レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(21) -最後に-

今まで20回にわたり私の製作したレイアウトセクションを紹介してきましたが,今回はその最終回としてとして私がレイアウトを製作しながら感じてきたことを記してみたいと思います.
⚫︎ レイアウトの細密度
最近の雑誌の自作車両の紹介記事ではキットを加工して細密化した車両の紹介記事が数多く見られます.その記事を見ると外観部分の加工のパターンの多くはキット部品の追加工による細密感の向上と部品の追加(細密感のある部品への交換)です.私もかつてキットの細密化を目指して加工を行なってきましたが加工箇所や交換・追加部品として何を購入するかは事前に計画を立てておく必要がありました(目論見が外れて余ったパーツも多数ありますが).「細密」の語釈は広辞苑によると ”細かいところまで行き届いていること.緻密,細密,綿密” と記載されています.ちなみにMuarklin社のカタログを見るとハイディテールのモデルには”Intricaate Model “や”fine detailed construction”という表記が見られます.

今回の私のレイアウトの製作過程を振り返ってみると最初にテーマ(北海道の機関区)を決めて建物等の構想を始めましたが車両を製作する時のように構想段階で細密度のレベルを考えるということはほとんどありませんでした.極力市販のストラクチャーやパーツは使わないという方針は立てましたがそれは類型化を避けるためであり市販品より「細密」にすることを目指したわけではありません.
一方,欧米では車両製作よりもレイアウト製作が主流ですが,私が毎月購読している米国の”Model Railroader”誌を読んでいると”realism”という単語が目立つような気がします.”realism”の和訳を「現実感」とすると,ここではrealismとは「レイアウト(+車両)を見て実感的に感じる」ということではないかと思います.一方車両の「細密化」は「車両を見て実物のように感じる」ようにするための手段で実現にはEngneering的な要素が多くそこに感情の入る余地はあまりありません.細密化は手段でrealismは細密化の結果です.それに対してレイアウトを実感的に仕上げるためのアプローチは多種多様であり,Engneering的要素の他に感性が必要で,造作の細かさはレイアウトを実感的と感ずる要素の一部でしかありません.そのために細密レイアウト(fine detailedなレイアウト)という概念は存在しない気がします.

⚫︎ レイアウトの「実感」とその限界?
レイアウトの設計にあたり特に気をつけたのは建物の大きさです.幸い日本家屋は”1間”という建物の統一基準がありますので横方向の寸法どりは比較的容易です.問題は高さ方向で基準はあまり明確ではありません.こちらはかつてTMS誌に掲載された荒崎良良徳氏執筆の”日本の木造家屋”という記事を参考に写真も参考にしながら寸法を決めました.ところが建物が出来上がって配置してみると何となく建物が小さく感じます.国鉄の蒸機の全高は4m弱ですので土台の低い機関区の建物は結構小さく見えるのですが,それでも想定より少し小さく,少し大きめに作った方が良かったのかと思いました.ただよく見るとどうも建物が小さく見える原因は線路の軌間の広さのような気がします.特に車両がいない詰所前でフィギュアが配置されているところを見るとその感が大きいように感じます.

建物とフィギュアに対してレール幅が広い印象ですが,”16番ゲージ”の場合これはどうしようもありません.

また蒸機が出区していくシーンを望遠マクロで前がちに撮影すると車両単体で見た時よりも「ガニ股」が気になります.私は今まで外国型のレイアウトを製作していたので当然のことながらこの辺りには全く問題を感じていなかったため余計気になったのかもわかりません.もしレイアウト上で細密機と調和する実感的なレイアウトをを製作したいと思ったらまず行なうことは13㎜ゲージの採用なのかもわかりません.

車両の細密化を行っても期間の広さはどうにもならず,実物の印象とはやや異なります.

⚫︎ レイアウトの作成にあたって留意したこと
このブログでたびたび触れてきた鉄道模型隅に掲載された記事に1951年のTMS誌に掲載され1971年に再掲された故中尾豊氏の”鉄道模型における造形的考察の一断面”という記事があります.この記事はTMS1000号に添付されたDVDの中の1951年1月号に収録されていますので読まれた方も多いと思います.その中で中尾氏は(以下引用)「我々が一般に「実感」と呼ぶものは,単に実物らしく見えるとか実物を彷彿せしむるのに充分であるとか言ったものとは多層趣きを異にしている.それはすなわち”我々があらかじめ実物に対して抱いている美的感動やそれに関する記憶や連想の基礎の上にモデルの鑑賞者としてモデルに接した時に感ずる思考の作用が一つの昇華作用を起こしてそれに一致する”ことである.」と述べておられます.私はこの言葉自体に全く異論はなく,モデルにおける実感はただ実物を正確に縮小して製作しても得られないということは忘れてはならないことだと思います.ただ,この記事を読み進めていくと中尾氏は「車両の模型」を念頭に述べているように感じます.実際に風景を1/80に縮小したレイアウトを製作することは不可能ですし前述のDVDの中に収められている創刊間もない頃のTMS誌を見るとレイアウトの紹介記事はほとんどなかったことからもそのように推察されます.一方これも過去に触れましたがModel Railroader誌の2024年10月号にTony Koester氏がTrain of Thought というコラムで“The look and feel of the place” と題した記事を執筆されています.この中で氏はPrototype Modeling(実物を「縮小して再現」するレイアウト?)についての留意点述べておられます.それを要約(意訳)すると① Prototpe Modelingは実物を厳密に縮小しなくても良い.どのように再現するかについて熟考し,無謀な朝鮮はすべきではないがすぐには諦めないことが必要である.② Prototpe Modelingの目的は特定の場所,特定の時代の雰囲気を再現することである ③最終的にレイアウトにするためにその「特定の場所」を繋ぎ合わせてリアルな鉄道として完成させる ④ レイアウトの製作にあたっては再現する場所の縮尺図を入手し、選択した縮尺に合わせて正確な位置にレールを固定する必要はない.それよりシーンの本質を捉え、その場所と時代を鑑賞者に伝えるための重要な特徴がそこに存在するように製作する.という内容です.これを読んだ時この内容は上記の”鉄道模型における造形的考察の一断面”のレイアウト版のように感じ私は常にこの言葉を意識しながら製作していました.
⚫︎ 「それらしく作る」ということの楽しみ
上にModelrailroader誌に「realism」という文言が多い印象があると記しましたが私が子どもの頃読んでいた「小供の科学」や「模型と工作」等の科学雑誌に掲載されていた車両の作り方の記事には「それらしく作る」という文言が多かった印象があります.フレーズとしては「xxはyyを利用してそれらしく作ってください(作りました)」というようなフレーズで,鉄道模型の専門誌であるTMS誌にもこのフレーズは見られたように記憶しています.パーツの充実等もあり現在では車両工作記事でこのフレーズを見かけることは殆んどありません.ただ,レイアウトでは山も樹木も「それらしく」作るほかありません.今の時代,車両製作で細密機を製作する場合「パーツを購入して半田で取り付けておしまい」という工程が数多く,制約条件の中で色々工夫して工作し実感的な車両を製作するという楽しみがなくなっているような気がします.レイアウトの製作ではこの「制約条件の中で工夫して作り上げる」という楽しみが数多く残されており,「それらしく」作ったものがレイアウト上で「実感的」に見えた時には達成感を感じ,車両製作とは違った鉄道模型の楽しみ方を味わえるような気がしました.またレイアウト上を走る車両も厳密に実物の形状を再現しようとせず「それらしく」作ってもそれほど実感を損ねない場合もあるようです.冒頭の写真のC12もそうですが,私の製作した711系モハ711では変圧器や半導体の冷却装置はホワイトメタル製の気動車エンジンと客車の冷房電源用のディーゼル発電機を利用して「それらしく」作ってあります.それでもレイアウト上ではそれほど違和感はありません.

