レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(21) -最後に-

今まで20回にわたり私の製作したレイアウトセクションを紹介してきましたが,今回はその最終回としてとして私がレイアウトを製作しながら感じてきたことを記してみたいと思います.
⚫︎ レイアウトの細密度
最近の雑誌の自作車両の紹介記事ではキットを加工して細密化した車両の紹介記事が数多く見られます.その記事を見ると外観部分の加工のパターンの多くはキット部品の追加工による細密感の向上と部品の追加(細密感のある部品への交換)です.私もかつてキットの細密化を目指して加工を行なってきましたが加工箇所や交換・追加部品として何を購入するかは事前に計画を立てておく必要がありました(目論見が外れて余ったパーツも多数ありますが).「細密」の語釈は広辞苑によると ”細かいところまで行き届いていること.緻密,細密,綿密” と記載されています.ちなみにMuarklin社のカタログを見るとハイディテールのモデルには”Intricaate Model “や”fine detailed construction”という表記が見られます.

今回の私のレイアウトの製作過程を振り返ってみると最初にテーマ(北海道の機関区)を決めて建物等の構想を始めましたが車両を製作する時のように構想段階で細密度のレベルを考えるということはほとんどありませんでした.極力市販のストラクチャーやパーツは使わないという方針は立てましたがそれは類型化を避けるためであり市販品より「細密」にすることを目指したわけではありません.
一方,欧米では車両製作よりもレイアウト製作が主流ですが,私が毎月購読している米国の”Model Railroader”誌を読んでいると”realism”という単語が目立つような気がします.”realism”の和訳を「現実感」とすると,ここではrealismとは「レイアウト(+車両)を見て実感的に感じる」ということではないかと思います.一方車両の「細密化」は「車両を見て実物のように感じる」ようにするための手段で実現にはEngneering的な要素が多くそこに感情の入る余地はあまりありません.細密化は手段でrealismは細密化の結果です.それに対してレイアウトを実感的に仕上げるためのアプローチは多種多様であり,Engneering的要素の他に感性が必要で,造作の細かさはレイアウトを実感的と感ずる要素の一部でしかありません.そのために細密レイアウト(fine detailedなレイアウト)という概念は存在しない気がします.

⚫︎ レイアウトの「実感」とその限界?
レイアウトの設計にあたり特に気をつけたのは建物の大きさです.幸い日本家屋は”1間”という建物の統一基準がありますので横方向の寸法どりは比較的容易です.問題は高さ方向で基準はあまり明確ではありません.こちらはかつてTMS誌に掲載された荒崎良良徳氏執筆の”日本の木造家屋”という記事を参考に写真も参考にしながら寸法を決めました.ところが建物が出来上がって配置してみると何となく建物が小さく感じます.国鉄の蒸機の全高は4m弱ですので土台の低い機関区の建物は結構小さく見えるのですが,それでも想定より少し小さく,少し大きめに作った方が良かったのかと思いました.ただよく見るとどうも建物が小さく見える原因は線路の軌間の広さのような気がします.特に車両がいない詰所前でフィギュアが配置されているところを見るとその感が大きいように感じます.

建物とフィギュアに対してレール幅が広い印象ですが,”16番ゲージ”の場合これはどうしようもありません.

また蒸機が出区していくシーンを望遠マクロで前がちに撮影すると車両単体で見た時よりも「ガニ股」が気になります.私は今まで外国型のレイアウトを製作していたので当然のことながらこの辺りには全く問題を感じていなかったため余計気になったのかもわかりません.もしレイアウト上で細密機と調和する実感的なレイアウトをを製作したいと思ったらまず行なうことは13㎜ゲージの採用なのかもわかりません.

車両の細密化を行っても期間の広さはどうにもならず,実物の印象とはやや異なります.

⚫︎ レイアウトの作成にあたって留意したこと
このブログでたびたび触れてきた鉄道模型隅に掲載された記事に1951年のTMS誌に掲載され1971年に再掲された故中尾豊氏の”鉄道模型における造形的考察の一断面”という記事があります.この記事はTMS1000号に添付されたDVDの中の1951年1月号に収録されていますので読まれた方も多いと思います.その中で中尾氏は(以下引用)「我々が一般に「実感」と呼ぶものは,単に実物らしく見えるとか実物を彷彿せしむるのに充分であるとか言ったものとは多層趣きを異にしている.それはすなわち”我々があらかじめ実物に対して抱いている美的感動やそれに関する記憶や連想の基礎の上にモデルの鑑賞者としてモデルに接した時に感ずる思考の作用が一つの昇華作用を起こしてそれに一致する”ことである.」と述べておられます.私はこの言葉自体に全く異論はなく,モデルにおける実感はただ実物を正確に縮小して製作しても得られないということは忘れてはならないことだと思います.ただ,この記事を読み進めていくと中尾氏は「車両の模型」を念頭に述べているように感じます.実際に風景を1/80に縮小したレイアウトを製作することは不可能ですし前述のDVDの中に収められている創刊間もない頃のTMS誌を見るとレイアウトの紹介記事はほとんどなかったことからもそのように推察されます.一方これも過去に触れましたがModel Railroader誌の2024年10月号にTony Koester氏がTrain of Thought というコラムで“The look and feel of the place” と題した記事を執筆されています.この中で氏はPrototype Modeling(実物を「縮小して再現」するレイアウト?)についての留意点述べておられます.それを要約(意訳)すると① Prototpe Modelingは実物を厳密に縮小しなくても良い.どのように再現するかについて熟考し,無謀な朝鮮はすべきではないがすぐには諦めないことが必要である.② Prototpe Modelingの目的は特定の場所,特定の時代の雰囲気を再現することである ③最終的にレイアウトにするためにその「特定の場所」を繋ぎ合わせてリアルな鉄道として完成させる ④ レイアウトの製作にあたっては再現する場所の縮尺図を入手し、選択した縮尺に合わせて正確な位置にレールを固定する必要はない.それよりシーンの本質を捉え、その場所と時代を鑑賞者に伝えるための重要な特徴がそこに存在するように製作する.という内容です.これを読んだ時この内容は上記の”鉄道模型における造形的考察の一断面”のレイアウト版のように感じ私は常にこの言葉を意識しながら製作していました.
⚫︎ 「それらしく作る」ということの楽しみ
上にModelrailroader誌に「realism」という文言が多い印象があると記しましたが私が子どもの頃読んでいた「小供の科学」や「模型と工作」等の科学雑誌に掲載されていた車両の作り方の記事には「それらしく作る」という文言が多かった印象があります.フレーズとしては「xxはyyを利用してそれらしく作ってください(作りました)」というようなフレーズで,鉄道模型の専門誌であるTMS誌にもこのフレーズは見られたように記憶しています.パーツの充実等もあり現在では車両工作記事でこのフレーズを見かけることは殆んどありません.ただ,レイアウトでは山も樹木も「それらしく」作るほかありません.今の時代,車両製作で細密機を製作する場合「パーツを購入して半田で取り付けておしまい」という工程が数多く,制約条件の中で色々工夫して工作し実感的な車両を製作するという楽しみがなくなっているような気がします.レイアウトの製作ではこの「制約条件の中で工夫して作り上げる」という楽しみが数多く残されており,「それらしく」作ったものがレイアウト上で「実感的」に見えた時には達成感を感じ,車両製作とは違った鉄道模型の楽しみ方を味わえるような気がしました.またレイアウト上を走る車両も厳密に実物の形状を再現しようとせず「それらしく」作ってもそれほど実感を損ねない場合もあるようです.冒頭の写真のC12もそうですが,私の製作した711系モハ711では変圧器や半導体の冷却装置はホワイトメタル製の気動車エンジンと客車の冷房電源用のディーゼル発電機を利用して「それらしく」作ってあります.それでもレイアウト上ではそれほど違和感はありません.

床下機器にDC用のホワイトメタルパーツを使用したモハ711.左の機器の空気取り入れ口は103系車体のモーター冷却風取り入れ口パーツをを流用しています.

以上,レイアウト完成後に私が思っていることを記載させていただきました.内容の中には過去に記したことと重複している部分もありますが,それらの思いは今回のレイアウトを作った後でも変化がないことの印としてお許しください.
以上をもって本レイアウトの紹介を終わります.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(20) -レイアウトの製作を終えて思うこと(レイアウト上で実感を得るための車両の細密度)-

私が機関区のレイアウトを製作し製作しその中で機関車を運転して感じたことは実感を感ずるためにはある程度以上の細密度不要でより重要なのは全体のプロポーションであるということでした.一方最近の雑誌の車両工作関連の記事を見ていると自作(キット組み立て)車両の細密化には目を見張るものがあり,その細密化は運転のためのゲージと言われたNゲージにも及んでいます.当初私はレイアウトの完成後レイアウトをDCC化しようと考えており,その選択肢としては今のところ市販のDCCに対応した蒸機を購入するしかありません,私は今まで私は車両は自作を行ってきたためあまり市販品の状況には関心はなかったのですが,改めてレイアウトに使用する車両を購入するという目で市販品をみると,DCC対応製品もそれ以外の製品も常時市場に多種の機種が在庫しているとは言えず欧州のメーカーのように向こう1年間の新製品がまとめて発表されるわけでもありません.またてい新製品が発表されても発売日未定の製品が少なくありません.レイアウトに似合う好みの車両を新たに入手する目処は全く立てることができないと言うのが現状です.

それはさておき私は以前の記事でレイアウト上で実感を得るための蒸機の細密度は老舗メーカーのダイキャスト製品ではないかということを述べました.そこで今回は市販品(量産品)の蒸機はどのような方法でその質感と細密感を出しているかについて調べてみようと思いました.とは言っても手元には日本型の製品はありませんので今回は各年代の製品が揃っているMärklin社製の蒸機で外国型の機関区セクションを用いて比較してみたいと思います.日本型レイアウトの紹介記事でありながら外国型車両の話になってしまうこと,ご容赦ください.

外国型レイアウト”ALTENHOF機関区”上に並ぶ入門機(手前側: BR03)とfine detail機(後方:BR50)

下の写真は1998年に発売されたDigital Starter Set (#29845)にアソートされていたBR03です.上の写真の手前側に停車している車両です.機番は1022号機で青色(Steel biue) 塗装の機体です.スターターセットの機関車ですのでディテールは最小限で,異なる機番の黒色塗装機は入門者向けの”HOBBY”シリーズで長年単体販売されていました.スターターセットにはこの機関車の他にディーゼル機(V160)1台,客車3両,貨車4両,レール,分岐器,トランス,デジタルコントローラー(#6021)が同梱されており,それらを別に購入するのに比較して非常に安価なセットです.この機関車の金型は1973年に発売していたBR003等と同じ金型ではないかと思われ方に彫刻されているロゴは旧ロゴで原産国はMade in West Germanyと彫刻されています.手すりや配管は全て型で表現されており別付けパーツは発電機,汽笛,ベル,コンプレッサ程度です.ただ,ダイキャストの肌面は塗装は現在の製品と比較しても遜色なくプロポーションも良好です.

ダイキャスト製BR03.第3動輪のスポーク部が完全に抜けていないのは動輪にギアが取り付けられているため.

