レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(12) -アクセサリの製作(1:構想のプロセス)-

前回までにレイアウト製作においてシーナリーとストラクチャーと呼ばれている部分の紹介を終わりましたので今回から一般的にアクセサリと呼ばれるより細かい部位についての製作過程の説明を行いたいと思います. その初回としてまずは製作に当たっての構想設計((製作するアクセサリを決定するまでのプロセス)について私が行った手順を少し詳しく説明してみたいと思います.

⚫︎アクセサリの定義
過去の雑誌のレイアウトの製作記事ではレイアウトの製作過程は大きくシーナリーの製作とストラクチャーの製作に分類されています. そしてその後には所謂車両のディテーリングに相当する細かい部分を製作する作業があります. その呼び方は記事によっていろいろあるようですが1970年代にTMS誌に発表されている記事ではTMSのスタッフの方が執筆している記事を含めて”アクセサリの製作”と記載されている例が多いようです。
 この”アクセサリ”という意味を辞書で調べてみると辞書には語釈として 「①服装を引き立たせるための装身具②機械類の付属品・周辺機器 」と記されています。私の解釈ではレイアウト用語の”アクセサリ”はこの語釈のどちらかというものではなく両方の意味であると考えます。そして①と②の大きな差は①は後から付け足すもので極端にいえばあってもなくても良いもの(英英辞典でははっきりそう記載しているものもあるようです), ②は機械(システム)の設計段階で機械やシステムの設計者がそのシステムで要求されている機能を満足するため, あるいはより向上させるために用意する(中には法規上必須のものや現場で判断して設置要否を判断しているものもある)ものではないかという気がします. このように考えるとレイアウトの細部仕上げを”アクセサリの製作”と表現することは”言い得て妙”であると思う反面, 実際のレイアウト製作では実感的な情景を製作するためには写真等で見た風景をただ漫然とそのまま作るのではなく, 上記の語釈①と②を意識して, 製作するものが以下に記すどのカテゴリに属するかを意識して製作するアイテムと配置する場所をよく考えて製作を進めていくことが必要であると感じます. またこのためにはある程度の鉄道に関する法規や規定は勿論, 地域的な特性についても知っておく必要があると思います.
1. 安全性等の観点から規則等で要求されているアクセサリ(様式の選択も含む)(①)
2. 鉄道施設しての機能を満たすために必要なアクセサリ(①)
3. 機関区という機能を満たすために必要なアクセサリ(①)
4, 機関区内で職員が日々業務を行なっていることを感じさせるアクセサリ(②)

⚫︎ 製作したアクセサリ
我々(私?)がこのような ”アクセサリ” を製作しようとした場合は参考資料として自身が撮影した写真や雑誌等に掲載されている資料を用意し, そこに過去の自分の体験や記憶を加えて何を製作するかを決めていくことが多いと思います. 私は実感的な情景を製作する場合にこの決定の際に大切なことは, それらの資料や自身の記憶をそのまま再現しようとするのではなく製作するアイテムは全体的なバランスを考えながら決定していくことではないかと考えます. 特に自分が実施に見た情景や体験はとうしてもそのままレイアウトで再現したくなります. しかしこの再現にこだわりすぎると局所的には満足なものができても全体を見渡すとそれが返って実感を損ねるということにも留意しておく必要があります. 以前製作した外国型のレイアウトではこの過去の自分の体験や記憶が全くなかったのである意味淡々と製作を進められたのですが, 今回のように自分がかつて親しんだ情景を再現する日本型レイアウトでは自分の体験にこだわりすぎないことを意識しながら進める必要があると感じました. 特に今回のレイアウトセクションのような全体を一度に見渡せる(鑑賞者が場所を移動しなくてもある程度レイアウトの細かいところまで観察できる)レイアウトセクションは鑑賞者の移動により映画のカット割のような効果が期待できませんので特に注意が必要です. そこで今回試行してみた方法は実物写真をそのまま参考にしてストラクチャーを配置したレイアウト上に配置するアクセサリを決定するのではなく, まずストラクチャーを配置したアクセサリのないレイアウトの写真を撮影し, その写真と実物資料を見ながらその写真にどのようなアクセサリを加えれば良いかを検討し製作するアクセサリをリスト化する方法です. 実物写真から製作するアクセサリを決めていく場合, そのアクセサリの背景に写っている情景や建物は当然レイアウトのものとは異なります. このため参考写真のアクセサリにのみ注目して製作するアイテムを決めてしまうとアクセサリの背景となる建物や情景が参考写真と異なるため実際にアクセサリを配置した時に違和感を感ずる場合があります. これに対し撮影したレイアウトの情景や建物の画像を見ながら製作するアクセサリを決定する方法ではレイアウト上の建物や風景を基準に検討しますので実物の資料からより的確に製作するアクセサリの種類や個数を決定することができます. この際留意することは写真をいろいろな角度から, またいろいろな範囲を撮影してそれらを見ながら検討することで, あまり狭い範囲で検討するとその部分だけは実感的でも全体的に見ると不自然であったり散漫な印象になる恐れがあります. もちろん車両工作より修正が容易ですので事前に完璧に決めることはないのですが, 実物写真の情景をレイアウトで再現させる場合,このようなプロセスを導入することにより無益な「こだわり」が排除できるとともにに, もし一部に不満な点があっても最初にそのアイテムをそこに配置しようと考えた理由を振り返ることができ修正作業が容易になります. さらに製作するアクセサリをリスト化するということは製作の効率化にもつながると思います.

アクセサリを配置する前の乗務員詰所付近の写真. アクセサリの配置を検討する際に使用したもの.
アクセサリー配置後の乗務員詰所付近
アクセサリを配置する前の給砂塔付近の写真. アクセサリの配置を検討する際に使用したもの.
アクセサリー配置後の給炭台付近

上記の観点で今回製作したアクセサリを一覧表にすると以下になります.

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鉄道趣味を50年続けて思うこと(5) ~Prototype Modeling~

昔から夏は鉄道模型シーズンではないと言われています.確かにエアコンが普及していない時代には暑い夏(と言っても昔は今ほど暑くありませんでしたが)に集中力が必要な細かい工作はあまりやる気になりませんし, 汗をかきながら動いている車両をじっくり眺める気にもなりませんでした.ただ現在の私は仕事をリタイアし, 会社の夏休みに合わせて混雑している場所に出かける必要もなければ子供をどこか旅行に連れて行く必要もありません. 家にはエアコンもあり, 昼間は暑すぎるためどこへも出かける気にならず涼しい家にいる時間が比較的多くなっています. それにもかかわらず模型を製作する気にならないのは単なる昔からの習慣でしょうか?

ということで模型の製作は一時休業で, 涼しい部屋の中で読書などをして過ごしています.
読書は以前読んだ小説を改めて読んだりしていたのですが, 最初に日常読んでいる鉄道模型関係の雑誌に興味深い記事がありましたので紹介してみたいと思います. 


ModelRailroader誌の9月号には米国カリフォルニア州にあるTehachapi Loopを再現したレイアウトが紹介されていました. このレイアウトは72x128feet(22×38.5m)のスペースに設置された複層式のレイアウトで,線路の総延長は1800feet(548m)に及びます, この長さは実物に換算すると実に47kmになり, このレイアウトを列車が走破するのには約1時間かかるそうです. 日本でループ線のある上越線清水峠の水上・越後湯沢間は約35kmで所要時間は約40分ですので, 清水峠をそのまま1/80に縮小したレイアウトを製作しようとするとこのレイアウトにほぼ匹敵するイメージになるのではないかと思います. このレイアウトは個人所有ではなく博物館に設置されたレイアウトで, 現在の姿になるまでには長い期間がかかったようですが現在は製作に携わった地元の鉄道模型クラブが運行しいます. 線路長が実物を縮小した長さであるため運転は過去に実在したダイヤで実時間による運転が行われているようです. 欧米では保存鉄道を愛好家が運転している例はメディア等でも数多く紹介されていますが, これはその鉄道模型版といったところでしょうか. 現在レイアウトはDCC化されているようですが運転には最大35名以上の人員が必要であるということで, 展示施設内のレイアウトですから好きな時に運転というわけにもいかないと思われますのでクラブは運営面でもきちんとしたマネジメントが必要になると思いますし, メンバーがこのような運転を整然と行なっていることもある意味すごいことであると感じます.
一方別の記事では実物の写真をベースとして製作したペンシルバニア州Port Royalの駅とその隣にかかる橋の写真から製作したレイアウト(ジオラマ?)が紹介されていました. この記事にはProototype Photoをベースとしたモデルがあったらその写真を実物の写真とともに投稿してほしいという編集部のコメントもついています.最近日本の鉄道模型雑誌では実物をの一部をそのまま縮小したようなレイアウト(ジオラマ)の記事が多数発表されていますが, 前者のTehachapi Loopを再現したレイアウトは別として, ある程度大きなスペースがあっても実物をそのままスケールダウンした風景をレイアウトに組み入れて運転を楽しむのは結構難しいと思われ, 列車を運転することが主流の米国では日本のように実物を縮小して再現したレイアウトセクションの製作はあまり行われていないと思っていましたので, 最初にこの記事と編集部のコメントを読んだ時は少し意外な感じがしました.
一方, 同誌の10月号には米国鉄道模型界の重鎮の一人, Tony Koester氏のコラム記事 ”Train of the thought” にPrototype Modelingについての記事が掲載されていました. この記事では実際の情景をレイアウトの中にどのように取り入れるべきかということが実例を交えて述べられおり, その内容は
・ プロトタイプ モデリングの目的は, 特定の場所の特定の時間における外観と雰囲気を再現することである
・プロトタイプ モデリングによるレイアウト製作においては上記のような場所を複数組み合わせて全体を一つの鉄道にまとめていくことが必要である.
・プロトタイプモデリングはその場所や線路配置をそのままスケールダウンする必要はないが, Prototypeの何を表現するかをよく考えること. その際にある程度の妥協は必要ではあるが, 再現したいシーンの本質を捉えて安易な妥協はせず, 鑑賞者ににもその場所や時代を感じてもらうことが必要である.
といったような内容でした.そして実際に同じ場所を複数のモデラーがどのように実物の情景をアレンジしてレイアウト上に再現したかが解説されていました.

