レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(5) -電気関係の仕様(全般)-

前回の台枠と線路関係の仕様に続いて今回は電気関係の仕様を紹介します.まずは全般的な仕様です.その前に列車が駅を出発するシーンの動画をご覧ください.

駅を出発するIC.信号が切り替わる時の信号灯の挙動はデコーダーのCV値で各種のパターンが選択できます

3-2 電気関係全般
a) 列車の制御
i) 列車の制御はMärklin Central Station3(#60226)で行なう.また一部の制御はMärklin Central Station3のEvent Programによる自動化を行なうこととしそれに必要なs88コンタクトをレイアウトの各部に配置する.
ii) Power Packは60VA Switihed Mode Power Pack230V (#60061)を使用する.電源(AC230V)はステップアップトランスで供給する
i
ii)列車の運転に関連するアクセサリは全てm83 Decoderで行ないMärklin CS3を用いて制御する

i
v) 列車位置検出はLink s88(#60883)を使用する.Link s88への給電はMärklin製ACアダプタ#66360を使用し.ACアダプタ電源(AC230V)にはステップアップトランスで電源を供給する
v) レイアウトの所定位置にmfx対応のColor Light Signalを設置し,s88コンタクトを利用した制御を行なう.
b)照明の制御
i) レイアウトの照明のON \OFFはM84Decoderを使用し全てMärklin CS3を用いて制御する
ii) 照明用の電源はDC15VとDC12Vとし,両者ともACアダプターにより給電する
c) Module間の接続
Module間の電気的接続はDINコネクタ,Dsubコネクタ,マイクコネクタ,NHコネクタを用いて行なう

このレイアウトはMärklinのmfxプロトコルによるDCC制御を採用していますので,コマンドステーションはMärklin CentralStation3を使用します.欧州での鉄道模型メーカーはMärklinがガリバー的存在ですのでRoco社等のコマンドステーションもmfxプロトコルに対応しています.とはいえMärklin製に車両を運転するならわざわざ他社の製品(Märklinから見れば3rd Party製品)を使用することもないともいます.パワーパック(ACアダプタ)はMärklin製の230V使用の製品で最大電流は約3Aです.ちなみにCS3にはレールに供給される電圧と電流をモニターする機能がありますので今回手持ちの車両の消費電力を測ってみました.矩形波の電流測定ですので測定方法によって多少の差はある(測定時の誤差は不明)と思いますが,CS3に表示される測定値は下の表の値でした.機関車の走行電流は単行運転時です.なお,Märklin製の230V使用のパワーパックは日本のPSE規格に未適合ですので使用にあたっては自己責任での使用となります.

CS 3の表示画面.TFPはTrack Format Processorの略号のようです.緑のチェックはこのソフトウエアが最新であることを表示しています.(CS 3の部分の赤数字はCS 3本体にアップデートがあることを表示しています(数字はアップデート数))
上の画面に表示される各車両の消費電流の一例です.

実物同様?時代とともに車両の消費電流は減少していますが,デジタル初期の製品でも消費電流は0.3A程度でありこの程度の規模のレイアウトであれば列車の走行に関してはパワーパックの容量は3Aあれば十分です.ただ今回ポイントマシンやUncoplerの動作にも走行用電流を使用しますのでそれに対する配慮は必要かもわかりません.今回m83DecoderのポイントマシンやUncoplerの動作時間(切替時のスイッチオン時間)はDefaultの200msに設定していますが列車の走行時に作動させても走行している列車(最大2列車走行時)への影響はないようです.私が鉄道模型を始めた頃はアナログ運転で2モーターの電気機関車に7-8両の室内灯(電球)付きの客車を牽引させると電流は2Aをオーバーすることがありましたがそれに比較すると隔世の感があります.

3線式のDCC制御の場合必須となるギャップはありませんが,このレイアウトには自動運転(Event Program)に使用する列車検知用のs88コンタクトを10箇所設けてあります.その位置を下図に示します.これらのs88コンタクトで想定したの主な用途はL 1-L 4,R3,R5が列車(機関車)の自動停止用,L6,L7がホームに入線(通過)する列車のサウンド制御および出発信号の制御用,R1が通過列車のサウンド制御,L5が出発線を通過(出発)する列車のサウンド制御および信号制御用です.

レイアウト上に設置したs88コンタクトの概略位置

分岐器はm83デコーダーで制御しますが,分岐器はダブルスリップスイッチ一基を含めて6基あります.m83デコーダーは1台あたり4個のポイントマシンを制御できますが,ダブルスリップスイッチはポイントマシンが2個必要ですので制御対象のポイントマシンは7個となり,2台のm83デコーダーが必要です.余った1個は2箇所のUncoupler の制御に使用します.この場合は直進側と分岐側に個々のUncoplerが接続できますので2個のUncoplerが制御可能になります.ダブルスリップスイッチは2台のポイントマシンを連動して動かすことが必要ですが,これはm83デコーダーのCV値を変更することにより可能となります.CV値で出力のペアを選択(CV34でアウトプット1と2,CV35でアウトプット3と4)を選択し,値を2(Double Slip Switch)に設定します.この時は2台のマシンからのリード線はそれぞれのアウトプットの片方に2本まとめての接続となります.なお,以下の説明はデコーダーのマニュアルに沿って進めますが実際の設定時に表示される画像は下図のようにCVが表示されず表示される説明語句もマニュアルと異なることがありますので注意が必要です.

Double Slip Switchを動作させるm83デコーダーのCV値の設定状態

信号機は数を絞り,比較的目につくところに設けることとし発着線の出発信号機として2基,通過線の左回り方向の出発信号機として3基を設置しました.今後待機線と駅の境界部に入換信号機の設置する予定です.信号機はレイアウトを実感的に見せるためには重要な設備ですが,色灯式信号機(Color Light Signal)は今回のように床に置いて比較的高い位置からレイアウトを見下ろす感じで運転するレイアウトでは点灯状態が見えにくく,また当然背面から見ると点灯状態がわかりません.今回のような最近の車両も入線するレイアウトでは不可能ですが,EraIII-EraIV時代のレイアウトを製作する場合はできれば腕木式信号機を使用した方が視覚効果という観点では有効であるような気がします.なお,信号がが切り変わる時のライトの挙動はCVで調整可能で,ライトがフェードイン,フェードアウトして点灯,消灯するまでの時間(CV48:Switing duration LED on/off)と切り替え時に両方のライトが消灯状態を持続する時間(CV50: Cross fading behavior)が調整可能です.最近の色灯式信号機は信号灯にLEDが使用されており切替は瞬時に行われますが信号灯に電球が使用されていた時代にはシステムの信頼性の向上(球切れの防止)のためか信号切り替えの際にランプがフェードアウト,フェードインするのが一般的であったような気がします.冒頭の動画はそれを意識してCV値を設定しました.

シグナルデコーダーの設定例.”LED time home signal string”が点灯,消灯時のフェードアウト,フェードイン時間の設定,Fading home signal stringが切替時の両方のLEDの消灯時間の設定です

m84デコーダーは回路のON \OFFを行う機能を持ったデコーダーでCV79で4種類のモードが指定できますが,今回はCV79の値を2(8 switches 8 addresses)に設定しました.またレイアウト上の照明はDC9VとDC15Vを使用しています.今回2種類の電圧を使用した理由ですが,レイアウトの照明の一部には12Vの米粒球を使用しているため12V以下の電源電圧が必要であったこと,駅のホールの照明に用いる表面実装型のLEDは取り付け部のスペース上配線の簡素化が必要で,そのためにLEDを直列接続で使用することが必要であり,その際に各LEDにかかる電圧を一定値(順電流)以上にするために12V以上の電源電圧が必要であったためです.

m84はCV値を8 Switches,8 Addressに設定

各モジュールを接続するコネクタは下表のとおりです.考え方はDsubコネクタを信号用,DINコネクタおよびマイクコネクタを最大数Aが流れる走行用の回路の接続に使用するという考え方です.ただ上記のようにパワーパック(CS 3)が流せる最大電流が最大3Aであるのに対してDINコネクタの定格電流は1Aです.そのため走行用電流の接続には1回路で2端子を使用していますがそれでも容量不足です.このため走行用電流の接続は全てマイクコネクタ(最大電流5A)に変更し,現在Dsubで接続しているUncoupler 動作用の回路とともにマイクコネクタに変更することを考えています.現状では特に支障はないのですが短絡時の保護回路の動作の確実性も考えるとコネクタの容量は大きいに越したことはないと思われます.ただ現在の接続方法でも短絡検知時の保護動作に特に問題はないようです..

なお上表には記載していませんが車両検出用のLink s88はModule外に配置し,リボンケーブルでModule1と接続しています.これはLink s88に取り付けられているCANケーブルが収納の際に邪魔になること,Link s88には外部電源の接続が必要となること,セクション外のC Trackに接続したs 88コンタクトの接続性を向上させるためです.

運転用機器,Module間コネクタの接続状態.Link s88はモジュール外に設置しリボンケーブルでModule2と接続.
Module2とModule 3はマイクコネクタで接続

以上が電気関係の使用の概要です.次回はデコーダーの配置やケーブルの引き回し方法等さらに具体的なところを紹介したいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(4) -台枠と線路-

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介は今回から構想ではなくより具体的に各部を紹介していきたいと思います.まずは線路と台枠から説明を始めます.その前に待機線から駅に向かうBR182の動画をご覧ください.

