前回までレイアウトの照明の説明をしました。今回はその照明の配線と制御について説明させていただきます。
<照明の制御>
下に記載した文章はこの製作記”レイアウトの製作:自動運転を前提としたレイアウトセクションの製作 <3>”で記載した自動運転の脚本の一部の再掲です。今回、レイアウトの中で下記の脚本に記載したような車両の制御と照明の制御を連携させた例を照明への配線とともに説明させていただきます。
まずは動画をご覧ください(動いている車両は下記の脚本とは異なります)。
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<脚本(Screenplay)>
まず線路配置の詳細を検討するにあたり、以下のような脚本を考え場面を想定しました。
1)夜明け、駅員が起きて駅舎の宿直室の電灯が灯り、その後事務室、待合室の電灯が灯る。
2)しばらくすると場内信号が青になり、始発列車がやってくる。始発列車は乗客が少ないので蒸気動車の単行列車。
3)信号が青になり始発列車が出発する。
4)周囲が明るくなり、駅の電灯が消灯する。
5)通勤時間帯となりやってくるのは収容力の大きなプッシュプルトレイン。
6)信号が青になり折り返しのプッシュプルトレインが出発する。
(以下省略)。
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上記シナリオでは駅の2階(宿直室)、駅1階(事務室・待合室)の照明をシーケンシャルに制御する必要がありますが、今回のレイアウトでは、上記の駅舎1階、2階の他に、駅の入口灯、ホーム待合室と街灯、ホーム照明灯、貨物駅の6個の回路を個別に制御できるように設定しました。
<配線用の基板>
各照明へ電力を供給するため、まず下の写真のような配線用の基板を製作し各照明に電力を供給しました。電源は9VのACアダプタを使用することとし、基板上にDCジャックを取り付け、そこから各照明に接続する端子台に配線を行います。照明は上記の6グループに分割し、LEDを接続する部分にはLEDのアノード(+)側の端子と電源の間に所定の抵抗値の抵抗を挿入してあります。各電球、LEDは基板上に設けられた所定のターミナルブロックに接続します。
簡単に基板の回路図を書くと以下のようになります。図では電球とLED2個の回路を二組記載してありますが、実際には下表のような照明回路を基板上に6にグループ設けており、各グループには表中に記載した個数の電球、LEDの個数分のターミナルブロックを設けてあります。
<CS3による照明の制御>
配線が完成したら、次にCS3による照明制御のシーケンスの作成に入ります。まずはCS3へのm84デコーダーの登録です。m84デコーダーはコマンドにより設定したアドレスに割り当てられたスイッチ(接点)をON/OFFする機能を持つデコーダーで、信号機を設ける必要がないStaging yardでの列車の出発、停止にも使用されます。今回使用したデコーダーはmfxデコーダーですのでまずデコーダーをCS3に接続し、EditメニューのFind mfx articleを選択するとデコーダーが検出されて接点のアドレスが設定されます。m84デコーダーの工場出荷時のデフォルト設定では4アドレスが設定されており、1アドレスで二つの接点を交互に切り替える設定になっていますが、今回は接点を交互に切り換えることは行いませんので、デコーダーの CV値を変更し、8アドレス8接点として使用します。この設定の変更は度線路に接続してCS3の”find mfx article”メニューでデコーダーを検出した後、CV値を変更した後一度デコーダーを削除し、再度”find mfx article”メニューでデコーダーを検出することにより行います。この作業を行うとデコーダーは8アドレス8接点のデコーダーとして使用可能となります。そしてCS3の画面上で各接点は写真のA1からA8のようなスイッチマークが表示されます。接点がONになった状態は緑表示、OFFになった状態は赤表示になります。
使用したデコーダーはmfxデコーダーですので各接点にはそれぞれアドレスが自動で設定され、スイッチマークの右上にmが表示されます。今回の例ではA1からA8のアドレスは1から8に設定されています。CS3ソフトウエアの最新バージョンでは各articleのアイコンをクリックすると、画面の下に設定されているアドレス等の情報が表示されるようになりました。また同一のデコーダーで制御されているアクチュエータにはアイコン中に同じ記号が表示され、アクチュエータがどのデコーダーで制御されているかが一目でわかる機能も追加されています。
<制御シーケンスの作成>
照明制御シーケンスの作成方法はロコシーケンスの作成方法と同じです。下図のように、各接点のON/OFF順にコマンドを設定し、各接点が動作するインターバルをdeley時間で設定して照明制御シーケンスを作成します。
このようにして作った照明制御シーケンスをセッションシーケンスの中にロコシーケンスと同様な形で設定することによりセッションシーケンスの中で照明のON/OFFを制御が可能となります。下図ではセッションシーケンスの冒頭に照明をリセット(全てOFF)にする照明シーケンスが設定され、次の照明シーケンスで始発列車到着前の駅の照明をシーケンシャルに点灯させ、続くロコシーケンスで車両を動かしています。また、今回の照明のON/OFFは車両が動いていない時に行うため、接点の制御コマンドを単独でセッションシーケンスの中に入れることも可能です。下の図はセッションの冒頭部分、照明のリセット(全OFF)⇨一番列車列車到着前の照明点灯⇨列車の到着(BR218が牽引するプッシュプルトレイン、レールバス)⇨照明の消灯 という部分のセッションシーケンスです。消灯はコマンドをセッションシーケンスの中に直接設定する方法で行っています。
これで当初計画したレイアウトの車両制御用と照明制御に使用する設備(ハードウエア)が一通り完成しました。あとはCS3のプログラミングによりいろいろな脚本を作り込んでいく作業となります。
今から50年ほど前、神田須田町にあった交通博物館のレイアウトの片隅に実際に国鉄に信号装置を納入している信号機メーカー提供の制御盤があり、学芸員の方がそこから列車を制御していたのを「すごい!」と思って眺めていたことを今でも思い出します。最近のレイアウトは多分コンピューターによる自動制御となっていると思われますが、非常に小規模とはいえ、それと同じような制御が家庭でのレイアウトでも簡単に実現できるということには時代の流れを感じます。一方、今回の製作の中で感じたことは、この程度の小規模なレイアウトでデジタル制御のレイアウトといえどもコンタクトトラックからS88コンタクトへの配線、照明への配線等、使用したケーブルの量は結構な量となりその束線も大変だということです。最近実物の世界では従来の閉塞方式に変えてGPSによる列車位置検出による列車間隔の制御の研究が盛んに行われているようですが、それが実現されればにはケーブル量の削減と保守の簡略化等で鉄道会社の収益に多大なメリットとなることが今回実感できたような気がします。
最近のModel Railroder誌には無線コントローラの製品紹介記事や広告が掲載されていますしMärklinでもStart upシリーズではIR制御のコントローラーを発売しています。鉄道模型の世界でもこれからはワイヤレスの時代になるのでしょうか。ただ、無線の世界は各国にいろいろな規制や認証制度ががありますので海外システムの使用や市販のシステムの改造や自作には注意が必要だと思われます。