要であることに注意が必要です.Märklin社の3線式DCC制御(Muarklin digital)ではそもそもリバース区間という概念がありません.また外からは見えない位置にあるStaging yardではs88コンタクトによる在線検知を使用した留置線での列車の自動停止や列車の停止していない経路を自動で選択して列車を通過させる(全て埋まっている場合は手前で停止)ことがEvent Programにより比較的容易に行えます(ただしs 88デコーダーとEvent Macro機能の理解が必要です).しかしアナログ制御では容易には行なえなません.逆に3線式DCC制御ではこのような欠点を容易に解決できますのでそれがレイアウトプランの自由度の向上に寄与しているとも感じます.上の写真のような多数のStaging yardを持つレイアウトプランでStaging yardでの列車の交換(交代)をスムーズに行うためには最低限分岐器の開通方向の表示と各線の在線状況をコントロールパネル上に表示することが必要である気がしますが,Muarklin digitalではコマンドステーションとs88デコーダー1台でそれが可能になります.

だいぶ前置きが長くが長くなってしまいましたが,下図が私が最終的に決定した今回のレイアウトのレイアウトプランになります.レイアウト描画ソフトはRailmodeller Proというソフトを使用しています.

 レイアウトは2層構造で,上層と下層を分離すると以下のような配線になります.

こちらが上層で駅の部分になります 

こちらが下層です .駅の左右をを出発して出発した側に戻ってくる2つの経路を表示しています.その片方に4線(3編成留置可能)のStaging yardを設けています.

そして全体を3Dで表示すると以下のようになります 

プランは一見すると複雑そうですが,経路を模式図で描くと以下のようになり,経路としては単純です.列車は原則右回り(CCW)で運転することを想定しています.この線路配置ではCCW方向に走行する列車がFraight Stationに入線できるようにするために渡り線の部分をリバース区間が必要ですが,通常の周回運転では路線スイッチの操作は不要で手放し運転が可能となります.一方,駅で列車の進行方向を変えたりFreight Stasionを出発する列車が出口で渡り線を渡って周回方向を左回りで運転した場合,その列車は再度進行方向を変えない限りFreight Stationに戻ることができなくなります.これは周回方向を右回りとしたこと,Freight Stationを駅の奥側としたことによる制約です.

今回この線路配置に決めるまでの過程で留意した点は主に以下のところです

1.長距離列車編成のロングランを可能とする

前述のように前作のレイアウトでは単純な楕円形状の周回線での周回運転しかできず,運転が単調になっていました.そこで今回は周回線の形状を工夫して運転経路を長くすることを試みました.運転経路を長くするために駅の両側に周回線を二つ設けて駅を出発した列車が出発方向から駅にに戻り,出発した方向とは逆方向に駅を通過しまた駅に戻ってくるという線路配置とし,ロングラン運転を可能としました.今回線路の仮敷設が終わった状態で計測すると,駅を出発した列車が反対方向に駅を通過するまでの所要時間は通常の速度で約45秒,元の位置に戻ってくるまで90秒でした.また「長距離列車」の編成を運転するため駅はレイアウトに斜め方向に設置し,機関車牽引の26m級UIC-X客車5両編成の運転を可能としました.この列車の列車長は約700㎜になります.駅の有効長的には6両編成の運転も可能ですが終端がカーブ上に停車することとなるため運転する列車は仕様上は最長26m級客車5両編成の機関車牽引列車としました.またプランを検討する中で,このプランは有効長を稼ぐため駅の両端の分岐にカーブポイントを多用しているため実感を損ねるのではないかという懸念もありましたが,この部分はトンネルの入り口を適切な位置に設けることにより目立たなくすることが可能と考えて,このプランを採用しました.なお,プラン図のトンネルのポータル位置はソフトウエアの制約で線路の継ぎ目にしか表示できないため概略位置となっています.

2.周回線の線路は角の露出を避け,レイアウトがジェットコースター的にならないように留意する.

周回線の線路の露出はレイアウト手前側のみとして,線路の過度な露出を避けています.その際手前右側の橋梁のあたりは東北本線の郡山ー福島間で見られるような複線の線路を並行させずに敷設してあるイメージで線路配置を決めました.線路配置上でもこの部分は周回する列車が逆方向に通過します.余談ですが東北本線の郡山ー福島駅間(特に松川から福島にかけてのあたり)は複線化の際,増設した線路を従来の線路に比較して勾配を緩くなるような線形として上り勾配側として使用していますので上下線の線路が並行ではなく,上下線の線路が「つかず離れず」かつ高低差のある状態で敷設されている区間が各所にあり,レイアウト設計の際に参考にできるような気がします.

3.貨物列車の運転を考慮する

前作のレイアウトの駅は都市の中央駅(HBF)をイメージしたもので,レイアウト上にStaging yardもないため貨物列車の運転ができませんでした(機能的には可能です).そのため今回のレイアウトでは貨物駅を設け,貨物列車も実感的に運転できるように配慮しました.

4.周回線にリバース区間は設置せず,「手放し運転」を可能とする.

レイアウトは自分が運転手になったつもりで列車を運転するのも楽しいですが,走る列車を何もせずに酒でも飲みながら走る列車を眺めるのもまた楽しいものです.そこで通常の運転時は経路にリバース区間が生じないような線路配置として,手放し運転を可能としています.

5.Staging yardを設置して複数の車両をレイアウト内に留置可能とする.

実は前作のレイアウトで製作後まず不満を感じたのはレイアウトにStaging yardがないことでした.線路の過度な露出と同様,レイアウト上に多数の車両があると実感を損ねてしまいます.当時は改造によるStaging yardの増設も考えたのですが,場所や線路配置上の制約で実現は不可能でした.そこで今回のレイアウトでは3本の列車が留置可能なStaging yardをレイアウトの後方に設けました.ただ,前述のように列車を留置するためには見えない位置で列車を停車させる必要があります.今回のレイアウトでは留置線の出口付近をオーバーラン防止のために別ブロックとし,列車を停止させたい場合はそのブロックを無電区間として列車のオーバーランを防止することとしています.また今の時代防犯用のWEBカメラが数千円で入手できますのでそそれによるStaging yardの監視も考えています.

6. 最急勾配を30‰,標準勾配を25‰で設計する
勾配は最大30‰(3%)で設計しています.30%の勾配を5両編成の客車列車編成が登坂できることは前作のレイアウトで確認済みです.ただ,前作のレイアウトでは前後の緩和勾配区間を十分考慮していなかったため一部30‰を超える区間ができてしまい,本線用の機関車でもBR218のような比較的小型で軽量の機関車ではUIC-X客車の5両編成はスリップして登坂不可能でした.そこで今回は緩和勾配区間を設計上きちんと考慮する(原則平坦線から勾配区間に移る部分の110㎜の区間の勾配を15‰とする)とともに,線路敷設時のばらつきも考えてほとんどの部分の勾配を設計呼称25‰(2.5%)以下で設計しました.そのため手持ちの本線用の機関車は全てUIC-X客車の5両編成の牽引が可能です.ただそのための勾配区間の経路長の確保には結構苦労しており,見えない部分では線路をあえて直線で結ばずに蛇行させた部分もあります.それでも駅以外の部分はほとんどの部分が勾配区間となってしまいました.Staging yardにも25‰の勾配がついていますがこの程度の勾配であれば列車の発着には影響しないようです.一方,線路が立体交差する部分の高低差はパンタガイド(模擬架線)を設ける前提で原則28.5㎜(レール取り付け面から車両のパンタ上部まで)で設計しました.欧州規格NEM201ではZゲージの場合架線終電の際のトロリ線の最小高さはレール面上から25㎜と規定されてす(標準高さは28㎜です).上記の28.5㎜はレールの厚さ2.5㎜を含むと同時にさらに模擬架線の真鍮線の直径0.7㎜を減ずる必要がありますのでこの高低差は規格の下限に対し0.3㎜の余裕を持つことになります.Märklinをはじめとした欧州製の鉄道模型はほとんどの車両はNEM規格に準拠しており,車両は架線集電可能という仕様のため車両のパンタグラフは堅牢でその上下動もスムース(その分外観が犠牲になっている面もありますが)であるため,立体交差部に模擬架線を設けてもパンタが損傷したり車両の動きが不安定になったりすることはありません.今回のプランではパンタガイドなしで最急勾配を30‰を実現することは不可能です.一方日本の車両のパンタグラフはどちらかというと機能より外観重視のような気がします,私は日本型のNゲージ車両を所有していませんので詳細が分かりませんが,欧州のような規格のない日本型の車両の使用が前提のレイアウトでも,各社の車両のパンタグラフの高さや統一やスムーズな上下動の確保が考慮されており,模擬架線の設置を前提としての今回のような限界を狙った立体交差部の設計は可能なのでしょうか.

以上,蓮路配置の決定経緯を紹介しましたが,まだこれで最終決定ではありません.残った確認項目はこの「ジェットコースター」のような線路をうまく隠してレイアウトを実感的にすることができるか否かの確認です.もちろん線路配置を検討する中で,頭の中に浮かべた3D画像で大体の構想は考えているのですが,それが矛盾なく実現できるかまでを頭の中だけで考えることはは不可能です.そのためその確認を行なわないと線路配置の最終決定はできません.また今回,最終的に決定した線路配置を提示しましたが,今回の線路配置では立体交差部の高低差部分の寸法を規格の限界値ギリギリで設計していますので計算に誤りがあるとその時点でプランが破綻してしまいます.そのためそれを避けるためには慎重な確認作業が必要になります.そこで次回はこのその確認を行なった過程(方法)も紹介したいと思います.

最後に今回のプランの駅右側の分岐器部分を仮組みした写真を示します.分岐器の下に敷いてあるのはA4サイズのコピー用紙でその下側にあるのはHOゲージCトラックの大型分岐器です.この写真からもレイアウト製作時のZゲージのスペース的な有利さを感じていただけることができるのではないかと思います.なお,日本にもZゲージの鉄道模型システムを販売しているメーカーがありますが,上記の説明は前作での経験も含め全てMärklin社のシステム(Muarklin mini-club)の使用を前提としていますのでこの記事を参考にする場合はその点にご注意ください.

長い文章となってしまいましたが最後までお読みいただきありがとうございました.

