前回の記事で記載したように、私は30年ほど前にアナログ制御のZゲージレイアウトを製作した後は 3線式(Märklin)のDigital制御のHOゲージレイアウトを製作してきたため、線路敷設後の試運転時にも車両の走行性の確実な確認のためには配線、特に分岐器絶縁フログ部の極性を分岐器の切り替え方向に応じて切り替えることが必要ということを失念していました。そこで確実な試運転のために急遽コントロールボードを製作することにしたのですが、この時点ではアナログ制御時の運転方法について具体的な構想や設計をあまり真剣に考えていなかったというのが正直なところです。
今回このレイアウトが完成したとしてもその時点での手持ちの日本型蒸機はアナログ制御の車両のみであり、しばらくの間はアナログ制御で運転します。現状では日本でデジタル制御が米国や欧州のような形で普及する見込みは全く立ちませんのでアナログ制御による運転方法も一時凌ぎではなく「真面目に」検討しなくてはなりません。また、現在手持ちの車両を将来も運転するためアナログ制御とデジタル制御を切り替え可能にするとともに最終的にはDCCに制御による自動運転にも対応できるようにしたいところです。実はこのレイアウトの構想時にはどちらかというといつ実現できるかわからないにもかかわらず頭の中ではDCC制御のことばかり考えており、そのために行うことは非選択式の分岐器を用いて一つのフィーダーでレイアウト全体に給電すること、自動運転に必要なフィードバックモジュールによる在線検知にS88プロトコルを使用する場合は検知にアナログ制御時の機関車留置用のギャップ(ブロック)を利用する(よってDCC制御による自動運転のためにに特別の加工は不要)という程度のことしか考えていませんでした。
レイアウトのコントロール方法は70年台のTMS誌には比較的高頻度で掲載されており、私もZゲージのレイアウトを製作した時に大いに参考にしたのですが、最近はまったくみかけません。今回も復習したのは50年以上まえの当時の記事です。レイアウトのコントロール方式には大きくブロックコントロール、キャブコントロール、デュアルキャブコントロールがありますが、方式の決定にあたってはまずこのレイアウトセクション上で同時に何台の車両を動かすかを決める必要がありますが、今回以下の理由によりレイアウト上で動かす車両は1台のみとしました。私は過去、ほぼ同一の線路配置でDCC制御(Märklin Dogotal)のレイアウトセクションを作成しましたが、このレイアウトはDCC制御ですので理論上は機関車を何台置いても個別に制御が可能です。私が製作したこのレイアウトセクションに接続したコマンドステーション(Central Station3)は、スロットルの数は2台ありますので実質的にレイアウト上で制御できる機関車の台数は2台となります。ただ、実際に運転してみるとこの規模のレイアウトセクションで一人で2台の機関車を制御するのは至難の技です。2台の機関車を制御しようとした場合、この線路配置では1台は機関庫側での機関車の転線、もう一台は整備線側での整備(給水、給砂、給炭、石炭柄の排出)と留置線への移動になります。ただこの制御を一人で行おうとすると作業が非常に煩雑で機関車の動きを鑑賞するどころではなくなります。それでも今回のレイアウトではコントローラーを2台接続できるようにしておくこともできますが、上記の経験からそれも不要と考え、このレイアウトで一度に制御できる車両の数は1台としました。そうするとキャブは1台になりますのでコントロール方式は必然的にブロックコントロール方式となります。ギャップについては今回のレイアウトは非選択式の分岐器を使用していますのでショート防止のためのギャップは不要で常時通電するブロックへのフィーダーは1箇所でOKですす。そうすると次の要検討項目は絶縁されているフログへの給電となります。当初、この極性切り替えには当初PECOやの極性切り替えスイッチ(PL-25)を使用する予定でした。ただ、どういうわけかドイツの模型店ではこのスイッチが品切れで今回は入手不可能でした。このスイッチはポイントマシンのアクチュエータで動作するスライドスイッチで、ポイントマシンの分機器の反対側に装着する構造です(そのためにポイントマシンのアクチュエータは分岐器の逆側のソレノイドの下部に突出しています)。そのため比較的簡単に後からでも追加することが可能ですし、入手不能の場合は自作も可能ではないかと考え、検討を先送りしていました。しかし、コントロールボードを製作するためにはこの切り替え方法をこの段階で決定しなければなりません。今回使用したPECO製のポイントマシンの動作力は比較的強力ですので自動切り替えスイッチは燐青銅線やバネ等で比較的簡単に自作できそうです。ただ考えてみるとフログの極性を自動的に切り替える必要があるのは自動運転の場合だけで、自動運転を行わない場合はDCC制御での運転でも経路(分岐器の切り替え)は手動で行います。このため現時点ではフログ極性の自動切り替えは行わず、より信頼性が高い手動切り替えとしました。そしてその方法は、ポイントマシンの切り替えには両側モメンタリーのトグルスイッチを設け、フログの極性の切り替えはその近傍に設けた一般的なトグルスイッチで行うこととしました。そしてこれらのスイッチをコントロールボードの路線図上に設けることにより、分岐器切り替え時にはこの2個のスイッチの操作を連続して行ないます。この方式では切替作は2アクションとなりますがこの方法ではフログ極性の切り替えスイッチで分岐器の分岐方向を示すこともできます。コントロールボードは台枠の一部を切り欠いて設置しますが、上下の幅が狭いため、一つの経路頭上に分岐器切り替えスイッチとブロックへの給電スイッチは別の経路頭上の設けることとしました。そのほか、コントローラーは内蔵しませんので接続用のコネクタには手持ちのマイクコネクタを使用し、ポイントマシンへの給電用と照明等への給電用にはACアダプタをが接続できるDCジャックを設置しました。また、照明との給電をON /OFFできるトグルスイッチを設けてあります。照明用の電源は9VのACアダプタ、ポイントマシンの電源は12VのACアダプタを使用することとしました。