余談ですが1974年頃,日本でもダイキャスト製のC62がマイクロキャストから発売されました.TMS誌のマイクロキャストの広告には三井金属の名称があり三井金属ブランドの製品もあるようです.構造は上記のMärklin製の蒸機に似た構造ですが当時のTMS誌の製品の紹介によると空気作用管が別付けであったりロストパーツも取り付けられていると記載されており,単に初心者向けの安価なモデルを狙ったわけではなかったようです.写真を見る限りではキャブ周りの印象が実機と少し異なりますが真鍮製蒸機と並んでレイアウトにいてもそんなに違和感はなかったのではないかと思います.価格は当時の真鍮蒸機と同等で決して廉価版というわけではありませんでした.当時は真鍮製蒸機に一部に樹脂製品が取り付けられていてもそれだけで拒否反応をおこすマニアも多かったため販売数量が伸びなかったのか,当時のSLブームから想定した新規鉄道模型愛好者の増加の目論見が外れ新機種の型投資が回収できなかったのかは知る由もありませんがC62以外の機種が発売されることはありませんでした.かく言う私も当時真鍮製のC62とこのC62のどちらを買うかと聞かれたら真鍮製を選んだ気がします.

下の写真は上記のBR03のレイアウト上のクローズアップ写真です.全体的なプロポーションには問題はないので遠目に見てあまり違和感はありませんが流石にアップで見ると後付け部品の多いBR50に比較して平面的に見えます.欧州の機関区の建物は日本の建物に比較してバロック風の装飾の多い建物も多く,使用するプラキットの線も割と太いため建物に比較しても少し平面的な印象です.余談ですがMärklinの2025年新製品カタログにはこのBR03と同じ(同等?)の型を使用した新製品がビギナー向けモデルとして掲載されています.もちろんDCCデコーダー(サウンド付き)を搭載しており23個のファンクションが装備されています,ただ現在Märklinの標準製品はMärklin Digital(mfx)とDCCの両方に対応していますがこのビギナー向けモデルはDCCには未対応です.リストプライスはVAT込みで329€です.ちなみに同じカタログに掲載されている標準品?のBR01のリストプライスは549€です.

手前側がスターターセットのBR03,奥側が2000年製のBR50

このBR03の各部の詳細を見ると,ボイラーの配管は全てボイラーとの一体成形です,ただ砂撒管元栓等一部ははかなり繊細な表現になっています.この頃の日本型真鍮製蒸機は砂撒管元栓を表現した製品はまだ少なかったと思いますので日本の真鍮製蒸機より細密です..

スターターセットのBR03の3度ドーム付近のディテール

ボイラーの配管もかなり細く表現されていますが外側の配管はボイラーから庇状に張り出しています.当時の日本の蒸機マニアの間ではオール真鍮製の蒸機以外の蒸機は鉄道模型ではないという風潮も少なからずありました.上記のマイクロキャスト製品のこの辺りの表現がどうなっていたかはよくわかりませんが,蒸機の模型はオール真鍮製一択と言う風潮であった当時の日本では「これはおもちゃだ」と感じた方も少なくなかったと思われます.ただ蒸機ではありませんが最近でも欧米ではファインディテールの象徴?として「手すりが別付け(The Locomotive has separaely Grab Irons)」という説明文がよくカタログに記載されています..欧米ではほとんど車両を自分で製作する方は殆んどおらず車両はメーカー製品一択ですがこの辺りの形態には不満を持っている方が少なくないのかもわかりません.

スターターセットのボイラー上の配管.別付けの配管はなし.

Märklin製蒸機の配管が別パーツ化されるのは今から四半世紀前の2000年前後であった気がします.下の写真は2000年に発売されたBR50ですが,金型を全面的に改修し,バルブギアも改良したモデルで新製品の目玉商品としてカタログで大きく扱われている製品です.このモデルではボイラーケーシング上を這っている配管以外は配管をほぼ別パーツ化しています.そのパーツは場所に応じて金属と樹脂が使い分けられており,ボイラーの全長にわたって取り付けられている手すりや配管が並行しているところは金属線が使用され,プラ製部品ではある程度避けられない手すりの波打ちを避けており,この辺りは遠目から見た時に実感を損ねる部分をよく心得て設計しているという感があります,

2000年製のBR50のディテール.自作品にこのレベルのディテールをつけたらもう細密機?

また下の写真のBR03.10(2010年製)の別付け配管では樹脂製のクランク状になっている2本の配管は互いに独立させず間に間隔出しの部材を設ける等,実機の細部の厳密な再現には拘わらない工夫も見られます.

2010年製BR03.10の配管.クランク状配管の垂直部分に両者を繋ぐ部材が見える

一方機種によってはボイラーに沿う配管がボイラーの上部にありますが,比較的新製品でも型抜き方向の関係上,そのような部分はパイプの上面が平らになっています.ただこちらも至近距離で観察しないと殆んど気づきません.

2018年製のBR39. 上部のボイラーに沿った配管はボイラーと一体で上面が平面.

火室からキャブ下に至る配管と運転室から各部への配管はバラキットを使用して細密化加工する際の「見せ場」の一つはですが,下の写真はその部分のBR03.10(2010年製Insider Model)の写真です.細密度としては自作で細密機を作る場合でもこの程度のディテールがあれば細密感は十分出せるような気がしますが,このモデルではそれらの配管は全て樹脂製です.この部分を詳細に見ると見るとエアータンク周りの赤色の配管はエアータンク前方の2本の配管の後ろの運転台側に伸びる細い配管を除いて一体で成形されています.キャブから出る配管も運転台側に伸びる4本の配管を除いて一体成形の部品です.つまりこの部分の配管群は2個の樹脂製パーツで構成されていることになります.樹脂製パーツですのでさすがに線は太いですがレイアウト上ではあまり気になりません.一方それに比較すると全体的に配管が平面的なのが気になりますがレイアウト上で実感を損ねるレベルではありません.最近読んだMärklin MagazinによるとMärklinでは設計時に別付けパーツの取り付けに要する時間(工数)を決めてそれに適合するように別付けパーツを設計しているようです.このようなモデルを見るとメーカーは設計者とレビュアーが模型に要求される細密感と部品の製造における制約事項と許容できる組み立て工数のバランスをとってコストを意識しながら設計していることが感じられます.以前の記事でレイアウト上で実感を得るための細密度は内外の老舗メーカーのダイキャスト製品ではないかと述べましたが「内外の老舗メーカー」と記したのは長年鉄道模型を設計製造販売している老舗メーカーはレイアウト上で実感を得るための細密度とコスト等生産上の制約のバランスをうまく取るノウハウがあるように感じたためです.

最後はテンダーの写真です.BR50のテンダーはプラ製ですが引けは殆んど見られず塗装の艶の調子も揃っていますので違和感を全く感じません.側板の平面製はダイキャストや真鍮製のテンダーに引けをとりません.またこのテンダーのアンダーフレーム(赤色の部分)と台車は未塗装です.また上の写真のエアータンク周りの部品は全て未塗装である一方,ランボードの赤は塗装となっていますがその差はほとんどわかりません.また台車等の未塗装部品には樹脂の質感を感じさせず樹脂の質感を目立たなくする(樹脂の引けを目立たなくする?)何やら微妙な梨地となっています.この辺りもメーカーのノウハウなのでしょうか.

上の細部写真の製品はBR50は2000年に型を改修した製品(完全に新規型ではない),BR03.10は2010年のMärklin Insider Modelで完全な新規型,BR39は2014年に新規型を起こしたM¨arklin Insider Modelの流れを汲む2018年の製品です.これらを見ると多少の差はあるものの2000年に発売されたBR50のレベルでレイアウト上の機関車の細密度は十分ではないかと考えます.Märklinも最近の製品ではさらに細密度を追求するのではなくドラフトと同期する発煙装置や集電不良に伴うサウンドの停止を防ぐためのキャパシタの追加等,細密化ではなく走行時の機能や走行性のアップに注力しているようにも感じます.日本でもこの程度の細密度を持ちサウンドデコーダーを装備したDCC対応の蒸機が各種発売されるようになれば私の製作したレイアウトもDCC制御で大いに楽しめる日が来るのですがそれはいつの日になるのでしょうか.

機関庫前ののBR01(2007年製)とBR39(2018年製)
炭水線のBR03.10(2010年製)

日本型レイアウトの記事が外国型の車両の紹介記事になってしまったこと,ご容赦ください.次回,全体的なまとめを記してこのレイアウトの紹介記事は最終回としたいと思います.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(19) -レイアウトの製作を終えて思うこと(運転という観点で)-

前回はレイアウト上の機関車の細密度がレイアウトを見た時の「実感」にどの程度影響を与えるかについての見解を記載させていただきましたが今回は私がこのレイアウト上での車両の運転した際に感じたことを記載してみようと思います.

レイアウト上のC12.この車両は1980頃ににカツミ模型店のシュパーブラインシリーズのキットを組み立てたものでモーターは当時蒸機に一般的に用いられていたDH−13を使用しています.

私が以前このブログで紹介したMärklin Digitalを使用した機関区のレイアウトセクションの製作を開始したのは2010年頃でしたがこの時点で今回製作した日本型のレイアウト上で走らせようと思った蒸機は一部を除いて殆んど存在していました.それでも当時私が今回製作したような日本型のレイアウトを製作せず外国型のレイアウトを製作した理由は車両の ”走り” でした.当時手元にあった日本型の蒸機は全て1960年代から使用されている駆動機構でモーターも解放式の横型モーターと言われるモーターで走行性能や走行音は満足とはいえない状況でした.それに対し当時手元にあった外国型のデジタル制御の蒸機はコントローラーのノブ位置に応じて車両速度が変化しスロー運転も問題なく行なえます.また2線式のような車両留置用のギャップの設置と切り替えも不要で機関車の駐機も場所を問いません.当時私はそのような点に大きなメリット感じ,”運転を楽しむならこれしかない”と考えて製作したのが最初に製作したレイアウトセクションである”ALTENHOF機関区”でした.その後のMärklin Digitalを含むDCC制御の発展は凄まじく,製作当初は予想していなかった多彩なサウンドやライトの制御が可能となり,その後導入した自動運転機能と相まって狭いレイアウトセクションでも充実した運転が可能になりました.
今回日本型レイアウトの製作に当たっては手持ちの車両で果たして低速でのスムーズな走行が要求される機関区をテーマとしたレイアウトセクション上での運転が楽しめるのかは製作当初から懸念点として把握しており,このレイアウトの一連の紹介記事の冒頭にもその旨は記載させていただきました.そして実際にレイアウト上で手持ちの車両を走らせてみると想像どおり機関車の走る周囲の情景は機関車の走行性能の悪さをカバーするものではなく,このレイアウト上での運転はサウンド付き車両のDCC運転に比較すると残念な結果でした.改めて調整を行っても私の技術力不足もあってかなかなかデジタル制御のような”全速度域での”Silkyな走り”には近づけられません.これは結果的にレイアウト製作前に想定したとおりの結果でしたが,そうは言っても自分が苦労して製作した機関車がレイアウト上で動くのは見ていて楽しく,それはそれで充分楽しめます.ただこれはあくまでも私の私の感覚ですが,機関区のレイアウトセクションでの運転という観点ではレイアウトという舞台を用意して昔苦労して製作した思い入れのある機関車が動くのをレイアウト上で眺めてもそれはデジタル制御での運転の楽しみを凌駕するものではないと感じました.