床下機器にDC用のホワイトメタルパーツを使用したモハ711.左の機器の空気取り入れ口は103系車体のモーター冷却風取り入れ口パーツをを流用しています.

以上,レイアウト完成後に私が思っていることを記載させていただきました.内容の中には過去に記したことと重複している部分もありますが,それらの思いは今回のレイアウトを作った後でも変化がないことの印としてお許しください.
以上をもって本レイアウトの紹介を終わります.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(20) -レイアウトの製作を終えて思うこと(レイアウト上で実感を得るための車両の細密度)-

私が機関区のレイアウトを製作し製作しその中で機関車を運転して感じたことは実感を感ずるためにはある程度以上の細密度不要でより重要なのは全体のプロポーションであるということでした.一方最近の雑誌の車両工作関連の記事を見ていると自作(キット組み立て)車両の細密化には目を見張るものがあり,その細密化は運転のためのゲージと言われたNゲージにも及んでいます.当初私はレイアウトの完成後レイアウトをDCC化しようと考えており,その選択肢としては今のところ市販のDCCに対応した蒸機を購入するしかありません,私は今まで私は車両は自作を行ってきたためあまり市販品の状況には関心はなかったのですが,改めてレイアウトに使用する車両を購入するという目で市販品をみると,DCC対応製品もそれ以外の製品も常時市場に多種の機種が在庫しているとは言えず欧州のメーカーのように向こう1年間の新製品がまとめて発表されるわけでもありません.またてい新製品が発表されても発売日未定の製品が少なくありません.レイアウトに似合う好みの車両を新たに入手する目処は全く立てることができないと言うのが現状です.

それはさておき私は以前の記事でレイアウト上で実感を得るための蒸機の細密度は老舗メーカーのダイキャスト製品ではないかということを述べました.そこで今回は市販品(量産品)の蒸機はどのような方法でその質感と細密感を出しているかについて調べてみようと思いました.とは言っても手元には日本型の製品はありませんので今回は各年代の製品が揃っているMärklin社製の蒸機で外国型の機関区セクションを用いて比較してみたいと思います.日本型レイアウトの紹介記事でありながら外国型車両の話になってしまうこと,ご容赦ください.

外国型レイアウト”ALTENHOF機関区”上に並ぶ入門機(手前側: BR03)とfine detail機(後方:BR50)

下の写真は1998年に発売されたDigital Starter Set (#29845)にアソートされていたBR03です.上の写真の手前側に停車している車両です.機番は1022号機で青色(Steel biue) 塗装の機体です.スターターセットの機関車ですのでディテールは最小限で,異なる機番の黒色塗装機は入門者向けの”HOBBY”シリーズで長年単体販売されていました.スターターセットにはこの機関車の他にディーゼル機(V160)1台,客車3両,貨車4両,レール,分岐器,トランス,デジタルコントローラー(#6021)が同梱されており,それらを別に購入するのに比較して非常に安価なセットです.この機関車の金型は1973年に発売していたBR003等と同じ金型ではないかと思われ方に彫刻されているロゴは旧ロゴで原産国はMade in West Germanyと彫刻されています.手すりや配管は全て型で表現されており別付けパーツは発電機,汽笛,ベル,コンプレッサ程度です.ただ,ダイキャストの肌面は塗装は現在の製品と比較しても遜色なくプロポーションも良好です.

ダイキャスト製BR03.第3動輪のスポーク部が完全に抜けていないのは動輪にギアが取り付けられているため.

余談ですが1974年頃,日本でもダイキャスト製のC62がマイクロキャストから発売されました.TMS誌のマイクロキャストの広告には三井金属の名称があり三井金属ブランドの製品もあるようです.構造は上記のMärklin製の蒸機に似た構造ですが当時のTMS誌の製品の紹介によると空気作用管が別付けであったりロストパーツも取り付けられていると記載されており,単に初心者向けの安価なモデルを狙ったわけではなかったようです.写真を見る限りではキャブ周りの印象が実機と少し異なりますが真鍮製蒸機と並んでレイアウトにいてもそんなに違和感はなかったのではないかと思います.価格は当時の真鍮蒸機と同等で決して廉価版というわけではありませんでした.当時は真鍮製蒸機に一部に樹脂製品が取り付けられていてもそれだけで拒否反応をおこすマニアも多かったため販売数量が伸びなかったのか,当時のSLブームから想定した新規鉄道模型愛好者の増加の目論見が外れ新機種の型投資が回収できなかったのかは知る由もありませんがC62以外の機種が発売されることはありませんでした.かく言う私も当時真鍮製のC62とこのC62のどちらを買うかと聞かれたら真鍮製を選んだ気がします.