待機線から駅に向かうBR182,SIEMENS社製インバーター装置の磁歪音も過去のものとなってしまいました.

線路と台枠について仕様書には以下のように記載しました.
3 詳細仕様
3-1 線路関係
a) 使用する線路はMärklin K Trackとする.レイアウトと他線路はC Trackで接続することとし,接続部に接続用線路を配置する.
b) 制御方式はMärklin Digitalとし,線路には車両留置用のギャップを設置しない.
c) 線路にはEvent制御および自動運転用のs88コンタクトを設置する.
d) 分岐器の切り替えは#75941 Electric turnout mechanism をベース上面に設置し,#60832 m83 Decoderを用いて制御する.
e) 駅の各ホームには#2297 Uncoupler trackを設置する.制御は#60832 m83 Decoderで制御する.
3-2 台枠
台枠は以下の3分割構造とする
a) Module1:車両留置部
b) Module2:駅ホーム
c) Module3:発着線ホーム終端部
・ 線路配置(使用線路型番)はFig1,台枠寸法はFig2を参照のこと

使用した線路はMärklin K Trackです.K Trackの発売開始は1969年ですのでかなり古い製品ですが日本の篠原模型店発売のフレキシブルレールや分岐器はそれより古い発売でメーカーは替われど現在も発売が継続されています.これらのレールの構造を見ると製造用の型は結構複雑そうですし,種類も多岐に渡りますのでMärklinのような鉄道模型メーカーとしては大きなメーカーでもシステムを全面的に刷新するのは容易ではないのかもわかりません.また,このレールの3rd Rail用接点は4箇所あり接続で接触不良を起こすことはほとんどないため,設計は古いものの信頼性のレベルは今でも高く,この完成度の高さがデジタル全盛時代になってもシステムの刷新には至らない一因なのかもわかりません.ただPC枕木のフレキシブルレールはあっても良いのではないかという気がします.一方このセクションはCトラックに接続しますのでa)項に記載したように接続用の線路が必要になりますのでそれを考慮した線路配置の検討が必要です.

K Trackの3rd Railは接続時互いの4箇所の接点で接続されます.C Trackは3rd RailもGND Railも接点は4箇所あります

線路配置が決定したら線路の敷設を始める前には線路の設けるギャップの位置を決める必要がありますが,それに関連した記述が上記のb)項とc)項です.このレイアウトはデジタル制御かつ3線式ですのでショート防止のためのギャップは不要です.デジタル制御でもStaging Yard(隠しヤード)等に車両留置用のギャップを設け走行用電流をON \OFFする例はありますがそのような部分はこのレイアウトにはありません.昔からMärklinの信号機は赤信号の時に車両を停車させることが可能であることが特徴と言われており,現在のDigital信号機の基板にも赤信号の際に一定区間の電流を遮断するリレーが実装されていますが電流を遮断するとサウンドも途切れますのでデジタル制御ではこの機能をそのまま使用することはできません,したがってここでギャップ位置を検討するのは自動運転や信号制御に関連するs88コンタクトの場所のみになります.またd)項のポイントマシンの設置位置ですが,外観的には当然ベースの下側に設ける方が外観上は望ましく,床下取り付け用のキットも発売されていますが今回はベース上面への設置としました.私も以前ポイントマシンのベース下へに設置を行ったことはあるのですが,当時のポイントマシンは他社製のものに比較すると非力でリンク機構を介して動作させると動作不良を起こしやすく,一度動作不良を起こすとベース上面からは手動では切り替えができず,調整はベースを裏返して行う必要があるという不便さがありました.このため最近製作したレイアウトはポイントマシンは全てベース面上に取り付けており今回もその方式を踏襲しました.e)項のUncoupler Trackは発着線上での機関車の交換手順を考慮して位置を決めました.これらを考慮して決定した線路配置が下の図(Fig1)になりますがそのまま掲載すると図が非常に小さくなるため別に3分割で掲載します.

線路配置の全体図です
待機線部分の線路配置の拡大図です

レイアウト左側,待機線部分の線路配置です.下側の#24922がC TrackとK Trackを接続するための線路でこの先にC Trackを接続します.

プラットホーム部の線路配置の拡大図です

駅のプラットホームの部分です.一番下の通過線にも待機線との渡り線を設けました.上側の発着線にはUncoupler Track(#2297)を配して待機線に待機している機関車との機関車交換が行えるようにしてあります.2本の発着線の線路間隔は使用するプラットホームに合わせて102㎜としました.通過線と下側発着線の線路間隔は57㎜です.なお,線路型番の後ろに(-)が付与されているものは,型番通りの長さではなく短く切断してあることを示します(Flex Track(#2205)を除く).

駅の発着線終端部の線路配置です

発着線の終端部です.上から2板目の発着線に機関車を先頭に入線した列車はUncoupler Track(#2297)で客車から切り離されて列車の出発までホーム先端で待機します.こちらのC Trackとの接続部は#24922では長さが長すぎるためC Trackの#24172を短く切断してK Trackと接続するようにしてあります.

以上がこのレイアウトの線路配置です.なおこの作図にはRailModeller Proというソフトを使用しています.線路配置の作図ソフトはWintrackが有名ですがその名のとおりWindowsでしか作動せず私の普段使いのMacでは使用できませんのでこのソフトをApp Storeで購入しました.動作は安定しておりKATOやTomixの線路もリストにあり,最近もアップデートが行われたようですが現在入手できるかは不明です.

次は台枠について記載します.台枠は線路を敷設するベースになるため本来仕様書での項立ては線路配置より先に来るべきという気がしますが,今回の台枠は分割しますので線路配置が決まらないと台枠の寸法が定まらないため仕様書状への記載は線路配置の後としてあります.まずは全体寸法を下図に示します.台枠は仕様書どおり3個のモジュールに分割しています,全体の寸法は長さ3220㎜,幅280㎜です.ここのモジュールの寸法は以下のようになります.

台枠の全体図です(Fig2)
Module1の平面図です
Module2とModule3の平面図です

構造は厚さ9㎜のシナ合板の左右に厚さ12㎜,幅40㎜の杉角材を取り付けたコの字型の形状です.床面からの高さは以前製作した”ALTENHOFのクリスマス”の線路高さと同じにしてあります.そのため下の写真のように設置場所に並べて置くと待機線の奥に本線があり,その上に町並みがある情景を演出できます.

収納場所で待機線に停車するV220 の写真

Module1とModule2の接続はModule1の両側の檜角材の内側に取り付けたガイド板をModule2に差し込む事により行ないます.レールにはジョイナーを取り付けてありますが,ガイド板の差し込み部のガタを極力無くす事により調整なしでジョイナーは相手レールに嵌まります.

Module1とModule2の接続部

Module2とModule3の結合も同様のガイドで行いますがこちらはガイド部材として10㎜角の檜角棒を用いています.

Module2とModule3の接続部

これらのガイド部材を精度良く仕上げるにはModuleの素材を切り出した後,線路取り付け前のModule組み立て時にガイド部材を取り付ける事が必要です.この時モジュールを裏返した状態でガイドの摺動面をクランプで挟んで両側に取り付ける角材とガイド部を組み立てます.すなわち摺動部の隙間を予め確保して組み立てるのではなく,隙間0で組み立て,接着後もしはめ込みがきつかったらガイド部を紙やすりで削りながらスムーズに着脱できるようになるまで調整を繰り返すことでガタを無くします.欧州製の車両(NEM規格のフランジ形状の車両)はフランジが高いため正しく敷設された線路では脱線事故はほとんど起こりませんがこのようなモジュールでは足を引っ掛ける等で生じたモジュール間のずれに気づかずに運転すると脱線事故につながります.特にDCC車両は脱線によるショートでデコーダーを破損するリスクがあるためガイド部設計の際は片方のモジュールを多少動かしても接続したモジュールがその動きに追従するようにガイド部を精度良く製作し,脱線事故発生の可能性を極力排除することが必要です.

Module1とModule2の接続部,電気的接続に関しては次回紹介します

以上で台枠と線路配置に紹介を終わります.次回はモジュールの電気的接続方法等,電気的な仕様について紹介したいと思います.最後までお読みくださりありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(3) -線路配置とシーナリー・ストラクチャーの構想-

基本構想に続いて3回目の今回は線路配置について紹介します.今回も仕様書の記載項目に沿って説明を進めたいと思いますが,まずは駅を通過する列車の動画をご覧ください.

駅を通過するLufthansa Airport Express

2.線路配置
駅は3線構造とし通過線1線,発着線2線とする.駅ホームに対向する機関車留置線は3線とし,そのうち1線は機関車2両の留置を可能とする.停車可能な列車の長さは通過線がUIC-X客車5両+機関車,発着線がUIC-X客車6両+機関車が発着できることを目安とする(UIC-X客車はMärklin製の全長284㎜の客車を想定

言葉ではわかりにくいため,実際の線路配置を示し,この線路配置とした理由を説明します.下の図の青い部分が今回製作したレイアウトセクションで,赤部分はセクションに繋がる線路(セクション外)になります.非常に細長いセクションのため,モバイル端末では図が小さくなり非常にわかりにくいと思いますがご容赦ください.