鉄道趣味を50年続けて思うこと(6) ~海外の鉄道模型と日本の鉄道模型の楽しみ方の差について~

今月届いたMärklin Magazine(2026/03(june|july)に日本の鉄道模型に関連する記事が掲載されていました.

記事は”Märklin instead of a mini bar(直訳するとmini bar の代わりにメルクリン)というもので,内容はドイツのある鉄道模型ファンが自宅のspare bed room(Guest room?)にMärklinの小型レイアウトを製作したという記事なのですが,この中で私の興味を引いたのは記事の中でこれを,作者の家の中に日本の鉄道模型の文化の一部を取り入れたいう説明があることでした.この記事はその文体から察するに多分Märklin magazineの記者(スタッフ)が製作した方(ドイツの測定機器メーカーに勤める工学博士)を取材して執筆したものと思われます.Märklin magazineは欧州の一鉄道模型メーカーであるMärklin 社が発行する雑誌で,いわばMärklin 社の宣伝誌です.ただ,私はドイツに居住したことはないものの,出張のおりに都市部の書店の雑誌コーナーではよく見かけた雑誌で,一般にも販売されている雑誌でのようです.私は今まで海外の模型人が日本の鉄道模型の楽しみ方をどのように感じているかについての文章に触れる機会はありませんでしたが,その正確性はともかく,この記事は少なくとも欧州を代表する鉄道模型メーカーが日本の鉄道模型ファン(メーカーからの観点で言えば日本の鉄道模型市場)をどのように見ているかについての一つの参考となるように感じましたので今回紹介してみたいと思った次第です.
 何故spare bed roomに設置したレイアウトと日本が関係あるかというと,それは氏が仕事でたびたび訪れる日本で知った秋葉原のホテルの”Train room”から着想したためのようです.
記事の中で日本の鉄道模型の楽しみ方についての言及もあります.その内容は「日本は”少なくとも”鉄道模型という趣味はドイツと同じくらいポピュラーな趣味であり,多くの博物館(大宮の交通博物館,京都の鉄道鉄道博物館,横浜の原鉄道博物館)には大きなレイアウトがある」ということを述べる一方,「日本人のアパート(和製英語のマンション?)では彼らが模型を楽しむスペースはドイツに比較して圧倒的に少ない(much less space in their apartments than we do in Germany)」ため「彼らが”home Layout”が製作できる機会は少なく,そのため日本のファンは車両の収集のみを行ない,列車を走らせる場合には料金を払って専門店のレイアウトで車両を走らせている」というものです.この内容は日本の鉄道模型の楽しみ方を少し表明的に捉え,両国の楽しみ方の違いを強調し過ぎているとも思いますが,氏はレンタルレイアウトで料金を払って車両の運転を楽しむ鉄道模型ファンの究極の姿がホテルの”Train room”のレイアウトで車両を運転して楽しむファンであると感じたのかもわかりません.上述の日本は”少なくとも”鉄道模型という趣味はドイツと同じくらいポピュラーな趣味であるという文章(the model railroad hobby is at least as popular as it iis in Germany)の中の”at least”という語句の中には作者(雑誌編集者?)が日本の鉄道模型の楽しみ方と自身の楽しみ方に距離を置いているようにも感じます.また記事の中にhome layoutという言葉が出てきますが,氏がGuest roomに設置したレイアウトは”his own private layout”と記載され,彼らの間では一般的な”home Layout”とは異質のものであるということも窺わせます(日本のレイアウトは模型クラブのレイアウト以外は圧倒的に後者が多いのではないかと思われます).Märklin社が拡販のために日本の鉄道模型市場(模型ファンの実態)をリサーチしたかどうかは全くわかりませんが,欧米のメーカーはもしかしたら何らかの調査を行ない自国との鉄道模型の楽しみ方の違いをある程度認識しているのかもわかりません.

記事には秋葉原の街並み,模型店のレンタルレイアウト,ホテルの”Train room”の写真が掲載されていますが,これを日本の一般的な鉄道模型の楽しみ方だと解釈しているのあったらちょっと違うかなという気もします.街並みの画像処理(色合い)も「異世界」を強調しているような気がします.

外国型と日本型の模型を楽しむ私は兼ねてからその楽しみ方には違いがあるということはよく感じるとところです.昨年は戦後間もなく創刊された機芸出版社発行の雑誌,「鉄道模型趣味」が通巻1000号を迎え,創刊号を含め初期の紙面がPDFファイルで公開されました.その中で主筆の山崎喜陽氏は戦前の国策にも利用された車両工作中心のModel Engineeringを脱却し,車両をレイアウトをトータルで楽しむModel railroaderになることを提唱していますが,現在でもどちらかというと車両工作と収集が主体であることは変わらないような気がします.そしてその最大の理由は上記の記事にもあるような日本の家屋のスペースの圧倒的な狭さではないかと思われます.かつて日本の家屋は諸外国から木と紙でできたウサギ小屋と言われたこともありますが,木と紙でできたというのはともかく,広さという意味では特に都市部(東京)においてはこの当時より悪化しているような気さえします.私が前回まで紹介したレイアウトセクション(組み立て式レイアウト?)による運転でも,現在の日本家屋は昔のように襖や障子を開ければ(外せば?)大きなスペースを確保することが困難であり,スペースという観点で昭和の時代より難しくなっているような気もします.一方,当時の雑誌記事を読んでいると記事は車両の製作記事と米国のレイアウト製作に対する細かい技法の説明が主体です.この時にもしModel railroaderになることを提唱した山崎氏と編集スタッフがこのスペースの圧倒的な不足に対し,組み立て式レイアウトという安易な解決手法に走らずに自ら雑誌の読者がスペース不足という困難な課題を克服してでも思わず製作してみたくなるような米国でいうところのDoor Size のPortable Layoutを製作し,読者に提示していれば多少事情が変わったと思ったのは私だけでしょうか.

創刊初期のTMS誌を読むと,当時主筆の山崎氏が日本の鉄道模型をどのように導いていこうとしていたかがよくわかりますが,それと同時に「模型マニア」が作る雑誌の限界のようなものも多少感じました.

また,最近読んだ社会学者の辻 泉氏が執筆した『鉄道少年たちの時代ー想像力の社会史ー (2018  勁草書房)』では昨今の日本のNゲージまで及ぶ車両の細密化について,日本の国鉄の分割民営化の影響を指摘しています.それによるとかつては日本の鉄道(趣味の主な対象である在来線)は当時の少年たちにとってまだ見ぬ地(戦前は「大陸」も含まれていたようです)への夢を与える「想像力のメディア」であったのに対し,国鉄分割民営化以降は彼らがその拠り所とした夜行列車の廃止等もあり鉄道(在来線)が全国を結ぶネットワークという地位を失ない単なる地域間の交通手段となった結果,少年たち(かつて少年だった大人)はかつての鉄道黄金?時代を想像し,当時を再現しようとして細密モデルを求めるようになり,さらにその想像の対象は個人によって異なるためそこにアニメを主体とする「オタク文化」(コミケなどでみられる二次創作)との親和性が生まれたと解説しています.趣味の楽しみ方は人それぞれであり,オタク文化についても十分理解しているとは言えないため,私はそれについて何かコメントすることはできませんが,特急「こだま」に時代から現在に至る国鉄(JR)の変化を自ら体験した私にとって実物の鉄道の質的な変化は氏の指摘するとおりであると感じました,それに比較すると欧米の鉄道は現在でも当時からの「地位」はあまり変化しておらず(米国は貨物輸送という意味で)欧州のターミナル駅には各国から乗り入れる各国の「フラッグシップトレイン」が見られ,食堂車や寝台車も健在です.もしかしたら私が外国の鉄道に興味を持ったのはそのせいかもわかりません.欧米で鉄道車両は”coach”とか”carridge”という語句で呼ばれることがありますが,この言葉は馬車に由来しているという意味では鉄道は人々の間に根付いた「文化」であるということも感じます(そういう意味では自動車のセダンやクーペも馬車由来です).なお,この件についてはいずれ私の思うところをより詳細に述べたいと思っています.

今回参考にした社会学者辻泉氏の書籍.我々の世代の鉄道ファンの行動が時代ごとに客観的に分析されており,なかなか興味深い内容でした.

一方記事に紹介されているレイアウトはベッドサイズの半分ほどのスペースのレイアウトですが,中央にターンターブルと扇形機関庫を配し,その扇形庫に留置した機関車を周回させる自動運転プログラムが組み込まれたまれたなかなか魅力的なレイアウトです.日本ではこの程度のスペースのレイアウとですとまず情景を細かく作り込むことに重点を置くと思われますが,こここにも鉄道模型の楽しみ方の違いが現れているような気がします.私が製作してこのブログでも紹介した自動運転レイアウト”終着駅Großfurra”はどちらかというと日本のレイアウトに近く,自動運転も単純な往復運転ですが,この記事を読んでいつかはこのようなレイアウトも製作してみたいと思った次第です.

私の製作した自動運転レイアウト”終着駅Großfurra”, 奥が”ALTENHOF機関区”


現在私は以前紹介したZゲージレイアウトの全面的な改修(線路やストラクチャーを再使用しての新作)に取り組んでいます.いずれ形になってきたらまた紹介したいと思っておりますが,下の写真はそのレイアウト上で比較したHOゲージとZゲージの大きさの比較です.鉄道模型の縮尺の違いを車両単体で比較した写真はいろいろなメディアでよく目にしますがこのようなレイアウト上で大きさを比較するとレイアウト製作の場合のZゲージ(小スケール)のスペースの有利さが一目瞭然です.鉄道模型用に十分なスペースを確保できない日本の一般庶民が,幹線をイメージした固定レイアウトを製作しようとした場合に,その解決策は小ゲージの採用が一番手っ取り早いような気がします.

レイアウト上でHOゲージとZゲージの車両を比較するとレイアウト製作におけるZゲージのスペースの有利さがよくわかります.