下の写真は上記のBR03のレイアウト上のクローズアップ写真です.全体的なプロポーションには問題はないので遠目に見てあまり違和感はありませんが流石にアップで見ると後付け部品の多いBR50に比較して平面的に見えます.欧州の機関区の建物は日本の建物に比較してバロック風の装飾の多い建物も多く,使用するプラキットの線も割と太いため建物に比較しても少し平面的な印象です.余談ですがMärklinの2025年新製品カタログにはこのBR03と同じ(同等?)の型を使用した新製品がビギナー向けモデルとして掲載されています.もちろんDCCデコーダー(サウンド付き)を搭載しており23個のファンクションが装備されています,ただ現在Märklinの標準製品はMärklin Digital(mfx)とDCCの両方に対応していますがこのビギナー向けモデルはDCCには未対応です.リストプライスはVAT込みで329€です.ちなみに同じカタログに掲載されている標準品?のBR01のリストプライスは549€です.

手前側がスターターセットのBR03,奥側が2000年製のBR50

このBR03の各部の詳細を見ると,ボイラーの配管は全てボイラーとの一体成形です,ただ砂撒管元栓等一部ははかなり繊細な表現になっています.この頃の日本型真鍮製蒸機は砂撒管元栓を表現した製品はまだ少なかったと思いますので日本の真鍮製蒸機より細密です..

スターターセットのBR03の3度ドーム付近のディテール

ボイラーの配管もかなり細く表現されていますが外側の配管はボイラーから庇状に張り出しています.当時の日本の蒸機マニアの間ではオール真鍮製の蒸機以外の蒸機は鉄道模型ではないという風潮も少なからずありました.上記のマイクロキャスト製品のこの辺りの表現がどうなっていたかはよくわかりませんが,蒸機の模型はオール真鍮製一択と言う風潮であった当時の日本では「これはおもちゃだ」と感じた方も少なくなかったと思われます.ただ蒸機ではありませんが最近でも欧米ではファインディテールの象徴?として「手すりが別付け(The Locomotive has separaely Grab Irons)」という説明文がよくカタログに記載されています..欧米ではほとんど車両を自分で製作する方は殆んどおらず車両はメーカー製品一択ですがこの辺りの形態には不満を持っている方が少なくないのかもわかりません.

スターターセットのボイラー上の配管.別付けの配管はなし.

Märklin製蒸機の配管が別パーツ化されるのは今から四半世紀前の2000年前後であった気がします.下の写真は2000年に発売されたBR50ですが,金型を全面的に改修し,バルブギアも改良したモデルで新製品の目玉商品としてカタログで大きく扱われている製品です.このモデルではボイラーケーシング上を這っている配管以外は配管をほぼ別パーツ化しています.そのパーツは場所に応じて金属と樹脂が使い分けられており,ボイラーの全長にわたって取り付けられている手すりや配管が並行しているところは金属線が使用され,プラ製部品ではある程度避けられない手すりの波打ちを避けており,この辺りは遠目から見た時に実感を損ねる部分をよく心得て設計しているという感があります,

2000年製のBR50のディテール.自作品にこのレベルのディテールをつけたらもう細密機?

また下の写真のBR03.10(2010年製)の別付け配管では樹脂製のクランク状になっている2本の配管は互いに独立させず間に間隔出しの部材を設ける等,実機の細部の厳密な再現には拘わらない工夫も見られます.

2010年製BR03.10の配管.クランク状配管の垂直部分に両者を繋ぐ部材が見える

一方機種によってはボイラーに沿う配管がボイラーの上部にありますが,比較的新製品でも型抜き方向の関係上,そのような部分はパイプの上面が平らになっています.ただこちらも至近距離で観察しないと殆んど気づきません.

2018年製のBR39. 上部のボイラーに沿った配管はボイラーと一体で上面が平面.

火室からキャブ下に至る配管と運転室から各部への配管はバラキットを使用して細密化加工する際の「見せ場」の一つはですが,下の写真はその部分のBR03.10(2010年製Insider Model)の写真です.細密度としては自作で細密機を作る場合でもこの程度のディテールがあれば細密感は十分出せるような気がしますが,このモデルではそれらの配管は全て樹脂製です.この部分を詳細に見ると見るとエアータンク周りの赤色の配管はエアータンク前方の2本の配管の後ろの運転台側に伸びる細い配管を除いて一体で成形されています.キャブから出る配管も運転台側に伸びる4本の配管を除いて一体成形の部品です.つまりこの部分の配管群は2個の樹脂製パーツで構成されていることになります.樹脂製パーツですのでさすがに線は太いですがレイアウト上ではあまり気になりません.一方それに比較すると全体的に配管が平面的なのが気になりますがレイアウト上で実感を損ねるレベルではありません.最近読んだMärklin MagazinによるとMärklinでは設計時に別付けパーツの取り付けに要する時間(工数)を決めてそれに適合するように別付けパーツを設計しているようです.このようなモデルを見るとメーカーは設計者とレビュアーが模型に要求される細密感と部品の製造における制約事項と許容できる組み立て工数のバランスをとってコストを意識しながら設計していることが感じられます.以前の記事でレイアウト上で実感を得るための細密度は内外の老舗メーカーのダイキャスト製品ではないかと述べましたが「内外の老舗メーカー」と記したのは長年鉄道模型を設計製造販売している老舗メーカーはレイアウト上で実感を得るための細密度とコスト等生産上の制約のバランスをうまく取るノウハウがあるように感じたためです.