このセクションは設置場所のスペースの関係上長さは3,400㎜以下とする必要があります.また収納の関係上レイアウトは数個のモジュールに分割する必要があり,これが線路配置を検討する上での最上位の制約条件となります.当然分割したレイアウトをどこに収納するかも重要です.また収納場所まで移動させるためには重量に制約もあります.私は今までレイアウトセクションを何種類か製作してきましたが,その経験からいうと分割したモジュールの取扱性に関してはモジュールの幅が重要であると感じます.鉄道模型のモジュールは一般的には長さは長くなりますが,同じ長さでも幅が違うと取り扱い性に大きな差がます.例えば私が以前製作した市街地のレイアウトセクション(ALTENHOFのクリスマス)の幅は450㎜,最近製作した日本型の北海道の機関区のレイアウトは300㎜ですが,両者の取り扱い性には大きな差があります(長さはいずれも1300㎜前後です).幅が大きくなれば当然重量も増えますし,収納場所(棚等)から下ろす時の取り回し性も悪化します.わずか150㎜の差ですがその差は寸法以上に大きいと感じますし,取り回し性(設置性)は使用頻度(運転頻度)にも影響します.概略検討の結果,今回のレイアウトの最大長は1500㎜強になると思われため,保管場所のスペースも勘案し,幅は機関区セクションより狭い280㎜に決定しました.この280㎜幅のスペースで主要駅(Hbf)の雰囲気を出すことは容易ではありませんが無理をして途中で製作を断念したり完成後に取り扱いに困っては元も子もないのでこの寸法に決定しました.
280㎜幅ですとプラットホームの幅を確保した上で敷設できる線路は3本が限界ですのでそれを前提にして考えると次に決定すべきことは通過線を2本にするか3本にするかですが,私は通過線を1本としました.理由は停車できる列車の長さが発着線の方が長くできること,比較的大きな規模の駅ですので駅でのすれ違いや列車交換はあまり気にしなくて良いと考えたためです.頭端式のホームでは当然到着した客車列車の折り返しをどうするかが問題となりますが最近では機関車牽引の長距離列車でもプッシュプル方式の列車が増えていること,プッシュプル列車ではなくても到着列車はホームに対向する位置にある機関車の待機線で待機する機関車と機関車交換が可能になることも通過線は1本で良いと判断した理由です.私は実際に見たことはありませんが欧州の頭端式の駅では頭端側で機関車を解放したのち反対側に別の機関車を連結し,列車発車後の開放された機関車がその後を追うように発車し待機場所まで戻るという例があるようです.そこでプッシュプル方式ではない機関車牽引列車の折り返しはこのような手順を想定し,発着線には開放ランプを設置してすることとしました.分岐器は分岐側半径902.4㎜の大型の分岐器とダブルスリップスイッチを使用し,線路間隔は並行する線路が57㎜,島式ホームを挟む部分が102㎜としています.この102㎜という寸法は使用するKibri 39565(Platform hall Bonn)に付属しているプラットホームの幅に合わせて決定しました.発着線の出口はダブルスリップスイッチを配して発着線で客車を解放した機関車はこのダブルスリップスイッチを通って待機線に向かう配線としました.ダブルスリップスイッチは欧州の駅では多用されており,スペース上も有利であるため欧州のレイアウトプランでは多用されています.今回のプランでは小規模の駅となるためダブルスリップスイッチは1個しか使用していませんが欧州の比較的大きな駅の雰囲気を出すには不可欠?のアイテムのような気がします.また下の写真にもありますが,日本ではほとんど見かけることのないクロッシングもよく使用されているのを見かけます.なお,2線式のダブルスリップスイッチはフログの極性の切り替えが複雑になりますが3線式の場合は何もする必要はありません.

ダブルスリップスイッチやクロッシングが使用されているDüsseldorf駅構内

駅のホームに対向する機関車の待機線は3線あります.仕様書では3線のうち1線に2両の機関車2両を留置可能と記載しましたが,このレイアウトはデジタル制御ですので待機線に留置できる機関車は留置線の有効長と機関車の長さのみで決まります.ここでの2両が留置可能という意味は3線のうちの1線にはs88コンタクトを2箇所(他線は1箇所)設け,自動運転プログラム(Eventプログラム)で2両の機関車を留置可能にするという意味になります.

続いてシーナリー.ストラクチャーの構想は仕様書に以下のように記載しました
3.シーナリーとストラクチャー
a) 地面は起伏のない平坦面とする.
b) 主要駅の雰囲気を出すためプラットホームにはドーム状の上屋を設ける.またホーム上には行き先案内板や売店  等, 主要駅に相応しい設備(施設)を設ける.
c) 駅と信号所の境界付近に信号所と付帯設備の建物を設置する.留置線は機関車の留置のみを行なう施設として照明灯以外の機関車の整備作業を行う設備は設けないこととする.    
d) 路線は電化路線とし,架線柱,タワーマスト,クロススパンを設置するが架線は省略する.

このレイアウトの性格上いわゆるシーナリーと呼ばれるものは地面の表現のみとなります.一方,ストラクチャーは主要駅の雰囲気を出すためにプラットホームはドーム上の上屋(Bahnsteighalle/Plathorm hall)を持ったものとします.この上屋はFrankfurt HbfやHamburg Hbf等非常に大きな構造物もありますが,このセクションはそのようなものではなくもっと規模の小さなものとし,この上屋はViessmann社Kibri ブランドの#39565(Plathorm hall-Bonn)を使用を前提に線路配置を構想しました.

駅に停車中のLufthansa Airport Express

このキットはキット名のとおりBonn Hbfの上屋を模したものです.私の世代は学生時代地理を学んだ時点でまだ東西ドイツは分断されており,当時の西ドイツの首都はボン(Bonn)でした.このBonnはベートーベンの生誕地であり,またシューマンが最晩年を過ごした街で浪漫派のクラシック音楽の愛好家には有名ですが,現在ではあまり話題になることはないようです.また当時も暫定首都という位置付けでした.そのせいか駅舎は立派ですが構内の規模は首都という割には小さい感じです.ただかつては西ドイツの首都であったため各方面に向かう列車が通る駅となっており今回のようなレイアウトセクションのイメージを構築するには参考にするには好適な気がします.私はBonnには行ったことがないのですがWEBサイトに掲載されているこの駅の多くの写真を見て自分なりのイメージを構築しました.下の写真はDuisburg HbfのPlathorm hallの写真です.Bonnの人口は約40万人,Duisburgの人口は約40万人で,東京では世田谷区や八王子市の人口と同程度ですが,もちろん人口密度はことなるものの,この程度の人口を要する都市にもPlathorm hallを持ったHbfはあるようです.

Platform hallのあるDuisburg Hbf

またc),d)に記したように待機線と駅の間には信号所と建物をを設けることとしました.また手元にある車両には電気機関車や電車も存在するためレイアウトは電化路線として架線柱,タワーマスト,両側のタワーマストを結ぶクロススパンを設けますが,架線は省略することとしました.

駅側から待機線方向を見た風景

以上で線路配置・シーナリー・ストラクチャーの構想の紹介を終わります.次回からは使用した製品等,より具体的にこのレイアウトセクションの紹介をしようと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(2) -基本構想-

今回から本レイアウトセウションの紹介を始めますが,前回記載したように紹介は仕様書に記載した項目に沿って進めたいと思います.具体的には仕様書に記載した内容を太字で示し,そこに補足を加える形で紹介を進めます.

駅のホームに停車しているLufthanza Airport Express
信号所の横を通り待機線から駅方向に向かうV200と待機線で待機するV160.
  1. レイアウトセクションの基本構想
    本レイアウトセクションは欧州の主要駅(Haupt Bahn Hof)の雰囲気の再現を目標とし,通過線1本と頭端式の発着線2本を設けた駅とする.また駅ホームと対向する位置に機関車の待機線を設け,頭端式の発着線では機関車の交換を可能とすることにより運転に変化をつけられるようにする.制御方式はMärklin digitalを使用し,セクション内にはs88コンタクトを設置して列車の発着時および列車が発射する際のサウンドシーケンスや機関車交換時の制御,信号の制御を一部自動化する.なお,通過線はMärklin C-Trackを接続可能とする.

    日本語では”主要駅”と呼ばれるHauptbahnhofはFrankfurtやHamburgのように多くの頭端式のホームを持つターミナル駅からホームが数本のみの比較的小規模な駅まで各種ありますが,私の感覚では長距離列車が発着するその都市(地域)の拠点駅というような感覚です.今回はスペースの関係上あまり大規模な駅を製作することはできませんので駅の規模は小規模なものにならざるを得ませんが,長距離列車の発着を考えるとホームの有効長はそれなりの長さとする必要があります.
    実は私がこのような駅を製作するのは初めてではなく,以前製作したZゲージレイアウトでは頭端式の駅を製作しています.
Zゲージレイアウトの頭端式のターミナル駅

このZゲージレイアウトの線路配置は数に示すとおりでリバースループを持つエンドレスの周回線から分岐した部分に終端駅を設けてあります.この線路配置はメインとなる駅を終端駅としたレイアウトでは比較的多く用いられるものですが,今回製作したものは駅部分のみのレイアウトセクションでこのレイアウトの周回線の部分に相当する部分はシーナリー無しのフロアーレイアウトになるため駅を終端駅にすると列車が駅に戻るためには周回線にリバース区間が必須となるため今回は駅の部分に通過線を設け,フロアーレイアウト部分を単純なエンドレスとしても連続運転が可能となるようにしました.それに伴い通過線のホームの有効長は短くなりますがそれはやむなしと判断しました.また上記のZゲージレイアウトでは列車がエンドレスを周回している間に駅に停車した列車の機関車交換を行えるようにしましたが,今回製製作するレイアウトセクションでも同様の機関車交換ができるような線路配置としてあります.