以上,Märklin Magazineの記事をきっかけに色々思うところを書いてしまいましたがあくまで個人の見解としてお読みいただければ幸いです.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(12) -情景7(LEDを組み込んだアクセサリ(最終回) )-

前回の記事から3ヶ月以上が経過してしまいましたが引き続きレイアウトセクションお紹介を続けたいと思います.前回までで列車の運行に必須の設備で,計画していたものはほぼ作り終えましたのでその他のアクセサリの製作に入ります.具体的には駅の旅客向けのの設備(案内板,柵等),職員用の設備(照明灯,線路脇に置かれた保守用の資材,作業時の注意表示等),職員及び乗客のフィギュア等になります,その中で今回はその中の旅客用の列車案内表示器や照明灯等,LEDを組み込んだアクセサリを紹介します.これらのアクセサリは表面実装型のLEDの普及により以前に比較してよりスケールに近いものができるようになりましたが,LEDへの給電方法に工夫が必要で事前に構想と詳細設計を確実に行う必要があります.

今回紹介するLEDを組み込んだアクセサリ.照明の制御はm84デコーダーで行なっています.

まずは駅を出発するBR111牽引のLufthanza Airport Expressの動画をご覧ください.

Altental駅を出発するLufthanza Airport Express


以下,今回製作したアクセサリを紹介します.
<列車案内表示器>
現在のドイツの列車案内表示はLED化され,青色のベースに白で文字を表示している例が多いようですが,今回製作したものは一昔前の機械式のタイプで白色のパネルに発車(到着)時刻,列車種別,愛称,行き先等が表示されるタイプのもので,反転フラップ式と呼ばれるタイプ(いわゆるパタパタ式)です.日本ではこのタイプは見られなくなってしまいましたが,漢字がなくキャラクタ数が少ない欧米では文字数が少ないためまだ稼働しているところがあるようです.
その構造を下図に示します.表示器の支柱は真鍮製で柱の2㎜の角パイプと横梁の2㎜の丸パイプをはんだ付けで組み立ててあります.この組み立ての際には角パイプの中にリード線を通して接続部に設けた角パイプの切り欠きから線を横方向に出しておきます.リード線はAWG#32を使用し,表示器が2機の場合はパイプの中にリード線を2本通して両側に出しておきます.LEDは白色の表面実装型のLEDを使用し,細長く切断した1㎜厚の片面銅張基盤(パターンなしの基板)のパターンをPカッターを使用して図のような形状に剥がし,その絶縁部を渡す形で2個のLEDが直列接続となるように取り付けます.表示器を1本の支柱に2台取りつける場合,カソード側を共通としますのでリード線をLEDのアノード側に,支柱に接続する側のLEDがカソード側となるように取り付けます.
基板が完成したらこの基盤を支柱横梁の所定位置に接着し,パターンの片方を支柱を通したリード線に接続し,反対側のパターンを細い銅線で支柱に接続します,これで支柱部の加工は終了ですのでこの後LED部分をマスキングして全体を塗装します.
表示器本体はプラバンとペーパー製です.枠体は細い枠になりますので金属での製作も考えたのですが近傍に電極がありショートのリスクがあり,万一発生すると場所の特定に時間がかかることが予想されましたのでプラ製としました.枠体は図に示すように上部にLEDを取り付けたベースをはめ込む開口部を設け,取り付け前にその部分からガラスとなる透明プラバンを入れて枠体に接着し,中央部に表示板を取り付けます.表示板は2枚重ねとしてフラップ式の表示を表現しています.表示板の文字はワープロソフトで製作し,コンビニのプリントサービスでラベル紙に印刷しました.このような細かい文字は家庭用のインクジェットプリンタでは解像度不足であるとともに線の周囲にはインクの飛び散り(サテライト)が生じますのでこのような用途には適しません.なお,このような細かい文字で表示を製作する時は活字の1ポイントが0.3514㎜であることに留意すると所望の大きさの文字が比較的簡単に製作できます(これはJ ISの値で外国では多少違うようですが違いは僅かで誤差範囲です).プリンタで正確な寸法が印字されるわけではありませんが大きさを変える際,何ポイント変えればどのくらい喧嘩するかの予測がつけやすくなります.完成した表示器はホーム上に約280㎜間隔で配置しました.なお,この製作したような照明のついた設備はあまり数が多くなるとかえって目障りになりますので最終的には実際に設置しながら間隔や個数を決める必要があります.この時足りなくなると大変ですので私はこのようなアクセサリを製作する際は部品は多めに用意することとしています.

製作中の写真を以下に示します.
本体(支柱)は真鍮製ですが,正確なT字型とする必要がありますのでベーク板を組み合わせたジグを使用してはんだ付けにより組み立てます.

支柱の組み立ては簡単なジグを製作して行います.

はんだ付けによる組み立て前にはリード線(耐熱電子ワイヤー.AWG #32)を支柱に通しておきます.角パイプの切り欠きを大きめにとってリード線がパイプに密着しないようにすればはんだ付け時にリード線の被覆が解けてしまうことはことはありません...

はんだ付けによる組み立てが終了した支柱部分

LEDはPカッターで筋彫りして3つのエリアに分割した銅張基板上に取り付けます,2個のLEDは直列接続としますので極性に注意して取り付けます.

完成後基盤をそ定位置に接着取付け後に配線,塗装を行います.この基板に表示器を取り付けますのでその際基板が傾いているとも見苦しくなります.そのためこの取り付けにもベークライト製ブロックによる簡単なジグを使用しました.

ジグを使用した基板の接着

点灯試験中の支柱です.リード線がLEDアノード側に接続されますので制限抵抗はリード線側に取り付けます

点灯試験中のLED.電源は9VのACアダプタを使用しています.

列車案内板の文字はレーザープリンタで出力したものを使用します.両面に角穴を開けたラベル紙を貼り付けますので4枚重ねとなります.

レーザープリンタで文字を印刷した表示板

列車案内表示器の枠はプラバンから製作し外側を塗装します.塗装は筆塗りで行いましたが内側は塗装せずプラバンの地色をそのまま生かしますので塗装時は塗料が内側に付着しないように注意が必要です.

塗装中の案内表示器の枠

完成した表示器本体です.この後支柱の基板に接着し,完成となります.

完成した列車案内表示器


<時刻表・列車編成表.広告掲示板>
ドイツの主要駅ではホームに時刻表と優等列車の列車編成表が掲示されている駅が多くありますが,その案内板にもLEDにより照明を組み込みました.こちらもLEDは細長い銅張基板に固定していますが,こちらの2個のLEDは並列接続とし,給電は両端にはんだ付けした真鍮角パイプで行なっています.時刻表はWEBの素材を利用しましたが,文字は細かくて判読不能です.ただ時刻表は出発時刻を表示しているものと到着時刻を表示しているもので色が異なります(発射時刻は黄色)ですので2枚の時刻表の色を変えるとそれらしく見えます.なお幅の広い案内板はLEDを直列接続で複数個設けてあります.並列接続ではLEDのばらつきにより両者を流れる電流が異なり輝度差が生じる可能性があると言われていますがこのような使用方法では全く認識できませんでした..

組み立てを終えた本体です.この後塗装するとLEDの曲製がわからなくなりますのでレイエウトに取り付け後に配線する場合を考慮して左右の足の長さを変えてあります.

はんだ付けにより組み立て中の表示板枠体

中央部にプラバンをはめ込んだ後基板をEvergreen社製のチャンネル材で覆って完成です.

表示板と基板カバーを取り付けた案内板,このあと塗装を行って完成となります.

同様の構造で広告の掲示板も作成しました.
<照明灯>
聡明等はT字型のランプが支柱の両側にあるタイプを製作しました.両側にある2個のLEDは直列接続としますのでLEDの取り付け方向には注意が必要です.支柱は直径2㎜の真鍮パイプを使用します.LEDを取り付ける銅張基板は3分割として中央部のパターンの中央部に穴を開けてリード線を通した後と真鍮パイプにはんだ付けします.そのリード線を片方の電極にはんだ付けし,反対側の電極とは太さ0.15㎜にの高密度ポリエチレン銅線で接続します.この際基板はガラス入りの素材ですのでドリルが摩耗しますので,注意が必要です.私はドリル刃を研ぐ技量を持っていませんので古めのドリル刃を損耗覚悟で使用しました.シェードはプラバンを箱状に組み立てて成形したものをゴム系接着際で取り付けました.

組み立てが終了した照明灯の外観です.

組み立ての終了した照明灯

シェードはブラバンを削って製作しました.組み立て後LEDの部分をマスキングして塗装し,完成となります.

プラバンから製作したシェードを取り付け塗装を行うと完成です.

表面実装型のLED各色とも1個10円前後で入手でき,ハンダづけ時の過熱に気をつければ特に取り付けにもぞかしいところもなく比較的簡単に製作できますが,白色やWarm White色のLEDは表示の照明に使用するには輝度が高すぎる感もありますので場所によってはトレーシングペーパーや薄いプラバンで覆う等して輝度の調整をした方が実感的になる場合があります.

以上でLEDを使用したアクセサリの紹介を終わります.この他表面実装型のLEDは,駅終端の車止めのランプの中にも仕込んであります.また,現在使用している照明制御用のm 84デコーダーにはまだ空きポートがありますので,今後駅ホーム上にProceed indicator(日本の出発反応標識)を設置し,信号機と連動させて制御することも検討しています.

これらのアクセサリの製作が終了すると,あとは配線等の”付帯工事”を伴わないアクセサリをレイアウト上に配置していく作業となります.これらについては運転を楽しみながら「気ままに」配置していくという作業となりますのでこの紹介記事はここでひとまず終了し,その進捗に応じて適宜(不定期で)紹介したいと考えています.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(11) -情景6(架線関連設備)-

前回の信号機に続き今回は架線柱をはじめとした架線関連設備を紹介します.これらの設備も信号機同様実物の電化区間では必須の設備ですが,模型の機関車や電車を列車を運転するのに必須の設備ではありません.一方今回のような固定レイアウトではない可搬式のレイアウトセクションでは架線関連設備はは非常に破損しやすい設備ですので取り付け強度等,製作にあたっては色々考慮すべき点も多くあります.今回はその辺りについても述べてみたいと思います.それではまず最初にクロススパンの下を撮って駅に侵入するDouble Deckerのプッシュプル列車の動画と架線下に停車する電機の写真をご覧ください.

タワーマストに吊られたクロススパンの下を通過するDouble Decckerの近郊列車
レイアウト上のBR193とBRE10.3.パンタの構造に関わらずパンタ上昇時の摺板高さはほぼ同一です.