最後はテンダーの写真です.BR50のテンダーはプラ製ですが引けは殆んど見られず塗装の艶の調子も揃っていますので違和感を全く感じません.側板の平面製はダイキャストや真鍮製のテンダーに引けをとりません.またこのテンダーのアンダーフレーム(赤色の部分)と台車は未塗装です.また上の写真のエアータンク周りの部品は全て未塗装である一方,ランボードの赤は塗装となっていますがその差はほとんどわかりません.また台車等の未塗装部品には樹脂の質感を感じさせず樹脂の質感を目立たなくする(樹脂の引けを目立たなくする?)何やら微妙な梨地となっています.この辺りもメーカーのノウハウなのでしょうか.

上の細部写真の製品はBR50は2000年に型を改修した製品(完全に新規型ではない),BR03.10は2010年のMärklin Insider Modelで完全な新規型,BR39は2014年に新規型を起こしたM¨arklin Insider Modelの流れを汲む2018年の製品です.これらを見ると多少の差はあるものの2000年に発売されたBR50のレベルでレイアウト上の機関車の細密度は十分ではないかと考えます.Märklinも最近の製品ではさらに細密度を追求するのではなくドラフトと同期する発煙装置や集電不良に伴うサウンドの停止を防ぐためのキャパシタの追加等,細密化ではなく走行時の機能や走行性のアップに注力しているようにも感じます.日本でもこの程度の細密度を持ちサウンドデコーダーを装備したDCC対応の蒸機が各種発売されるようになれば私の製作したレイアウトもDCC制御で大いに楽しめる日が来るのですがそれはいつの日になるのでしょうか.

機関庫前ののBR01(2007年製)とBR39(2018年製)
炭水線のBR03.10(2010年製)

日本型レイアウトの記事が外国型の車両の紹介記事になってしまったこと,ご容赦ください.次回,全体的なまとめを記してこのレイアウトの紹介記事は最終回としたいと思います.最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(19) -レイアウトの製作を終えて思うこと(運転という観点で)-

前回はレイアウト上の機関車の細密度がレイアウトを見た時の「実感」にどの程度影響を与えるかについての見解を記載させていただきましたが今回は私がこのレイアウト上での車両の運転した際に感じたことを記載してみようと思います.

レイアウト上のC12.この車両は1980頃ににカツミ模型店のシュパーブラインシリーズのキットを組み立てたものでモーターは当時蒸機に一般的に用いられていたDH−13を使用しています.

私が以前このブログで紹介したMärklin Digitalを使用した機関区のレイアウトセクションの製作を開始したのは2010年頃でしたがこの時点で今回製作した日本型のレイアウト上で走らせようと思った蒸機は一部を除いて殆んど存在していました.それでも当時私が今回製作したような日本型のレイアウトを製作せず外国型のレイアウトを製作した理由は車両の ”走り” でした.当時手元にあった日本型の蒸機は全て1960年代から使用されている駆動機構でモーターも解放式の横型モーターと言われるモーターで走行性能や走行音は満足とはいえない状況でした.それに対し当時手元にあった外国型のデジタル制御の蒸機はコントローラーのノブ位置に応じて車両速度が変化しスロー運転も問題なく行なえます.また2線式のような車両留置用のギャップの設置と切り替えも不要で機関車の駐機も場所を問いません.当時私はそのような点に大きなメリット感じ,”運転を楽しむならこれしかない”と考えて製作したのが最初に製作したレイアウトセクションである”ALTENHOF機関区”でした.その後のMärklin Digitalを含むDCC制御の発展は凄まじく,製作当初は予想していなかった多彩なサウンドやライトの制御が可能となり,その後導入した自動運転機能と相まって狭いレイアウトセクションでも充実した運転が可能になりました.
今回日本型レイアウトの製作に当たっては手持ちの車両で果たして低速でのスムーズな走行が要求される機関区をテーマとしたレイアウトセクション上での運転が楽しめるのかは製作当初から懸念点として把握しており,このレイアウトの一連の紹介記事の冒頭にもその旨は記載させていただきました.そして実際にレイアウト上で手持ちの車両を走らせてみると想像どおり機関車の走る周囲の情景は機関車の走行性能の悪さをカバーするものではなく,このレイアウト上での運転はサウンド付き車両のDCC運転に比較すると残念な結果でした.改めて調整を行っても私の技術力不足もあってかなかなかデジタル制御のような”全速度域での”Silkyな走り”には近づけられません.これは結果的にレイアウト製作前に想定したとおりの結果でしたが,そうは言っても自分が苦労して製作した機関車がレイアウト上で動くのは見ていて楽しく,それはそれで充分楽しめます.ただこれはあくまでも私の私の感覚ですが,機関区のレイアウトセクションでの運転という観点ではレイアウトという舞台を用意して昔苦労して製作した思い入れのある機関車が動くのをレイアウト上で眺めてもそれはデジタル制御での運転の楽しみを凌駕するものではないと感じました.