Zゲージレイアウトの線路配置.下部が頭端式のターミナル駅

制御方式は従来から使用しているMärklin Digitalを採用しています.前回の記事で記載したように今回のレイアウトに外国型を採用した理由はレイアウトにあるテーマを設定した場合外国型を採用した理由はその方が多彩な車両をを楽しめるということのほかにDCC制御の車両が比較的安価に手に入ることもその理由の一つです.また私は以前からデジタル制御方式にMärklinの3線式のシステムを採用していますがさらにこのようなレイアウトセクションではDCC制御に加えて3線式のシステムに大きなメリットがあるようにも感じます.なぜなら3線式ならばこのセクションに接続するフロアーレイアウト部分の線路配置はリバース区間を設けようが設けまいが全くその時の気分次第でまさに子供がプラレールの線路をつなぐのと同じ感覚で自由に線路を配置できるからです.さらに分岐器の道床部分にポイントマシンとデコーダーを組み込んでおけば分岐器をどこに配置しようとそのアドレス(名称)さえ把握していれば分岐器をどこに配置してもコマンドステーションから分岐器の制御が可能になります.また2線式のシステムでフロアーレイアウトを敷設する場合には複線で2列車同時運転をしようとした場合2線式では渡り線の部分は必ずリバース区間になりますのでそのための配線とスイッチが必要になります.スペースの関係上なかなか固定レイアウトが普及せず車両工作主体の日本の鉄道模型ではもしかしたら気軽に運転を楽しむ最も最適なシステムは3線式のDCC制御なのかもわかりません.

駅に停車しているEra IVの食堂車.

なお,今回のレイアウトセクションでは完全な自動運転を行う予定はありませんが,列車の発着時案内放送や汽笛の吹鳴等のシーケンシャルな制御を行うこと,駅に設けた信号機の制御を行うことを目的に各線にs88コンタクトを設けることとしました.駅の出発時の案内放送は一部の車両ではファンクションの中に実装されていますが,Märklin CS3には自動運転機能(Event)の一部として外部スピーカーからSDカードに格納したサウンドファイルをシーケンシャルに再生できる機能もありますので将来的には(音源があれば)その機能も使用したいと考えています(CS3はスピーカーを内蔵していますので,CS3から音を出すことも可能です).日本のNゲージではサウンドボックスなるものが発売されていますが,私は本来車両から出る音は車両から,周囲から出る音は周囲のスピーカーから出すことが鉄道模型のサウンドの本来のあり方であると考えます.その実現に際してはHOゲージレベルのサイズなら技術的なハードルは全くないと思われます,日本のメーカーがDCC制御を積極的に普及させようとしない理由が私にはわかりません.メーカーや販売店にはユーザーサポートのためにそれなりの知識が必要になることが普及のネックになっているのでしょうか.

ドイツでは最新のICEにも供食設備のある車両が連結されています.

以上で基本構想の説明を終わります.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクション・ALTENTAL HBFの紹介(1) -はじめに-

ALTENTAL HBFに停車中の食堂車

今回ご紹介させていただくのは長距離列車の発着するターミナル駅をテーマとしたHOゲージのレイアウトセクション,ALTENTAL HBFです.

私が今まで製作したレイアウトセクションは機関区や支線の終着駅のレイアウトセクションで機関車や短編成の列車が発着する幹線を走る長距離列車とは無縁のものでした.一方子供の頃から東京に住んで鉄道模型に親しんでいた私にとってその原点となった風景は各方面を結ぶ長距離列車が発着する大都市のターミナル駅の風景であり,その風景を模型で再現することはいつかは行なってみたいことでした.それもあり私が過去に製作した日本型の車両や購入した外国型の車両は比較的幹線を走る車両が多くなっています.しかしレイアウトという観点で考えるとそれらの車両が活躍するレイアウトを製作することは容易ではない(実質不可能である)ため,これらの列車の運転は長年 ”お座敷運転” 状態が続いていました.しかし私も高齢者の仲間入りをする年となりましたので今回意を決して長距離列車が発着する駅のレイアウトセクションの製作を開始しました.このレイアウトセクションに着手したのは今から3年ほど前ですが,前回まで紹介した日本型の機関区セクションを優先して製作していたため長らく製作を中断していました.しかし機関区セクションも完成したため製作を再開し,この度その基本部分が完成しましたのでその概要を紹介したいと思います.なお,レイアウトは未完成で現在も製作は継続中ですので記事の完結までには時間がかかることをご了解ください.それではまずは駅を通過するE03牽引するTEEの動画をご覧ください.

長年の目標であったレイアウトを製作するにあたって,日本型で製作するか外国型で製作するかはほとんど悩むことなく外国型を製作することにに決定しました.子供の頃から上野駅や東京駅の風景に慣れ親しみ,新幹線開業前の賑わいを知る私でも,その後訪れたヨーロッパのターミナル駅の面白さは格別です.今から40年以上前の新幹線開業前の上野駅はいわば在来線特急列車の全盛期で,各方面に向かう優等列車が1時間に10本近く運転されていました,しかし今思うとそれらの車両はいずれも同じようなタイプの車両ばかりで塗色も用途別に標準化されており類型的で面白みに欠けたものでした.また新幹線が開業した後は長距離列車は新幹線に移行してしまい優等列車の数も減り,夜行列車も次々と廃止され在来線のターミナル駅はすっかり寂しくなってしまいました.

日本のターミナル駅のこのような光景はすっかり過去のものとなってしまいました

それに比較すると現在でも欧州のターミナル駅には各国から様々な車両が乗り入れており,高速高速列車,機関車牽引の長距離優等列車をはじめとしてInter urban的な機関車の牽引する2階建客車や電車が煩雑に発着しており,2000年以降も夜行列車やカートレインの姿も見ることができました.欧州では日本と異なり高速列車も”在来線”に発着しますので駅に高速列車も含めてEra4〜Era6の列車を混在させても違和感がなく(車両選択の自由度が高く),車両の国籍や年代等にあまり拘束されない何でもあり?のワンダーランド的な世界を味わうことができます.

食堂車を連結した高速列車の隣のホームで発車を待つ機関車牽引の快速列車.欧州では現在でもこのような光景を見ることができます.

また外国型の製品はDCC制御が標準となっており,ライトやサウンドの多彩なコントロールが可能であり,プログラムにより駅発車時の車両のシーケンシャルな動きを自動化したり信号を制御することも容易に可能です.このようなことを考えると日本型か外国型かの選択に迷いはありませんでした.
<仕様書の作成>
今まで私が製作してきたレイアウト(レイアウトセクション)では所謂仕様書というものは作成していませんでした.これは趣味と業務の違いと言ってしまえばそれまでですが,今回のレイアウトは比較的大型のセクションで,駅構内での入替作業をシミュレーションして線路配置や信号の配置を検討したり,分割した台枠の電気的接続の検討結果やコネクタのピン配置を図面として残しておく必要があります.そのためこれらの検討結果を図面と文書で1箇所に残してしておくことが必要と考え,製作前に仕様書を作成することとしました.次回以降はこの仕様書の構成に従ってレイアウトの概要を紹介していきたいと思います.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(20) -レイアウトの製作を終えて思うこと(レイアウト上で実感を得るための車両の細密度)-

私が機関区のレイアウトを製作し製作しその中で機関車を運転して感じたことは実感を感ずるためにはある程度以上の細密度不要でより重要なのは全体のプロポーションであるということでした.一方最近の雑誌の車両工作関連の記事を見ていると自作(キット組み立て)車両の細密化には目を見張るものがあり,その細密化は運転のためのゲージと言われたNゲージにも及んでいます.当初私はレイアウトの完成後レイアウトをDCC化しようと考えており,その選択肢としては今のところ市販のDCCに対応した蒸機を購入するしかありません,私は今まで私は車両は自作を行ってきたためあまり市販品の状況には関心はなかったのですが,改めてレイアウトに使用する車両を購入するという目で市販品をみると,DCC対応製品もそれ以外の製品も常時市場に多種の機種が在庫しているとは言えず欧州のメーカーのように向こう1年間の新製品がまとめて発表されるわけでもありません.またてい新製品が発表されても発売日未定の製品が少なくありません.レイアウトに似合う好みの車両を新たに入手する目処は全く立てることができないと言うのが現状です.

