今回ご紹介させていただくのは北海道の夜行急行列車に使用されていた客車の模型です。
私が学生であった1980年前後、国鉄には比較的多く機関車牽引の客車列車がが残っていました。急行列車も昼行列車はほぼ全て電車、気動車でしたが、当時まだ多く残っていた定期夜行急行列車は10系寝台車とスハ43系客車の混結編成で運転されている列車が数多くありました。その中で北海道には、札幌から釧路、網走、稚内行きの夜行急行列車が運転されていました。このモデルはそのイメージを再現しようと考えて作成したモデルです。
使用したのはフェニックス模型店製、谷川製作所製のバラキットで、編成は以下のとおりです。
スハフ44+スハ45+スロ54+オロハネ10+スハネ16 +オハネフ12+スハフ44
オロハネ10が組み込まれていますので急行大雪のイメージですが、北海道のイメージを出すために選んだもので、大雪の編成をそのまま再現したものではありません。気分に応じて荷物車、郵便車を追加したり普通車を加えて楽しんでいます。
キットは1980年頃の製品です。記憶では当時フェニックス模型店からBBキットを何台か組み合わせた「急行越前セット」「急行妙高セット」というアソートセットが発売されておりました。割安だったかどうかは忘れてしまいましたが、そのセットを購入し、その中から車種を選んで組立てました。ただ、さすがにオロハネ10はその中に入っていなかったので別途購入しました。この編成はほぼ同時に製作していたカツミゴールデンシリーズのC57,C55,当時発売まもなかったKATOのDD51にけん引させるために作成したものですが、これらの機関車については作成後一部破損している部分がありますので後日修理後に紹介させていただきます。この編成はキットの構成という観点で見ると谷川製作所製の座席車、フェニックス製作所製の10形客車、フェニックス製作所製の座席車に分けられます。以下、順を追って説明させていただきます。
<スハフ44>
スハフ44はスハフ42の北海道版です。スハフ42と異なる点は二重窓であること、車軸発電機が機械式であること、蓄電池箱が大型であることが外観上の特徴ですが、二重窓は表現していませんので、外観上の特徴は蓄電池箱と発電機のみになります。
2両のスハフ44はキットのメーカーが異なりますが、車体自体が割と単純なデザインですのでメーカーによる差異はまったくと言って良いほどありません。
旧型客車の屋根は側板との間に稜線があり、フェニックス模型店製の方がわずかにその形状に近いような気がしますがその部分に太い雨樋がありますので組立て前よりもその差は目立ちません。全体を印象付ける窓の高さに差はありませんので同じ編成に組成しても違和感はありません。ただ、窓枠の大きさは谷川製の方が実物に近いという印象です。
上の写真でわかるように谷川製作所製のドアが原型のプレスドアですが、フェニックス製は更新後のドアとなっています。車端部の印象もほぼ同じですが谷川製作所製の妻板には銘板がプレスで表現されています。
床下機器はこのほかの編成も含めて標準化しています。機器類はエコーモデル製で、給水、検水コックは真鍮帯板と真鍮線による自作で、ブレーキロッドとパイピングを加えてあります。これらは鉄道模型趣味1973年3月/4月号の記事を参考にしています。この記事ではカツミのダイキャスト製の床下機器にパーツ、パイピングを加えていますが、エコーモデルのパーツはパイピングのみでこの記事の細密度が得られるように作られてます。
北海道型を特徴付ける車軸発電機はエコーモデルのパーツです。TR47用のパーツは代車のコロ軸受けを削って取りつけます。
車端部はエコーモデルのパーツです。緩急車のみロスト製のエアーホースを奢ってあります。写真は谷川製作所製です。テールライトは既成パーツを取り付けています。カプラーはKEEDEE #16を取り付けてあります。
レタリングはいさみや 製で所属は札サウ(札幌運転所)です。オーバースケールですが当時は1シーと800円(消費税はなし)だったと記憶しています。1枚購入すればかなりの数の車両に使用できました。
<スロ54>
スロ54はスハ43系のグリーン車で製造当時は冷房はなく、車体断面は2等車と同一でしたがその後1967年ごろに冷房改造されて低屋根に改造されています。当時本州の寝台急行のグリーン車はスロ62が使用されており、道南の急行ニセコもスロ62が連結されていましたので80年台、スロ54が見られたのは北海道のみであったと記憶しています。当時スロ62はアルミサッシに改造されていましたがスロ54は未改造で窓枠が車体色のままでした。スロ62に比べて窓間隔が狭いのが特徴です。
谷川製作所製のバラキットを組み立てました。窓枠は車体色と同じですのでモデルはスロ62に比較して地味な印象です。
低屋根であること以外キットの構造はスハフ44と同一です。ドアはプレスドアではありません。妻板には冷房用配電盤が付いています。国鉄末期にはグリーン車の帯は消されてしまいましたが80年台はまだグリーン車を示す帯がついていました。本来グリーンマークが表示されていますが当時適当なパーツがありませんでしたのでつけておりません。
床下機器は冷房用のディーゼル発電機、燃料タンク、消化器が取り付けられています。その他の構造はスハフ44と同じです。
台車はTR23です。発電機は機械式ですが台車構造が異なるためスハフ44の台車取り付け型とは構造が異なります。エコーモデルのパーツを使用しました。このパーツは台座がロストワックス製です。蓄電池箱は小型です。
<スハ45>
この車両はフェニックス模型店製バラキットです。フェニックス模型店製のスハフ44と同構造ですので、ここでは全体外観のみをご紹介させていただきます。
これらのモデルを作成したのは1980年代の後半で、プラスティック製の完成品が発売される前でした。プラ製の完成品客車が多く発売されている今ではキットの種類も減ってしまったようですが、旧型客車のキットはパーツ点数も少なく比較的簡単に好みのレベルの細密度のモデルを作ることができますので、今でも割と気軽の取り組める題材だと思います。また、1970年頃には鉄道模型趣味によくキットの製作法が載っておりましたが、谷川製作所製の客車の組み立て方を解説した下記の記事(1973年3月号)は組立て時大いに参考にさせていただきました。
以上、寝台急行列車のスハ43計客車を紹介させていただきました。まだ寝台車が登場していませんが今回はこの辺で終了とし、次回で10 系寝台車をご紹介させていただきます。