模型車両の紹介:北海道のキハ82系:その1

青函連絡船が運行されていた当時、東京から北海道に向かうのには夕方に上野からはつかり(1M)に乗車し、青森から青函連絡船の夜行便に乗船するのが最も一般的なルートでした。その青函連絡船1便が函館港に着岸する際、甲板上から見えるのは函館駅に停車しているキハ82系の特急おおぞら、北斗でした。その姿を見ると遥々北海道にやってきたという実感が湧いたものです。連絡線を下船したはつかりからの乗客は青森駅にはつかりとほぼ同時刻に到着する大阪からの特急白鳥からの乗継客とともに続々と停車中の2本の特急列車に乗り込んでいきます。

今まで北海道を走る車両を各種制作してきましたが、北海道を走る車両の中ではキハ82系は外せない存在です。今回はひかり模型のバラキットを使用した北海道のキハ82系を紹介させていただきます。1990年頃の作品です。

キハ82系は私が鉄道模型を始めた1960年台にはすでにカツミ模型店より塗装済キットが発売されておりました。その後、谷川模型店からキハ81系のバラキットが発売されましたが、キハ82のバラキットは発売されませんでした。そんな中、谷川模型店のバラキットにカツミ製の前面を継ぎ足して製作することも試みましたがなかなかうまくいかず、長らく北海道の列車の中に特急列車の中に特急不在の状態が続いたのですが、ある日ひかり模型からキットが発売されるというアナウンスがあり、発売とほぼ同時に購入、組み立てたのが今回ご紹介する作品です。

キットはキハ82×2、キロ80×1、キシ80×1、キハ80×2の6両編成でセットになっていましたが、私はそれに単品のキハ80を追加し、7両編成で作成しました。またキットはキハ82の運転台後方のクーラーの形態で前期型(クーラー2個)と後期型(クーラー3個)の2種類がありましたが、私は後期型を購入しました。

車体は厚手の真鍮版が使用されたしっかりしたもので、ほぼキットの説明書通りに組み立ててありますが、各車両共屋台裾部の冷却水補給口と排気管部分に下記のような加工を加えました。
<冷却水供給口>
車体裏に厚板を貼ったのち表面から給水口部をドリルで皿もみし、その後研いだマイナスドライバ等を用いて供給口の掘り込みを仕上げてあります。蓋は塗装後にφ1.2㎜の洋白線を輪切りにしたものを貼り付けてあります。

排気管は車体端部の屋根肩部に角穴を開け、その部分に角パイプを嵌め込み周囲を縁取りした後、エコーモデルの細密パイプで排気管を表現してあります。

それでは以下、各形式を紹介させていただきます。

<キハ82>
車体は前述の排気管と冷却水供給口をつい加工した以外はほぼストレートに組んでいます。キットの先頭部は天井部(おでこ)と車体部の2体構成、ヘッドライト部分はロストワックスです。先頭車の運転台寄りのエンジンは発電用ですが、このエンジンの排気管の先端は煙突状になっており他の部分と形状が異なります。

運転台のガラス支持部はエッチングパーツが入っていましたがそのまま用いるとゴツくなるので真鍮線で表現してあります。タブレットキャッチャはロストワックス製のパーツを取り付けてあります。

貫通ドア、幌枠はエッチングパーツを貼り付ける構造になっています。幌枠は塗装後の接着です。ジャンパ栓、尾灯掛け、渡り板はエコーモデル製、特急マークはエンドウのダイキャスト製エアーホースはロスト製、その他タイフォン等のパーツはキット付属品を用いています。ライトは点灯させておりません。

妻板は配電盤の部分を表現するとともに、実物に倣いジャンパ栓を妻板をの凹部に取り付けてあります。ダンパはエコーモデルのロストワックス製パーツ、幌枠はエコーモデルのホワイトメタルパーツです。

<キロ80>
キハ82登場以降増備されたキロ80は屋上の水タンクが特徴で、キハ82の次位に水タンクがキハ82側になるように連結されています。キハ82系は引き通し線の関係上食堂車を境に各車両の向きが対象となるよう組成されています。旧型国電等では晩年改造等により偶数、奇数向き(電気側、空気側)の規定はかなり例外がありましたが、キハ82系の場合この対象性は食堂車の連結されている北海道の車両では改造等による例外はなかったのではないかと思います。