レイアウト上を走るD H-13モーターを搭載したC62.異音はゴムジョイントの劣化による振動のようです

私が現在使用しているパワーパックはMärklin社のZゲージ用のパワーパックで1995年に購入したもの(ロゴ以外の形状は1972年に初めてZゲージ用として発売されたものと同一)ですので出力が小さくどこまで平滑な直流が出力されているかは不明です.このパワーパックを使用しているのはい今まで使用していたパワーパックが故障したためで,最新のパワーパックやPWM制御のパワーパックを導入すれば少しは現状が改善されるのかもわかりませんが.アナログ運転機器にこれ以上投資する気にもなりません.現在所有している蒸機をDCC化することは駆動系全体の大改造が必要と思われ,私には資金的にも知識的にも技術的にも不可能で,残された方法は既成の日本型DCC車両を導入するしかなさそうです.私の外国型レイアウトを走る車両は全て既製品で自作の細密機ではありませんがそれでも運転は充分楽しめることは経験済みですし前回の記事のようにレイアウト上の運転で実感を得るのに細密機は不要ということは確認できましたので,市販品を購入して運転を楽しむことも考えました.手元にあるMärklin Central Station3はDCCにも対応していますので制御システムのインフラは整っています.しかし一般の(資金力の乏しい?)鉄道模型愛好者が購入できる価格でDCC対応を謳う製品を発売しているメーカーはごく一部(1社?)で常時多くの機種が市場に在庫してはおらず,これから日本でメーカーや雑誌の発行元がが主導してDCCを推進していこうという意欲も全く感じられません.機関車から音を出すだけであればPFMサウンドやカンタムサウンドもありますが,どちらもパワーパックが機関車1台に1基必要でこの世王なレイアウトでは現実的ではありません.このレイアウトの製作を開始した時にはレイアウト完成後,このレイアウトを何らかの形でDCC化しようと考えていたのですが,レイアウトが完成してあらためてDCC導入に向けて検討を開始てもこのような状況は以前と全く変わっておらず,仕事をリタイアし鉄道模型に投資できる金額も限られる中,正直日本型のDCC対応車両を購入する気が起きません.残り少ない人生で今後も鉄道模型を運転という面から楽しもうと考えた時,日本型HOスケールの鉄道模型をDCC制御でPlug & Play的に気軽に楽しむことは少なくとも現時点ではもう諦めた方が良いのではないかとさえ感じている今日この頃です.かつて鉄道模型趣味誌の主筆であった山﨑喜陽氏がご存命であったら今の状況をどのように思われるのでしょうか.

外国型の機関区セクションを走るBR39(制御方式はMärklin digital). バックグラウンドのノイズは発電機のタービン音手動でOn/OFF可能)です.対向するBR01はランニングギアの点検灯を点灯させています.

苦労して製作したレイアウトセクションのまとめとしてこのようなネガティブなことを書くのは正直気が引けたのですが少なくてもこれが現時点における私の率直な思いです.どこかのメーカーからサプライズ発表でもあればまた気が変わるかもしれませんが・・・.もちろん鉄道模型の楽しみ方は人それぞれですので私とは異なった感覚を持つ方も多いと思います.あくまでも私の感じたこととしてお読みいただければ幸いです.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(18) -レイアウトの製作を終えて思うこと(レイアウトの実感と車両の細密度の関係)-

蒸気機関車が活躍していた時代の機関区の製作過程の紹介は前回までで終了し,今回からはこのレイアウトセクションを通じて考えたこと,感じたこと等を述べてみたいと思います.まずはレイアウトを実感的と感ずるためにはレイアウト上の車両はどの程度の再密度があれば良いかを考えてみます.

レイアウト上のC12とD51.完成年は40年以上異なり細密度のレベルも異なります

最近のHOスケール(16番)の市販車両は以前と異なり全体的なプロポーションが一目見ておかしいという車両はなく全体的に細密化しています.中には一見実物の印象と異なるように見えてもよく見てみると模型の形態が正しく私の印象が間違っていたことがわかるというような事例もあります.また自作車両も毎月発行される雑誌を見る限り細密化がエスカレートしており雑誌には「ついているものは何でもつける」という方針?の作品が数多く発表されています.市場ではプラ製品の普及等でベーシックなキットがほとんど姿を消したにもかかわらずディテールアップ用のパーツは新製品が数多く発売されるという不思議な現象も見られます.
かくいう私もかつてバラキットや細密化用のパーツが数多く発売されていた時期に蒸気機関車のバラキットのディテールアップ工作を楽しんだ経験があり,今回日本型レイアウトを製作した動機はこれらの機関車をレイアウト上で鑑賞するというものでした.そこで今回は機関車の細密化はどの程度「レイアウトを実感的と感ずること」に寄与するかを考えてみたいと思います.
機関車をレイアウト上で鑑賞(目視)した時の見え方とは言っても目視した時の感覚は説明が難しいので写真で説明を試みます.下の2枚の写真は今回製作したレイアウトの給砂塔の前に停車するC12とD51でいずれも運転時にレイアウトを見ている距離から撮影したものです.写真のC12は1980年ごろの作品でD51は昨年製作した最新の機体です.1980年製のC12はヘッドライト,主発電機および車警用発電機,汽笛や轍砂管元栓をロストパーツに交換してありますがパイピングはあまり追加しておらず,新たに追加した警用発電機は取り付けただけでパイピングは一切しておりません.またバルブギアはキットのままでロッド類はプレス製のままとなっています.これに対しD51は実物写真を参照して一通りのパイピングは設けてあり,例えば車警用発電機にはマフラー,電線管,スチーム管,ドレン管を取り付けてあります.またバルブギアは加減リンクをロスト製に交換し,一部のロッド類は洋白版で作成し先端をフォーク上に加工して一部に真鍮線を植え込んであります.そしてこの車両がが給砂塔前に停車している2枚の写真を比較した時,私の感覚ではレイアウトの「実感」という観点で両者にあまり差は感じられません.

レイアウト上のC12
レイアウト上のD51

さらに望遠マクロで機関車をクローズアップして撮影した写真が下の写真ですがこちらも上の写真と同様,あまり差がないように感じます.車警用発電機のパイピングの有無はあまり気にならず,バルブギアは光があたる角度によりC12のロッドプレスのダレが目立つ(わかる)場合がありますが,全体的に見た場合それらが実感を損ねる大きなな要因にはなっていない気がします.

