Z-ゲージレイアウト ”Keiserburg  Stadtbahn II”の製作(6) -線路の敷設(工程101〜112) : その1(101・102)-

製作に必要なドキュメントが揃ったらいよいよ製作に入ります.今回から私が行った製作の手順を工程表に沿って進めていきますが,今回は線路の敷設工程(101〜106)のうち101と102の工程を紹介します.

1. 工具
工程表からわかるようにこの工程は全て「木工」で,車両製作等の金属工作とは方法が全く異なります.前述のように私は前作のZゲージレイアウト製作以降,レイアウトセクションや小型レイアウトを製作しましたがこれらに製作時フラットトップのベース製作時にに行なう木工作業のほとんどは図面を書いてDIY店に依頼していたため,本格的な木工作業は約30年ぶりとなります.そのため当時使用した工具(鋸等)は殆んど残っていないため,まずは工具の用意からのスタートとなります.そこでまずは今回用意した工具を紹介します.木工の専門家に言わせれば邪道なのかもわかりませんが,穴あけは金工用のドリルでもなんとかできますので新しく用意する工具は切断工具が主体になります.今回上記の工程で使用した主な工具は下記の工具です

今回ライザー,クリートの製作に使用した工具

前作の製作時には鋸は昔ながらの両側に縦引き,横引きの刃のついた昔からある鋸とクッキーカッター方式の切り込み部に回し引き鋸をを使用した記憶があるのですが今回は上の写真にある木工・竹引き用と称する鋸を使用しました.今回の購入にあたっては最初「竹引き」の意味がわからなかったのですが,これは竹のような硬い木材も切断できるという意味のようです.一方曲線切りには金属工作で使用している糸鋸を使用しました.鋸刃は木工用ではなく金属切断用の刃を使用し,サイズはDIY店にあった最も目の粗い#6を使用しました.この刃でライザー用の4㎜厚のシナ合板であれば快適に切断することができます.また細い角材を切断するためにはサイズ#1の刃を使用しました.糸鋸の下に見えるのは比較的大型のカッターナイフですが,このサイズのカッターでは先端に装着可能な鋸刃が市販されています.この鋸には上記の回し引き鋸の刃と類似している形状を持つものも存在します.この鋸は細かい部分の切断に使用しました.余談ですが,今回使用したサイズの糸鋸刃は樹脂を切断する際にも使用できます.車両工作に用いる#2/0や#3/0等ピッチの細かいサイズの刃は樹脂を切断すると切断時の熱により樹脂と刃が融着し切断できなくなりますが,このサイズであればそのようなことは起こりにくく比較的快適に切断作業ができます(ただし材質により異なります).今回私はBrickl sheet等の樹脂版もこのサイズの刃で切断しました.前述のように穴開けはほとんど金工用のドリル歯を使用しましたが,呼び径10㎜のドリルのみ用意してねじ頭部のザグリ穴等に使用しています.なお,このドリル刃は前作のレイアウト製作時に購入したものです.
2. 高さの基準点
ライザーを製作する前に線路高さの基準点(線路断面図におけるDatum面(高さ0の位置))を定義にしておく必要があります.この基準面の位置は本来仕様書で明確にすべきものですが,仕様書への記載が漏れていたためここで説明します.私はこの基準点を台枠横梁から+4㎜の高さとしました.
ライザー間隔はクリートの剛性を考えれば台枠横梁の間隔で十分ですが勾配の変化点にはライザーを設ける必要がありますので横ばり位置以外にもライザーが必要です.このライザー設置の際に横梁間に渡す部材を横梁の上に設けても下に設けても横梁やライザーで使用した部材の残材により基準点までの高さ出しがが容易に行えるという理由で基準面はこの高さとしました.

3. ライザーの製作(101)
ライザーは機械加工された角材の面同士を積層して接着することにより所望の高さとしています.今回のレイアウトの場合線路の持ち上げ量は50㎜程度ですので積層する部材の数はそう多くはなりません.市販の角材の最小厚さは0.5㎜ですので,ライザーの高さは0.5㎜単位となります.その一例を下の写真に示します.

製作したライザーの一例です

使用する角材は30×30から0.5×2㎜程度の檜角材,20x 20㎜,30×30㎜の檜角棒,3,4,5,8㎜のホウ板(幅30,45,60㎜)等を使用します厚さ方向と幅方向の両方の面を使用).檜角棒は普通のDIY店ではサイズがあまりありませんが,東京の御茶ノ水あたりの画材店にいくと建築模型の素材を扱うコーナーでほぼ1㎜刻みの檜角棒が入手できます.当初はこの部材を積層する方法では正確な高さが得られないのではないかと危惧していましたが0.5㎜厚の薄いい檜角棒では厚さが厚いものもあり多少の選別が必要なものの接着後クランプで固定して乾燥させることでほぼ正確な高さのライザーの製作が可能です.