仕様書には基本となる構造と使用する製品の名称,架線柱とクロススパンの概略位置,ブラケットやクロススパンの高さ等を記載しました.
d) 架線柱
架線柱,タワーマスト(アンカーマスト)はSommerfeldt製の製品を使用する.
ブラケットおよびクロススパンは真鍮線による自作とする.クロススパンは直径0.6㎜の真鍮製.ブラケットは直径0.7ミリの真鍮線を使用し,はんだ付けにより組み立てて後ラッカー塗装を行う.
架線は省略する
使用する製品と使用数は下表のとおりとする

架線柱の概略配置図を下図に示す.架線柱,タワーマストの感覚は360㎜前後として適宜配置する.またパンタグラフの摺板と高さ方向で干渉する恐れのある部材の高さはレール上面より78㎜以上とする.

レイアウトに用いる架線柱のタイプはドイツ鉄道(DB)で多く用いられているLattice-type(格子構造)のタイプとしました.最近の高速新線等の架線柱はコンクリート支柱が用いられているようですが,Era III~EraIVの時代の車両が走るレイアウトにはやはり緑色に塗装されたLattice-typeの架線柱が似合います.日本では鉄道に用いられている碍子はほとんどが白色ですが,ドイツの鉄道では茶色の碍子が一般的なようです.また,機能はよくわかりませんが,架線柱の中には1本の架線柱に同方向に延びる2個のブラケットが装着されているタイプもあり,日本に比較してブラケットが大型で架線の上下寸法も大きいため線路が輻輳している駅構内では日本より架線設備が目立つ印象を受けます..

一方,ヤードや複々線区間では線路脇に建てられたタワーマスト間に渡したクロススパンで各線路の架線を支持しているいるところも多く,こちらはタワーマストが外側の線路の脇に建てられているのみであり,線路間には架線柱がなく,架線を支持する鉄製の横桁もないため見通しがよく,広々とした印象です.

日本ではタワーマストとクロススパンで架線が支持されている例は多くありません.私が知る限りでは東北本線の郡山駅の一部や奥羽本線の東能代駅で見ることができました.ただし東能代駅ではクロススパンで鉄製の横桁を支持しており,欧州の一般的なクロススパンによる架線支持方法とは異なります(写真は80年代のもので現存しているかは不明です).そこで今回は欧州の雰囲気がより感じられるように待機線とホーム上屋の間の架線支持方式にはタワーマストとクロススパンを用いました.

Lattice-typeの架線柱とTower mastはSommerfeldt,Märklin, Vollmer(Viessmann)社等から発売されていますが,仕様書に記載したように今回使用した架線柱とタワーマストはSommerfeldt社の製品です.Sommerfeldt社は鉄道模型の架線システムとパンタグラフを主に発売しているメーカーで架線柱は各国の種々のタイプを製品化しています.一方各社とも架線柱はパンタグラフによる架線集電に対応させているため,ブラケット付きの架線柱を使用してそのままベースに取りつけると架線を張らない場合はブラケットとパンタグラフが干渉してしまいます.Sommerfeldt製のブラケット付きの架線柱には嵩上げ用の部材が入っていますがそれを用いると実感を損ねてしまいます.それでもSommerfeldt製の架線柱にはブラケットがない架線柱がありますのでブラケット部分を自作すれば架線を張らなくてもパンタグラフと干渉しない架線柱が製作可能です.またタワーマストも色々な高さの製品が用意されており,その中から製作するレイアウトに適した製品を選択することが可能です.一方この架線柱は他のメーカーの架線柱と異なり架線柱に下部に固定用のM3-M4のボルトがついており,ベースに穴を開けて裏からナットで固定することにより架線柱やタワーマストをベースに強固に取り付けることが可能です.また本体は金属であり,多少何かをぶつけても樹脂製の架線柱のように折れることはありません.

Sommerfeldt製の架線柱は柱に固定されたボルトとナットによりベースに強固に固定することが可能です.

これは今回のような可搬式のレイアウトでは大きなメリットになります.反面,取り付け部が強固であるがゆえに何かが柱に強くぶつかると変形してしまい,形状がLattice-typeであることと相まって修復が大変(最悪の場合は交換)になりますので注意が必要で,特に今回のような床面に置くレイアウトでは足を引っ掛けないように注意が必要です.Sommerfeldt製のタワーマストの高さは140,160,200㎜の3種類ですが,私はその中で一番高さの低い140㎜のマストを使用しましたが実物のマストの高さはかなり高く,タワーマストを左右間隔約250㎜で配置する今回のレイアウトではタワーマスト間に渡すクロススパンの上下寸法が実物の印象より小さくなり実物の印象と少し異なってしまいます.しかし高さが高いと取り扱に支障をきたし,破損のリスクが高くなるように感じたためあえてこの高さの製品を採用しました.一方架線柱に取り付けるブラケットとTower mastに取り付けるクロススパンはパンタグラフと干渉しない形状として真鍮線により自作しました.欧州では架線集電の際の架線高さと車両のパンタグラフの高さはNEM規格(Normen Europäischer Modellbahnen(独語),英語ではStandards for European Model Railroads)で規定されており,架線高さはNEM201: Power wire Location でレール上面から60-73㎜(標準値69㎜),車両のパンタグラフの摺板高さはNEM202:Pantograph with Oveehead Wire Operation でレール面上から60-75㎜と規定されています.実際に手持ちの車両の摺板位置を測定すると73㎜前後でこの規格に適合しています.ちなみにNEM202にはパンタグラフの摺板の幅も国に応じた2種類が規定されておりNEM201にはカーブでの架線の許容変異量から架線柱の間隔を求める計算式が記載されています.このNEM規格と実際の車両の摺板高さの即位亭結果からこのレイアウトではブラケット,クロススパン共にパンタ摺板位置の高さはレール面上から78㎜を基準として製作することとしました.その製作過程の写真は下のとおりで,方眼紙上に作図したブラケット,クロススパンの形状をベーク板状に罫書き,真鍮線をマスキングテープで固定してはんだ付けしました.真鍮線はクロススパンは直径0.6㎜,ブラケットは直径0.7㎜の真鍮線を使用しました.クロススパンに使用する真鍮線は280㎜程度の長さが必要ですが,最近模型店で販売されている袋入りの真鍮線は長さが250㎜前後ですので使用できず,長尺の真鍮線を販売している模型店で入手しました.なお,架線柱に取り付けるブラケットの形状は製品の架線柱に開いているブラケット取り付け用の穴に合わせて決めてあります.組み立てには温調タイプのハンダゴテを使用しましたが,小手先温度が一定のため各部をはんだ付けする際にハンダの流れが一定となり快適な作業が可能でした.

ベーク板状で組み立て中のブラケットとクロススパン

クロススパン,ブラケットは完成後ラッカーをエアーブラシで塗装し,碍子をはめて完成となります.碍子は茶色のSommerfeldt製のものを使用しました.

Sommerfeldt製の碍子.日本の碍子とは色も形状も異なります.

なお架線柱の間隔は360㎜を基準とし,適宜増減しました.基準寸法を360㎜としたのはMärklin製の架線の最長長さが360㎜であるためその寸法を基準値としたためです.ちなみにSommerfeldt社の架線の最大長さは500㎜です.発着線と待機線の終端には架線終端のアンカーマストを設置し,マスト間に0.6㎜の真鍮線で製作したワイヤーを渡してあります.最初の設計段階ではアンカーマストを建てるスペースをあまり考慮していなかったため,待機線側はマストを建てるスペースが十分取れず,アンカーマストは架線柱を利用したものとなっています.実物の写真からもわかるようにタワーマストやアンカーマストの根本部はかなり太いため,設計時にはその大きさを考えてベースの大きさや周囲の建造物の配置を考える必要がありますが,今回のレイアウトではその検討が不足していたことが反省点です.

またホーム上屋内には実物にならい架線を固定するバーに似せた形状の部品を真鍮線で製作しドーム内に取り付ました.

線路上に上屋がある部分では架線は横方向に渡したバーに固定されています(Düisburg).
ホーム上屋に設けた架線支持部材

日本と異なり欧州の車両はアナログ時代には多くの車両が架線集電に対応していたためもあり,NEM規格では架線システムに対する多くあり,今回も架線(ブラケット)高さ等の寸法を決めるにあたり,NEM規格が設計の根拠として参考になりました.日本では固定レイアウトが少ないせいか架線柱を販売しているメーカーはあれど架線システムを販売しているメーカーはありません.今回架線柱を製作するにあたり改めてNEM規格に目を通したのですが,欧州では各国のメーカーが標準寸法が異なる各国の車両を製品化しているせいか,それらの車両をレイアウト上で走らせるために多岐にわたる規格が制定されています.また架線の高さはNMRAもStandard(RP:Recomended Practiceではない)規定しています.一方日本の現状は,最も基本となるスケール,ゲージについて1/80で16.5㎜の線路上使用するという日本独自の規格を制定して以降,それに付随する規格(Standard)は存在していません.車輪の形状等はNMRA規格を適用することは可能ですが,架線システムは国や地域で仕様が大きく異なり外国の規格の流用はできません.DCCの普及により架線から実際に集電して走る模型は今後減少していくと考えられますが,今回のようなレイアウトを日本型で製作した場合,ブラケットのパンタグラフと最も近い位置に設ける部材の高さはどの値に設定すれば良いのかが少し心配になりました.私の手元には実物がないのでわからないのですが各社の種々の形式の車両を線路上に置いたときパンタの摺板高さは大体揃うのでしょうか.

SBBのCrocodileも摺板高さはDBの機関車とほぼ同一です.

以上がこのレイアウトセクションの架線システムの概要です.これで模型の運転には必須ではないもののレイアウトの情景としては必要である信号機と架線システムの紹介が終わりましたので次回以降は情景のさらに詳細な部分について紹介していきたいと思います.