望遠マクロでクローズアップしたC12
上の写真と同じ場所から撮影したD51

この辺りの理由について,脳科学の先生であれば理論的に説明してくれそうな気がするのですが私の経験で思い当たることは人間写真や実物を見る時その全体を細部まで把握できていない(見ることができていない)のではないかということです.我々は一度に多くの情報が存在しているものを見てもその中の全ての情報を認識して処理していないということは事実のようです.それは我々が上の写真のような情景を見て実感的か否かを判断する際に機関車の細部はあまり認識しないでそれを判断しているのではないかと思います.
美術館では我々(私)が絵画を鑑賞して評価する時,細部までつぶさに観察してその中にある全ての情報を得てから評価をしていません.第一印象としては過去に好ましいと思った絵画(の記憶)と比較して割と瞬時に判断しています.それと同様,我々は上の写真ような情景を目で見て見て実感的か否かを判断する時には我々は過去に見た機関区の記憶と照らし合わせてその記憶と合致していれば実感的と判断し,その際機関車の細部までは見ていないのではないかと思います.これは今までの記事でも何回か触れてきた故なかお・ゆたか氏が1951年位執筆した”鉄道模型における造形的考察の一断面”の記載内容に通ずるものがあります.氏の書いた記事はどちらかというとモデル=車両と捉えている感がありますが情景(機関車の姿)を過去の記憶と照らし合わせる時,車両+レイアウトに注目するか車両のみに注目するかで記憶に蘇る機関車の「細密度」は異なっているのではないかと思われます.そう考えるとレイアウト上の機関車の細密度は一定の閾値以上であればそれ以上の細密さは判断に影響を与えず,むしろ全体的な印象が実機を正しく捉えているか否かに影響すると考えられます.そしてレイアウト上の車両に要求される許容細密度の閾値は細密モデルと言われるモデルが要求している細密度より低いのではないかと考えます.ただ再密度の高さが実感を損ねているとは感じませんし,レイアウト上に細密どの異なる車両が存在してもあまり気になりません.これはレイアウトを製作した前から薄々思っていたのですが実際にレイアウトを製作したことにより今回改めて確認することができました.そうすると次にレイアウト鑑賞したりその中で車両を走行させる場合,車両にどの程度の細密度が必要になるかということが問題となります.これについて私の大雑把な感覚では国内外のガレージメーカーではない老舗鉄道模型メーカーのダイキャスト製の量産品の細密度が結構参考になるのではないかと感じますが,これについては後日述べてみたいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.次回はこのレイアウト上で車両を走らせた時に感じたことを書いてみたいと思います.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(17) -アクセサリの製作(6:その他のアクセサリ)-

このレイアウトに配置したアクセサリを紹介するにあたり最初に”構想のプロセス”という項題の記事で製作するアクセサリを一覧表で紹介しました.その時はこの表に従ってレイアウト上のアクセサリを体系的に紹介しようと考えていたのですが,私のいい加減な性格が災いし次第に混乱してきてしまいましたので今回は”その他”と題してこれまで紹介していなかったアクセサリを紹介させていただきたいと思います.

これから紹介するアクセサリは上表のものですが,以下にそれらのアクセサリをレイアウト上に配置した時の写真と製作中の写真で紹介したいと思います.
⚫︎ 機関庫内部
下の写真は機関庫を取り外した機関庫内部の写真です.右上のロッカーと戸棚,左下の机は建物の室内に配置したものと同一でケント紙で作成しました.パレット,コンテナボックス,木箱はPreiser製のパーツです.作業台と脚立は自作で真鍮角棒と真鍮線,プラバンより作成しました,2段式の金属製の作業台は真鍮角棒と網目板をハンダで組み立てた自作品です,奥に見えるハシゴはエコーモデル製のパーツを使用しました.脚立は真鍮角線と檜角棒から自作しました.スペースにあまり余裕がないのでこれらを配置する際には車両との接触に注意が必要です.

機関庫内に配置したアクセサリとフィギュア

踏み台,作業台は檜角棒とスライスしたSTウッドで製作しました.ホワイトメタル製のパーツも発売されていますが木製の方が質感もよく費用も抑えられます.

組立てが済んで塗装を待つ木製の作業台

金属製の作業台は真鍮角線と網目板で製作しました.パーツもありますがキット加工等真鍮工作の経験があれば簡単に製作でき費用も抑えられます.

真鍮角線と網目板を使用して自作した金属製の作業台

⚫︎ 乗務員詰所の入り口付近
左から,水道蛇口はエコーモデル製パーツ,流しはケント紙製の自作品です.写真ではわかりにくいのですが流しと入り口の間にエコーモデル製の自転車が置いてあります.スノーダンプはケント紙と真鍮線からの自作品,防火用水の本体(ドラム缶)は檜丸棒とラベル紙帯からの自作,蓋はプラバンとプラ棒からの自作です.建物に立て掛けてある箒はPreiser社製の消防士のフィギュアの同梱品です.

乗務員詰所入口付近のアクセサリ

⚫︎ 砂煎り小屋付近のアクセサリ
物干しは真鍮棒,真鍮帯板,真鍮帯材を用いた金属製で竿は真鍮線,洗濯物はコピー用紙から作成しました.この写真のドラム缶はPreiser製のパーツ,その横の袋もPreiser製のパーツです.

砂煎り小屋付近に配置したアクセサリ

組み立て中の物干しです,真鍮線,真鍮角棒,真鍮帯板を使用し,はんだ付けで組立てました.

製作中の物干し

⚫︎ 油庫・線路班詰所付近
線路班詰所に立て掛けてあるツルハシはエコーモデル製パーツ,その横の石(バラスト)の入ったカゴはPriser製のパーツ(マルシェのじゃがいも?が入っている籠)です.油庫前の消火砂はEvergreen社製の角パイプをスライスし中に砂を入れたものです.

油庫,線路班詰所付近のアクセサリ

⚫︎ 線路班詰所と倉庫の付近
ゴミ置き場の囲いは檜角材(底面はケント紙)による自作,木箱.コンテナ.パレット,ドラム缶はPreiser製のパーツです.その手前のゴミ焼却機はエコーモデル製のパーツを組み立てました,ゴミ置き場にある袋はPreiser製のパーツで,その他のジャンクはプラ角棒等から製作しました.

