レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(15) -アクセサリの製作(4:安全性の観点から規則等で要求されているアクセサリ)-

前回まで2回にわたりこのレイアウトの中では ”大物” のアクセサリとして電柱と柵を紹介しましたがここからは所謂 ”小物” と言われるアクセサリを紹介します. 製作するアクセサリは以前 “レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(12) -アクセサリの製作(1:構想のプロセス)-” で一覧表にまとめましたので今回からはその表に従って紹介していきます.

<車両接触限界票>
車両接触限界表は分岐器の分岐側の線路枠に建てられる標識で車両を停車させる際この標識より分岐器側に列車を停車させることを禁じる標識です. その形状は一般的な”甲号”と積雪地で用いられる”乙号”があります.今回のレリアウトは北海道タイプですので製作したのは積雪地用の”乙号”です. その寸法は機芸出版社発行の”シーナリーガイド”に掲載されているのでその記事の寸法に従って製作しました. 材料は1×1㎜の檜角棒でそれを3角形に整形して目止め後塗装したものです. 私は積雪地には住んでいないのであまり馴染みがないものですがこの”乙号”の高さは1200㎜ありますので積雪地以外に設けられる通称”豆腐”と呼ばれる”甲号”に比較すると非常に目立ちます. ただ”甲号”を使用している地域でも全く積雪がないとは言えませんのでもし雪が降ったら標識は一瞬のうちに見えなくなるような気もするのですが大丈夫なのでしょうか. ちょっと心配です. この標識は線路間隔が4mを下回る地点(線路間隔が4m以下の場合には線路間隔の値を下回る地点)に設けられるようですが, 前述の記事にもあるようにこの値(線路間隔50㎜)で設置すると留置線の有効長が短くなりますので線路間隔42ミリの地点に設けてあります.

レイアウト上に設置した車両接触限界票.

<車止め(転動防止)>
側線に留置された車両の転動防止のため線路に跨がせておくストッパでこれも上記記事の中に製作法が掲載されていますが構造が複雑で製作するのが大変なようにに思えましたのでエコーモデルのパーツを使用し, 白塗装をして正面から見て左側の側線の2箇所に取り付けました. 余談になりますがが中学生の頃こんな車止めは車両を止める効果があるのかと思ったのですが物理の授業で習った斜面の問題で計算すると勾配がほとんどなければこの車止めにかかる力は意外に小さく車両が加速していなければこのような車止めでも意外と効果があるのではないかと納得した次第です. なお取り付けに際しては車両と干渉しないかの注意と設置後に手持ち車両によるチェックが必要です. 特に蒸気機関車の台枠下のブレーキロッドの干渉には注意が必要です.

車止めは車両との干渉に注意が必要です. クリアランスが一番厳しいのは気動車の台車より蒸気機関車のブレーキてこのようです.

<一時停止標識(標識/文字)>
一時停止標識には2種類あるようです. 黒十字の停止標識は出発信号機が設けられない(設けない)場所で一時停止を指示する標識のようで信号関連の規定との関連があります. それに対し文字による一旦停止表示は機関庫の入り口等, 信号とは関係しない部分での指示に用いられているようです. このレイアウトでは前者を機関区出口に設け, 後者は機関庫前や給炭台前等に適宜設置しました.

<転轍機(転換機)>
分岐器のポイントレールの切り替えを行うポイント転換期には各種ありますが転轍機と聞いてまずイメージするのは錘付き転轍機ではないかと思われます。かつて東京では武蔵野線が開業する前、山手線と並行していた山手貨物線(現埼京線)には各駅に貨物用の側線がありましたが、そこには作動レバーに錘のついたこのタイプの転換器が多く使用されたいましたので都市部でも結構見る機会がありました。この転轍機は形状に特徴がありかつてはどこでも見られたせいかメジャーなメーカーからパーツが発売されているのはこのタイプです。ただ、この転轍機は信頼性に問題があるため重量のある機関車が通過する機関区の転轍機としては使用されないようです。そこで今回はエスケープ式転換器(S型ポイントリバー)と呼ばれるタイプの転轍機を製作しました。

転轍機と線路の間には網いたと檜角材で製作した作動装置の目隠し版を取り付けてあります.