北海道のキロ80の特徴の一つは、青函連絡船と乗務員の交信用に設けられた無線アンテナです。これをエコーモデルの細密パイプと信号煙管で作成しました。青函連絡船と特急の接続時間は20分程度でした。歌の文句に「北へ帰る人の群れはみんな無で・・・」というフレーズがありますが、、連絡線から特急への乗り換えは結構慌ただしいもので、実際ゆっくりとお喋りしながら歩く余裕はありませんでした。無線では実際にどのようなことが交信されたかはわかりませんが、乗り継ぎ時間が短い中、船が着岸して乗客が実際に下船を始めた時間を船から特急の乗務員に正確に伝える必要があったのでしょうか。

2本のアンテナから出た配管は乗務員室に引き込まれています。また車端部にはラジオアンテと思われるアンテナがついています。キロ80に限らず排気扇にはダクトが追加されていますので2×2㎜の真鍮角線で作成したダクトを追加してあります。

北海道のキロ80のもう一つの特徴は乗務員室の開閉可能な窓で耐寒仕様に改造されています。真鍮版で一旦窓を塞ぎひと回り小さい窓を開けてあります。サボはキット付属のものではなくエコーモデルのパーツを使用しています。ドアのレールは銀色に塗装したメンディングテープを貼り付けました。

デッキ側妻板は実写に倣い配電盤を表現するとともにエコーモデルのロストワックス製のジャンパ栓を一段奥まった位置に取り付けました。区名表挿しはエコーモデルのエッチングパーツです。

<キハ80>
キハ80は今回3両作成しました。通常期は82系の編成はキハ82、キロ80、キシ80の順に組成され、キハ80はキシ80を挟んでキロ80とは逆向き(キシを挟んでデッキの向きが対象)となるように組成されていました。電源容量の関係と思われますが、両先頭車間の両数は先頭車を入れて7両が最大で、7両より長い編成の場合、キハ側の先頭車の先にキハ80とキハ82が連結されていました。

車体は特に北海道型を特徴付けるような装備はなく、冷却水供給口、排気管部以外はキットをそのまま組んでありますが、排気扇にはキロ80と同様、ダクトを取り付けてあります。北海道では特急型以外の気動車には北海道仕様の耐寒耐雪仕様車両が使われ、電車では本州仕様の車両は使用に堪えなかったのに対し、キハ82系の車両の車体構造には少なくとも模型のレベルでは外観上本州で使用されている車両と大きな違いはありません。気密構造の車体を持つ内燃動車であるからかもわかりませんが、保守作業では大きな苦労があったのではないでしょうか。

妻板には配電盤を設けておりますが、キハ82、キロ80のようにジャンパ栓部の掘り込みはないようなので、エコーモデルのジャンパ栓をそのまま取り付けてあります。

<キシ80>
北海道のキハ82系は末期に臨時列車運用に限定されて運用されるようになるまで食堂車が連結されていました。位置は前述のようにキロ80の隣です。私も何度か乗車したことがありますが、特に冬の期間、食堂車で狩勝峠等外の真っ白な雪景色をビールを飲みながら楽しむのは今ではできない贅沢でした。北海道の食堂車は水タンクが車体上に配置されているため電車の食堂車に比較して席数は少ないものの比較的空いており、ウエイターさんがビールを注いでくれるのは北海道ならではのサービスではなかったかと記憶しています。

食堂車は他の型式とは異なり両側面で窓配置が異なります。また物資搬入用のドアもついていますがドアはずべてプレスで表現されているのでデッキがない分組み立ては簡単です。調理室側の窓サッシは付属のエッチングパーツを塗装後に貼り付けてあります。

車体の各部にある通風口はキットの洋白エッチングパーツを貼り付けてあります。車端部には水タンクへの吸水口と思われるハッチがありますのでそれを表現するために洋白の薄板を貼り付けてあります。

屋上の機器配置は他の車両とは大きく異なります。調理室車体側には水タンクがある為か、調理室側の排気管は車端部ではなく、中央よりにあります。

レンジの排気部には排気温度測定用と思われる配管があります。

また車端部にはラジオアンテナがついています。キット付属のパーツを取り付け、真鍮線による配管を設けました。

妻板部斜体には両側にジャンパ栓受けを取り付けました。また貫通扉の点検口として板を貼りましたが、これは実物は車体と面一になっています。また裾部には梯子が設置されているようですので市販のプレスパーツを利用して取り付けてあります。

以上がこの作品の車体部の概要です。ひかり模型のこのキットは車体の非常口等のプレス表現が実物に比較してやや目立ちにくいという感はありますが、全体的にはキハ82系の印象をよく捉えており、ある程度満足のいく作品に仕上げることができました。次回その2では下回りと細部の仕上げについて説明させていただきます。