架線柱の下に停車するBR110.3とBR189

以上,最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(21) -最後に-

今まで20回にわたり私の製作したレイアウトセクションを紹介してきましたが,今回はその最終回としてとして私がレイアウトを製作しながら感じてきたことを記してみたいと思います.
⚫︎ レイアウトの細密度
最近の雑誌の自作車両の紹介記事ではキットを加工して細密化した車両の紹介記事が数多く見られます.その記事を見ると外観部分の加工のパターンの多くはキット部品の追加工による細密感の向上と部品の追加(細密感のある部品への交換)です.私もかつてキットの細密化を目指して加工を行なってきましたが加工箇所や交換・追加部品として何を購入するかは事前に計画を立てておく必要がありました(目論見が外れて余ったパーツも多数ありますが).「細密」の語釈は広辞苑によると ”細かいところまで行き届いていること.緻密,細密,綿密” と記載されています.ちなみにMuarklin社のカタログを見るとハイディテールのモデルには”Intricaate Model “や”fine detailed construction”という表記が見られます.

今回の私のレイアウトの製作過程を振り返ってみると最初にテーマ(北海道の機関区)を決めて建物等の構想を始めましたが車両を製作する時のように構想段階で細密度のレベルを考えるということはほとんどありませんでした.極力市販のストラクチャーやパーツは使わないという方針は立てましたがそれは類型化を避けるためであり市販品より「細密」にすることを目指したわけではありません.
一方,欧米では車両製作よりもレイアウト製作が主流ですが,私が毎月購読している米国の”Model Railroader”誌を読んでいると”realism”という単語が目立つような気がします.”realism”の和訳を「現実感」とすると,ここではrealismとは「レイアウト(+車両)を見て実感的に感じる」ということではないかと思います.一方車両の「細密化」は「車両を見て実物のように感じる」ようにするための手段で実現にはEngneering的な要素が多くそこに感情の入る余地はあまりありません.細密化は手段でrealismは細密化の結果です.それに対してレイアウトを実感的に仕上げるためのアプローチは多種多様であり,Engneering的要素の他に感性が必要で,造作の細かさはレイアウトを実感的と感ずる要素の一部でしかありません.そのために細密レイアウト(fine detailedなレイアウト)という概念は存在しない気がします.

⚫︎ レイアウトの「実感」とその限界?
レイアウトの設計にあたり特に気をつけたのは建物の大きさです.幸い日本家屋は”1間”という建物の統一基準がありますので横方向の寸法どりは比較的容易です.問題は高さ方向で基準はあまり明確ではありません.こちらはかつてTMS誌に掲載された荒崎良良徳氏執筆の”日本の木造家屋”という記事を参考に写真も参考にしながら寸法を決めました.ところが建物が出来上がって配置してみると何となく建物が小さく感じます.国鉄の蒸機の全高は4m弱ですので土台の低い機関区の建物は結構小さく見えるのですが,それでも想定より少し小さく,少し大きめに作った方が良かったのかと思いました.ただよく見るとどうも建物が小さく見える原因は線路の軌間の広さのような気がします.特に車両がいない詰所前でフィギュアが配置されているところを見るとその感が大きいように感じます.

建物とフィギュアに対してレール幅が広い印象ですが,”16番ゲージ”の場合これはどうしようもありません.

また蒸機が出区していくシーンを望遠マクロで前がちに撮影すると車両単体で見た時よりも「ガニ股」が気になります.私は今まで外国型のレイアウトを製作していたので当然のことながらこの辺りには全く問題を感じていなかったため余計気になったのかもわかりません.もしレイアウト上で細密機と調和する実感的なレイアウトをを製作したいと思ったらまず行なうことは13㎜ゲージの採用なのかもわかりません.

車両の細密化を行っても期間の広さはどうにもならず,実物の印象とはやや異なります.

⚫︎ レイアウトの作成にあたって留意したこと
このブログでたびたび触れてきた鉄道模型隅に掲載された記事に1951年のTMS誌に掲載され1971年に再掲された故中尾豊氏の”鉄道模型における造形的考察の一断面”という記事があります.この記事はTMS1000号に添付されたDVDの中の1951年1月号に収録されていますので読まれた方も多いと思います.その中で中尾氏は(以下引用)「我々が一般に「実感」と呼ぶものは,単に実物らしく見えるとか実物を彷彿せしむるのに充分であるとか言ったものとは多層趣きを異にしている.それはすなわち”我々があらかじめ実物に対して抱いている美的感動やそれに関する記憶や連想の基礎の上にモデルの鑑賞者としてモデルに接した時に感ずる思考の作用が一つの昇華作用を起こしてそれに一致する”ことである.」と述べておられます.私はこの言葉自体に全く異論はなく,モデルにおける実感はただ実物を正確に縮小して製作しても得られないということは忘れてはならないことだと思います.ただ,この記事を読み進めていくと中尾氏は「車両の模型」を念頭に述べているように感じます.実際に風景を1/80に縮小したレイアウトを製作することは不可能ですし前述のDVDの中に収められている創刊間もない頃のTMS誌を見るとレイアウトの紹介記事はほとんどなかったことからもそのように推察されます.一方これも過去に触れましたがModel Railroader誌の2024年10月号にTony Koester氏がTrain of Thought というコラムで“The look and feel of the place” と題した記事を執筆されています.この中で氏はPrototype Modeling(実物を「縮小して再現」するレイアウト?)についての留意点述べておられます.それを要約(意訳)すると① Prototpe Modelingは実物を厳密に縮小しなくても良い.どのように再現するかについて熟考し,無謀な朝鮮はすべきではないがすぐには諦めないことが必要である.② Prototpe Modelingの目的は特定の場所,特定の時代の雰囲気を再現することである ③最終的にレイアウトにするためにその「特定の場所」を繋ぎ合わせてリアルな鉄道として完成させる ④ レイアウトの製作にあたっては再現する場所の縮尺図を入手し、選択した縮尺に合わせて正確な位置にレールを固定する必要はない.それよりシーンの本質を捉え、その場所と時代を鑑賞者に伝えるための重要な特徴がそこに存在するように製作する.という内容です.これを読んだ時この内容は上記の”鉄道模型における造形的考察の一断面”のレイアウト版のように感じ私は常にこの言葉を意識しながら製作していました.
⚫︎ 「それらしく作る」ということの楽しみ
上にModelrailroader誌に「realism」という文言が多い印象があると記しましたが私が子どもの頃読んでいた「小供の科学」や「模型と工作」等の科学雑誌に掲載されていた車両の作り方の記事には「それらしく作る」という文言が多かった印象があります.フレーズとしては「xxはyyを利用してそれらしく作ってください(作りました)」というようなフレーズで,鉄道模型の専門誌であるTMS誌にもこのフレーズは見られたように記憶しています.パーツの充実等もあり現在では車両工作記事でこのフレーズを見かけることは殆んどありません.ただ,レイアウトでは山も樹木も「それらしく」作るほかありません.今の時代,車両製作で細密機を製作する場合「パーツを購入して半田で取り付けておしまい」という工程が数多く,制約条件の中で色々工夫して工作し実感的な車両を製作するという楽しみがなくなっているような気がします.レイアウトの製作ではこの「制約条件の中で工夫して作り上げる」という楽しみが数多く残されており,「それらしく」作ったものがレイアウト上で「実感的」に見えた時には達成感を感じ,車両製作とは違った鉄道模型の楽しみ方を味わえるような気がしました.またレイアウト上を走る車両も厳密に実物の形状を再現しようとせず「それらしく」作ってもそれほど実感を損ねない場合もあるようです.冒頭の写真のC12もそうですが,私の製作した711系モハ711では変圧器や半導体の冷却装置はホワイトメタル製の気動車エンジンと客車の冷房電源用のディーゼル発電機を利用して「それらしく」作ってあります.それでもレイアウト上ではそれほど違和感はありません.

床下機器にDC用のホワイトメタルパーツを使用したモハ711.左の機器の空気取り入れ口は103系車体のモーター冷却風取り入れ口パーツをを流用しています.

以上,レイアウト完成後に私が思っていることを記載させていただきました.内容の中には過去に記したことと重複している部分もありますが,それらの思いは今回のレイアウトを作った後でも変化がないことの印としてお許しください.
以上をもって本レイアウトの紹介を終わります.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(20) -レイアウトの製作を終えて思うこと(レイアウト上で実感を得るための車両の細密度)-

私が機関区のレイアウトを製作し製作しその中で機関車を運転して感じたことは実感を感ずるためにはある程度以上の細密度不要でより重要なのは全体のプロポーションであるということでした.一方最近の雑誌の車両工作関連の記事を見ていると自作(キット組み立て)車両の細密化には目を見張るものがあり,その細密化は運転のためのゲージと言われたNゲージにも及んでいます.当初私はレイアウトの完成後レイアウトをDCC化しようと考えており,その選択肢としては今のところ市販のDCCに対応した蒸機を購入するしかありません,私は今まで私は車両は自作を行ってきたためあまり市販品の状況には関心はなかったのですが,改めてレイアウトに使用する車両を購入するという目で市販品をみると,DCC対応製品もそれ以外の製品も常時市場に多種の機種が在庫しているとは言えず欧州のメーカーのように向こう1年間の新製品がまとめて発表されるわけでもありません.またてい新製品が発表されても発売日未定の製品が少なくありません.レイアウトに似合う好みの車両を新たに入手する目処は全く立てることができないと言うのが現状です.

それはさておき私は以前の記事でレイアウト上で実感を得るための蒸機の細密度は老舗メーカーのダイキャスト製品ではないかということを述べました.そこで今回は市販品(量産品)の蒸機はどのような方法でその質感と細密感を出しているかについて調べてみようと思いました.とは言っても手元には日本型の製品はありませんので今回は各年代の製品が揃っているMärklin社製の蒸機で外国型の機関区セクションを用いて比較してみたいと思います.日本型レイアウトの紹介記事でありながら外国型車両の話になってしまうこと,ご容赦ください.

外国型レイアウト”ALTENHOF機関区”上に並ぶ入門機(手前側: BR03)とfine detail機(後方:BR50)

下の写真は1998年に発売されたDigital Starter Set (#29845)にアソートされていたBR03です.上の写真の手前側に停車している車両です.機番は1022号機で青色(Steel biue) 塗装の機体です.スターターセットの機関車ですのでディテールは最小限で,異なる機番の黒色塗装機は入門者向けの”HOBBY”シリーズで長年単体販売されていました.スターターセットにはこの機関車の他にディーゼル機(V160)1台,客車3両,貨車4両,レール,分岐器,トランス,デジタルコントローラー(#6021)が同梱されており,それらを別に購入するのに比較して非常に安価なセットです.この機関車の金型は1973年に発売していたBR003等と同じ金型ではないかと思われ方に彫刻されているロゴは旧ロゴで原産国はMade in West Germanyと彫刻されています.手すりや配管は全て型で表現されており別付けパーツは発電機,汽笛,ベル,コンプレッサ程度です.ただ,ダイキャストの肌面は塗装は現在の製品と比較しても遜色なくプロポーションも良好です.