レイアウト上を走るD H-13モーターを搭載したC62.異音はゴムジョイントの劣化による振動のようです

私が現在使用しているパワーパックはMärklin社のZゲージ用のパワーパックで1995年に購入したもの(ロゴ以外の形状は1972年に初めてZゲージ用として発売されたものと同一)ですので出力が小さくどこまで平滑な直流が出力されているかは不明です.このパワーパックを使用しているのはい今まで使用していたパワーパックが故障したためで,最新のパワーパックやPWM制御のパワーパックを導入すれば少しは現状が改善されるのかもわかりませんが.アナログ運転機器にこれ以上投資する気にもなりません.現在所有している蒸機をDCC化することは駆動系全体の大改造が必要と思われ,私には資金的にも知識的にも技術的にも不可能で,残された方法は既成の日本型DCC車両を導入するしかなさそうです.私の外国型レイアウトを走る車両は全て既製品で自作の細密機ではありませんがそれでも運転は充分楽しめることは経験済みですし前回の記事のようにレイアウト上の運転で実感を得るのに細密機は不要ということは確認できましたので,市販品を購入して運転を楽しむことも考えました.手元にあるMärklin Central Station3はDCCにも対応していますので制御システムのインフラは整っています.しかし一般の(資金力の乏しい?)鉄道模型愛好者が購入できる価格でDCC対応を謳う製品を発売しているメーカーはごく一部(1社?)で常時多くの機種が市場に在庫してはおらず,これから日本でメーカーや雑誌の発行元がが主導してDCCを推進していこうという意欲も全く感じられません.機関車から音を出すだけであればPFMサウンドやカンタムサウンドもありますが,どちらもパワーパックが機関車1台に1基必要でこの世王なレイアウトでは現実的ではありません.このレイアウトの製作を開始した時にはレイアウト完成後,このレイアウトを何らかの形でDCC化しようと考えていたのですが,レイアウトが完成してあらためてDCC導入に向けて検討を開始てもこのような状況は以前と全く変わっておらず,仕事をリタイアし鉄道模型に投資できる金額も限られる中,正直日本型のDCC対応車両を購入する気が起きません.残り少ない人生で今後も鉄道模型を運転という面から楽しもうと考えた時,日本型HOスケールの鉄道模型をDCC制御でPlug & Play的に気軽に楽しむことは少なくとも現時点ではもう諦めた方が良いのではないかとさえ感じている今日この頃です.かつて鉄道模型趣味誌の主筆であった山﨑喜陽氏がご存命であったら今の状況をどのように思われるのでしょうか.

外国型の機関区セクションを走るBR39(制御方式はMärklin digital). バックグラウンドのノイズは発電機のタービン音手動でOn/OFF可能)です.対向するBR01はランニングギアの点検灯を点灯させています.

苦労して製作したレイアウトセクションのまとめとしてこのようなネガティブなことを書くのは正直気が引けたのですが少なくてもこれが現時点における私の率直な思いです.どこかのメーカーからサプライズ発表でもあればまた気が変わるかもしれませんが・・・.もちろん鉄道模型の楽しみ方は人それぞれですので私とは異なった感覚を持つ方も多いと思います.あくまでも私の感じたこととしてお読みいただければ幸いです.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(18) -レイアウトの製作を終えて思うこと(レイアウトの実感と車両の細密度の関係)-

蒸気機関車が活躍していた時代の機関区の製作過程の紹介は前回までで終了し,今回からはこのレイアウトセクションを通じて考えたこと,感じたこと等を述べてみたいと思います.まずはレイアウトを実感的と感ずるためにはレイアウト上の車両はどの程度の再密度があれば良いかを考えてみます.

レイアウト上のC12とD51.完成年は40年以上異なり細密度のレベルも異なります

最近のHOスケール(16番)の市販車両は以前と異なり全体的なプロポーションが一目見ておかしいという車両はなく全体的に細密化しています.中には一見実物の印象と異なるように見えてもよく見てみると模型の形態が正しく私の印象が間違っていたことがわかるというような事例もあります.また自作車両も毎月発行される雑誌を見る限り細密化がエスカレートしており雑誌には「ついているものは何でもつける」という方針?の作品が数多く発表されています.市場ではプラ製品の普及等でベーシックなキットがほとんど姿を消したにもかかわらずディテールアップ用のパーツは新製品が数多く発売されるという不思議な現象も見られます.
かくいう私もかつてバラキットや細密化用のパーツが数多く発売されていた時期に蒸気機関車のバラキットのディテールアップ工作を楽しんだ経験があり,今回日本型レイアウトを製作した動機はこれらの機関車をレイアウト上で鑑賞するというものでした.そこで今回は機関車の細密化はどの程度「レイアウトを実感的と感ずること」に寄与するかを考えてみたいと思います.
機関車をレイアウト上で鑑賞(目視)した時の見え方とは言っても目視した時の感覚は説明が難しいので写真で説明を試みます.下の2枚の写真は今回製作したレイアウトの給砂塔の前に停車するC12とD51でいずれも運転時にレイアウトを見ている距離から撮影したものです.写真のC12は1980年ごろの作品でD51は昨年製作した最新の機体です.1980年製のC12はヘッドライト,主発電機および車警用発電機,汽笛や轍砂管元栓をロストパーツに交換してありますがパイピングはあまり追加しておらず,新たに追加した警用発電機は取り付けただけでパイピングは一切しておりません.またバルブギアはキットのままでロッド類はプレス製のままとなっています.これに対しD51は実物写真を参照して一通りのパイピングは設けてあり,例えば車警用発電機にはマフラー,電線管,スチーム管,ドレン管を取り付けてあります.またバルブギアは加減リンクをロスト製に交換し,一部のロッド類は洋白版で作成し先端をフォーク上に加工して一部に真鍮線を植え込んであります.そしてこの車両がが給砂塔前に停車している2枚の写真を比較した時,私の感覚ではレイアウトの「実感」という観点で両者にあまり差は感じられません.

レイアウト上のC12
レイアウト上のD51

さらに望遠マクロで機関車をクローズアップして撮影した写真が下の写真ですがこちらも上の写真と同様,あまり差がないように感じます.車警用発電機のパイピングの有無はあまり気にならず,バルブギアは光があたる角度によりC12のロッドプレスのダレが目立つ(わかる)場合がありますが,全体的に見た場合それらが実感を損ねる大きなな要因にはなっていない気がします.

望遠マクロでクローズアップしたC12
上の写真と同じ場所から撮影したD51

この辺りの理由について,脳科学の先生であれば理論的に説明してくれそうな気がするのですが私の経験で思い当たることは人間写真や実物を見る時その全体を細部まで把握できていない(見ることができていない)のではないかということです.我々は一度に多くの情報が存在しているものを見てもその中の全ての情報を認識して処理していないということは事実のようです.それは我々が上の写真のような情景を見て実感的か否かを判断する際に機関車の細部はあまり認識しないでそれを判断しているのではないかと思います.
美術館では我々(私)が絵画を鑑賞して評価する時,細部までつぶさに観察してその中にある全ての情報を得てから評価をしていません.第一印象としては過去に好ましいと思った絵画(の記憶)と比較して割と瞬時に判断しています.それと同様,我々は上の写真ような情景を目で見て見て実感的か否かを判断する時には我々は過去に見た機関区の記憶と照らし合わせてその記憶と合致していれば実感的と判断し,その際機関車の細部までは見ていないのではないかと思います.これは今までの記事でも何回か触れてきた故なかお・ゆたか氏が1951年位執筆した”鉄道模型における造形的考察の一断面”の記載内容に通ずるものがあります.氏の書いた記事はどちらかというとモデル=車両と捉えている感がありますが情景(機関車の姿)を過去の記憶と照らし合わせる時,車両+レイアウトに注目するか車両のみに注目するかで記憶に蘇る機関車の「細密度」は異なっているのではないかと思われます.そう考えるとレイアウト上の機関車の細密度は一定の閾値以上であればそれ以上の細密さは判断に影響を与えず,むしろ全体的な印象が実機を正しく捉えているか否かに影響すると考えられます.そしてレイアウト上の車両に要求される許容細密度の閾値は細密モデルと言われるモデルが要求している細密度より低いのではないかと考えます.ただ再密度の高さが実感を損ねているとは感じませんし,レイアウト上に細密どの異なる車両が存在してもあまり気になりません.これはレイアウトを製作した前から薄々思っていたのですが実際にレイアウトを製作したことにより今回改めて確認することができました.そうすると次にレイアウト鑑賞したりその中で車両を走行させる場合,車両にどの程度の細密度が必要になるかということが問題となります.これについて私の大雑把な感覚では国内外のガレージメーカーではない老舗鉄道模型メーカーのダイキャスト製の量産品の細密度が結構参考になるのではないかと感じますが,これについては後日述べてみたいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.次回はこのレイアウト上で車両を走らせた時に感じたことを書いてみたいと思います.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(17) -アクセサリの製作(6:その他のアクセサリ)-

このレイアウトに配置したアクセサリを紹介するにあたり最初に”構想のプロセス”という項題の記事で製作するアクセサリを一覧表で紹介しました.その時はこの表に従ってレイアウト上のアクセサリを体系的に紹介しようと考えていたのですが,私のいい加減な性格が災いし次第に混乱してきてしまいましたので今回は”その他”と題してこれまで紹介していなかったアクセサリを紹介させていただきたいと思います.

これから紹介するアクセサリは上表のものですが,以下にそれらのアクセサリをレイアウト上に配置した時の写真と製作中の写真で紹介したいと思います.
⚫︎ 機関庫内部
下の写真は機関庫を取り外した機関庫内部の写真です.右上のロッカーと戸棚,左下の机は建物の室内に配置したものと同一でケント紙で作成しました.パレット,コンテナボックス,木箱はPreiser製のパーツです.作業台と脚立は自作で真鍮角棒と真鍮線,プラバンより作成しました,2段式の金属製の作業台は真鍮角棒と網目板をハンダで組み立てた自作品です,奥に見えるハシゴはエコーモデル製のパーツを使用しました.脚立は真鍮角線と檜角棒から自作しました.スペースにあまり余裕がないのでこれらを配置する際には車両との接触に注意が必要です.

機関庫内に配置したアクセサリとフィギュア

踏み台,作業台は檜角棒とスライスしたSTウッドで製作しました.ホワイトメタル製のパーツも発売されていますが木製の方が質感もよく費用も抑えられます.

組立てが済んで塗装を待つ木製の作業台

金属製の作業台は真鍮角線と網目板で製作しました.パーツもありますがキット加工等真鍮工作の経験があれば簡単に製作でき費用も抑えられます.

真鍮角線と網目板を使用して自作した金属製の作業台

⚫︎ 乗務員詰所の入り口付近
左から,水道蛇口はエコーモデル製パーツ,流しはケント紙製の自作品です.写真ではわかりにくいのですが流しと入り口の間にエコーモデル製の自転車が置いてあります.スノーダンプはケント紙と真鍮線からの自作品,防火用水の本体(ドラム缶)は檜丸棒とラベル紙帯からの自作,蓋はプラバンとプラ棒からの自作です.建物に立て掛けてある箒はPreiser社製の消防士のフィギュアの同梱品です.

乗務員詰所入口付近のアクセサリ

⚫︎ 砂煎り小屋付近のアクセサリ
物干しは真鍮棒,真鍮帯板,真鍮帯材を用いた金属製で竿は真鍮線,洗濯物はコピー用紙から作成しました.この写真のドラム缶はPreiser製のパーツ,その横の袋もPreiser製のパーツです.

砂煎り小屋付近に配置したアクセサリ

組み立て中の物干しです,真鍮線,真鍮角棒,真鍮帯板を使用し,はんだ付けで組立てました.