それはさておき私は以前の記事でレイアウト上で実感を得るための蒸機の細密度は老舗メーカーのダイキャスト製品ではないかということを述べました.そこで今回は市販品(量産品)の蒸機はどのような方法でその質感と細密感を出しているかについて調べてみようと思いました.とは言っても手元には日本型の製品はありませんので今回は各年代の製品が揃っているMärklin社製の蒸機で外国型の機関区セクションを用いて比較してみたいと思います.日本型レイアウトの紹介記事でありながら外国型車両の話になってしまうこと,ご容赦ください.

外国型レイアウト”ALTENHOF機関区”上に並ぶ入門機(手前側: BR03)とfine detail機(後方:BR50)

下の写真は1998年に発売されたDigital Starter Set (#29845)にアソートされていたBR03です.上の写真の手前側に停車している車両です.機番は1022号機で青色(Steel biue) 塗装の機体です.スターターセットの機関車ですのでディテールは最小限で,異なる機番の黒色塗装機は入門者向けの”HOBBY”シリーズで長年単体販売されていました.スターターセットにはこの機関車の他にディーゼル機(V160)1台,客車3両,貨車4両,レール,分岐器,トランス,デジタルコントローラー(#6021)が同梱されており,それらを別に購入するのに比較して非常に安価なセットです.この機関車の金型は1973年に発売していたBR003等と同じ金型ではないかと思われ方に彫刻されているロゴは旧ロゴで原産国はMade in West Germanyと彫刻されています.手すりや配管は全て型で表現されており別付けパーツは発電機,汽笛,ベル,コンプレッサ程度です.ただ,ダイキャストの肌面は塗装は現在の製品と比較しても遜色なくプロポーションも良好です.

ダイキャスト製BR03.第3動輪のスポーク部が完全に抜けていないのは動輪にギアが取り付けられているため.

余談ですが1974年頃,日本でもダイキャスト製のC62がマイクロキャストから発売されました.TMS誌のマイクロキャストの広告には三井金属の名称があり三井金属ブランドの製品もあるようです.構造は上記のMärklin製の蒸機に似た構造ですが当時のTMS誌の製品の紹介によると空気作用管が別付けであったりロストパーツも取り付けられていると記載されており,単に初心者向けの安価なモデルを狙ったわけではなかったようです.写真を見る限りではキャブ周りの印象が実機と少し異なりますが真鍮製蒸機と並んでレイアウトにいてもそんなに違和感はなかったのではないかと思います.価格は当時の真鍮蒸機と同等で決して廉価版というわけではありませんでした.当時は真鍮製蒸機に一部に樹脂製品が取り付けられていてもそれだけで拒否反応をおこすマニアも多かったため販売数量が伸びなかったのか,当時のSLブームから想定した新規鉄道模型愛好者の増加の目論見が外れ新機種の型投資が回収できなかったのかは知る由もありませんがC62以外の機種が発売されることはありませんでした.かく言う私も当時真鍮製のC62とこのC62のどちらを買うかと聞かれたら真鍮製を選んだ気がします.

下の写真は上記のBR03のレイアウト上のクローズアップ写真です.全体的なプロポーションには問題はないので遠目に見てあまり違和感はありませんが流石にアップで見ると後付け部品の多いBR50に比較して平面的に見えます.欧州の機関区の建物は日本の建物に比較してバロック風の装飾の多い建物も多く,使用するプラキットの線も割と太いため建物に比較しても少し平面的な印象です.余談ですがMärklinの2025年新製品カタログにはこのBR03と同じ(同等?)の型を使用した新製品がビギナー向けモデルとして掲載されています.もちろんDCCデコーダー(サウンド付き)を搭載しており23個のファンクションが装備されています,ただ現在Märklinの標準製品はMärklin Digital(mfx)とDCCの両方に対応していますがこのビギナー向けモデルはDCCには未対応です.リストプライスはVAT込みで329€です.ちなみに同じカタログに掲載されている標準品?のBR01のリストプライスは549€です.

手前側がスターターセットのBR03,奥側が2000年製のBR50

このBR03の各部の詳細を見ると,ボイラーの配管は全てボイラーとの一体成形です,ただ砂撒管元栓等一部ははかなり繊細な表現になっています.この頃の日本型真鍮製蒸機は砂撒管元栓を表現した製品はまだ少なかったと思いますので日本の真鍮製蒸機より細密です..

スターターセットのBR03の3度ドーム付近のディテール

ボイラーの配管もかなり細く表現されていますが外側の配管はボイラーから庇状に張り出しています.当時の日本の蒸機マニアの間ではオール真鍮製の蒸機以外の蒸機は鉄道模型ではないという風潮も少なからずありました.上記のマイクロキャスト製品のこの辺りの表現がどうなっていたかはよくわかりませんが,蒸機の模型はオール真鍮製一択と言う風潮であった当時の日本では「これはおもちゃだ」と感じた方も少なくなかったと思われます.ただ蒸機ではありませんが最近でも欧米ではファインディテールの象徴?として「手すりが別付け(The Locomotive has separaely Grab Irons)」という説明文がよくカタログに記載されています..欧米ではほとんど車両を自分で製作する方は殆んどおらず車両はメーカー製品一択ですがこの辺りの形態には不満を持っている方が少なくないのかもわかりません.

スターターセットのボイラー上の配管.別付けの配管はなし.

Märklin製蒸機の配管が別パーツ化されるのは今から四半世紀前の2000年前後であった気がします.下の写真は2000年に発売されたBR50ですが,金型を全面的に改修し,バルブギアも改良したモデルで新製品の目玉商品としてカタログで大きく扱われている製品です.このモデルではボイラーケーシング上を這っている配管以外は配管をほぼ別パーツ化しています.そのパーツは場所に応じて金属と樹脂が使い分けられており,ボイラーの全長にわたって取り付けられている手すりや配管が並行しているところは金属線が使用され,プラ製部品ではある程度避けられない手すりの波打ちを避けており,この辺りは遠目から見た時に実感を損ねる部分をよく心得て設計しているという感があります,

2000年製のBR50のディテール.自作品にこのレベルのディテールをつけたらもう細密機?

また下の写真のBR03.10(2010年製)の別付け配管では樹脂製のクランク状になっている2本の配管は互いに独立させず間に間隔出しの部材を設ける等,実機の細部の厳密な再現には拘わらない工夫も見られます.

2010年製BR03.10の配管.クランク状配管の垂直部分に両者を繋ぐ部材が見える

一方機種によってはボイラーに沿う配管がボイラーの上部にありますが,比較的新製品でも型抜き方向の関係上,そのような部分はパイプの上面が平らになっています.ただこちらも至近距離で観察しないと殆んど気づきません.

2018年製のBR39. 上部のボイラーに沿った配管はボイラーと一体で上面が平面.

火室からキャブ下に至る配管と運転室から各部への配管はバラキットを使用して細密化加工する際の「見せ場」の一つはですが,下の写真はその部分のBR03.10(2010年製Insider Model)の写真です.細密度としては自作で細密機を作る場合でもこの程度のディテールがあれば細密感は十分出せるような気がしますが,このモデルではそれらの配管は全て樹脂製です.この部分を詳細に見ると見るとエアータンク周りの赤色の配管はエアータンク前方の2本の配管の後ろの運転台側に伸びる細い配管を除いて一体で成形されています.キャブから出る配管も運転台側に伸びる4本の配管を除いて一体成形の部品です.つまりこの部分の配管群は2個の樹脂製パーツで構成されていることになります.樹脂製パーツですのでさすがに線は太いですがレイアウト上ではあまり気になりません.一方それに比較すると全体的に配管が平面的なのが気になりますがレイアウト上で実感を損ねるレベルではありません.最近読んだMärklin MagazinによるとMärklinでは設計時に別付けパーツの取り付けに要する時間(工数)を決めてそれに適合するように別付けパーツを設計しているようです.このようなモデルを見るとメーカーは設計者とレビュアーが模型に要求される細密感と部品の製造における制約事項と許容できる組み立て工数のバランスをとってコストを意識しながら設計していることが感じられます.以前の記事でレイアウト上で実感を得るための細密度は内外の老舗メーカーのダイキャスト製品ではないかと述べましたが「内外の老舗メーカー」と記したのは長年鉄道模型を設計製造販売している老舗メーカーはレイアウト上で実感を得るための細密度とコスト等生産上の制約のバランスをうまく取るノウハウがあるように感じたためです.

最後はテンダーの写真です.BR50のテンダーはプラ製ですが引けは殆んど見られず塗装の艶の調子も揃っていますので違和感を全く感じません.側板の平面製はダイキャストや真鍮製のテンダーに引けをとりません.またこのテンダーのアンダーフレーム(赤色の部分)と台車は未塗装です.また上の写真のエアータンク周りの部品は全て未塗装である一方,ランボードの赤は塗装となっていますがその差はほとんどわかりません.また台車等の未塗装部品には樹脂の質感を感じさせず樹脂の質感を目立たなくする(樹脂の引けを目立たなくする?)何やら微妙な梨地となっています.この辺りもメーカーのノウハウなのでしょうか.