ダイキャスト製BR03.第3動輪のスポーク部が完全に抜けていないのは動輪にギアが取り付けられているため.

余談ですが1974年頃,日本でもダイキャスト製のC62がマイクロキャストから発売されました.TMS誌のマイクロキャストの広告には三井金属の名称があり三井金属ブランドの製品もあるようです.構造は上記のMärklin製の蒸機に似た構造ですが当時のTMS誌の製品の紹介によると空気作用管が別付けであったりロストパーツも取り付けられていると記載されており,単に初心者向けの安価なモデルを狙ったわけではなかったようです.写真を見る限りではキャブ周りの印象が実機と少し異なりますが真鍮製蒸機と並んでレイアウトにいてもそんなに違和感はなかったのではないかと思います.価格は当時の真鍮蒸機と同等で決して廉価版というわけではありませんでした.当時は真鍮製蒸機に一部に樹脂製品が取り付けられていてもそれだけで拒否反応をおこすマニアも多かったため販売数量が伸びなかったのか,当時のSLブームから想定した新規鉄道模型愛好者の増加の目論見が外れ新機種の型投資が回収できなかったのかは知る由もありませんがC62以外の機種が発売されることはありませんでした.かく言う私も当時真鍮製のC62とこのC62のどちらを買うかと聞かれたら真鍮製を選んだ気がします.

下の写真は上記のBR03のレイアウト上のクローズアップ写真です.全体的なプロポーションには問題はないので遠目に見てあまり違和感はありませんが流石にアップで見ると後付け部品の多いBR50に比較して平面的に見えます.欧州の機関区の建物は日本の建物に比較してバロック風の装飾の多い建物も多く,使用するプラキットの線も割と太いため建物に比較しても少し平面的な印象です.余談ですがMärklinの2025年新製品カタログにはこのBR03と同じ(同等?)の型を使用した新製品がビギナー向けモデルとして掲載されています.もちろんDCCデコーダー(サウンド付き)を搭載しており23個のファンクションが装備されています,ただ現在Märklinの標準製品はMärklin Digital(mfx)とDCCの両方に対応していますがこのビギナー向けモデルはDCCには未対応です.リストプライスはVAT込みで329€です.ちなみに同じカタログに掲載されている標準品?のBR01のリストプライスは549€です.

手前側がスターターセットのBR03,奥側が2000年製のBR50

このBR03の各部の詳細を見ると,ボイラーの配管は全てボイラーとの一体成形です,ただ砂撒管元栓等一部ははかなり繊細な表現になっています.この頃の日本型真鍮製蒸機は砂撒管元栓を表現した製品はまだ少なかったと思いますので日本の真鍮製蒸機より細密です..

スターターセットのBR03の3度ドーム付近のディテール

ボイラーの配管もかなり細く表現されていますが外側の配管はボイラーから庇状に張り出しています.当時の日本の蒸機マニアの間ではオール真鍮製の蒸機以外の蒸機は鉄道模型ではないという風潮も少なからずありました.上記のマイクロキャスト製品のこの辺りの表現がどうなっていたかはよくわかりませんが,蒸機の模型はオール真鍮製一択と言う風潮であった当時の日本では「これはおもちゃだ」と感じた方も少なくなかったと思われます.ただ蒸機ではありませんが最近でも欧米ではファインディテールの象徴?として「手すりが別付け(The Locomotive has separaely Grab Irons)」という説明文がよくカタログに記載されています..欧米ではほとんど車両を自分で製作する方は殆んどおらず車両はメーカー製品一択ですがこの辺りの形態には不満を持っている方が少なくないのかもわかりません.

スターターセットのボイラー上の配管.別付けの配管はなし.

Märklin製蒸機の配管が別パーツ化されるのは今から四半世紀前の2000年前後であった気がします.下の写真は2000年に発売されたBR50ですが,金型を全面的に改修し,バルブギアも改良したモデルで新製品の目玉商品としてカタログで大きく扱われている製品です.このモデルではボイラーケーシング上を這っている配管以外は配管をほぼ別パーツ化しています.そのパーツは場所に応じて金属と樹脂が使い分けられており,ボイラーの全長にわたって取り付けられている手すりや配管が並行しているところは金属線が使用され,プラ製部品ではある程度避けられない手すりの波打ちを避けており,この辺りは遠目から見た時に実感を損ねる部分をよく心得て設計しているという感があります,

2000年製のBR50のディテール.自作品にこのレベルのディテールをつけたらもう細密機?

また下の写真のBR03.10(2010年製)の別付け配管では樹脂製のクランク状になっている2本の配管は互いに独立させず間に間隔出しの部材を設ける等,実機の細部の厳密な再現には拘わらない工夫も見られます.

2010年製BR03.10の配管.クランク状配管の垂直部分に両者を繋ぐ部材が見える

一方機種によってはボイラーに沿う配管がボイラーの上部にありますが,比較的新製品でも型抜き方向の関係上,そのような部分はパイプの上面が平らになっています.ただこちらも至近距離で観察しないと殆んど気づきません.

2018年製のBR39. 上部のボイラーに沿った配管はボイラーと一体で上面が平面.

火室からキャブ下に至る配管と運転室から各部への配管はバラキットを使用して細密化加工する際の「見せ場」の一つはですが,下の写真はその部分のBR03.10(2010年製Insider Model)の写真です.細密度としては自作で細密機を作る場合でもこの程度のディテールがあれば細密感は十分出せるような気がしますが,このモデルではそれらの配管は全て樹脂製です.この部分を詳細に見ると見るとエアータンク周りの赤色の配管はエアータンク前方の2本の配管の後ろの運転台側に伸びる細い配管を除いて一体で成形されています.キャブから出る配管も運転台側に伸びる4本の配管を除いて一体成形の部品です.つまりこの部分の配管群は2個の樹脂製パーツで構成されていることになります.樹脂製パーツですのでさすがに線は太いですがレイアウト上ではあまり気になりません.一方それに比較すると全体的に配管が平面的なのが気になりますがレイアウト上で実感を損ねるレベルではありません.最近読んだMärklin MagazinによるとMärklinでは設計時に別付けパーツの取り付けに要する時間(工数)を決めてそれに適合するように別付けパーツを設計しているようです.このようなモデルを見るとメーカーは設計者とレビュアーが模型に要求される細密感と部品の製造における制約事項と許容できる組み立て工数のバランスをとってコストを意識しながら設計していることが感じられます.以前の記事でレイアウト上で実感を得るための細密度は内外の老舗メーカーのダイキャスト製品ではないかと述べましたが「内外の老舗メーカー」と記したのは長年鉄道模型を設計製造販売している老舗メーカーはレイアウト上で実感を得るための細密度とコスト等生産上の制約のバランスをうまく取るノウハウがあるように感じたためです.

最後はテンダーの写真です.BR50のテンダーはプラ製ですが引けは殆んど見られず塗装の艶の調子も揃っていますので違和感を全く感じません.側板の平面製はダイキャストや真鍮製のテンダーに引けをとりません.またこのテンダーのアンダーフレーム(赤色の部分)と台車は未塗装です.また上の写真のエアータンク周りの部品は全て未塗装である一方,ランボードの赤は塗装となっていますがその差はほとんどわかりません.また台車等の未塗装部品には樹脂の質感を感じさせず樹脂の質感を目立たなくする(樹脂の引けを目立たなくする?)何やら微妙な梨地となっています.この辺りもメーカーのノウハウなのでしょうか.

上の細部写真の製品はBR50は2000年に型を改修した製品(完全に新規型ではない),BR03.10は2010年のMärklin Insider Modelで完全な新規型,BR39は2014年に新規型を起こしたM¨arklin Insider Modelの流れを汲む2018年の製品です.これらを見ると多少の差はあるものの2000年に発売されたBR50のレベルでレイアウト上の機関車の細密度は十分ではないかと考えます.Märklinも最近の製品ではさらに細密度を追求するのではなくドラフトと同期する発煙装置や集電不良に伴うサウンドの停止を防ぐためのキャパシタの追加等,細密化ではなく走行時の機能や走行性のアップに注力しているようにも感じます.日本でもこの程度の細密度を持ちサウンドデコーダーを装備したDCC対応の蒸機が各種発売されるようになれば私の製作したレイアウトもDCC制御で大いに楽しめる日が来るのですがそれはいつの日になるのでしょうか.

機関庫前ののBR01(2007年製)とBR39(2018年製)
炭水線のBR03.10(2010年製)

日本型レイアウトの記事が外国型の車両の紹介記事になってしまったこと,ご容赦ください.次回,全体的なまとめを記してこのレイアウトの紹介記事は最終回としたいと思います.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(19) -レイアウトの製作を終えて思うこと(運転という観点で)-

前回はレイアウト上の機関車の細密度がレイアウトを見た時の「実感」にどの程度影響を与えるかについての見解を記載させていただきましたが今回は私がこのレイアウト上での車両の運転した際に感じたことを記載してみようと思います.

レイアウト上のC12.この車両は1980頃ににカツミ模型店のシュパーブラインシリーズのキットを組み立てたものでモーターは当時蒸機に一般的に用いられていたDH−13を使用しています.