製作中の物干し

⚫︎ 油庫・線路班詰所付近
線路班詰所に立て掛けてあるツルハシはエコーモデル製パーツ,その横の石(バラスト)の入ったカゴはPriser製のパーツ(マルシェのじゃがいも?が入っている籠)です.油庫前の消火砂はEvergreen社製の角パイプをスライスし中に砂を入れたものです.

油庫,線路班詰所付近のアクセサリ

⚫︎ 線路班詰所と倉庫の付近
ゴミ置き場の囲いは檜角材(底面はケント紙)による自作,木箱.コンテナ.パレット,ドラム缶はPreiser製のパーツです.その手前のゴミ焼却機はエコーモデル製のパーツを組み立てました,ゴミ置き場にある袋はPreiser製のパーツで,その他のジャンクはプラ角棒等から製作しました.

線路班詰所と倉庫付近のアクセサリ

⚫︎ 気動車燃料補給設備周辺のアクセサリ
消火用砂は油庫の前にあるものと同じものです.ドラム缶はPreiser製です.小屋の前の消火器はエコーモデル製,ポリタンクとホースリールはPreiser製の消防士フィギュアの付属品です.給油用ホースはAWG #30のリード線で先端にPreiser製の消防士フィギュアの付属品の中にあった放水ノズルを取り付けてあります.

気動車燃料補給設備回りのアクセサリ

⚫︎ 機関区事務所付近
機関区事務所付近にはスノーダンプ,ドラム缶を配置し,古枕木にエコーモデル製のハシゴを立て掛けてあります.

機関区事務所裏手に配置したアクセサリ

未塗装状態のアクセサリです.脚立はハシゴ部分を真鍮角線で製作し,台は木製です.机は建物の内部に配置したものと同一です.

完成して塗装を待つアクセサリ

ドラム缶は比較的多く必要でパーツを購入すると高価になりますので当初檜丸棒とラベル紙で自作していましたが,海外サイトのセール品の中にPreiser製のドラム缶がありましたのでそれを購入して使用しました.価格は30個入りで6.8€(VAT,送料別)でした.

Preiser製のドラム缶キット.付属しているデカールは未使用

日本ではPreiser社の製品はフィギュアが有名ですがそれ以外にも結構色々なパーツが販売されています.今回は以前製作したレイアウトに使用した時余ったマルシェのキットの野菜籠や野菜が入った袋を砂利運搬用の籠やごみ袋に流用しています.

砂利を入れた籠やゴミ袋はPreiser製のマルシェのキットを流用

⚫︎ 機関区入り口の門
機関区入口の門はEvergreen社製のプラ製角棒・丸棒から作成し,真鍮線と割りピンで作ったヒンジにより開閉可能としています.

機関区入り口に設けた門扉

塗装前の部品です.ヒンジは門側にL時に曲げた真鍮線,門柱側に割りピンをの受けをもけてあります.

Evergreen社製プラ素材で製作中の門扉

⚫︎ 機関区事務所入口付近
機関区事務所入口付近には植栽を設けてあります.低木はBusch製のオランダフラワーに緑色のターフを接着したもの,草木はNoch製を使用しました.Noch製の草木は日本ではKATOから販売されていますが少し色調が異なる気がします.写真で半分写っている入口のゲートは真鍮版と真鍮線で製作した自作品です.

機関区事務所入口脇の植栽

Busch製のオランダフラワーとNoch製の草木の写真です.これらは日本ではなかなか手に入らないので以前海外の模型店に発注したものです.ある程度数がまとまった場合海外からの購入の方が送料を入れても安価(税金は欧州のVATが非課税となり輸入時に原価(現地価格の6割程度)に10%の消費税がかかります)ですが昨今の欧州の物価高による値上げと円安によりその差は小さくなっています.

植栽には海外模型店から購入した素材を使用

⚫︎ 草木(雑草)
機関区の植栽以外の草木(雑草)は水を扱う設備の付近や人が立ち入らないところに配してありますがあまり荒れ果てた感じにならないように留意しました.

給水塔付近の雑草

⚫︎ 機関庫周り
機関庫と柵の間には車輪とドラム缶を配しました.国鉄の機関区では敷地内にあまり車輪のようなものが無造作に放置されていた記憶はありませんでしたがアクセントとして設置してみました.

機関庫横に配置したアクセサリ

⚫︎ フィギュア
フィギュアは一部にKATO製を使用した他はPreiser製の未塗装品を塗装して配置しました.私は#16325(Railway parsonnel and passengers)というアソートセットを使用しました.未塗装品は1パッケージに120体入っていますが全てが異なる形態ではなく,同一形態のものが同数入っているわけでもないようです.レイアウトには同じ形態のフィギュアを複数配置しています.塗料は主に色のりの良いHumbrol製のエナメル塗料を使用しました.Humbrol製エナメル塗料は色ノリがよく塗膜も丈夫ですが反面乾燥に時間がかかるため作業は気長に行うことが肝要です.Humbrol製のエナメルは使用前に十分に撹拌することが必要ですが棒状のものではいくら時間をかけて撹拌しても不十分で筆の穂先を容器のの壁面に擦り付けるような形でで十分撹拌することが必要なようです.

レイアウト上に配置したフィギュアは一部にPeriser製の未塗装製品を塗装して使用

塗装はまず肌の部分から開始します.

フィギュアの塗装はまず肌の部分から開始します

その後髪の毛(黒),ヘルメット(黄色),作業服(紺色),作業ズボン(紺色または濃灰色),シャツ(白),道具(黒,黄色等)の順に塗装していきます.以前一般人を塗装した時には洋服のカラーコーディネートに気を使いましたが鉄道員の場合は使用する色が限られているのでその点は簡単です.

道具部分の塗装を残す状態のフィギュア.ランナーから切り離すのは最後の工程

⚫︎ アクセサリの配置
以上でレイアウト上に配置したアクセサリの紹介を終わります.最後にこれらのアクセサリを配置する際に留意した点について述べてみたいと思います.
これらのアクセサリを作成する際,何個製作するかは実際にそれらのアクセサリを配置する場所を決めて数量を決めますが,製作の際には失敗時の予備を含めて多めに製作したものもあります.一方実際に想定した場所にアクセサリを配置すると違和感を感ずる部分もありました.このような時には構想にはあまり拘らずに適宜修正を加えました.また製作したアクセサリを全て使用することを優先することは絶対に避けた方が良いと思います.全てのアクセサリはそこに存在する必然性が必要であるということを忘れずに配置を決めていくことが重要だと考えます..

以上でレイアウト上に配置したアクセサリの紹介を終わります.今回でレイアウト各部の紹介は終了し次回以降はレイアウトを製作しての書簡等を述べてみたいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(16) -アクセサリの製作(5:機関区の設備)-

蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(15)でアクセサリの一部を紹介した後,諸般の事情でこのレイアウトに関する紹介を長らく中断してしまいましたが,引き続き(16)としてレイアウト上のアクセサリの紹介を続けさせていただきます.今回は下の表に示す機関区設備のアクセサリを紹介したいと思います.

⚫︎ 構内踏切
踏切板は檜角棒です.幅は両側にレールを取り付けた時の幅がNMRAの規格(最小値)である14.4㎜より小さくなるように決定します.私は余裕を見てレール取り付け後の幅が12-12.5㎜になるように踏切板の幅を決めました.檜角棒は所定のサイズに仕上げた後ラッカー塗装し,Humbrol製のエナメルで塗装したCode70レール(IMON \Shinohara製)を取り付け全体をIndian Inkでウエザリングした後,ゴム系接着剤で所定位置に固定しました.接着は全てゴム系接着剤で行っています.

製作中の構内踏切用パーツ
完成した踏切板

取り付け後,踏切板が走行用レール高さより高くなっていないことを十分に確認します.問題なければ念のため踏切を通過する車両のKadee Couplerの解放ピンが踏切板と干渉しないことを確認して完成としました.

レールに取り付けた踏切板

⚫︎ 転轍器付近の目隠し
実際の分岐器は転轍機とポイントレールの間に切替用の動作機構が存在します.しかし模型の場合はその機構はダミーとなりますので省略し,網目板で製作した蓋を取り付けてあります.このような実例があるかどうかは不明ですが積雪地にはありそうではないかと考えてこの形としました..転轍機の反対側もポイントレールの可動部がレールの外側に突出しておりバラスト散布ができないのでその部分にはSTウッドで作成した蓋状のものを取り付けました.

ポイントレール転換機構の目隠し板

⚫︎ 防護柵
防護柵は2㎜x2㎜の檜角棒を用いて製作しました.踏切部の防護柵とそれ以外の場所の防護柵の違いは長さのみで,それ以外の構造は両者同一です.組立は木工用ボンドを使用しましたがはみ出すと塗装後に見苦しくなるので組立時にはみ出さないよう注意が必要です.取り付けは最も外側の角材の底面に真鍮線を埋め込んで地面に開けた穴に差し込んで固定しました.

油庫の前に設置した防護策

⚫︎ 古レール・古枕木
蒸気機関車が活躍していた頃の機関区では補修用でしょうか,線路際によく古レールや古枕木が置かれていました.古レールは檜角棒で台座を製作しその上に切断したCode83レールを並べてあります.枕木は2㎜x2㎜の檜角棒を使用しましたが少し細い印象です.レールはHumrol製のエナメル塗料,枕木はラッカーで塗装しIndian inkでウエザリングしました.

レイアウトに設置した古レールと古枕木

⚫︎ 運搬用トロッコ
物資運搬用のトロッコは2台製作し短く切断したレールの上に配置してあります.車輪はNゲージ用の車輪を用いて両端の軸を切断した後車軸を中央で切断しパイプを嵌め込んで期間を広げました.本体は1台を台枠のみとし,もう1台は台枠状に木製の床があるタイプとしました.台枠はEvergreen社製のプラ素材,床はSTウッドを用いて製作しています.台枠が露出しているトロッコの台枠上には古枕木を載せてあります.

短く切断したレール上に設置したトロッコ2種

⚫︎ 車両洗浄台
機関区にはディーゼル燃料補給小屋を製作したのでそれに合わせて車両洗浄台も製作しました。イメージは子供の頃から見慣れていた三鷹電車区の人道こ線橋から見える洗浄線の風景です.

参考にした車両洗浄台

洗浄台の構造は鉄製の脚部にコンクリートパネルを渡した構造としました. 脚部はEvergreen社製にのIビームとアングル材を使用してコの字型に組み立てました.

プラ素材で製作中の脚部

通路となる部分は1㎜厚のイラストボードで作成し,1㎜厚のイラストボードを所定寸法(長手方向は脚部の間隔)に切断後、切断前と同じ配列でラベル氏の上に並べ, あらかじめレイアウトに取り付けた脚部に接着しました. 組み立て前に脚部はダークグレー、通路はライトグレーに塗装してあります.

ケント紙で製作中の洗浄台

1960年台にはまだ三鷹電車区のような”都会の電車区”にも車両の自動洗浄設備はなく,洗浄台の上では多くの人々が手作業で車両の洗浄を行なっており,人道こ線橋上からはその作業を間近に見ることができました.この時のイメージを元に洗浄台上に各種のアクセサリを配しています.

製作したアクセサリは左よりホース掛け,水道蛇口と流し,モップとモップ置き.雑巾干しです.一部のホース掛けにはエコーモデル製のバケツをぶら下げてあります.水道蛇口はエコーモデル製ーのパーツ,ホースはAWG#30ケーブル,その他はEvergreen社製のプラ素材やケント紙で製作しました.また洗浄台の下側には真鍮線で製作した水道管を取り付けてあります.ハシゴはEvergreen社製のIビームとプラバンで作成しました.