サイザーに使用した素材の一部です.

また勾配区間のライザーとクリートは線接触になりますので上側に細い檜角棒を使用し,その下の太い角棒の面に接着すれば取り付け面が限定されていても接着位置を調整することにより高さ方向の最小分解能がが0.5㎜単位でもライザーをを動かさずに高さを合わせることが可能です.その概念図を下に示します.レイアウトの製作法に記載されているライザーは台枠梁に柱を立てるような構造となっている場合が多いのですが,今回の積層ライザーは基準面と同一面に接着するだけで高さが決まるとともに台枠とクリートの並行度も確保できます.

4. クリートの製作(102)
今回のクリートの製作は以下の手順で行いました.クリートは一部は現物合わせによる製作となります.
クリートの種類を大まかに分類すると
1. 直線用区間用のクリート
2. 固定カーブ区間用のクリート
3. Flex track使用区間のクリート
の3種に分かれます.
クリートの幅は22㎜を標準としましたが場所によって20㎜としたところもります.築堤部分となるところのクリートは幅を狭くしておいた方が無難です.材料は4ミリ厚のシナ合板を用いています.Zゲージの車両は実測の結果動力車(機関車)は約30g,客車は15g程度ですのでクリートの材質,厚さの選択に関し車両の重量を考慮する必要はありません.
直線部のクリートはそのまま切り出すだけですが,固定カーブのクリートはテンプレートを製作して合板上に形状を罫書いて糸鋸により切り出ました.今回使用したMärklin mini-club systemの固定カーブ半径はR220,R195と小さいため,写真のような延長アームが装着できろコンパスがあればカーブをコンパスで描画することが可能です.なお,固定カーブの先の直線がある場合はその部分も一体に切り出しています.

Flex track使用部のクリートは現物合わせによる製作です.固定カーブ,直線部のクリートができたらそれらをフレックストラック使用部の前後に配置し(配置の手順は組み立ての説明の中で行います),その間の線形の線路中心線を厚紙あるいはシナ合板に描画し,それをトレーシングペーパーに移します.この描画の際は固定カーブ用のテンプレートを使用して描画したカーブがR220を下回っていないかをチェックします.描画が終了したらその形状を手芸用のチャコペーパーでシナ合板にコピーして22ミリ幅のクリートを製作します.もちろんカーボン紙も使用できチャコペーパーより濃い線が描画ができますがカーボン紙は現在では需要が少ないためか非常に高価でチャコペーパの方がずっと安価に手に入ります.電子メールのCCはCarbon Copyの略号ですが,現在メールを使用している方で実際のカーボン紙を見たことも触ったこともない方も結構多いのではないでしょうか.なお,トレーシングペーパーのカーブを移した時点でそこから切断用のテンプレートを製作することも可能です.

下の画像はFlex track使用部以外のクリートをレイアウトの所定位置に置いてFlex track部分の線路の形状をトレーシングペーパに描画しているところの写真です.

Flex trackの使用部の線形の確認します

下の写真はレイアウトの手前のFlex Track用のクリートですが,この部分御クリートは幅広の直線の板情に線形を描画し,その後幅を旅程幅に仕上げています,この程度のカーブであれば糸鋸を使用せずに鋸の刃を撓ませて切断することが可能(糸鋸は弓の深さの関係で使用できません)ですがSカーブになっている部分は慎重に作業を進めることが必要です.Märklin magazinには毎号レイアウトプランが掲載されておりその大部分が固定カーブの線路(C track)を使用したプランですが,その説明の中にはよくC TrackよりK trackを使用した方がFlex traackが使用できるのでカーブがより”elegant”になるという説明があります.この部分はレイアウトの中でも目立つ部分ですのでそれに従い”elegant”な線形を目指したのですが実際の鉄道線路がカーブしているのは地形による制約による(新京成電鉄(現京成電鉄)の線路は例外です)のでこのような区間で線路をあまり曲げすぎると地形の処理が難しくなるため実際にはそれほど曲げられるものではありません.無闇に曲げると後で地形処理に苦労しそうです.

レイアウト手前側のFlex track用クリートの形状

クリートの製作が終わったら次に駅およびStaging yard部のベースを製作します.製作はこの段階では全て直線切りで行えますので特に難しいところはありません.Staging yard部のベースはこの切り出しが終われば作業はほぼ終了ですが,駅部分は下側の線路と交差する部分の一部をクリアランス確保のために金属化する必要があります.この加工は後で行いますのでまずは切り出しが終わった状態でライザーを台枠上に並べます.台枠上にクリートを配置した写真を以下に示します.