上の細部写真の製品はBR50は2000年に型を改修した製品(完全に新規型ではない),BR03.10は2010年のMärklin Insider Modelで完全な新規型,BR39は2014年に新規型を起こしたM¨arklin Insider Modelの流れを汲む2018年の製品です.これらを見ると多少の差はあるものの2000年に発売されたBR50のレベルでレイアウト上の機関車の細密度は十分ではないかと考えます.Märklinも最近の製品ではさらに細密度を追求するのではなくドラフトと同期する発煙装置や集電不良に伴うサウンドの停止を防ぐためのキャパシタの追加等,細密化ではなく走行時の機能や走行性のアップに注力しているようにも感じます.日本でもこの程度の細密度を持ちサウンドデコーダーを装備したDCC対応の蒸機が各種発売されるようになれば私の製作したレイアウトもDCC制御で大いに楽しめる日が来るのですがそれはいつの日になるのでしょうか.

機関庫前ののBR01(2007年製)とBR39(2018年製)
炭水線のBR03.10(2010年製)

日本型レイアウトの記事が外国型の車両の紹介記事になってしまったこと,ご容赦ください.次回,全体的なまとめを記してこのレイアウトの紹介記事は最終回としたいと思います.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(18) -レイアウトの製作を終えて思うこと(レイアウトの実感と車両の細密度の関係)-

蒸気機関車が活躍していた時代の機関区の製作過程の紹介は前回までで終了し,今回からはこのレイアウトセクションを通じて考えたこと,感じたこと等を述べてみたいと思います.まずはレイアウトを実感的と感ずるためにはレイアウト上の車両はどの程度の再密度があれば良いかを考えてみます.

レイアウト上のC12とD51.完成年は40年以上異なり細密度のレベルも異なります

最近のHOスケール(16番)の市販車両は以前と異なり全体的なプロポーションが一目見ておかしいという車両はなく全体的に細密化しています.中には一見実物の印象と異なるように見えてもよく見てみると模型の形態が正しく私の印象が間違っていたことがわかるというような事例もあります.また自作車両も毎月発行される雑誌を見る限り細密化がエスカレートしており雑誌には「ついているものは何でもつける」という方針?の作品が数多く発表されています.市場ではプラ製品の普及等でベーシックなキットがほとんど姿を消したにもかかわらずディテールアップ用のパーツは新製品が数多く発売されるという不思議な現象も見られます.
かくいう私もかつてバラキットや細密化用のパーツが数多く発売されていた時期に蒸気機関車のバラキットのディテールアップ工作を楽しんだ経験があり,今回日本型レイアウトを製作した動機はこれらの機関車をレイアウト上で鑑賞するというものでした.そこで今回は機関車の細密化はどの程度「レイアウトを実感的と感ずること」に寄与するかを考えてみたいと思います.
機関車をレイアウト上で鑑賞(目視)した時の見え方とは言っても目視した時の感覚は説明が難しいので写真で説明を試みます.下の2枚の写真は今回製作したレイアウトの給砂塔の前に停車するC12とD51でいずれも運転時にレイアウトを見ている距離から撮影したものです.写真のC12は1980年ごろの作品でD51は昨年製作した最新の機体です.1980年製のC12はヘッドライト,主発電機および車警用発電機,汽笛や轍砂管元栓をロストパーツに交換してありますがパイピングはあまり追加しておらず,新たに追加した警用発電機は取り付けただけでパイピングは一切しておりません.またバルブギアはキットのままでロッド類はプレス製のままとなっています.これに対しD51は実物写真を参照して一通りのパイピングは設けてあり,例えば車警用発電機にはマフラー,電線管,スチーム管,ドレン管を取り付けてあります.またバルブギアは加減リンクをロスト製に交換し,一部のロッド類は洋白版で作成し先端をフォーク上に加工して一部に真鍮線を植え込んであります.そしてこの車両がが給砂塔前に停車している2枚の写真を比較した時,私の感覚ではレイアウトの「実感」という観点で両者にあまり差は感じられません.

レイアウト上のC12
レイアウト上のD51

さらに望遠マクロで機関車をクローズアップして撮影した写真が下の写真ですがこちらも上の写真と同様,あまり差がないように感じます.車警用発電機のパイピングの有無はあまり気にならず,バルブギアは光があたる角度によりC12のロッドプレスのダレが目立つ(わかる)場合がありますが,全体的に見た場合それらが実感を損ねる大きなな要因にはなっていない気がします.

望遠マクロでクローズアップしたC12
上の写真と同じ場所から撮影したD51

この辺りの理由について,脳科学の先生であれば理論的に説明してくれそうな気がするのですが私の経験で思い当たることは人間写真や実物を見る時その全体を細部まで把握できていない(見ることができていない)のではないかということです.我々は一度に多くの情報が存在しているものを見てもその中の全ての情報を認識して処理していないということは事実のようです.それは我々が上の写真のような情景を見て実感的か否かを判断する際に機関車の細部はあまり認識しないでそれを判断しているのではないかと思います.
美術館では我々(私)が絵画を鑑賞して評価する時,細部までつぶさに観察してその中にある全ての情報を得てから評価をしていません.第一印象としては過去に好ましいと思った絵画(の記憶)と比較して割と瞬時に判断しています.それと同様,我々は上の写真ような情景を目で見て見て実感的か否かを判断する時には我々は過去に見た機関区の記憶と照らし合わせてその記憶と合致していれば実感的と判断し,その際機関車の細部までは見ていないのではないかと思います.これは今までの記事でも何回か触れてきた故なかお・ゆたか氏が1951年位執筆した”鉄道模型における造形的考察の一断面”の記載内容に通ずるものがあります.氏の書いた記事はどちらかというとモデル=車両と捉えている感がありますが情景(機関車の姿)を過去の記憶と照らし合わせる時,車両+レイアウトに注目するか車両のみに注目するかで記憶に蘇る機関車の「細密度」は異なっているのではないかと思われます.そう考えるとレイアウト上の機関車の細密度は一定の閾値以上であればそれ以上の細密さは判断に影響を与えず,むしろ全体的な印象が実機を正しく捉えているか否かに影響すると考えられます.そしてレイアウト上の車両に要求される許容細密度の閾値は細密モデルと言われるモデルが要求している細密度より低いのではないかと考えます.ただ再密度の高さが実感を損ねているとは感じませんし,レイアウト上に細密どの異なる車両が存在してもあまり気になりません.これはレイアウトを製作した前から薄々思っていたのですが実際にレイアウトを製作したことにより今回改めて確認することができました.そうすると次にレイアウト鑑賞したりその中で車両を走行させる場合,車両にどの程度の細密度が必要になるかということが問題となります.これについて私の大雑把な感覚では国内外のガレージメーカーではない老舗鉄道模型メーカーのダイキャスト製の量産品の細密度が結構参考になるのではないかと感じますが,これについては後日述べてみたいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.次回はこのレイアウト上で車両を走らせた時に感じたことを書いてみたいと思います.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(15) -アクセサリの製作(4:安全性の観点から規則等で要求されているアクセサリ)-

前回まで2回にわたりこのレイアウトの中では ”大物” のアクセサリとして電柱と柵を紹介しましたがここからは所謂 ”小物” と言われるアクセサリを紹介します. 製作するアクセサリは以前 “レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(12) -アクセサリの製作(1:構想のプロセス)-” で一覧表にまとめましたので今回からはその表に従って紹介していきます.

<車両接触限界票>
車両接触限界表は分岐器の分岐側の線路枠に建てられる標識で車両を停車させる際この標識より分岐器側に列車を停車させることを禁じる標識です. その形状は一般的な”甲号”と積雪地で用いられる”乙号”があります.今回のレリアウトは北海道タイプですので製作したのは積雪地用の”乙号”です. その寸法は機芸出版社発行の”シーナリーガイド”に掲載されているのでその記事の寸法に従って製作しました. 材料は1×1㎜の檜角棒でそれを3角形に整形して目止め後塗装したものです. 私は積雪地には住んでいないのであまり馴染みがないものですがこの”乙号”の高さは1200㎜ありますので積雪地以外に設けられる通称”豆腐”と呼ばれる”甲号”に比較すると非常に目立ちます. ただ”甲号”を使用している地域でも全く積雪がないとは言えませんのでもし雪が降ったら標識は一瞬のうちに見えなくなるような気もするのですが大丈夫なのでしょうか. ちょっと心配です. この標識は線路間隔が4mを下回る地点(線路間隔が4m以下の場合には線路間隔の値を下回る地点)に設けられるようですが, 前述の記事にもあるようにこの値(線路間隔50㎜)で設置すると留置線の有効長が短くなりますので線路間隔42ミリの地点に設けてあります.

レイアウト上に設置した車両接触限界票.

<車止め(転動防止)>
側線に留置された車両の転動防止のため線路に跨がせておくストッパでこれも上記記事の中に製作法が掲載されていますが構造が複雑で製作するのが大変なようにに思えましたのでエコーモデルのパーツを使用し, 白塗装をして正面から見て左側の側線の2箇所に取り付けました. 余談になりますがが中学生の頃こんな車止めは車両を止める効果があるのかと思ったのですが物理の授業で習った斜面の問題で計算すると勾配がほとんどなければこの車止めにかかる力は意外に小さく車両が加速していなければこのような車止めでも意外と効果があるのではないかと納得した次第です. なお取り付けに際しては車両と干渉しないかの注意と設置後に手持ち車両によるチェックが必要です. 特に蒸気機関車の台枠下のブレーキロッドの干渉には注意が必要です.