洗浄台上に設置したアクセサリ

この洗浄台は地方の機関区の片隅にある設備でありそれほど使用頻度は多くありませんので台上にフィギュアは配置しませんでした.

完成した車両洗浄台

⚫︎ 車両への給水設備
洗浄台の反対側には気動車に給水する給水栓を設けてあります.駅にある給水設備は給水コックが地上付近にありますがこの機関区ではもう少し目立つものにしようと考えPreiser社製の消防士のフィギュアの中にあった消火栓を使用して作成しました.ホースは洗浄台と同じAWG #30のケーブルをHambrolのエナメル塗料で塗装したものを取り付けました.

Preiser製の消火栓を利用した給水栓

以上で機関区の設備の紹介を終わります.最近はレイアウトに設置するアクセサリパーツの各社から発売されており今回作成したものの中にもパーツが発売されているものもあります.当然自作したものよりも形が整っていますがパーツを利用するとレイアウトが何か没個性になるような気がしており,使用する気にはなりませんでした.
次回はその他のアクセサリを紹介したいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.

真鍮車体とペーパー車体・自作における両者の比較(3)-まとめ-

前回までの記事ではペーパー車体と真鍮車体において主に各工程の技法の差と得られる印象の差について私の製作した車両を例に紹介してきましたが,ここではそのまとめとしてペーパー車体と真鍮車体を両者俯瞰的に見たときの両者の差と製作時留意すべき点を考えてみたいと思います.
<ペーパー製車体と真鍮製車体の全体的な印象の差>
真鍮製車体とペーパー製車体の間には製作の工程に大きな差があります.前回までの比較では触れていませんでしたが,それはペーパー車体のは塗装前の下地処理が必要であることです.下の写真はディテール加工中のクモニ83とクモユニ82ですがディテール加工開始時点で車体のパテによる隙間埋め,サーフェサーの吹き付けおよび耐水ペーパーによる表面の水研ぎは終了しており車体には真鍮車体でのラッカー塗装の塗膜以上の厚さの塗膜が形成されています.そのためこの時点で窓の周囲等のエッジには適度のRがついています,そのため私は今まで真鍮製車体のように窓等開口部の周囲に違和感を感じてテーパーをつける作業を行なったことはありません.

下地処理が終了しディテール加工中のペーパー製車体

しかし今までの記事で述べてきたように真鍮製車体は糸鋸による切断とヤスリ仕上げだけではエッジがシャープになりすぎる部分があるためエッジにテーパー加工が必要になります.

金属製車体の窓周りのテーパー加工

一方,実物の車体を見ると私が製作している国鉄時代の鋼製車両は鋼体の骨組みに鋼板を溶接し鋼板の接合部やエッジ等をグラインダーで仕上げた後,パテ埋め→下塗り→塗装という工程を経て車体を完成させますので湘南型前面の「鼻筋(pants crease)」のようにデザイン的に配慮された部分を除いて車体にエッジが形成されている部分は殆んどありません.よく車両製作法の解説で「塗装はポテっとならないように塗膜を薄く仕上げるように」という記載を見ますがこの記載の意図は実物で後からつけた部品等のエッジ(に近い)部分は塗膜でシャープさが損なわれないように塗装するようにという意図であると考えられます.ただ車体のグラインダー仕上げされた部分と後付け部品の綾部の状態(隅R,面取りの大きさ)は当然異なります(例えば下の写真の貫通ドア周りのエッジとテールライトケースのエッジ).この観点ではペーパー車体は全てのエッジはサーフェサーを塗装した時点で鋭いエッジとはなっていないためあまり意識しなくても結果的に車体のエッジは違和感がないレベルに表現できていると考えられます.またプレス加工が主体のバラキットではこのエッジをプレス加工のダレで表現していると考えられます.しかし自作した真鍮製車体ではエッジが鋭いため窓周囲のテーパー等にはヤスリによる言わば「エッジのコントロール」が必要になります.
<車体の製作法に応じたディテーリング>
上記のようにペーパー製車体と真鍮製車体では車体の全体的な印象に差があります.そのため実車に取り付けるディテールにもそれに応じた対応が必要になる場合もあるような気がします.下の写真は今回真鍮製車体で製作したキハ55の実物写真ですが,20系や55系気動車は正面ステップに比較し側面のドアの手すりは明らかに太い印象です.

キハ55の先頭部

今回金属車体の20系や55系気動車では正面のステップに直径0.3㎜の線材を使用したのですが,客用ドアの手すりにつける手摺りの線材の直径について結構悩みました.上の写真に従えば手摺りはステップより太い直径0.4㎜の線材を選択するのが妥当であると思う一方,車体に0.3㎜の真鍮板を使用したためドア部の立体感が実物の印象より乏しく,直径0.4㎜の線材を使用すると手摺りの太さが目立ちすぎるような気がました.そのため手摺りには前面ステップと同じ直径0.3㎜の真鍮線を使用しました.その結果手すりが実物より少し細い印象となりました.ただ直径0.4㎜の線材を使用するとやはり少し手摺りが目立ちすぎる気もします.もし同じ車両をペーパーで製作していたら車体の印象がいわゆる「線が太い」印象となり金属製車体比較してドアと外板の段差も大きいため金属車体よりため直径0.4㎜の線材を使用しても違和感は少ないのではないかと思われます.実際に自作車体より厚い板厚の素材が使用され窓やドア周囲にプレス加工によるダレのあるバラキットのキハ22では手摺りに0.4㎜の線材を使用しても少し手すりが太いという印象になるもののもさほど違和感はありません.この辺り,実物の印象を的確に再現するには車体の全体的な印象に応じて車体に使用するペーパーや真鍮版の板厚や使用する線材の最小径を考慮して各部に使用する線材の線径を考慮するというような全体のバランスを考慮した設計が必要です.

客用ドア手すりに直径0.3㎜の真鍮線を用いた真鍮自作車体のキハ52と直径0.4㎜の真鍮線を用いたバラキットのキハ22

余談ですがこれは市販の製品にも言えると感じます.ここからは私の私見ですが,量産品を長年手がけてきた老舗メーカーは国内外を問わずこのバランスを考慮した車両の印象表現が上手いのではないかと感じます.下のMärklin製の蒸機の別付けのパイピング(樹脂製)の直径は実測で約0.4㎜と太いですがそれに応じて周囲のパイピングの線径も考慮されているせいか印象はやや線の太さを感じるもののそれほど違和感がありません.樹脂やダイキャスト製の車体では例えば窓の庇の断面部の厚さも実機より厚くなりがちですのでそのような部分とのバランスも考慮して設計されているのかもわかりません.広辞苑によると細密の語釈は”細かい描写で精密に対象を描く”ということのようですのでこの製品はいわゆる”細密モデル”とは言えないのかもわかりませんがレイアウトで走行させた時の印象は十分”ハイディテール感”のあるのモデルと言えると感じます.

Märklin製BR39のCAB周りの配管

またMuarklin製品では細密感を出すために,形状をそのままスケールダウンすることに固執していない部分(部品)も見られます.例えば下の写真のボイラーに別部品として取り付けられているサンドパイプは一見細く見えますがよくみると断面は円形ではなく奥行方向に厚みがあります.また写真ではわかりにくいのですが奥にボイラーと一体整形された作用管等の配管が通っている部分は各々のパイプの間に隙間があり下を通っている配管が見える一方,ボイラーに何もディテールがない下側の部分では各パイプの間の隙間がなく一体となっておりボイラー表面は見えませんがレイアウト上では全く違和感がありません.この辺りは量産性とコストを考慮した合理的な設計がされていると感じます.このように部品の実物通りの形状に拘らず全体的な印象としての細密感を上げる設計手法は自作する場合でも参考にできる点があると思います.市販品で広辞苑の語釈に近い細密モデルを作ろうとした結果が現在日本で市販されている一般的な会社員の月収に匹敵する(上回る?)価格の真鍮製モデルで,これはもう一般人が楽しむ鉄道模型の範疇を逸脱している気がします.

Märklin製BR85のサンドパイプ

<完成までに要する時間の比較>
次にペーパー車体と真鍮製車体で完成までに要する時間を比較してみます.完成までに要する時間を作業に着手してから完成までにかかる時間と定義すると両者の内訳には大きな差があります.完成までに要する時間を1台の車両が仕掛かり中である時間と考えるとその時間の中には製作者が窓抜き等で実際に作業している時間と接着剤の乾燥待ちのような作業は行なっていない時間があります.これを「加工時間」と「待時間」と呼ぶことにすると真鍮製車体とペーパー製車体では両者の比率が大幅に異なります.この比率はは工場で製品を生産する場合は生産の効率性を左右し最終的には製品原価に影響を及ぼす場合がありますが,個人が製作する模型ではこの比率を考慮する必要はありません.そのため純粋に時間だけで比較すると真鍮製車体は最終工程の塗装を除いて作業開始から完成までの時間はほぼ加工時間で占められるのに対し,ペーパー車体では各々の工程の間に待ち時間が発生します.例えば真鍮製車体の場合,罫書き→外形仕上げ→窓抜き(切り抜き・ヤスリ仕上げ)→曲げの工程のほとんどが加工時間であるのに対し,ペーパー車体では罫書きと窓抜きの後車体を箱状にする工程では,屋根板を使用した場合には屋根板の接着と乾燥乾燥待ち,パテによる隙間埋め後のパテの乾燥待ち(場合によっては複数回),サーフェサー塗布後の乾燥待ちと表面の水研ぎ(複数回)というように待ち時間が必要な工程が多数あります.