コントロールパネル上で分岐器制御スイッチは路線図の分岐部に分岐方向切り替えスイッチ、その下流にフログ極性切り替えスイッチを設け、分岐器切り替え時にはまず分岐方向切り替えスイッチを切り替え方向に倒した後、フログ極性切り替えスイッチを動方向に倒してフログ極性を切り替えます。
この方法では分岐器の分岐方向をを切り替える際、2個のスイッチの操作が必要になります。私が以前製作したZゲージのレイアウトでも分岐器の切り替えは今回のレイアウトと同様、両側モメンタリーのトグルスイッチを使用していました。Zゲージの分岐器(Märklin製)は非選択式ですが構造上フログ部分に無電区間は殆んどなく、フログの極性切り替えは不要でったため、今回切り替え時に二つのスイッチを操作することは煩わしいのではと感じたのですが、実際に製作して操作してみると切替時は一連の操作になりますのでそれほど煩雑ではなく、またポイントの開通方向が目視でわかるということは意外と有益であることがわかりました。上記のZゲージ用分岐器やMärklinをはじめとした欧州製の分岐器にはスプリングポイント機能があり、分岐器の分岐側からは分岐器の開通方向に関わらず車両の侵入が可能ですが、今回使用したPECO製の分岐器はポイントレール側にロック機構があるためスプリングポイント機能がありませんので、車両を分岐側から分岐器に侵入する際も分岐器が侵入する分岐側に切り替わっていることの確認が必要です。これは分岐器を目視でチェックすればわかるのですが、運転する位置によっては建物等に隠れて開通方向が見にくい場合もありますので分岐機の開通方向がわかる今回の方式は操作は面倒ですが意外と便利であることがわかりました。
コントロールパネルの製作はまず2㎜厚のPET板より本体を作り、Letra Line Tape 製作した路線図ので所定位置に使用するパーツに応じた取り付け穴を開けてパーツを固定することにより行いました。Letra Line Tapeは30年近く前にZゲージレイアウトのコントロールパネルの路線図作成用に購入したものですが、今回問題なく使用できました。余談ですが、今回使用したトグルスイッチは秋葉原のパーツ店で1個¥100程度で入手できます。約30年前、Zゲージのレイアウトを製作した際はこの種のトグルスイッチは1個¥200-¥300であったような記憶があります。この種の部品は中国生産になった影響かもわかりませんが所詮模型用で信頼性はあまり問わないと割り切ればこの手の部品は当時よりかなり安価に入手できます。
パネルはパーツを取り付けたら台枠を切り欠いた取り付け部に固定して配線を開始します。配線にあたってはコントロールボードの近くに電源分配用の基盤を設け、そこからレイアウト各部に給電するようにしました。
基板はフィーダーN /フィーダーS/12V+/12V-/9V+/9V-の電源区画を設け、その区画ごとに各ホールを繋ぐ鈴メッキ線を半田付けし、さらに9V+の区画からはLED点灯用の1.5KΩの抵抗を介した端子(ホール)を設けました。そしてコントロールパネルのパワーパックとDCジャックからの電源をこの基板の各区画に接続し、そこからレイアウト各部に各部に配線していきます。なお、車両留置用のブロックからの配線は一方をこの基板に接続し、もう一方はコントロールパネルのブロックへの電源供給スイッチに直接接続してあります。レイアウトの各所からくるリード線は接続する電源区画のホールに半田付けしますが、その際、ホール上にあるスズメッキ線とともにハンダ付けけすることにより各電源と接続します。今まで製作してきたレイアウトでは端子台を使用する方法(Zゲージレイアウト・外国型機関区レイアウトセクション)、基板上に取り付けたターミナルブロックに取り付ける方法(自動運転を前提としたレイアウト)を採用してきましたが、配線は一度配線したら煩雑に取り外しすることはないので部品の削減(コストダウン)も兼ねてこのようなハンダ付けによる方法を採用しました。余談ですが、私が中学生の頃はこのようなスズメッキ線やリード線を使用したはんだ付け作業を学校の技術家庭科の授業でやった記憶がありますが、今はどうなのでしょうか。なお、コントロールボードのスイッチ周辺のような狭い範囲の配線には取り扱い製の面からスズメッキ線やビニール被覆の単線(捻り線ではない)を使用した方が簡単です。
なお、今回の車両留置用のブロックは両側のレールを絶縁して敷設し、片方のレール(Nフィーダー)からの配線をこの基板上でコモン化してあります。今回のレイアウトセクションはエンドレスを持ちませんのでどちら側のレールをNフィーダーとするかは一義的には決められませんので機関区側のフィーダーをNレールと定義してNコモンとして配線しました。配線が終了し、コントロールボードが完成したら試運転を行います。試運転はこのレイアウト上での運転を想定した手持ちの車両の中で最も終電用車輪のホィールベースが小さい車両(DT19を装備した気動車)と固定軸距が最も長い車両(D51)を主体に行って問題ないことを確認しました。試運転が終了したらレール側面と枕木の塗装を行いますが、この作業の紹介は次回にしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。