ほぼ完成したクリートをレイアウト上に配置して形状を確認します

以上でライザーとクリートの製作が終わりましたので次にこれらを台枠上に固定する作業に入りますが,この作業(工程103以降)は次回以降の説明とさせていただきます.木工作業は苦手云々ではなく日常殆んど行っていないため写真のとおり出来栄えはお粗末ですが,私のようなレベルでもなんとかレイアウトの製作はできるようです.
最後までお読みいただきありがとうございました.

Z-ゲージレイアウト ”Keiserburg  Stadtbahn II”の製作(5) -レイアウトの製作について(工程設計)-

設計が終了するといよいよ製作に入ります.私は前作のレイアウトを製作以降その後数個の小さなレイアウト(レイアウトセクション)の製作を経験していますが,それらのレイアウトはフラットトップの小型レイアウトのため設計の終了から比較的すぐに製作を開始できました.しかし今回は今までのレイアウト(レイアウトセクション)とは異なり台枠がOpen Topであること,駅の部分を除いて殆んどが勾配区間であること,駅部分のベースとStaging Yard部のベースが上下にラップしていること等,今まで製作したレイアウトに比較して構造が遥かに複雑であるため,製作の手順(工程の設計)を誤るとどこかで破綻(作り直し)が発生してしてしています.また無理な姿勢での作業や手の届きにくいところで非常に細かい作業を行なうことを避けることも必要です.そこで今回は制作を開始する前に簡単な工程表を作成することとしました.今回は主にこの工程表を紹介したいと思います.今回もドキュメントの説明になってしまいますがご了解ください.ちなみにレイアウトの制作は後ほどご紹介する工程表の工程③が終了しており,車両の走行テストが終了し,,シーナリー,ストラクチャーの本格的な製作を始める直前の段階となっております.下に現状のレイアウト上を走行する車両の動画を掲載しますのでよろしければご覧ください.

今回の工程表を作成するにあたり,まず最初に私がレイアウトを製作した際に全面的に参考にしてきた1970年から1971年にかけてTMS誌に連載された”9㎜ゲージレイアウトの作り方”という記事,その後のレイアウトの製作時に参考にした1999年12月から2001年4月にかけてThe Märklin Isider club誌に掲載された”Kottenforst layout -A layout with K track for biginners” という記事,それにNMRA Web siteのの非会員でも閲覧できるページに掲載されているBeginner’s Guideと名付けられたレイアウトの製作についての解説を読み直してみました.これらはいずれもレイアウトの製作法に関する記事で,レイアウトの製作を経験そたあとで再度読み返してみると改めて参考になることも多いのですが,一方これらの記事をまとめて読むと各記事の特徴がわかります.ちなみにその項立て(説明の順番)を書き出してみると以下の表のようになります.

この項立てを見ると各記事の特徴がよくわかります.レイアウト製作法はNMRAの記事が全体の概要を把握するという意味で,TMS誌の記事は技法の詳細を知るという意味で(とは言っても50年以上前の技法ですが),The Märklin insider誌が構想から完成までの製作の手順を把握するという意味でいずれも有益なものです.この中では製作の工程設計という意味では一つのレイアウトの構想から完成までの手順を解説しているThe Märklin insider誌の記事が最も参考となると感じます.少し話がそれますが,私の記憶ではこの記事以降,TMS誌には編集部に文責のあるこの「レイアウトの作り方」に類する記事は掲載されていないのではないかと思います.残念ながら日本には鉄道模型の普及を図るNMRAのような組織は存在していません.私はその役割は伝統がありかつ発行部数の多いTMS誌のような雑誌が担わなければならないのではないかと思っています,しかし現在のTMS誌は製作者が執筆した自身の作品の紹介が主体となっており,実物に関する記事はあれど編集部に文責のある製作法の記事が殆んど掲載されません.このブログをはじめ誰もが気軽?に自分の作品をや製作過程をSNS等で発信できる時代ですが,SNSの致命的な欠点はSNSに掲載される記事は私が書いているこの記事も含めて掲載の際複数の有識者のレビューを受けていないことであると思っています.このような時代であるからこそ日本を代表する鉄道模型雑誌であるTMS誌にも鉄道模型のプロフェッショナルの集団である発行元に文責があり充分なレビューを行なった初心者向けのレイアウトや車両の「標準的な製作手順」が掲載されても良いのではないかと思うのは私だけでしょうか.現在の最新の技術(手法?)を反映した初心者向けの記事は私のような長年鉄道模型を楽しんでいるものにとっても役に立つのではないかと思います.