上に記載したModelRailroader誌の記事

私がこの記事を読んで感じたのはここでTony Koester氏が述べていることは,以前このブログでもよく話題にした故・中尾豊氏の ”鉄道模型の造形的考察の一断面” のレイアウト版ではないかということです. 中尾氏の論じている対象は車両を模型化する際に車両が「実感的」であるための視点であり対象はレイアウトではありませんが, スペースの限られたレイアウトに実物の風景を再現しで実感を得るためにはこの記事とは別のアプローチが必要で, それが上記の記事の言葉に要約されているように感じました. この記事を読んで改めて9月号のPort Royalの駅の記事を見ると編集部のコメントは決して実物写真をそのまま再現したレイアウトの写真を募集しているのではなく, この記事のような形で製作したレイアウトとそのベースとなった写真を求めているのではないと気がづきました. 

車両はその実感を求めるためにその一部をデフォルメする事はあっても, 通常一部分のみスケールを大きく崩すということは行いません. しかしレイアウトの場合にはスペースのみならずカーブ半径ひとつとってもスケール通りに製作できないという根本的な矛盾を抱えており, これは上記のTehachapi Loopを再現したレイアウトでも同じです. そのため実物の風景を「実感的に」再現する場合には実物を構成している要素を分解して再構築するという 車両の模型化とは異なる結構創造的な作業が必要になります. そして私はそこがレイアウト製作の醍醐味であるという気もします. もちろん私は実物の風景をそのまま再現したレイアウト(ジオラマ)を製作する楽しさを否定するものではありませんが, 運転という観点では何かと制約が大きいように感じます. ジオラマの前後にエンドレスの線路をつなげて車両を周回させるだけでは運転は単調になりますし, 駅や機関区のセクションを実物通りの線路配置で製作しても駅に発着する列車や機関区に入出区したり機関区内を転線する機関車の運転操作は結構煩雑な作業になり動いている列車を鑑賞する余裕はありません. そのようなレイアウトセクションで列車が発着する風景をゆっくり鑑賞しようとするとDCCによる自動運転が必要になりますが, 自動運転である程度以上規模の大きな駅や機関区に出入りする複数の列車(機関車)を運転しようとすると, 列車(機関車)交換のためには結構大掛かりなStaging Yardをレイアウトに接続する必要があり, プログラミングも非常に複雑になると思われます. このように実物の一部をそのまま再現したレイアウト上で車両の動きをじっくり鑑賞しようとするとするとなるとそこには運転操作という面で色々な課題があると感じます.

ドイツの駅舎の写真からInspireされて製作したDCC(Märklin digital)による自動運転を導入したレイアウト”終着駅Großfurra”

最後に鉄道関係以外で読んだの本の話にも触れたいと思います. 今回は音楽と同様過去に読んだ小説を読み直してみました. 夏目漱石や川端康成の小説は20−30代の頃よく読んでいましたが, この年になって読み返すとその後人生経験を積んだせいか, また違った気づきがあり面白く読むことができました. また今回宮沢賢治の童話やサン=テグジュベリの ”星の王子様” も読んでみたのですがこのような童話でも昔読んだ時とはまた違った感覚を味わうことができました. 宮沢賢治の童話は銀河鉄道の夜や注文の多い料理店等が有名ですが, それ以外にも数多くの童話があり中にはこの年になって一読しても正直何を言いたいのかよくわからないものもありました. ただ氏の童話では童話の幻想的な世界と現実の世界を結びつけるものとして鉄道の音や光が効果的に使われているような気がします. また作品の中には ”シグナルとシグナレス” のように実際の鉄道から着想した作品もあります. 氏の経歴を見るとどちらかというと理系寄りの方のようですので鉄道には車両以外のシステムも含めて結構関心があったのかもしれず, そこからの着想がいろいろあったのかもわかりません. そしてもしかしてこれらの童話をじっくり読み込むと宮沢賢治の童話の世界をモチーフとしたレイアウトも製作できるのではないかとも感じました. また, このブログでは私が製作した北海道で活躍した車両や北海道をイメージした機関区を紹介していますが, 例えば北海道の出身である三浦綾子氏の小説「天北原野」は鉄道は出てこないものの当時の北海道の自然の厳しさとそこで暮らす人々の営みが描かれていますし, 「塩狩峠」は実際にあった鉄道事故をモチーフとした小説です. 北海道を訪れて初めて宗谷本線や天北線に乗った際には外の景色を見ていると思わずこれらの小説を思い出しました. 北海道をテーマとした車両やレイアウトを製作した際には実物の鉄道の資料を集めるだけではなくこのような小説を読むことは北海道の自然の風景や鉄道のイメージと共にそこで生活している人々を想像することにも繋がり, それがレイアウトのイメージを構築する時に何らかの影響を与えるような気もします.

海道の機関区をイメージして製作中のレイアウトセクション

以上、取り止めのないことを書いてしまいましたが最後までお読みいただきありがとうございました. やっと涼しくなってましたのでそろそろまた模型の製作を再開したいと思います。

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(11) -機関区の建物(事務所・詰所等)-

今まで3回にわたって機関区にあるストラクチャーを紹介してきましたが、それらは全て蒸機機関車や気動車を動かすやめに水や燃料を補給するという機関区でいわば動力車とのインターフェースとなるストラクチャー(建物)でした。今回からはそれ以外の機関区にある事務所等のストラクチャー(建物)を紹介したいと思います。

建物を配置して細部仕上途中のレイアウト.

機関区にある建造物の実例を交えた解説は1980年代に機芸出版社から発行された”シーナリーガイド”や”シーナリー・ストラクチャーガイド”に詳しく解説されています。そこには各地の機関区の実例が多数紹介されていますが、それらの記事の中から機関区にある建物を列挙すると概ね以下のとおりです。
機関区事務所
乗務員詰所
線路班詰所
風呂場
外勤事務所
用品事務室
燃料係室
油庫
用品倉庫
蒸気機関車が活躍していた時代、これらの建物は大体が平屋建てで、線路の周囲に並んでいることが一般的でした。国鉄の機関区に小さな建物が多数あるのは一説によると縦割り組織であった国鉄がその組織ごとに建物を建設したからであると言われています。真偽のほどはわかりませんがそのような観点で建物の種類(名称)を見ると確かにそのような気もします。これらの建物は無煙化後も1980年ごろまでは各地で見ることができましたが、中には窓がアルミサッシ化されたり、屋根が葺き替えられている建物もありました。

奥羽本線赤湯駅の構内風景
山形駅に隣接する奥羽本線山形客貨車区の建物. 屋根はスレート葺きに改修されているようです。

それでは以下、建物の構想から完成までのプロセスを紹介させていただきます。
まず最初にどのような建物を製作するかを決定します。製作にあたり参考とした上記の”シーナリー・ガイド”には機関区と機関支区と駐泊所の差は敷地にある建物の数の差でわかるというような記載がありますが、これは感覚的には”言い得て妙”ではないかと感じます。この言葉に従えば機関区と称するためにはある程度以上の数の建物が必要ということになりますがレイアウトは当然?実際のスペースよりはかなり小さいため建物に数には限界があります。またあまり建物の数を増やすと狭苦しい印象となり、北海道の機関区の印象を損ねる気がします。そこでまずは製作する建物を仮決めし、モックアップ等で検討しながら実際に製作する建物を決めていくこととしました。その際最初に選択した建物は
機関区事務所
乗務員詰所
線路班詰所
風呂場
用品倉庫
です。まずは写真等の資料や過去の記憶を頼りにこれらの建物の方眼紙に建物の外観のラフスケッチを描きます。下の写真はこの時位製作した線路班詰所と用品倉庫のラフスケッチです。

最初に作成した建物のラフスケッチです. 最終的に製作した形状とは異なるところがあります.

これらの建物は実際にラフスケッチを描いてみるとは細かい差異はあれ全て木造下見板張りのトタン葺きで皆同じような外観になってしまいます。したがってこれらの建物を限られたスペースに並べると印象が少し単調になってしまうのではないかという気がしました。そこで変化をつけるため乗務員詰所と風呂場は間にトイレを挟んで建物を一体化してみることとしました。このような実例があるかどうかはわかりませんが、寒冷地で積雪の多い地域の機関区ではこのような構造もアリではないかと考えた次第です。この辺り、模型の世界では合理性がありそれらしければ(理由を説明できれば)あまり実物通りの形態にとらわれる必要はないのではと思っています。また上記書籍の解説によれば、北海道の建物では入り口に破風がある建物が多いとあり、実際の建物を見ても確かにそのような印象がありましたので原則入り口には破風を設けてあります。

乗務員詰所とトイレと風呂場を一体化した建物のラフスケッチです. こちらも入り口の位置等, 製作し建物とは異なる部分があります.

建物のアウトラインが決定したらケント紙でモックアップを作成し実際にレイアウト上に並べてイメージを確認します。

ケント紙で製作した建物のモックアップで建物の位置を検討しているところです.