線路班詰所と倉庫付近のアクセサリ

⚫︎ 気動車燃料補給設備周辺のアクセサリ
消火用砂は油庫の前にあるものと同じものです.ドラム缶はPreiser製です.小屋の前の消火器はエコーモデル製,ポリタンクとホースリールはPreiser製の消防士フィギュアの付属品です.給油用ホースはAWG #30のリード線で先端にPreiser製の消防士フィギュアの付属品の中にあった放水ノズルを取り付けてあります.

気動車燃料補給設備回りのアクセサリ

⚫︎ 機関区事務所付近
機関区事務所付近にはスノーダンプ,ドラム缶を配置し,古枕木にエコーモデル製のハシゴを立て掛けてあります.

機関区事務所裏手に配置したアクセサリ

未塗装状態のアクセサリです.脚立はハシゴ部分を真鍮角線で製作し,台は木製です.机は建物の内部に配置したものと同一です.

完成して塗装を待つアクセサリ

ドラム缶は比較的多く必要でパーツを購入すると高価になりますので当初檜丸棒とラベル紙で自作していましたが,海外サイトのセール品の中にPreiser製のドラム缶がありましたのでそれを購入して使用しました.価格は30個入りで6.8€(VAT,送料別)でした.

Preiser製のドラム缶キット.付属しているデカールは未使用

日本ではPreiser社の製品はフィギュアが有名ですがそれ以外にも結構色々なパーツが販売されています.今回は以前製作したレイアウトに使用した時余ったマルシェのキットの野菜籠や野菜が入った袋を砂利運搬用の籠やごみ袋に流用しています.

砂利を入れた籠やゴミ袋はPreiser製のマルシェのキットを流用

⚫︎ 機関区入り口の門
機関区入口の門はEvergreen社製のプラ製角棒・丸棒から作成し,真鍮線と割りピンで作ったヒンジにより開閉可能としています.

機関区入り口に設けた門扉

塗装前の部品です.ヒンジは門側にL時に曲げた真鍮線,門柱側に割りピンをの受けをもけてあります.

Evergreen社製プラ素材で製作中の門扉

⚫︎ 機関区事務所入口付近
機関区事務所入口付近には植栽を設けてあります.低木はBusch製のオランダフラワーに緑色のターフを接着したもの,草木はNoch製を使用しました.Noch製の草木は日本ではKATOから販売されていますが少し色調が異なる気がします.写真で半分写っている入口のゲートは真鍮版と真鍮線で製作した自作品です.

機関区事務所入口脇の植栽

Busch製のオランダフラワーとNoch製の草木の写真です.これらは日本ではなかなか手に入らないので以前海外の模型店に発注したものです.ある程度数がまとまった場合海外からの購入の方が送料を入れても安価(税金は欧州のVATが非課税となり輸入時に原価(現地価格の6割程度)に10%の消費税がかかります)ですが昨今の欧州の物価高による値上げと円安によりその差は小さくなっています.

植栽には海外模型店から購入した素材を使用

⚫︎ 草木(雑草)
機関区の植栽以外の草木(雑草)は水を扱う設備の付近や人が立ち入らないところに配してありますがあまり荒れ果てた感じにならないように留意しました.

給水塔付近の雑草

⚫︎ 機関庫周り
機関庫と柵の間には車輪とドラム缶を配しました.国鉄の機関区では敷地内にあまり車輪のようなものが無造作に放置されていた記憶はありませんでしたがアクセントとして設置してみました.

機関庫横に配置したアクセサリ

⚫︎ フィギュア
フィギュアは一部にKATO製を使用した他はPreiser製の未塗装品を塗装して配置しました.私は#16325(Railway parsonnel and passengers)というアソートセットを使用しました.未塗装品は1パッケージに120体入っていますが全てが異なる形態ではなく,同一形態のものが同数入っているわけでもないようです.レイアウトには同じ形態のフィギュアを複数配置しています.塗料は主に色のりの良いHumbrol製のエナメル塗料を使用しました.Humbrol製エナメル塗料は色ノリがよく塗膜も丈夫ですが反面乾燥に時間がかかるため作業は気長に行うことが肝要です.Humbrol製のエナメルは使用前に十分に撹拌することが必要ですが棒状のものではいくら時間をかけて撹拌しても不十分で筆の穂先を容器のの壁面に擦り付けるような形でで十分撹拌することが必要なようです.

レイアウト上に配置したフィギュアは一部にPeriser製の未塗装製品を塗装して使用

塗装はまず肌の部分から開始します.

フィギュアの塗装はまず肌の部分から開始します

その後髪の毛(黒),ヘルメット(黄色),作業服(紺色),作業ズボン(紺色または濃灰色),シャツ(白),道具(黒,黄色等)の順に塗装していきます.以前一般人を塗装した時には洋服のカラーコーディネートに気を使いましたが鉄道員の場合は使用する色が限られているのでその点は簡単です.

道具部分の塗装を残す状態のフィギュア.ランナーから切り離すのは最後の工程

⚫︎ アクセサリの配置
以上でレイアウト上に配置したアクセサリの紹介を終わります.最後にこれらのアクセサリを配置する際に留意した点について述べてみたいと思います.
これらのアクセサリを作成する際,何個製作するかは実際にそれらのアクセサリを配置する場所を決めて数量を決めますが,製作の際には失敗時の予備を含めて多めに製作したものもあります.一方実際に想定した場所にアクセサリを配置すると違和感を感ずる部分もありました.このような時には構想にはあまり拘らずに適宜修正を加えました.また製作したアクセサリを全て使用することを優先することは絶対に避けた方が良いと思います.全てのアクセサリはそこに存在する必然性が必要であるということを忘れずに配置を決めていくことが重要だと考えます..

以上でレイアウト上に配置したアクセサリの紹介を終わります.今回でレイアウト各部の紹介は終了し次回以降はレイアウトを製作しての書簡等を述べてみたいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(16) -アクセサリの製作(5:機関区の設備)-

蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(15)でアクセサリの一部を紹介した後,諸般の事情でこのレイアウトに関する紹介を長らく中断してしまいましたが,引き続き(16)としてレイアウト上のアクセサリの紹介を続けさせていただきます.今回は下の表に示す機関区設備のアクセサリを紹介したいと思います.

