今回は、いよいよ仕上げの段階として細かいディテールパーツ、手すり、配管等のの取り付けを行います。また床下機器を取り付け、車体、下回りとも、あとは塗装を残すのみという状態に完成させるまでをご紹介させていただきます。
晩年の旧型国電は各種の改造を受けており、ナンバー毎に車体の特徴が異なります。市販のキットもナンバー毎に発売される例もあり、完成後の車体のイメージは細かいでディテールをどのような形態にするかで決まるとも言えます。今はネット上に特定ナンバーの写真も多数アップされています。特定ナンバーの車両を作ることもできますが、特定ナンバーとする場合、厳密にはそのナンバーのいつの時代かによっても詳細部分は違います。私は、ナンバーにはこだわらずに自分の好みのタイプで製作しました。
今回の場合、テーマは上越線の70系(+クハ68)であり、耐寒耐雪改造を受けた車体が対象になるわけですが、耐寒耐雪改造のタイプもいろいろあります。そこでどのようなタイプを作成するかをいろいろ検討するのですが、作成するタイプのイメージが決まったらそれを一度ポンチ絵にして取り付けるディテールを明確にすることをお勧めします。この作業を行うことにより自分が作りたい車両のイメージがより明確になるとともにディテールのつけ忘れを防ぐことができます。恥ずかしながら私の書いたポンチ絵を下に示します。
以前も記載しましたが、耐寒型のタイフォンは形状がゴツくあまり好みではありませんのでクハ76は腰板部の標準型のタイフォンのうちの一つが耐寒形に置き換わったタイプ、クハ68はタイフォンではなく屋上にホイッスルとホイッスルカバーがついたかタイプとしました。またクハ68の前面通風口は板で塞がれたタイプとしてあります。そのディテールを一覧表にしたのが下の表になります。ただ普段作るときにはこのようなリストは作成せず、上記のポンチ絵でいきなり工作を開始し、取り付けを終了したものを消し込んでいます。なお、下表の固定方法のSAは瞬間接着剤を表します。一部のパーユニはジャンク箱にあったキットの余剰品やキットのパーツを他のパーツを交換した為に使わなかった部品を使用しています。
以下、上記全ての部品の取り付け過程は説明をしませんが、以下に主なところを説明します。
<縦樋>
縦樋はペーパーで作りました。前作は真鍮帯板で作ったのですが接着、塗装はがれに難がありましたので今回は厚さ0.4㎜のペーパーとしました。ラベル紙を3枚重ねたものを足としてまず写真のような板(ラベル紙が黄色)を作成し、それをスライスして作成しました。ラベル紙は糊面が車体側に来るように瞬間接着剤で接着し、裏紙を剥がして車体に固定し、位置が決まったら瞬間接着剤で固定します。ペーパーには表面側から瞬間接着剤を染み込ませて強度を上げましたが、強度不足で変形してしまいましたので、側面(切断面)にも瞬間接着剤を流して強度アップしました。それでも強度が弱く、結果としては金属、あるいはプラ材で作成した方が良かった気がします。ただしプラ材はラッカーを使用すると塗装時にサーフェサーでしっかりとコーティングすることが必要になります。
<各種市販パーツの取り付け>
まずパーツの取り付け穴を開けます。取り付け穴はドリルで開けました。まずデバイダーの先で中心位置をつついてポンチマークとした後穴を開けます。直径1ミリ以上の穴は最初に0.7㎜程度の穴を開けてその穴を大径ドリル所定の大きさに広げていきます。そして周囲のカエリをデザインナイフで削ぎ落とします。その穴にパーツをはめ込み裏から瞬間接着剤で固定します。この方法でタイフォン、信号炎管、ジャンパ栓等を取り付けました。
<手すり>
直径0.3㎜の真鍮線で作成しました。まず真鍮線をL型に曲げて片方の穴に差し込み反対側の穴位置に細いマジックでマーキングをしてそのマーキングを指標として曲げた後穴に差し込み瞬間接着剤で固定しました。巾を正確に作るのが難しいと思われるかもわかりませんがコツをつかみとわりと簡単にできます。
<パンタ周り>
電線管はφ0.7㎜の真鍮線を、幅0.4㎜、厚さ0.15ミリの帯板で作成した割りピンで車体に開けた穴に固定しました。割りピンはU字型に曲げた帯板を真鍮線にぶら下げ、下側をヤットコ締めることにより作成した割りピンで屋根に開けた穴に固定します。
パンタへの空気配管はφ0.5㎜の真鍮線を2本並列に並べて車体側となる直線部をハンダで固定し、コの字形に曲げた幅0.4㎜、厚さ0.15ミリの帯板で車体、屋根に止めてあります。電気管、空気管とも屋根から妻板に下りてくる部分の形状は現物あわせで曲げてあります。
避雷器廻りの配管はφ0.3㎜の真鍮線をφ0.2㎜の真鍮線から作成した割りピンで固定してあります。
パンタ鍵外し装置は形態が面白いのでオーバースケールを承知で実物の構造をそのまま作成しました。リンクは巾0.8㎜の帯板に0.4㎜の穴を開けた部材から作成しました。回転軸はφ0.4㎜の真鍮線です。車体側は割りピンで固定してあります。引き棒(屋根)、引き紐はφ0.3㎜の真鍮線を割りピンで固定、碍子は焼き鈍したφ0.2㎜の真鍮線を引き棒に巻きつけて表現しました。
<床下機器>
まず床下機器取り付け板を0.3㎜の真鍮板から作ります。寸法は巾33㎜、長さ115㎜としました。そして両側にブレーキ管、電線管を支持するアングルを取り付けました。まずはば1㎜、厚さ0.3㎜の帯板を取り付け板の端に半田付けし、配管となる真鍮線を半田づけする際のズレ防止対策としてφ0.5㎜の真鍮線を植え込み、その後垂直に曲げて配管の取り付け部材としました。
この取り付け部材に電線管、空気感を取り付けます。電線管はφ0.7㎜の真鍮線から、空気管はφ0.6㎜のリン青銅線から作成しました。いずれも取り付け板に半田で固定してあります。取り付け時には紙を挟んで取り付け板との間隔を一定にしています。
<床下機器>
次に床下機器を取り付けます。床下機器は電動車は日光モデルの旧型国電用(C)を、付随車はエコーモデルのパーツとジャンク箱の中にあったパーツを瞬間接着剤で固定し、その後エポキシ系接着剤で固定してあります。また上越線の旧型国電を特徴付けるため、抵抗器のカバーを0.3㎜の真鍮板から作成して取り付けてあります。
旧型国電の床下はほぼ共通化されていますが、車体と同様晩年には色々な改造を受けていますので、車体と同様一度写真から図面(ポンチ絵)を書いてその図面を参照しながら取り付けを進めた方が良いと思います。正しい配置にする為には実物の奇数車、偶数車の区別、電気側・空気側、山側・海側の区別等の知識が必要です。ただし晩年の旧型国電は変則的な車両は多々あるようです。特に付随車はバリエーションが多く、色々なタイプがあります。下の写真の配置も一部写真で見えないところは想像で作ってあります。現在のように資料が充分でない時代から模型と作成しているせいか、大雑把な性格のせいか、あまり細かいところにはこだわって作成してはおりません。
ここまででできるとあとは塗装を残すのみとなります。この製作記のその1を書いたのが8月上旬ですので3ヶ月弱でここまで完成させることができたことになります。
塗装については次回の説明とさせていただきます。そして次回でこの製作記も完結としたいと思います。