建物はレイアウトを置いた時の壁側に並べ、手前側は機関区事務所のみとして車両を鑑賞する際の視線の邪魔にならないように配慮しました。なお、実際にモックアップで検討してみると乗務員詰所と線路班詰所の間のスペースが広すぎるように感じましたので、その空いたスペースに油庫を追加しました。決定した建物の配置を下図に示します。

今回配置を決定した建物を水色で示します. ()で示したのは紹介済みの建物です.

建物の大きさと配置が決まったら図面を作成しますが、今回は少し手抜きをして全ての建物の図面は作成していません。一般的に日本家屋は基本寸法が決まっており、窓や扉の大きさも建物による差はありません。そこでまず機芸出版社発行の”レイアウト・テクニック”に掲載されている各種記事を参考にして機関区事務所のみ”真面目に”図面を作成し、その図面で扉や窓の基本寸法、窓枠に使用する檜角材等の寸法を決めることにより、その他の建物の図面御作成は省略しました。基本寸法を決めたのは窓枠に使用する材料、建物への入口とその入口に接する半間の窓、建物の門部で接する窓部の構造、窓が連続する部分の構造等です。

細部の寸法を検討するために作成した機関区事務所の図面です. 既成の檜角材の寸法を考慮しながら細部の寸法を決めました(鉛筆で書いた部分です).

⚫︎建物の外観
設計が終わったら製作に入りますが、製作手順は今まで紹介してきた建物とほぼ同一ですので今回は完成した建物を写真で紹介させていただきます。
まずは上の図面に基づき製作した機関区事務所で、この機関区の中では一番大きな建物です。L字形状として一端に張出部(トイレを想定)を設けました。壁面はSTウッドを使用した下見板貼りで窓枠と扉は自作品です。トイレには昔よく見かけた風で回転する排気煙突を取り付けようと考えていましたが、構造が複雑で製作方法を思案中です。屋根の台形煙突はエコーモデル製のパーツを使用しました。

機関区事務所の窓枠の色は茶色にしました. 手前側の屋根の煙突はエコーモデルのパーツ(#254:台型煙突)です.

モックアップによる検討で追加した油庫はコンクリート製の建物としました。屋根はプラ製の波板(Kibri製#34143:Corrugated Metal)を使用しています。

油庫は給油小屋ど同様Drawing Inkでウエザリングしてあります。また給油小屋同様各種表示を貼り付けました.
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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(10) -ストラクチャーの製作(3) : -給炭台とディーゼル燃料給油設備-

給砂塔と砂焼き小屋に続いて今回は機関区にある燃料の補給設備として給炭台とディーゼル燃料の補給設備を紹介させていただきます。まずは完成後レイアウトに設置した状態の写真をお目にかけたいと思います。

完成してレイアウト上に置いた石炭台と石炭置場
レイアウト上の燃料補給設備

蒸気機関車の石炭消費量には諸説ありますが、石炭は一回の補給で250km 程度(石炭を10t積載し、1kmあたり40kgの石炭を消費した場合)、水は1回の補給で100km程度走行可能だったようですが、蒸気機関車の石炭水の消費量は形式はもちろん、線区の線形、列車重量、機関士の技量によって大きく異なり、公式な数値はないようです。それでも上記の条件では時速60km/hで走る(力行する)機関車は1kmを1分で走りますので1分で40kgの石炭を投炭する必要があり、機関助士はかなりの重労働であったことが伺えます。一方、水の消費量は石炭より多く、当時給水設備は大きな駅には設けられており無煙化後もその痕跡を見ることができました。水よりも補給の頻度が少ない石炭補給設備は駅に設けられることははありませんが、機関区や機関支区では必ず設けられている重要な設備です。この設備にはテンダーに直接重力で石炭を落下させる石炭ホッパーから手(スコップ)で石炭をテンダーに投げ入れる給炭台まで色々な規模の設備がありますが、スペース等の関係から今回はその中でも小規模な給炭台を設置することとしました。一方、気動車のディーゼル燃料給油設備は普通列車の一部(貨物列車を除くすべて)が気動車に置き換えられた線区に見られる設備ですが、設置されていてもあまり目立つ設備ではありません。今回はレイアウトにアクセントをつけるため、機関区で気動車の整備も行うという想定で設けましたが、機関区の設備としてはあまり一般的な設備ではないと思われます。
まず最初に紹介させていただくのはは石炭台です。給炭台の形態は土台と石炭積載台の部分がコンクリート、煉瓦や木組を用いたものがあり、台の上部は上屋付き、上屋無しのタイプがあります。そのような形態の中から今回は北海道の積雪地という想定で、土台と石炭積載台は木材、上部は木組みの上屋付きで屋根はトタン葺きとしました。構想の検討の際にも記載しましたがD51のテンダーは石炭を10t積載可能なようですので、D51クラスの大型機が出入りする機関区の設備としてはこの給炭台はあまりにも小規模ですが、スペース等の関係上この矛盾には目を瞑りました。余談ですが、一般のオフィスでは働く人数に応じてトイレの便器等の数が労働安全衛生法で規定されています。それと同様、このような機関区の燃料補給設備でも設備の規模についてはある程度出入りする機関車の種類や運用(数)に応じた補給間隔を考慮して方式や数が決められていたのではないかと思われます。一方、模型の世界では大型蒸機が活躍した本線沿いの機関区を再現する際はスペースの関係上どうしてもどこかで設備の規模には折り合いをつける必要があります。機関支区、あるいは駐泊所をプロトタイプとすると給砂塔を設けることはできません。この辺り、結果はどうあれ単に実物の機関区を縮小するのではなく、使用できるスペースに応じていかにそれらしい雰囲気が出るように設備の規模と配置を検討するという過程に機関区を模型化する際の検討の面白さがあるような気がします。

完成してレイアウトに設置した給炭台です.

給炭台の製作にあたり、まず最初に行なったことは構想に基づく図面の作成です。今回制作した給炭台のような木製の骨組みが露出している建造物は、角材を切断する際その長さを正確に割り出すため、原寸大の正確な図面を作成する必要があります。前述のように今回製作した給炭台は台座、石炭の積載台及び上屋の柱は木製で、屋根はトタン張りとしましたので、部品はほとんどを檜角材から作成します。太さは給炭台の上屋は主に2×2㎜の檜角材、台枠部は2×2㎜、3×3㎜の檜角材と2×1㎜の檜角材、床面は2×1㎜の檜角材、石炭搬入部の斜面は2×1㎜と2×2㎜の檜角材を使用しています。

製作にあたって作成した原寸大の図面です.

図面で形状が決まったら図面に従って角材を切断し、木工用ボンドで組み立ていきます。角材を45度の切断する際の治具は機関庫を製作する時に紹介したものと同構造の治具を使用して切断しました。台座の底面の縦梁とその縦梁が乗る脚は3×3㎜の檜角棒で斜めの補強ざい柱は2×2㎜、脚部の十字形の補強はは2×1㎜の檜角棒で製作しました。

脚部は補強部材を除いて3×3㎜の檜角棒を使用しました.

石炭の積載台は2×1㎜の檜角棒を使用しました。上屋の骨組みは2×2㎜の檜角棒を図面に合わせて切断し、組立てました。また、照明として12Vの米粒球を中央部に取り付けました。

上屋の骨組みは主に2×2㎜の檜角棒を使用しています. 電球とコードはテグスにより柱に固定しています.

石炭を搬入する斜面の部分は2×1㎜の檜角棒を使用して製作しました。配線は台座の脚に沿わせて地表のレベルまで導いています。

脚部、石炭積載台、上屋、石炭搬入用の斜面を組み立てたところです. この後屋根の製作に入ります.

屋根はトタン張りとしました。まずはラベル紙とケント紙を貼り重ね、鉄筆で縦方向に筋をつけたのち帯状に切断し、イラストボードで製作したベース部に貼り付けました。

ベースに帯板を取り付けたところ. この後頂部の稜線に山折にしたケント紙を接着して完成です.

次に石炭台の囲いと地上の石炭置き場を製作します。これらの囲いは2×1㎜の角棒で製作しますが、2×1㎜の角棒をそのまま使用してしまうと接合面の精度が良いため貼り合わせた角材の隙間が埋まってしまい、古びた感じが出ませんのでこの部分は1×5㎜の角棒を2ミリ幅に切断し、機械加工した素材の切断面同士の接着を避けることで板の隙間の空いた感じを表現しました。その手順は下の写真のとおりです。

まず0.5×6㎜の檜角材を3分割します.
切断した板の両側の機械加工された面同士が対向しないように再度接着して完成です.

完成した部材は所定長さに切断し縦桟を接着後組み立てます。塗装はタミヤのラッカー系の塗料を使用しています。その後ケント紙で製作したベースを取り付け、黒色に塗装後その上に石炭を散布します。石炭はIMON製の石炭を使用し木工用ボンドで固着しました。石炭は最初下の写真のように最初にケント紙の上に固着して、その後給炭台の所定位置に接着し、さらに給炭台との境界部(ケント紙の断面の近傍)に石炭を散布して固着し、ケント紙の断面を隠してあります。なお、地表の石炭置き場の石炭もこの方法で固着しています。

これで給炭台の完成です。完成後、石炭置き場とともにレイアウト上に固定しました。

給炭台の次はディーゼル燃料補給設備の紹介です。ディーゼル燃料補給設備は大きな気動車区では下の写真のように整備線に等間隔で設けられた複数の給油設備を見ることができますが、今回製作するような小規模な給油設備の製作法は雑誌等で紹介された例は記憶になく、自身でも実際の設備を意識して見たり写真を撮影した記憶はなかったため、プロトタイプについては当初は全く当てがありませんでした。

名古屋第一機関区の燃料給油設備. 編成全体に一度に給油できるよう, 給油設備が等間隔に並んでいます.