⚫︎ 構内踏切
踏切板は檜角棒です.幅は両側にレールを取り付けた時の幅がNMRAの規格(最小値)である14.4㎜より小さくなるように決定します.私は余裕を見てレール取り付け後の幅が12-12.5㎜になるように踏切板の幅を決めました.檜角棒は所定のサイズに仕上げた後ラッカー塗装し,Humbrol製のエナメルで塗装したCode70レール(IMON \Shinohara製)を取り付け全体をIndian Inkでウエザリングした後,ゴム系接着剤で所定位置に固定しました.接着は全てゴム系接着剤で行っています.

製作中の構内踏切用パーツ
完成した踏切板

取り付け後,踏切板が走行用レール高さより高くなっていないことを十分に確認します.問題なければ念のため踏切を通過する車両のKadee Couplerの解放ピンが踏切板と干渉しないことを確認して完成としました.

レールに取り付けた踏切板

⚫︎ 転轍器付近の目隠し
実際の分岐器は転轍機とポイントレールの間に切替用の動作機構が存在します.しかし模型の場合はその機構はダミーとなりますので省略し,網目板で製作した蓋を取り付けてあります.このような実例があるかどうかは不明ですが積雪地にはありそうではないかと考えてこの形としました..転轍機の反対側もポイントレールの可動部がレールの外側に突出しておりバラスト散布ができないのでその部分にはSTウッドで作成した蓋状のものを取り付けました.

ポイントレール転換機構の目隠し板

⚫︎ 防護柵
防護柵は2㎜x2㎜の檜角棒を用いて製作しました.踏切部の防護柵とそれ以外の場所の防護柵の違いは長さのみで,それ以外の構造は両者同一です.組立は木工用ボンドを使用しましたがはみ出すと塗装後に見苦しくなるので組立時にはみ出さないよう注意が必要です.取り付けは最も外側の角材の底面に真鍮線を埋め込んで地面に開けた穴に差し込んで固定しました.

油庫の前に設置した防護策

⚫︎ 古レール・古枕木
蒸気機関車が活躍していた頃の機関区では補修用でしょうか,線路際によく古レールや古枕木が置かれていました.古レールは檜角棒で台座を製作しその上に切断したCode83レールを並べてあります.枕木は2㎜x2㎜の檜角棒を使用しましたが少し細い印象です.レールはHumrol製のエナメル塗料,枕木はラッカーで塗装しIndian inkでウエザリングしました.

レイアウトに設置した古レールと古枕木

⚫︎ 運搬用トロッコ
物資運搬用のトロッコは2台製作し短く切断したレールの上に配置してあります.車輪はNゲージ用の車輪を用いて両端の軸を切断した後車軸を中央で切断しパイプを嵌め込んで期間を広げました.本体は1台を台枠のみとし,もう1台は台枠状に木製の床があるタイプとしました.台枠はEvergreen社製のプラ素材,床はSTウッドを用いて製作しています.台枠が露出しているトロッコの台枠上には古枕木を載せてあります.

短く切断したレール上に設置したトロッコ2種

⚫︎ 車両洗浄台
機関区にはディーゼル燃料補給小屋を製作したのでそれに合わせて車両洗浄台も製作しました。イメージは子供の頃から見慣れていた三鷹電車区の人道こ線橋から見える洗浄線の風景です.

参考にした車両洗浄台

洗浄台の構造は鉄製の脚部にコンクリートパネルを渡した構造としました. 脚部はEvergreen社製にのIビームとアングル材を使用してコの字型に組み立てました.

プラ素材で製作中の脚部

通路となる部分は1㎜厚のイラストボードで作成し,1㎜厚のイラストボードを所定寸法(長手方向は脚部の間隔)に切断後、切断前と同じ配列でラベル氏の上に並べ, あらかじめレイアウトに取り付けた脚部に接着しました. 組み立て前に脚部はダークグレー、通路はライトグレーに塗装してあります.

ケント紙で製作中の洗浄台

1960年台にはまだ三鷹電車区のような”都会の電車区”にも車両の自動洗浄設備はなく,洗浄台の上では多くの人々が手作業で車両の洗浄を行なっており,人道こ線橋上からはその作業を間近に見ることができました.この時のイメージを元に洗浄台上に各種のアクセサリを配しています.

製作したアクセサリは左よりホース掛け,水道蛇口と流し,モップとモップ置き.雑巾干しです.一部のホース掛けにはエコーモデル製のバケツをぶら下げてあります.水道蛇口はエコーモデル製ーのパーツ,ホースはAWG#30ケーブル,その他はEvergreen社製のプラ素材やケント紙で製作しました.また洗浄台の下側には真鍮線で製作した水道管を取り付けてあります.ハシゴはEvergreen社製のIビームとプラバンで作成しました.

洗浄台上に設置したアクセサリ

この洗浄台は地方の機関区の片隅にある設備でありそれほど使用頻度は多くありませんので台上にフィギュアは配置しませんでした.

完成した車両洗浄台

⚫︎ 車両への給水設備
洗浄台の反対側には気動車に給水する給水栓を設けてあります.駅にある給水設備は給水コックが地上付近にありますがこの機関区ではもう少し目立つものにしようと考えPreiser社製の消防士のフィギュアの中にあった消火栓を使用して作成しました.ホースは洗浄台と同じAWG #30のケーブルをHambrolのエナメル塗料で塗装したものを取り付けました.

Preiser製の消火栓を利用した給水栓

以上で機関区の設備の紹介を終わります.最近はレイアウトに設置するアクセサリパーツの各社から発売されており今回作成したものの中にもパーツが発売されているものもあります.当然自作したものよりも形が整っていますがパーツを利用するとレイアウトが何か没個性になるような気がしており,使用する気にはなりませんでした.
次回はその他のアクセサリを紹介したいと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.