車止めは車両との干渉に注意が必要です. クリアランスが一番厳しいのは気動車の台車より蒸気機関車のブレーキてこのようです.

<一時停止標識(標識/文字)>
一時停止標識には2種類あるようです. 黒十字の停止標識は出発信号機が設けられない(設けない)場所で一時停止を指示する標識のようで信号関連の規定との関連があります. それに対し文字による一旦停止表示は機関庫の入り口等, 信号とは関係しない部分での指示に用いられているようです. このレイアウトでは前者を機関区出口に設け, 後者は機関庫前や給炭台前等に適宜設置しました.

<転轍機(転換機)>
分岐器のポイントレールの切り替えを行うポイント転換期には各種ありますが転轍機と聞いてまずイメージするのは錘付き転轍機ではないかと思われます。かつて東京では武蔵野線が開業する前、山手線と並行していた山手貨物線(現埼京線)には各駅に貨物用の側線がありましたが、そこには作動レバーに錘のついたこのタイプの転換器が多く使用されたいましたので都市部でも結構見る機会がありました。この転轍機は形状に特徴がありかつてはどこでも見られたせいかメジャーなメーカーからパーツが発売されているのはこのタイプです。ただ、この転轍機は信頼性に問題があるため重量のある機関車が通過する機関区の転轍機としては使用されないようです。そこで今回はエスケープ式転換器(S型ポイントリバー)と呼ばれるタイプの転轍機を製作しました。

転轍機と線路の間には網いたと檜角材で製作した作動装置の目隠し版を取り付けてあります.

このタイプの転轍機は信頼性が高く、今でも各所で見ることができます. なお,選定にあたっては転轍テコと羽根とランンプがついた転轍器標識を組み合わせたタイプも考えたのですが、オレンジ/紫色に光る標識は魅力的であるものの、ポイントレール転換時に動く機構の製作は私には難しく、写真撮影時はともかく、実際にに運転する際には動かないとかえって実感を損ねると思い採用を見送りました。製作過程は以下の写真を参照願います。

ベース部はEvergreen社製のパイプと角棒で作成しました.
標識部はt=0.3のプラ板を円形に切り抜き、スリットを入れて組み立てました.
ベース部と標識部を真鍮線を介して組み立て、真鍮線から製作したレバーをつけて完成です. ベース部と標識部を繋ぐ真鍮線は、標識側には角形の部材を、ベース側にはベースのパイプの内径にはまり込む丸棒を取り付けました. ベース部と標識部を繋ぐ棒の長さは長いタイプと短いタイプがあるようです。今回の転轍器は棒の長いタイプとしましたが、少し長さが長すぎました。この後、黒塗装をして標識部に白を塗って完成です.

レイアウトへの取り付けに関しては、枕木の外側に突出している分岐器の作動レバーを隠すため、転轍機側には網目板と真鍮角材で製作した蓋、反対側にはSTウッドと檜角材で作成した蓋を取り付けてレバーを隠してあります。

<車止め(線路終端)>
車止めはエコーモデルのパーツを使用しました。品番#155の、第3種甲(l号)と呼ばれるタイプを採用しています。これは車庫の車止めとしてよく用いられているタイプです。実物では白く塗られた例もよく見られますが、目立ちすぎると考え、今回は黒塗装としました。このパーツはレールも一体に整形されていますが、そのレールが細い(Code70?)ため、Code83のレールと高さを揃えるのに苦労しました。この辺り、実際に使用されるレールのサイズが異なることを考えて各種レールに対応できる設計にしても良い(そこまで細密さにこだわる必要はない)ような気もします。米国のModelrailroader誌のコラム記事等にはrealismという言葉と同時にImage をre-createするという表現が出てきます. 今まで色々レイアウトを製作してきた中で, レイアウト製作では車両製作以上にこのImage をre-create(再創造)するということが重要になると感じており, 市販のパーツを使用する際には注意が必要であると感じます.

パーツの車止めは取り付け時に線路との高さの調整が必要になります. 車止めの手前の線路は頭部を塗装しました.

<注意表示(踏切・ゼブラマーク・立ち入り禁止)>
これらの注意看板の制作方法はこれまで製作したレイアウトと同じ方法で作成してあります. その手順は ① 各種素材やアプリを使用して図案を作成 ②コンビニのレーザープリンタで出力 ③ 表面を保護するためにPPテープを表面に貼り付け ④所定の大きさに切り抜き ⑤足をつけたプラ0.5㎜厚のプラバンに貼り付け ⑥取り付け板と足を塗装 という手順です. ゼブラマークは表計算ソフトで作成した黄色と黒の縞模様を斜め45度方向で帯上に切断して製作しています.

図案作成の際はあらかじめ大きさの異なる同一図案を作成し, 配置する場所によって使用するサイズを適宜選択しています.
表計算ソフトにより製作したゼブラマーク


なお、プラ板への貼り付けは以前は両面テープで行っていましたがテープの厚さが気になったため今回からプラ板への貼り付けは今回からゴム系の接着剤を使用しました. これらの表示をレイアウト上に設置したのが下の写真です.

レイアウトセクション上に設置した今回製作したアクセサリー
柵に取り付けた立ち入り禁止マーク

次回は機関区として必要なアクセサリ類の紹介をしたいと思います. 最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(13) -アクセサリの製作(2:電柱)-

前回レイアウト上に配置するアクセサリに対する構想のプロセスを紹介しましたが, 今回から具体的なアクセサリの製作過程を順次紹介していきたいと思います。まず最初は電柱です。電柱にはいろいろなタイプがあるとともにレイアウト全体に設置されますのでレイアウト全体の印象を決定づける大きな要素となる重要なアクセサリです. そのため実際の製作(製作方法の検討の前にモデル化するプロトタイプの選定とそれを設置する位置の決定等の構想設計が必要になります.

⚫︎レイアウトにおける電柱の役割
故なかお・ゆたか氏(河田耕一氏)は機芸出版社発行のレイアウトテクニックに掲載された ”蒸気機関車のいる周辺” の中で電柱について以下のように述べておられます.   ”・・・特にこのレイアウトセクションの主役ともなる電柱 ーもし電柱を取り去ったら実在感は半減してしまうー は河田氏(注:河田耕一氏)の未発表原稿によったものである・・・・”  
実際にレイアウトを製作するとこのレイアウトセクションでもこの言葉は全くその通りであると感じます.上記のレイアウト・テクニックの中には後にエコーモデルの店主となられる阿部敏之氏のアクセサリの製作法の記事があり, この記事で製作法が解説されているアクセサリの多くは後にエコーモデルからホワイトメタル製のパーツが発売されており今回私も使用しています. ただストラクチャーを製作し, そのストラクチャーをレイアウト上に配置してアクセサリの構想を練り始めた時点で感じたことはたとえこれらの形態の整ったアクセサリーパーツを各所に並べてもそれだけではレイアウト全体の印象は散漫で実感に乏しい物しかできないのではないかいうことです. しかし実際に電柱を製作してレイアウトに電柱を立てると今まで広く感じられたレイアウトの敷地が引き締まり, レイアウトがかつて見慣れた風景に近づいてきます. 我々が機関区等で車両全体の写真をフェンスの外側から撮影しようとすると車両全体をスッキリ撮影するためには電柱は非常に邪魔なものですが, 機関区のような車両やストラクチャーの密度が高い場所を実感的に再現するためには車両という対象物を鑑賞する際にその視線の妨げとなる電柱の存在がレイアウト上で車両を鑑賞する際にその風景が実感的か否かを決定づける重要な要素となるのではないかという気がします. 余談ですが私も長年鉄道の写真を撮影してきましたが最近一部の所謂”撮り鉄”は車両が他のものに隠れる事を非常に嫌うようです. これは昔のSLブームの頃からの傾向ですが私たちが普段鉄道車両を見るときにはそのような「障害物」があることがほとんどですのでそれがない写真は後から見ると臨場感がなく類型的でつまらない気がします. 以前どこかで「自分がその時失敗と思った写真ほど後で見て面白い」という記事を読んだ気がしますが, この年になって昔撮影した鉄道の写真を見ているとそれも一理あるような気がします.

機関区等にある柱上トランスの載った電柱は非常に目立つ存在です.
独特の形態をした照明灯は機関区だけでなく全国の国鉄の施設でみることができます.