ただ、機芸出版社から発行されているシーナリー・ストラクチャーガイド、シーナリー・ガイドには小規模な給油設備の写真が数枚掲載されています。その中で、私は国鉄真岡機関支区の旧型のガソリン計量器が露出しているタイプの設備を参考にして製作することとしました。補給小屋は比較的新しく、可燃物を扱うため建物は木造ではありませんので今回製作した給油小屋もそのようにしてあります。また可燃性の液体を扱う設備のため消防法の要求事項に適合する必要があります。貯蔵タンクは地上にも置くことはできるようで、実際にはそのような例もあるようですが、地上に設置する場合は周囲に確保しなくてはならないスペース等が要求されているようですので、タンクはそのような要求のない地下に存在しているという想定にしてあります。

製作した給油設備の全景です.

まずは建物を製作しますが、建物はプロトタイプの形状を大きくアレンジして小型化していますので、製作開始にあたり、イメージ図を作成した後、まずは薄手のケント紙でモックアップを作り、形状を検討しました。

レイアウト上でモックアップにより建物の大きさ等の検討を行いました.

形状が決定したら建物の製作を開始しますが、建物自体は今まで紹介してきた建物の下見板や窓枠を接着する前のものと同一ですので今回は省略し、今回は計量器とその周辺のディテールのついて紹介します。計量器の外観は昔ガソリンスタンドにあったものと同じようですので、本体はケント紙で製作し、レトロ感を出すため溶きパテを塗装後周囲にRをつけました。メーターは手書きした目盛板を縮小コピーして製作しました。上のコの字の部材は本体と目盛板の間に挟むスペーサーです。この後計量器本体の窓部に透明プラ板を接着して組み立ます。なお、計量器の本体下部には表面実装型のLEDを取り付けて計器版を照明可能としてあります。

計量器のパーツと目盛版の原稿です. パーツは原稿を25%に縮小しています.
装後ウエザリングを施し, アクセサリー類を取り付けた完成した補給設備です. 計量器内部のは照明を組み込みました.

建物の基本部分の完成後、細部の仕上げ(アクセサリーの追加)、ウエザリングと表示の取り付けを行いました。この給油小屋は資料の写真を見ると建物の下部にかなり汚れがあります。この汚れは煤とは異なるかなり強固な油汚れという感じです。この汚れは塗装で表現するのが適切ですが、この建物はエナメル系の塗料で塗装しましたので同種の塗料を使用すると失敗した際収拾がつかなくなる恐れがあります、そこでこの汚れの表現には製図用インクを使用してみました。アメリカののModel Railroader誌の建物の製作記事を読んでいるとよく”ウエザリングに”Indian inkを使用した”という記載があります。この”Indian Ink”は墨汁とも訳されますが、海外のIndian inkは独自の成分による顔料に固着材を加えたインクで耐水性、耐光性の優れてたインクのようです。そこで今回、この油汚れの表現には手元にあったロットリングインクを使用して行なってみることとしました。このインクにもDrawing inkという表記がありますが、成分はメーカーによって異なるようです。

ウエザリングに使用した製図用インクです.

このインクを綿棒につけて建物と計量器の裾の部分に摺り込んだ写真が以下に示す写真です。初めての割には大きな破綻なく仕上がりました。インクはエナメル系の塗料上でははじかれたような状態となり、そこから乾いた綿棒で刷り込むと上記の写真のような状態になります。ただ、一度付着したインクを除去するのは難しく、塗膜を侵すことはないものの、失敗すると修復は結構難しい(再塗装が必要)のではないかと思います。インクの右側にあるのはクリーニング液と称する製品ですが、これは製図ペンのクリーニングに使用されるものであり、多少インクを剥離する効果はあるものの塗料の溶剤のようにすぐにインクを溶かすものではありません。

計量器周りのアクセサリと表示です.

ウエザリングが終了したら各種の表示と設備を取り付けます。給油用のホースはAWG#32のリード戦で作成し、Humbrol#32(Dark Gray Matt)で塗装して作成し、プラ製の角棒と真鍮線で製作したホース支持部材に取り付けました。先端には給油用のノズルとしてPriserの消防士のフィギュアに付属していたプラ製のパーツを取り付けてあります。消火器はエコーモデル製のロストワックス製のパーツを塗装して取り付けました。
表示についても日本ではこの種の設備には消防法によるいろいろな要求があるようです。これらの表示はその表示方法も規定されていますので、WEB上には利用できそうな画像が多数あります。蒸気機関車が活躍していた時代の法令の要求事項はよくわからないのですが、今回は記憶を頼りにその画像の中からそれらしいものを選択して作成しました。手順はWEB上の画像をスクリーンコピーし、その画像を切り取って所定のサイズとしてPDF化してプリントアウトするという方法で製作しました。プリントアウトはコンビニのネットプリントで行っています。このような細かい表示は家庭用のインクジェットプリンタでは解像度に限界があり、画質的に満足なものは得られません。それに対し、比較してコストはかかりますが、レーザー方式のプリンタではかなり小さい表示でもなんとか使用に耐えられるそれらしいものを作成することができます。なお、注意喚起のためのゼブラマークは、下の写真に示すように表計算ソフトで黒と黄色の縞模様をプリントし、それを角度をつけて切断することにより作成しています。貼り付けの際にはプリントアウトした紙の表面には透明度の高いテープを貼り付けて表面を保護しています。

レーザープリンターで出力した表示類です

表示類を貼り付けて完成した給油小屋です。塗装は本体がタミヤのダークシーグレー(XF54)、屋根はHumbrolの#32(Dark Gray Matt)を使用しました。

完成した給油小屋です. 計量器以外, 特徴のない建物ですが表示類をつけることにより給油小屋らしくなりました.
レイアウト上に設置(仮置き)した給油小屋の夜景です.

最後までお読みいただきありがとうございました。次回は機関区のその他の建物を紹介したいと思います。

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(9) -ストラクチャーの製作(2) : 給砂塔と砂焼き小屋 –

給水タンクに続き紹介するのは給砂塔と砂焼き(砂煎り)小屋です。今まで紹介してきたストラクチャー(建物)は基本的に木造建築であり、製作法はペーパー製の車両にも通ずるものがありしたが、給砂塔は塔の部分が鉄骨製でありプラ素材を使用した工作となりますので今までの素材に紙と木を使用した工作とは少し異なった工作になります。以前の記事にも記載したのですが、この給砂塔という設備はこのレイアウトを製作しようと思い立つまでその存在を殆んど意識していませんでした。今回改めてその理由を考えると、思い当たることがありました。かつて60年代から70年代のTMS誌にはレイアウト製作のための参考資料として駅や機関区の設備の実例を写真とともに紹介した記事が多数掲載されておりました。その記事は80年代に”シーナリー・ストラクチャーガイド”等の名称でTMS誌の別冊として出版されており、当時私も熱心に読んでいたのですが、今読み返してみると私が読んでいたそれらの別冊(シーナリィガイド/シーナリィ・ストラクチャーガイド1/レイアウトテクニック)の中に給砂塔の解説記事が掲載されておりません。どうもそれが給砂塔を注目していなかった理由のような気がします。レイアウトの一角に作る機関区ではスペースが限られますので、そのような機関区ではこの給砂設備は省略されることが多かったのかもわかりません。

完成した給砂塔と砂焼き小屋

それはさておき、まずプロトタイプの選定を行いますが、どうも蒸気機関車の活躍末期の給砂塔は標準化されていたようで、両側の線路に給砂するために砂を貯蔵するタンクを櫓の両側に2基備えたタイプと片側に1基備えたタイプの差はあれど、それらの外観は写真で見る限り全国の機関区でほぼ同一のようです。一方、砂焼き(煎り)小屋は各種のタイプがあるようです。最初に給砂塔を製作しますが、図面は入手できなかったため、写真を参考にして数種類のイメージ図を作成しました。実際に製作した形状は右側の図に近い形状です。

給砂塔のイメージ図です. 図では櫓の根本部はストレート形状となっています.

まず給砂タンクを載せる櫓を製作します。櫓の主柱材と水平材はEvergreen社製の1.5㎜アングル材、斜材は同じくEvergreen社製の幅0.75㎜、厚さ0.38㎜の帯板を使用しました。塔は下側が広がった形状になっていますが、この広がりは水平材の長さを変えることにより主柱材を湾曲させています。湾曲量はわずかですので湾曲による主柱材のねじれは認められません。なお、下の写真のように水平材の端部は主柱材に合わせて加工してあります。接着にはGSIクレオス社製のプラモデル用接着剤Mr. CEMENT Sを使用しました。余談?ですがこの接着剤に限らず鉄道模型の製作に使用する接着剤、溶剤、塗料等の中には危険な化学物質を含む可能性のある製品があるような気がします。危険。有害な化学物質を含む製品には危険性や取り扱い時の注意等を国連が定める書式で記載したSDS(製品安全シート:Safety Data Sheet)が作成されますが、この接着剤にはSDSが存在します。一般的には生産現場等で日常的に使用する化学薬品等についてSDSが存在する製品についてはその記載内容(危険性)の把握と掲示等での使用者に対する周知徹底が求められます。模型に使用するこのような薬品類は日常的に使用するものではありませんが、自分が使用する製品にどのような危険度があるかを明確に知りたい方は一度その製品のSDSの有無と記載内容をチェックしてみると良いかもわかりません。

主柱材と水平材はEvergreen社製の1.5㎜アングルを使用しました.

主柱材と水平材の組み立てが完了したら斜材を主柱材に接着します。斜材は中央部でクロスし撓みが発生しますが接着時はこの段差は無視して組立てます。

斜材を接着する際は斜材がクロスする部分のたわみは無視して接着します.

接着剤が固着したら片方の斜材がもう一方の斜材とラップしている部分をカッターナイフで除去します。

斜材を接着後, ラップしている斜材の一方を切断した状態の写真です.

