模型工作:ペーパー製旧型国電製作記 その10(最終回)

この旧型国電製作記も10回目となりました。今回は最後の工程である塗装と細部の仕上げについてご紹介させていただき、この製作記を完結したいと思います。
下記にこれまでの説明をダイジェスト版の動画にまとめましたのでよろしければご覧ください。


塗装はエアーブラシによる吹き付け塗装で行いました。塗料は屋根とプラ製の床板を除きマッハ模型の鉄道調色塗料を使用しています。ペーパー車体ですので市販の鉄道スプレーも使用できますが、私は数十年前から金属、ペーパー車体を問わずこの塗料で塗装をしています。

私が塗装に使用しているエアブラシ機材は今から30年以上前にエコーモデルさんで購入したトーマスデラックスアートセットで、エアーブラシはタミヤスプレーワークスのノズル径0.3㎜です。購入当時使用したエアーブラシはエコーモデルでお勧めいただいたBADGER350で、最近まで使用していたのですが吐出の調整が非常に難しいため現在は使用していません。このエアーブラシは現在でもタミヤで販売されているようで、購入時バジャー のジョイントサイズに合わせた変換プラグも購入しましたが、この変換プラグとバジャーのホースはタミヤのスプレーワークにもそのまま使用できます。

トーマスのデラックスアートセットには圧力調整バルブ、エアーフィルター、ピースハンガー等必要なものは一通りセットになっていますので、他に必要なものは塗料調号用のびん、かき混ぜ棒程度です。

車体の塗装に使用した塗料一式です。車体は黄色5号と赤2号、他にベンチレター用に灰色1号、床下機器用につや消し黒を用意しました。また金属部分がありますのでエッチングプライマーも用意します。旧型国電の屋根色は相当色はなくまた実物もいろいろな色がある(いろいろな色に見える?)のですが、私は形式を問わずタミヤカラー(ラッカー系)の佐世保海軍工廠グレイ(TS-67)を用いています。またマッハの塗料はプラ製品には使用できませんのでつや消し黒も用意します。黄色5号を除いて前回使用したものを用いています。

塗装のやり方は人それぞれですのでここでは簡単に私の行った手順を順を追って説明します。まず金属部品にエッチングプライマーを塗装します。ベンチレター等の細かい部品はダンボールの上に貼った厚手(カーペット用)両面テープで固定して塗装します。

エッチングプライマーが乾燥したらベンチレターにはは灰色1号、床下機器にはつや消し黒を塗装します。私はエッチングプライマーの乾燥時間は2−3時間程度としています。先日このブログでも紹介させていただいたEF64を数十年ぶりの再塗装したのですが、塗料を剥がす際、エッチングプライマーの効果を確認することができました。

車体はまず黄色5号を吹き付けます。旧型国電の車体は比較的凹凸が多いので塗料が十分回り込むよう各方向から吹き付けを行います。写真は車体を寝かせて吹き付けていますが寝かせたままですと下側の窓枠とウインドシルの部分の段差等は塗料が下に流れてしまい塗膜が厚くなりませんので適宜車体を立てて吹き付けることも必要です。塗料が乾燥したら#2000程度の耐水ペーパーでゴミ、けばを除去して仕上げ吹きを行います。

黄色の塗装が終了したら半日程度乾燥させ、マスキングを行います。特に気をつけるところはドアと車体の段差で、ここでマスキングテープが浮かないようにマスキングテープを端から貼っていき、ドア部の段差ではピンセットの先等角のあるものでテープをしごくようにして段差に密着させていきます。また、湘南型の前面の塗り分けは、原寸図面にメンディングテープを貼り、その上にマスキングテープを貼ってカッターで塗り分け線に沿ってマスキングテープをカットして車体に貼るとうまくいきます。原寸図面がなくても同様の方法でまず左右対象形状を紙に書いてその上でマスキングテープをカットすると良いと思います。おでこの部分はマスキングテープを貼り付け後にケガいてデザインナイフで切り込みを入れて余分な部分を剥がし、黄色の部分をマスキングします。

マスキングが終わったら赤2号を吹き付けます。テープの隙間からの塗料の侵入を防ぐため、車体の長手方向からまず吹き付けを行い、その後も車体を立てて吹き付ける等、塗分線のマスキングテープのところに塗料の溜まりを作らないように意識して吹き付けを行うとうまくいきます。特にドアの部分に塗料の溜まりを作ると毛細管現象でドア上方まで塗料が回ってしまいますので注意が必要です。