それはさておき私は今回工程を考えるにあたり,レイアウトに要求される最も重要な要求事項である「列車がスムーズに走る」ことを基準に工程を分割することとしました.具体的には
工程①: 列車が全線をパンタを下げた状態で列車が支障なく運転できる
工程②: 車両がトンネル内および立体交差部をパンタを上げた状態で支障なく運転できる
工程③ :線路に近接しているストラクチャーを取り付けた状態で列車が支障なく運転できる
工程④ : 全体的なシーナリー製作を行ない,地形を完成させる.
工程⑤:ストラクチャーの配置を完了し,細部仕上げ(デウエザリング,フィギュアの設置等)に移行できる
という五つの工程です.またもう一つ,作業性の観点からこれに加えて
「台枠下側の配線作業は極力工程③までに実施する」
という条件を加えました.台枠下側で行なう作業を工程③までに行うとした理由は,工程③までであれば台枠を立てた状態で固定して台枠に取り付ける配線等の取り付け作業が容易に行えると考えたためです.台枠を立てた状態で固定するためには台枠前板をクランプして固定することになりますが,台枠上に固定した部材の重量が増加すると強度的に台枠破損による転倒のリスクが高まり,万一転倒した場合の被害も増大します.そのため台枠を立て作業するのは全体の線路敷設が終了しストラクチャーが殆んど設置されていない工程③までに行うこととしました.
上の工程分けからわかるように,工程①は図面どおりに正確に路盤を作り線路を敷設し回路図通りに配線を行うという作業ですが,工程②になると位置は限定されているとはいえトンネルというシーナリーの一部を全体のバランスを見ながら製作することが必要になります.さらに工程③では跨線橋の設置が必要となりますが,これには単なる跨線橋だけでなく跨線橋に接続する道路等,より広い地形を製作することが必要となります.もちろんこれらの位置や周囲の地形はは構想のラフスケッチの段階である程度構想し大まかな寸法は決めています.ただ実際の製作場面ではそれでイメージ通りの風景に仕上がるかどうかを現物を見ながら検討し最終的にどうするかを都度「現場で」決めていくという,事前に図面では表わせない作業を行なう必要があります.また作業性の観点から台枠を立てた状態で固定できる工程③までに台枠下部の配線作業をほとんど終わらせるためには,工程③で街路灯の設置も必要になりますので工程③になるとシーナリーや一部のストラクチャー,街路灯の製作も必要になります.この段階での街路灯の設置はその後の工程での破損のリスクを考え少し躊躇しましたが,街路灯はこの段階では立てて固定する必要はなく,地面に寝かせておけば破損のリスクは減少すること,万一破損素した場合台枠下で行う修復作業も全体を台枠が水平の状態で配線することに比較すれば不安定な姿勢の作業は大幅に減少すると考えこの段階での街路灯の設置を決断しました.このようなことを考えながらあ製作した工程表が以下の工程表になります.また街路灯等の建物外照明の設置にはそれらをどこにどのように配置するかについてもも明確にする必要がありますので工程設計の開始までに照明関係の仕様書も作成しました.この仕様書と工程表を下に添付しますのでよろしければ参考にしてください.
下の仕様書には主に使用するストラクチャーとそこに組み込む照明に関する仕様と,街路灯(照明灯)の配置とその接続先が記載してあります.ちなみにこの時点でレイアウト上に設置する街路灯(照明灯)の本数は63本となっています.

下に掲載する工程表は左に作業工程を細分化したWBS(Work Breakdown Structure)を記載しその右側にWBSの前後関係を表示しています.期限が設定されて複数の人員で行なう通常のプロジェクトではWBSごとにそれを実施するリソース(担当者)や日程が記載され,ガントチャートとなりますが,今回のレイアウト製作は一人で行なう期限のない作業ですので線のつながりは各WBSのつながり(各WBSの前後関係)のみを表しています.なお,この工程表は製作中の作業のチェックに使用することはもちろんですが,工程を考えながらこの表を作成することにより実際に行う作業の流れががよりイメージしやすくなり作業をスムーズに進めることができます.なお,下に示す工程表は工程③終了までのものです.

今回これらの内容については特に説明は行いません.次回以降この工程表に沿った形で実際の製作過程を紹介していきたいと思います.
最後に最初の動画で列車が駅下のトンネルに入った後,列車が駅に戻っていく画像を掲載して今回の記事を終わることとします.機関車は20年以上前に購入したBR103型で,音は大きいものの現在でも快調に走ります.ただ,アナログ制御ですのでDCC制御とは異なり勾配上で速度が変化します.動画でも機関車が駅を通過したあたりから列車が加速していくのがわかります(駅を出たところからこのレイアウトで最急の30‰の下り勾配となります).
今回も最後までお読みいただきありがとうございました.