片方の斜材のラップ部分を切取り後、交叉部分にプラの小片から製作したガゼットプレートを貼り付けます。これで斜材は完成となります。

斜材中央部のガゼットプレートは幅2ミリの帯板から作成して取り付けます.

上記の作業は2面については平板上での作業が可能ですが、他の2面についてはまず水平材を取り付けて箱上に組み立てた後斜材を取り付けます。その後の斜材の切断作業は組み立てながらの空中作業となりますが、材料の厚さが薄いため歯が薄くよく切れるデザインナイフを使用して切断部に当て板を当てながら切断すれば比較的簡単に斜材の切断は可能です。完成した塔は結構頑丈になります。

完成した櫓の2面をに水平材、斜材を接着して櫓を完成させます.

砂を貯蔵するタンクはペーパーで製作します。図面から展開寸法を求めて木工用ボンドで組み立てます。

砂を貯蔵するタンクはペーパー製です.
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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(8) -ストラクチャーの製作(1) : 給水塔 –

前回までで機関区の線路を含んだ地面の基礎部分は完成しました。基礎部分が完成した地面はこの後細部の仕上げ、部分的な着色等を行って完成させますが、この作業はストラクチャーの大きさと配置される位置に密接に関係します。一方、ストラクチャーの製作は機関区を製作した後、これまで説明してきた線路の敷設作業、地面の基本部分の製作と並行して進めてきましたので今回から数回に渡り、ストラクチャーの製作過程を紹介させていただきたいと思います。

地面のベース部分が完成したレイアウトに完成したストラクチャーを仮置きしたところ.

構想時に機関区にある車両の運行に必要な設備として製作を計画したストラクチャーとその概略位置は以下の図です。今回は、この中から給水塔とそれに付属するポンプ小屋の製作過程を紹介します。

構想時のストラクチャーの配置図
完成した給水タンクと給水塔

まずイメージを構築するためにまず雑誌や写真集、それにWEB SITEに掲載されている画像を見ながら構想を検討します。この機関区のテーマは北海道の機関区ですので主に北海道の給水塔をチェックしました。北海道のストラクチャーに関する雑誌の解説記事は1970年頃のTMS誌、TMS選書の中のシーナリーガイドに河田耕一誌の記事が掲載されていますが、このような解説記事だけではなく雑誌や写真集に掲載されている機関区で撮影した機関車の写真には比較的多く機関区の設備も写っていますのでそれらの写真も参考にします。ウエブサイトに掲載されている画像も参考にしますが、実際に検索すると実物より模型の画像の方が圧倒的に多く出てきます。1970年ごろの所謂SLブームの際、TMS誌の故・山﨑喜陽主筆はお立ち台で撮影に熱中するファンの姿を当時大阪で開催されていた万博会場で会場の写真を撮るようなもので資料的な価値はないと言っておられましたが、流石に当時から50年以上経つと万博会場で何気なく撮影した写真でも当時の風俗がわかるという観点で現在では資料的な価値はあるような気がします。ただ、お立ち台で並んで撮影した写真はみんな殆んど同じ写真であり、当時の風俗や周囲の雰囲気はわからないので50年後に資料的な価値があるかは疑問ですので山崎主筆の言葉はある意味今でもそのとおりであるような気もします。しかし当時撮影されたスナップ写真的な機関区の風景など鉄道現場で撮影した写真は当時の機関区の作業内容や労働環境を知るための資料、模型製作の資料としてそれなりの価値があるようにも思えます。SLブームの際に写真を撮影していた方は現在70歳を超えていると思われますが、そのような方が何気なく撮影したスナップ写真も現在では貴重な資料にますのでそれらの写真を検索アプリで検索できる状態でとこかにアップしておいていただけると今後蒸気機関車に興味を持ち鉄道模型のレイアウトを製作してみようとする人にとって貴重な資料となると思うのは私だけでしょうか。私もこのブログ等で当時の写真をアップしようとは思うのですが、当時の国内製のモノクロフィルムにはビネガーシンドロームが発生するという問題があり、当時プリントしていなかったフィルムがかなり失われてしまったのが残念です。
話を元に戻しますと北海道の給水塔と給炭台は特に給水塔に特徴があるようで、給水タンクの脚部が木材で覆われている例が比較的多いようです。上記のシーナリーガイドの解説によれば、タンク本体も防寒のために木材で覆われているものがあり、中にはタンク本体も木製のものがまだ残存していたようです。私はこのようなタイプの中から、タンク本体は鉄製で、脚部に6角形の木製の覆いががついたものを選びました。機関車への給水はスポートではなく、その覆いから出ている給水口から機関車に水を重力で供給するタイプです。参考にしたのはシーナリーガイドに掲載されていた函館本線茶志内にあった給水タンクです。
タイプが決まったらまず概略のスケッチを作成しますが、寸法の詳細が分かりませんので他の似たようなタイプの給水塔を含め機関車が映り込んでいる写真から割り出しました。このスケッチには給炭台も描き入れてで全体的なバランスが問題ないかを写真と比較して確認しました。

最初に作成したスケッチ

バランス的に問題のないことが確認されたら図面を作成します。通常日本家屋には”1間”という基本寸法がありますが、このような建造物にはその単位がどの程度適用されるのかは全く分かりませんでしたので寸法決定の際には意識しませんでした。また、機関区を製作した際に余ったエコーモデル製の窓枠を使用するため、窓の大きさや位置はそれに合わせてプロトタイプから変更してあります。

スケッチより作成した図面
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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(7) -地面の製作とバラストの散布-

前回までで線路の敷設とレールと枕木の塗装が終わりましたので、次の工程である地面の製作とバラストの散布作業に進みます。ただ、以前にも記したように蒸気機関車が活躍していた頃の機関区の地面と線路周り(バラスト)は所謂「列車が行き交う”一般的な”線路」とは雰囲気が全く異なりますので今までの製作法では対応できません。
私は今までたレイアウト(レイアウトセクション)を機関区のレイアウトセクションも含め三種類製作してきましたましたが、それらはは外国型のレイアウトでした。私は蒸気機関車が活躍している時代はもちろん、今まで外国の機関区を訪れたこともないため機関区の線路はブレーキ粉の錆が付着したことを考え茶色系のバラストを使用して周囲を黒くウエザリングする以外、細部はあまり深く考えず製作しました。しかし今回のレイアウトは遠い過去ではあるものの、私が自ら体験した機関区風景の再現ですので、その当時の印象(心象風景)をいかに再現するかを検討する必要があります。

細部仕上げ前の地面のベースが完成したレイアウトにストラクチャーを仮置きして車両を並べたところ


私が蒸気機関車が活躍していた時代に見た機関区の地面(レール周辺)の印象を一言で言うと、機関区の線路は「バラストのみの部分は殆んど無い」と言うことです。下の写真は八高線の無煙化に際して公開された高崎第一機関区の写真ですが、給水塔(スポート)や給炭設備のあるエリアではバラストは全くと言っていいほど見えません。

八高線のさよなら列車が運転された当日の高崎第一機関区の風景.

一方、下の写真は八王子機関区の写真ですが、機関車の停車しているところはアッシュピット付近で、線路周辺は土ではなく石炭殻が散乱しています。そして地面を覆っているのは石炭殻(灰)ですので上記の写真とは色調が異なります。上の高崎第一機関区はほぼ蒸気機関車の定期運用が終了したさよなら運転の際の機関区公開時の写真ですが、こちらの写真は本数は少ないながらもまだ八高線に蒸気機関車が運用されている時点での写真であり、蒸気機関車が待機しているエリアは活気があると同時に、砂や石炭殻が各所に散乱している状況でした。余談ですが当時は所謂SLブームの直前の時代であり、機関区事務所でお願いすると、職員さんが案内して内部を見学させてくれて蒸気機関車のCABにも載せていただくことができました。

八王子機関区のアッシュピット付近に待機するC58. 周囲には石炭殻が堆積している.

この写真のように蒸気機関車時代の機関区はエリアによって線路周りの表情と色調が全く異なりますし、晴天でも給水スポート周辺の土は水で濡れており、水たまりができていることもあります。また石炭殻は水たまりができるような地面の凹みにも散布されたりしますのでアッシュピットの周囲でなくても石炭殻が散布されて地面の色調の異なっている部分があります。、このように機関区の地面の表情は多岐にわたっており、これらをどのように表現するかが製作のポイントとなります。過去の作例として故なかお・ゆたか氏のレイアウト、”蒸気機関車のいる周辺”の製作記事では機関区エリアの土に埋もれたバラストの表現方法として枕木間の隙間に紙粘土を詰める技法が紹介されていました。ただ、いくらバラストが土等にで埋もれていると言っても場所によっては少しバラストが露出しているところもあり、バラストが殆んど見えない部分でもバラスト自体を省略することには抵抗がありましたので、別の方法を検討することとしました。ただ、あまり机上で考えていても始まりませんので実際に製作を進めながらある程度 Try and Errorも覚悟しながら検討と製作を進めることとしました。今から数十年前のTMS誌で、故・山崎喜陽氏は「簡単と思われる工作でもいきなり手を動かすのではなくしっかり時間をかけて事前に技法や手順を検討することが必要」と言うことを述べておられました。この考え方は車両工作では絶対必要な考え方で鉄道模型のみならず日々仕事をする中でも必要な考え方ですが、レイアウトの製作はEngneeringの要素にArtの要素が加わってきます。題名は忘れてしまいましたが昔読んだ本に絵が上手い人と下手な人の差は1本の線を描く時間の差に現れる(絵の上手い人は線を引くという動作の中で全体のバランスを見たり想像しながら書き方を微調整しているので時間がかかる)と書いてありました。同じ鉄道模型でもレイアウトの製作やウエザリング作業にはこのような「製作しながら考える」と言うことも必要である気がします。このようないろいろな考え方で製作を行う必要があるということが鉄道模型製作の面白さ(奥深さ?)であるような気もします。