このタイプの転轍機は信頼性が高く、今でも各所で見ることができます. なお,選定にあたっては転轍テコと羽根とランンプがついた転轍器標識を組み合わせたタイプも考えたのですが、オレンジ/紫色に光る標識は魅力的であるものの、ポイントレール転換時に動く機構の製作は私には難しく、写真撮影時はともかく、実際にに運転する際には動かないとかえって実感を損ねると思い採用を見送りました。製作過程は以下の写真を参照願います。

ベース部はEvergreen社製のパイプと角棒で作成しました.
標識部はt=0.3のプラ板を円形に切り抜き、スリットを入れて組み立てました.
ベース部と標識部を真鍮線を介して組み立て、真鍮線から製作したレバーをつけて完成です. ベース部と標識部を繋ぐ真鍮線は、標識側には角形の部材を、ベース側にはベースのパイプの内径にはまり込む丸棒を取り付けました. ベース部と標識部を繋ぐ棒の長さは長いタイプと短いタイプがあるようです。今回の転轍器は棒の長いタイプとしましたが、少し長さが長すぎました。この後、黒塗装をして標識部に白を塗って完成です.

レイアウトへの取り付けに関しては、枕木の外側に突出している分岐器の作動レバーを隠すため、転轍機側には網目板と真鍮角材で製作した蓋、反対側にはSTウッドと檜角材で作成した蓋を取り付けてレバーを隠してあります。

<車止め(線路終端)>
車止めはエコーモデルのパーツを使用しました。品番#155の、第3種甲(l号)と呼ばれるタイプを採用しています。これは車庫の車止めとしてよく用いられているタイプです。実物では白く塗られた例もよく見られますが、目立ちすぎると考え、今回は黒塗装としました。このパーツはレールも一体に整形されていますが、そのレールが細い(Code70?)ため、Code83のレールと高さを揃えるのに苦労しました。この辺り、実際に使用されるレールのサイズが異なることを考えて各種レールに対応できる設計にしても良い(そこまで細密さにこだわる必要はない)ような気もします。米国のModelrailroader誌のコラム記事等にはrealismという言葉と同時にImage をre-createするという表現が出てきます. 今まで色々レイアウトを製作してきた中で, レイアウト製作では車両製作以上にこのImage をre-create(再創造)するということが重要になると感じており, 市販のパーツを使用する際には注意が必要であると感じます.

パーツの車止めは取り付け時に線路との高さの調整が必要になります. 車止めの手前の線路は頭部を塗装しました.

<注意表示(踏切・ゼブラマーク・立ち入り禁止)>
これらの注意看板の制作方法はこれまで製作したレイアウトと同じ方法で作成してあります. その手順は ① 各種素材やアプリを使用して図案を作成 ②コンビニのレーザープリンタで出力 ③ 表面を保護するためにPPテープを表面に貼り付け ④所定の大きさに切り抜き ⑤足をつけたプラ0.5㎜厚のプラバンに貼り付け ⑥取り付け板と足を塗装 という手順です. ゼブラマークは表計算ソフトで作成した黄色と黒の縞模様を斜め45度方向で帯上に切断して製作しています.

図案作成の際はあらかじめ大きさの異なる同一図案を作成し, 配置する場所によって使用するサイズを適宜選択しています.
表計算ソフトにより製作したゼブラマーク


なお、プラ板への貼り付けは以前は両面テープで行っていましたがテープの厚さが気になったため今回からプラ板への貼り付けは今回からゴム系の接着剤を使用しました. これらの表示をレイアウト上に設置したのが下の写真です.

レイアウトセクション上に設置した今回製作したアクセサリー
柵に取り付けた立ち入り禁止マーク

次回は機関区として必要なアクセサリ類の紹介をしたいと思います. 最後までお読みいただきありがとうございました.

レイアウトセクションの製作:蒸気機関車が活躍していた時代の機関区(14) -アクセサリの製作(3:柵)-

前回の電柱に続いて今回は機関区(鉄道用地)の境界にある柵(フェンス)を紹介します. 前回の電柱と同様に柵はレイアウト全体に配置されるのでレイアウト全体のイメージを左右する重要なアクセサリです. 柵はレイアウト全体の比較的長い距離にわたって設けられるため鑑賞時には常に視界に入りますのでレイアウト全体のイメージに与える影響は電柱以上に大きいかもわかりません.
<プロトタイプの選定>
鉄道用地とそれ以外の土地の境界に設けられる柵にはいろいろなタイプがありますが、私のイメージでは蒸気機関車時代の柵は枕木を並べたものが多かったような気がします. このタイプの柵は1980年代はじめまでは(国鉄民営化の頃までは?)首都圏をはじめとして各地に見られました。