パテで隙間を埋めて木材の目止めを行っている途中のクハ711

このように各工程を待ち時間を含めた時間で単純に比較するとペーパー車体は金属製車体に比較して工程にかかる時間が長くなるのではないかと考えられます.勿論真鍮製車体の製作において罫書きから髷までを一気に行うことは理屈上では可能でも集中力が続かないという属人的な要因もありますし,ペーパー製車体でも待ち時間を夜間とすれば実際に感じる時間は短いと感じます.そう考えると1両の車両を製作する場合はどちらを短いと感じるかは単純に比較できず,時と場合によるというのが実際のところではないかと思います.ただ,電車の編成物等複数の車両を一度に製作しようとする場合は「待時間」は製作する車両数が増えてもほとんど一定です.そのため製作の効率は1台のみ製作する時より向上します.また罫書きや窓抜き等の「加工時間」はペーパー製車両は金属製車両に比較すると短い傾向にありますので,複数の車両を製作する場合には完成までの時間は短くなる(短く感じる)可能性があります.一方真鍮製車体は完成までに時間がほぼ加工時間のため,完成までにかかる時間は製作する両数にほぼ比例します.また真鍮製車体ではペーパー車体では待ち時間に充当できる夜間や仕事をしている時間は加工時間に充当できませんので短期間で車両を完成させようとするとかなりの集中力が必要で失敗の確率も高くなります.思えば真鍮製バラキットが発売されその利用が進む以前,車両を自作するモデラーの中では機関車は金属製,客車はペーパー製というような風潮があったような気がします.冒頭にひとまず効率性は考えないで比較すると述べましたがこれはもしかしたら多数の車両を製作するときにはペーパー車体の方が効率的に製作できると思われていたのかもわかりません.ただ当時は機関車に対して客車はディテールを簡略化してもよいという考えもあったと思います.しかし現在ではペーパー性車体に要求される細密感は当時よりも上がっていますので現在は決してペーパー製の車両が金属製の車両に比較して簡単に製作できるとはいえません.そのため結局どちらの製作法を採用するかはそれぞれの製作法の特性を踏まえて決めることが必要で,製作にかかる時間をどちらの製作法を採用すべきかという判断基準とすることはあまり意味のないことのように思えます.これは趣味に効率性の追求は不要であるという趣味の本質的な部分にも通じているように思えます.
<製作にかかる費用の比較>
次に真鍮製車体と金属製車体の製作にかかる費用について比較します.車体を車体(側板+屋根)と定義して費用を比較すると真鍮製車体は車体用真鍮板,補強用アングル,床板で¥2,000弱と思われます.屋根板を使用したペーパー車体では用紙は数10円,屋根板が¥700程度,下塗り用にエアゾール式のサーフェサーを一本用意するとそれが¥800程度ですのでプラバンで製作する床板を含めて費用は¥1,500強でないかと思われます.ペーパールーフでは屋根板を使用しませんので¥800強となります.すると両者の差は¥500-¥1,000程度になります.この差を大きいと見るか小さいと見るかは人それぞれと思いますが,真鍮製車体がペーパー製車体より何倍も費用がかかるということではありませんので通常費用の面から真鍮車体を諦める必要はないと思います.ただし工具等への初期投資は真鍮製車体を製作する場合少し高額になります(¥20,000程度?)
<最後に>
かつて市場に多数あったベーシックなバラキットはすでに製造されておらず,かつて販売されていたバラキットを入手するには市場で委託品や中古品を探すしかない状況でバラキットを使用して気軽に真鍮製の車両を製作することはなかなか難しい状態です.ただ市場にはまだディテールアップ用のパーツは数多く存在します.バラキットを組み立てた経験のある方でしたら金属車体の自作はさほどハードルが高いとは思いませんのでもし今後真鍮製車体の製作を諦めてペーパー車体の製作を検討している方がいれば真鍮製車体の自作も選択肢になると思います.その一方初期の気動車の”バス窓”のHゴム表現や急行型電車に代表されるユニットサッシの表現は自作車両では非常に手間がかかりまた技術力も要求されるため私もまだ手がつけられていない状況です.バラキットが通常ルートで手に入らない現在でもパーツメーカーからはいまだに細密化パーツが続々と発売されていますが,メーカーには細密化パーツの他に例えばエッチングを用いた気動車バス窓のHゴム,初期の気動車に用いられていた気動車のプレスドア,国鉄車両に幅広く用いられたユニットサッシの枠等真鍮板による車体製作のハードルを下げる(自作車両の製作方法の選択肢を広げる)パーツを販売してもらえたらと思います.

自作車体のクハ711(前面はパーツ加工)とペーパー車体のクハ711 900番台

最後までお読みいただきありがとうございました.

真鍮車体とペーパー車体・自作における両者の比較(2)-細部の表現-

<先頭部(おでこ)の製作法>
私が製作しているいわゆる”国鉄型”の車両の先頭車の一部はいわゆる”半流線型”と言われる車両で先頭部には通称(俗称?)”おでこ”と呼ばれる曲面部があります.まずはこの部分の製作法について両者を比較してみたいと思います.ペーパー車体の場合,私はこの曲面部はバルサ材で製作しています.屋根板を使用した車体は屋根板の先端部を局面に仕上げる方法もありますが私はより加工しやすいバルサ材を使用しています.

前頭部の曲面をバルサブロックの成形で作成したペーパー製車両

上の写真はペーパー製の車両で前面の曲面は全てバルサブロックを接着して成形したものです.屋根は157系の車体のみペーパールーフで製作し,その他の車両は屋根板を使用しています.曲面部は157系のように曲面のみで構成される車両は比較的簡単に製作できますがクモヤ791やクハ711のようにヘッドライトや行き先表示板がある車両はバルサブロックに穴を開たり切り欠いたりして別パーツを取り付けた後隙間をパテ埋めして仕上げる必要があり手間がかかります.ただ最近では各種のパテが販売されていますのでその中から適切なものを選択すれば以前に比べれば比較的容易に製作することが可能です.

前頭部の曲面を加工中のクモヤ791

一方真鍮車体ではこの曲面はプレス製パーツを使用しない場合には前面側に設けて切り込みを入れながら曲面部を製作し,隙間をハンダで埋めて整形する方法で製作しています..ペーパー製車両に使用するパテとは異なり隙間に盛ったハンダは一瞬で固化してヤスリ加工が可能になりますので整形は比較的短時間で行うことが可能です.ただ展開時の寸法が適切でないとヘッドライト等の取り付け時にハンダが溶解して再成形することになり非常に手間がかかります.また気動車や機関車の曲面の形状は比較的単純ですが電車の前頭部は屋根の局面の開始点が気動車より後方にありますので展開寸法の決め方が複雑になります.私はまだ電車の前面の曲面を製作したことはありませんが,今後製作する場合には何らかの木型のようなものが必要ではないかと考えています.

前頭部を加工中のキハ52

.私が作成した真鍮製車体の先頭部の中には市販の前面パーツを使用した車両がありますこの方法は金属車体で先頭部を製作する場合,最も簡単な方法ですが,前面パーツは最近はほとんど入手が不可能です.車両の前面は作品を鑑賞する場合は最も注目される部分の一つですが市販のほとんどの製品が自社の完成品やキットのパーツを分売しているものですのでそこにパーツをそのまま使用すると,前面が市販の製品(キット)のイメージになってしまいます.

手元にある未使用の前面パーツ.EF65はつぼみ堂製,湘南型は多分いさみや製,東海型はカツミ製

今まで紹介した金属製車両(下の写真)ではキハ25とクハ711にパーツ使用しています.なおクハ711の前面は165系用を改造しています.

キハ25はフェニックス模型店製,クハ711はカツミ製を改造したパーツを使用して自作した金属製車体

パーツを使用する場合を除いてペーパー車体も金属車体も概略の形状を作成して削って形を整えていくという工程は変わりません,ただペーパー車両の場合にはヘッドライトの穴あけ加工を例にとるとば金属穴より精度は劣り周囲にめくれ(ささくれ)が出ますので結構細かい作業が必要で,仕上げ工程はパテ埋め→乾燥→整形の繰り返しになりパテの乾燥待ち時間も発生しますので結構時間と根気が必要な作業となります.
<屋根の加工>
国鉄車両のパンタグラフ搭載車の中にはパンタグラフ折りたたみ時の架線との空間距離確保,小断面トンネル内で本体とパンタ鍵外し機構との干渉を避けるパンタ上昇量確保を目的でパンタグラフ部分が低屋根構造になっている車両があり,この低屋根部分がある車両は屋根部の加工が必要となります.この加工に最も手間のかかるのは屋根板を使用した車両で,低屋根部分を所定の形状に削る作業が発生します.私は彫刻刀で屋根板を削り耐水ペーパーで仕上げていますが特に交直両用電車のような低屋根部分の長さが長い車両は整形に手間がかかります.一方ペーパールーフ車体では低屋根部にT時型の斬り込みを入れて屋根のカーブを変化させます.また金属製の車体では車体の曲げ終了後低屋根部分の屋根の平面となる部分を切り取って切り取った部分に別の板を張って低屋根部分を作成します,屋根板の削り作業と比較するとこれらの工程は比較的短時間で行なえます.

低屋根部分を加工中の屋根板

もう一つ屋根板を使用したペーパー車体で難易度が高いのは気動車屋上の排気管のように屋根板に細かい加工が必要な部分です.これも細かい木工作業が必要で真鍮製車体やペーパールーフ農式のペーパー車体より加工に手間がかかります.

金属車体の屋根に設けた排気出口

<その他のディテール>
その他,車体の直接加工が必要なディテールの加工法を比較してみます,まず車体の空いた点検口ですがペーパー車体の場合私は鉄筆の筋彫りで表現しています.一方真鍮車体の場合には点検口の部分を一度切り抜き裏打ち後蓋部材をはめ込んでいます.ただ私の作例ではハメ込み部の隙間がばらついており私の工作力不足が露呈しています.この作例は比較的大きな点検口ですが,さらに小さいドアエンジンの点検口や非常コックの蓋等はこの点検口より小さく難易度はさらに上がりますので私が製作した車体ではキハ55系の冷却水補給口の蓋も含めて社たの点検口は全て省略しています.
また下の写真のモハ711の機器室は,ペーパー車体では車体に鉄筆で筋をつけて周囲にペーパー製の枠を貼ってあります.一方金属車体では片方の稜に面取りを設けた真鍮角線を積み重ねて整形した部品を車体の開口部に嵌め込み0.1㎜の真鍮板で作成した枠をハンダ付けしてあります.こちらは工作力不足で線が乱れていますが金属製の方が立体的に感じます.また市販のパーツを使用する場合,パーツが真鍮製の場合,ペーパー車体の場合は瞬間接着剤で取り付け金属車体の場合はハンダ付けで取り付けます.ホワイトメタル製の場合はどちらも瞬間接着剤で取り付けています.また下の写真の号車札入れと列車種別表示板入れはどちらもエコーモデル製のパーツを使用していますががペーパー車体への取り付けはサーフェサーで行っています.サーフェサーの量には注意が必要ですが固着後塗装を行えば強度上は問題ありません.

ペーパー製クモハ711 901の車体ディテール
金属製モハ711の車体ディテール

モハ711の屋上機器はペーパー製車体はプラ板を積層したものやEvergreen社製のプラ素材を削り出して製作し,金属製の車体では真鍮版を曲げてハンダで組み立てたものを取り付けています.

金属製モハ711のパンタ周り
ペーパー製クモハ711 901のパンタ周り

上の写真で紹介した金属車体に使用した金属製の自作パーツはペーパー車体にも取り付けることは可能です.ただ私は過去製作してきた車体も含めてペーパー車体に金属製の自作パーツを取り付けたことはあまりありませんでした.その理由を振り返って考えてみるとこれは一連のペーパー車体の製作工程にある意味異質な金属加工の工程を持ち込みたくないという心理が働いていたようです.また金属車体とペーパー車体を比較するとペーパー車体では下地処理の際塗料を塗り重ねることによりエッジのシャープさに差があることは事実でエッジがシャープに仕上がる金属製のパーツの使用にあたっては全体的な印象も考えながら最適な製作法を検討した方が良さそうです.なお,ペーパーの材料特性上ペーパーは構造上ペーパーのエッジが露出するパーツや非常に小さな部品の制作には向きません.下の写真のモハ164の低屋根部のファンデリア用の空気取り入れ口は金属またはプラバンで製作した部品を使用した方がシャープに仕上がりますし,パンタ鍵外し装置のような細かい部品はそもそもペーパーでの製作は不可能です.

ペーパーで製作したモハ164の低屋根部分のファンデリア用ダクト
ペーパーで製作したモハ164のパンタ鉤外し装置

<まとめ>
以上,今まで私が製作してきたペーパー製車両と金属製車両を例に両者の比較をしてみました.今回の記事が車両の製作にあたって何かの参考になれば幸いです.思えば私が車両の自作を始めた1970年初め頃は子供(学生?)向けの模型雑誌の鉄農模型車両の製作法はペーパー製の車両だけではなく真鍮製の車両の製作法も掲載されていました.ただやはり金属加工のハードルは高く,金銭的にも時間的にも比較的手軽にできるペーパー車体の車両製作が主流であった気がします.