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レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(6) -レールと枕木の塗装-

コントロールボードが完成したらこのレイアウトでの運転を想定している手持ちの車両で試運転を行ないます。このセクションの分岐器は非選択式であり、スプリングポイント機能もありません。そのため分岐器部分でのストックレールとポイントレールの通電不良や分岐側から車両が侵入した際のポイントレールのスプリングポイント機能の動作確認が不要ですので比較的問題は起きにくい構造です。したがって主な確認部分はレールのジョイント部のずれと段差の影響の確認になりますが、その確認の際には脱線の有無だけでなく通過する車両を注意深く観察して揺れや音に注意して確認することが必要です。特に見落しがちなのはジョイント部のレールの段差です。今回は分岐器とフレキシブルレールのメーカーが異なっていますので分岐器とフレキシブルレールの部分にわずかな段差がありましたので枕木とベースボードの間に薄紙を挟んで高さ調整を行いました。この辺り、やはりフレキシブルレールも分岐器と同一のPECO製を使用した方が良かったかもわかりません。なお、以前にも記載しましたがこの段差を確認する際は実際の車両を走行させて確認するより台車を手で押さえて(荷重をかけて)通過させてジョイント部を通過する際の振動と音を確認するとよりわかりやすいようです。
試運転が終了したらレールと枕木の塗装を行います。私は今まで製作したHOゲージのレイアウトではレールは全てHumbrolのエナメル塗料の筆塗りで行っています。一般に金属にエナメル塗料を塗った場合塗膜が弱くすぐに剥がれてしまいますがHumrolのエナメル塗料は他の塗料と乾燥機構が異なるせいか、金属に塗装しても他の塗料に比較して剥がれにくく、今まで問題を起こしたことはありません。塗料の伸びも良いのでレールの塗装にはおすすめではないかと思います。ただ、艶(艶消し)の状態を安定させるためには入念な攪拌が必要で、乾燥時間も比較的長い等、他の塗料エナメル系の塗料とは取扱性が異なりますので注意が必要です。また入手製も良いとは言えません。一方枕木はタミヤカラーのフラットブラウンとブラック(いずれも艶消し)を混合した黒に近い茶色で塗装することとしました。
レールの塗色は比較的明るめの#186(Brown)を使用しました。レールの色は所謂”錆色”ですが、場所や交換されてからの期間等で色合いが異なり、選択に当たってはいつも悩むのですが今回は機関区のレールですので実際のレール側面は油、砂、石炭殻等で「汚れて」います。そしてその汚れはレール塗装後のウエザリングで表現しますので、今回はあまり難しく考えずに比較的明るめの「普通の茶色」を選択しました。レール塗装の手順は以下の通りです。まず綿棒を用いてレールを溶剤で拭き脱脂した後、プライマーを筆塗りします。前作までこのプライマーはマッハ模型製のエッチングプライマー(緑の液体)を使用していたのですが、最近入手できなくなってしまいました。そのため今回はIMON製の密着プライマーを使用したのですが、両者で塗料の密着性には差はないようです。プライマーが乾燥したらまずレールを塗装しますが、あとで枕木は塗装しますので枕木側へのはみ出しはあまり気にせず筆塗りしていきます。ただし分岐器部分、特にポイントレールの部分は枕木側に塗料がはみ出ますとポイントレールの動きを妨げますので慎重に塗装します。ただ、前述のようにPECO製のUnifrogタイプの分岐器はポイントレールとリードレールの間に関節部がありませんので関節部への塗料の回り込みを気にする必要がないので他の分岐器に比較してレールの塗装は比較的楽に行えます。なお、この分岐器は非選択式ですのでポイントレール先端とストックレールの間の導通はあまり気にしなくて良いのですが、レールの密着性に影響する可能性があるため接触部の塗装は避けました。塗装後、塗料が乾燥してレールの塗装が完了したら続いて枕木の塗装を行いますが、こちらはレールへのはみ出しがないよう、平筆を用いて塗料がレール側にはみ出さないように枕木を一本ずつ塗装していきます。枕木を1本ずつ塗装するのはなかなか根気のいる作業ですが、レールの総延長がこのレイアウト程度であれば塗装は半日もかかりません。

塗装中のレール. 塗料はHumbrolのエナメル系塗料を使用しました.

塗料が乾燥したらレール踏面の塗料を剥がしていきます。私はまずカッターナイフで塗料を削ぐように剥がしたのちブロックに貼り付けた#600のサンドペーパーで磨いて仕上げています。この際、塗料が剥がれているように見えてもプライマーが付着している可能性がありますが、触指で摩擦の変化を確認したり表面の光沢をチェックすることでチェックすることが可能です。

レールの踏面の塗料はまずカッターナイフを用いて削ぎ落としてその後サンドペーパーで磨きます.歯ブラシは削ぎ落とした塗料を除去するために使用します.

敷設が終了したらアッシュピットの部分の枕木の中央部と端面をカットし切断面を塗料でタッチアップすれば線路の敷設は完了します。

塗装が完了したレールと枕木. 手前は既成のフレキシブルレールで枕木の本数を減らしているのがわかります.
アッシュピット部分枕木を加工して完成です.

レールの塗装が完了したら地面の製作工程となりますが、今回は製作する日本の蒸気機関車が活躍していた機関区の地面でそっれを表現する為には今まで経験したことのない製作法になりますのでその方法には検討が必要で、る程度の時間(TRY &ERROR)が必要と思われましたので、それと並行して今までは図面上で検討していた機関区以外のストラクチャーの配置を検討するとともに、一部のストラクチャーの製作を開始しました。次回以降はその検討の過程と一部のストラクチャーの製作過程を紹介したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございまいた。

地面の製作(製作法の検討)と並行してストラクチャーの製作を進めます. ストラクチャーの製作過程については次回以降適宜紹介していきたいと思います.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(5) -コントロールボードの製作と電気配線-

前回の記事で記載したように、私は30年ほど前にアナログ制御のZゲージレイアウトを製作した後は 3線式(Märklin)のDigital制御のHOゲージレイアウトを製作してきたため、線路敷設後の試運転時にも車両の走行性の確実な確認のためには配線、特に分岐器絶縁フログ部の極性を分岐器の切り替え方向に応じて切り替えることが必要ということを失念していました。そこで確実な試運転のために急遽コントロールボードを製作することにしたのですが、この時点ではアナログ制御時の運転方法について具体的な構想や設計をあまり真剣に考えていなかったというのが正直なところです。

レイアウトの台枠部分に設けたコントロールボード.

今回このレイアウトが完成したとしてもその時点での手持ちの日本型蒸機はアナログ制御の車両のみであり、しばらくの間はアナログ制御で運転します。現状では日本でデジタル制御が米国や欧州のような形で普及する見込みは全く立ちませんのでアナログ制御による運転方法も一時凌ぎではなく「真面目に」検討しなくてはなりません。また、現在手持ちの車両を将来も運転するためアナログ制御とデジタル制御を切り替え可能にするとともに最終的にはDCCに制御による自動運転にも対応できるようにしたいところです。実はこのレイアウトの構想時にはどちらかというといつ実現できるかわからないにもかかわらず頭の中ではDCC制御のことばかり考えており、そのために行うことは非選択式の分岐器を用いて一つのフィーダーでレイアウト全体に給電すること、自動運転に必要なフィードバックモジュールによる在線検知にS88プロトコルを使用する場合は検知にアナログ制御時の機関車留置用のギャップ(ブロック)を利用する(よってDCC制御による自動運転のためにに特別の加工は不要)という程度のことしか考えていませんでした。
レイアウトのコントロール方法は70年台のTMS誌には比較的高頻度で掲載されており、私もZゲージのレイアウトを製作した時に大いに参考にしたのですが、最近はまったくみかけません。今回も復習したのは50年以上まえの当時の記事です。レイアウトのコントロール方式には大きくブロックコントロール、キャブコントロール、デュアルキャブコントロールがありますが、方式の決定にあたってはまずこのレイアウトセクション上で同時に何台の車両を動かすかを決める必要がありますが、今回以下の理由によりレイアウト上で動かす車両は1台のみとしました。私は過去、ほぼ同一の線路配置でDCC制御(Märklin Dogotal)のレイアウトセクションを作成しましたが、このレイアウトはDCC制御ですので理論上は機関車を何台置いても個別に制御が可能です。私が製作したこのレイアウトセクションに接続したコマンドステーション(Central Station3)は、スロットルの数は2台ありますので実質的にレイアウト上で制御できる機関車の台数は2台となります。ただ、実際に運転してみるとこの規模のレイアウトセクションで一人で2台の機関車を制御するのは至難の技です。2台の機関車を制御しようとした場合、この線路配置では1台は機関庫側での機関車の転線、もう一台は整備線側での整備(給水、給砂、給炭、石炭柄の排出)と留置線への移動になります。ただこの制御を一人で行おうとすると作業が非常に煩雑で機関車の動きを鑑賞するどころではなくなります。それでも今回のレイアウトではコントローラーを2台接続できるようにしておくこともできますが、上記の経験からそれも不要と考え、このレイアウトで一度に制御できる車両の数は1台としました。そうするとキャブは1台になりますのでコントロール方式は必然的にブロックコントロール方式となります。ギャップについては今回のレイアウトは非選択式の分岐器を使用していますのでショート防止のためのギャップは不要で常時通電するブロックへのフィーダーは1箇所でOKですす。そうすると次の要検討項目は絶縁されているフログへの給電となります。当初、この極性切り替えには当初PECOやの極性切り替えスイッチ(PL-25)を使用する予定でした。ただ、どういうわけかドイツの模型店ではこのスイッチが品切れで今回は入手不可能でした。このスイッチはポイントマシンのアクチュエータで動作するスライドスイッチで、ポイントマシンの分機器の反対側に装着する構造です(そのためにポイントマシンのアクチュエータは分岐器の逆側のソレノイドの下部に突出しています)。そのため比較的簡単に後からでも追加することが可能ですし、入手不能の場合は自作も可能ではないかと考え、検討を先送りしていました。しかし、コントロールボードを製作するためにはこの切り替え方法をこの段階で決定しなければなりません。今回使用したPECO製のポイントマシンの動作力は比較的強力ですので自動切り替えスイッチは燐青銅線やバネ等で比較的簡単に自作できそうです。ただ考えてみるとフログの極性を自動的に切り替える必要があるのは自動運転の場合だけで、自動運転を行わない場合はDCC制御での運転でも経路(分岐器の切り替え)は手動で行います。このため現時点ではフログ極性の自動切り替えは行わず、より信頼性が高い手動切り替えとしました。そしてその方法は、ポイントマシンの切り替えには両側モメンタリーのトグルスイッチを設け、フログの極性の切り替えはその近傍に設けた一般的なトグルスイッチで行うこととしました。そしてこれらのスイッチをコントロールボードの路線図上に設けることにより、分岐器切り替え時にはこの2個のスイッチの操作を連続して行ないます。この方式では切替作は2アクションとなりますがこの方法ではフログ極性の切り替えスイッチで分岐器の分岐方向を示すこともできます。コントロールボードは台枠の一部を切り欠いて設置しますが、上下の幅が狭いため、一つの経路頭上に分岐器切り替えスイッチとブロックへの給電スイッチは別の経路頭上の設けることとしました。そのほか、コントローラーは内蔵しませんので接続用のコネクタには手持ちのマイクコネクタを使用し、ポイントマシンへの給電用と照明等への給電用にはACアダプタをが接続できるDCジャックを設置しました。また、照明との給電をON /OFFできるトグルスイッチを設けてあります。照明用の電源は9VのACアダプタ、ポイントマシンの電源は12VのACアダプタを使用することとしました。