線路脇に設けられた枕木製の柵の例

その他の柵ではチャンネル状の鉄柱と棒を組み合わせたものや金網のフェンスなども使用されていた記憶がありますが近年でも見られるコンクリートの角柱と平板を組み合わせたものは少なくとも蒸気機関車が活躍している線区ではあまり見かけなかったと記憶しています.
今回のレイアウトセクションは北海道の機関区をイメージしていますのでこの柵を製作するにあたり北海道特有のものがあるか(あったか)を調べてみたのですがあまり参考になる情報は見つけられませんでした. あるとすれば積雪時に柵にあまり雪の重さがかからないものが選ばれているような気がするのですが, 北海道の雪はサラサラで柵にそれほど付着するとも思えず, それ以前に北海道, 特に大都市から離れた地域では機関区の周囲全体を囲む柵自体があまり設置されていなかったような気もします. とは言っても機関区の境界に柵を設けて施設内と施設外を明確にした方が視覚的にメリハリが出るため 今回は機関区の周囲に枕木を使用した柵を設けることとしました. 一年の半分近くの間雪にさらされる(特には雪の中に埋まってしまう場合もある)北海道でこのような木製の柵はあまり適さないのではないかという気もしましたがサビで腐食する鉄製の柵よりは良いのかもわかりません.
枕木を使用した柵のパターンとしては何種類かあるようですがそれを列挙すると (1) 上の写真のように枕木のピッチを狭くして人の立ち入りを防止したもの, (2)(1)の上部を水平方向に設けた枕木で固定して傾きを防止したもの, (3)枕木のピッチを広げて間に鉄の帯板を渡したもの 等があります. この中では一番簡単にできそうなのは枕木の本数が少なくて済む(3)ですが, 私の枕木を用いた柵のイメージは(1)ですので今回はこのタイプで製作することとしました. (1)の製作法を確立すれば実際に一部に設置してみてイメージに合わなかったら(2)や(3)への変更も容易に可能です.
製作にあたりまず枕木の実物寸法を調べてみると枕木の標準的な寸法は200㎜×140㎜×2100㎜であり, 1/80に換算すると2.5㎜x1.75㎜x26㎜となります. 私のイメージでは枕木の断面は正方形のような気がしていたのですが, 調べてみると枕木には橋梁用の枕木というものがありこちらは断面が正方形のようです. 枕木の全体形状という意味では普段こちらの方が見慣れているせいか, 私のイメージとしては枕木は断面が正方形ですので、今回制作する枕木柵の断面は正方形としました.
<製作手順>
素材は実物と同じ木製で製作しますが, 断面形状をスケールどおりとすると断面は2.5×2.5㎜となります. しかし市販されている檜角棒の規格品に2.5㎜角の角材はなく, あるのは2㎜角または3㎜角になります. 最初に思いつくのは3㎜角の角材を2.5ミリ角に削ることですが何分数が多い(角材の必要長が長い)ため, 手作業で均一に削ることは結構難しいと思われます. そこで今回は2㎜角の角材に厚0.5㎜の帯板を重ねて製作することとしました. この貼り重ね用の角棒は既成の0.5×5㎜の檜角棒(帯板?)を用意し, 下の写真位示すようにまず帯板を2㎜角棒の1面に接着し, カッターナイフで切断後隣接する面にも帯材を貼り付け, 貼り付け後サンドペーパーで仕上げることで2.5㎜角の角材を製作しました. 仕上げ時には多少角に丸みがついたり太さが変化してしまいますが, 正確に仕上げることよりも多少不均一であった方が実感的であるような気もします.

柵に使用する角材は2ミリ角の角棒と0.5ミリ厚の帯板を木工用ボンドで接着して製作しました.

柵の高さは17.5㎜としました。この高さは実物換算で1.45mです。実物の高さは不明ですが自身の記憶や写真から柵の先端は概ね顔の高さにあるという印象がありますので大体この程度の高さではないかと思い決定しました. 枕木の長さが2.1mですので地中には0.65m埋められていることになりますがこれは枕木長さの約1/3位となり, まあ妥当な(少なくともすぐには倒れない)量ではないかと思います. 切断には写真のようなジグを作成し4方向からカッターナイフで直角に切り込みを入た後切断しました.

