レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(7) -地面の製作とバラストの散布-

前回までで線路の敷設とレールと枕木の塗装が終わりましたので、次の工程である地面の製作とバラストの散布作業に進みます。ただ、以前にも記したように蒸気機関車が活躍していた頃の機関区の地面と線路周り(バラスト)は所謂「列車が行き交う”一般的な”線路」とは雰囲気が全く異なりますので今までの製作法では対応できません。
私は今までたレイアウト(レイアウトセクション)を機関区のレイアウトセクションも含め三種類製作してきましたましたが、それらはは外国型のレイアウトでした。私は蒸気機関車が活躍している時代はもちろん、今まで外国の機関区を訪れたこともないため機関区の線路はブレーキ粉の錆が付着したことを考え茶色系のバラストを使用して周囲を黒くウエザリングする以外、細部はあまり深く考えず製作しました。しかし今回のレイアウトは遠い過去ではあるものの、私が自ら体験した機関区風景の再現ですので、その当時の印象(心象風景)をいかに再現するかを検討する必要があります。

細部仕上げ前の地面のベースが完成したレイアウトにストラクチャーを仮置きして車両を並べたところ


私が蒸気機関車が活躍していた時代に見た機関区の地面(レール周辺)の印象を一言で言うと、機関区の線路は「バラストのみの部分は殆んど無い」と言うことです。下の写真は八高線の無煙化に際して公開された高崎第一機関区の写真ですが、給水塔(スポート)や給炭設備のあるエリアではバラストは全くと言っていいほど見えません。

八高線のさよなら列車が運転された当日の高崎第一機関区の風景.

一方、下の写真は八王子機関区の写真ですが、機関車の停車しているところはアッシュピット付近で、線路周辺は土ではなく石炭殻が散乱しています。そして地面を覆っているのは石炭殻(灰)ですので上記の写真とは色調が異なります。上の高崎第一機関区はほぼ蒸気機関車の定期運用が終了したさよなら運転の際の機関区公開時の写真ですが、こちらの写真は本数は少ないながらもまだ八高線に蒸気機関車が運用されている時点での写真であり、蒸気機関車が待機しているエリアは活気があると同時に、砂や石炭殻が各所に散乱している状況でした。余談ですが当時は所謂SLブームの直前の時代であり、機関区事務所でお願いすると、職員さんが案内して内部を見学させてくれて蒸気機関車のCABにも載せていただくことができました。

八王子機関区のアッシュピット付近に待機するC58. 周囲には石炭殻が堆積している.

この写真のように蒸気機関車時代の機関区はエリアによって線路周りの表情と色調が全く異なりますし、晴天でも給水スポート周辺の土は水で濡れており、水たまりができていることもあります。また石炭殻は水たまりができるような地面の凹みにも散布されたりしますのでアッシュピットの周囲でなくても石炭殻が散布されて地面の色調の異なっている部分があります。、このように機関区の地面の表情は多岐にわたっており、これらをどのように表現するかが製作のポイントとなります。過去の作例として故なかお・ゆたか氏のレイアウト、”蒸気機関車のいる周辺”の製作記事では機関区エリアの土に埋もれたバラストの表現方法として枕木間の隙間に紙粘土を詰める技法が紹介されていました。ただ、いくらバラストが土等にで埋もれていると言っても場所によっては少しバラストが露出しているところもあり、バラストが殆んど見えない部分でもバラスト自体を省略することには抵抗がありましたので、別の方法を検討することとしました。ただ、あまり机上で考えていても始まりませんので実際に製作を進めながらある程度 Try and Errorも覚悟しながら検討と製作を進めることとしました。今から数十年前のTMS誌で、故・山崎喜陽氏は「簡単と思われる工作でもいきなり手を動かすのではなくしっかり時間をかけて事前に技法や手順を検討することが必要」と言うことを述べておられました。この考え方は車両工作では絶対必要な考え方で鉄道模型のみならず日々仕事をする中でも必要な考え方ですが、レイアウトの製作はEngneeringの要素にArtの要素が加わってきます。題名は忘れてしまいましたが昔読んだ本に絵が上手い人と下手な人の差は1本の線を描く時間の差に現れる(絵の上手い人は線を引くという動作の中で全体のバランスを見たり想像しながら書き方を微調整しているので時間がかかる)と書いてありました。同じ鉄道模型でもレイアウトの製作やウエザリング作業にはこのような「製作しながら考える」と言うことも必要である気がします。このようないろいろな考え方で製作を行う必要があるということが鉄道模型製作の面白さ(奥深さ?)であるような気もします。

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