パネルの全体写真. 左側に分岐器切り替えスイッチ, 右側にブロック切り替えスイッチを配置. パワーパックの接続コネクタは手持ちのマイクコネクタ(7P)を使用していますが実際に使用しているのは2端子です.

コントロールパネル上で分岐器制御スイッチは路線図の分岐部に分岐方向切り替えスイッチ、その下流にフログ極性切り替えスイッチを設け、分岐器切り替え時にはまず分岐方向切り替えスイッチを切り替え方向に倒した後、フログ極性切り替えスイッチを動方向に倒してフログ極性を切り替えます。

この方法では分岐器の分岐方向をを切り替える際、2個のスイッチの操作が必要になります。私が以前製作したZゲージのレイアウトでも分岐器の切り替えは今回のレイアウトと同様、両側モメンタリーのトグルスイッチを使用していました。Zゲージの分岐器(Märklin製)は非選択式ですが構造上フログ部分に無電区間は殆んどなく、フログの極性切り替えは不要でったため、今回切り替え時に二つのスイッチを操作することは煩わしいのではと感じたのですが、実際に製作して操作してみると切替時は一連の操作になりますのでそれほど煩雑ではなく、またポイントの開通方向が目視でわかるということは意外と有益であることがわかりました。上記のZゲージ用分岐器やMärklinをはじめとした欧州製の分岐器にはスプリングポイント機能があり、分岐器の分岐側からは分岐器の開通方向に関わらず車両の侵入が可能ですが、今回使用したPECO製の分岐器はポイントレール側にロック機構があるためスプリングポイント機能がありませんので、車両を分岐側から分岐器に侵入する際も分岐器が侵入する分岐側に切り替わっていることの確認が必要です。これは分岐器を目視でチェックすればわかるのですが、運転する位置によっては建物等に隠れて開通方向が見にくい場合もありますので分岐機の開通方向がわかる今回の方式は操作は面倒ですが意外と便利であることがわかりました。
コントロールパネルの製作はまず2㎜厚のPET板より本体を作り、Letra Line Tape 製作した路線図ので所定位置に使用するパーツに応じた取り付け穴を開けてパーツを固定することにより行いました。Letra Line Tapeは30年近く前にZゲージレイアウトのコントロールパネルの路線図作成用に購入したものですが、今回問題なく使用できました。余談ですが、今回使用したトグルスイッチは秋葉原のパーツ店で1個¥100程度で入手できます。約30年前、Zゲージのレイアウトを製作した際はこの種のトグルスイッチは1個¥200-¥300であったような記憶があります。この種の部品は中国生産になった影響かもわかりませんが所詮模型用で信頼性はあまり問わないと割り切ればこの手の部品は当時よりかなり安価に入手できます。

パネルはパーツを取り付けたら台枠を切り欠いた取り付け部に固定して配線を開始します。配線にあたってはコントロールボードの近くに電源分配用の基盤を設け、そこからレイアウト各部に給電するようにしました。

コントロールボード近くに配置した配線用の基盤

基板はフィーダーN /フィーダーS/12V+/12V-/9V+/9V-の電源区画を設け、その区画ごとに各ホールを繋ぐ鈴メッキ線を半田付けし、さらに9V+の区画からはLED点灯用の1.5KΩの抵抗を介した端子(ホール)を設けました。そしてコントロールパネルのパワーパックとDCジャックからの電源をこの基板の各区画に接続し、そこからレイアウト各部に各部に配線していきます。なお、車両留置用のブロックからの配線は一方をこの基板に接続し、もう一方はコントロールパネルのブロックへの電源供給スイッチに直接接続してあります。レイアウトの各所からくるリード線は接続する電源区画のホールに半田付けしますが、その際、ホール上にあるスズメッキ線とともにハンダ付けけすることにより各電源と接続します。今まで製作してきたレイアウトでは端子台を使用する方法(Zゲージレイアウト・外国型機関区レイアウトセクション)、基板上に取り付けたターミナルブロックに取り付ける方法(自動運転を前提としたレイアウト)を採用してきましたが、配線は一度配線したら煩雑に取り外しすることはないので部品の削減(コストダウン)も兼ねてこのようなハンダ付けによる方法を採用しました。余談ですが、私が中学生の頃はこのようなスズメッキ線やリード線を使用したはんだ付け作業を学校の技術家庭科の授業でやった記憶がありますが、今はどうなのでしょうか。なお、コントロールボードのスイッチ周辺のような狭い範囲の配線には取り扱い製の面からスズメッキ線やビニール被覆の単線(捻り線ではない)を使用した方が簡単です。

配線用基板のアップ. 各電圧と極性のブロックを写真の縦方向に配置してあります. 各部からの配線は基板の各ホール部分にスズメッキ線とともにハンダ付けします.
基板には照明の一部にLEDを使用するため、9V+を供給するブロックに制限抵抗を介した端子を設けました.
各部からの配線は基板上の所定の電源区画にハンダ付けします.
レイアウトには電源供給用のBUS LINEは設けずに個々のブロックのコモン側の配線やポイントマシンへの配線は全て基板から配線しています。

なお、今回の車両留置用のブロックは両側のレールを絶縁して敷設し、片方のレール(Nフィーダー)からの配線をこの基板上でコモン化してあります。今回のレイアウトセクションはエンドレスを持ちませんのでどちら側のレールをNフィーダーとするかは一義的には決められませんので機関区側のフィーダーをNレールと定義してNコモンとして配線しました。配線が終了し、コントロールボードが完成したら試運転を行います。試運転はこのレイアウト上での運転を想定した手持ちの車両の中で最も終電用車輪のホィールベースが小さい車両(DT19を装備した気動車)と固定軸距が最も長い車両(D51)を主体に行って問題ないことを確認しました。試運転が終了したらレール側面と枕木の塗装を行いますが、この作業の紹介は次回にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(4) -ベースボードの製作と線路の敷設-

前回までの記事で紹介したようにレイアウトの大まかな構想がまとまりましたので、いよいよレイアウトの台枠から製作を開始します。今回は機関区セクションで地面に凹凸はありませんので下図のように台枠の表面は9㎜厚のシナ合板を使用したフラットトップ方式として、30×12㎜の杉角材で周囲の枠を製作することにしました。シナ合板は450×900㎜サイズを購入し、3等分した上で手持ちの300×20㎜の部材を追加して所定の寸法(1370×300㎜)としています。また枠の四隅には枠に使用した30×12㎜の杉角材の残材取り付けて足としました、

台枠の概略図. 右側に線路敷設前にベースボードに加工が必要なアッシュピットと点検ピットがあります.

台枠を組み立てる前にまずベースボードの加工を行います。蒸気機関車の燃料は石炭ですので、他のエネルギー源を使用した車両と異なり定期的に機関車から石炭の燃え殻(石炭殻)を排出する必要があるため蒸気機関車が配置されている機関区には機関車の火室の下から石炭殻を排出したときにそれを一時的に貯めておくアッシュピットがレールの間に設けられています。そのためベースボードには線路を取り付ける前にこの部分に角穴を開けておく必要があります。また機関庫には下回り点検用のピットが設けられていますが、こちらも構造的にはアッシュピットと同一であるためこちらもアッシュピットと同様の加工が必要です。今回、ベース板は3分割されており、組立前であれば角穴は糸鋸で開けることが可能ですのでこれらの部分はベース板を枠に取り付ける前にに加工しました。その手順は下の写真に示すように、所定の形状の角穴を糸鋸で開けて断面を仕上げた後、内側に壁となる1㎜厚のイラストボードを接着してパテで隙間を埋め、表面を平滑に仕上げています。

ピットはベースボードに角穴を開け, イラストボードで作成した壁面を取り付けます
パテで隙間を埋めて週を仕上げます. この後イラストボードで作成した底板を取り付けてピットの完成です.