”模型と工作”に掲載されていた金属製車両の作り方(1970頃)

ただ,最近ペーパー製の車両と金属製の車両を製作してみて改めて思うのはペーパー製車両の製作はそれほど簡単なものではなく紙の加工だけでなく木工の技術や金属加工の技術もある程度のレベルの工作が要求され,一概にペーパー車体の方が作り易いとは言えません.どちらを作り易いと感じるかは工作力や経験だけではなく自身の性格も関係するような気がします.またどちらを選択するかにあたり金属加工時の切粉の処理や騒音,ペーパー車体製作時の下地処理用塗料の臭気等,周囲の環境や自分自身の身体への悪影響も配慮すべき項目です.シンナー等の有機溶剤は体に有害なものということは広く知れ渡っていますがハンダも鉛フリーハンダ以外は有毒ガスが出ますので注意が必要です.
以上,最後までお読みいただきありがとうございました.

真鍮車体とペーパー車体・自作における両者の比較(1)-耐久性・窓抜き・曲げ-

今まで私は主にペーパー製車両の紹介をしてきましたが,最近久しぶりに真鍮製車体の車両の自作も行いました.そこで今回は両者を各部の表現のしやすさと工作の難易度の観点で比較をしてみたいと思います.なお比較に当たっては優劣をつけるのが目的ではなく,今までの工作の経験に基づき両者の特徴をできる限り客観的に比較してみたいと思います.なお,私の工作レベルは経験だけは長いものの雑誌に発表されているような作品のレベルには遠く及びません.あくまで特に器用でもない私がかつて雑誌等に掲載されていた製作法の解説記事とほぼ同一の方法でペーパー車体と真鍮車体を製作した場合の一例になりますのでご承知おきください.
⚫︎ 車体の耐久性
両者の耐久性を比較すると当然金属車体には反り等の経時的な形状変化は発生しません.一方ペーパー車体の反り等の変形が懸念されます.しかし経験上はそれほど心配ない気もします.下の写真は1980年前後に私が製作したペーパー車体ですがそれから約40年経過した今日でも車体に大きな反りや裾絞り部等の変形は見られず,表面も製作時の状態をほぼ保っています.ただしこの車体は40年間使用していた(時々走らせていた)車体ではなく30年ぐらいは走らせず箱に入れて保管していた状態です(緩衝材には包んでいません).

約40年前に製作したペーパー車体の現状.ただし使用は10年ほどで以降は箱に入れて保管しておいたものです.

これらの車体は屋根板を使用していないため屋根板を使用して製作した車両の耐久性は不明ですが,車両に使用している当時市販されていた木製の床板に特にヒビや狂いなどはなく現在でも車体にしっくりとはまります.一方ペーパーのエッジ等には写真に見られるように雨樋や妻部等,用紙の断面が露出しているところで紙の層が剥がれてしまっています.これらの車両は30年以上箱の中で保管されていましたがもしこの期間使用(運転)し続けていたら破損の機会はかなり増えるとともに修復にも手間がかかると考えられます.このようにペーパー車体の方は金属車体に比較してより丁寧な扱いが必要で,破損を防ぐため紙の層が露出する部分は瞬間接着剤を染み込ませて固める等の対策をしておいた方が良いと思われます.一方金属車体は製作当時の状態を長年保てるかというとそうでもありません.下の写真は1985年ごろに製作した車両ですが,塗装面が局部的に荒れてざらついてきています,またシミ状の斑点も認められます.

約40年前に製作したEF64の塗装面.塗装の剥がれはないものの表面がかなり痛んできています.

一方ペーパー車体の表面にはこのような表面の荒れは一切見られません.ほぼ製作時の状態を保っています.

この車両を製作した当時はまだサーフェサーのスプレーなどなく模型店で広く販売していた「豆ラッカー」という名のラッカーのラインナップにあったサーフェサーを筆塗りしています.

この金属車体の表面の荒れは当時の下地処理(車体の洗浄)が不十分であった可能性があります.当時車体は食器洗い用の粉状のクレンザーで汚れを落とし(磨き),食器洗い用の洗剤で脱脂をしていたと記憶していますが.表面の汚れ(酸化膜)が十分落ちていなかったことが考えられます.このあと1990年頃に製作した車体では工程にトイレ用洗剤による洗浄工程を追加し,下塗り塗料をマッハ模型製のエッチングプライマーから同社製のシールプライマーに変更しましたが,こちらは40年近く経った現在でも状の写真のような現象は発生していません.現在は刺激の強いトイレ用洗剤は使用せず,模型店で入手できる真鍮用洗浄剤を使用していますが,このような化学的処理による洗浄工程を追加する等,適切な下地洗浄処理を行なえばこの問題は改善できているという可能性があります.

1990年ごろに製作した客車の現在の塗装面

一方マッハ模型製のエッチングプライマー(緑色の液体)を使用した車体は塗膜の局部的な荒れはなくても全体的に気のせいか表面がざらついているように感じます.ただ当時塗装は手動式の「ハンドスプレー」を使用していましたので塗膜の厚さがエアブラシによる塗装とは大きく異なっている可能性があります.またエッチングプライマーはいわば化学反応で塗膜の食いつきをよくする塗料ですので塗布量や上塗り塗料の膜厚等の塗装条件がその後の塗膜の状態維持に影響を与えるのかもわかりません.模型店で販売されている製品はどこかの塗料メーカーの製品を詰め替えていると思われますが,塗料メーカーのWEBサイトを見ると使用条件は結構細かく規定されているようです.

1981年にバラキットを組み立ててエッチングプライマーを塗装後ラッカー塗装した客車の現在の状態

このように金属車体も手荒に扱えば車体の変形はなくても塗装が禿げてきますので取り扱いに注意が必要です.金属車体の場合は一度塗装を剥がして再塗装もできますが,上記のエッチングプライマーは時間が経つとアンカー効果のせいかシンナーにひたしても容易に剥離できず耐水ペーパー等で機械的に落とす必要があり再塗装には結構手間がかかります(逆に考えれば塗料と素材を密着させる大きな効果があるということかもわかりません).最近は密着バインダーという名称の下塗り剤が販売されていますが,こちらは素材との電位差を利用して塗料と素材の密着性を上げているようで,詳細はよくわかりませんが上記のプライマーとは塗料と素材表面の密着性を上げる方法が異なるようです.私は最近このタイプの下塗り剤を使用しています.効果はまだよくわかりませんが模型用に販売されているものも大手の塗料メーカーの製品のようですので正しい条件で使用していれば問題発生の可能性は少ないと思われます.またアンカー効果がないと謳ってますのでもしかしたら再塗装の際の剥離はしやすいのかもわかりません.いずれにしても劣化時の現象は違えどペーパー車体も金属車体も塗装時に適切な処理を行い丁寧に扱えばえば実用上は十分な耐久性があると考えられます.ただ繰り返しますが破損による廃車を防ぐためにはペーパー車体の方がより丁寧な取り扱いが必要なようです.
なお真鍮車体とペーパー車体の比較ということからは少し脱線しますが,塗装面の経時的変化という意味ではウエザリングにも注意が必要です.下の写真は1980年代前半に製作したEF65の屋根上です.当時の実物車両はパンタグラフのスリ板の材質の影響か使用しているグリースに影響かはわかりませんが,屋上には黄土色の汚れがあり,特に長距離運用に就ている機関車でその汚れが顕著でした(国鉄の赤字拡大により洗浄周期が伸びていたのも理由かもわかりません),そのため当時製作した車両は黄土色のパステルで屋根に結構きつめのウエザリングを施たのですが,カビか埃の影響かは不明なものの現在ではその表面が非常に見苦しくなっており,これを元の状態に戻すには再塗装が必要だと思われます.パウダーによるウエザリングはエアブラシ塗装に比較すると非常に簡単ですが使用する粉体には注意した方が良さそうです.

1982年頃に塗装,ウエザリングをおこなったEF65PFの現在の姿

⚫︎ 各部の表現
<窓とドアの表現>
まずドア部分ですが下の写真のペーパー製165系は約0.25㎜厚のケント紙を2枚重ねて抜いたたドア開口部にドア部材を接着しています.金属製の711系は厚さ0.3㎜の板にドア部材をハンダ付けしていますが,前回の記事で紹介したようドア開口部内側にも面取りを施して板厚の薄さを補っています.実物のドアは開口部周囲にRがついており引き戸と開口部の間には隙間があるため実物を見た際には陰影が目立ちますが,模型の場合はその辺りは長年あまり問題にされておらず,製作方法(得られる結果)では両者にさほど差はありません.もしドア周囲の形状を正確再現しようとするのであれば開口部周囲に面取りをつけやすい金属車体の方が簡単に形状を再現できると思います.思えばこれまで私が見た量産品でドア部分尾表現にこだわった製品はあまりみたことがなくドアの開閉が可能なHOスケールの製品も見たことがありません.駅に到着して発車するシーンをレイアウト上で再現する場合でも車両のドアは閉じたままです.私の記憶では10年前後前にMärklin社のRail Carでドア部に液晶画面が嵌め込まれておりドアの開閉を画像で表現する製品を見た記憶があります.ただ海外の製品でもデジタル制御でパンタの上下ができるようになってもドアの開閉がメカ的にできる製品は出現せず,上記の液晶による方式もその後見かけません.自作でもは開閉機構が複雑で編成ものでは数多くの開閉機構が必要となるため私のようなものが自作するハードルは高いと思われます.我々ユーザーも「実感」を語る中でドアの開閉はタブー視している面があり,細密化の中でそれに伴いドア部は昔ながらの表現方法が続いている気がします.

ペーパー車体のドア周りの一例
前の記事のキハ55と同じ加工を行った金属製711系のドア周囲.使用した素材の板厚は0.3㎜

<窓部の表現>
私が車体に窓を作る時間を比較するとペーパー車体では半日もかかりませんが真鍮車体ではどう頑張ってもやすりがけ作業を含めて半日以上はかかります.窓抜きをするだけであれば作業時間を考えると圧倒的にペーパー車体の方が時間はかかりません.ただ窓の隅にRがついている車両ではペーパー車体には特有の難しさがあります.私がペーパー車体の自作を始めたのは1970年ごろでしたが,その頃から現在までペーパー車体の窓の角Rは丸ノミで抜くのが一般的で最近では鉄道模型の窓抜き用に特化した製品も発売されています,