角材はジグにより4方向から切り込みを入れて切断面を直角に切断します

切断後, 丈夫に面取りをつけました. この面取りの量はいろいろあるようですが少なすぎると遠くから見たときに目立たなくなるような気がしましたので少し量を多めにつけて先端を細目に仕上げました.

完成した柵の単体です

上部の面取りがつけ終わったら底部に取り付け用の真鍮線を埋め込みます. 真鍮線はφ0.7m㎜を用いています. ドリルで穴を開けて真鍮線の先端にゼリー上瞬間接着剤を塗布したのち穴の差し込み固定します. この後真鍮線を切断しますがこの際注意することは真鍮線を長めにしておくことです. ベース上にはプラスターの層が数ミリありますのでそのプラスター層を貫通してベースに達する長さにしておかないと固定後に柵に少し力を加えると柵がプラスターごと剥がれてしまうので注意が必要です.

完成した柵単体に取り付け用の真鍮線を取り付けます.

以上で柵単体は完成ですのでこの柵をレイアウトに取り付けていきます. 塗装は取り付け後に行うこととしました. . その理由は事前に塗装をしても取り付けの際穴を開けて差し込みむので穴あけ時にプラスターの粉が出て地面位付着するためどうしても柵を取り付けた後に地面の塗装(タッチアップ)が必要になること, 多くの”枕木”がレイアウトの長手方向全体に並びますので地面と異なる色とすると目立ちすぎる可能性があるため最終的には地面とほぼ同色とした方が良いと考えわざわざ取り付け前に手間をかけて一本ずつ塗装をする必要はないと判断したためです.地面に開ける 取り付け用の穴はピンバイスで開けますが取り付ける柵自体に太さのばらつきがあるため穴のピッチはそれほど厳密である必要はなくかえって正確に穴あけすると太さの違いが目立つような気もしましたのである意味現物合わせ, 具体的には1箇所穴あけして取り付けたのちその枕木とピンバイスのチャックが接触する位置に隣の取り付け穴を開けて枕木を取り付けていくという方法としました. 私が使用したピンバイスのチャックの直径が7㎜でしたでこれで取り付け穴のピッチは4.75㎜となり計算長の柵と柵の隙間は2.25㎜となりますが隣の柵とチャックは密着しませんので結果的に隙間はもう少し広くなり見た目柵の太さと隙間がほぼ同一寸法となります. なお, 角材に取り付けた真鍮線は必ずしも柵(角材)の中心に正確に位置しているわけではないので取り付けの際柵を回してピッチ(柵と柵の隙間)を微調整することが可能です. このような方法により柵を固定した写真が下記になります. ちなみのこのレイアウトで使用した柵は全部で244本でした.

レイアウト上への取り付けが終わった柵

取り付けが終了したら柵の着色を行います. 色は地面より少し明るめに茶色としました. 塗装は筆塗りで塗装後には地面を含めて再度塗装を行いますので特にマスキングはせず地面へのはみ出しは気にせず行いました. ただし下の写真のようにベースの縁に取り付けられた柵を塗装する時にはベースの塗装にはみ出さないようにマスキングテープでマスキングをを行います.

レリアウト上に取り付けた柵をエナメル系の塗料で塗装します

柵の塗装が終了したらエアーブラシで地面色を柵の根元に吹き付けます. 上の写真のように柵の周辺には取り付け穴を開けた時のプラスターの粉が残っており柵と掃除の塗料のはみ出しもありますのでまずこれらが目立たないように吹き付けます. 上述のように地面と柵はほぼ同色としますので吹き付けの際はテープでのマスキングはせずに厚手の紙で柵の上部を隠しながら吹き付けを行いました(当然建物は全て取り外します)そして根本部の白粉と柵の塗料のはみ出しが目立たなくなったらマスキング用の厚紙は使用せずに柵と地面が一体となるよう地面色を柵全体に吹き付け完成とします. この際塗膜を厚くしすぎると柵と地面が完全な同色になってしまいますので柵に事前に柵に塗った色と柵と地面の間にわずかな色調の差が出るように塗料の量(吹き付け時のガンの速度や回数)を調整することが肝要です.

柵単体への塗装が終了したら柵全体に地面色を吹き付けて色調を調整します.

以上で柵が完成しました. 次回からは所謂”小物”と呼ばれるアクセサリを紹介していきたいと思います. 最後までお読みいただきありがとうございました.

柵が完成したレイアウトの写真です.