私が以前このブログで紹介したMärklin Digitalを使用した機関区のレイアウトセクションの製作を開始したのは2010年頃でしたがこの時点で今回製作した日本型のレイアウト上で走らせようと思った蒸機は一部を除いて殆んど存在していました.それでも当時私が今回製作したような日本型のレイアウトを製作せず外国型のレイアウトを製作した理由は車両の ”走り” でした.当時手元にあった日本型の蒸機は全て1960年代から使用されている駆動機構でモーターも解放式の横型モーターと言われるモーターで走行性能や走行音は満足とはいえない状況でした.それに対し当時手元にあった外国型のデジタル制御の蒸機はコントローラーのノブ位置に応じて車両速度が変化しスロー運転も問題なく行なえます.また2線式のような車両留置用のギャップの設置と切り替えも不要で機関車の駐機も場所を問いません.当時私はそのような点に大きなメリット感じ,”運転を楽しむならこれしかない”と考えて製作したのが最初に製作したレイアウトセクションである”ALTENHOF機関区”でした.その後のMärklin Digitalを含むDCC制御の発展は凄まじく,製作当初は予想していなかった多彩なサウンドやライトの制御が可能となり,その後導入した自動運転機能と相まって狭いレイアウトセクションでも充実した運転が可能になりました.
今回日本型レイアウトの製作に当たっては手持ちの車両で果たして低速でのスムーズな走行が要求される機関区をテーマとしたレイアウトセクション上での運転が楽しめるのかは製作当初から懸念点として把握しており,このレイアウトの一連の紹介記事の冒頭にもその旨は記載させていただきました.そして実際にレイアウト上で手持ちの車両を走らせてみると想像どおり機関車の走る周囲の情景は機関車の走行性能の悪さをカバーするものではなく,このレイアウト上での運転はサウンド付き車両のDCC運転に比較すると残念な結果でした.改めて調整を行っても私の技術力不足もあってかなかなかデジタル制御のような”全速度域での”Silkyな走り”には近づけられません.これは結果的にレイアウト製作前に想定したとおりの結果でしたが,そうは言っても自分が苦労して製作した機関車がレイアウト上で動くのは見ていて楽しく,それはそれで充分楽しめます.ただこれはあくまでも私の私の感覚ですが,機関区のレイアウトセクションでの運転という観点ではレイアウトという舞台を用意して昔苦労して製作した思い入れのある機関車が動くのをレイアウト上で眺めてもそれはデジタル制御での運転の楽しみを凌駕するものではないと感じました.

レイアウト上を走るD H-13モーターを搭載したC62.異音はゴムジョイントの劣化による振動のようです

私が現在使用しているパワーパックはMärklin社のZゲージ用のパワーパックで1995年に購入したもの(ロゴ以外の形状は1972年に初めてZゲージ用として発売されたものと同一)ですので出力が小さくどこまで平滑な直流が出力されているかは不明です.このパワーパックを使用しているのはい今まで使用していたパワーパックが故障したためで,最新のパワーパックやPWM制御のパワーパックを導入すれば少しは現状が改善されるのかもわかりませんが.アナログ運転機器にこれ以上投資する気にもなりません.現在所有している蒸機をDCC化することは駆動系全体の大改造が必要と思われ,私には資金的にも知識的にも技術的にも不可能で,残された方法は既成の日本型DCC車両を導入するしかなさそうです.私の外国型レイアウトを走る車両は全て既製品で自作の細密機ではありませんがそれでも運転は充分楽しめることは経験済みですし前回の記事のようにレイアウト上の運転で実感を得るのに細密機は不要ということは確認できましたので,市販品を購入して運転を楽しむことも考えました.手元にあるMärklin Central Station3はDCCにも対応していますので制御システムのインフラは整っています.しかし一般の(資金力の乏しい?)鉄道模型愛好者が購入できる価格でDCC対応を謳う製品を発売しているメーカーはごく一部(1社?)で常時多くの機種が市場に在庫してはおらず,これから日本でメーカーや雑誌の発行元がが主導してDCCを推進していこうという意欲も全く感じられません.機関車から音を出すだけであればPFMサウンドやカンタムサウンドもありますが,どちらもパワーパックが機関車1台に1基必要でこの世王なレイアウトでは現実的ではありません.このレイアウトの製作を開始した時にはレイアウト完成後,このレイアウトを何らかの形でDCC化しようと考えていたのですが,レイアウトが完成してあらためてDCC導入に向けて検討を開始てもこのような状況は以前と全く変わっておらず,仕事をリタイアし鉄道模型に投資できる金額も限られる中,正直日本型のDCC対応車両を購入する気が起きません.残り少ない人生で今後も鉄道模型を運転という面から楽しもうと考えた時,日本型HOスケールの鉄道模型をDCC制御でPlug & Play的に気軽に楽しむことは少なくとも現時点ではもう諦めた方が良いのではないかとさえ感じている今日この頃です.かつて鉄道模型趣味誌の主筆であった山﨑喜陽氏がご存命であったら今の状況をどのように思われるのでしょうか.

外国型の機関区セクションを走るBR39(制御方式はMärklin digital). バックグラウンドのノイズは発電機のタービン音手動でOn/OFF可能)です.対向するBR01はランニングギアの点検灯を点灯させています.

苦労して製作したレイアウトセクションのまとめとしてこのようなネガティブなことを書くのは正直気が引けたのですが少なくてもこれが現時点における私の率直な思いです.どこかのメーカーからサプライズ発表でもあればまた気が変わるかもしれませんが・・・.もちろん鉄道模型の楽しみ方は人それぞれですので私とは異なった感覚を持つ方も多いと思います.あくまでも私の感じたこととしてお読みいただければ幸いです.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(17) -アクセサリの製作(6:その他のアクセサリ)-

このレイアウトに配置したアクセサリを紹介するにあたり最初に”構想のプロセス”という項題の記事で製作するアクセサリを一覧表で紹介しました.その時はこの表に従ってレイアウト上のアクセサリを体系的に紹介しようと考えていたのですが,私のいい加減な性格が災いし次第に混乱してきてしまいましたので今回は”その他”と題してこれまで紹介していなかったアクセサリを紹介させていただきたいと思います.

これから紹介するアクセサリは上表のものですが,以下にそれらのアクセサリをレイアウト上に配置した時の写真と製作中の写真で紹介したいと思います.
⚫︎ 機関庫内部
下の写真は機関庫を取り外した機関庫内部の写真です.右上のロッカーと戸棚,左下の机は建物の室内に配置したものと同一でケント紙で作成しました.パレット,コンテナボックス,木箱はPreiser製のパーツです.作業台と脚立は自作で真鍮角棒と真鍮線,プラバンより作成しました,2段式の金属製の作業台は真鍮角棒と網目板をハンダで組み立てた自作品です,奥に見えるハシゴはエコーモデル製のパーツを使用しました.脚立は真鍮角線と檜角棒から自作しました.スペースにあまり余裕がないのでこれらを配置する際には車両との接触に注意が必要です.

機関庫内に配置したアクセサリとフィギュア

踏み台,作業台は檜角棒とスライスしたSTウッドで製作しました.ホワイトメタル製のパーツも発売されていますが木製の方が質感もよく費用も抑えられます.

組立てが済んで塗装を待つ木製の作業台

金属製の作業台は真鍮角線と網目板で製作しました.パーツもありますがキット加工等真鍮工作の経験があれば簡単に製作でき費用も抑えられます.

真鍮角線と網目板を使用して自作した金属製の作業台

⚫︎ 乗務員詰所の入り口付近
左から,水道蛇口はエコーモデル製パーツ,流しはケント紙製の自作品です.写真ではわかりにくいのですが流しと入り口の間にエコーモデル製の自転車が置いてあります.スノーダンプはケント紙と真鍮線からの自作品,防火用水の本体(ドラム缶)は檜丸棒とラベル紙帯からの自作,蓋はプラバンとプラ棒からの自作です.建物に立て掛けてある箒はPreiser社製の消防士のフィギュアの同梱品です.

乗務員詰所入口付近のアクセサリ

⚫︎ 砂煎り小屋付近のアクセサリ
物干しは真鍮棒,真鍮帯板,真鍮帯材を用いた金属製で竿は真鍮線,洗濯物はコピー用紙から作成しました.この写真のドラム缶はPreiser製のパーツ,その横の袋もPreiser製のパーツです.

砂煎り小屋付近に配置したアクセサリ

組み立て中の物干しです,真鍮線,真鍮角棒,真鍮帯板を使用し,はんだ付けで組立てました.

製作中の物干し

⚫︎ 油庫・線路班詰所付近
線路班詰所に立て掛けてあるツルハシはエコーモデル製パーツ,その横の石(バラスト)の入ったカゴはPriser製のパーツ(マルシェのじゃがいも?が入っている籠)です.油庫前の消火砂はEvergreen社製の角パイプをスライスし中に砂を入れたものです.

油庫,線路班詰所付近のアクセサリ

⚫︎ 線路班詰所と倉庫の付近
ゴミ置き場の囲いは檜角材(底面はケント紙)による自作,木箱.コンテナ.パレット,ドラム缶はPreiser製のパーツです.その手前のゴミ焼却機はエコーモデル製のパーツを組み立てました,ゴミ置き場にある袋はPreiser製のパーツで,その他のジャンクはプラ角棒等から製作しました.

線路班詰所と倉庫付近のアクセサリ

⚫︎ 気動車燃料補給設備周辺のアクセサリ
消火用砂は油庫の前にあるものと同じものです.ドラム缶はPreiser製です.小屋の前の消火器はエコーモデル製,ポリタンクとホースリールはPreiser製の消防士フィギュアの付属品です.給油用ホースはAWG #30のリード線で先端にPreiser製の消防士フィギュアの付属品の中にあった放水ノズルを取り付けてあります.

気動車燃料補給設備回りのアクセサリ

⚫︎ 機関区事務所付近
機関区事務所付近にはスノーダンプ,ドラム缶を配置し,古枕木にエコーモデル製のハシゴを立て掛けてあります.

機関区事務所裏手に配置したアクセサリ

未塗装状態のアクセサリです.脚立はハシゴ部分を真鍮角線で製作し,台は木製です.机は建物の内部に配置したものと同一です.

完成して塗装を待つアクセサリ

ドラム缶は比較的多く必要でパーツを購入すると高価になりますので当初檜丸棒とラベル紙で自作していましたが,海外サイトのセール品の中にPreiser製のドラム缶がありましたのでそれを購入して使用しました.価格は30個入りで6.8€(VAT,送料別)でした.

Preiser製のドラム缶キット.付属しているデカールは未使用

日本ではPreiser社の製品はフィギュアが有名ですがそれ以外にも結構色々なパーツが販売されています.今回は以前製作したレイアウトに使用した時余ったマルシェのキットの野菜籠や野菜が入った袋を砂利運搬用の籠やごみ袋に流用しています.