TMS誌に掲載されていたペーパー車体の製作法,当時から窓角のRは丸のみを使用することが解説されていました(1965年6月号)
鉄道模型用に販売されている丸ノミ

一方ペーパー車体では直線部はカッターナイフで切断します.この場合,カッターと丸ノミで刃先の角度が異なること,直線部とR部で紙の繊維の切断方法が異なる(直線部はカッターを引きながら切断するのに対しR部は紙の繊維を表面と垂直方向に押し切る)ため,両者の断面に微妙な差が生じます.また直線部とR部が滑らかに繋がるようにするために丸ノミでの切断時にはノミの慎重な位置決めが必要で,特にノミによる曲面部が直線部より外側にはみ出すと修復が難しくなります.真鍮板を窓抜きする場合は糸鋸作業で罫書き線を外側に逸脱しなければ(しないことに注力すれば)ヤスリ仕上げで直線部とR部を滑らかに繋げることができますがペーパー車体では窓一つ一つで丸ノミの正確な位置決めが必要になります.この作業は慣れればそれほど失敗することはありませんが数が多いので作業時には集中力の維持が必要で多少のばらつきが生じます.上の写真の165系でも窓の左下にRが直線部とスムーズにつながっていない窓があります,私はこれまでの真鍮車体の製作で窓抜き時に切断部が罫書き線からはみ出してでGame Overになったことはありません(罫書き線からの逸脱が原因で窓間隔を調整したことはあります)がペーパー車体では製作を再開した直後は失敗による作り直しが多発しました.このようにペーパー車体の窓抜きは一見簡単そうですが窓隅にR のある車両の窓抜きは侮れません.窓抜き作業に必要な集中力は一瞬で結果が決まるペーパー車体の窓抜きの方が必要であるような気もします.
<屋根の形状>
真鍮製の車体は屋根と側板を1枚板から製作するのが一般的です.一方ペーパー製の車両では屋根の製作法には金属車体と同様側板と屋根を一体化して曲げる”ペーパールーフ方式”と屋根板を使用する方法があります.このうち同じ一枚板から曲げる金属車体とペーパールーフを比較するときちんとした当て板さえ用意すれば金属車体の方がある意味簡単で綺麗に曲げることができる気もします.その理由は多分素材の「内部構造」に依存していると思います.金属は素材が均質で曲げた際には両側の表面(内側と外側)に引っ張り力と圧縮力が働きその力がバランスした面(圧縮力も引っ張り力もかからない面(中立面))で曲がりその位置は一定です.しかし紙は繊維質が絡まったものですので紙の種類,含水量(作業時の湿度)や力のかかる方向により変形量が異なります.そのためペーパールーフ方式では曲げ時に紙の目(繊維が並んでいる方向)を曲げ線と並行とし,紙の繊維の方向と並行として裏に筋を入れて曲がる位置を一定にして曲げ作業を行っても材料が均質でないという根本的な特性は如何ともしがたくどうしても曲げに乱れが生じてしまうのではないかと思われます.ペーパールーフで製作した下の写真のサロ157にも髷の乱れが見られます.もちろん習熟度や作業の手順により綺麗な曲面を得ることは可能ですが紙の場合上記のように紙の種類や湿度の影響もありますので慎重な作業が必要です.一方金属車体は適切な曲げ時当て材を製作し,それに沿って曲げれば板は理屈通りの位置で曲がりますので曲げが均一となります.なおどちらの材質も中央部の曲げは手で曲げる必要がありますが,金属車体でも力はいるものの下にゴム板を敷いて曲げ力(押し付け力)を分散しながら曲げれば比較的容易に所望の局面を得ることができます.一方市販の屋根板を使用する方式は比較的簡単に綺麗なカーブを得ることができますが種類が限られていること,木材の目止めを行う工程が必要で手間がかかることが弱点です.ただ昔と比較すれば現在では下塗り用の塗料や目止め材は各種の製品が販売されておりますのでその中から適切なものを選択すれば以前よりは作業がやり易くなっているような気がします

ペーパールーフ方式を使用したペーパー製のサロ157
真鍮製車体のモハ711
屋根板を使用したペーパー製のクハ711 901

<車体の裾の曲げ>
私は車体の裾絞りはペーパー車体の場合は折り曲げ線に裏側から鉄筆でスジをつけたのち定規で抑えて曲げ起こしています.一方真鍮車体では裏への筋彫りは施さず曲げ部に両側にあて木を当てて曲げています.

裾の曲げを行っているモハ711

ペーパー車体の場合下の写真のように下手をすると鉄筆でつけた筋の部分に稜線が現れてしまい実感を損ねます.正直この曲げは私には難しくいまだに満足のいく結果はなかなか得られていません.一方真鍮車体の方は稜線部をエッジのあて木に挟んで曲げただけですが比較的良好な結果が得られています.もしかしたらペーパー車体も金属車体と同じ方法で曲げれば良い結果が得られるのかもわかりませんがこの方法はまだ未確認です.

ペーパー製のクハ711 901の裾曲げ部.稜線が目立ってしまっている.
上の写真の方法で裾曲げを行った金属製モハ711の車体

以上,車体製作の基本工程の抜き・曲げ作業についてペーパー車体と金属車体の工作の留意点と結果を私の作品を例に紹介してみました.何かの参考になれば幸いです.これは私の感想ですが実際に作業をしてみるとペーパー車体は手軽にできるように思えますが良い結果を得るためには慎重な作業を要求されるところがあります.一方金属車体は適切な治具や工具を製作して作業すれば均質な車体が量産できるような気がします.
次回は細部の工作について両者を比較してみたいと思います.最後までお読みいただきありがとうございました.

真鍮板から作った車輌 (2) : キハ55・キハ26(キロハ25)・キハ60

完成した準急(急行)用気動車3連

前回紹介させていただいた真鍮板から自作したキハ25・キハ52は私にとっては久しぶりの真鍮板からのスクラッチビルドによる車両製作でした.真鍮板からの車体の製作は30年以上前に一時期行ったことがありますが,製作開始時に手元には当時製作した車両が数両あったものの具体的な製作過程の記憶は殆んどなく,そのためキハ25・キハ52の製作にあたっては過去にも参照した雑誌の真鍮製車体の製作法の記事を頼りに製作を始めました.しかしその製作を開始した時点では果たして自作でバラキットを組み立てたレベルの車両が真鍮板から製作できるかについては全く見通せず,早く完成させて結果が見たいということもあり記事の製作法の内容のままかなり急いで製作を進めてしまった感があります.結果,何とか鑑賞に耐えられるレベルの車両は製作することができましたが多少の課題も発生しましたのでその製作結果を踏まえてキハ25.キハ52と共通点も多いキハ55を代表形式とする準急(急行)用気動車3連を製作しました.そこで今回その車両と製作過程の変更点を紹介させていただきます.

<型式の選択>
キハ55をはじめとした準急用気動車は軽量化を目的としたキハ17等の小型車体から標準サイズの車体へ移行していく過渡期に製造されたため車体には色々な形態があります.具体的には1956年製の1-5は車体が大型化されたもののその他の部位はキハ17の面影を残し,妻板側稜線にもRがつけられた車体が登場当時の姿で.その後1957年にタイフォンの位置や前面窓サイズが同時期に製造が開始されたキハ20と同一となり,その際妻側のRも廃止されました.さらに1958年にはいわゆる”バス窓”が電車と同じ1段窓となった100番台を名のる車体となりました.このように準急用気動車はわずか3年の間に印象が大きく変化していきますが,最終的に機関をはじめとした下回りは改造により全て同一となり,そのため保守作業に大きな支障がなかったせいか後年になっても初期ロットの車両が廃止されることはなく,全てのタイプの車両を80年台まで各地で見ることができました.また元々の用途が準急・急行用のためキハの他に窓配置が異なるキロ,キロハが存在しており,これらの車両も普通車に格下げされて80年代始めまでその活躍する姿を見ることができました(キロハは1975年位まで).そのため私が今まで製作した車両等が活躍していた年代にはまだ殆んど全てのタイプの車両が存在していたためどの形式を選択しても手持ち車両との年代的な矛盾はありません.

越後川口駅に停車する飯山線のキハ55


前述のように準急用気動車の側窓の形態は”バス窓”と”1段窓”の2種類がありますが”バス窓”は上窓がHゴム支持となっていますので私のような工作初心者にとってはハードルが高いため,1段窓の車両を製作することとし,まず代表形式のキハ55の100番台を選択し,次ににキハ26の300番台(306〜)を選択しました.そして最後の1両は大出力機関を搭載した試作車キハ60としました.キハ60は1959年に大出力機関を搭載した試作車として登場しましたが試験終了後は機関を水平対向エンジン(横型エンジン)のDMH17Hに換装し,房総方面で活躍していました.車体は客用ドアが外吊りドアである以外キハ55とほぼ同じ形態(後に通常のドアに改造)ですが,車体裾の高さはキハ58やキハ35等横型エンジンを装架した車両と同一で,車体に対する窓位置(塗り分け線に対する窓位置)が他の車両とはやや異なり,よく見ると雰囲気が異なります.そしてこの車両も車体の形状は特殊なもののが下回りは他の横型エンジン装備車とほぼ同じで保守作業に大きな支障がなかったせいか早期に廃車となることはありませんでした.製作する型式を選択するにあたって3両の形式を全て異なるものとし,さらにそのうちの2両を数の少ない所謂”珍車”とすることには多少抵抗はあったのですが,キハ55とキハ60の車体は遠目にはほぼ同一形態でありながらよく見ると細部に差があるというのもまた面白いのではないかと思いこの3形式を選択しました.

<外観上の改善点>
前作からの改善点は以下の2点です.
① 客用ドア部
鋼製車体の窓周囲のテーパーの表現については前回製作した車体でも留意しましたがドア部分は断面形状に特に留意せずドアの外径を切り抜いた部分にただ裏からドアを貼り付けるだけでした.しかし今回完成した車体を見ると車体表面とドアの段差が少ない気がします.実車はドアの面は窓ガラスの面より奥にありますが,窓ガラスをはめ込み式としない自作車体ではペーパー車体でも真鍮製車体でも窓ガラス表面とドア表面は同一面となります.

山形駅に停車中の仙山線の普通列車.国鉄民営化前は常磐線以外に普通列車用の交直両用電車はほとんど配置されておらず伝毛区間でも数多くの気動車列車が見られました.

バラキットでも自作車体でもガラス表面とドア表面は同一面なので,段差が少ないと感じる理由は今まで製作してきたバラキットの側板の板厚が殆んど0.4㎜であったのに対し,今回使用した真鍮板が0.3㎜厚であるためでこの差は側板お厚さの差ではないかと思われあると思われます.下の写真は私が以前0.4㎜の真鍮番を用いて製作したキハユニ25と今回製作したキハ25のドア部の写真ですが,わずか0.1㎜の差でありながら印象が結構異なることがわかります.この段差のスケール運方は不明ですが,違和感があるのは実物と異なるからではなく,今まで見慣れた車両と異なるということが理由であるようにも思えます.

車体に0.4㎜の真鍮版を用いたキハユニ25と0.3㎜の真鍮番を用いたキハ25

この”段差問題”は車体の板厚を0.4㎜に変更すれば解決なような気もしますが当然重量が増えて曲げ等の加工性も悪化します.また2段窓を今回キハ25で用いたような方法で表現しようとすると2枚重ねした部分の板厚が厚くなり金属車体のメリットが失われるような気もします.一方実物の窓の周囲は断面の引き戸側(内側)にもRがついており,ドア周囲の断面形状は円柱に近い形となっています.そこで今回は客用ドアを貼り付ける前の状態で側板の表面と裏面のドアの周囲にヤスリでテーパーをつけてからトアを貼り付けてみました.この結果が下の写真ですが,右側のキハ25と比較すると効果が認められます.なお,ドアを貼り付けると面取り部にハンダが流れてきますのでそのハンダを細いキサゲで確実に除去する必要があります.

前作のキハ52とドア裏面に面取りを施したキハ26のドア部分

② ”おでこ”の形状
下の写真は最初に製作したキハ25とキハ26の写真です.影の具合から側面から見た時の”おでこ”の形状がキハ25はキハ26に比較して”なで肩”になっているのがわかるかと思います.実車のこの部分のRは小さく,電車のようにRの後方が前面に向かって傾斜していませんので斜め上方から光が当たると影になる部分が比較的大きくなります.

前作のキハ52と今回製作したキハ55の”おでこ”の形状の違い
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