前回までにレイアウト製作においてシーナリーとストラクチャーと呼ばれている部分の紹介を終わりましたので今回から一般的にアクセサリと呼ばれるより細かい部位についての製作過程の説明を行いたいと思います. その初回としてまずは製作に当たっての構想設計((製作するアクセサリを決定するまでのプロセス)について私が行った手順を少し詳しく説明してみたいと思います.
⚫︎アクセサリの定義
過去の雑誌のレイアウトの製作記事ではレイアウトの製作過程は大きくシーナリーの製作とストラクチャーの製作に分類されています. そしてその後には所謂車両のディテーリングに相当する細かい部分を製作する作業があります. その呼び方は記事によっていろいろあるようですが1970年代にTMS誌に発表されている記事ではTMSのスタッフの方が執筆している記事を含めて”アクセサリの製作”と記載されている例が多いようです。
この”アクセサリ”という意味を辞書で調べてみると辞書には語釈として 「①服装を引き立たせるための装身具②機械類の付属品・周辺機器 」と記されています。私の解釈ではレイアウト用語の”アクセサリ”はこの語釈のどちらかというものではなく両方の意味であると考えます。そして①と②の大きな差は①は後から付け足すもので極端にいえばあってもなくても良いもの(英英辞典でははっきりそう記載しているものもあるようです), ②は機械(システム)の設計段階で機械やシステムの設計者がそのシステムで要求されている機能を満足するため, あるいはより向上させるために用意する(中には法規上必須のものや現場で判断して設置要否を判断しているものもある)ものではないかという気がします. このように考えるとレイアウトの細部仕上げを”アクセサリの製作”と表現することは”言い得て妙”であると思う反面, 実際のレイアウト製作では実感的な情景を製作するためには写真等で見た風景をただ漫然とそのまま作るのではなく, 上記の語釈①と②を意識して, 製作するものが以下に記すどのカテゴリに属するかを意識して製作するアイテムと配置する場所をよく考えて製作を進めていくことが必要であると感じます. またこのためにはある程度の鉄道に関する法規や規定は勿論, 地域的な特性についても知っておく必要があると思います.
1. 安全性等の観点から規則等で要求されているアクセサリ(様式の選択も含む)(①)
2. 鉄道施設しての機能を満たすために必要なアクセサリ(①)
3. 機関区という機能を満たすために必要なアクセサリ(①)
4, 機関区内で職員が日々業務を行なっていることを感じさせるアクセサリ(②)
⚫︎ 製作したアクセサリ
我々(私?)がこのような ”アクセサリ” を製作しようとした場合は参考資料として自身が撮影した写真や雑誌等に掲載されている資料を用意し, そこに過去の自分の体験や記憶を加えて何を製作するかを決めていくことが多いと思います. 私は実感的な情景を製作する場合にこの決定の際に大切なことは, それらの資料や自身の記憶をそのまま再現しようとするのではなく製作するアイテムは全体的なバランスを考えながら決定していくことではないかと考えます. 特に自分が実施に見た情景や体験はとうしてもそのままレイアウトで再現したくなります. しかしこの再現にこだわりすぎると局所的には満足なものができても全体を見渡すとそれが返って実感を損ねるということにも留意しておく必要があります. 以前製作した外国型のレイアウトではこの過去の自分の体験や記憶が全くなかったのである意味淡々と製作を進められたのですが, 今回のように自分がかつて親しんだ情景を再現する日本型レイアウトでは自分の体験にこだわりすぎないことを意識しながら進める必要があると感じました. 特に今回のレイアウトセクションのような全体を一度に見渡せる(鑑賞者が場所を移動しなくてもある程度レイアウトの細かいところまで観察できる)レイアウトセクションは鑑賞者の移動により映画のカット割のような効果が期待できませんので特に注意が必要です. そこで今回試行してみた方法は実物写真をそのまま参考にしてストラクチャーを配置したレイアウト上に配置するアクセサリを決定するのではなく, まずストラクチャーを配置したアクセサリのないレイアウトの写真を撮影し, その写真と実物資料を見ながらその写真にどのようなアクセサリを加えれば良いかを検討し製作するアクセサリをリスト化する方法です. 実物写真から製作するアクセサリを決めていく場合, そのアクセサリの背景に写っている情景や建物は当然レイアウトのものとは異なります. このため参考写真のアクセサリにのみ注目して製作するアイテムを決めてしまうとアクセサリの背景となる建物や情景が参考写真と異なるため実際にアクセサリを配置した時に違和感を感ずる場合があります. これに対し撮影したレイアウトの情景や建物の画像を見ながら製作するアクセサリを決定する方法ではレイアウト上の建物や風景を基準に検討しますので実物の資料からより的確に製作するアクセサリの種類や個数を決定することができます. この際留意することは写真をいろいろな角度から, またいろいろな範囲を撮影してそれらを見ながら検討することで, あまり狭い範囲で検討するとその部分だけは実感的でも全体的に見ると不自然であったり散漫な印象になる恐れがあります. もちろん車両工作より修正が容易ですので事前に完璧に決めることはないのですが, 実物写真の情景をレイアウトで再現させる場合,このようなプロセスを導入することにより無益な「こだわり」が排除できるとともにに, もし一部に不満な点があっても最初にそのアイテムをそこに配置しようと考えた理由を振り返ることができ修正作業が容易になります. さらに製作するアクセサリをリスト化するということは製作の効率化にもつながると思います.
上記の観点で今回製作したアクセサリを一覧表にすると以下になります.
これらのアイテムはかなりの部分エコーモデルからパーツが発売されていますが今回は自作困難なものを除いてパーツはできる限り使用しないこととしました. その理由は前にも記しましたが今まで車両やレイアウトを制作してきた中で車両製作でキット組み立てでパーツを過度に使用すると結果的には市販の製品より細密なモデルが完成するものの別の観点から見ると没個性的な作品となってしまうということ, 外国型レイアウトで市販のプラキットの建物を多用するとレイアウトがどこかで見たようなものになってしまったという経験によります。もちろん既製品を使用してもそこにプラスアルファの付加価値をつけられれば良いのですが、私にはその自信はありません。以前に比較して建造物やアクセサリのキットが充実した現在、市販品を使用する場合は特に今回のような小規模なレイアウトセクションに対しては作品に個性を出す方法を事前によく検討しなければならないのではないかと感じます. 一昔前は日本にはストラクチャーのキットがほとんど販売されていないことを問題視する人が多かったような気がしますが, 発売されたら発売されたでいろいろ考えなくてはならないことがありそうです. また, 思わぬメリットとしては市販のホワイトメタル一体成形のパーツに比較して,一体ではない自作品の方が塗装が容易である場合がありますし, 設計や製作を行う際に頭を使って物を作る楽しみを味わえるということもあります. また最近ではEvergreen社製のプラ製素材の充実等で以前より各種のアクセサリは作りやすくなっているのではないかとも感じます.
前置きが大変長くなってしまいましたが次回以降今回製作したアクセサリの製作手順を紹介していきたいと思います. まずはレイアウト全体に配置され全体の印象を左右する柵と電柱から紹介してみたいと思います.