<構想>
まず構想の初期段階で最初に決定したのは電柱は真鍮製としてハンダで組み立てるということです. 私は今まで製作してきたレイアウトセクションに照明灯を3本設置しましたがその時感じたことはこの程度の数でもレイアウト上のこのような支柱はもどんなに注意しても手を引っ掛けて破損してしまうということでした。車両をレール上に置く際には支柱がない部分から行うとかセクションに接続したレールから入線させることができますが, レイアウトにはレールクリーニングが欠かせません. 前作のレイアウトはMärklin Digitalを採用いるため比較的レールは汚れにくく車両側でも集電不良に対する対応が行われていますがそれでもやはり長期間運転しないとホコリやサードレールのサビ等でレールクリーニングは必要となります. 一方今回のレイアウトはレールに汚れがつきやすいと言われるDC運転で車両も古い自作の車両が多くあります. そのためレールクリーニングの頻度は多くなることが予想されますし, レールクリーニングカーに頼るのも不安です. また電柱の本数も前作よりかなり多くなりますのでレールクリーニング時に電柱に清掃部材を引っ掛けて破損する確率は非常に高くなると予想されます. そのため電柱は強度の高い金属製とすることが必要と判断しました. また金属で製作することのもう一つの利点は万一破損しても手間さえかければ外観を強度も含めて元の状態に戻すことが可能であるということです. プラ製ですと破損した場合は破損部分を接着剤で補修することになりますが強度的にも外観的にも元に戻すのは困難で状況によっては新作する必要も生じます. しかし金属製(ハンダ組み立て)であれば変形の修正も容易であり部材が脱落しても破損部分の塗装を剥がして再度ハンダ付けして再塗装すれば強度も外観も元に戻ります. 私が以前製作したZゲージレレイアウトでは駅の部分にタワーマストを立ててそこにクロススパンを渡してあり, レイアウトにアクセスした時にクロススパンに手を引っ掛けて破損させることが時々ありますが, クロススパンを真鍮線のハンダ組み立てとしてあるため破損しても何度でも元通りに修復が可能です. レイアウトのアクセサリはプラ, ペーパー, 木材で作ることが多いのですが金属で製作することも選択肢として考えておくと良いと思います.

クロススパンは真鍮線をハンダ付けで組み立ててありタワーマストに対して取り外し可能としてあるので破損しても容易に修復が可能です.

<製作する電柱のタイプの決定>
次に実際に製作する電柱の形状と設置位置を決めていきます. 雑誌の写真や地震の撮影した写真を参考資料として私は下図の5パターンを製作することとしました.
A: 横桁2本の電柱
B: 横桁1本の電柱
C: 柱上トランスが設置されている電柱
D: 照明灯(水銀灯)+横桁1本(横桁は図には無し)
E: 街灯+横桁1本(横桁は図には無し)
Dは国鉄の機関区や電車区でよく見られるタイプで鉄道施設以外ではあまり見ませんので国鉄が標準化していたタイプかもわかりません(上の実物写真参照).
 タイプが決まったらタイプ別のに設置場所を決めましたが種類や位置は最終決定ではなく製作する本数の目安とするために決めたもので, 最終的には現物合わせで配置を決定してあります. また下記の 図面には本数が記載してありますが, 一般的な電柱であるA ,B,Eはずの所要数より1本多く製作することとしました.

<製作>
タイプと本数が決まったら製作用に電柱を図面化します.高さ等の寸法は上記レイアウト・テクニックの記事を参考にして決定しましたが, 取り付け時にベースボードの穴を貫通させれば高さ方向は調整できますので高さは高めにしてしてあります.

電柱と照明灯の構造の概略を数に示します. 電柱の柱はφ2.1㎜の真鍮パイプ, 横桁は1×1㎜の真鍮アングル材をで作成しています. その他1×1ミリの角線, 厚さ0.3ミリの真鍮版で碍子台や柱上トランスの置き台を製作しました. 照明灯はφ0.3㎜とφ0.5㎜の真鍮線, 1×1㎜のプラ角材, φ0.15㎜のエナメル線を用いて製作してあります. LEDは表面実装LEDで1608(1.6×0.8㎜, 厚さ0.36㎜)タイプの白色を用いました. 図に示した電柱の構造はType Cですが支柱と横桁の取り付け部の構造は他のタイプでも同じです. 横桁の短い真鍮線は後で碍子を取り付けるときに使用するものです.

以下、写真を主体に製作手順を紹介します.

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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(12) -アクセサリの製作(1:構想のプロセス)-

前回までにレイアウト製作においてシーナリーとストラクチャーと呼ばれている部分の紹介を終わりましたので今回から一般的にアクセサリと呼ばれるより細かい部位についての製作過程の説明を行いたいと思います. その初回としてまずは製作に当たっての構想設計((製作するアクセサリを決定するまでのプロセス)について私が行った手順を少し詳しく説明してみたいと思います.

⚫︎アクセサリの定義
過去の雑誌のレイアウトの製作記事ではレイアウトの製作過程は大きくシーナリーの製作とストラクチャーの製作に分類されています. そしてその後には所謂車両のディテーリングに相当する細かい部分を製作する作業があります. その呼び方は記事によっていろいろあるようですが1970年代にTMS誌に発表されている記事ではTMSのスタッフの方が執筆している記事を含めて”アクセサリの製作”と記載されている例が多いようです。
 この”アクセサリ”という意味を辞書で調べてみると辞書には語釈として 「①服装を引き立たせるための装身具②機械類の付属品・周辺機器 」と記されています。私の解釈ではレイアウト用語の”アクセサリ”はこの語釈のどちらかというものではなく両方の意味であると考えます。そして①と②の大きな差は①は後から付け足すもので極端にいえばあってもなくても良いもの(英英辞典でははっきりそう記載しているものもあるようです), ②は機械(システム)の設計段階で機械やシステムの設計者がそのシステムで要求されている機能を満足するため, あるいはより向上させるために用意する(中には法規上必須のものや現場で判断して設置要否を判断しているものもある)ものではないかという気がします. このように考えるとレイアウトの細部仕上げを”アクセサリの製作”と表現することは”言い得て妙”であると思う反面, 実際のレイアウト製作では実感的な情景を製作するためには写真等で見た風景をただ漫然とそのまま作るのではなく, 上記の語釈①と②を意識して, 製作するものが以下に記すどのカテゴリに属するかを意識して製作するアイテムと配置する場所をよく考えて製作を進めていくことが必要であると感じます. またこのためにはある程度の鉄道に関する法規や規定は勿論, 地域的な特性についても知っておく必要があると思います.
1. 安全性等の観点から規則等で要求されているアクセサリ(様式の選択も含む)(①)
2. 鉄道施設しての機能を満たすために必要なアクセサリ(①)
3. 機関区という機能を満たすために必要なアクセサリ(①)
4, 機関区内で職員が日々業務を行なっていることを感じさせるアクセサリ(②)

⚫︎ 製作したアクセサリ
我々(私?)がこのような ”アクセサリ” を製作しようとした場合は参考資料として自身が撮影した写真や雑誌等に掲載されている資料を用意し, そこに過去の自分の体験や記憶を加えて何を製作するかを決めていくことが多いと思います. 私は実感的な情景を製作する場合にこの決定の際に大切なことは, それらの資料や自身の記憶をそのまま再現しようとするのではなく製作するアイテムは全体的なバランスを考えながら決定していくことではないかと考えます. 特に自分が実施に見た情景や体験はとうしてもそのままレイアウトで再現したくなります. しかしこの再現にこだわりすぎると局所的には満足なものができても全体を見渡すとそれが返って実感を損ねるということにも留意しておく必要があります. 以前製作した外国型のレイアウトではこの過去の自分の体験や記憶が全くなかったのである意味淡々と製作を進められたのですが, 今回のように自分がかつて親しんだ情景を再現する日本型レイアウトでは自分の体験にこだわりすぎないことを意識しながら進める必要があると感じました. 特に今回のレイアウトセクションのような全体を一度に見渡せる(鑑賞者が場所を移動しなくてもある程度レイアウトの細かいところまで観察できる)レイアウトセクションは鑑賞者の移動により映画のカット割のような効果が期待できませんので特に注意が必要です. そこで今回試行してみた方法は実物写真をそのまま参考にしてストラクチャーを配置したレイアウト上に配置するアクセサリを決定するのではなく, まずストラクチャーを配置したアクセサリのないレイアウトの写真を撮影し, その写真と実物資料を見ながらその写真にどのようなアクセサリを加えれば良いかを検討し製作するアクセサリをリスト化する方法です. 実物写真から製作するアクセサリを決めていく場合, そのアクセサリの背景に写っている情景や建物は当然レイアウトのものとは異なります. このため参考写真のアクセサリにのみ注目して製作するアイテムを決めてしまうとアクセサリの背景となる建物や情景が参考写真と異なるため実際にアクセサリを配置した時に違和感を感ずる場合があります. これに対し撮影したレイアウトの情景や建物の画像を見ながら製作するアクセサリを決定する方法ではレイアウト上の建物や風景を基準に検討しますので実物の資料からより的確に製作するアクセサリの種類や個数を決定することができます. この際留意することは写真をいろいろな角度から, またいろいろな範囲を撮影してそれらを見ながら検討することで, あまり狭い範囲で検討するとその部分だけは実感的でも全体的に見ると不自然であったり散漫な印象になる恐れがあります. もちろん車両工作より修正が容易ですので事前に完璧に決めることはないのですが, 実物写真の情景をレイアウトで再現させる場合,このようなプロセスを導入することにより無益な「こだわり」が排除できるとともにに, もし一部に不満な点があっても最初にそのアイテムをそこに配置しようと考えた理由を振り返ることができ修正作業が容易になります. さらに製作するアクセサリをリスト化するということは製作の効率化にもつながると思います.

アクセサリを配置する前の乗務員詰所付近の写真. アクセサリの配置を検討する際に使用したもの.
アクセサリー配置後の乗務員詰所付近
アクセサリを配置する前の給砂塔付近の写真. アクセサリの配置を検討する際に使用したもの.
アクセサリー配置後の給炭台付近

上記の観点で今回製作したアクセサリを一覧表にすると以下になります.

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