砂利を入れた籠やゴミ袋はPreiser製のマルシェのキットを流用

⚫︎ 機関区入り口の門
機関区入口の門はEvergreen社製のプラ製角棒・丸棒から作成し,真鍮線と割りピンで作ったヒンジにより開閉可能としています.

機関区入り口に設けた門扉

塗装前の部品です.ヒンジは門側にL時に曲げた真鍮線,門柱側に割りピンをの受けをもけてあります.

Evergreen社製プラ素材で製作中の門扉

⚫︎ 機関区事務所入口付近
機関区事務所入口付近には植栽を設けてあります.低木はBusch製のオランダフラワーに緑色のターフを接着したもの,草木はNoch製を使用しました.Noch製の草木は日本ではKATOから販売されていますが少し色調が異なる気がします.写真で半分写っている入口のゲートは真鍮版と真鍮線で製作した自作品です.

機関区事務所入口脇の植栽

Busch製のオランダフラワーとNoch製の草木の写真です.これらは日本ではなかなか手に入らないので以前海外の模型店に発注したものです.ある程度数がまとまった場合海外からの購入の方が送料を入れても安価(税金は欧州のVATが非課税となり輸入時に原価(現地価格の6割程度)に10%の消費税がかかります)ですが昨今の欧州の物価高による値上げと円安によりその差は小さくなっています.

植栽には海外模型店から購入した素材を使用

⚫︎ 草木(雑草)
機関区の植栽以外の草木(雑草)は水を扱う設備の付近や人が立ち入らないところに配してありますがあまり荒れ果てた感じにならないように留意しました.

給水塔付近の雑草

⚫︎ 機関庫周り
機関庫と柵の間には車輪とドラム缶を配しました.国鉄の機関区では敷地内にあまり車輪のようなものが無造作に放置されていた記憶はありませんでしたがアクセントとして設置してみました.

機関庫横に配置したアクセサリ

⚫︎ フィギュア
フィギュアは一部にKATO製を使用した他はPreiser製の未塗装品を塗装して配置しました.私は#16325(Railway parsonnel and passengers)というアソートセットを使用しました.未塗装品は1パッケージに120体入っていますが全てが異なる形態ではなく,同一形態のものが同数入っているわけでもないようです.レイアウトには同じ形態のフィギュアを複数配置しています.塗料は主に色のりの良いHumbrol製のエナメル塗料を使用しました.Humbrol製エナメル塗料は色ノリがよく塗膜も丈夫ですが反面乾燥に時間がかかるため作業は気長に行うことが肝要です.Humbrol製のエナメルは使用前に十分に撹拌することが必要ですが棒状のものではいくら時間をかけて撹拌しても不十分で筆の穂先を容器のの壁面に擦り付けるような形でで十分撹拌することが必要なようです.

レイアウト上に配置したフィギュアは一部にPeriser製の未塗装製品を塗装して使用

塗装はまず肌の部分から開始します.

フィギュアの塗装はまず肌の部分から開始します

その後髪の毛(黒),ヘルメット(黄色),作業服(紺色),作業ズボン(紺色または濃灰色),シャツ(白),道具(黒,黄色等)の順に塗装していきます.以前一般人を塗装した時には洋服のカラーコーディネートに気を使いましたが鉄道員の場合は使用する色が限られているのでその点は簡単です.

道具部分の塗装を残す状態のフィギュア.ランナーから切り離すのは最後の工程

⚫︎ アクセサリの配置
以上でレイアウト上に配置したアクセサリの紹介を終わります.最後にこれらのアクセサリを配置する際に留意した点について述べてみたいと思います.
これらのアクセサリを作成する際,何個製作するかは実際にそれらのアクセサリを配置する場所を決めて数量を決めますが,製作の際には失敗時の予備を含めて多めに製作したものもあります.一方実際に想定した場所にアクセサリを配置すると違和感を感ずる部分もありました.このような時には構想にはあまり拘らずに適宜修正を加えました.また製作したアクセサリを全て使用することを優先することは絶対に避けた方が良いと思います.全てのアクセサリはそこに存在する必然性が必要であるということを忘れずに配置を決めていくことが重要だと考えます..

以上でレイアウト上に配置したアクセサリの紹介を終わります.今回でレイアウト各部の紹介は終了し次回以降はレイアウトを製作しての書簡等を述べてみたいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(16) -アクセサリの製作(5:機関区の設備)-

蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(15)でアクセサリの一部を紹介した後,諸般の事情でこのレイアウトに関する紹介を長らく中断してしまいましたが,引き続き(16)としてレイアウト上のアクセサリの紹介を続けさせていただきます.今回は下の表に示す機関区設備のアクセサリを紹介したいと思います.

⚫︎ 構内踏切
踏切板は檜角棒です.幅は両側にレールを取り付けた時の幅がNMRAの規格(最小値)である14.4㎜より小さくなるように決定します.私は余裕を見てレール取り付け後の幅が12-12.5㎜になるように踏切板の幅を決めました.檜角棒は所定のサイズに仕上げた後ラッカー塗装し,Humbrol製のエナメルで塗装したCode70レール(IMON \Shinohara製)を取り付け全体をIndian Inkでウエザリングした後,ゴム系接着剤で所定位置に固定しました.接着は全てゴム系接着剤で行っています.

製作中の構内踏切用パーツ
完成した踏切板

取り付け後,踏切板が走行用レール高さより高くなっていないことを十分に確認します.問題なければ念のため踏切を通過する車両のKadee Couplerの解放ピンが踏切板と干渉しないことを確認して完成としました.

レールに取り付けた踏切板

⚫︎ 転轍器付近の目隠し
実際の分岐器は転轍機とポイントレールの間に切替用の動作機構が存在します.しかし模型の場合はその機構はダミーとなりますので省略し,網目板で製作した蓋を取り付けてあります.このような実例があるかどうかは不明ですが積雪地にはありそうではないかと考えてこの形としました..転轍機の反対側もポイントレールの可動部がレールの外側に突出しておりバラスト散布ができないのでその部分にはSTウッドで作成した蓋状のものを取り付けました.

ポイントレール転換機構の目隠し板

⚫︎ 防護柵
防護柵は2㎜x2㎜の檜角棒を用いて製作しました.踏切部の防護柵とそれ以外の場所の防護柵の違いは長さのみで,それ以外の構造は両者同一です.組立は木工用ボンドを使用しましたがはみ出すと塗装後に見苦しくなるので組立時にはみ出さないよう注意が必要です.取り付けは最も外側の角材の底面に真鍮線を埋め込んで地面に開けた穴に差し込んで固定しました.

油庫の前に設置した防護策

⚫︎ 古レール・古枕木
蒸気機関車が活躍していた頃の機関区では補修用でしょうか,線路際によく古レールや古枕木が置かれていました.古レールは檜角棒で台座を製作しその上に切断したCode83レールを並べてあります.枕木は2㎜x2㎜の檜角棒を使用しましたが少し細い印象です.レールはHumrol製のエナメル塗料,枕木はラッカーで塗装しIndian inkでウエザリングしました.

レイアウトに設置した古レールと古枕木

⚫︎ 運搬用トロッコ
物資運搬用のトロッコは2台製作し短く切断したレールの上に配置してあります.車輪はNゲージ用の車輪を用いて両端の軸を切断した後車軸を中央で切断しパイプを嵌め込んで期間を広げました.本体は1台を台枠のみとし,もう1台は台枠状に木製の床があるタイプとしました.台枠はEvergreen社製のプラ素材,床はSTウッドを用いて製作しています.台枠が露出しているトロッコの台枠上には古枕木を載せてあります.

短く切断したレール上に設置したトロッコ2種

⚫︎ 車両洗浄台
機関区にはディーゼル燃料補給小屋を製作したのでそれに合わせて車両洗浄台も製作しました。イメージは子供の頃から見慣れていた三鷹電車区の人道こ線橋から見える洗浄線の風景です.

参考にした車両洗浄台

洗浄台の構造は鉄製の脚部にコンクリートパネルを渡した構造としました. 脚部はEvergreen社製にのIビームとアングル材を使用してコの字型に組み立てました.

プラ素材で製作中の脚部

通路となる部分は1㎜厚のイラストボードで作成し,1㎜厚のイラストボードを所定寸法(長手方向は脚部の間隔)に切断後、切断前と同じ配列でラベル氏の上に並べ, あらかじめレイアウトに取り付けた脚部に接着しました. 組み立て前に脚部はダークグレー、通路はライトグレーに塗装してあります.

ケント紙で製作中の洗浄台

1960年台にはまだ三鷹電車区のような”都会の電車区”にも車両の自動洗浄設備はなく,洗浄台の上では多くの人々が手作業で車両の洗浄を行なっており,人道こ線橋上からはその作業を間近に見ることができました.この時のイメージを元に洗浄台上に各種のアクセサリを配しています.

製作したアクセサリは左よりホース掛け,水道蛇口と流し,モップとモップ置き.雑巾干しです.一部のホース掛けにはエコーモデル製のバケツをぶら下げてあります.水道蛇口はエコーモデル製ーのパーツ,ホースはAWG#30ケーブル,その他はEvergreen社製のプラ素材やケント紙で製作しました.また洗浄台の下側には真鍮線で製作した水道管を取り付けてあります.ハシゴはEvergreen社製のIビームとプラバンで作成しました.

洗浄台上に設置したアクセサリ

この洗浄台は地方の機関区の片隅にある設備でありそれほど使用頻度は多くありませんので台上にフィギュアは配置しませんでした.

完成した車両洗浄台

⚫︎ 車両への給水設備
洗浄台の反対側には気動車に給水する給水栓を設けてあります.駅にある給水設備は給水コックが地上付近にありますがこの機関区ではもう少し目立つものにしようと考えPreiser社製の消防士のフィギュアの中にあった消火栓を使用して作成しました.ホースは洗浄台と同じAWG #30のケーブルをHambrolのエナメル塗料で塗装したものを取り付けました.

Preiser製の消火栓を利用した給水栓

以上で機関区の設備の紹介を終わります.最近はレイアウトに設置するアクセサリパーツの各社から発売されており今回作成したものの中にもパーツが発売されているものもあります.当然自作したものよりも形が整っていますがパーツを利用するとレイアウトが何か没個性になるような気がしており,使用する気にはなりませんでした.
次回はその他のアクセサリを紹介したいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.