今回使用するPECO製の分機器はポイントマシンを分岐器に直接取り付けることが可能で、その場合にはベース板の所定位置に角穴を開けることが必要ですが、ポイントマシンを分岐器の直接取り付けずにベース板裏面に取り付けることのできるアダプタ(PL-9:mounting Plate)が発売されていますので、今回はそのアダプタを使用してポイントマシンはベース板に取り付けることとしました。なお、PL-9を使用してポイントマシンをベース板裏面に取り付ける場合にはポイントマシンはPL-10Eという製品を使用します。このポイントマシンは分岐器に直接取り付けるタイプに比較し、アクチュエータであるピアノ線の長さが長くなっています。

ポイントマシン(PL-10E)にMounting Plate PL-9)を取り付けた状態

このアダプタを使用する場合は角穴は不要で所定位置に10㎜の丸穴を開ければよいので、この穴はベースボードの組み立て完了に開けることとしました。この穴あけには木工用ドリルを使用します。

ベースボードの組み立てが完了したら線路を敷設する作業を開始します。最初に分岐器の位置を決めて取り付けます。前述にように今回分岐器は英国PECO社製の6番ポイントを使用します。PECO製の分岐器は国内の模型店でも入手できますが、私は海外(ドイツ)からの個人輸入で入手しました、海外の価格は昨今の円安の状況でも国内で入手するより¥1,000程度安いのですが、送料と国内消費税を加えると国内とほぼ同等の価格になります。ただ、今回はベースの裏面に取り付けに対応したポイントマシンや裏面取付用のMouting Plate等、国内模型店ではすぐには入手困難な部品があったことから海外手配としました。今回は価格的なメリットは殆んどありませんでしたが比較的大きなレイアウトを製作する場合等には多数の分岐器が必要となる場合は分機器1台あたりの送料は減りますので価格だけ考えれば海外手配の方がお得ではないかと思われます。貨物の到着日数もほぼコロナ禍前に戻っているようです。ただ、海外手配の場合は輸送中の事故のリスクがありますのであくまで海外手配を行う場合は自己責任でお願いします。
線路が入手できたらまずは分岐器をベースに取り付けます。下の写真はPECO製の分岐器を裏面から見たものですが、PECO社のUnifrogタイプの分機器はFrog部分に給電用の導線が溶接されていますのでその導線をベース裏に通す穴が必要です。

PECO製の分岐器を裏面から見たところ. 絶縁されたフログ部分から導線が出ていますのでベースボードにこの導線を通す穴が必要です.

PECO製の分機器はポイントマシンを分岐器に直接取り付けることが可能で、その場合には取り付けるだけで分岐器とポイントマシンの位置関係は正しく位置決めされます。一方、裏面取り付け用のアダプタを使用する場合は分岐器とアダプタの位置調整は現物合わせによる調整が必要になります。ただ、マシンは強力でストロークもポイントレールの移動量に対して充分大きいためアダプターの取り付け位置の調整は比較的簡単です。ポイントマシンを取付後、枕木から飛び出しているアクチュエーターを切断しますが材質がピアノ線のため切断にニッパーや糸鋸は使用できませんので今回はヤスリで切り欠きを入れて折り取りました。

Mouting Plate(PL-9)を取り付けたポイントマシン. Mouting Plateとマシンの取り付け方法はポイントマシンを分岐器に取り付ける方法と同一です.

分岐器以外の線路は篠原(IMON)製の#83フレキシブルレールを使用することとしました。英国PECO社でもフレキシブルレールは製品化されていますが、今回はより入手しやすい国内製を使用することにしました。ただ、実際にフレキシブルレールを入手しPECO製の分岐器と比較してみると両者でレールの断面形状と軌間がわずかにに異なっていることがわかりました。またレールの色がPECO製の方が少し黄色味が勝っています。しかし正しく取り付ければ走行性に問題はなく、色もレール側面を塗装すれば目立たなくなりますのでShinohara製をそのまま使用することとしました。PECO製のフレキシブルレールの実物に詳細は確認していませんが、気になる方はPECO製のフレキシブルレールを使用した方が良いかもわかりません。ベースボードへの取り付けはまず分岐器の位置を決めて取り付けていきます。ベースボードの線路の中心線を罫書いたら分岐器を#70用のスパイクで固定します。過去の雑誌の記事を見ると線路の固定にスパイクを使用すると振動がベースボードに伝わるため騒音が大きくなるというような記事があったような記憶がありますが、今まで製作したレイアウトではスパイクの有無は騒音にはあまり影響はないのではないかと思います。線路の取付に際しては、今回は機関区のレイアウトであり、バラストの厚さはそれほど厚くする必要がないので線路はベースボードの直接取り付けています。この構成は故なかお・ゆたか氏のレイアウトセクションと同一です。なお、分岐器のポイントレール部分(稼働部)には十分にバラストを散布できないためベースボードの表面が露出する可能性がありますので、分岐器のポイントレールの部分には分岐器の取り付け前にベースボードにグレーの塗料を塗っておきました。なお、レール側面と枕木の塗装はこれまで製作したレイアウトと同様ベースボードへの固定後に行うことにしましたので事前にレールの塗装はせずそのまま取り付けます。

分岐器の固定が終了したらその他の部分の線路を敷設しますが、Shinohara製の線路の枕木間隔は約6.5㎜であり、この感覚はこれは蒸気機関車が活躍していた頃の機関区の枕木間隔と比較すると小さすぎます(単位長さあたりの枕木の本数がが多すぎます)。これはこのレールが設計された時代がまだ日本の鉄道模型業界は米国への輸出が主体である頃でしたので米国のレールを意識して設計されたためではないかと思われます。国鉄時代の線路等級の規格では亜幹線の枕木間隔は8〜9㎜で機関区等の側線ではさらに広い感じがします。それでもあまり減らしすぎると分岐器部分との枕木本数の差が大きくなりますので今回は枕木間隔を8㎜としました。雑誌に掲載されている・故なかお・ゆたか私のレイアウトセクションや故・荒崎良徳氏製作の雲龍時鉄道祖山線の記事には市販のフレキシブルレールの枕木本数を2割減らすとよいという記載がありますが、6.5ミリのピッチを8ミリに拡大すると削減本数はこれらの記事に記されたように全体本数のほぼ2割減となります。実際に枕木を減らした線路を敷設中の写真が下の写真です。写真からもわかるようにPECO社の分岐器は米国仕様のためか枕木本数が多いため、下の写真を見ると分岐器部分とそうではない部分の枕木の本数の差がかなり目立ってしっまっています。枕木の本数を減らしたことにより分機器以外の部分では枕木を減らす前より実感的になったと感じますが、このような角度から見ると枕木の本数をもう少し増やしても良かったという気もしましたが、バラストを散布するとあまり目立たなくなることを期待してこのままとしてあります。

なお、Shinohara製の分岐器は写真で見た限りではなぜかポイントレールからリードレールの部分の枕木ピッチがフレキシブルレールの枕木ピッチより広い印象もあるのでShinohara製の分岐器を使用した場合はこの差は目立たなくなるかもわかりません。ただし非選択式の分岐器はありません。フレキシブルレールはもう少し日本の線路の印象に近いレールの製品化をと言いたい気もするのですが、16番ゲージの場合、そもそも軌間がスケールどおりではありませんのでその制約のなかで万人が「実感的」と感ずる線路を製品化して製品化するのはなかなか難しいかも分かりません。故なかお・ゆたか氏や故 荒崎良徳氏のイアウトが製作されたときにはShinohara製のレールはCode100とCode70の2種類でしたが、当時はよりスケールに近いCode70レールは軌間の広さが強調されるため使用する時は注意が必要きということが言われていました。レールの太さはCode70の方が実物に近いのですが模型で「実感的」と感じるためにはやはり全体的なバランスが重要なようです。私は鉄道模型を始めた当時から16番ゲージの所謂「ガニ股」は言われてみると違和感はありましたが鉄道模型は「模型の世界」であるのであまりこだわる必要はないと考えていました。一方、その後外国型の模型を始め、外国型の車両の写真や実物を「模型で再現する」という観点で鑑賞する機会が増えましたが、正面から見た写真を比較すると、外国型車両の模型がレールも含めて写真や実物のイメージを再現している印象があるのに対し、16番ゲージの日本型の模型はそうとも言えないということに改めて気づきました。ただ、それでも模型では下回りの質感の再現には限界があるため、そこにあまりこだわる必要はないと考えています。
話をベースボードへの線路の固定に戻しますと、フレキシブルレールも分岐器と同様、Code70用のスパイクで固定します。ただ、今回は枕木の本数を減らしたため減らす前とは異なり枕木は隣接する枕木と繋がっていません。そのため上の写真のように取り付け時には枕木の間隔とレールに対する直角度はバラバラですので取り付け時は下の写真のようにレールに枕木間隔をマーキングしておき、まずスパイクによる固定用の穴が空いている枕木の位置とレールに対する直角度を調整してスパイクで固定したした後、それ以外の枕木間隔と直角度を1本ずつ手で調整しています。調整後の枕木はレールにもベースボードにも固定されていない状態ですので手で触れれば動いてしまいますが、最終的にはバラスト散布により固定できると考え、そのままにしておくこととしました。

線路を固定し、フィーダーを取り付けた直後のフレキシブルレール.枕木どおしは つながっていませんので枕木の間隔が乱れています.
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