吹き付けが終了したら乾燥後慎重にマスキングテープを剥がします。多少の吹き込みはあると思いますが、あとで修正することとします。

引き続き屋根の塗装を行います。マスキングテープと紙で車体を覆います。旧型国電の場合、ウインドシル、ヘッダー、ドア下の靴ズリ等が接着されていますので車体とマスキングテープの接触面積はなるべく減らした方が良いと思います。

塗料が乾燥したら慎重にマスキングテープを剥がします。とくに雨どいの部分のテープを剥がす際にはラベル紙で表現した2段雨どいの上段が剥がれないようにゆっくりと確認しながら作業を進めます。

これで吹き付け塗装は完了したので細部の仕上げ(色差し)に入ります。私は主にハンブロールのエナメルを使用しています。ハンブロールカラーは取り扱い性(十分な撹拌が必要)、乾燥時間に難はありますが塗料の伸び、隠蔽性等国産の塗料にはないものがあり愛用しています。昔は色々な模型店で入手できましたが今は入手ルートが限られているのが残念です。長期間品切れが続きましたが最近また入手できるようになりました。また一部にはタミヤのエナメル、レベルカラーを使用しています。使用したハンブロールカラーは#64(配管類)、#147(ランボード)、#121(貫通ドア)、と銀色(MET11)です。#147は#64に比較して明るめのグレーです。Hゴムはタミヤのエナメル塗料XF-19を各車共通で使用しています。

主な色差し場所はHゴム・貫通扉(各車共通)、信号炎管・乗務員ドア・貫通ドアノブ(クハ)、ヘッドライト、足止め、ホイッスルカバー、貫通渡り板(クハ68)、電線管、空気管、避雷器周りの配管、パンタ鍵外し装置ランボード(モハ70)等になります。Hゴムは烏口でいれますが、塗料の濃度が重要です。


ここまで終了したらパーツを取り付けます。取り付ける部品は塗装後のベンチレター、パンタグラフ、碍子、テールライトレンズ等です。テールライトレンズは天賞堂のパーツを使用しましたが引きものではなく成形品ですので非常に安価で重宝しています。クハ76のヘッドライトレンズは適当な直径のものが無いため未取り付けです。これらのパーツの取り付けが終了したら次に窓ガラスを貼り付けます。2段窓を表現してありますので取り付けには手間がかかりますがきちんと罫書きをして切断し、少量のゴム系接着剤で貼り付けます。貼り付けには結構手間がかかりました(数時間程度)。最後に運転室窓に裏からデフロスタを接着し、トイレ窓に曇りガラスを表現するトレッシングペーパーを裏から貼りサボ、運行窓の表現を残し車体はひとまず完成となります。

一方、床板はタミヤカラーの黒を吹き付け、台車、床下機器を取り付けます。また最後に台車の車輪の黒染めを行いました。これで下回りが落ち着きます。カプラーはモデルズイモンの密連HO-165を取り付けました。今回動力装置は装備していません。当初手持ちのインサイドギアとモーターで動力化しようと考えていたのですが製作中に天賞堂のコアレスパワートラックの発売情報がありました。比較的安価のようですので発売時点での改造を目論んで今回は動力なしとして完成させています。この床板を車体にはめ込みねじ止めし、めでたく70系上越線仕様の完成となりました。

以上でこの製作記を終わります。最終的に完成した姿は後日模型車両の紹介でご紹介したいと思いますが着工から約3ヶ月、長々とお付き合いいただきましてありがとうございました。かかった費用は約2万円から2万5千円程度で車体の安さに比較すればパーツに結構な費用がかかってしまいました。また途中の説明の中で使用した金属工作用の工具や塗装用具等にも結構な費用が必要で、これらを当初説明していなかったことをお詫びいたします。この車両の製作を計画している頃、奇しくもTOMIXから70系の製品化が発表され、このモデルの製作開始と同時期の発売されました。値段は5万円弱のようです。今回作成したモデルは出来栄えはそれには到底およびませんが、ある程度時間をかけて自分なりの模型を製作するという過程を楽しむことも完成品を購入するのとはまた違った楽しみがあります。今回は約3ヶ月での完成でしたが、半年間で製作するということになれば毎月の費用も飲み会1回程度の費用ですものではないかと思います。
この製作記の冒頭に青弓社という出版社から発行されている「趣味とジェンダー」という本を紹介をしましたが、最後に私がこのような工作を始めるきっかけとなった約50年前の雑誌の「自作車両」の記事の写真を紹介させていただきこの製作記を終わりにしたいと思います。長い間お読みいただきありがとうございました。

技術出版株式会社 模型と工作 別冊 / 科学教材社発行 摸型とラジオ ’69.
科学教材社発行 摸型とラジオ ’69.3 / 技術出版株式会社 模型と工作 ’66.7